特許第5971512号(P5971512)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5971512
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】車両用操舵装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20160804BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20160804BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20160804BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20160804BHJP
   B62D 117/00 20060101ALN20160804BHJP
【FI】
   B62D6/00
   B62D5/04
   B62D101:00
   B62D113:00
   B62D117:00
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-265154(P2011-265154)
(22)【出願日】2011年12月2日
(65)【公開番号】特開2013-116685(P2013-116685A)
(43)【公開日】2013年6月13日
【審査請求日】2014年11月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(74)【代理人】
【識別番号】100086391
【弁理士】
【氏名又は名称】香山 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】葉山 良平
【審査官】 神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−278826(JP,A)
【文献】 特開2005−053304(JP,A)
【文献】 特開2011−109874(JP,A)
【文献】 特開2008−018911(JP,A)
【文献】 特開2010−274822(JP,A)
【文献】 特開2005−147915(JP,A)
【文献】 特開平11−101659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00 − 6/10
B62D 5/00 − 5/06
B62D 5/07 − 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操向のために操作される操作部材と舵取り機構とが機械的に結合されておらず、転舵輪を転舵するための舵取り機構が転舵用モータによって駆動される車両用操舵装置であって、
前記操作部材の操作角および操作角速度を検出するための角度センサと、
前記転舵輪の転舵角を検出するための転舵角センサと、
車速を検出するための車速検出手段と、
前記角度センサの出力値から目標転舵角を演算する目標転舵角演算手段と、
前記目標転舵角と前記転舵角センサによって検出される転舵角とを用いて、前記転舵用モータをフィードバック制御する制御手段とを含み、
前記目標転舵角演算手段は、
前記操作部材の操作角速度を検出できるが前記操作部材の操作角を検出できない部分的故障が前記角度センサに発生したか否かを判定するセンサ故障判定部と、
前記角度センサに部分的故障が発生したと前記センサ故障判定部が判定していないときには、前記角度センサの出力値から求まる操作角を用いて目標転舵角を演算し、前記角度センサに部分的故障が発生したと前記センサ故障判定部が判定したときには、前記転舵用モータの回転方向が判定直前のまま継続しているものとして、判定直前の目標転舵角と前記車速検出手段によって検出された車速とを用いてその回転方向への目標転舵角を演算し、その後、操作角速度の絶対値が閾値を超える度に、前記転舵用モータの回転方向が反転したとして、その直前の目標転舵角と前記車速検出手段によって検出された車速とを用いてその反転方向への目標転舵角を演算する演算手段とを含む、車両用操舵装置。
【請求項2】
記演算手段は、前記車速検出手段によって検出される車速に応じて前記閾値を変更させる手段を含む、請求項1に記載の車両用操舵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、操向のために操作される操作部材と舵取り機構とが機械的に結合されておらず、転舵用モータによって舵取り機構が駆動される車両用操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
操作部材としてのステアリングホイールと舵取り機構との機械的な結合をなくし、ステアリングホイールの操作角を角度センサによって検出するとともに、そのセンサ出力に応じて制御される転舵用モータ(操舵用アクチュエータ)の駆動力を舵取り機構に伝達するようにしたステア・バイ・ワイヤシステムが提案されている。
ステア・バイ・ワイヤシステムにおいては、ステアリングホイールと舵取り機構との機械的な連結がないので、車両衝突時におけるステアリングホイールの突き上げを防止できるとともに、舵取り機構の構成を簡素化および軽量化することができる。また、ステアリングホイールの配置位置の自由度が増し、さらには、ステアリングホイール以外のレバーまたはペダル等の他の操作手段の採用も可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-278826号公報
