(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書では、中心軸に平行な方向において、
図2中の上側を「上側」と呼び、
図2中の下側を単に「下側」と呼ぶ。「上側」および「下側」という表現は、必ずしも重力方向と一致する必要はない。また、中心軸を中心とする径方向を単に「径方向」、中心軸を中心とする周方向を単に「周方向」、中心軸に平行な方向を単に「軸方向」と呼ぶ。
【0009】
図1は、本発明の例示的な一の実施形態に係るモータ1の正面図である。
図2および
図3は、モータ1の縦断面図である。モータ1は、複写機、プリンタ、複合機等の事務機器の駆動源として用いられるインナロータ型のモータである。
【0010】
図2に示すように、モータ1は、回転部11と、静止部12と、2つの軸受13と、エンコーダ14と、キャップ部材15と、を含む。回転部11は、上下方向を向く中心軸J1を中心に回転する。
図2では、回転部11が静止部12の下側に位置する。回転部11の出力軸は下方を向く。以下、モータ1のキャップ部材15以外の部位を、「モータ本体部10」と呼ぶ。
【0011】
軸受13は、静止部12に固定され、回転部11を回転可能に支持する。軸受13は、含油スリーブである。キャップ部材15は有蓋略円筒状であり、ステータ122の上方を覆う。エンコーダ14は、キャップ部材15内に位置する。
【0012】
回転部11は、シャフト111と、ロータホルダ112と、ロータマグネット113と、を含む。シャフト111は、中心軸J1を中心とする略円柱状であり、軸受13により回転可能に支持される。ロータホルダ112は、シャフト111の出力側とは反対側に接続される。ロータホルダ112は、シャフト固定部211と、接続部212と、円筒部213と、を含む。シャフト固定部211は上側の軸受13の上側にてシャフト111に固定される。接続部212はシャフト固定部211から径方向外方へと広がる。円筒部213は、接続部212の外縁から下方へと延びる。ロータマグネット113は、円筒部213の外側面に取り付けられる。ロータマグネット113は、円筒状であってもよく、複数のマグネットが周方向に配列されたものであってもよい。ロータホルダ112は、薄板をプレス加工することにより形型される。薄板は、例えば、金属である磁性体にて形成される。
【0013】
シャフト固定部211と上側の軸受13との間には、2枚の樹脂板214が配置される。シャフト111には、下側の軸受13の下側に止め具215が取り付けられる。シャフト固定部211および止め具215により、シャフト111の上下方向への移動が防止される。
【0014】
図3に示すように、静止部12は、カバー部材121と、ステータ122と、回路基板123と、を含む。カバー部材121は、内筒部221と、外筒部222と、底部223と、を含む。内筒部221および外筒部222は、中心軸J1を中心とする円筒状であり、同軸に配置される。底部223は、外筒部222の下端と内筒部221の下端とを接続する。底部223には、モータ1を所望の位置に取り付けるための複数の取付孔224が設けられる。内筒部221は、内側面225にて軸受13を支持する。外筒部222は、ステータ122の外周を覆い、内側面226にてステータ122を支持する。カバー部材121は、金属である1つの板部材のプレス加工により成型される。好ましくは、カバー部材121は導電性部材である。さらに好ましくは、カバー部材121は磁性体である。
【0015】
ステータ122は、ステータコア231と、インシュレータ232と、コイル233と、を含む。ステータ122は、中心軸J1を中心とする環状である。ステータコア231は、複数の薄板の磁性鋼板を上下方向に積層して形成される。ステータコア231は、円環状のコアバック241と、複数のティース242と、により構成される。コアバック241は、外筒部222に圧入される。ティース242は、コアバック241から径方向内方へと延びる。ロータマグネット113は、ステータ122の内側に配置される。ティース242の先端は、ロータマグネット113に径方向に対向する。インシュレータ232は、樹脂により形成される。インシュレータ232は、ステータコア231を覆う。
【0016】
回路基板123は、ステータ122の上方に位置し、中心軸J1に対して垂直な方向に広がる。回路基板123は、インシュレータ232の上方にて保持される。
図4は、回路基板123を取り付ける前のモータ1の平面図である。
図3は、
図4に示す矢印A−Aの位置での断面を示す。
図3および
