特許第5971606号(P5971606)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5971606
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】土壌浄化工法
(51)【国際特許分類】
   B09C 1/10 20060101AFI20160804BHJP
   B09C 1/02 20060101ALI20160804BHJP
   B09C 1/08 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   B09B3/00 EZAB
   B09B3/00 304K
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-247583(P2015-247583)
(22)【出願日】2015年12月18日
【審査請求日】2016年1月22日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 刊行物:第50回地盤工学研究発表会(札幌) 講演集DVD 発行所:公益社団法人地盤工学会 発行日:平成27年 6月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509023447
【氏名又は名称】強化土株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000162652
【氏名又は名称】強化土エンジニヤリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】新日鉄住金エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】島田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】角田 百合花
(72)【発明者】
【氏名】木嶋 正
(72)【発明者】
【氏名】今安 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】福永 和久
【審査官】 竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−124538(JP,A)
【文献】 特開2007−222737(JP,A)
【文献】 特開2011−074591(JP,A)
【文献】 特許第2852721(JP,B2)
【文献】 特開平10−281826(JP,A)
【文献】 特開2015−196135(JP,A)
【文献】 特許第5786237(JP,B1)
【文献】 特開2011−31187(JP,A)
【文献】 特開2008−237973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
B09B 1/00− 5/00
B09C 1/00
A62D 1/00− 9/00
C09K 17/00−17/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングを用いて地盤を掘削し、地盤中に削孔を形成する工程と、
管軸方向の一箇所又は複数個所に注入材吐出口を有する注入管を前記削孔内に設置する工程と、
前記ケーシングを引き上げながら、前記注入管の外周部と前記削孔の削孔壁との間の前記注入材吐出口位置より上方まで砂を充填して砂を主体とするフィルター層を形成する工程と、
前記ケーシングを引き上げながら、前記注入管の外周部と前記削孔の削孔壁との間の前記フィルター層の上方にシール材を充填する工程と、
前記注入管の注入材吐出口から非固結性の土壌浄化剤を吐出させる工程とを有し、
前記注入材吐出口から吐出させた非固結性の土壌浄化剤を、前記シール材により上部が拘束された前記フィルター層を通してフィルター層の高さに応じた幅で前記削孔壁から地盤中に浸透させることを特徴とする土壌浄化工法。
【請求項2】
請求項記載の土壌浄化工法において、前記シール材が、セメントベントナイトであることを特徴とする土壌浄化工法。
【請求項3】
請求項1または2記載の土壌浄化工法において、前記注入管は管軸方向の一箇所又は複数個所に注入材吐出口を有する注入細管が複数結束され、各注入細管の吐出口が異なる高さに設けられた結束注入細管であって、各注入細管の吐出口汚染物質が存在している土層に位置させることを特徴とする土壌浄化工法
【請求項4】
ケーシングを用いて地盤を掘削し、地盤中に削孔を形成する工程と、
管軸方向の一箇所又は複数個所に注入材吐出口を有する注入管を前記削孔内に設置する工程と、
前記ケーシングを引き上げながら、前記注入管の外周部と前記削孔の削孔壁との間の前記注入材吐出口位置の下方まで砂を充填して砂を主体とするフィルター層を形成する工程と、
前記ケーシングを引き上げながら、前記注入管の外周部と前記削孔の削孔壁との間の前記フィルター層の上方にベントナイトを含むシールパッカー層を形成させる工程と、
前記シールパッカー層の上方に、さらに前記注入管の注入材吐出口がある場合には、前記ケーシングを引き上げながら、前記注入管の外周部と前記削孔の削孔壁との間の前記注入材吐出口位置の下方まで砂を充填して砂を主体とするフィルター層を形成する工程と、
