(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
<成形装置の全体構成>
本発明の成形装置は、熱成形機である圧空成形機若しくは真空圧空成形機を構成するものである。成形材料である樹脂シートの予熱は、加熱オーブン等を利用する間接加熱、あるいは加熱板に接触させる直接加熱など公知のどのような方式を採用してもよい。
樹脂シートの圧空成形を行う熱成形装置において、圧空ボックスとして、少なくとも冷却用圧縮気体を、送気開口から成形型上部に送出し、送出された上記気体を成形型上部で吸気開口を通じて外部に排気する機構を有し、少なくとも1)上記送気開口からの気体送出を複数の上記送気開口の背後に設けた分配空間から分配して行うか、若しくは2)上記の排気を複数の上記集気開口の背後に設けた集気空間に集気して行うようにし、これを上記機構の一体構造としたものを用いる。
なお上記の圧空ボックスは、上記送気開口又は上記吸気開口に至る導管が、それぞれ上記集気空間又は分配空間を貫通するか又はそれぞれの上記空間の間を貫通して設けることが好ましい。
なお上記の圧空ボックスにおいては、上記送気開口と上記吸気開口の何れかが成形型表面により近い距離位置になるように設けてもよく、それは好ましい。
上記の冷却用圧縮気体としては、樹脂シートの予熱温度と同等またはそれ以下の温度の圧縮気体を圧空空間に送出する。冷却用気体の送出のみが行われ、加熱用気体の送出が行われない場合は、成形型表面温度を樹脂シートの予熱温度以上の高温に調整したものを用いて賦形体の熱処理昇温を行う。冷却用圧縮気体の利用に加え熱処理用のための高温気体が送出される態様等については後述する。
上記の圧空ボックスは、プレス機の天板に固定し、その直下の底板には成形型を固定し、天板と底板の少なくとも何れかを上下可動にして、圧空ボックスと成形型の接合離反を可能にする。
成形用の樹脂シートは、予熱されて成形型上部に持ち込まれ、圧空ボックスの降下あるいは成形型の上昇によりこのシートを挟み込み、圧空ホックスからの送気により賦形がなされ、成形により熱処理され、さらに圧空ホックスからの送気により冷却され、そして圧空ボックスと成形型が離反して賦形体の離型がなされる。なお、離型するまでは、賦形体を成形型へ吸引固定するようにすることが望ましい。
このような構成にすることにより、圧空賦形とほぼ同時に、賦形体を成形型表面より加熱昇温し、続けて圧縮気体の送出を継続させることにより、賦形体の冷却を効果的に行うことができる。
なお、圧空に用いる圧縮気体は、空気、窒素、二酸化炭素など人体および成形物等に無害であれば任意のものを用いることができる。また必要により冷却効果を増強させるために、これらの気体に水分を混入させてもよく、また揮発性の物質、例えばアルコールなどの揮発性物質の微滴を混入させてもよい。
上記の圧空ボックスの具体的な形状及び変形態様等については、この後及び<圧空ボックスについて>の欄で、又、使用する成形型は熱成形に用いられるものならば任意に用いることができるが、望ましい成形型については<成形型についての欄>で詳述する。
【0018】
上記の全体構成例を
図1に示す。この例は、プレス機底板上に成形型構成60が、プレス機天板に排気ポート(排気本体)21及び送気ポート(送気本体)31からなる圧空ボックス30が固定され配置された構成である。なお100は成形材料の樹脂シートである。成形機そのもの及びプレス機、予熱手段、圧縮気体生成装置等は本図から省かれている。
本図では、予熱された樹脂シート100が成形型60の上部に導入された状態を示しているが、この後圧空ボックス30が降下して圧縮気体による圧空賦形と加熱された成形型による熱処理昇温が相次いで行われ、続いて圧縮気体による冷却が行われる。送出ポート31から圧縮気体が送出されるが、賦形と同時あるいは賦形直後のタイミングをはかり排気ポート21の排気バルブを開くと圧空空間の気体は排気更新され効率よく賦形体を冷却することができる。
冷却工程が終わって圧空ボックスが上昇するとともに賦形体の離型が行われる。
成形型構成60は、表面層61と背後層(背後体)62からなる成形型を、加熱熱媒通路65を有する集積プレート66に固定し、収納ボックス67に収納したものである。なお、表面層61は熱浸透率の小さな材料から、また背後層62は熱浸透率の大きな材料からなるものである。
【0019】
なお、圧空ボックスあるいは成形型の移動は、必ずしも垂直な上下動でなくてもよく、それぞれ任意に斜め方向から接合して離反してもよく、また特定の軌道で接合して離反してもよい。なお、賦形手段と成形型の位置関係は相対的なものであり、賦形手段の上昇は成形型の降下と同義であって成形型を降下させてもよく、また両者を倒置して賦形手段を下に成形型上に倒置させてもよい。また、特異な態様として、プレス機を横転させてもよく、重量の大きい成形型等を、軽快に開閉でき好ましい方式として利用できる。
なお、上記のように冷却手段を成形型上部に移動する代わりに、成形型を冷却手段の下部に移動させてもよい。その場合、賦形体を含む成形型を移動させてもよく、加熱板と成形型を保持したプレス機を移動させてもよい。
なお、本発明を構成する熱成形機は、短尺の材料シートを一枚ずつ成形する枚葉成形機であってもよく、また長尺の材料シートを順次成形する連続成形機
でもよい。しかし、後者であることが特に好ましく、本発明の特徴を発揮して高速で効率的な繰り返し成形を可能にする。