【特許文献2】特開2004-90784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記ステア・バイ・ワイヤシステムでは、ステアリングホイールと舵取り機構とが機械的に結合されていないため、転舵用モータ、ステアリングホイールの操作角を検出するための角度センサ等の電気機器が故障すると、操舵制御を行えなくなる。そこで、転舵用モータ、角度センサ等の電気機器を複数設けておき、ある電気機器が故障したときには、その電気機器に代わりに他の故障していない電気機器を用いることにより、操舵不能となるのを回避できるようにしたものが提案されている。しかしながら、このような構成では、各電気機器を複数設ける必要があるため、コストが高くなる。
【0005】
この発明の目的は、操作部材の操作角を検出するための角度センサに、操作角速度を検出できるが操作角を検出できないような部分的故障が発生した場合でも、操作部材の操作角を検出するための他の角度センサを用いることなく、簡易的に操舵制御が行なえるようになる車両用操舵装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、操向のために操作される操作部材(2)と舵取り機構(6)とが機械的に結合されておらず、転舵輪(5)を転舵するための舵取り機構が転舵用モータ(3)によって駆動される車両用操舵装置(1)であって、記操作部材の操作角および操作角速度を検出するための角度センサ(11)と、前記転舵輪の転舵角を検出するための転舵角センサ(13)と、車速を検出するための車速検出手段(14)と、前記角度センサの出力値から目標転舵角を演算する目標転舵角演算手段(41〜45、55)と、前記目標転舵角と前記転舵角センサによって検出される転舵角とを用いて、前記転舵用モータをフィードバック制御する制御手段(46〜54)とを含み、前記目標転舵角演算手段は、前記操作部材の操作角速度を検出できるが前記操作部材の操作角を検出できない部分的故障が前記角度センサに発生したか否かを判定するセンサ故障判定部(55)と、前記角度センサに部分的故障が発生したと前記センサ故障判定部が判定していないときには、前記角度センサの出力値から求まる操作角を用いて目標転舵角を演算し、前記角度センサに部分的故障が発生したと前記センサ故障判定部が判定したときには、前記転舵用モータの回転方向が判定直前のまま継続しているものとして、判定直前の目標転舵角と前記車速検出手段によって検出された車速とを用いてその回転方向への目標転舵角を演算し、その後、操作角速度の絶対値が閾値を超える度に、前記転舵用モータの回転方向が反転したとして、その直前の目標転舵角と前記車速検出手段によって検出された車速とを用いてその反転方向への目標転舵角を演算する演算手段(41〜45)とを含む、車両用操舵装置である。なお、括弧内の英数字は後述の実施形態における対応構成要素等を表すが、むろん、この発明の範囲は当該実施形態に限定されない。以下、この項において同じ。
【0007】
この構成では、操作角速度を検出できるが操作角を検出できないような部分的故障が角度センサに発生した場合でも、操作部材の操作角を検出するための他の角度センサを用いることなく、簡易的に操舵制御が行なえるようになる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記演算手段は、前記車速検出手段によって検出される車速に応じて前記閾値を変更させる手段を含む、請求項1に記載の車両用操舵装置である。この構成では、角度センサに部分的故障が発生しているときに、例えば車速が速いほど閾値を小さくすることができる。これにより、車速が速いほど転舵用モータの回転方向を反転させやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、この発明の一実施形態に係る車両用操舵装置の構成を説明するための図解図である。
図2図2は、ECUの電気的構成を示すブロック図である。
図3図3は、転舵用モータの構成を説明するための図解図である。
図4図4は、転舵用モータ制御部の構成を示すブロック図である。
図5図5は、第2の目標転舵演算部の動作を示すフローチャートである。
図6図6は、反力モータ制御部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る車両用操舵装置の構成を説明するための図解図であり、ステア・バイ・ワイヤシステムの構成が示されている。
この車両用操舵装置1は、運転者が操向のために操作する操作部材としてステアリングホイール2と、ステアリングホイール2の回転操作に応じて駆動される転舵用モータ(操舵用アクチュエータ)3と、転舵用モータ3の駆動力を、舵取り車輪としての前方左右車輪5に伝達するステアリングギヤ4とを備えている。ステアリングホイール2と、転舵用モータ3等を含む舵取り機構6との間には、ステアリングホイール2に加えられた操作トルクが舵取り機構6に機械的に伝達されるような機械的な結合はなく、ステアリングホイール2の操作量(操作角または操作トルク)に応じて転舵用モータ3が駆動制御されることによって、車輪5が転舵されるようになっている。