前記ケーシングを引き上げながら、前記注入管の外周部と前記削孔の削孔壁との間の前記フィルター層の上方にベントナイトを含むシールパッカー層を形成させる工程を、一または複数回繰り返す工程と、
前記注入管の注入材吐出口から非固結性の土壌浄化剤を吐出させる工程とを有し、
前記注入材吐出口から吐出させた非固結性の土壌浄化剤を、前記シールパッカー層で上部、又は上部並びに下部が拘束された前記フィルター層を通してフィルター層の高さに応じた幅で前記削孔壁から地盤中に浸透させることを特徴とする土壌浄化工法。
【請求項5】
請求項記載の土壌浄化工法において、前記シールパッカー層が、ベントナイトペレットからなることを特徴とする土壌浄化工法。
【請求項6】
請求項4または5記載の土壌浄化工法において、前記注入管は管軸方向の一箇所又は複数個所に注入材吐出口を有する注入細管が複数結束され、各注入細管の吐出口が異なる高さに設けられた結束注入細管であって、前記結束注入細管の吐出口の周りに砂を主体とするフィルター層形成することを特徴とする土壌浄化工法
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の土壌浄化工法において、前記注入管として前記注入材吐出口に柱状浸透源が設けられた注入管を用いることを特徴とする土壌浄化工法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の土壌浄化工法において、前記砂を主体とするフィルター層は径よりも高さが大きい柱状であることを特徴とする土壌浄化工法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の土壌浄化工法において、非固結性の土壌浄化剤が、バイオレメディエーションにおける微生物を含む土壌浄化剤、現地の微生物を活性化するための栄養源を含む土壌浄化剤、酸素溶解水、空気混入液、またはヒ素あるいは重金属の拡散防止に用いられる不溶化剤であることを特徴とする土壌浄化工法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の土壌浄化工法において、前記土壌浄化剤にトレーサーとしての塩化リチウムを添加しておくことを特徴とする土壌浄化工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤中に形成された削孔内に設置された注入管と、注入管と削孔壁との間に充填された砂を主体とするフィルター層及びシール手段により柱状浸透源を構成する土壌浄化剤注入装置を用いた土壌浄化工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、低圧注入の下で可能な限り大容量の注入材を可能な限り広範囲に均一に注入することができる注入管装置及び注入工法として、削孔内に建て込まれた注入管に当該注入管に設けられた注入材吐出口を開閉する逆止弁と、当該逆止弁を含む管軸方向の一定範囲を覆う柱状空間導水部材をそれぞれ取り付け、かつ前記削孔壁と前記注入管との間の間隙内にセメント又はセメントベントナイト液等のシールグラウトを充填することにより構成され、特に削孔壁と注入管との間のシールグラウトで覆われた柱状空間導水部材からなる柱状浸透源が管軸方向に一定範囲に形成されることにより、削孔の孔壁から周囲の地盤中に大容量の注入材を注入しても、注入材は柱状空間導水部材で覆われた一定長さの範囲からシールグラウトを破って柱状注入により低圧注入することができるようにした技術が開示されている。
【0003】
特許文献2には、ヒ素拡散防止用注入薬液として、ヒ素不溶化剤として硫酸第二鉄及び/又はポリ硫酸第二鉄、土壌固化剤として非アルカリシリカゾルを用い、非アルカリシリカゾルを固化させるための硬化剤及びpH調整剤の機能を有する酸として、リン原子を含まない酸を用いることにより、薬液自体のゲル化時間を適度に長くすることができ、かつ注入後のヒ素の不溶化、土壌の固化を速やかに行うことができ、さらにその固化を高い強度で実現することができる汚染土壌の浄化技術が開示されている。
【0004】
特許文献3には、バイオレメディエーション等の原位置浄化工法において、多点注入による浄化液の注入・浸透を、地盤の状況に応じて、各受け持ち対象範囲間で互いに拘束し合うように同時間内で所定量の注入が拘束し合って完了するようにシンクロナイズさせて行うことで、浄化液を当該対象範囲に一様に浸透させ、浸透が不十分な箇所が発生したり、或は汚染物質が対象範囲外へ押し出され逸脱することを防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4848553号公報
【特許文献2】特許第5209128号公報
【特許文献3】特許第5569618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、バイオレメディエーションにおいて、浄化液は微生物の栄養剤を水に溶かした非固化性水溶液であり、粘性や地中の挙動は水とほとんど同じである。また、重金属の拡散防止に用いられる不溶化剤等も固結性がない。ところで、このような浄化液(不溶化剤等も含む)は固結性がないため、地中に注入すると透水性が高い箇所へ流れ、地盤が互層の場合、シルト・粘土質には浸透させることが困難である。また、浄化液自体は土質の透水性に影響を及ぼすことなく、注入圧力により地下水と共に移動する。