図4に示すように、インシュレータ232は、9個の上側部分インシュレータ251と、9個の下側部分インシュレータ252と、により構成される。上下に配置される1組の上側部分インシュレータ251および下側部分インシュレータ252が、1つのティース242に対応する1つの部分インシュレータを構成する。換言すれば、インシュレータ232は、複数のティース242にそれぞれ対応する部分インシュレータを含む。上側部分インシュレータ251は、1つのティース242の上面および側面の上半分を覆う。
【0017】
上側部分インシュレータ251は、外側突出部261と、内側突出部262と、を含む。外側突出部261は、コイル233の径方向外側にて外筒部222の上端227よりも上方に突出する。外側突出部261は、インシュレータ232の外筒部222の上側の部位でもある。内側突出部262は、ティース242の先端の上側にて上方へと突出する。
【0018】
後述するように、外側突出部261の上部は、回路基板123の下面に接する基板座部として機能する。以下、外側突出部261の上部を「基板座部28」と呼び、基板座部28はインシュレータ232には含まれないものとして説明する。もちろん、本実施形態では、基板座部28はインシュレータ232を構成する部材の一部である。上側部分インシュレータ251および基板座部28をまとめて、「上側部分インシュレータ部品250」と呼ぶ。このような上側部分インシュレータ部品250により、基板座部28を別途設ける場合に比べて、モータ1の部品点数が削減される。
図3に示すように、基板座部28、正確にはその座面は、コイル233よりも上方に位置する。
【0019】
下側部分インシュレータ252は、1つのティース242の下面および側面の下半分を覆う。下側部分インシュレータ252は、コイル233の径方向外側に、下方へと突出する外側突出部263を含み、ティース242の先端の下側に、下方へと突出する内側突出部264を含む。上側部分インシュレータ251および下側部分インシュレータ252により、ステータコア231は、コアバック241の外側面およびティース242の先端面を除いて覆われる。
【0020】
上側部分インシュレータ部品250は3つの異なる形状を有する。
図4に示すように、1つは、基板座部28の上端面上に設けられてさらに上方に突出する凸部であるピン265を含む。他の1つは、外側突出部261の外側面270に高さが低い凸部266を含む。外側突出部261の外側面270は、上側部分インシュレータ251の外側面でもある。他の1つは、外側突出部261をステータコア231まで上下に貫通する貫通孔267を含む。これら3種類の上側部分インシュレータ部品250は、周方向に3組配列される。
【0021】
図3に示すように、ピン265は、回路基板123に設けられた貫通孔に挿入される。これにより、回路基板123の中心軸J1に垂直な方向における位置が固定される。その結果、後述の磁気センサ124の水平方向の位置が正確に決定される。回路基板123が水平方向にずれないため、ステータ122と回路基板123とを接続する導線に張力が作用することも防止される。
【0022】
凸部266は、周囲が凹部とされることにより、相対的に径方向外方に突出する。
図1に示すように、凸部266は、キャップ部材15のリング状のスナップフィット部151と係合する。これにより、キャップ部材15がインシュレータ232に固定される。
図3に示すように、回路基板123は、キャップ部材15と基板座部28との間にて挟持される。キャップ部材15は、回路基板123の外周を囲む。これにより、キャップ部材15と回路基板123との間からキャップ部材15内に異物が侵入することを抑制することができる。なお、回路基板123の側面の大部分はキャップ部材15により覆われるが、一部はキャップ部材15から露出する。
【0023】
図3および
図4に示すように、1つの貫通孔267内には、導電性材料にて形成されたコイルばね268が挿入される。コイルばね268は、コアバック241および回路基板123の電極を押圧する。導電性を有する部材であるカバー部材121は、導電性を有する部材であるステータコア231と直接接触することから、カバー部材121は、ステータコア231およびコイルばね268を介して回路基板123と導通される。その結果、カバー部材121を接地することにより、回路基板123が接地される。
【0024】
