特許第5971517号(P5971517)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TOTO株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5971517-固体酸化物型燃料電池装置 図000002
  • 特許5971517-固体酸化物型燃料電池装置 図000003
  • 特許5971517-固体酸化物型燃料電池装置 図000004
  • 特許5971517-固体酸化物型燃料電池装置 図000005
  • 特許5971517-固体酸化物型燃料電池装置 図000006
  • 特許5971517-固体酸化物型燃料電池装置 図000007
  • 特許5971517-固体酸化物型燃料電池装置 図000008
  • 特許5971517-固体酸化物型燃料電池装置 図000009
  • 特許5971517-固体酸化物型燃料電池装置 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5971517
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】固体酸化物型燃料電池装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/24 20160101AFI20160804BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20160804BHJP
   H01M 8/2485 20160101ALI20160804BHJP
   H01M 8/0271 20160101ALI20160804BHJP
【FI】
   H01M8/24 Z
   H01M8/12
   H01M8/24 S
   H01M8/02 S
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-74494(P2012-74494)
(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公開番号】特開2013-206712(P2013-206712A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(72)【発明者】
【氏名】西願 修一郎
(72)【発明者】
【氏名】太田 真登
(72)【発明者】
【氏名】小林 千尋
(72)【発明者】
【氏名】川上 晃
【審査官】 佐藤 知絵
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−511996(JP,A)
【文献】 特開2011−216282(JP,A)
【文献】 特表2012−506613(JP,A)
【文献】 特開平4−47672(JP,A)
【文献】 特表2011−519113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/24
H01M 8/0271
H01M 8/12
H01M 8/2485
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガス又は酸化剤ガスの一方のガスを燃料電池セルの内側電極に供給し、燃料ガス又は酸化剤ガスの他方のガスを燃料電池セルの外側電極に供給して、内側電極、外側電極、及び内側電極と外側電極との間に配置した電解質層を利用して発電反応を生じさせる固体酸化物型燃料電池装置であって、
前記燃料電池セルを内部に収容するケーシングと、
上板に設けられた開口を介して、前記一方のガスを前記燃料電池セルの内側に設けられたセル内ガス流路に供給するガスマニホールドと
前記燃料電池セルを前記上板に固定する固定部材と、を備え、
前記燃料電池セルの下端には、前記内側電極又は前記外側電極と電気的に接続し、且つ、前記セル内ガス流路と連通する端子内ガス流路を有する電極端子が設けられ、
前記固定部材の上面と前記電極端子は、前記一方のガスが前記セル内ガス流路及び前記端子内ガス流路の外部に漏れないようにシールする、ホウ酸を含有するガラスが用いられたシール材を介して接着され
前記固定部材は、前記シール材から蒸発するホウ素又はホウ素含有物質を吸着可能な材料からなり、
前記電極端子の下端は前記シール材よりも下方に位置するように前記シール材を貫通するように設けられるとともに、前記固定部材の下端は前記開口を貫通して前記ガスマニホールドの上板よりも下方に位置することを特徴とする固体酸化物型燃料電池装置。
【請求項2】
前記シール材から前記固定部材に向かう前記他方のガスの気流を生成する気流生成部を、さらに備えることを特徴とする請求項記載の固体酸化物型燃料電池装置。
【請求項3】
前記気流生成部は、前記シール材を基準にして、前記燃料電池セル側から前記固定部材側に向かう気流を生成する、ことを特徴とする請求項記載の固体酸化物型燃料電池装置。