【0013】
転舵用モータ3は、ブラシレスモータ等の電動モータにより構成されている。この実施形態では、転舵用モータ3は、ブラシレスモータによって構成されている。転舵用モータ3には、転舵用モータ3のロータの回転角を検出するためのレゾルバ等の回転角センサ21が設けられている。
ステアリングギヤ4は、転舵用モータ3の出力シャフトの回転運動をステアリングロッド7の直線運動(車両左右方向の直線運動)に変換する運動変換機構を有する。ステアリングロッド7の動きがタイロッド8およびナックルアーム9を介して車輪5に伝達され、車輪5のトー角(転舵角)が変化する。つまり、舵取り機構6は、転舵用モータ3、ステアリングギヤ4、ステアリングロッド7、タイロッド8およびナックルアーム9から構成されている。ステアリングギヤ4は、公知のものを用いることができ、転舵用モータ3の動きを転舵角が変化するように車輪5に伝達できれば構成は限定されない。
【0014】
この実施形態では、転舵用モータ3が正転方向に回転されると、左方向に車両を換向させる方向(左転舵方向)に車輪5の転舵角が変化し、転舵用モータ3が逆転方向に回転されると、右方向に車両を換向させる方向(右転舵方向)に車輪5の転舵角が変化するものとする。なお、転舵用モータ3が駆動されていない状態では、車輪5がセルフアライメントトルクにより直進操舵位置に復帰できるようにホイールアライメントが設定されている。
【0015】
ステアリングホイール2は、車体側に回転可能に支持された回転シャフト10に連結されている。この回転シャフト10には、ステアリングホイール2に作用する反力トルク(操作反力)を発生する反力モータ(反力アクチュエータ)19が設けられている。この反力モータ19は、回転シャフト10と一体の出力シャフトを有するブラシレスモータ等の電動モータにより構成されている。この実施形態では、反力モータ19は、ブラシレスモータによって構成されている。反力モータ19には、反力モータ19のロータの回転角(ロータ角)を検出するためのレゾルバ等の回転角センサ22が設けられている。
【0016】
車体と回転シャフト10との間には、ステアリングホイール2を直進操舵位置に復帰させる方向の弾力を付与する弾性部材15が設けられている。この弾性部材15は、例えば、回転シャフト10に弾力を付与するバネにより構成できる。反力モータ19が回転シャフト10にトルクを付加していないとき、ステアリングホイール2は、弾性部材15の弾力により、直進操舵位置に復帰する。
【0017】
ステアリングホイール2の操作角(回転角)δh等を検出するために、回転シャフト10の回転角を検出するための角度センサ11が設けられている。この実施形態では、角度センサ11は、回転シャフト10の回転変位量に応じて互いに位相が異なる2種類のパルス列(A相出力信号およびB相出力信号)を出力する光学式ロータリーエンコーダである。
【0018】
また、運転者がステアリングホイール2に作用させる操舵トルクThを検出するために、回転シャフト10により伝達されるトルクを検出するためのトルクセンサ12が設けられている。さらに、車両の舵角(車輪5の転舵角)δを検出するための転舵角センサ13が備えられている。転舵角センサ13は、例えば、転舵角δに対応するステアリングロッド7の作動量を検出するポテンショメータにより構成されている。転舵角センサ13は、例えば、転舵角検出開始時の車輪4の転舵角度位置を基準位置をとして、基準位置からの車輪4の転舵角変化量を転舵角δとして検出する。この実施形態では、左転舵方向に車輪4が転舵されると転舵角δは増加し、右転舵方向に車輪4が転舵されると転舵角δは減少するものとする。したがって、転舵用モータ3が正転方向に回転されると転舵角δは増加し、転舵用モータ3が逆転方向に回転されると転舵角δは減少する。また、車速Vを検出する速度センサ14が設けられている。
【0019】
角度センサ11、トルクセンサ12、速度センサ14および回転角センサ21,22は、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)30にそれぞれ接続されている。ECU30は、転舵用モータ3および反力モータ19を制御する。
図2は、ECU30の電気的構成を示すブロック図である。
ECU30は、マイクロコンピュータ31と、マイクロコンピュータ31によって制御され、転舵用モータ3に電力を供給する駆動回路(インバータ回路)32と、転舵用モータ3に流れるモータ電流を検出する電流検出部33と、マイクロコンピュータ31によって制御され、反力モータ19に電力を供給する駆動回路(インバータ回路)34と、反力モータ19に流れるモータ電流を検出する電流検出部35とを備えている。
【0020】
マイクロコンピュータ31は、CPUおよびメモリ(ROM、RAM、不揮発性メモリなど)を備えており、所定のプログラムを実行することによって、複数の機能処理部として機能するようになっている。この複数の機能処理部には、転舵用モータ3を制御するための転舵用モータ制御部40と、反力モータ19を制御するための反力モータ制御部70とを備えている。
【0021】