上下方向において、ステータコア231の上面の位置とカバー部材121の外筒部222の上端227の位置とが一致する。これにより、ステータコア231を外筒部222に固定する強度を低下させることなく外筒部222の高さを最小とすることができる。上側部分インシュレータ251の外側面270は、外筒部222の上側にて外筒部222の内側面226よりも径方向外側に位置する。好ましくは、外側面270は、外筒部222の外側面よりも径方向外側には位置しない。下側部分インシュレータ252の外側突出部263は、カバー部材121の底部223に軸方向に接する。底部223への当接により、ステータ122は容易に位置決めされる。上側部分インシュレータ251の外側面270の下端と、外筒部222の上端227とは上下方向に近接する。これにより、モータ1の外側面の凹凸を低減することができる。なお、外側面270の下端と外筒部222の上端227とを当接させることにより、ステータ122の位置が決定されてもよい。
【0025】
一方、キャップ部材15の下端は上側部分インシュレータ部品250の外側突出部261に上方から当接する。
図1に示すように、上側部分インシュレータ部品250は、外筒部222の上側にて径方向外側に露出する。すなわち、カバー部材121およびキャップ部材15にてモータ1の高さ方向の全域は覆われない。これにより、外筒部222の高さは、同程度の大きさのモータに比べて低くなる。
図4に示すように、外側突出部261は、周方向の全周に亘って存在する。外側突出部261の周方向における両側部269は、平面視した際に周方向に突出する側部突起272を含む。側部突起272は上端から下端まで径方向に重なる。換言すれば、外筒部222の上側にて、各上側部分インシュレータ部品250の周方向の両側部269が、隣接する上側部分インシュレータ部品250と径方向において重なる。これにより、ラビリンス構造が形成され、インシュレータ232が露出するモータ1において、塵埃の内部への進入を抑制することができる。
【0026】
なお、外側突出部261を設けることにより、別途スペーサ等を設けてキャップ部材15を取り付ける場合に比べて製造コストを削減することができる。モータ1では、上側に機器への取付部を設けると、樹脂製のインシュレータ232の影響により取付強度を確保することができない。しかし、モータ1では、底部223に取付孔224が設けられ、出力軸が下方へ突出するため、取付強度を確保することができる。さらに、回路基板123やエンコーダ14を底部223上ではなく出力軸とは反対側に設けることにより、ステータ122の位置を底部223に近づけることができ、トルクの発生中心を軸受スパンの間に容易に位置させることができる。
【0027】
コイル233は、導線がインシュレータ232上から各ティース242に多層に巻回されることにより形成される。
図3に示すように、コイル233は、上側部分インシュレータ部品250および下側部分インシュレータ252の外側突出部261,263と内側突出部262,264との間に形成される。コイル233の上端234は、外筒部222の上端227よりも上方に位置する。これにより、ステータコア231の積み厚を高くしてもカバー部材121の外筒部222を上側に伸ばす必要はない。回路基板123からコイル233に電流を流すことにより、コイル233とロータマグネット113との間にトルクが発生する。これにより、回転部11が中心軸J1を中心として回転する。
【0028】
エンコーダ14は、センサ部141と、プレート部142と、を含む。センサ部141は回路基板123の上面に取り付けられる。プレート部142は中心軸J1に垂直であり、シャフト111に取り付けられる。センサ部141が、プレート部142に形成されたスリットの通過を光学的に検出することにより、シャフト111の回転速度が検出される。エンコーダ14に代えて、回路基板123にFG(Frequency Generator)パターンが形成され、ロータホルダ112の接続部212上にFGマグネットが配置されてもよい。
【0029】
回路基板123の下面には、磁気センサ124が取り付けられる。磁気センサ124は、ロータマグネット113の上方にて回路基板123により支持される。磁気センサ124により、ロータマグネット113の回転位置、すなわち、回転部11の回転が検出される。モータ1では、磁気センサ124として、ホール素子が利用される。磁気センサ124として、回路基板123に形成されてロータマグネット113の上方にて回路基板123により支持されるFGパターンが利用されてもよい。
【0030】