【請求項4】
前記気流生成部は、前記シール材を挟んで前記固定部材の反対側にエアカーテンを形成するように気流を生成する、ことを特徴とする請求項記載の固体酸化物型燃料電池装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスと酸化剤ガスにより発電を行う固体酸化物型燃料電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料ガス(水素含有ガス)と空気(酸素含有ガス、酸化剤ガス)とを用いて電力を得ることができる複数の単セルをケーシング内に収容し、それら複数の単セルに燃料ガスと空気とを供給して発電する燃料電池装置が種々提案されている。このような燃料電池装置のうち、固体酸化物型燃料電池装置は、作動時の温度が700度から1000度近くにまで上昇するため、部品をシールする部材としてガラスシール材が用いられる。下記特許文献1には、燃料電池セルとマニホールドとの間を、ガラスシール材でシールする固体酸化物型燃料電池装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−238431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ガラスシール材のシール性を高めるために、ガラスシール材にガラスを軟化させるホウ酸を含有させることがある。しかしながら、ガラスシール材にホウ酸を含有すると、固体酸化物型燃料電池装置の運転により装置内の温度が上昇したときに、ガラスシール材からホウ素又はホウ素含有物質が蒸発するおそれがある。ホウ素又はホウ素含有物質が蒸発すると、酸化剤ガスとともにホウ素又はホウ素含有物質がセル外側の電極と電解質層との境界である三相界面に付着する。また、蒸発したホウ素又はホウ素含有物質が排ガス中に混入し、排ガスから回収される水に溶け込むことになる。排ガスから回収された水は改質反応に使用されるため、その水に溶け込んだホウ素又はホウ素含有物質は水蒸気として燃料電池セル内に流入し、燃料電池セル内側の電極と電解質層との境界である三相界面に付着してしまう。三相界面にホウ素が付着すると、三相界面でのイオン化反応が妨げられるため、発電性能が低下するおそれがある。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、燃料ガスと酸化剤ガスにより発電を行う固体酸化物型燃料電池装置であって、発電性能の低下を抑制することができる固体酸化物型燃料電池装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明に係る固体酸化物型燃料電池装置は、燃料ガス又は酸化剤ガスの一方のガスを燃料電池セルの内側電極に供給し、燃料ガス又は酸化剤ガスの他方のガスを燃料電池セルの外側電極に供給して、内側電極、外側電極、及び内側電極と外側電極との間に配置した電解質層を利用して発電反応を生じさせる固体酸化物型燃料電池装置であって、前記燃料電池セルを内部に収容するケーシングと、上板に設けられた開口を介して、前記一方のガスを前記燃料電池セルの内側に供給するガスマニホールドと、前記燃料電池セルを前記上板に固定する固定部材と、を備え、前記一方のガスが、前記ガスマニホールドの内部から前記燃料電池セルの内側へと流れるガス流路が形成されており、前記燃料電池セルの下端には、前記内側電極又は前記外側電極と電気的に接続し、且つ、前記燃料電池セルの内側のガス流路と連通するガス流路を中心部に有する電極端子が設けられ、前記固定部材の上面と前記電極端子とは、前記燃料電池セルの内側に供給される前記一方のガスが前記ガス流路の外部に漏れないようにシールする、ホウ酸を含有するガラスが用いられたシール材により接着され前記固定部材は、前記シール材から蒸発するホウ素又はホウ素含有物質を吸着可能な材料からなり、前記電極端子の下端は前記シール材よりも下方に位置するとともに、前記固定部材の下端は前記開口を介して前記ガスマニホールドの上板よりも下方に位置する
【0007】
本発明では、ガラスシール材を利用する燃料電池セルユニットと、ホウ素又はホウ素含有物質を捕獲する固定部材とを備えることで、燃料電池セルユニットにおけるシール性を高めることができるとともに、固体酸化物型燃料電池装置の運転により装置内の温度が上昇して、ガラスシール材からホウ素又はホウ素含有物質が蒸発したとしても、ホウ素又はホウ素含有物質を捕獲することができ、燃料電池セル内外の三相界面にホウ素又はホウ素含有物質が付着することを防止することができる。これにより、三相界面におけるイオン化反応の低下を抑制することが可能となる。すなわち、本発明の構成を用いることによって、発電性能の低下を抑制することが可能となる。
【0008】
また本発明に係る固体酸化物型燃料電池装置において、前記シール材から前記固定部材に向かう気流を生成する気流生成部を、さらに備えることも好ましい。
【0009】