【0007】
硬化性のない浄化液は注入するとゲル化しないため、どこまでも浸透してしまい、粗い層や層境に沿って逸脱しやすく、同時に汚染物質も押し出してしまう或は汚染物質が蓄積されやすい細粒土地盤には浸透しにくく原位置浄化が困難である。
【0008】
例えば、従来の一般的なダブルパッカー工法での注入は、一つの注入管において一深度(通常33cm)ごとの注入となるが、任意の注入ステージ(吐出口)で注入(通常毎分吐出量10リットル〜15リットル)した後、次の箇所の注入ステージ(吐出口)に移動して注入する際に、当該注入の圧力によって先行して注入した浄化液を押し出すため、浄化液が粗い土層へ移向し、それに伴って汚染物質が押し出されて拡散しやすく、また細粒土中の汚染物質に浄化液が作用しにくいという問題がある。
【0009】
また、ゲル化を伴うシリカグラウトと浄化材を併用して注入した場合(特許文献2)、ゲル化した浄化液中の浄化材が汚染物質に効果的に作用しない、あるいはゲルの存在により土中の微生物の活性化が阻害されるという問題がある。また、ゲル化を伴わない浄化材を注入した場合、浄化材が浸透しやすい土層に逸脱して汚染物の分布している地盤への浄化液の浸透が不十分となる。このため微生物の活性の環境が十分に整わず、汚染物質の濃度低減が進まないという問題が生ずる。
【0010】
また、自然注入は、帯水層の深度に有孔管又はスリットを設けた井戸を介して、地上から浄化液を重力によって地中に浸透させる方法であるが、自然注入では、透水性の良い土質に浄化液は浸透するものの、シルト・粘土質では浸透しないという問題がある。
【0011】
このように、従来技術の課題は、浄化液の浸透が不十分な箇所が生じて原位置浄化がしにくいという点にあった。
【0012】
特許文献3記載の技術はこのような課題の解決を図ったものであるが、地盤条件などによっては効率的な制御が難しい場合もあり得る。また、注入管のまわりに形成したシールグラウトを地盤注入材の注入圧を利用して壊し、浸透注入を図る工法もバラツキが生じるなどの問題がある。
【0013】
また、以上いずれの工法も注入管まわりにセメントやセメントベントナイト液等の固化剤を充填するため、その割裂に高い圧力を必要とし、また所定の注入ステージ全長に割裂が生じるとは限らず、柱状浸透が不十分であった。
【0014】
また、その固結はアルカリサイドで行われるため、浄化剤あるいは汚染物質がアルカリによって変質して有効な浄化が行われない問題もあった。
【0015】
本発明は従来技術における上述のような課題を解決することを目的としたものであり、土壌浄化剤を地盤中の必要な個所に大きな吐出量で低圧で土粒子間浸透により、より効率的に浸透させることができる土壌浄化剤注入装置、及び強度の高いシール材を用いることなく柱状浸透させ、かつ土壌浄化剤がシール材と化学変化を生じることのない土壌浄化工法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の土壌浄化剤注入装置は、地盤中に形成された削孔内に設置され、管軸方向の一箇所又は複数個所に注入材吐出口を有する注入管と、前記注入管の外周部と前記削孔の削孔壁との間の前記注入材吐出口位置を含む下方に充填された砂を主体とするフィルター層と、前記注入管の外周部と前記削孔の削孔壁との間の前記注入材吐出口位置より上方に充填されたシール材とからなり、前記注入材吐出口から吐出される土壌浄化剤が、前記シール材で上部が拘束された前記フィルター層を通してフィルター層の高さに応じた幅で前記削孔壁から地盤中に浸透するように構成されてなることを特徴とする。
【0017】
本発明の土壌浄化剤注入装置によって注入される土壌浄化剤としては、バイオレメディエーションにおける微生物を含む土壌浄化材や、現地の微生物を活性化するための栄養源を含む土壌浄化材や、酸素溶解水や空気混入液、空気、ヒ素あるいは重金属の拡散防止に用いられる不溶化剤などがある。
【0018】
これらは非固結性の注入材であり、注入管の注入材吐出口から注入された土壌浄化剤が砂を主体とするフィルター層で均等に分散されながら、フィルター層の高さに応じた幅で削孔壁から対象とする地層に浸透して行くため、大容量の注入材を低圧で浸透させることができる。また、その分、注入管の間隔を大きくとることができる。
【0019】
本発明の土壌浄化剤注入装置は、砂を主体とするフィルター層が高さ方向に幅を持った浸透源として機能し、大きな吐出量で単位浸透面積当たりの浸透速度は小さく注入圧が低い状態での大容量の浸透注入が可能となる。
【0020】
なお、本発明では、砂を主体とするフィルター層が浸透源としての機能を有するが、注入管の吐出口部分に従来知られている柱状浸透源を用いてもよいし、注入管の吐出部分については、1または複数の吐出口を有する複数の注入細管を組み合わせて汚染土の存在する土層ごとに吐出口が位置するように結束した結束注入細管を用いてもよい。
【0021】