【0020】
本発明は、本発明者を発明者とする先行出願、特願2010−118555、特願2010−118490、特願2010−118489、特願2010−118562、特願2011−41294、特願2011−165067、特願2011−165068、特願2011−165069、特願2011−206514、特願2011−206515、特願2011−206516を更に改良して、熱処理を伴う熱成形の製品品質を向上させ、生産性を向上させ、応用分野を拡大するために成されたものである。そして又、それらを具現する新規で具体的な装置形態を提示するためになされたものである。なお、特願2011−206514の装置構成は、図面上では本発明のものと酷似しているが、このものは冷却手段の必要性に応じて、別途に冷却用気体の噴射等の冷却手段を付加する構成となっている。一方、本発明は少なくとも冷却用気体の送出(噴射)を行うもので、加熱用気体の送出(噴射)が必要な場合にも、同じ構造体でそれもできるようにしたものである。
【0021】
<圧空ボックスについて>
公知の通常用いられる圧空ボックスの概念は、樹脂シートと挟んで成形型または成形型群を覆い、樹脂シートとの間に閉鎖空間をつくり、この閉鎖空間に圧縮気体を送り込んで圧空成形をおこなうための道具である。通常は常温圧縮気体により圧空が行われる。
本発明の装置構成と比較するために、上記の公知の知識で考えられる圧空ボックスの外部に別途の気体噴射等による冷却手段を配置して、圧空賦形後にこれを移動させるようにした装置構成を
図3に示す。この圧空ボックスは、送気ポート31、圧縮気体の導入路33、分配空間34、送気口35、送排気面36、圧空空間(ボックスの形成する空間)39からなるものである。
図1の場合と同様に圧空ボックスが降下して、すでに予熱されて導入された樹脂シート100を挟み込み、高温圧縮気体により圧空賦形を行い、圧空ボックスの上昇後に進入してきた気体噴射等の冷却手段40により冷却を行って離型させることができる。
しかし、このような圧空ボックスでは、冷却手段の移動時間が必要であり能率的ではない。なお、圧空ボックスではなく加熱板を用い圧空賦形を行い、成形途中に冷却手段を移動させる類似の構成は、特許4057487号にも開示されているが、このような冷却手段では全成形面積を均一にかつ迅速に冷却することはできない。
【0022】
上記に対して、本発明の構成に用いられる圧空ボックスは、(1)少なくとも冷却用圧縮気体を、送気開口から成形型上部に送出し、送出された上記気体を成形型上部で吸気開口を通じて外部に排気する機構を有し、少なくとも1)上記送気開口からの気体送出を複数の上記送気開口の背後に設けた分配空間から分配して行うか、若しくは2)上記の排気を複数の上記集気開口の背後に設けた集気空間に集気して行うようにし、これを上記機構の一体構造としたものである。
そして、少なくとも常温あるいは、樹脂シートの予熱温度以下の圧縮気体を送出して樹脂シートの賦形及び賦形体の冷却を効果的に行うことができるようにしたものである。
更に上記圧空ボックスは、(2)上記送気開口又は上記吸気開口に至る導管が、それぞれ上記集気空間又は分配空間を貫通するか又はそれぞれの上記空間の間を貫通して設けることが好ましい。
更に上記圧空ボックスは、(3)上記送気開口と上記吸気開口の何れかが成形型表面により近い距離位置になるように設けてもよい。送気開口と吸気開口必ずしも平面上に形成されていなくてもよく、高低差をつけることにより、効果的にあるいは均一に冷却を行うことができ好ましい。
更に上記圧空ボックスは、(4)1成形工程の途中で送気する気体を温度の異なるものに変更して送出するために、上記送気開口から気体を送出する機構が途中から気体を排気する機構として働き、上記吸気開口から吸気して排気する機構が途中から別の温度の気体を送出する機構として働くように構成してもよく、これを好適に利用することができる。
【0023】
上記(2)を含む、(1)の具体的な例を、前記の
図1、及び
図2について詳述する。
図2は
図1の中の圧空ボックスの下面の平面図である。
図1は、予熱された樹脂シート100が成形型60の上部に導入された状態を示しているが、この後圧空ボックス30が降下して、樹脂シート100周辺部を成形収納ボックス67に押さえつけて閉鎖した圧空空間39を形成する。そして外部から導入される圧縮気体は、導入路33及び分配空間34を経由して送気開口35から送出され圧空賦形がなされる。賦形体の昇温熱処理は、熱媒体により熱処理温度以上に加熱保持された成形型60からの伝熱によりなされる。賦形と同時あるいは少し時間をあけて排気操作バルブ29を開くと、圧空空間39の中の気体は集気管28、排気路23等を経由して外部への排気が行われるので、継続して圧縮気体の送出が行われ、賦形体の効果的な冷却が可能となる。
なお、
図1の構造をほぼそのままにして、上段を送気本体とし下段を排気本体として利用することもできる。
【0024】
上記(1)の別の例を
図4に示して説明する。この構成では上記(2)の構成は含まない。この圧空ボックス30は、排気ポート21、排気路23、集気空間24、吸気開口25、操作バルブ29、送気ポート31、圧縮気体の導入路33、分配空間34、送気開口35、送排気面36、圧空空間39、及び操作バルブ41から構成されている。