この好ましい態様では、ガラスシール材から固定部材に向かう気流を生成する気流生成部を備えることで、固定部材に向かうホウ素又はホウ素含有物質を増やすことができるため、三相界面へのホウ素又はホウ素含有物質の付着防止効果を増大させることができる。
【0010】
また本発明に係る固体酸化物型燃料電池装置において、前記気流生成部は、前記シール材を基準にして、前記燃料電池セル側から前記固定部材側に向かう気流を生成する、ことも好ましい。
【0011】
この好ましい態様では、ガラスシール材を基準にして燃料電池セル側から固定部材側に向かう気流を生成させることで、固定部材に向かうホウ素又はホウ素含有物質をさらに増やすことが可能となる。
【0012】
また本発明に係る固体酸化物型燃料電池装置において、前記気流生成部は、前記シール材を挟んで前記固定部材の反対側にエアカーテンを形成するように気流を生成する、ことも好ましい。
【0013】
この好ましい態様では、ガラスシール材を挟んで固定部材の反対側にエアカーテンを形成することで、ガラスシール材から燃料電池セルに向かうホウ素又はホウ素含有物質を遮断することができ、三相界面へのホウ素又はホウ素含有物質の付着防止効果をさらに増大させることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、燃料ガスと酸化剤ガスにより発電を行う固体酸化物型燃料電池装置であって、発電性能の低下を抑制することができる固体酸化物型燃料電池装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態における燃料電池モジュールの外観を示す斜視図である。
図2図1の中央近傍における断面図であって、図1のA方向から見た断面を示す断面図である。
図3図1の中央近傍における断面図であって、図1のB方向から見た断面を示す断面図である。
図4図1のケーシングから一部の外板を取り除いた状態を示す斜視図である。
図5】本実施形態に用いられる燃料電池セルユニットを示す部分断面図である。
図6】本実施形態における燃料電池セルスタックの構成を示す斜視図である。
図7】本実施形態における捕獲部周辺を示す部分断面図である。
図8図2に相当する模式図であって、発電用空気及び燃焼ガスの流れを示す模式図である。
図9図3に相当する模式図であって、発電用空気及び燃焼ガスの流れを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0017】
本発明の実施形態である燃料電池モジュール(固体酸化物型燃料電池装置)について、図1を参照しながら説明する。図1に示す燃料電池モジュール2は、固体電解質形燃料電池装置の一部を構成するものである。固体電解質形燃料電池装置は、燃料電池モジュール2と、補機ユニット(図示せず)とを備える。
【0018】
図1においては、燃料電池モジュール2の高さ方向をy軸方向としている。このy軸に直交する平面に沿ってx軸及びz軸を定義し、燃料電池モジュール2の短手方向に沿った方向をx軸方向とし、燃料電池モジュール2の長手方向に沿った方向をz軸方向としている。図2以降において図中に記載しているx軸、y軸、及びz軸は、図1におけるx軸、y軸、及びz軸を基準としている。また、z軸の負方向に沿った方向をA方向とし、x軸の正方向に沿った方向をB方向としている。
【0019】
燃料電池モジュール2は、燃料電池セル(詳細は後述する)を収容するケーシング56と、ケーシング56の上部に設けられている熱交換器22とを備える。ケーシング56の内部は密封空間となっている。ケーシング56には、被改質ガス供給管60と、水供給管62とが繋げられている。一方、熱交換器22には、発電用空気導入管74と、燃焼ガス排出管82とが繋げられている。
【0020】
被改質ガス供給管60は、ケーシング56の内部に都市ガスといった改質用の被改質ガスを供給する管路である。水供給管62は、被改質ガスを水蒸気改質する際に用いられる水を供給する管路である。発電用空気導入管74は、改質後の燃料ガスと発電反応を起こさせるための発電用空気(酸化剤ガス)を供給する管路である。燃焼ガス排出管82は、発電反応後の燃料ガスを燃焼した結果生じる燃焼ガスを排出する管路である。
【0021】
続いて、図2図4を参照しながら、燃料電池モジュール2の内部について説明する。図2は、燃料電池モジュール2をその中央近傍において図1のA方向から見た断面図である。図3は、燃料電池モジュール2をその中央近傍において図1のB方向から見た断面図である。図4は、図1に示す燃料電池モジュール2から燃料電池セル集合体を覆うケーシング56の一部を取り外した状態を示す斜視図である。
【0022】
図2図4に示すように、燃料電池モジュール2の燃料電池セル集合体12は、ケーシング56により、全体が覆われている。図4に示すように、燃料電池セル集合体12は、全体としてB方向よりA方向の方が長いほぼ直方体形状であり、改質器20側の上面、燃料ガスタンク68(ガスマニホールド)側の下面、図4のA方向に沿って延びる長辺側面と、図4のB方向に沿って延びる短辺側面と、を備えている。