フィルター層の上方に充填されるシール材は、水密性を備え、土壌浄化剤が対象とする地層以外に流出するのを防止するためのものであり、セメントベントナイトなどの水密性に加え硬化性及び強度を備えた材料を用いることが好ましい。
【0022】
本発明のもう一つの態様における土壌浄化剤注入装置は、地盤中に形成された削孔内に設置され、管軸方向の一箇所又は複数個所に注入材吐出口を有する注入管と、前記注入管の外周部と前記削孔の削孔壁との間の前記注入材吐出口位置より上方、又は上方並びに下方に形成されたベントナイトを含むシールパッカー層と、前記注入管の外周部と前記削孔の削孔壁との間の前記シールパッカー層の下方又は上下のシールパッカー層間に充填された砂を主体とするフィルター層とからなり、前記注入材吐出口から吐出される土壌浄化剤が、前記シールパッカー層で上部、又は上部並びに下部が拘束された前記フィルター層を通してフィルター層の高さに応じた幅で前記削孔壁から地盤中に浸透するように構成されてなることを特徴とする。
【0023】
なお、注入管の吐出口部分についても、1または複数の吐出口を有するもの、吐出口の高さが異なる複数の注入細管を組み合わせたものなどが適用可能である。
【0024】
シールパッカー層については、吸水膨張性のあるベントナイトペレットなどを用いることができる。ベントナイトペレットは、粒状に成型したものなどが市販されており、充填したフィルター層の上部にベントナイトペレットを投入することで、削孔内の水分を吸収して膨潤し、止水性のあるシールパッカー層が形成される。
【0025】
対象となる地盤の土質分布に応じ、透水性の高い砂層やシルト層位置に対応させて砂を主体とするフィルター層を設け、その境界部分や透水性の低い粘土層との境界部分にベントナイトを含むシールパッカー層を設け、フィルター層を通して注入材が効率よく狙った地層に浸透して行くようにする。
【0026】
また、フィルター層を形成する砂の粒度はその周辺の土よりも透水性がよいものであるのが好ましい。
【0027】
フィルター層が上下方向に形成される場合、最上部のフィルター層の上部または最上部のシールパッカー層の上部には必要に応じ、セメントベントナイトなどによるシール材を充填する。
【0028】
なお、砂を主体とするフィルター層は、施工条件にもよるが、径よりも高さが大きい柱状とすることで、その高さに応じた広い幅で土壌浄化剤としての注入材を柱状浸透させることができる。
【0029】
本発明の土壌浄化工法は、上述した土壌浄化剤注入装置を用いた工法であり、
(1) ケーシングを用いて地盤を掘削し、地盤中に削孔を形成する工程と、
(2) 管軸方向の一箇所又は複数個所に注入材吐出口を有する注入管、あるいは各注入細管の吐出口が異なる土層に位置するように設けた結束注入細管等を前記削孔内に設置する工程と、
(3) 前記ケーシングを引き上げながら、前記注入管あるいは結束注入細管の外周部と前記削孔の削孔壁との間の前記注入材吐出口位置より上方まで砂を充填して砂を主体とするフィルター層を形成する工程と、
(4) 前記ケーシングを引き上げながら、前記注入管の外周部と前記削孔の削孔壁との間の前記フィルター層の上方にシール材を充填する工程と、
(5) 前記注入管の注入材吐出口から非固結性の土壌浄化剤を吐出させる工程と、
を有し、
前記注入材吐出口から吐出させた非固結性の土壌浄化剤を、前記シール材により上部が拘束された前記フィルター層を通してフィルター層の高さに応じた幅で前記削孔壁から地盤中に浸透させることを特徴とする。
【0030】
本発明のもう一つの態様における土壌浄化工法は、
(1) ケーシングを用いて地盤を掘削し、地盤中に削孔を形成する工程と、
(2) 管軸方向の一箇所又は複数個所に注入材吐出口を有する注入管、あるいは各注入細管の吐出口が異なる土層に位置するように設けた結束注入細管等を前記削孔内に設置する工程と、
(3) 前記ケーシングを引き上げながら、前記注入管の外周部と前記削孔の削孔壁との間の前記注入材吐出口位置の下方まで砂を充填して砂を主体とするフィルター層を形成する工程と、
(4) 前記ケーシングを引き上げながら、前記注入管の外周部と前記削孔の削孔壁との間の前記フィルター層の上方にベントナイトを含むシールパッカー層を形成させる工程と、
(5)-1 前記シールパッカー層の上方に、さらに前記注入管の注入材吐出口がある場合には、前記ケーシングを引き上げながら、前記注入管の外周部と前記削孔の削孔壁との間の前記注入材吐出口位置の下方まで砂を充填して砂を主体とするフィルター層を形成する工程と、
(5)-2 前記ケーシングを引き上げながら、前記注入管の外周部と前記削孔の削孔壁との間の前記フィルター層の上方にベントナイトを含むシールパッカー層を形成させる工程、
の(5)-1及び(5)-2の工程を一または複数回繰り返す工程と、
(6) 前記注入管の注入材吐出口から非固結性の土壌浄化剤を吐出させる工程と、
を有し、
前記注入材吐出口から吐出させた非固結性の土壌浄化剤を、前記シールパッカー層で上部、又は上部並びに下部が拘束された前記フィルター層を通してフィルター層の高さに応じた幅で前記削孔壁から地盤中に浸透させることを特徴とする。
【0031】
