特許第5971507号(P5971507)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コニカミノルタ株式会社の特許一覧

特許5971507光学素子の位置調整機構及び走査光学装置
<>
  • 特許5971507-光学素子の位置調整機構及び走査光学装置 図000002
  • 特許5971507-光学素子の位置調整機構及び走査光学装置 図000003
  • 特許5971507-光学素子の位置調整機構及び走査光学装置 図000004
  • 特許5971507-光学素子の位置調整機構及び走査光学装置 図000005
  • 特許5971507-光学素子の位置調整機構及び走査光学装置 図000006
  • 特許5971507-光学素子の位置調整機構及び走査光学装置 図000007
  • 特許5971507-光学素子の位置調整機構及び走査光学装置 図000008
  • 特許5971507-光学素子の位置調整機構及び走査光学装置 図000009
  • 特許5971507-光学素子の位置調整機構及び走査光学装置 図000010
  • 特許5971507-光学素子の位置調整機構及び走査光学装置 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5971507
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】光学素子の位置調整機構及び走査光学装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/10 20060101AFI20160804BHJP
   B41J 2/47 20060101ALI20160804BHJP
   H04N 1/113 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   G02B26/10 F
   B41J2/47 101D
   H04N1/04 104A
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-155590(P2011-155590)
(22)【出願日】2011年7月14日
(65)【公開番号】特開2013-18268(P2013-18268A)
(43)【公開日】2013年1月31日
【審査請求日】2014年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111811
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 崇史
(72)【発明者】
【氏名】長岡 敦
(72)【発明者】
【氏名】谷口 元
(72)【発明者】
【氏名】草野 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】大谷 典孝
(72)【発明者】
【氏名】立部 秀成
【審査官】 堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−341392(JP,A)
【文献】 特開2007−241118(JP,A)
【文献】 特開2008−233203(JP,A)
【文献】 特開2011−133834(JP,A)
【文献】 特開平10−035014(JP,A)
【文献】 特開2008−132677(JP,A)
【文献】 特開2006−215397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/10 − 26/12
B41J 2/47
H04N 1/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子を移動手段によって移動させて光学素子の位置を調整する機構であって、
前記移動手段は、モーターと、先端部に雄ネジ部が形成され、前記モーターの駆動によって回動する回動軸と、ネジ穴を有し前記光学素子と間接的に当接する当接部材とを有し、前記回動軸の雄ネジ部が前記当接部材のネジ穴に螺合し、前記回動軸の回動によって前記当接部材を軸方向に移動させて前記光学素子を光軸方向に対して垂直な面内で移動させるものであり、
前記光学素子を保持すると共に前記当接部材が当接し、前記回動軸の回動によって一方端を支点として前記光軸方向に対して垂直な面内で回動可能な保持部材を有し、
前記保持部材の前記光軸方向は押圧部材と筐体とで挟持され、
前記回動軸の雄ネジ部と前記当接部材のネジ穴との螺合が外れる位置を調整基準位置としたことを特徴とする光学素子の位置調整機構。
【請求項2】
前記回動軸の雄ネジ部と前記当接部材のネジ穴との螺合が前記雄ネジ部の軸方向外方で外れ、この外れた位置を調整基準位置とすると共に、前記保持部材を軸方向内方に付勢する第1付勢部材を設け、