【0023】
本実施形態の場合、水供給管62から供給される水を蒸発させるための蒸発混合器(図に明示しない)は、改質器20の内部に設けられている。蒸発混合器は、燃焼ガスにより加熱され、水を水蒸気にすると共に、この水蒸気と、被改質ガスである燃料ガス(都市ガス)と空気とを混合するためのものである。
【0024】
被改質ガス供給管60及び水供給管62は、ケーシング56の内部に導かれた後、共に改質器20に繋がれている。より具体的には、図3に示すように、改質器20の上流端である図中右側の端部に繋がれている。
【0025】
改質器20は、燃料電池セル集合体12の上方に形成された燃焼室18の更に上方に配置されている。したがって、改質器20は、発電反応後の残余の燃料ガス及び空気による燃焼熱によって熱せられ、蒸発混合器としての役割と、改質反応を起こす改質器としての役割とを果たすように構成されている。
【0026】
改質器20の下流端(図3の左端)には、燃料供給管66の上端が接続されている。この燃料供給管66の下端側66aは、燃料ガスタンク68内に入り込むように配置されている。
【0027】
図2図4に示すように、燃料ガスタンク68は、燃料電池セル集合体12の真下に設けられている。燃料ガスタンク68内に挿入された燃料供給管66の下端側66aの外周には、長手方向(A方向)に沿って複数の小穴(図示せず)が形成されている。改質器20で改質された燃料ガスは、これら複数の小穴(図示せず)によって燃料ガスタンク68内に長手方向に均一に供給されるようになっている。燃料ガスタンク68に供給された燃料ガスは、燃料電池セル集合体12を構成する各燃料電池セルユニット16の内側にある燃料ガス流路(詳細は後述する)内に供給され、燃料電池セルユニット16内を上昇して、燃焼室18に至るようになっている。
【0028】
続いて、図5を参照しながら燃料電池セルユニット16について説明する。図5は、本実施形態の燃料電池セルユニット16を示す部分断面図である。
【0029】
図5に示すように、燃料電池セルユニット16は、燃料電池セル84と、この燃料電池セル84の上下方向端部にそれぞれ接続された内側電極端子86とを備えている。
【0030】
燃料電池セル84は、上下方向に延びる管状構造体であり、内部に燃料ガス流路88を形成する円筒形の内側電極層90と、円筒形の外側電極層92と、内側電極層90と外側電極層92との間にある電解質層94とを備えている。この内側電極層90は、燃料ガスが通過する燃料極であり、(−)極となり、一方、外側電極層92は、空気と接触する空気極であり、(+)極となっている。三相界面は、イオン化反応(水素のイオン化反応及び酸素のイオン化反応)が行われる場所である。三相界面は、燃料電池セル84内に形成され、内側電極層90と電極触媒と電解質層94とが互いに接している界面、及び外側電極層92と電極触媒と電解質層94とが互いに接している界面に形成される。
【0031】
燃料電池セルユニット16の上端側と下端側に取り付けられた内側電極端子86は、同一構造であるため、ここでは、下端側に取り付けられた内側電極端子86について具体的に説明する。内側電極層90の下部90aは、電解質層94と外側電極層92に対して露出された外周面90bと下端面90cとを備えている。内側電極端子86は、導電性のシール材96を介して内側電極層90の外周面90bと接続され、さらに、内側電極層90の下端面90cと直接接触することで内側電極層90と電気的に接続されている。内側電極端子86の中心部には、内側電極層90の燃料ガス流路88と連通する燃料ガス流路98が形成されている。
【0032】
内側電極層90は、例えば、Niと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、Niと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、Niと、Sr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレードとの混合体、の少なくとも一種から形成される。
【0033】
電解質層94は、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレート、の少なくとも一種から形成される。
【0034】
外側電極層92は、例えば、Sr、Caから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンコバルタイト、銀、などの少なくとも一種から形成される。
【0035】
続いて、図6を参照しながら燃料電池セルスタック14について説明する。図6は、本発実施形態の燃料電池セルスタック14を示す斜視図である。
【0036】