この構成では、排気ポート21及び送気ポート31は上段下下段の関係になく、それぞれが櫛形をしていて、平面でそれぞれの主要部が互いに入れ子状態にしたものである。
図1の場合と同様に送気ポート31に導入された気体は圧空空間39に送気され、送気された気体は排気ポート21に集気され外部に排気される。
なお、図中の送気ポート31と排気ポート21の間の区画をなくして両者を一体材料で構成してもよく、あるいは両者の間に断熱材を挿入するなどしてもよい。また必要により送気ポート31等にヒーターを付設して加熱
できるようにし送気気体温度な適切にものにするようにしてもよい。
なお、本図の構成で送気ポート31と排気ポート21の機能を入れ替えてもよく、又温度等の異なる気体を順次異なるポートから送出してもよく、それは操作バルブ29、41の切り替え操作により容易に実施できる。
【0025】
上記(3)及び(4)を具体化した例を
図5に示して説明する。この図の圧空ボックス30は、
図1のものと同様に排気ポート21、排気路23、集気空間24、集気管28、吸気開口25、操作バルブ29、送気ポート31、加熱ヒーター32、高温圧縮気体の導入路33、分配空間34、送気開口35、送排気面36、断熱材37、圧空空間39、及び操作バルブ41から構成されている。ここでは、集気管28の先端の流入開口部25の高さが、送排気面36から突出したものとなっている。この高さは成形型の窪みの深さに合わせたものであり、このようにすることにより送気開口35から送られる気体が十分に賦形体表面に届き、効果的で均一な熱処理昇温ができる。なお、加熱ヒーター32は導入された高温気体を保温あるいは加熱するためのものである
そして本図の構成では、成形サイクルの途中で操作バルブ29及び41を切り替え、排気ポート21を送気ポートとして、そして送気ポート31を排気ポートとして働かせることができる。この場合、排気ポート21に常温の圧縮空気を導入して、送気ポート31から排気すれば、送気された空気は十分に賦形体表面に届き、効果的な冷却ができる。
なお、この送気ポート21あるいはその分配空間34内面を、熱浸透率の低いセラミックス等で形成をしてもよく、これにより冷却用気体による熱ロスを減少させることができ好ましい。
なお、この例では排気流入管の先端部は圧空ボックス壁よりも高く突出しているので、圧空ボックスを降下させたとき樹脂シートを突き刺してしまうことになる。しかし、圧空ボックスの降下に先だって真空賦形を先行させればこの事象は全く問題にならない。
なお、このような態様は、集気管28の代わりに送気開口35を含む部分を個別あるいは複数集団で突出させて形成させてもよく同様の効果があり望ましい。また、
図5の構造をほぼそのままにして、上段を送気ポートとし、下段を排気ポートとして構成してもよい。
【0026】
次に、上記の圧空ボックスの特別な実施態様について説明する。本態様の装置構成は、単板形状でボックス形状をなしていない構造体を本発明に用いる圧空ボックスとして用い、他の部材と合わせて、ボックス状空間すなわち圧空空間を形成するものである。
この例を
図6により説明する。本図の圧空ボックス30は、送気ポート31と排気ポート21から構成されたものであるが、
図1、4、5等でこれまでに示したものと違い、スカート形の部分(自由空間を形成する部分)のない単板形状であり、ボックス形状をなしていない。この図の構成は、成形型を成形型より側壁の高い収納ボックスに収納し、予熱されて導入された樹脂シートに成形型側から真空引きを作動させ、その後に圧空ボックス30を降下させ、圧空空間39を形成させたものである。この後の各工程は
図1の圧空ボックスと同様に進めればよい。
本図の圧空ボックス30は、ボックスとしての空間形成機能は、成形型収納ボックスの一部に移転してはいるが、本発明を構成する圧空ボックスであるものとする。
なおこの場合も、
図6の構造をほぼそのままにして、上段を送気ポートとし、下段を排気ポートとして構成してもよい。
【0027】
上記圧空ボックスは、更に下記の様な態様してもよく、これらの態様は好ましく利用できる。
1)1成形サイクルの途中で、同じ送気本体から、送出気体を温度等の異なる気体に変更して送出するようにしてもよい。温度の大きく異なるものに変更する場合は、送気本体の少なくとも内部は熱浸透率の小さな断熱材料を用いることは好ましく、又通路を2つの気体温度の間の適正に温度にすることは好ましい。この構成により、加熱気体により賦形体の熱処理昇温を行いついで低温気体によりその冷却を行うようにしてもよい。なお、圧空賦形は加熱気体でおこなってもよく、又低温気体で行ってもよい。
2)上記各図の基本構造をほぼそのままにして、上段21を送気ポートとし、下段31を排気ポートとして構成してもよい。
3)圧空賦形に予熱された気体を使用できる構成にすることは好ましい。予熱された前記所定の温度以下の圧縮気体を送気して賦形工程を行い、次いで適正所定温度の気体送気により、熱処理昇温、あるいは冷却工程実施できるように構成することができる。このようにすることにより、予熱されたシートを冷却することなく賦形でき、特に過剰予熱で熱固定しやすい延伸結晶性樹脂シート材料などに好適である。 予熱気体を送気するために、該当送気ポートに加熱ヒーターを備え、導入圧縮気体を加熱するようにしてもよい。
4)樹脂シートの予熱を圧空ボックスからの送気により行うことができるよう構成することができる。すなわち、賦形直前又は賦形中の樹脂シートに加熱され気体を序々に送気する構成にしてこれを行うことは好ましい。
