(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5971486
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】接着接合の装置及び方法
(51)【国際特許分類】
B23K 1/19 20060101AFI20160804BHJP
B23K 1/18 20060101ALI20160804BHJP
B23K 1/20 20060101ALI20160804BHJP
B23K 33/00 20060101ALI20160804BHJP
B23K 1/00 20060101ALN20160804BHJP
B23K 103/02 20060101ALN20160804BHJP
B23K 103/10 20060101ALN20160804BHJP
B23K 103/14 20060101ALN20160804BHJP
B23K 103/20 20060101ALN20160804BHJP
【FI】
B23K1/19 Z
B23K1/18 A
B23K1/20 B
B23K33/00 Z
!B23K1/00 L
B23K103:02
B23K103:10
B23K103:14
B23K103:20
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-504055(P2013-504055)
(86)(22)【出願日】2011年4月12日
(65)【公表番号】特表2013-523458(P2013-523458A)
(43)【公表日】2013年6月17日
(86)【国際出願番号】AT2011000177
(87)【国際公開番号】WO2011127506
(87)【国際公開日】20111020
【審査請求日】2014年4月9日
(31)【優先権主張番号】A657/2010
(32)【優先日】2010年4月21日
(33)【優先権主張国】AT
(31)【優先権主張番号】A587/2010
(32)【優先日】2010年4月12日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】512023247
【氏名又は名称】フェスタルピネ シュタール ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ライトナー,アロイス
(72)【発明者】
【氏名】レッヒベルガー,ローランド
【審査官】
水野 治彦
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2005/0258218(US,A1)
【文献】
国際公開第2010/038429(WO,A1)
【文献】
特開2003−075088(JP,A)
【文献】
特公昭44−010379(JP,B1)
【文献】
特公昭51−006876(JP,B1)
【文献】
特開昭51−116145(JP,A)
【文献】
特開2008−246558(JP,A)
【文献】
特開平08−025030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 1/19
B23K 1/18
B23K 1/20
B23K 33/00
B23K 1/00
B23K 103/02
B23K 103/10
B23K 103/14
B23K 103/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる融点を有する2つの金属板の接着接合方法であり、前記金属板の一方のエンドプレートは軽金属材料を有し、他方の接続プレートは鉄及び/又はチタン素材を有しており、前記接続プレートの突き合わせ部の互いに傾斜している突き合わせ面の少なくとも1つに、亜鉛又はアルミニウムベースのコーティングが少なくとも部分的に設けられており、前記方法の場合、両方の前記金属板は、互いに接触した状態で、軽金属ベース上に溶加材を使用することで、前記金属板の共通のジョイントに沿ってブレイズ溶接により接合される方法であって、
接合の前に、前記接続プレート(2)のコーティングされた前記突き合わせ部(3)の少なくとも一部を収容するための凹部(10)が、前記エンドプレート(1)の前記突き合わせ部(4)に取り付けられ、