転舵用モータ制御部40は、通常時には、速度センサ14によって検出される車速V、角度センサ11の出力信号に基づいて検出される操作角δhおよび転舵角センサ13によって検出される転舵角δに基づいて、駆動回路32を介して転舵用モータ3を駆動することによって、操舵状況に応じた操舵制御を実現する。また、転舵用モータ制御部40は、角度センサ11に後述するような部分的故障が発生したときには、速度センサ14によって検出される車速V、角度センサ11の出力信号に基づいて検出される操作角速度ωh等に基づいて、駆動回路32を介して転舵用モータ3を駆動することによって、簡易的な操舵制御を実現する。
【0022】
反力モータ制御部70は、速度センサ14によって検出される車速V、角度センサ11の出力信号に基づいて検出される操作角δhおよびトルクセンサ12によって検出される操舵トルクThに基づいて、駆動回路34を介して反力モータ19を駆動することによって、操舵状況に応じた反力制御を実現する。
転舵用モータ3は、例えば三相ブラシレスモータであり、図3に図解的に示すように、界磁としてのロータ100と、U相、V相およびW相のステータ巻線101,102,103を含むステータ105とを備えている。転舵用モータ3は、ロータの外部にステータを対向配置したインナーロータ型のものであってもよいし、筒状のロータの内部にステータを対向配置したアウターロータ型のものであってもよい。
【0023】
各相のステータ巻線101,102,103の方向にU軸、V軸およびW軸をとった三相固定座標(UVW座標系)が定義される。また、ロータ100の磁極方向にd軸(磁極軸)をとり、ロータ100の回転平面内においてd軸と直角な方向にq軸(トルク軸)をとった二相回転座標系(dq座標系。実回転座標系)が定義される。dq座標系は、ロータ100とともに回転する回転座標系である。dq座標系では、q軸電流のみがロータ100のトルク発生に寄与するので、d軸電流を零とし、q軸電流を所望のトルクに応じて制御すればよい。ロータ100の回転角(ロータ角(電気角))θ-Sは、U軸に対するd軸の回転角である。dq座標系は、ロータ角θ-Sに従う実回転座標系である。このロータ角θ-Sを用いることによって、UVW座標系とdq座標系との間での座標変換を行うことができる。
【0024】
反力モータ19は、例えば三相ブラシレスモータからなり、転舵用モータ3と同様な構造を有している。
図4は、転舵用モータ制御部40の構成を示すブロック図である。
転舵用モータ制御部40は、操作角検出部41と、操作角速度検出部42と、第1の目標転舵角演算部43と、第2の目標転舵角演算部44と、角度切換部45と、角度偏差演算部46と、PI(比例積分)制御部47と、電流指令値生成部48と、電流偏差演算部49と、PI(比例積分)制御部50と、dq/UVW変換部51と、PWM(Pulse Width Modulation)制御部52と、UVW/dq変換部53と、回転角演算部54と、センサ故障判定部55とを含む。
【0025】
操作角検出部41は、角度センサ11の出力信号に基づいてステアリングホイール2(回転シャフト10)の操作方向(回転方向(正転/逆転))を検出するとともに、ステアリングホイール2の操作角δhを検出する。この実施形態では、左方向への操舵を行う場合にはステアリングホイール2は正転方向(運転者側から見て反時計方向)に回転操作され、右方向への操舵を行なう場合にはステアリングホイール2は逆転方向(運転者側から見て時計方向)に回転操作されるものとする。
【0026】
操作角検出部41は、例えば、操作角検出開始時点でのステアリングホイール2の回転角度位置を基準位置とし、基準位置からのステアリングホイール2の回転量を操作角δhとして検出する。この実施形態では、ステアリングホイール2が正転方向(左操舵方向)に回転されると操作角δhは増加し、ステアリングホイール2が逆転方向(右操舵方向)に回転されると操作角δhは減少するものとする。操作角検出部41によって検出されたステアリングホイール2の操作角δhは、第1の目標転舵角演算部43に与えられる。操作角検出部41によって検出されたステアリングホイール2の操作方向(以下、「操作方向検出値」という)は、センサ故障判定部55に与えられる。
【0027】
操作角速度検出部42は、角度センサ11のA相出力信号またはB相出力信号に基づいてステアリングホイール2の操作角速度ωhを検出するものである。具体的には、操作角速度検出部42は、A相出力信号またはB相出力信号のパルスを一定期間間隔にカウントすることにより、操作角速度ωhを検出する。操作角速度検出部42によって検出されるステアリングホイール2の操作角速度ωhは、第2の目標転舵角演算部44に与えられる。
【0028】
第1の目標転舵角演算部43は、所定の伝達関数Kδ(V)を用いて、操作角検出部41によって検出される操作角δhおよび速度センサ14によって検出される車速Vに応じた第1の目標転舵角δ1を演算するものである。第1の目標転舵角演算部43によって演算された第1の目標転舵角δ1は、センサ故障判定部55に与えられるとともに角度切換部45に与えられる。
【0029】
第2の目標転舵角演算部44は、操作角速度検出部42によって検出される操作角速度ωh、速度センサ14によって検出される車速V等に基づいて、第2の目標転舵角δ2を演算するものである。第2の目標転舵角演算部44によって演算された第2の目標転舵角δ2は、角度切換部45に与えられる。
角度切換部45は、第1の目標転舵角演算部43によって演算される第1の目標転舵角δ1と、第2の目標転舵角演算部44によって演算される第2の目標転舵角δ2とのうちのいずれか一方を選択して、目標転舵角δとして出力するものである。角度切換部45から出力される目標転舵角δは、角度偏差演算部46に与えられる。