本発明を土壌浄化に適用する場合において、土壌浄化の対象とする有害物としては、6価クロム、水銀、鉛、カドミウム等の重金属、土木工事等によって発生する廃泥土、焼却灰、汚泥、産業廃棄物、環境ホルモン、農薬残留物、有機溶剤、有機洗剤等の有機化合物、ダイオキシン等人体や環境に悪影響を及ぼす有害物などがあり、例として、アルキル水銀、総水銀、カドミウム、鉛、有機リン、六価クロム、ヒ素、シアン、PCB、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、シス−1,2−ジクロロエチレン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、13−ジクロロプロペン、チウラム、シマジン、チオベンカルブ、ベンゼン、セレン等が挙げられる。
【0032】
バイオレメディエーションでの微生物による分解例としては、一例を示すと次のとおりである。
【0033】
産業廃棄物中の有機物は細菌や糸状金菌等の微生物によって分解される。発ガン物質であるトリハロメタンの生成に関与するアンモニアは硝化菌により、工業用溶剤トリクロロエチレンはアンモニア酸化菌により分解される。また、農薬は土壌中の糸状菌、細菌、放射菌によって分解される。
【0034】
これらの微生物は地盤注入材としての浄化液によって活性化されて上記汚染物質を分解する。
【0035】
例えば、パラチオンはPseudomonas stuzeriとPseudomonas aeruginosaの共同により分解される。また、カーバメイト系殺虫剤はPenicillium、Trichodermaによって分解される。さらに、PCBはPseudomonas、Alcaligenesによって分解され、クロロベンゼンもPseudomonasによって分解される。
【0036】
本浄化液によって活性化される土壌微生物としては、植物の葉に生息する微生物や菌類、細菌類がある。典型的には酵母、糸状菌、細菌である。
【0037】
葉の表面に生息している微生物の種類としては、例えばPseudozyma属(P.antarctica、P.ruglosa、P.parantarctica、P.aphidisなど)やCryptococcus属(Cryptococcus laurenti、Cryptococcus flavusなど)、その他、Rhodotorula glutinis、Rhodotorula mucilaginosa、Sakaguchia dacryoidea、Sporidiobolus pararpseusやUstilago maydisなどが知られている。
【0038】
例えばPseudozyma antarctica JCM3941、Pseudozyma antarctica JCM10317、Pseudozyma antarctica JCM3941、Pseudozyma ruglosa JCM10323およびPseudozyma parantarctica JCM11752等が挙げられる。
【0039】
上記糸状菌としては、例えば、Acremonium属、Alternaria属、Arthrinium属、Aspergillus属、Aureobasidium属、Cladosporium属、Epicoccum属、Exophiala属、Fusarium属、Leptosphaeria属、Paecilomyces属、Penicillium属、Phoma属、Trichoderma属、Pseudotaeniolina属、Ulocladium属、Phaeosphaeriopsis属、Galactomyces属の糸状菌が挙げられる。
【0040】
また、バイオレメディエーションの場合等において、微生物による分解を促進させる目的で、土壌浄化剤に加え空気又はマイクロバブルを注入することもできる。空気又はマイクロバブルは土壌浄化剤と別々に注入することもできるが、土壌浄化液に空気又はマイクロバブルを混入して注入してもよい。
【0041】
本発明をヒ素拡散防止等の重金属等の不溶化工法に適用する場合には、土壌浄化剤としてのヒ素不溶化剤として硫酸第二鉄及び/又はポリ硫酸第二鉄を用いることができる。
【0042】
その他、本発明の土壌浄化工法に用いることができる注入材料(土壌浄化剤)としては、例えば表1に示すようなものがある。
【0043】
【表1】
【発明の効果】
【0044】
本発明の土壌浄化剤注入装置は、注入管の周囲に地盤注入材の浸透を促す砂を主体とするフィルター層と、地盤注入材の浸透を阻止するベントナイトを含有するシール材又はシールパッカーの層が互層に形成されており、注入管の注入材吐出口が砂を主体とするフィルター材層に位置するよう構成されていることで、注入材吐出口から吐出される土壌浄化剤が、シール材でシールパッカーの層で拘束された砂を主体とするフィルター層を通してフィルター層の高さに応じた幅で地盤中に浸透するように構成されており、土壌浄化剤を地盤中の必要な個所に大きな吐出量で低圧で土粒子間浸透により効率的に浸透させることができる。
【0045】
従来のシールグラウトの場合、シールグラウトの成分が、土壌浄化剤と化学的変化を起こしたり、バイオレメディエーションの場合には微生物や栄養源に影響を与えるといった恐れがあったのに対し、本発明の土壌浄化剤注入装置は砂を主体とするフィルター層の中を浸透させるため、そのような問題が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】本発明の一実施形態における施工手順を示す鉛直断面図である。