上述のように、ステータコア231は複数の磁性鋼板が積層されて形成されるため、各磁性鋼板が公差により少しずつ厚くなると、ステータコア231の中心軸J1方向の厚さである積み厚が大きくなる。仮に、ステータがカバー部材に当接することにより、ステータの中心軸方向の位置が決定されるとすると、ステータコアが厚くなった分だけ、上側部分インシュレータおよび回路基板が、所望の位置よりも上側に位置することになる。その結果、カバー部材に対して位置決めされた回転部のロータマグネットと、回路基板に固定された磁気センサとの間の中心軸方向の距離が、所望の距離よりも大きくなり、ロータマグネットの回転位置の検出精度が低下してしまう。
【0031】
モータ1では、下側部分インシュレータ252の外側突出部263が、カバー部材121の底部223に中心軸J1方向に当接することにより、中心軸J1方向におけるインシュレータ232のカバー部材121に対する相対位置が決定される。そして、これにより、中心軸J1方向におけるステータ122および回路基板123のカバー部材121に対する相対位置が決定される。このため、ステータコア231の積み厚の誤差による影響を抑制して、磁気センサ124をロータマグネット113に対して精度良く位置決めすることができる。その結果、磁気センサ124をロータマグネット113に近接させて配置することができ、ロータマグネット113の回転位置を精度良く検出することができる。ロータマグネット113の回転位置の検出精度が十分に高い場合には、安価で低グレードな磁気センサ124を採用したり、ロータマグネット113の中心軸J1方向の高さを小さくすることができる。
【0032】
回路基板123には、磁気センサ124や他の電子部品(図示省略)等が実装されることにより、反りや歪み等の変形が生じている場合がある。モータ1では、基板座部28とキャップ部材15との間に挟むようにして回路基板123を保持することにより、回路基板123の変形を抑制することができる。これにより、磁気センサ124のロータマグネット113に対する相対位置の精度を向上することができる。
【0033】
回路基板123は、外側突出部261の上端面上に固定されるため、外筒部222の内側に固定される場合に比べて、回路基板123の面積を容易に大きくすることができる。その結果、回路基板123に実装される電子部品として、大きくはあるが低価格の電子部品を採用することができ、モータ1の製造コストを低減することができる。また、キャップ部材15の下端部に切り欠きを設けるだけで、回路基板123を外部電源に接続するコネクタ(図示省略)を、モータ1の外部に容易に配置することができる。
【0034】
図5.Aは、キャップ部材15を斜め上方から見た斜視図である。
図5.Bは、キャップ部材15を斜め下方から見た斜視図である。キャップ部材15は樹脂の射出成型にて成形されたものである。射出成型により、キャップ部材15を容易に得ることができる。キャップ部材15は、スナップフィット部151と、筒状部152と、天蓋部153と、弾性部154と、を含む。天蓋部153は、回路基板123の上方を覆う。天蓋部153は、中心軸J1に垂直な方向に広がる。筒状部152は、天蓋部153の外縁部からモータ本体部10に向かって下方に延びる。
【0035】
スナップフィット部151は、筒状部152から下方へと突出する。スナップフィット部151は、径方向外方から見た場合に、環状である。弾性部154は、スナップフィット部151に対して周方向に隣接する。筒状部152は、その上端、すなわち、天蓋部153から下方に向かって延び、かつ、径方向内方へと窪む凹部156を含む。凹部156は、中心軸J1に平行な複数の側面により構成される。複数の同形状のスナップフィット部151は、周方向に配列される。複数の同形状の弾性部154も周方向に配列される。本実施形態では、複数のスナップフィット部151は周方向に等間隔に配置される。複数の弾性部154も周方向に等間隔に配置される。
【0036】
弾性部154は、凹部156の下端において、凹部156を構成する面から径方向外方へと延びる。弾性部154をこのように設けることにより、射出成型の金型を容易に製造することができる。弾性部154は凹部156内に位置する。凹部156を設けることにより、キャップ部材15内の空間を大きく確保することができる。また、凹部156を上下方向に延びるように設けることにより、キャップ部材15の成形、特に、樹脂による射出成型を容易に行うことができる。
【0037】