接合する際、前記接続プレート部品の前記コーティング(9)を覆う前記凹部(10)の一方の凹部側面(11又は12)が少なくとも部分的に外側面がブレイズ溶接され、この時、前記凹部側面(11,12)は、溶接装置(7)のアーク(8)が直接当たらないように前記コーティング(9)を覆い保護していることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記エンドプレート(1)において、両方の前記凹部側面(11及び12)が、接合時に、部分的に前記接続プレート(2)の前記突き合わせ部(3)の両方の前記突き合わせ面(3’、3”)を覆うように、凹部(10)が取り付けられることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エンドプレート(1)の前記突き合わせ部が、前記凹部(10)の中に圧入されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記エンドプレート(1)の前記突き合わせ部(4)が、両方の前記凹部側面(11及び12)のために切り込まれ、これらの前記凹部側面(11及び12)の少なくとも1つが前記凹部(10)のために折り曲げられることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記接続プレート(2)の前記突き合わせ部(3)がV字型の前記凹部(10)の中に圧入され、この前記凹部(10)が少なくとも部分的に広げられることを特徴とする、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記接続プレート(2)の突き合わせ面(13、14)に波形の変化が付けられていることを特徴とする、請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
接合の際に、互いに接触する前記金属板(1及び2)が、冷却可能な、互いに離された掴み部(17、18)の中に取り付けられることを特徴とする、請求項1〜6のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
共通の接合領域(6)を作るために、両方の前記凹部側面(11及び12)にわたって同時にブレイズ溶接が行われることを特徴とする、請求項1〜7のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記軽金属材料は、アルミニウム素材またはアルミニウム合金であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記金属板(1、2)の位置を調整し、接触させるために前記金属板(1、2)をそれぞれ保持している保持部である掴み具(17、18)と、両方の前記金属板(1、2)の接着接合のための少なくとも1つのアーク(8)を有するバーナー(7)と、を備える、請求項8に記載の方法を実施するための装置であり、
向かい合うプレート面(19、20)にそれぞれ配置されている少なくとも2つの前記バーナー(7)の前記アーク(8)が、前記ジョイントの共通の接合領域(6)の方に向けられていることを特徴とする装置。
【請求項11】
前記アーク(8)が前記エンドプレート(1)の前記凹部側面(11、12)の方に向けられていることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる融点を有する2つの金属板の接着接合方法に関し、金属板の一方のエンドプレートは軽金属材料、特にアルミニウム素材を有し、他方の接続プレートは鉄及び/又はチタン素材を有しており、接続プレートの突き合わせ部の互いに傾斜している突き合わせ面の少なくとも1つに、好ましくは亜鉛又はアルミニウムベースのコーティングが少なくとも部分的に設けられており、この方法の場合、両方の金属板は、互いに接触した状態で、アルミニウムベース上に溶加材を使用することで、これらの金属板の共通のジョイントに沿ってブレイズ溶接によって接合される。
【背景技術】
【0002】
スチール及びアルミニウムプレートを互いに接着接合するためには、従来技術(特許文献1及び特許文献2)から、スチールプレートの平坦化された突き合わせ部にコーティングを施すことが知られており、それにより、ブレイズ溶接によって溶けたアルミニウムを、スチールプレートの増加した接続長さにわたって塗布できるようにすることが知られている。アルミニウムが溶解して、スチール側ではんだ付けが形成される周知のブレイズ溶接法では、スチールプレートの平坦化された突き合わせ部が、先端の尖っていないアルミニウムプレートの突き合わせ部に当てられ、このことにより、溶加材を使用することで両方の金属板が互いにブレイズ溶接によって接合される。継ぎ目の質及びブレイズ溶接法のプロセス安全性に重要なのは、接続長さ、突き合わせ部のコーティング、及びこの関連において、接合領域における熱入力の温度であることが判明した。そのため、一方で、継ぎ目又は接合部に高い負荷を要求できるようにするためには、接続長さを長くするべきであるが、このことによって幅広い接合領域に比較的高い温度が必要となり、他方で、金属混合接続の位相継ぎ目の増長を抑制し、それによって強度を低下させなくても済むようにするには、接合領域の温度を低くするべきである。従って、このように相反する基準は、多くの場合、プロセス安全性と強度との間で妥協することになり、このことから、とりわけ薄い金属板の加工で、接合領域の温度に特に注意する必要がある場合は、高い強度を達成できない場合が多い。