5)高温気体の送気を行う場合、常温の圧縮気体を導入して圧空ボックスの機構の中でそれを加熱して送気するように構成することができる。例えば、内部の空気通路を加熱された金属等により空気接触面積の多い空間にして、そこを導入気体を通過させて送気することにより実現できる。
6)賦形体の冷却に、圧縮気体の送出と併せて水あるいはアルコール等の揮発性液体を噴射あるいは噴霧するようにすることも好ましい。この場合、圧空ボックス内等から賦形体に向けてその噴射又は噴霧するノズルを設ければよい。
6)冷却用気体は、常温より低温であることは好ましく、圧縮気体をドライアイス粒塊に潜らせて冷却してもよく、あるいはドライアイスの粉粒を混合して気体噴射してもよく、あるいは断熱膨張の手段を利用して冷却してもよい。
7)上記圧空ボックスからの排気は抵抗がないことが好ましく、吸気口を通じて行う排気を、吸引手段を設けて促進するよう構成されることが好ましい。このような手段の具体例として、例えば吸引排気のブロウワーを付設してもよく、あるいは強力な直進噴射流を利用するアスピレーターの機構を利用してもよい。
【0028】
上記のような圧空ボックスは、本発明者を発明者とする特願2011−165067、出願2011−41294に開示しているもの等を更に改良したものである。また、特願2011−206514に開示するものを補完し、又
空手段と冷却手段を同一化したものである。
本発明の構成に用いる圧空ボックスには下記のような効用がある。1)任意に継続して気体を送出することができ、迅速に冷却工程へ進むことができ、成形サイクルを短くすることができる。2)全成形面を均一にかつ効率的に冷却することができ、均一で精度の高い成形品を得ることができる。3)成形装置全体を簡易に構成することができる。4)強力な冷却を行うことができ、その結果利用できる成形型構成の設計自由度を大きく広げることができ、簡易で低価格成形型も利用できるようになるなどの効用がある。
【0029】
<成形型について>
本発明の装置構成要素として用いられる成形型は、真空排気孔などの公知の熱成形としての必要要素を備えておればよく特に限定するものではない。
しかし、本発明の装置構成要素として用いられる成形型として、熱浸透率(kJ/m
2s
1/2K)が0.01〜25である材料により少なくとも成形用表面を形成させたものを用いることは好ましい。
熱浸透率がこのような範囲にある材料として、プラスチックス、セラミックス、選ばれた小数の種類の金属材料等を挙げることができ、これらは熱成形の金型として通常使われるアルミニウム材、亜鉛合金材等よりも小さな値のものである。好ましい範囲の熱浸透率を有する材料例は表1の中からも選ぶことができる。但し表記は一般的な物質あるいは物体を参考ため示したものであり、利用出来るものをこれらに限るものではない。
なお、上記熱浸透率とその数値限定の意義等については後に「本発明の内容についての補足説明」の欄で説明する。
なお、本発明の構成に望ましい態様とし示す成形型は、本発明者を発明者とする先行出願、特願2010−118555、特願2010−118490、
特願2010−118489、特願2010−118562及び特願2001−065069の何れかに開示しているものである。
【0030】
本発明の装置構成要素として用いられる成形型の更なる特別な態様として、
上記の所定の熱浸透率を有する表面層とこの表面層を背後から定常的に且つ均一に加熱温調する手段から構成されたものを用いることが好ましい。
このためのより具体的な好ましい方法として、1)表面層のそれより大きな熱浸透率を有する材料により、表面層に密接した背後層を設け背後層を加熱温
調する方法、および2)表面層の背後に略全面に密接して加熱手段を設ける方法を挙げることができる。
なおこの場合、表面層形成材料の熱浸透率は20以下であることが好ましく、15以下であることが更に好ましく、10以下であることが更にまた好ましい。またこの表面層の厚みは0.04mm以上であることが必要であり、また0.06mm以上であることが好ましく、0.1mm以上であることが更に好ましい。又同厚みは30mm以下であることが好ましく、10mm以下であることが更に好ましく、5mm以下であることが更に更に好ましい。
【0031】
上記1)の場合は、背後層の熱浸透率は、表面層のそれより大きくし、この背後層に加熱温調手段を付加することが必要である。この加熱手段は公知の゛のような方法でもよく、また背後層の中に設けてもよく、また外部に設けてもよい。背後層からの伝導熱により表面層が一定に加熱される。
そして、背後層の熱浸透率は、3以上であることが好ましく、6以上であることが更に好ましく、10以上であることか更に更に好ましい。また背後層の熱浸透率は表面層のそれより2倍以上であることが好ましく、10倍以上であることが特に好ましい。
なお、背後層の厚みは限定するものではなく、また一定の厚みあるいは形状に限定するものではない。またこの層を単一材料の層に限定するものではなく任意の多層にしてもよい。
図6に上記1)の構造の例を示す。成形型60は、表面層61と背後層62から構成され、63は真空排気孔、64は排気通路、65は温調用の熱媒通路を示している。この図の構成で、アルミニウム材5052の背後層の上に、0.5mmのエポキシ樹脂層をつくり、背後層と表面層を通じ成形面に微細な熱電対を露出させて製作した成形型は高性能である。なお、この熱媒通路などの温調手段はここに設けず、成形型を固定する固定板を任意の加熱手段を設けるようにしてもよい。