図6は、中心軸J1を含む面による弾性部154近傍の断面図である。弾性部154は、腕部161と、接触部162と、を含む。接触部162は、回路基板123の上面に接する。腕部161は、筒状部152から径方向外方へと延出し、筒状部152と接触部162とを接続する。平面視において、腕部161の根元163と接触部162とは、異なる位置にある。腕部161の根元163とは、腕部161と筒状部152との境界の部位である。これにより、接触部162が回路基板123に接すると、腕部161が撓む。すなわち、弾性部154は、回路基板123の上面に接して弾性変形している。弾性部154は、復元力を利用して回路基板123に下方へと向かう力を与える。その結果、回路基板123は、基板座部28と接触部162との間に挟まれるようにして保持される。複数の弾性部154が設けられることにより、回路基板123がより安定して保持される。
【0038】
腕部161は、全体が、回路基板123よりも上方に位置する。これにより、腕部161と回路基板123との干渉を容易に防止することができる。弾性部154の接触部162は、下方へ突出して回路基板123と接する突起164を含む。換言すれば、弾性部154は、先端またはその近傍に下方へ突出する突起164を含む。これにより、接触部162を回路基板123に適切に接触させることができる。
【0039】
図7は、弾性部154の縦断面図である。平面視における、腕部161の根元163と、接触部162との間の距離171は、中心軸J1を含む面による腕部161の断面における、腕部161の最小幅172よりも大きい。ここでの接触部162の位置は、接触部162と回路基板123との接触領域の中心の位置を指すものとする。本実施形態の場合、突起164と回路基板123との間の接触領域の中心を指す。このような構造により、弾性部154を容易に撓ませることができる。
【0040】
既述のように、
図6に示すように基板座部28の上面には、上方に突出するピン265が設けられる。複数のピン265は、周方向に配列される。回路基板123は、複数の貫通孔126を含む。各ピン265は貫通孔126に挿入される。ピン265の上面は、回路基板123の上面よりも軸方向下方に位置する。換言すれば、基板座部28からのピン265の高さは、回路基板123の厚さよりも小さい。また、基板座部28と、弾性部154の接触部162とは、上下方向に重なる。これにより、ピン265と弾性部154とを干渉させることなく、回路基板123を位置決めする構造と回路基板123を押さえる構造とを空間的に効率よく配置することができる。特に、基板座部28と接触部162とを上下方向に重ねることにより、回路基板123を押さえることにより作用する曲げ応力を低減することができる。
【0041】
図2および
図5.Bに示すように、筒状部152の内周部の下部は、下方に向かって径方向外方へと広がる段差部157を含む。段差部157の下方を向く面158は、回路基板123の上面に対向する。以下、面158を、「基板対向面」と呼ぶ。基板対向面158は、回路基板123の外縁部の大部分と対向する。基板対向面158は、回路基板123の上面に近接するが、一部または全体が回路基板123に接してもよい。すなわち、基板対向面158は、回路基板123の上面に近接または接する。
【0042】
キャップ部材15が単体で存在する状態では、接触部162の下端は、基板対向面158よりも下方に位置する。したがって、キャップ部材15がモータ本体部10に取り付けられる際にキャップ部材15がモータ本体部10に軸方向に近づけられると、まず、接触部162が回路基板123に接触する。その後、基板対向面158が回路基板123に接触または近接する。弾性部154により、回路基板123が過剰に強く押さえられることが防止される。基板対向面158を設けることにより、衝撃等により、回路基板123が、弾性部154による押圧に抗して上方に移動することが防止される。基板対向面158の径方向外側のエッジから下方に延びる内周面により、回路基板123の外周面の大部分が覆われる。
【0043】
図8は、モータ1の製造の流れを示す図である。モータ1の製造では、まず、プレス加工にてカバー部材121が成型される(ステップS11)。
【0044】
次に、内筒部221の内側面225に軸受13が圧入されて固定される(ステップS12)。さらに、外筒部222の内側面226に、別途組み立てられたステータ122が圧入されて固定される(ステップS13)。
【0045】
回転部11も別途組み立てられる。具体的には、ロータホルダ112にシャフト111が圧入されて固定される(ステップS14)。そして、ロータホルダ112の外側面にロータマグネット113が接着剤により取り付けられる(ステップS15)。
【0046】
シャフト111は
