【実施例】
【0036】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、これらの実施例は例示であって、本発明の金属の製造方法はこれらに限定されるものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲の範囲によって示され、特許請求の範囲の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0037】
(実施例1)
金属含有物として、市場から回収した細い銅線の粉砕物を用いた。当該粉砕物の組成は、銅が約38質量%、樹脂が約47質量%、水分が約15質量%であった。これをポリプロピレン製の不織布でできた袋に詰めた。
【0038】
6Nの硫酸1Lに、60gの過硫酸アンモニウムを加えて攪拌し完全に溶解させた。更に、上記で用意した金属含有物の粉砕物が詰まった袋を溶液中に浸し、スターラーを用いてよく攪拌し、銅イオンを含む溶液を用意した。
【0039】
陽イオン交換膜(ナフィオン−117、デュポン株式会社製)を中央に設けた電解槽を用意し、片方の室に上記で用意した銅イオンを含む溶液を入れ、更に、白金(Pt)製の電極(陰極)を設置し、陰極室とした。
陽イオン交換膜でしきられたもう一方の室には、6Nの硫酸1Lに60gの硫酸アンモニウムを溶かした溶液を入れ、ダイヤモンド電極(陽極)を設置して陽極室とした。ダイヤモンド電極は、住友電工ハードメタル株式会社製のダイヤ電極工業グレードを用いた。
【0040】
陰極とダイヤモンド電極を、隔膜を介して約10cm離して対向させ陰陽極間に20Vの電圧を印加して、10分間、通電処理した。
陰極の表面には金属銅が析出し、また、陽極室内の溶液からは過硫酸イオンが確認された。金属銅の純度は99.99%であり、陽極室内の溶液は濃度が80g/Lの過硫酸アンモニウム溶液であることが確認された。陰極室内の溶液は、酸化剤である過硫酸アンモニウムが還元されて硫酸アンモニウムとなっていた。
【0041】
続いて、陰極及びダイヤモンド電極をそれぞれの室から取り出し、上記と同様にして準備した金属含有物の粉砕物が詰められた袋を、陽極室として用いていた室中の溶液に浸してよく攪拌し、銅イオンを含む溶液を作製した。そして、当該溶液中に新たに用意した白金製の陰極を設置し、もう一方の還元された状態の酸化剤を多く含む溶液中に上記のダイヤモンド電極を設置し、両極間に20Vの電圧を印加して、10分間、通電処理をした。
1回目の通電処理と同様に、陰極の表面には純度が99.99%の金属銅が析出し、陽極室中の溶液は酸化剤が再生して濃度が80g/Lの過硫酸アンモニウム溶液となっていた。
【0042】
これと同様の操作を繰り返し行ったところ、100サイクル後においても処理液を交換することなく、連続して利用できることが確認された。
【0043】
(実施例2)
実施例1と同様にして、実施例1で用いたと同じ金属含有物の粉砕物を袋に詰めた。
6Nの硫酸1Lに、濃度30%の過酸化水素水0.1Lを加えて攪拌した。当該溶液に上記で用意した袋を浸し、スターラーを用いてよく攪拌し、銅イオンを含む溶液を用意した。
陽極室中の溶液を硫酸(6N)に変えた以外は実施例1と同様の陽イオン交換膜、陰極、ダイヤモンド電極を用意して各々セッティングし、両極間に、20Vの電圧を印加して、10分間、通電処理した。
陰極の表面には純度99.99%の金属銅が析出し、また、陽極室中の溶液は過酸化水素の濃度が0g/Lの硫酸過水になっていることが確認された。
【0044】
続いて、陰極及びダイヤモンド電極をそれぞれの室から取り出し、実施例1と同様にして準備した金属含有物の粉砕物が詰められた袋を、陽極室として用いていた室中の溶液に浸してよく攪拌し、銅イオンを含む溶液を作製した。そして、当該溶液中に新たに用意した白金製の陰極を設置し、もう一方の還元された状態の酸化剤を多く含む溶液中に上記のダイヤモンド電極を設置し、両極間に20Vの電圧を印加して、10分間、通電処理を行った。
1回目の通電処理と同様に、陰極の表面には純度が99.99%の金属銅が析出し、陽極室中の溶液は酸化剤が再生して濃度が5g/Lの硫酸過水となっていた。
これと同様の操作を繰り返し行ったところ、20サイクル後には酸化剤としてのH
2O
2量が減少していることが確認されたため、濃度が30%の過酸化水素水を0.1L添加して、同様の操作を繰り返した。