前記回動軸の雄ネジ部と前記当接部材のネジ穴との螺合が外れた後、第1付勢部材によって前記回動軸と再び螺合可能な状態に前記当接部材を維持する請求項1記載の光学素子の位置調整機構。
【請求項3】
前記回動軸の雄ネジ部と前記当接部材のネジ穴との螺合が前記雄ネジ部の軸方向内方で外れ、この外れた位置を調整基準位置とすると共に、前記保持部材を軸方向外方に付勢する第2付勢部材を設け、
前記回動軸の雄ネジ部と前記当接部材のネジ穴との螺合が外れた後、第2付勢部材によって前記回動軸と再び螺合可能な状態に前記当接部材を維持する請求項1記載の光学素子の位置調整機構。
【請求項4】
前記モーターを取り付けるホルダーをさらに設け、前記ホルダーに前記当接部材の移動を案内するガイド部を形成した請求項1〜3のいずれかに記載の光学素子の位置調整機構。
【請求項5】
雄ネジ部の軸方向外方端が、前記ガイド部の外方端よりも軸方向内側に位置する請求項4記載の光学素子の位置調整機構。
【請求項6】
前記保持部材の回動範囲を規制する回動規制部材をさらに備えた請求項1〜5のいずれかに記載の光学素子の位置調整機構。
【請求項7】
前記光学素子が結像レンズである請求項1〜6のいずれかに記載の光学素子の位置調整機構。
【請求項8】
前記モーターがステッピングモーターである請求項1〜7のいずれかに記載の光学素子の位置調整機構。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の調整機構を備えたことを特徴とする走査光学装置。
【請求項10】
露光装置として請求項9記載の走査光学装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子の位置調整機構及び走査光学装置に関し、より詳細には、タンデム方式のフルカラー画像形成装置の露光装置として好適に用いられる光学素子の位置調整機構及び走査光学装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タンデム方式のフルカラー画像形成装置では、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C)、黒色(K)の4色の画像を、並置された4つの感光体の表面にそれぞれ形成し、各画像を各感光体から中間転写ベルト上に一次転写して重ね合わせた後、記録材上に二次転写している。ここで、色ずれを防止するためには、中間転写ベルト上における4つの画像の位置合わせが重要となる。
【0003】
画像の位置合わせ調整のうち、走査線の傾き(スキュー)調整に関しては、例えば特許文献1では、光書き込み系の光学素子の、主走査方向の少なくとも一方端側を、モーター等で駆動されるアクチュエータ手段と付勢部材とで挟持し、アクチュエータ手段を駆動させ光学素子を移動させて光学素子のスキューを調整する機構が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-259408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、光学素子のスキュー調整中に主電源がオフされた場合、メモリーに記憶されている光学素子の位置はスキュー調整前の位置のままであるが、実際の光学素子の位置は主電源がオフされた時に静止した位置になる。この光学素子の位置は、スキュー調整の動作前、動作途中、動作後のどのタイミングで主電源がオフされたかによって異なる。このため、メモリーに記憶されている光学素子の位置と実際の光学素子の位置との間に差の生じる場合がある。この場合、主電源復帰後、予め設定された調整範囲を超えてスキュー調整されるおそれがあり安定したスキュー調整ができない。
【0006】
本発明の目的は、このような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、光学素子の位置調整中に主電源がオフされても、再起動時に調整基準位置を設定し得る調整機構及び走査光学装置、画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、光学素子を移動手段によって移動させて光学素子の位置を調整する機構であって、前記移動手段は、モーターと、先端部に雄ネジ部が形成され、前記モーターの駆動によって回動する回動軸と、ネジ穴を有し前記光学素子と間接的に当接する当接部材とを有し、前記回動軸の雄ネジ部が前記当接部材のネジ穴に螺合し、前記回動軸の回動によって前記当接部材を軸方向に移動させて前記光学素子を光軸方向に対して垂直な面内で移動させるものであり、前記光学素子を保持すると共に前記当接部材が当接し、前記回動軸の回動によって一方端を支点として前記光軸方向に対して垂直な面内で回動可能な保持部材を有し、前記保持部材の前記光軸方向は押圧部材と筐体とで挟持され、前記回動軸の雄ネジ部と前記当接部材のネジ穴との螺合が外れる位置を調整基準位置としたことを特徴とする光学素子の位置調整機構が提供される。