図2の上方から軸受13に挿入される(ステップS16)。このとき、樹脂板214が介挿される。これにより、ロータマグネット113がステータ122の内側に配置される。シャフト111には止め具215が取り付けられる。回路基板123は、上方からインシュレータ232上に載置される(ステップS17)。また、ステータ122の導線と回路基板123とが接続される。シャフト111にはエンコーダ14のプレート部142が取り付けられる。回路基板123にはセンサ部141が取り付けられる。
【0047】
最後に、キャップ部材15が、外筒部222の上方にて外側突出部261の外側面270に取り付けられる(ステップS18)。このとき、キャップ部材15が上方からインシュレータ232にはめ込まれると、スナップフィット部151が径方向外方へと弾性変形して凸部266を乗り越える。そして、スナップフィット部151の中央の孔に凸部266が嵌り込むと同時にキャップ部材15の円筒部の下端がインシュレータ232の上部に当接し、静止部12の上部が封止される。このように、弾性変形を利用するスナップフィットにより、キャップ部材15はモータ本体部10に容易に取り付けられる。スナップフィットにより、モータ1の組み立て工数が削減される。また、キャップ部材15がインシュレータ232の外周面に取り付けられることにより、モータ1の構造を簡素化することができる。
【0048】
キャップ部材15の取り付けと同時に、弾性部154が回路基板123に下方へ向かう力を与える。これにより、回路基板123が弾性部154と基板座部28との間に保持される。このように、モータ1では、回路基板123を溶着やビス留めにて固定する場合に比べて、モータの組立工数を削減することができる。回路基板123の固定に際し、接着剤や専用の設備が不要となる。また、回路基板123をスナップフィットを利用して固定する場合に比べて、組立時に回路基板123に作用する力を低減することができる。その結果、回路基板123の反りによる損傷を防止することができ、モータ1の信頼性を向上することができる。
【0049】
加えて、弾性部154を利用することにより、弾性部154が回路基板123を適切な大きさの力で押圧する。これにより、回路基板123の厚さや組み付け前の反りの許容範囲を大きくすることができる。モータ1の製造コストの増大が抑制される。
【0050】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々に変更されてよい。例えば、弾性部154の数は1つでもよい。もちろん、回路基板123の反りを抑制して磁気センサ124とロータマグネット113との間の距離を安定させるためには、弾性部154の数は複数であることが好ましい。
【0051】
腕部161は、径方向外方へと延びる必要はなく、例えば、周方向に延びてもよい。また、腕部161の根元は、天蓋部153に接続してもよい。例えば、弾性部154は、筒状部152の内側において天蓋部153から下方に延びてもよい。弾性部154は、棒状の弾性体やコイルばねや板ばね等であってもよい。筒状部152や天蓋部153から下方かつ径方向外方に向かって腕部161が延びてもよい。このように、腕部161は、筒状部152または天蓋部153と接触部162とを接続する。腕部161は径方向内方に延出してもよい。
【0052】
天蓋部153は回路基板123の上方を完全に覆う必要はない。例えば、天蓋部153の中央に貫通孔が設けられてもよい。
【0053】
接触部162は回路基板123の上面のエッジに接してもよい。接触部162と回路基板123との接触に関する説明において、回路基板123の上面には、上面のエッジが含まれる。
図9に示すように、例えば、貫通孔126と上面との境界であるエッジのみにおいて、接触部162と回路基板123とが接してもよい。この場合においても、基板座部28のピン265の上端と接触部162の突起164とは非接触である。接触部162は、広い面にて回路基板123の上面に接してもよい。
【0054】
回路基板123の貫通孔126は非貫通の凹部であってもよい。貫通孔126に代えて切り欠きが設けられてもよい。基板座部28は、インシュレータ232とは別部材として設けられてもよい。例えば、インシュレータ232上に載置される環状の部材が基板座部として機能してもよい。
【0055】
軸受13は、ボール軸受でもよい。この場合、軸受13は、接着剤にて内筒部221に固定される。軸受13はカバー部材121に直接的に固定されなくてもよく、軸受13は、他の部材を介してカバー部材121に間接的に固定されてもよい。なお、ロータホルダ112とシャフト111、カバー部材121とステータ122等の他の固定構造に関しても、適宜、他の部材を介する間接的な固定が採用されてよい。エンコーダ14として、例えば、中心軸J1を中心とする円筒状のプレート部142を含むものが利用されてもよい。エンコーダ14は取り付けられなくてもよい。