【0032】
上記2)の場合は、上記の所定の熱浸透率を有する表面層の背後の略全面に密接して加熱手段を設ける構成である。この場合の表面層の構成は材料、寸法形状ともに上記1)と同じであり、望ましい構成も同じである。加熱手段の形成は、次に限るものではないが、例えば表面層背後にa)面状発熱層の形成、b)面状高伝熱層を形成し特定位置から熱伝導させる方法などがある。背後層についてはその有無、あるいは材質、形状ともに特に制約するものではない。
なお、この上記2)場合の構成においては、背後層72は特に限定するものではなく、加熱手段の機能を阻害すことなく表面層あるいは加熱手段の層を保持できればよく、表面層の形状保持ができて何処かへ固定できればよい。
【0033】
<成形方法について>
前記した本発明の装置を用いて、樹脂シートの予熱工程、賦形工程、この予熱工程よりも高温で熱処理する熱処理工程と、そして冷却工程を備える熱可塑性樹脂シートの成形方法を実施することができる。又これらの工程を高速で進めることができ、長尺の成形材料樹脂シートを用いて効率的な連続成形を行うことができる。
上記の成形工程は、樹脂シートを予熱オーブンあるいは加熱板等で予熱した後、成形型上部に導き、圧空ボックスまたは成形型をそれぞれ上下動させてこの樹脂シート挟み、圧空賦形と賦形体の加熱冷却を行い、圧空ボックスと成形型を離反させて賦形体を離型させることにより行われる。このとき、圧空賦形は、常温ないしは樹脂シートの予熱適温か又はそれ以下の温度の圧縮気体の送出によりなされ、賦形体の加熱は樹脂シートの予熱適温以上の温度に加熱調整された成形型からの伝熱によりなされ、賦形体の冷却は圧空空間への圧縮気体の継続的送出によりなされる。圧空空間への圧縮気体の継続的送出は、圧空を続けながら該排気本体から排気を開始することによりなされる。該排気本体からの排気開始は任意の時点で行うことができ、賦形時から排気してもよく、賦形直後に排気開始してもよく、賦形直後少し時間をおいて排気開始してもよい。これらの最適時間は、用いる成形型および設定温度条件により変わる。
なお、上記の熱成形は次のような具体的な態様変更をおこなってもよく、好ましく利用できる。例えば、1)樹脂シートの予熱温度またはこの温度に近い加熱された圧縮気体の送出により賦形を行い、次いでそれより低い常温等の温度の気体により冷却を行ってもよい。あるいはまた、2)成形位置で、樹脂シートの予熱温度またはこの温度に近い加熱された圧縮気体をゆっくり送出しつつ樹脂シートの予熱を行いながら賦形を行ってもよく、また3)圧空ボックス内に設けたで赤外線照射手段により、樹脂シートの予熱を行いながら賦形を行ってもよい
なお、賦形体の変形を防ぐために、離型までは成形型の真空引きによる賦形体の固定を行うことが望ましい。
【0034】
上記のような成形における装置設定あるいは条件設定は、大きく3つのパターンに分けて説明することができる。
熱処理を伴う成形工程は、成形型の表面温度(T)と成形型の内部温度(S)の変化を見たとき、サインカーブ様の連続成形サイクルを描くことができる。例として、前記のような表面層と背後層からなる成形型を用いた場合を考えてみる。背後層温度をS、成形型表面温度をT、その最高温度をTt 最低温度Tbとする。
パターンAは、Sを、表面温度サイクルのTtとTbの間の一定温度に調整するパターンである。この場合、Ttは高温気体か赤外線照射により到達する温度であり、Tbは冷却手段により到達する温度である。背後層の直接的な温調は行う場合も、行う場合もある。背後そうからあまり熱が逃げない状態で、長時間連続的に成形を続ければ、背後層温度Sは表面温度サイクルのTtとTbに落ち着く。この場合、背後層の熱浸透率があまり大きくなければ、表面層の間近ではSは時間的に直線ではなく、表面層に追従して小さな温度サイクル描く。背後層は積極的に任意に温調することは望ましく、その温度により加熱手段及び冷却手段を最適最短時間にすることができる。
パターンBは、Sを、Tbと同じかそれ以下の一定温度に調整するパターンである。この場合Tbは、主として背後層からの伝熱すなわちSの温度により到達する。冷却手段は必須ではないが使用すればサイクルを縮めることができる。なお、Ttは加熱手段により到達する。
パターンCは、Sを、Ttと同じかそれ以上の一定温度に調整するパターンである。この場合は、の場合Ttは、主として背後層からの伝熱すなわちSの温度により到達する。従って背後層の加熱温調は必須である。上記加熱手段は、
必須ではないが使用すればサイクルを縮めることができる。なお、Tbは冷却手段により到達する。
本発明の成形装置の構成においては、パターンC及びAの成形を特に効率的行うことができる。
【0035】
通常の熱成形は、樹脂シートの予熱、賦形、冷却、離型の過程を経てなされる。これに対して本発明の成形方法では賦形から冷却までの間に、樹脂シートの賦形時以上の高温の熱処理を行うことが特徴であり、またこれを高速連続で実施できることが特徴である。
本発明の方法により広範囲の樹脂で、容易に熱処理された各種成形品の製造が可能である。具体的な用途を挙げると、a)PET等の結晶性樹脂の延伸シートの熱固定を伴う成形、b)結晶核剤添加PET(CPET)等の結晶性樹脂シートの結晶化を伴う成形、あるいはまたc)ポリプロピレンのSPPF成形(固相高圧成形)に伴う残留応力歪緩和してする熱処理成形を提案することができる。