【0008】
ここで、前記回動軸の雄ネジ部と前記当接部材のネジ穴との螺合が前記雄ネジ部の軸方向外方で外れ、この外れた位置を調整基準位置とすると共に、前記保持部材を軸方向内方に付勢する第1付勢部材を設け、前記回動軸の雄ネジ部と前記当接部材のネジ穴との螺合が外れた後、第1付勢部材によって前記回動軸と再び螺合可能な状態に前記当接部材を維持するのが好ましい。
【0009】
また、前記回動軸の雄ネジ部と前記当接部材のネジ穴との螺合が前記雄ネジ部の軸方向内方で外れ、この外れた位置を調整基準位置とすると共に、前記保持部材を軸方向外方に付勢する第2付勢部材を設け、前記回動軸の雄ネジ部と前記当接部材のネジ穴との螺合が外れた後、第2付勢部材によって前記回動軸と再び螺合可能な状態に前記当接部材を維持するのが好ましい。
【0010】
そしてまた、前記モーターを取り付けるホルダーをさらに設け、前記ホルダーに前記当接部材の移動を案内するガイド部を形成してもよい。この場合、雄ネジ部の軸方向外方端が、前記ガイド部の外方端よりも軸方向内側に位置するようにするのが好ましい。
【0011】
また、前記保持部材の回動範囲を規制する回動規制部材をさらに設けてもよい。
【0012】
さらに、前記光学素子は結像レンズであってもよい。
【0013】
また、前記モーターとしてはステッピングモーターが好ましい。
【0014】
また本発明によれば、前記いずれかに記載の調整機構を備えたことを特徴とする走査光学装置が提供される。
【0015】
さらにまた、本発明によれば、露光装置として前記記載の走査光学装置を用いたことを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る光学素子の位置調整機構及び走査光学装置では、主電源がオンされた時などに、回動軸を回転させて回動軸の雄ネジ部と当接部材のネジ穴との螺合を外し、この螺合の外れた位置を調整基準位置とする。これにより、例えば、光学素子の位置調整中に主電源がオフされた場合であっても、再起動時に調整基準位置を設定できるようになり、予め設定された調整範囲を超えて光学素子の位置調整が行われることが防止され、安定した位置調整が可能となる。
【0017】
また、本発明に係る画像形成装置では露光装置として前記走査光学装置を用いるので、タンデム方式のフルカラー画像形成装置では4つの画像を中間転写ベルト上に精度よく重ね合わすことができ高画像品質が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る走査光学装置を露光装置として備えたカラープリンターの一例を示す概略構成図である。
図2】露光装置の概略断面図である。
図3】色ずれ調整のためのトナーパターンを示す説明図である。
図4】第3結像レンズの調整機構を示す斜視図である。
図5】保持部材の被押圧部材及びその周辺の部分斜視図である。
図6】被押圧部材及びその周辺の側面図である。
図7】移動手段の一例を示す垂直断面図である。
図8図7の移動手段が調整基準位置にあるときの状態図である。
図9】移動手段の他の例を示す垂直断面図である。
図10図9の移動手段が調整基準位置にあるときの状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を図に基づいてさらに詳しく説明するが本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0020】
図1に、本発明に係る走査光学装置を露光装置として用いた画像形成装置の一実施形態を示す概説図を示す。図1の画像形成装置Dは所謂タンデム方式のカラープリンターである。画像形成装置Dは、導電性を有する無端状の中間転写ベルト33を有する。中間転写ベルト33は、図の左右両側にそれぞれ配置された一対のローラー31,32に掛架されている。ローラー32は不図示のモーターに連結されており、モーターの駆動によってローラー32は反時計回りに回転し、これによって中間転写ベルト33とこれに接するローラー31は従動回転する。ローラー32に支持されているベルト部分の外側には、二次転写ローラー34が圧接している。この二次転写ローラー34と中間転写ベルト33とのニップ部(二次転写領域)において中間転写ベルト33上に形成されたトナー画像が、搬送されてきた用紙Pに転写される。
【0021】
また、ローラー31に支持されているベルト部分の外側には、中間転写ベルト33の表面をクリーニングするクリーニング部材35が設けられている。このクリーニング部材35は中間転写ベルト33を介してローラー31に圧接しており、その接触部で未転写トナーを回収する。