図6に示すように、燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16を備え、これらの燃料電池セルユニット16の下端側及び上端側が、それぞれ、セラミック製の燃料ガスタンク上板68a及び上支持板100により支持されている。上支持板100は、素材として、例えばMgo(マグネシア)を用いる。これらの燃料ガスタンク上板68a及び上支持板100には、内側電極端子86が貫通可能な貫通穴がそれぞれ形成されている。
【0037】
さらに、燃料電池セルユニット16には、集電体102が取り付けられている。この集電体102は、燃料極である内側電極層90に取り付けられた内側電極端子86と、隣接する燃料電池セルユニット16の空気極である外側電極層92の外周面と、を電気的に接続するものである。
【0038】
さらに、燃料電池セルスタック14の端に位置する2個の燃料電池セルユニット16の上側端及び下側端の内側電極端子86には、それぞれ外部端子104が接続されている。これらの外部端子104は、隣接する燃料電池セルスタック14の端にある燃料電池セルユニット16の外部端子104に接続され、160本の燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されるようになっている。
【0039】
燃料電池セルユニット16は、燃料ガスタンク上板68a上に配置する際に、内側電極端子86と燃料ガスタンク上板68aとの間に、捕獲部30を設ける。この捕獲部30は、燃料電池セルユニット16の内側電極端子86を燃料ガスタンク上板68aの貫通穴に挿入して固定する際に用いる部材である。つまり、捕獲部30は、燃料電池セルユニット16をガスマニホールドに固定する部材として用いられる。
【0040】
図7を参照して捕獲部30について説明する。図7は、本発実施形態の捕獲部30及びその周辺を示す部分断面図である。
【0041】
図7に示すように、捕獲部30は、燃料電池セル84の下端部にある内側電極端子86と、燃料ガスタンク上板68aとの間に配置される。捕獲部30の上面は、ガラスシール部36を介して内側電極端子86と接続されている。ガラスシール部36は、ホウ酸を含有するガラスをシール材とし、燃料電池セル84の内側に供給される燃料ガスが漏れないようにシールする。
【0042】
燃料電池セル84の下端部の外周面と内側電極端子86との間のシール材96は、2層に形成されており、その上層側がガラスシール部96aで構成され、下層側が銀ロウ部96bで構成される。
【0043】
つまり、捕獲部30は、ガラスシール部36、96aを挟んで燃料電池セル84の反対側に位置するように配置される。
【0044】
捕獲部30は、ホウ素及びホウ素含有物質を吸着可能な材料で形成され、例えば、Mgo、Al23、CaOを素材とすることができる。捕獲部30を、ガラスシール部36、96aの直近に設けることで、燃料電池運転中等の高温時にガラスシール部36、96aから蒸発するホウ素又はホウ素含有物質を捕獲部30に吸着させて、捕獲することが可能となる。
【0045】
続いて、発電用空気を燃料電池モジュール2の内部へ供給するための構造を、図2図4及び図8図9を参照しながら説明する。図8は、図2に対応する模式図であって、発電用空気及び燃焼ガスの流れを示す図である。図9は、図3に対応する模式図であって、同様に発電用空気及び燃焼ガスの流れを示す図である。これらの図に示すように、改質器20の上方に、熱交換器22が設けられている。熱交換器22には、複数の燃焼ガス配管70と、この燃焼ガス配管70の周囲に形成された発電用空気流路72とが設けられている。
【0046】
熱交換器22の上面における一端側(図3及び図9における右端)には、発電用空気導入管74が取り付けられている。この発電用空気導入管74により、発電用空気流量調整ユニット(図示しない)から、発電用空気が、熱交換器22内に導入されるようになっている。
【0047】
熱交換器22の上側の他端側(図3及び図9における左端)には、図2に示すように、発電用空気流路72の出口ポート76aが一対形成されている。この出口ポート76aは、一対の連絡流路76につながっている。さらに、燃料電池モジュール2のケーシング56の幅方向(B方向:短辺側面方向)の両側の外側には、発電用空気供給路77が形成されている。
【0048】
したがって、発電用空気供給路77には、発電用空気流路72の出口ポート76a及び連絡流路76から、発電用空気が供給されるようになっている。この発電用空気供給路77は、燃料電池セル集合体12の長手方向に沿って形成されている。さらに、その下方側であり且つ燃料電池セル集合体12の下方側に対応する位置に、発電室10内の燃料電池セル集合体12の各燃料電池セルユニット16に向けて発電用空気を吹き出すための複数の吹出口78a,78bが形成されている。これらの吹出口78a,78bから吹き出された発電用空気は、各燃料電池セルユニット16の外側に沿って、上方側に流れるとともに、一部は下方側にも流れる。つまり、これらの吹出口78a,78bが、ガラスシール部36、96aから捕獲部30に向かう気流を生成する気流生成部として機能する。この気流生成部は、ガラスシール部36、96aを基準にして、燃料電池セル84側から捕獲部30側に向かう気流を生成することになる。