特に、延伸PETでは、耐熱性、透明性、剛性等の機械強度の優れた熱成形品を能率よく生産することができる。又、剛性を利用し省材料の成形品を得ることができる。
(本発明に用いる成形型についての補足説明)
【0036】
(1)<熱浸透率について>
本発明の規定値として用いた熱浸透率(b値)は接触する物体と界面を通過して移動する熱量にかかわる物体の特性値であり、次の式で求められる。
b= (λρC)
1/2 ・・・・・(1)
λ; 熱伝導率(Js
−1m
−1K
−1)
ρ; 密度(kgm
−3)
C; 比熱(Jkg
−1K
−1)
このb値が小さい物体は界面に少ない熱量しか流さず相手物体に大きな温度変化を与えず、また界面間近では相手物体から大きな温度影響をうける。
従って、このb値が小さい材料を成形型表面材料として用いた場合は賦形体か
らの熱を拡散させないので、高温気体と冷却用気体により賦形体を容易に加熱冷却することができる。しかし背後層の熱を容易に表面層表面(賦形体体との界面)に伝えないので、表面温度の均一性が高く、高速で安定な条件設定のためには、表面層の厚みを小さくするか、あるいはこのb値をある程度大きくすることにより、成形材料に合わせて最適にすることができる。
なお、b値の参考例を示すと例えば、アルミニウム材は17〜23程度、鉄材は13〜16程度、銅34程度、不錆鋼(SUS306)は8.0で、多くの合成樹脂は0.2〜0.8程度、多くのセラミックスは1〜20の間に入る。
なお、表1にいくつかの材料のb値を例示する。なお、b値も測定温度により若干違った値を示すが、本願においては、厳密には20℃の測定値にて規定することする。 ただし、20℃から200℃の間の変化に直線性を有しない材料、例えば相変化を伴う蓄熱剤などとの複合材料の場合は、100℃、150℃の値の平均値を採用することとする。 なお、同じ材質でも、発泡体あるいは多孔体などに形状が変われば、この値が大きく変わることは留意を要する。
【表1】
【0037】
(2)<成形型構成の数値限定の意義について>
上記成形型の表面層として熱浸透率b値の大きな表面材料を用いた場合は、賦形体から容易に熱を背後に分散させてしまうので、熱容量の比較的に熱容量の小さい加熱空気や冷却空気では容易に賦形体を加熱冷却できなくなり、この値が10を超える材料である場合は、能率的に熱処理を行う成形を行うことができない。この値は小さいほうが好ましいが、0.01より小さいものは強度など使用に耐える材料がない。
上記の成形型において2層以上の構造とし、表面層の背面層を一定温度に制御して、賦形体を介して加熱気体および冷却気体により昇温降温変化する表面層の成形面温度を所望の基準温度へ迅速に回帰させることができる。
この場合、表面層の厚みが30mmを超える場合は背後層の制御が、上記表面温度と呼応して定常状態に至る時間がかかりすぎ、実施的に効果がない。また、この厚みが0.03mmを下回る場合は背後層の温度の影響を大きく受けて、迅速な賦形体の昇温降温を促進する効果がなくなる。例えば、公知の成形方法において、潤滑離型のために金型に仮に弗素樹脂等のコートが成されることがあったしても、そのコート厚みは30μm以下の薄いものであり、それを厚くする必要もなく又困難もあって、本発明の効果を発揮させるようなものは従来製作されていない。
なお、上記したように単体一材料のものでも良いが、この場合、成形型への直接の温度制御はあってもよく、またなくてよく、いずれであっても所望表面温度の定常化に多少の時間をかければ、所望の成形は可能である。しかし、この場合、熱浸透率b値(kJ/m
2s
1/2K)が0.01〜3の単一材料で構成してされたものでは加熱温調機構がないものが好ましく、またそれが3以上の単一材料で構成されたものは加熱温調機構を備えたものがより好ましく使用できる。
なお、上記の成形型は、真空賦形又は賦形時の排気が可能にする微細孔を有し、真空引き可能なように先記成形型収納ボックスに収納されることが望ましい。
【0038】
(3)<賦形体の温度測定について>
なお、本発明の装置においては、なんらかの方法で成型型表面温度あるいはと型と賦形体の界面温度の変化、または賦形体の温度変化を測定することは重要である。具体的には例えば、成形型の成形面上に、極めて繊細な測定プローブ、例えば線径0.1mm程度の熱電対先端を突出させておいてこれを測定することができる。別の方法としては賦形体を反対面から赤外線温度計非接触で測定する方法がある。しかし、これらには留意すべき点がある。
前記のS線の温度はパターンA、Cでは、成形型自体を積極的に温度調節制御を行うが、それでも成形表面からの距離、あるいは熱源からの距離によっては温度傾斜をもって、成形サイクルを繰り返す中で定常化する値でもある。
賦形材料の熱処理温度あるいは離型可能温度を厳密に考えるとき、これらの温度はここで示される表面温度あるいは界面温度とはかなり乖離があることは留意する必要がある。秒単位あるいはそれ以下の単位で加熱冷却を行う場合は、賦形体の厚み方向で大きな温度傾斜が発生するからである。また、赤外線等で賦形体裏面から温度測定も、材料温度を正確に表すものでなない。また本発明では表面温度(界面温度)で表現しているがこの温度とも乖離があり、相対的な値として考慮する必要がある。
【実施例1】
【0039】
図1及び