【0003】
さらに、従来技術(特許文献3)から様々な目違い継ぎ形状が周知であり、これらの目違い継ぎ形状は、異なる材料の2つの金属板に設けることができる。溝は、金属板を簡単にセンタリングできるようにするため、又はレーザー溶接装置を使って接着接合を行う必要がある場合に、溶接継ぎ目の部分で互いに接触している金属板を大きく湾曲させないために用いられる。スチールプレートとアルミニウムプレートとを接合するためのブレイズ溶接法又はこれらの金属板の接合における難しい問題点の改善方法を、文献3から読み取ることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際特許出願公開第2004030856A1号
【特許文献2】国際特許出願公開第2006012659A1号
【特許文献3】欧州特許出願公開第0288884B1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の課題は、冒頭に述べた従来技術に基づいて、簡単な方法で高いプロセス安全性と高い接合強度とを達成し得るブレイズ溶接を提供することである。さらに、本方法は、接着接合を迅速に行うことができなければならない。
【0006】
本発明は、接合の前に、接続プレートのコーティングされた突き合わせ部の少なくとも一部を収容するための凹部がエンドプレートの突き合わせ部に取り付けられ、接合する際、接続プレート部品のコーティングを覆う凹部の一方の凹部側面が少なくとも部分的にブレイズ溶接されることによって、この課題を解決する。
【0007】
接合の前に、接続プレートのコーティングされた突き合わせ部の少なくとも一部を収容するための凹部がエンドプレートの突き合わせ部に取り付けられ、接合する際、接続プレート部品のコーティングを覆う凹部の一方の凹部側面が少なくとも部分的にブレイズ溶接される場合、それによって、従来技術による簡単な金属板の位置決めが相互に可能になるばかりでなく、とりわけ、金属板の間で実施されるブレイズ溶接の強度も改善することができる。この利点は、金属板のかみ合いによってだけでなく、特に、接合中における接続プレートのコーティング保護によって生じ、それは、このコーティングが凹部の側面によって覆われ、それによってバーナーのアークからコーティングを保護することができるからである。このことにより、例えば、コーティングの蒸発が難しくなるため、金属板間の接続長さが比較的長くても、接合領域は高いプロセス安全性を有している。従って、例えば熱入力又はバーナーの溶接アークのプラズマ相互作用などによる損傷から、コーティングを保護することができるため、高速のブレイズ溶接を行うことが可能となる。しかし、特に、この金属板の「かみ合い」は、位相継ぎ目の軽減に関して有利であることが判明した。つまり、この配置により、金属板間の熱移行が改善されることによって、接合領域の温度も軽減することができ、このことは、薄い金属板においても比較的高い継ぎ目強度を可能にする。従って、本発明に基づく方法は、迅速かつより確かなプロセス安全性のみならず、様々に利用可能であり、同時に、例えばスチールプレートとアルミニウムプレート又はアルミニウム合金を備える金属板とを固定接続しなければならない場合でも、高い接合強度を提供し、保証することができる。一般的に、この種の凹部は、例えば金属板の中への粉砕、切り込み、圧入又は焼き入れによって実施できる。また、V字型、U字型、半円形などに形成された凹部も考えられる。さらに、フィルムの形態による接続プレートのコーティングも考えられる。
【0008】
エンドプレートにおいて、凹部の両方の凹部側面が、接合時に、部分的に接続プレートの突き合わせ部の両方の突き合わせ面を覆うように取り付けられる場合、両方の突き合わせ部側のコーティングを、簡単な方法で接合時の蒸発から保護することができる。さらに、両方の凹部側面が接続長さを増加させることができる場合は、特に接合時のはんだ材料を少なくして接合領域に塗布しなければならない。
【0009】