【0049】
さらに、気流生成部は、図8に示すように、燃料電池セル84の下端部にある内側電極端子86よりも上方側にエアカーテンを形成するように気流を生成する。つまり、気流生成部は、ガラスシール部36、96aを挟んで捕獲部30とは反対側にエアカーテンを形成するように気流を生成する。
【0050】
続いて、図8図9を参照して、燃料ガスと発電用空気とが燃焼して生成される燃焼ガスを排出するための構造を説明する。燃料電池セルユニット16の上方で発生した燃焼ガスは、燃焼室18内を上昇し、整流板21に至る。整流板21には、開口21aが設けられており、開口21a内に燃焼ガスが導かれる。この開口21aを通った燃焼ガスは、熱交換器22の他端側に至る。熱交換器22内には、燃焼室18で燃料ガスと発電用空気が燃焼して生成された燃焼ガスを排出するための複数の燃焼ガス配管70が設けられている。これらの燃焼ガス配管70の下流端側には、燃焼ガス排出管82が接続され、燃焼ガスが外部に排出されるようになっている。
【0051】
上述したように実施形態における燃料電池モジュール2によれば、ガラスシール部36、96aを有する燃料電池セルユニット16と、ホウ素及びホウ素含有物質を捕獲する捕獲部30とを備えることで、燃料電池セルユニット16におけるシール性を高めることができるとともに、燃料電池モジュール2の運転により装置内の温度が上昇して、ガラスシール部36、96aからホウ素又はホウ素含有物質が蒸発したとしても、ホウ素又はホウ素含有物質を捕獲することができ、燃料電池セル84内外の三相界面にホウ素又はホウ素含有物質が付着することを防止することができる。これにより、三相界面におけるイオン化反応の低下を抑制することが可能となる。すなわち、本発明の構成を用いることによって、発電性能の低下を抑制することが可能となる。
【0052】
また、実施形態における燃料電池モジュール2によれば、ガラスシール部36、96aから捕獲部30に向かう気流を生成する気流生成部を備えることで、捕獲部30に向かうホウ素又はホウ素含有物質を増やすことができるため、三相界面へのホウ素又はホウ素含有物質の付着防止効果を増大させることができる。
【0053】
また、実施形態における燃料電池モジュール2によれば、ガラスシール部36、96aを挟んで燃料電池セル84の反対側に捕獲部30を配置し、ガラスシール部36、96aを基準にして燃料電池セル84側から捕獲部30側に向かう気流を生成させることで、捕獲部30に向かうホウ素又はホウ素含有物質をさらに増やすことが可能となる。
【0054】
また、実施形態における燃料電池モジュール2によれば、ガラスシール部36、96aを挟んで捕獲部30の反対側にエアカーテンを形成することで、ガラスシール部36、96aから燃料電池セル84に向かうホウ素又はホウ素含有物質を遮断することができ、三相界面へのホウ素又はホウ素含有物質の付着防止効果をさらに増大させることが可能となる。
【0055】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【0056】
例えば、捕獲部30は蒸発したホウ素又はホウ素含有物質を捕獲できるよう配置されていればよいため、蒸発したホウ素又はホウ素含有物質が到達し得る位置に配置された構成を捕獲部として利用することができる。より具体的には、燃料ガスタンク上板68aを捕獲部として利用する形態や、燃料ガスタンク68の一部として捕獲部30が構成されている形態も本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0057】
2:燃料電池モジュール(固体酸化物型燃料電池装置)
10:発電室
12:燃料電池セル集合体
14:燃料電池セルスタック
16:燃料電池セルユニット
18:燃焼室
20:改質器
21:整流板
21a:開口
22:熱交換器
30:捕獲部
36:ガラスシール部
56:ケーシング
56a:ケーシング底板
60:被改質ガス供給管
62:水供給管
66:燃料供給管
66a:下端側
68:燃料ガスタンク(ガスマニホールド)
68a:燃料ガスタンク上板
68b:燃料ガスタンク側板
70:燃焼ガス配管
72:発電用空気流路
74:発電用空気導入管
76:連絡流路
76a:出口ポート
77:発電用空気供給路
78a,78b:吹出口(気流生成部)
82:燃焼ガス排出管
84:燃料電池セル
86:内側電極端子
88:燃料ガス流路
90:内側電極層
90a:下部
90b:外周面
90c:下端面
92:外側電極層
94:電解質層
96:シール材
96a:ガラスシール部
96b:銀ロウ部
98:燃料ガス流路
100:上支持板
102:集電体
104:外部端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9