【0022】
ローラー31とローラー32とに掛架された中間転写ベルト33の下側には、中間転写ベルト33の回転方向上流側から順に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4つの作像部2Y,2M,2C,2K(以下、「作像部2」と総称することがある)が配置されている。これらの作像部2では、各色の現像剤をそれぞれ用いて対応する色のトナー画像が作成される。
【0023】
作像部2は、静電潜像担持体として円筒状の感光体(静電潜像担持体)20を有する。そして、感光体20の周囲には、その回転方向(時計回り方向)に沿って順に、帯電器(帯電手段)21、現像装置(現像手段)23、一次転写ローラー24、および感光体クリーニング部材25が配置されている。一次転写ローラー24は中間転写ベルト33を挟んで感光体20に圧接し、ニップ部(一次転写領域)を形成している。また、作像部2の下方には露光装置6が配置されている。露光装置6は、4つの作像部2に対して1つで対応し、不図示の4つの半導体レーザーを各色の画像階調データに応じて変調して、各半導体レーザーから各色に対応するレーザー光を階調データに応じて出射する。露光装置6の構造については後で詳述する。
【0024】
中間転写ベルト33の上方には、各色の現像装置23に補給するトナーを収容したホッパー4Y,4M,4C,4Kがそれぞれ配置されている。また、露光装置6の下部には、給紙装置として給紙カセット50が着脱可能に配置されている。給紙カセット50内に積載収容された用紙(被転写部材)Pは、給紙カセット50の近傍に配置された給紙ローラー51の回転によって最上紙から順に1枚ずつ搬送路に送り出される。給紙カセット50から送り出された用紙Pは、レジストローラー対52に搬送され、ここで所定のタイミングで二次転写領域に送り出される。
【0025】
このような構成の画像形成装置Dにおいて画像形成は次のようにして行われる。まず、各作像部2において、所定の周速度で回転駆動される感光体20の外周面が帯電器21により帯電される。次に、帯電された感光体20の表面に、画像情報に応じた光が露光装置6から投射されて静電潜像が形成される。続いて、この静電潜像は、現像装置23から供給される現像剤としてのトナーにより顕在化される。このようにして感光体20の表面に形成された各色のトナー画像は、感光体20の回転によって一次転写領域に達すると、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの順で、感光体20から中間転写ベルト33上へ転写(一次転写)されて重ねられる。
【0026】
中間転写ベルト33に転写されることなく感光体20上に残留した未転写トナーは、感光体クリーニング部材25で掻き取られ、感光体20の外周面から除去される。
【0027】
重ね合わされた4色のトナー画像は、中間転写ベルト33によって二次転写領域に搬送される。一方、そのタイミングに合わせて、レジストローラー対52から二次転写領域に用紙Pが搬送される。そして、4色のトナー画像が、二次転写領域において中間転写ベルト33から用紙Pに転写(二次転写)される。4色のトナー画像が転写された用紙Pは、定着装置1へ搬送される。定着装置1において用紙Pは、棒状のハロゲンヒータ13を内蔵する定着ローラー11と、加圧ローラー12とのニップ部を通過する。この間に用紙Pは加熱・加圧され、用紙P上のトナー画像は用紙Pに溶融定着する。トナー画像が定着した用紙Pは排出ローラー対53によって排紙トレイ54に排出される。
【0028】
一方、二次転写領域を通過した中間転写ベルト33は、クリーニングブレード35で清掃される。その後、各感光体20及び中間転写ベルト33の回転駆動が停止される。
【0029】
図2に、露光装置6の概略構成図を示す。露光装置6は、筐体60と、筐体60内に設けられたポリゴンミラー61と、第1結像レンズ62と、第2結像レンズ63と、各光路ごとに設けたミラー65Y,65M,65C,65K(以下、「ミラー65」と総称する)と、ミラー66Y,66M,66C(以下、「ミラー35」と総称する)と、ミラー67Cと、第3結像レンズ64Y,64M,64C,64K(以下、「第3結像レンズ64」と総称する)とを有する。ポリゴンミラー61は、プレートに固定したモーターmに取り付けられている。プレートにはさらに放熱板68が取り付けられている。
【0030】