図2】本発明に関し、多点同時注入を行う場合の多点地盤注入装置の構成を示す概要図である。
図3】本発明の他の実施形態における施工手順を示す鉛直断面図である。
図4】地盤の各層に同時注入を行う場合を概略的に示した鉛直断面図である。
図5】地盤の特定の層に注入を行う場合を概略的に示した鉛直断面図である。
図6図3に対応する地盤注入工法について、多点同時注入を行う場合の装置構成を示す概要図である。
図7】実証実験における土質柱状図と注入試験孔及び観測孔(観測井戸)の標準断面を示した図である。
図8】実証実験における注入試験孔と観測孔(観測井戸)、確認孔(ボーリング)の平面配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。なお、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0048】
図1は本発明の一実施形態における施工手順を示したものであり、以下の手順で施工を行うことができる。
(1) ケーシング3を用いて地盤を掘削し、地盤中に削孔1を形成する(図1(a)参照)。
(2) 注入管2を削孔1内に設置する(図1(b)参照)。なお、図示した例は、注入管2の先端の1または複数の吐出口の周囲に柱状浸透源4を有する場合である。この柱状浸透源4は地盤中の注入を行う層の深さに対応する位置に設ける。
(3) ケーシング3を引き上げながら、注入管2の外周部と削孔1の削孔壁との間に硅砂などの砂を柱状浸透源4の上方まで充填して砂による柱状のフィルター層Sを形成する(図1(c)〜(d)参照)。
(4) ケーシング3を引き上げながら、注入管2の外周部と削孔1の削孔壁との間のフィルター層Sの上に、ベントナイトを粒状に加工したベントナイトペレットを充填する。ベントナイトペレット削孔2内で水分を吸収して膨潤し、水密性のシールパッカー層BP(ベントナイトペレット)を形成する(図1(e)参照)。
(5) さらにケーシング3を引き上げながら、注入管2の外周部と削孔1の削孔壁との間のシールパッカー層BPの上にセメントベントナイトなどによるシール材CB(セメントベントナイト)を充填する(図1(f)参照)。
(6) 以上の手順により本発明の土壌浄化剤注入装置が形成され、注入管2の吐出口に設けられた柱状浸透源4から土壌浄化材を吐出する(図1(g)参照)。吐出された土壌浄化剤は透水性の高い砂を主体とするフィルター層Sをスムーズに浸透し、大容量の土壌浄化剤を削孔壁から低圧で地盤中の対象とする地層に浸透させることができる。
【0049】
なお、注入の対象とする地盤の深さ、その他の条件に応じて、上述の(4)の手順を省略し、フィルター層Sの上に直接セメントベントナイトなどによるシール材CBを充填してもよい。
【0050】
図2は本発明に関し、多点同時注入を行う場合の多点地盤注入装置の構成を概略的に示したものである。
【0051】
多点地盤注入装置Aは貯蔵タンク10と、それぞれモータ等の独立した駆動源16で作動し、かつ集中管理装置17に接続されて制御される多数のユニットポンプ12を備え、貯蔵タンク10にそれぞれ導管11を通して連結される多連装注入装置と、地盤中の注入ポイントに配置された、それぞれ各ユニットポンプ12と導管11を通して接続された複数の注入管2とを備える。
【0052】
独立した多数のユニットポンプ12には集中管理装置17に接続して制御されるインバータ等の回転数変速機15が備えられ、さらにユニットポンプ12と注入管2を連結する導管11には、それぞれ集中管理装置17に接続して制御される流量圧力検出器13が備えられる。
【0053】
上述の構成により、流量圧力検出器13からの流量/およびまたは圧力データの信号を集中管理装置17に送信し、貯蔵タンク10中の土壌浄化剤を各ユニットポンプ12の作動により任意の注入速度、注入圧力あるいは注入量で各注入管2に圧送し、砂を主体とする複数のフィルター層Sから同時に地盤中に多点注入することができる。
【0054】
図3は本発明の他の実施形態における施工手順を示したものであり、以下の手順で施工を行うことができる。
(1) ケーシング3を用いて地盤を掘削し、地盤中に削孔1を形成する(図3(a)参照)。
(2) 異なる地層を対象とする複数の注入管2を削孔1内に設置する(図3(b)参照)。なお、図示した例は、各注入管2の先端の1または複数の吐出口の周囲に柱状浸透源4を有する場合である。この柱状浸透源4は地盤中の注入を行う層の深さに対応する位置に設ける。
この場合の注入管2については、異なる高さに吐出口を有する複数の注入細管を束ねた結束細管としてもよい。
(3) ケーシング3を引き上げながら、注入管2の外周部と削孔1の削孔壁との間に硅砂などの砂を最下段の柱状浸透源4の上方まで充填して砂による柱状のフィルター層Sを形成する(図3(c)参照)。
(4) ケーシング3を引き上げながら、注入管2の外周部と削孔1の削孔壁との間の最下層のフィルター層Sの上に、ベントナイトを粒状に加工したベントナイトペレットを充填する。ベントナイトペレットが削孔2内で水分を吸収して膨潤し、水密性のシールパッカー層BP(ベントナイトペレット)を形成する(図3(d)参照)。