過酸化水素を適時補充することにより、100サイクル後においても処理液が寿命に達することはなく、連続して利用できることが確認された。なお、添加した過酸化水素は銅の溶解に伴い水となるが、水分の蒸発が起こるため体積は見かけ上過酸化水素水の添加前と変わらず、バランスさせることが出来る。
【0045】
(実施例3)
金属含有物として、銅純度が80%、残部がニッケル19%、シリコン1%からなる合金端子材をポリプロピレン製の不織布でできた袋に詰め、実施例1と同様の方法で金属の溶解、析出を行った。
その結果、電圧を20Vとして電解したところ純度99.99%の銅が陰極(Pt製)表面に析出し回収することができた。また、シリコンはSiO
2粉末として濾過フィルターにより回収することができた。
銅の回収が終わった段階で陰極を新しいものに交換して、電圧を30Vまで上げたところ、ニッケルが99.9%以上の純度で陰極表面に析出し回収することができた。
さらに、電解液についても酸化剤の再生が可能であり、実施例1と同様に繰り返し使用することができることを確認した。
【0046】
(実施例4)
金属含有物として、銅純度が1%、残部がニッケル99%である合金屑をポリプロピレン製の不織布でできた袋に詰め、実施例1と同様の方法で金属の溶解、析出を行った。
その結果、実施例3と同様に、先ず20Vで99.99%以上の純度の銅を陰極(Pt製)表面に析出させて回収することができた。さらに、陰極を交換して電圧を30Vに上げて実施したところ、ニッケルを99.95%の純度で陰極表面に析出させて回収することができ、なおかつ電解液も繰り返し使用することができることが確認された。
【0047】
(実施例5)
金属含有物として銅純度が80%、残部が亜鉛である合金屑をポリプロピレン製の不織布でできた袋に詰め、実施例1と同様の方法で金属の溶解、析出を行った。
その結果、実施例3と同様に、先ず20Vで99.9%の純度の銅を陰極(Pt製)表面に析出させて回収することができた。さらに、陰極を交換して40Vまで電圧を上げたところ、激しいガス発生を伴ったが99.9%以上の純度の亜鉛を陰極表面に析出させて回収可することができ、なおかつ電解液も繰り返し使用できることが確認された。
【0048】
(比較例1)
実施例1と同様にして、実施例1で用いたと同じ金属含有物の粉砕物を袋に詰めた。
6Nの硫酸1Lに、60gの過硫酸アンモニウムを加えて攪拌し完全に溶解させた。更に、上記で用意した金属含有物の粉砕物が詰まった袋を溶液中に浸し、スターラーを用いてよく攪拌し、銅イオンを含む溶液を用意した。
この銅イオンを含む溶液中に、実施例1と同様の陰極及びダイヤモンド電極を設置し、両極間に20Vの電圧を印加して、10分間、通電処理を行ったところ、陰極表面に純度99.99%の金属銅が析出した。
続いて、陰極を新しいものに交換し、溶液中に金属含有物の粉砕物が詰まった袋を入れ、スターラーを用いて良く攪拌し、銅イオンを含む溶液を作製した。そして上記と同様に両極間に20Vの電圧を印加して、10分間、通電処理を行った。その結果、1回目と同様に陰極表面には純度99.99%の金属銅が析出した。
【0049】
同様の操作を繰り返し行ったところ、サイクルを重ねるにつれて銅の溶解処理を行うのに長時間を要するようになり、20サイクル目で銅を溶解することが出来なくなった。溶液を調査したところ、過硫酸アンモニウムの量が減少しており、濃度が6g/Lになっていた。
そこで、20サイクル毎に過硫酸アンモニウムを追加して同様の操作を繰り返したが、60サイクル目では硫酸イオンの増加により過硫酸アンモニウムが溶けなくなり、沈殿物が増えすぎてしまった。このため、処理液を交換しなければ操作を続けることが出来なくなった。
【0050】
(比較例2)
ダイヤモンド電極の代わりに白金製の陽極を用いた以外は実施例1と同様にして、装置のセッティングを行った。
両極間に20Vの電圧を印加して、10分間、通電処理したところ、陰極の表面には純度99.99%の金属銅が析出したが、陽極室においては、過硫酸イオンは生成されていなかった。
また、実施例1と同様にして操作を繰り返したところ、15〜20サイクル目で銅を溶解させることができなくなった。
比較例2と同様に過硫酸アンモニウムを追加しながら操作を続けたが、50サイクル目で過硫酸アンモニウムが溶けなくなり、液寿命となった。