【0030】
センサ故障判定部55は、操作角速度ωhを検出できるが操作角δhを検出できないような部分的故障が、角度センサ11に発生したか否かを判定する。具体的には、センサ故障判定部55は、角度センサ11のA相出力信号およびB相出力信号を監視し、両出力信号のいずれか一方が異常となったときに、角度センサ11に部分的故障が発生したと判定する。なお、角度センサ11のA相出力信号およびB相出力信号の両方が異常となったときには、センサ故障判定部55は、角度センサ11に操作角および操作角速度の両方を検出できない故障が発生したと判定し、転舵用モータ制御部40の動作を停止させる。
【0031】
センサ故障判定部55は、角度センサ11に部分的故障が発生したと判定したときには、制御モードを第1制御モードから第2制御モードに切り換えるためのモード切換指令を生成する。つまり、センサ故障判定部55は、角度センサ11の部分的故障が生じていないと判定している場合(通常時)には、制御モードを第1制御モードに設定する。一方、角度センサ11の部分的故障が生じていると判定した場合(部分的故障時)には、センサ故障判定部55は、制御モードを第1制御モードから第2制御モードに切換える。
【0032】
センサ故障判定部55からのモード切換指令は、角度切換部45、操作角速度検出部42および第2の目標転舵角演算部44に与えられる。角度切換部45は、第1制御モードにおいては、第1の目標転舵角δ1を選択して目標転舵角δとして出力する。一方、第2制御モードにおいては、角度切換部45は、第2の目標転舵角δ2を選択して目標転舵角δとして出力する。
【0033】
また、センサ故障判定部55は、角度センサ11の部分的故障を検出したときには、角度センサ11のA相出力信号とB相出力信号のうちのいずれが異常であるかを示す異常信号識別信号を、モード切換指令とともに操作角速度検出部42に与える。操作角速度検出部42は、センサ故障判定部56からのモード切換指令および異常信号識別信号を受信すると、角度センサ11のA相出力信号とB相出力信号のうち正常な一方の出力信号に基づいて、操作角速度ωhを検出する。
【0034】
また、センサ故障判定部55は、制御モードが第1制御モードであるときに、操作角検出部41から与えられる操作方向検出値および第1の目標転舵角演算部43から与えられる第1の目標転舵角δ1をメモリに記憶する。メモリには、所定期間分の操作方向検出値および第1の目標転舵角δ1が記憶されるようになっている。センサ故障判定部55は、角度センサ11の部分的故障を検出したときには、角度センサ11の部分的故障を検出する直前に回転方向検出部42によって検出された操作方向検出値および第1の目標転舵角演算部43によって演算された第1の目標転舵角δ1を、第2の目標転舵角演算部44に与える。
【0035】
第2の目標転舵角演算部44は、センサ故障判定部55からのモード切換指令とともに、ステアリングホイール2の操作方向および第1の目標転舵角δ1を受信すると、受信した操作方向および第1の目標転舵角δ1と、操作角速度検出部42によって検出される操作角速度ωhと、速度センサ14によって検出される車速Vとに基づいて、第2の目標転舵角δ2を演算する。第2の目標転舵角演算部44の動作の詳細については後述する。
【0036】
回転角演算部54は、回転角センサ21の出力信号に基づいて、転舵用モータ3のロータの回転角(電気角。以下、「ロータ角θ」という。)を演算する。
角度偏差演算部46は、角度切換部45から出力される目標転舵角δと、転舵角センサ13によって検出される転舵角δとの偏差を演算する。PI制御部47は、角度偏差演算部46によって演算された角度偏差に対するPI演算を行なう。
【0037】
電流指令値生成部48は、PI制御部47の演算結果に基づいて、dq座標系の座標軸に流すべき電流値を電流指令値として生成する。具体的には、電流指令値生成部48は、d軸電流指令値Iおよびq軸電流指令値I(以下、これらを総称するときには「二相電流指令値Idq」という。)を生成する。さらに具体的には、電流指令値生成部48は、q軸電流指令値Iを有意値とする一方で、d軸電流指令値Iを零とする。より具体的には、電流指令値生成部48は、PI制御部47の演算結果に基づいて、q軸電流指令値Iを生成する。電流指令値生成部48によって生成された二相電流指令値Idqは、電流偏差演算部49に与えられる。
【0038】
電流検出部33は、転舵用モータ3のU相電流I、V相電流IおよびW相電流I(以下、これらを総称するときは、「三相検出電流IUVW」という。)を検出する。電流検出部33によって検出された三相検出電流IUVWは、UVW/dq変換部53に与えられる。
UVW/dq変換部53は、電流検出部33によって検出されるUVW座標系の三相検出電流IUVW(U相電流I、V相電流IおよびW相電流I)を、dq座標系の二相検出電流IおよびI(以下総称するときには「二相検出電流Idq」という。)に変換する。これらが電流偏差演算部49に与えられるようになっている。UVW/dq変換部53における座標変換には、回転角演算部54によって演算されたロータ角θが用いられる。
【0039】