図2に示す装置構成で、延伸PETシートの熱処理を伴う成形を行った。
1) 成形材料;ホモポリエチレンテレフタレート樹脂の2.3倍一軸延伸シート(但し 熱固定を行っていないもの)、厚み0.23mmを使用した。
2)成形装置
成形機; 枚葉真空圧空成形機、圧空能力10tonのものを使用した。
圧空ボックス;
図1及び2に示す構造で、アルミニウム製で有効内寸法330× 550mmのボックス体67の中に、アルミニウム製の送気ポート31と 排気ポート21からなる圧空ボックスを装着した。そして気体送排出面 36には間隔30mmの碁盤格子の交点毎に径1φmmの高温気体の送出 口35を穿ち、また
図2に示す配置で集気管28を設けた。排気ポート 21及び集気管28は、圧空空間からの排気の機能を有する。送気ポート 31及び送出開口35は圧縮気体を圧空空間に送出する機能を有する。
成形型;
図1の60に示す表面層/背後層方式のもので、アルミニウムA 5052(b値17.4)を背後層とし、その上にPEEK樹脂(b値 0.35)の0.14mmの表面層をコーティング焼成法で形成させたも のを使用した。
成形物は深さ直径90mm、深さ30mmの丸皿形状物で、成形型外寸を 110mm角としたもの15個をヒーター内包の固定板に固定し、内寸 332×552mmの収納ボックスに収めた。なお、成形型の上面は収納 ボックス側壁より5mm低くなるようにし、又側壁とは1mm間隙を設け た。
温度測定;成形面には細線熱電対先端露出させて這わせ、成形面温度及び賦形体界 面温度を測定できるようにした。
3)成形方法と成形条件;
樹脂シートの予熱;樹脂シートを550℃設定の予熱オーブンで9秒間予熱して移 動させ、成形型上部に乗せた。なお、シート予熱温度は95℃である。
成形型成形面予熱温度; 185℃
圧空ボックスへの導入空気; 約30℃、 元圧力0.4MPa
真空圧空賦形及び熱処理;3.0秒、 圧空圧0.4MPa、
排気本体21からの排気を作動させ、送気本体31からの送気により 行った。
熱処理温度(賦形時最高温度);180℃、
賦形時に上記表面温度は瞬間的に約160℃に低下したが、昇温
してこの温度になった。
送気冷却;1.5秒 圧空圧0.1MPa、
排気ポート21からの排気を作動させ、送気ポート31から常温気体 の送気を続けることにより行った。離型時に表面(界面)温度は再び 約160℃に低下した。
4)比較テスト
a)上記の条件で排気ポート21からの排気を行わず、送気ポート31からの送気 (圧空)のみ続けるテストを行った。
b)上記の条件で排気ポート21からの排気を行わず、圧空ボックスを瞬間的に約 2mm上昇さて送気ポート31からの送気を続けるテストを行った。
5)成形結果;
得られた成形品は良好な形状、透明なものであった。耐熱140℃のシリコンオ イルに2分間浸漬の試験を行い、変形、目立った収縮はなく、耐熱性の優れたも のであった。使用した加熱板では、高温気体による熱処理昇温が容易であること がわかった。
なお、比較テストのa)では、冷却効果がなく、離型時に収縮変形し良好な形 状の成形品とはならなかった。また比較テストのb)では、全成形面を均一に冷 却することが出来ず、特に内部に特に位置する成形品の冷却不足による収縮変形 が大きいことがわかった。
【実施例2】
【0040】
実施例1に示す装置構成で、圧空ボックスの一部変更と使用延伸PETシートを変更して、熱処理を伴う成形を行った。ここでは、樹脂シートの予熱温度を冷やさないように圧空賦形を行った。
1) 成形材料;ホモポリエチレンテレフタレート樹脂の2.7倍一軸延伸シート(但し 熱固定を行っていないもの)、厚み0.21mmを使用した。
2) 成形装置
成型機; 実施例1と同じものを用いた。
圧空ボックス;
図1の送気ポート31に加熱ヒーターを付設し、送気ポートを 軽度に加熱し、軽度に加熱された圧縮気体を導入して、樹脂シート予熱適温と 同温の気体送出ができるようにした。
成形型;実施例1と同じものを用いた。
3)成形方法と成形条件;
樹脂シートの予熱;95℃
実施例1同様にして行った。
成形型表面の予熱温度; 190℃ 圧空空間への送出気体; 圧力0.4MPa
圧空ボックスの送出ポートを95℃に予熱し、約95℃の加熱圧縮気体を導入 して送出し圧空を行った。
真空圧空賦形及び熱処理; 3 .0秒、 圧空圧0.4MPa、
送気ポートからの常温圧縮気体の送気により行った。
熱処理温度(賦形時最高温度);180℃、
賦形時に上記表面温度は瞬間的に約170℃に低下したが、間もなく昇温して この温度になった。
冷却時間 ;4秒
排気本体21からの排気を作動させ、送気本体31から同じ気体の送気を続け ることにより行った。離型時に表面(界面)温度は約160℃に低下した。
4)比較テスト;
(a)排気ポート21からの排気を止めたまま、送気本体31から送気による圧 空を行った。送気流がすぐに止まることになる。
(b)圧空ボックスの加熱ヒーターを作動させず、常温の圧縮気体を導入送出した 他は上記3)と同様にして成形を行った。
(c)予熱オーブンによる予熱を10秒(約106℃)にした他は上記3)と同様 にして成形を行った。
5)成形結果;
上記3)の条件で行った成形では、実施例1と同様に良好な成形品が得られた。賦 形に適切な気体温度でも冷却が可能であることを示している。