(5) さらにケーシング3を引き上げながら、同様に2段目のフィルター層S及びシールパッカー層BPを形成する(図3(e)参照)。
(6) 同様に3段目のフィルター層S、シールパッカー層BP、4段目のフィルター層Sを形成する(図3(f)参照)。
(7) さらにケーシング3を引き上げながら、注入管2の外周部と削孔1の削孔壁との間の最上段(4段目)のフィルター層Sの上にセメントベントナイトなどによるシール材CBを充填する(図3(g)参照)。場合によっては、最上段(4段目)のフィルター層Sの上に、ベントナイトペレットによる4段目のシールパッカー層BPを形成し、その上にセメントベントナイトなどによるシール材CBを充填するようにしてもよい。
(8) 以上の手順により本発明の土壌浄化剤注入装置が形成され、注入管2の吐出口に設けられた柱状浸透源4から土壌浄化材を吐出する(図3(h)参照)。吐出された土壌浄化剤は、柱状浸透源4の位置する各層ごと透水性の高い砂を主体とするフィルター層Sをスムーズに浸透し、大容量の土壌浄化剤を削孔壁から低圧で地盤中の対象とする地層に浸透させることができる。
【0055】
図4図3の実施形態において、地盤の各層に同時注入を行う場合を概略的に示した鉛直断面図である。
【0056】
削孔1内に複数の注入管2が建て込まれており、各注入管2の先端に柱状浸透源4が設けられている。柱状浸透源4の構成は、例えば注入管2の先端を閉塞した構造とし、先端の側部に1または複数の注入材吐出口が形成され、その周りに吐出口を有する被覆材が所定の区間を覆うように取り付けられている。
【0057】
注入管外周部の、注入材吐出口を有する部分を含む管軸方向の一定範囲に透水性被覆を形成するものであればよい。この場合、一定の厚さを有し、網状またはスポンジ状で、透水性と弾力性に富む素材から筒状または帯状に形成されたものが望ましいが、他に織布、不織布、透水性合成樹脂材、各種ドレーン材、さらには、全体に複数の注入材吐出口や注入材吐出スリットを有するチューブ、袋体或いは樹脂繊維などからなる網状体またはかご状体、さらには合成樹脂テープ等を用いることができる。
【0058】
また、注入管先端部に1又は複数の吐出口が設けられ、その上に逆止弁の作用をする被覆材を設ければ、吐出口から出た土壌浄化剤は柱状の砂柱を軸方向に流れ、或いは分散してから周辺地盤に浸透して柱状浸透することになる。
【0059】
このように構成された各注入管2の先端は削孔1の深さ方向に所定間隔をおいて位置するように配置されている。そして、削孔1の孔壁と各注入管2との間に、硅砂等を充填したフィルター層Sが形成されている。
【0060】
このような構成において、フィルター層Sが2重の柱状浸透源を構成し、複数の注入管2に注入材を同時に注入することにより、複数の注入ステージA,B,C,D内に土壌浄化剤を同時に注入することができる。
【0061】
図5は地盤の特定の層に注入を行う場合を概略的に示した鉛直断面図である。
【0062】
本発明により、削孔1内に、砂によるフィルター層Sとベントナイトペレットを充填してなるシールパッカー層BPが互層に形成され、注入管2の側面に設けられた吐出口から特定のフィルター層Sに土壌浄化剤が吐出され、フィルター層Sが柱状浸透源として作用し、削孔1の孔壁から特定の地層に対し地盤注入が行われる。
【0063】
図5(a)は上下の2層について同時に注入が行われた場合、図5(b)は上側の一層のみに注入が行われた場合であり、フィルター層Sが柱状浸透源として作用し、周囲の地盤中に土壌浄化剤を均等に浸透注入させることができる。
【0064】
図5(c)は本発明にダブルパッカー工法を適用して施工を行う場合を概略的に示した鉛直断面図である。
【0065】
注入管2はこの例で管軸方向の複数箇所に注入材吐出口5aを有する注入外管2aと、注入外管2a内に設置された注入内管2bとからなり、注入内管2bから注入外管2a内に吐出させた地盤注入材を注入外管2aの注入材吐出口5から吐出させ、シールパッカー層BPで上部及び下部が拘束された柱状フィルター層Sを通して削孔1の孔壁から地盤中に浸透させる構成となっている。
【0066】
この場合も、砂によるフィルター層Sが均質で透水性の高い柱状浸透源として作用し、地盤注入材を地盤中の必要な個所に大きな吐出量で低圧で土粒子間浸透により効率的に浸透させることができる。
【0067】
注入内管2bは先端部にある吐出口5bの上下にダブルパッカー6を設け、上下のダブルパッカー6間に位置する注入外管2aの逆止弁を有する1つ又は複数の吐出口5bから注入材がフィルター層Sを通して地盤中に注入される。
【0068】
図6図3に対応する土壌浄化工法について、多点同時注入を行う場合の装置構成を概略的に示したものである。
【0069】
すなわち、複数の注入地点において複数の注入ステージA,B,C,Dに土壌浄化剤を同時に注入できるように構成したものである。図において、複数の注入地点にそれぞれ形成された各削孔1内に、図3図4に示した土壌浄化剤注入装置の複数の注入管2が建て込まれている。
【0070】
各注入管2の先端は削孔1の深さ方向に所定間隔をおいて位置するように配置されている。また、削孔1の孔壁と各注入管2との間に砂によるフィルター層Sとベントナイトペレットを充填してなるシールパッカー層BPが互層に形成され、最上部にはセメントベントナイトによるシール材CBが充填されている。