電流偏差演算部49は、電流指令値生成部48によって生成される二相電流指令値Idqと、UVW/dq変換部53から与えられる二相検出電流Idqとの偏差を演算する。より具体的には、電流偏差演算部49は、d軸電流指令値Iに対するd軸検出電流Iの偏差およびq軸電流指令値Iに対するq軸検出電流Iの偏差を演算する。これらの偏差は、PI制御部50に与えられる。
【0040】
PI制御部50は、電流偏差演算部49によって演算された電流偏差に対するPI演算を行なうことにより、転舵用モータ3に印加すべき二相電圧指令値Vdq(d軸電圧指令値Vおよびq軸電圧指令値V)を生成する。この二相電圧指令値Vdqは、dq/UVW変換部51に与えられる。
dq/UVW変換部51は、二相電圧指令値Vdqを三相電圧指令値VUVWに変換する。この座標変換には、回転角演算部54によって演算されたロータ角θが用いられる。三相電圧指令値VUVWは、U相電圧指令値V、V相電圧指令値VおよびW相電圧指令値Vからなる。この三相電圧指令値VUVWは、PWM制御部52に与えられる。
【0041】
PWM制御部52は、U相電圧指令値V、V相電圧指令値VおよびW相電圧指令値Vにそれぞれ対応するデューティのU相PWM制御信号、V相PWM制御信号およびW相PWM制御信号を生成し、駆動回路32に供給する。
駆動回路32は、U相、V相およびW相に対応した三相インバータ回路からなる。このインバータ回路を構成するパワー素子がPWM制御部52から与えられるPWM制御信号によって制御されることにより、三相電圧指令値VUVWに相当する電圧が転舵用モータ3の各相のステータ巻線101,102、103に印加されることになる。
【0042】
角度偏差演算部46およびPI制御部47は、角度フィードバック制御手段を構成している。この角度フィードバック制御手段の働きによって、車輪5の転舵角δが、目標転舵角δに近づくように制御される。また、電流偏差演算部49およびPI制御部50は、電流フィードバック制御手段を構成している。この電流フィードバック制御手段の働きによって、転舵用モータ3に流れるモータ電流が、電流指令値生成部48によって生成された二相電流指令値Idqに近づくように制御される。
【0043】
図5は、第2の目標転舵角演算部44の動作を示すフローチャートである。
第2の目標転舵角演算部44は、センサ故障判定部55から、モード切換指令とともに、角度センサ11の部分的故障が検出される直前の操作方向検出値および第1の目標転舵角δ1を受信すると(ステップS1)、受信した第1の目標転舵角δ1を第2の目標転舵角の前回値δ2n−1として設定する(ステップS2)。
【0044】
次に、第2の目標転舵角演算部44は、受信した操作方向検出値に基づいて、転舵用モータ3を回転させるべき回転方向(以下、「転舵用モータ3の回転方向」という。)を決定する(ステップS3)。つまり、第2の目標転舵角演算部44は、転舵方向を決定する。具体的には、第2の目標転舵角演算部44は、受信した操作方向検出値が正転方向(左操舵方向)を表している場合には、転舵用モータ3の回転方向を正転方向(左転舵方向)に決定し、受信した操作方向検出値が逆転方向(右操舵方向)を表している場合には、転舵用モータ3の回転方向を逆転方向(右転舵方向)に決定する。これにより、転舵用モータ3の回転方向(転舵方向)は、角度センサ11に部分的故障が発生する直前の操舵方向に対応した方向に決定される。
【0045】
転舵用モータ3の回転方向が正転方向(左転舵方向)に決定された場合には(ステップS4:YES)、第2の目標転舵角演算部44は、転舵用モータ3の回転方向(転舵方向)を記憶するためのフラグFをセット(F=1)する(ステップS5)。そして、第2の目標転舵角演算部44は、次式(1)に基づいて、第2の目標転舵角の今回値δ2を演算して、角度切換部45に与える(ステップS6)。そして、ステップS9に移行する。
【0046】
δ2=δ2n−1+α(V) …(1)
前記式(1)において、α(V)(>0)は、転舵速度を制御するための転舵速度制御値であり、車速Vに応じて変更される。具体的には、車速Vが大きいほど転舵速度制御値α(V)は小さな値に設定される。これにより、車速Vが大きいほど転舵速度が遅くされる。転舵速度制御値α(V)は、転舵角速度が例えば90deg/sを中心とした所定範囲内の速度となるような値に設定される。前記式(1)に基づいて第2の目標転舵角δ2が演算される場合には、第2の目標転舵角δ2は増加するため、転舵用モータ3は、正転方向(左転舵方向)に、転舵速度制御値α(V)の大きさに応じた回転速度で回転されることになる。
【0047】
前記ステップS3において、転舵用モータ3の回転方向が逆転方向(右転舵方向)に決定された場合には(ステップS4:NO)、第2の目標転舵角演算部44は、フラグFをリセット(F=0)する(ステップS7)。そして、第2の目標転舵角演算部44は、次式(2)に基づいて、第2の目標転舵角の今回値δ2を演算して、角度切換部45に与える(ステップS8)。そして、ステップS9に移行する。
【0048】
δ2=δ2n−1−α(V) …(2)
前記式(2)に基づいて第2の目標転舵角δ2が演算される場合には、第2の目標転舵角δ2は減少するため、転舵用モータ3は、逆転方向(右転舵方向)に、転舵速度制御値α(V)の大きさに応じた回転速度で回転されることになる。