各色の光源(不図示)から出射された光束は、ポリゴンミラー61の同一面に副走査方向(図2の上下方向)に所定の角度を有して導かれ、ポリゴンミラー61の回転に基づいて主走査方向(図2において紙面に対して垂直方向)に等角速度で偏向され、第1結像レンズ62及び第2結像レンズ63を透過した後、光束Bkは第3結像レンズ64Kを透過してミラー65Kで反射され、感光体ドラム20K上を走査・露光する。光束Bcはミラー65Cとミラー66Cで反射され第3結像レンズ64Cを透過し、さらにミラー67Cで反射され、感光体ドラム20C上を走査・露光する。光束Bmはミラー65Mで反射されて第3結像レンズ64Mを透過し、さらにミラー66Mで反射され、感光体ドラム20M上を走査・露光する。光束Byはミラー65Yで反射されて第3結像レンズ64Yを透過し、さらにミラー66Yで反射され、感光体ドラム20Y上を走査・露光する。
【0031】
ここで、画像間の色ずれの検知は、例えば、図3に示す二本の直線の端部同士が鋭角に接続したトナーパターンPy,Pm,Pc,Pkを各作像部2で形成して中間転写ベルト33上に一次転写し、このトナーパターンPy〜Pkを一対の光学センサ36(図1に図示)で検知することにより行われる。例えば、走査線の傾き(スキュー)の検知は、トナーパターンの二本の直線の、中間転写ベルト33の移動方向の長さを、左右のトナーパターンで比較することにより行われ、左右のトナーパターンにおける前記長さの差に基づいて光書き込み系の光学素子の位置調整が行われる。以下、本発明に係る調整機構をスキュー調整を例に説明する。
【0032】
例えば、第3結像レンズ64が副走査方向に走査線を補正可能な副のパワーを備えた光学素子である場合には、スキュー調整は、第3結像レンズ64を光軸に平行な軸を中心として回動させることにより行われる。なお、本実施形態では、スキュー調整は、光束Bkを基準として光束Bc,Bm,Byに対して行うので、スキュー調整機構は光束Bkに対して配置された第3結像レンズ64Kには設けられず、光束Bc,Bm,Byに対して配置された第3結像レンズ64C,33M,33Yに設けられている。なお、光束Bkに対してもスキュー調整を行うようにしてももちろん構わない。
【0033】
図4に、第3結像レンズ64のスキュー調整機構を示す斜視図を示す。保持部材7は、長尺のホルダー71と、ホルダー71の一方端側に取り付けられた被押圧部材72とを有する。長尺の第3結像レンズ64はホルダー71に保持され、ホルダー71の長手方向一方端側はピン73によって回動自在に筐体60に取り付けられている。また、ホルダー71の、被押圧部材72がねじ止めされた長手方向他端側には、さらに筐体60に一方端が固定された引張コイルばね(第1付勢部材)82の他方側が取り付けられている。これにより、ホルダー71は引張コイルばね82によって下方に常に付勢されている。被押圧部材72には、下方に向かうにしたがって外方に突出する傾斜面722を有する傾斜部721が形成されている。なお、本実施形態では保持部材7をホルダー71と被押圧部材72とから構成しているが、ホルダー71と被押圧部材72とを一体成形したものとしても構わない。
【0034】
被押圧部材72及びその周辺の部分斜視図を図5に、側面図を図6にそれぞれ示す。被押圧部材72の傾斜部721に形成された傾斜面722に、略U字状に折曲された板ばね(押圧部材)81の半球状の凸部811が圧接し、筐体60との間でホルダー71を挟持している。また、被押圧部材72の下面には、移動手段9のピン(当接部材)91が当接している。そしてまた、ホルダー71の下方にはストッパー(回動規制部材)84aが設けられ、ホルダー71の下方への所定以上の回動はストッパー84aによって制限される。
【0035】
図7に、移動手段9の概略断面図を示す。移動手段9は、モーターホルダー95と、モーター90と、ピン91と、モーター90の駆動によって回動する回動軸92とを有する。そして、回動軸92の先端に固定された雄ネジ部93が、ピン91に形成された、内周面に雌ネジが螺刻されたネジ穴94に螺合している。モーター90の回動軸92が回動することによって雄ネジ部93が回動し、これによってピン91が軸方向に移動する。なお、ピン91は、モーターホルダー95に形成された円筒状のガイド部96に移動自在に嵌入されている。
【0036】
モーター90は、トナーパターンPy〜Pk(図3に図示)から検知されたスキュー状態に応じて回動制御される。モーター90の回転によってピン91が軸方向外方へ突出すると、ピン91が保持部材7を押圧して保持部材7と共に第3結像レンズ64を上方に押し上げる。一方、モーター90の逆回転によってピン91が軸方向内方へ没すると、引張コイルばね82の付勢力によって保持部材7はピン91に当接しながら下方へ押し下げられる。モーター90としてはステッピングモーターが好適に使用される。
【0037】
このような構成の第3結像レンズ64のスキュー調整機構において、例えば、スキュー調整中に主電源がオフされた場合には、再起動時にピン91を調整基準位置に一旦移動させた後、スキュー調整を行う。図8に、ピン91を調整基準位置とした場合の図を示す。この図では、回動軸92の雄ネジ部93とピン91のネジ穴94との螺合が雄ネジ部93の軸方向外方で外れ、この外れた位置を基準位置としている。