【0071】
また、土壌浄化剤貯蔵タンク10、導管11、ユニットポンプ12、流量圧力検出器13などを備えている点等の、その他の構成は図2の多点注入の場合と基本的に同じである。
【0072】
そして、各注入地点の注入管2に土壌浄化剤を同時に或いは選択的に注入することにより、複数の注入地点の複数の注入ステージA,B,C,Dの地盤中に土壌浄化剤を同時に注入することができる。
【0073】
〔実証実験〕
本発明による土壌浄化剤の浸透状況を確認するため、注入液(トレーサー)として塩化リチウムを溶解した水溶液を使用した実証実験を行った。
【0074】
図7は土質柱状図と注入試験孔及び観測孔(観測井戸)の標準断面を示したものであり、図8は注入試験孔Iと観測孔(観測井戸)W1〜W4、確認孔(ボーリング)B1〜B4の平面配置図である。
【0075】
注入試験孔Iについては、図7の左側に示すようにケーシングで土質柱状図における細粒砂岩層内に達する地表面から3.5mの深さまで削孔し、土質柱状図における砂(礫)層に到達する長い方の注入管(吐出口には200mmの柱状浸透源を形成)を設置して削孔壁との間に硅砂(3号)の柱状のフィルター層を900mmの厚さに形成させ、その上にベントナイトペレットで200mmの厚さのシールパッカー層を形成させ、土質柱状図における有機質シルト層に到達する短い方の注入管(吐出口は柱状浸透源)を設置して削孔壁との間に硅砂(3号)の柱状のフィルター層を900mmの厚さに形成させ、その上にベントナイトペレットで300mmの厚さのシールパッカー層を形成させ、さらにその上にセメントベントナイトを充填してなるシール材によって土質柱状図における有機質粘土層及び改良土層に対応する深さをシールし拘束している。
【0076】
注入液(トレーサー)として塩化リチウムを溶解した水溶液を用いた。塩化リチウムの希釈率は200mg/l(ppm)とした。
【0077】
観測孔(観測井戸)W1〜W4については、図7の右側に示すように注入試験孔Iの場合と同様にして(ただし、最下部の細粒砂岩層部分にもベントナイトペレットによるシールパッカー層は設けている)、下部の地下水を観測する長い方のケーシング管の先端に設けた長さ500mmのストレーナー管が砂(礫)層における地下水を観測し、上部の地下水を観測する短い方のケーシング管の先端に設けた長さ500mmのストレーナー管が有機質シルト層における地下水を観測する構成とした。
【0078】
確認孔(ボーリング)B1〜B4については、φ86mmのコア採取を行い、土壌資料の分析を行った。
【0079】
リチウムの分析は、土壌資料については検液を環境省告示第19号(平成15年)を準用して作成し、フレーム原子吸光法で測定した。地下水についてはフレーム原子吸光法で測定した。
【0080】
表2は本試験における確認孔B1〜B4における各深さでのリチウム含有量、表3は観測孔W1〜W4の上部及び下部における各深さでのリチウム含有量をまとめたものである。
【0081】
なお、塩化リチウムは自然状態の土壌には存在しないため、上述のようなトレーサーとして適しており、溶解液はほぼ中性に近いので、土壌や地盤注入剤に与える影響も少ない。
【0082】
このように、土壌浄化剤の代わりにトレーサーとしての塩化リチウムを注入することで注入材を注入した場合の浸透状況を確認することができる。
【0083】
また、事前の浸透確認試験に限らず、本発明による土壌浄化工法において、土壌浄化剤に塩化リチウムを添加しておき、浸透の確認に利用することもできる。
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【符号の説明】
【0086】
S…フィルター層(砂)、
BP…シールパッカー層(ベントナイトペレット)、
CB…シール材(セメントベントナイト)、
1…削孔、
2…注入管、
3…ケーシング、
4…柱状浸透源、
5…吐出口、
10…注入材貯蔵タンク、
11…導管、
12…ユニットポンプ、
13…流量圧力検出器、
14…逆止弁、
15…回転数変速機、
16…駆動源、
17…集中管理装置
【要約】      (修正有)
【課題】土壌浄化剤を地盤中の必要な個所に大きな吐出量で低圧で土粒子間浸透により、より効率的に浸透させることができる土壌浄化剤注入装置及土壌浄化工法の提供。
【解決手段】削孔1内に複数の注入管2が建て込まれており、各注入管2の先端の注入材吐出口部分には柱状浸透源4が設けられている。削孔1の孔壁と各注入管2との間に、硅砂等を柱状に充填したフィルター層Sとベントナイトを含むシールパッカー層BPが互層に形成され、最上部にセメントベントナイト等によるシール材CBが充填されている。各注入管2の柱状浸透源4はそれぞれ異なる高さのフィルター層Sに位置し、各注入管2から吐出される土壌浄化剤が、シールパッカー層BPで上部並びに下部が拘束されたフィルター層Sを通してフィルター層Sの高さに応じた幅で削孔1の孔壁から地盤中の複数の注入ステージA,B,C,D内に浸透するようにした土壌浄化剤注入装置及土壌浄化工法。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8