ステップS9では、第2の目標転舵角演算部44は、操作角速度検出部42によって検出される操作角速度ωhの絶対値|ωh|が、閾値β(V)より大きいか否かを判別する。閾値β(V)(>0)は、車速Vに応じて変更される。具体的には、車速Vが大きいほど閾値β(V)は小さい値に設定される。閾値β(V)は、例えば500deg/sを中心とした所定範囲内の値となるように設定される。
【0049】
操作角速度ωhの絶対値|ωh|が閾値β(V)以下である場合には(ステップS9:NO)、第2の目標転舵角演算部44は、現在設定されている第2の目標転舵角の今回値δ2を、第2の目標転舵角の前回値δ2n−1として設定した後(ステップS10)、フラグFがセット(F=1)されているか否かを判別する(ステップS11)。フラグFがセットされている場合には(ステップS11:YES)、転舵用モータ3を現在の回転方向(左転舵方向)を維持したまま回転させるために、ステップS6に戻る。一方、フラグFがリセットされている場合には(ステップS11:NO)、転舵用モータ3を現在の回転方向(右転舵方向)を維持したまま回転させるために、ステップS8に戻る。
【0050】
前記ステップS9において、操作角速度ωhの絶対値|ωh|が閾値β(V)より大きいと判別された場合には(ステップS9:YES)、第2の目標転舵角演算部44は、現在の転舵方向とは反対方向にステアリングホイール2が操作されたと判断し、転舵方向を反転させるための処理を行なう。
すなわち、第2の目標転舵角演算部44は、まず、現在設定されている第2の目標転舵角の今回値δ2を、第2の目標転舵角の前回値δ2n−1として設定した後(ステップS12)、フラグFがセット(F=1)されているか否かを判別する(ステップS13)。フラグFがセットされている場合には(ステップS13:YES)、第2の目標転舵角演算部44は、フラグFをリセット(F=0)した後(ステップS14)、転舵用モータ3を現在の回転方向(左転舵方向)とは反対方向(右転舵方向)に回転させるために、ステップS8に移行する。これにより、転舵方向が反転される。
【0051】
一方、フラグFがリセットされている場合には(ステップS13:NO)、第2の目標転舵角演算部44は、フラグFをセット(F=1)した後(ステップS15)、転舵用モータ3を現在の回転方向(右転舵方向)とは反対方向(左転舵方向)に回転させるために、ステップS6に移行する。これにより、転舵方向が反転される。
第1制御モード時には、第1の目標転舵角演算部43によって演算される第1の目標転舵角δ1(=δ)が、転舵角センサ13によって検出される転舵角δに収束するようにフィードバック制御が行なわれる。つまり、第1制御モードでは、操作角検出部41によって検出される操作角δhおよび速度センサ14によって検出される車速Vに基づいて演算される第1の目標転舵角δ1(=δ)と、転舵角センサ13によって検出される転舵角δとを用いて転舵用モータ3が制御されることにより、操舵状況に応じた適切な操舵制御が行われる。
【0052】
一方、第2制御モード時には、第2の目標転舵角演算部44によって演算される第2の目標転舵角δ2(=δ)が、転舵角センサ13によって検出される転舵角δに収束するようにフィードバック制御が行なわれる。つまり、制御モードが第1制御モードから第2制御モードに切換えられると、角度センサ11に部分故障が発生する直前のステアリングホイール2の操作方向に対応する方向に転舵用モータ3が回転駆動される。この際、転舵用モータ3の回転速度(転舵速度)は、車速Vが速いほど遅くされる。これにより、車速Vが速いときに転舵角変化が大きくなるのを抑制することができるようになる。
【0053】
そして、ステアリングホイール2の操作角速度ωhの絶対値が閾値β(V)を超えると、現在の転舵方向とは逆方向にステアリングホイール2を運転者が操作したと判断され、転舵用モータ3の回転方向(転舵方向)が反転される。この場合も、転舵用モータ3の回転速度(転舵速度)は、車速Vが速いほど遅くされる。なお、閾値β(V)は、車速Vが速いほど小さな値に設定される。これにより、車速Vが速いほど転舵用モータ3の回転方向(転舵方向)を反転されやすくすることができる。
【0054】
転舵用モータ3の回転方向が反転された後において、ステアリングホイール2の操作角速度ωhの絶対値が閾値β(V)を超えると、現在の転舵方向とは逆方向にステアリングホイール2を運転者が操作したと判断され、転舵用モータ3の回転方向が反転される。このような動作が繰り返し行なわれる。したがって、角度センサ11に部分的故障が発生した場合にも、簡易的に操舵制御を行なうことができる。これにより、角度センサ11に部分的故障が発生した場合に、例えば、直線道路に沿った走行、路側帯へのレーン変更が可能となる。
【0055】
図6は、反力モータ制御部70の構成を示すブロック図である。
反力モータ制御部70は、目標反力トルク演算部71と、電流指令値生成部72と、電流偏差演算部73と、PI(比例積分)制御部74と、dq/UVW変換部75と、PWM制御部76と、UVW/dq変換部77と、回転角演算部78とを含む。
回転角演算部78は、回転角センサ22の出力信号に基づいて、反力モータ19のロータの回転角(電気角。以下、「ロータ角θ」という。)を演算する。
【0056】
目標反力トルク演算部71は、速度センサ14によって検出される車速V、転舵用モータ制御部40内の操作角演算部41によって検出される操作角δhおよびトルクセンサ12によって検出される操舵トルクThに基づいて、目標反力トルクTを演算する。例えば、目標反力トルク演算部71は、操舵角δhおよび車速Vに基づいて目標反力トルク基本値を求め、この目標反力トルク基本値に対して操舵トルクThに応じたゲインを乗じることにより、目標反力トルクTを演算する。