エンドプレートの突き合わせ部の中へ凹部を圧入する場合、軽金属材料、特に接合領域におけるアルミニウム材料には、例えばフライス加工から知られているような質量減少が生じないため、塗布するはんだ材料をさらに軽減することができる。さらに、この方法の場合、削り屑がでるのを回避することができ、従って凹部の後処理も省略される。
【0010】
エンドプレートの突き合わせ部が両方の凹部側面を作るために切り込まれ、これらの凹部側面の少なくとも1つが凹部のために折り曲げられる場合は有利な加工条件が生じる。このような折り曲げは、例えばカッティング処理の後に実施することができる。これによって、接合領域の軽金属材料の質量減少が生じないこと以外に、接続プレートの突き合わせ部の形状に適合させることのできる柔軟な収容が少なくとも部分的に可能となる。このことにより、例えば、金属板の間に極めて密着した移行部を作ることができるため、有利な加工条件を導き出すことができる。
【0011】
接続プレートの突き合わせ部が凹部の中に圧入され、この凹部を少なくとも部分的に広げることができる場合、例えば、接続プレートの突き合わせ部の形状に特に注意する必要がないことから、この凹部を形成するための加工条件を簡略化することができる。すなわち、突き合わせ部の形状に従って、凹部の補正を行うことができるため、製造ばらつき自体が接合及びプロセス安全性に大きな影響を与えることはできない。つまり、凹部は、常に接続プレートに密着して形成されるため、常に、簡単な方法で、特に優れた継ぎ目移行を確実なものにすることができる。
【0012】
接続プレートの突き合わせ面に波形の変化が付けられている場合、接続長さが拡張されることの他に、様々な当たり角を発生させることができるため、ブレイズ溶接法によって達成可能な強度をさらに高めることができる。
【0013】
接合の際に、互いに接触する金属板が、冷却可能な、互いに離された掴み具の中に取り付けられる場合は、安定した加工条件を達成することができる。特に、掴み具の冷却によって、接合中の掴み具の温度を一定に保つことができるため、ブレイズ溶接時のパラメータの変動が抑制されると予想される。
【0014】
共通の接合領域を作るために、両方の凹部側面にわたって同時にブレイズ溶接が行われる場合は有利な加工条件が生じる。これにより、両方の側面に対して同じ溶接パラメータを設定することによって、継ぎ目の形状を比較的左右対称に形成することができ、強度を上げるため、継ぎ目領域の温度も低減することができる。両方の側から突き合わせ部に熱を入力することにより、片側の熱入力に比べ接合領域の損失熱を減少させることができるため、全体として、同じ加工条件でも位相継ぎ目が減少すると予想されることから、本発明は特に優れている。これに加え、接合領域の温度低減に基づいて、比較的薄い金属板も互いに接合可能になる。
【0015】
本発明に基づく方法は、異なる融点を有する2つの金属板を接着接合によって接合することによって1つの工作物を有利に作成するために用いることができ、金属板の一方のエンドプレートは軽金属材料、特にアルミニウム素材を有し、他方の接続プレートは鉄及び/又はチタン素材を有している。一般的に、アルミニウムプレートは様々なアルミニウム合金から製造することができる。5xxx、6xxx及び7xxxの合金シリーズを使用することが有利である。スチールプレートは、特にTRIP(変態誘起塑性)鋼、TWIP(双晶誘起塑性)鋼、DP(二相)鋼又はCP(複相)鋼であるか、又はその他の高張力合金かなら成ることができる。
【0016】
さらに、ブレイズ溶接法には、軽金属材料、特にアルミニウム材料を有する金属板を使用することが有利であると判明しており、この金属板は、接触させる接続プレートのコーティングされた突き合わせ部を収容するために凹部側面が折り曲げられた凹部を有している。そのような収容では、凹部側面によって少なくとも部分的に金属板の密着が保証されるため、コーティングが保護されるだけでなく、接触させる金属板の間で有利な熱移行を行うことができる。
【0017】
さらに、本発明の課題は、金属板の接合に有利な加工条件を可能にする、構造的に簡単な装置を提供することである。
【0018】
本発明は、向かい合うプレート面にそれぞれ配置されている少なくとも2つのバーナーのアークが、ジョイントの共通の接合領域の方に向けられることによって、この課題を解決している。
【0019】
向かい合うプレート面にそれぞれ配置されている少なくとも2つのバーナーのアークが、ジョイントの共通の接合領域の方に向けられている場合、接合領域では、構造的に簡単な方法で均質なブレイズ溶接条件を提供することができ、それによって比較的高い接続強度を達成することが可能となる。