なお、比較テスト(a)では成形品は変形したものであり、冷却がなされていない こと示す。(b)では、ほぼ良好なに見えるが細部の成形が悪く、コーナー部が丸く なったものであった。延伸倍率が大きく成形性の悪い材料の場合は、予熱シートを圧 空空気により冷やすことなく賦形する方が良いことを示している。また(c)でも、 同様に細部の成形状態が劣るものであった。これは、また常温程度の気体圧空による 冷却を見込んで、予熱を過剰に行うと、延伸シートの熱固定が進み成形に不都合であ ることを示している。
【実施例3】
【0041】
実施例1に示す装置構成で成形型と操作条件を変更して、実施例1と同じ延伸PETシートの熱処理を伴う成形を行った。
1) 成形材料;ホモポリエチレンテレフタレート樹脂の2.5倍一軸延伸シート(但し 熱固定を行っていないもの)、厚み0.22mmを使用した。
2)成形装置;
成形型;型材料として鋼材としてS45C(b値16.1)を用いた単体構成とし た他は実施例1のものと同形状、同寸法とし、同数のものを、同じ固定板と収 納ボックスを用いて構成した。
3)成形方法と成形条件;
樹脂シートの予熱;95℃
実施例1と同様にして行った。
成形型表面の予熱温度; 195℃
圧空ボックスへの導入気体; 常温、 元圧力0.4MPa
賦形、熱処理、冷却;5秒、 圧空圧0.15MPa、
排気本体21からの排気を作動させながら、送排気本体からの常温圧縮気体の 送気により行った。なお賦形時から成形型側からの真空作動もおこなった。な お、排気は圧力調整バルブを通しておこなった。 成形型表面(界面)温度;約175℃(部位による差の平均)賦形時に瞬時に この温度になり、離型時までほぼ一定温度を示した。
この方法では、賦形、熱処理、及び冷却の工程の明確な境はわからない。
4)比較テスト
上記の条件で排気本体21からの排気を停止して圧空を行った。
5)成形結果;
良好な成形品が得られた。成形品は約100℃の熱水に耐え、熱処理は有効であった。
なお、比較テストでは離型時に収縮変形し、良好な形状の成形品が得られなかった。これは、離型時までに冷却がなされていないことを示している。
本実施例では、熱処理と冷却の過程で同一の表面温度を示しているが、賦形体厚み方向の温度勾配に冷却効果があり、良好な離型が可能になっているものと考えてよい。
【実施例4】
【0042】
実施例1に示す装置構成で成形型と操作条件を変更して、延伸PETシートの熱処理を伴う成形を行った。なお成形材料は実施例3と同じものを用いた。
1) 成形材料; 実施例3と同じものを用いた。
2) 成形装置
成型機; 実施例1と同じものを用いた。
圧空ボックス; 実施例1と同じものを用いた。
成形型;
図1等の60に示す表面層/背後層方式のもので、アルミニウムA 5052(b値17.4)を背後層とし、その上にSUS304(b値 8.0)5.0mmの表面層を形成させたものを使用した。成形物形状、寸 法、数等は実施例1同じにし、同じ固定板と収納ボックスを用いて構成した。
3) 成形方法と成形条件
樹脂シートの予熱;95℃
実施例1と同様にして行った。
成形型表面の予熱温度; 188℃
圧空ボックスへの導入気体; 常温、 元圧力0.4MPa
賦形、熱処理、冷却;4秒、 圧空圧0.15MPa、
排気ポート21からの排気を作動させながら、送気ポートからの常温圧縮気体 の送気により行った。なお賦形時から成形型側からの真空作動もおこなった。 なお、排気は圧力調整バルブを通して行った。
成形型表面(界面)温度;約171℃(部位による差の平均)
賦形時に瞬時にこの温度になり、離型時までほぼ一定温度を示した。
この方法では、賦形、熱処理、及び冷却の工程の明確な境はわからない。
4)比較テスト;上記の条件で排気ポート21からの排気を止めて圧空を行った。
5)成形結果
良好な成形品が得られた。成形品は約100℃の熱水に耐え、熱処理は有効であった。
比較テストでは、冷却効果がなく、離型時に収縮変形し、良好な形状の成形品とはならなかった。
【実施例5】
【0043】
図5に示す装置構成で、実施例1と同じ延伸PETシートを用い、熱処理を伴う熱成形を行った。
1)成形材料; 実施例1と同じものを用いた。
2)成形装置
成型機;実施例1と同じものを用いた。
圧空ボックス;
図4に示す構造のものとした。寸法は実施例1と同じにした。
成形型;実施例1と同じものを用いた。
3)成形方法と成形条件
樹脂シートの予熱;95℃
実施例1と同様にして行った。
成形型表面の予熱温度; 165℃
圧空ボックスから送気気;275℃ (元圧力0.4MPa)
賦形工程; 0.5秒、 圧空圧0.4MPa、
圧空ボックスを降下させ成形型と接合すると同時に送気ポート31から加熱空気 を送気した。なお、圧空ボックスの降下開始と共に成形型からの真空吸引を作動 させた。
熱処理工程;2.3秒
圧空賦形に0.5秒遅れて操作バルブ29を開き排気を行うことにより加熱空気 の圧空空間への送気を続けた。
成形型表面(界面)温度は185℃に達した。
冷却工程; 0.8秒
操作バルブ29及び41を切り替え、導入した常温圧縮空気を排気ポート21か ら送出し続け、送出した空気を送気ポート31に集め排気が続くようにした。成 形型側からの真空作動も続けて行った。
離型時の成形型表面(界面)温度は約160℃まで降下していた。
4)結果
収容ボックスに収容したどの部分の成型型でも変わりなくきれいな成形品が得られ、また1つの成型品のどの部位も変わらず均一に熱処理がなされ、しかも高速で熱処理を伴う成型を行うことができた。