【0057】
電流指令値生成部72は、目標反力トルク演算部71によって演算された目標反力トルクTに基づいて、dq座標系の座標軸に流すべき電流値を電流指令値として生成する。具体的には、電流指令値生成部72は、d軸電流指令値iおよびq軸電流指令値i(以下、これらを総称するときには「二相電流指令値idq」という。)を生成する。さらに具体的には、電流指令値生成部72は、q軸電流指令値iを有意値とする一方で、d軸電流指令値iを零とする。より具体的には、電流指令値生成部72は、目標反力トルク演算部71によって演算された目標反力トルクTに基づいて、q軸電流指令値iを生成する。電流指令値生成部72によって生成された二相電流指令値idqは、電流偏差演算部73に与えられる。
【0058】
電流検出部35は、反力モータ19のU相電流i、V相電流iおよびW相電流i(以下、これらを総称するときは、「三相検出電流iUVW」という。)を検出する。電流検出部35によって検出された三相検出電流iUVWは、UVW/dq変換部77に与えられる。
UVW/dq変換部77は、電流検出部35によって検出されるUVW座標系の三相検出電流iUVW(U相電流i、V相電流iおよびW相電流i)をdq座標系の二相検出電流iおよびi(以下総称するときには「二相検出電流idq」という。)に変換する。これらが電流偏差演算部73に与えられるようになっている。UVW/dq変換部77における座標変換には、回転角演算部78によって演算されたロータ角θが用いられる。
【0059】
電流偏差演算部73は、電流指令値生成部72によって生成される二相電流指令値idqと、UVW/dq変換部77から与えられる二相検出電流idqとの偏差を演算する。より具体的には、電流偏差演算部73は、d軸電流指令値iに対するd軸検出電流iの偏差およびq軸電流指令値iに対するq軸検出電流iの偏差を演算する。これらの偏差は、PI制御部74に与えられる。
【0060】
PI制御部74は、電流偏差演算部73によって演算された電流偏差に対するPI演算を行なうことにより、反力モータ19に印加すべき二相電圧指令値vdq(d軸電圧指令値vおよびq軸電圧指令値v)を生成する。この二相電圧指令値vdqは、dq/UVW変換部75に与えられる。
dq/UVW変換部75は、二相電圧指令値vdqを三相電圧指令値vUVWに変換する。この座標変換には、回転角演算部78によって演算されたロータ角θが用いられる。
三相電圧指令値vUVWは、U相電圧指令値v、V相電圧指令値vおよびW相電圧指令値vからなる。この三相電圧指令値vUVWは、PWM制御部76に与えられる。
【0061】
PWM制御部76は、U相電圧指令値v、V相電圧指令値vおよびW相電圧指令値vにそれぞれ対応するデューティのU相PWM制御信号、V相PWM制御信号およびW相PWM制御信号を生成し、駆動回路34に供給する。
駆動回路34は、U相、V相およびW相に対応した三相インバータ回路からなる。このインバータ回路を構成するパワー素子がPWM制御部76から与えられるPWM制御信号によって制御されることにより、三相電圧指令値vUVWに相当する電圧が反力モータ19の各相のステータ巻線に印加されることになる。
【0062】
電流偏差演算部73およびPI制御部74は、電流フィードバック制御手段を構成している。この電流フィードバック制御手段の働きによって、反力モータ19に流れるモータ電流が、電流指令値生成部72によって生成された二相電流指令値idqに近づくように制御される。
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、制御モードが第1制御モードから第2制御モードに切換えられた直後においては、角度センサ11に部分故障が発生する直前のステアリングホイール2の回転方向に対応する方向に転舵用モータ3が回転されているが、予め定められた回転方向に転舵用モータ3を回転させるようにしてもよい。
【0063】
また、前述の実施形態では、転舵速度制御値α(V)は、車速Vに応じて変更されているが、予め設定された固定値であってもよい。同様に、閾値β(V)は、車速Vに応じて変更されているが、予め設定された固定値であってもよい。
また、前述の実施形態では、転舵用モータ制御部40は、目標転舵角を演算し、実転舵角が目標転舵角に等しくなるように転舵用モータ3を制御(位置制御)しているが、目標転舵速度を演算し、実転舵速度が目標転舵速度に等しくなるように転舵用モータ3を制御(速度制御)するようにしてもよい。
【0064】
また、PI制御部47,50,74は、PID(比例積分微分)制御を行なうPID制御部であってもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0065】
1…車両用操舵装置、2…ステアリングホイール、3…転舵用モータ、6…舵取り機構、11…角度センサ、31…マイクロコンピュータ、40…転舵用モータ制御部、41…操作角検出部、42…操作角速度検出部、43…第1の目標転舵角演算部、44…第2の目標転舵角演算部、45…角度切換部、55…センサ故障判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6