【0038】
なお、回動軸92の雄ネジ部93とピン91のネジ穴94との螺合が外れた状態から、再び螺合した状態に円滑に移行させる観点からは、雄ネジ部93とネジ穴94との螺合が外れた後も、回動軸92の軸芯とネジ穴94の軸芯とが一致するように維持させる必要がある。このためには、雄ネジ部93の軸方向外方端を、モーターホルダー95のガイド部96の外方端よりも軸方向内方に位置させるのが好ましく、下記式から算出される、回動軸92の軸芯とネジ穴94の軸芯との傾きθをできる限り小さくするのがよい。このためには、ピン91とガイド部96との隙間aをできる限り小さくし、ピン91の下端からガイド部96の上端までの距離bをできる限り大きくするのが望ましい。
θ=tan−1(a/b)
(式中、a:ピンとガイド部との隙間,b:ピンの下端からガイド部の上端までの距離)
【0039】
図9に、移動手段の他の実施形態を示す。この図に示す移動手段9で用いるピン97は略U字形状を有し、中央部に貫通孔98が形成され、貫通孔98の内周面に雌ネジが螺刻されている。そして、回動軸92の先端に固定された雄ネジ部93が貫通孔98の雌ネジと螺合し、モーター90の回動軸92が回動することによって雄ネジ部93が回動しピン97が軸方向に移動する。また、ピン97は、前記実施形態と同様に、モーターホルダー95に形成された円筒状のガイド部96に移動自在に嵌入されている。
【0040】
モーター90の回転によってピン97が軸方向外方へ突出すると、ピン97が保持部材7を押圧して、板バネ83の下方への付勢力に抗して保持部材7と共に第3結像レンズ64を上方に押し上げる。一方、モーター90の逆回転によってピン97が軸方向内方へ没すると、板バネ83の付勢力によって保持部材7はピン97に当接しながら下方へ押し下げられる。ただし、ストッパー(回動規制部材)84bによって保持部材7の下方への所定以上の回動は制限される。
【0041】
このような構成のスキュー調整機構において、例えば、スキュー調整中に主電源がオフされた場合には、再起動時にピン97を調整基準位置に一旦移動させた後、スキュー調整を行う。図10に、ピン97を調整基準位置とした場合の図を示す。この図では、回動軸92の雄ネジ部93とピン97の雌ネジとの螺合が雄ネジ部93の軸方向内方で外れ、この外れた位置を基準位置としている。
【0042】
なお、雄ネジ部93とピン97の雌ネジとの螺合が外れると、自重によってピン97が完全に抜け落ちるので、これを防止し雄ネジ部93とピン97の雌ネジとが再度螺合できるように、ピン97を調整基準位置で保持する板バネ(第2付勢部材)85がモーターホルダー95のガイド部96の内周面に設けられている。この板バネ85の付勢力は、ピン97の自重よりも大きく設定されており、これによりピン97の抜け落ちが防止されると共にピン97のがたつきも抑制される。ストッパー84bがない場合には、板バネ85の付勢力は、板バネ83の付勢力とピン97の自重の和よりも大きく設定する必要がある。
【0043】
以上説明した実施形態では、本発明に係る光学素子の位置調整機構をスキュー調整を例に説明したが、本発明に係る光学素子の位置調整機構は、例えば走査線の湾曲や走査線の高次位置ずれ等の画像の色ずれを防止するための光学素子の位置調整に好適に適用できる。また、位置調整対象となる光学素子はレンズに限定されるものではなく、ミラーなど従来公知の光学素子に対しても本発明の調整機構は適用できる。さらに、第1付勢部材及び第2付勢手段としては板ばねの他、コイルバネなど従来公知の付勢部材を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る光学素子の位置調整機構及び走査光学装置では、主電源がオンされた時などに、回動軸を回転させて回動軸の雄ネジ部と当接部材のネジ穴との螺合を外し、この螺合の外れた位置を調整基準位置とするので、例えば、光学素子の位置調整中に主電源がオフされた場合であっても、再起動時に調整基準位置を設定できるようになり、予め設定された調整範囲を超えて光学素子の位置調整が行われることが防止され、安定した位置調整が可能となり有用である。
【符号の説明】
【0045】
D カラープリンター(画像形成装置)
6 露光装置(走査光学装置)
7 保持部材
9 移動手段
60 筐体
64 第3結像レンズ(光学素子)
71 ホルダー
72 被押圧部材
83 板バネ(第1付勢部材)
84a,84b ストッパー(回動規制部材)
85 板バネ(第2付勢部材)
90 モーター
91 ピン(当接部材)
92 回動軸
93 雄ネジ部
94 ネジ穴
95 モーターホルダー
96 ガイド部
97 ピン(当接部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10