【0020】
この接続強度は、アークがエンドプレートの凹部側面の方に向けられる場合、さらに増加させることができる。
【0021】
複数の実施例を用いて、本発明の対象を図において詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】従来技術による接合するジョイントの図である。
【
図2】本発明に基づく接合方法のための本発明によるジョイントの図である。
【
図4】
図2及び3によるジョイントのもう1つの代替の実施形態である。
【
図5a】本発明に基づく方法を実施するための装置である。
【
図5b】本発明に基づく方法を実施するための装置である。
【
図7】2つの実施例の一方によるブレイズ溶接の断面図である。
【
図8】2つの実施例の一方によるブレイズ溶接の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1には、それぞれ融点の異なる2つの金属板1及び2の周知の接着接合方法が示されている。はアルミニウム材料又はアルミニウム合金を有し、接続プレート2はスチール材料を有している。接続プレート2には、周知の方法で、平坦化された突き合わせ部3が設けられており、この突き合わせ部は、いわゆるV字型になるように互いに傾斜した突き合わせ面3’及び3”を形成している。突き合わせ部3は、エンドプレート1の先の尖っていない突き合わせ部4に当たる。接合時に互いに接触する金属板1及び2は、ブレイズ溶接後に接合領域6の質量を増加させる溶加材5(
図6においてのみ図示されている)を使用することでこの接合領域6に取り付けられ、このことは溶接装置7によって可能となる。この溶接装置7により、ブレイズ溶接法を使って、
図1に示されている互いに接触する金属板1と2との間で接着接合が行われる。ここでは一般的に、金属板1、2は、直線のエッジに限らず、様々な輪郭の変化を有してもよい。また、接続プレート2の突き合わせ部3は連続している必要はなく、エンドプレート1は、この範囲にわたって凹部のない突き合わせ部4を有している。
【0024】
接合剤又は溶加材5の塗布を増加することによって、金属板1と2との間の接続に悪い影響の及ぶことが判明したばかりでなく、問題点として、ブレイズ溶接時にも、溶接装置7のアーク8によって接続プレート2のコーティング9が損傷する可能性のあることが判明した。しかし、このコーティング9は、特に、エンドプレート1及び/又は溶加材5の素材と接続プレート2とのぬれを機能的に確実なものにするため、ブレイズ溶接法の実施可能性及びプロセス安全性にとって非常に重要である。これらの問題は、特に金属板1と2との間に長い接続長さが要求されている場合や金属板1と2とが薄い場合に、接着接続の品質評価に重大な影響を及ぼす。
【0025】
本発明に基づき、ブレイズ溶接法は、エンドプレート1の中に凹部10を取り付けることによって改善され、この凹部は、
図2から分かるように、接続プレート2のコーティングされた突き合わせ部3を少なくとも部分的に収容することができる。さらに、接合する際、接続プレート部品のコーティング9を覆う凹部の側面11が少なくとも部分的にブレイズ溶接される場合は、少なくとも、溶接装置7のアーク8がコーティング9に直接当たらないようにコーティング9を保護することができる。従って、コーティングの上にある凹部の側面11は、ぬれ層として作用するコーティング9を保護し、このことがエンドプレート1と接続プレート2との間の増加した接続長さを確実なものにするばかりでなく、特にプロセス安全性の高いブレイズ溶接法も保証することができる。
【0026】
両方の凹部の側面11及び12が、部分的に接続プレート2の平坦化された突き合わせ部3の両方の突き合わせ面3’、3”を覆っていることから、有利には、アーク8と向かい合わない接続プレート2の突き合わせ部3”上にあるぬれ層の蒸発が軽減される。すなわち、この部分においても、プロセス安全性の向上に関して、比較的硬いブレイズ溶接を行えることが予想される。
【0027】
エンドプレート1が、例えばカッティング処理又はプレス処理などにより、エンドプレートの正面に沿って切り込まれ、V字型に折り曲げられる場合、凹部10を簡単な方法で製造することができる。さらに、このことにより、エンドプレート1の材料を、削り取ることなく溶接領域6に使用することができるため、はんだ材の消費を縮小することができ、凹部10の代替の実施形態としてこのことが
図3に示されている。凹部側面11及び12は、この場合、折り曲げられた状態で示されている。
【0028】
しかし、特に、このことにより、凹部の側面11及び12をセンタリングに作用することができるため、金属板1及び2を位置決めする特に有利な加工条件を作ることができる。さらに、これらの側面は、その柔軟な特性によって、継ぎ目領域における継ぎ目のない移行を提供することができ、このことは、点線で示されているように、接続プレート2をV字型の凹部10に圧入する際にこの凹部10が少なくとも部分的に拡張することによって、接着接合の改善に働く。
【0029】
さらに、凹部側面11及び12両方の側からそれぞれ1つの溶接装置7によって熱入力を行うことによって、接合時に両方の突き合わせ面3’及び3”上のコーティング9を同時に使用することができ、また従来技術による片側からの熱入力で生じるおそれのある不利なコーティングの蒸発も防ぐことができ、プロセス安全性も向上する。
【0030】
図4には、
図2及び3の実施形態に対して、特殊な接続プレート2の突き合わせ部3の特殊な変化が示されている。突き合わせ面13及び14は、その上に施されるコーティング9も合わせて、互いに波形に変化している。それによって、有利には、プレート1と2間の接続長さを拡大することができ、例えばクラウニングであり得るこの波形の変化によって、ほぼそれぞれに接続角度を発生させることができるため、ブレイズ溶接の強度が高まる。
【0031】
処理を実施するための装置15が、
図5a及び5bに簡略化されて示されている。
図5aの側面図は、両方の金属板1及び2のジョイントに沿ってガイドされる2つのバーナー7を示している。この目的のため、バーナー7は、大まかに示されている運動軸上を制御装置16によってガイドされている。固定部として実施されている、移動可能かつ冷却可能な2つの掴み部17及び18は、金属板1及び2を締め付け、金属板1及び2の位置を調整し、相互に接触させるために用いられる。すでに言及したように、バーナー7のアーク8によって両方の金属板1及び2の接着接合が行われ、特に最適な加工条件を得るために、向かい合うプレート面19及び20にそれぞれ配置されている少なくとも2つのバーナー7のアーク8は、ジョイントの共通の接合領域6の方に向けられる。
【0032】
この装置15及び本発明に基づく方法には、特に厚さ0.5〜3mm、好ましくは0.6〜2mm、有利には0.7〜1.5mmのスチールプレートと、厚さ1〜5mm、好ましくは1〜3mm、有利には1〜2.5mmのアルミニウムプレートが有利であることが判明した。図示されている装置15によって、さらに、毎分60〜300cmの継ぎ目形成を達成することができ、接続強度を低下させる必要もない。しかし、同様に、10〜20mmのより厚いプレートも、説明した方法で問題なく接続することができる。さらに、本発明に基づく方法により、プレート厚さが異なることによって生じる盛り上がりも軽減され、接続面の拡大によって追加的に強度も増加させることができる。さらに、厚い金属板の場合は、必ずしも両方の側から同時に接続箇所にブレイズ溶接する必要はなく、それぞれの片側をブレイズ溶接することができる。つまり、接続プレート又はスチールプレートの厚さが増加することによって、コーティング蒸発の危険を有利に減少させることができる。これに加えて、比較的厚いプレートでは、溶加材の供給も減少させることができる。
【0033】
例えば、
図7には、ブレイズ溶接21が、接続プレート2として実施されている、厚さ1mmの品質DX54+Z140のスチールプレートと、エンドプレート1として実施されている、厚さ1.2mmの品質AW6016のアルミニウムプレートとの間のブレイズ溶接21が示されている。本発明に基づき、弾性限界Rp0.2(132MPa)又は引張強さRm(239MPa)を可能にすることができる(それぞれアルミニウム断面に関して)。
【0034】
図8に示されているブレイズ溶接22は、接続プレート2として実施されている、厚さ1.2mmの品質DX54+Z140のスチールプレートと、エンドプレート1として実施されている、厚さ1.5mmの品質AW6181のアルミニウムプレートとの間で行われている。この場合、それぞれアルミニウム断面に関して、弾性限界Rp0.2(126MPa)又は引張強さRm(210MPa)を可能にすることができた。
【符号の説明】
【0035】
1 エンドプレート
2 接続プレート
3 突き合わせ部
3’ 突き合わせ面
3” 突き合わせ面
4 突き合わせ部
5 溶加材
6 接合領域
7 溶接装置
8 アーク
9 コーティング
10 凹部
11 凹部の側面
12 凹部の側面
13 突き合わせ面
14 突き合わせ面
15 装置
16 制御装置
17 掴み部
18 掴み部
19 プレート面
20 プレート面
21 ブレイズ溶接
22 ブレイズ溶接