【0056】
インシュレータ232をカバー部材121に軸方向に当接させることにより、磁気センサ124のロータマグネット113に対する位置精度が十分に確保できるのであれば、回路基板123は、必ずしも、キャップ部材15と上側部分インシュレータ部品250の外側突出部261の上端面との間にて挟持される必要はない。また、回路基板123をキャップ部材15と外側突出部261の上端面との間にて挟持することにより、磁気センサ124のロータマグネット113に対する位置精度が十分に確保できるのであれば、インシュレータ232は、必ずしも、カバー部材121に中心軸J1方向に当接する必要はない。
【0057】
磁気センサ124をロータマグネット113に対して精度良く位置決めするという観点からは、カバー部材121の内筒部221は、必ずしも、底部223および外筒部222と共にプレス加工により成型される必要はない。例えば、樹脂等により形成された内筒部221が、底部223に圧入されてもよい。一方、モータの製造コストを削減するという観点からは、必ずしも、インシュレータ232をカバー部材121に軸方向に当接させて位置決めする必要はなく、回路基板123をキャップ部材15と外側突出部261の上端面との間にて挟持する必要もない。
【0058】
モータ1の組み立て順序は可能な範囲内で様々に変更されてよい。シャフト111とロータホルダ112とは、切削加工にて一体に形成されることにより接続されていてもよい。
【0059】
ステータコア231は、ティース242毎に分割された分割コアであってもよい。隣接する分割コアを両側部で僅かに連続させ、分割コアの配列を折り曲げることにより円環状のステータコア231が形成されてもよい。この場合、複数の上側部分インシュレータ部品250および複数の下側部分インシュレータ252は、ステータコア231と同様に、コアバックを覆う部位で連続し、ステータコア231と共に環状に折り曲げられてもよい。ステータコア231は、円環状のコアバック部と、コアバック部から内側に延びる複数のティース部とを含む形状で打ち抜かれた磁性鋼板が積層されたものであってもよい。
【0060】
複数の上側部分インシュレータ部品250は、1つの環状の部品として準備されてよい。同様に、複数の下側部分インシュレータ252も、1つの環状の部品として準備されてよい。
【0061】
上側部分インシュレータ部品250の外側突出部261同士は、両側部269が径方向において他の外側突出部261と重なるのであれば、互いに接触する必要はない。両側部269の形状は側部突起272以外の凹凸構造であってもよい。上側部分インシュレータ251の外側面270は、外筒部222の上側にて外筒部222の内側面226よりも径方向外側に位置しなくてもよい。
【0062】
ステータコア231と回路基板123との間に配置され、弾性変形してステータコア231および回路基板123を押圧することにより、回路基板123とカバー部材121とを導通することができるのであれば、コイルばね268以外の導電性弾性部材が用いられてもよい。例えば、導電性ゴムや板ばねが利用可能である。また、カバー部材121と回路基板123との間に導電性弾性部材が配置され、導電性弾性部材がカバー部材121および回路基板123を押圧することにより、回路基板123がカバー部材121と導通されてもよい。さらには、回路基板123に電気的に接続可能であれば、コイルばね268に代えて弾性に乏しい導電性部材が用いられてもよい。すなわち、回路基板123は、導電性部材を介して、直接的または間接的にカバー部材121に導通される。
【0063】
キャップ部材15は、外筒部222まで延ばされてインシュレータ232が露出しなくてもよい。スナップフィット部151も、環状ではなく、先端が折り曲げられた爪状であってもよい。モータ本体部10に、キャップ部材15に向かって延びるスナップフィット部が設けられてもよい。モータ本体部10とキャップ部材15とを締結するスナップフィット構造としては、様々な形態が採用されてよい。
【0064】
モータ1のカバー部材121やインシュレータ232、キャップ部材15等の構造は、ステッピングモータ等の他のモータに利用可能である。また、モータ1は、事務機器以外の様々な機器に用いることができる。
【0065】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせられてよい。