【文献】
Jasti R. et al,Synthesis, Characterization, and Theory of [9]-, [12]-, and [18] Cycloparaphenylene: Carbon Nanohoop Structures,J. AM. CHEM. SOC.,2008年,Vol.130,pp.17646-17647
【文献】
Yagi A. et al,Synthesis and Properties of [9] Cyclo-1,4-naphthylene: A π-Extended Carbon Nanoring,J. AM. CHEM. SOC.,2012年 1月31日,Vol.134,pp.2962-2965
【文献】
八木 亜樹子 他,シクロナフチレンの合成と性質,日本化学会第91春季年会(2011)講演予稿集IV,2011年 3月11日,第1524頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0040】
(式中、kは同じか又は異なり、それぞれ0、1又は2;mは同じか又は異なり、それぞれ1、2又は3;nは3、4、5又は6を示す。)
で表されるシクロポリアリーレン化合物は、一般式(6):
【0042】
(式中、k及びmは前記に同じ。)
で表される繰り返し単位が連なった輪状構造を有する化合物を意味する。なお、一般式(1)で示される本発明の化合物は、前記一般式(6)を満たす単独の繰り返し単位のみから構成される化合物であってもよいし、前記一般式(6)を満たす複数の繰り返し単位から構成される化合物であってもよい。
【0043】
一般式(1)において、kは同じか又は異なり、それぞれ0、1又は2である。kはそれぞれ同一でも異なっていてもよいが、好ましくは同一である。また、kは0又は1が好ましい。一方、一般式(1)において、mは同じか又は異なり、それぞれ1、2又は3である。mはそれぞれ同一でも異なっていてもよいが、好ましくは同一である。また、mは1又は2が好ましく、1がより好ましい。つまり、一般式(6)における縮合多環式芳香族炭化水素部位が、ナフタレン、アントラセン、ナフタセン、ペンタセン等であるものが好ましく、ナフタレン又はアントラセンであるものが好ましい。
【0044】
一般式(1)において、nは3、4、5又は6であり、3、4又は5が好ましく、3又は4がより好ましく、3が特に好ましい。つまり、一般式(6)で表される繰り返し単位が9、12又は15個有するものが好ましく、9又は12個有するものがより好ましく、9個有するものが特に好ましい。
【0045】
より好ましい具体例としては、全てのkが0、全てのmが1、nが3である以下の化合物(1a)が挙げられる。
【0047】
他のより好ましい具体例としては、全てのkが1、全てのmが1、nが3である以下の化合物(1b)、全てのkが0、全てのmが2、nが3である化合物(1c)が挙げられる。
【0050】
本発明の一般式(1)で表されるシクロポリアリーレン化合物は、例えば、反応式1で示す製造方法により製造することができる。
【0053】
(式中、Xは同じか又は異なり、それぞれハロゲン原子;R
1は同じか又は異なり、それぞれアルキル基又は水酸基の保護基;Rは同じか又は異なり、それぞれ水素原子、アルキル基又は水酸基の保護基;k、m及びnは前記に同じである。)
【0054】
Xで示されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、好ましくは臭素原子又はヨウ素原子である。Xは同一又は異なっていてもよいが、好ましくは同一である。
【0055】
R
1で示されるアルキル基としては、例えば、C1〜6のアルキル基、好ましくはC1〜3のアルキル基、より好ましくはメチル基又はエチル基、特に好ましくはメチル基である。C3以上のアルキル基は直鎖状又は分岐状のいずれでもよい。
【0056】
R
1で示される水酸基の保護基としては、例えば、アルカノイル基(例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル等のC1〜4のアルカノイル基)、置換されていてもよいアラルキル基(例えば、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、p−ニトロベンジル基等)、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基等)、アルコキシアルキル基(例えば、メトキシメチル基等)、テトラヒドロピラニル(THP)基等が挙げられる。
【0057】
上記R
1のうち好ましくはアルキル基、特に好ましくはメチル基である。
【0058】
なお、R
1及び水素原子(H)を併せてRと表記する場合もある。このRについても、R
1と同様に、好ましくはアルキル基、特に好ましくはメチル基である。
【0059】
化合物(3a)の合成:
一般式(3a)で表される化合物は、一般式(4)で表される化合物のハロゲン原子(X)の1つを金属試薬により金属に変換し(第1工程;ハロゲン−金属交換反応)、これにより得られた化合物と一般式(5)で表される化合物とを反応させる(第2工程)ことにより製造することができる。
【0060】
一般式(4)で表される化合物としては、例えば、1,4−ジハロナフタレン、1,4−ジハロアントラセン、9,10−ジハロアントラセン、1,4−ジハロナフタセン、5,12−ジハロナフタセン等が挙げられ、具体的には、1,4−ジブロモナフタレン、1,4−ジヨードナフタレン、1−ブロモ−4−ヨードナフタレン、1,4−ジブロモアントラセン、1,4−ジヨードアントラセン、1−ブロモ−4−ヨードアントラセン、9,10−ジブロモアントラセン、9,10−ジヨードアントラセン、9−ブロモ−10−ヨードアントラセン等が挙げられる。
【0061】
一般式(5)で表される化合物としては、例えば、1,4−ナフトキノン、1,4−アントラセンジオン、9,10−アントラセンジオン、1,4−ナフタセンジオン、5,12−ナフタセンジオン等が挙げられる。
【0062】
反応は通常溶媒の存在下で実施することができ、第1工程及び第2工程ともに、用い得る溶媒として、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン(DME)、ジグライム、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、t−ブチルメチルエーテル(TBME)等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。好ましくはエーテル類、特に好ましくはジエチルエーテルである。反応は無水の条件で実施することが好ましい。また、第1工程及び第2工程で使用する溶媒は同一でも異なっていてもよい。
【0063】
一般式(4)で表される化合物のハロゲン原子(X)の1つを金属に変換する金属試薬としては、例えば、リチウム試薬、マグネシウム試薬等が挙げられる。
【0064】
リチウム試薬としては、例えば、金属リチウム、アルキルリチウム(例えば、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム等)、フェニルリチウム等が挙げられる。かかるリチウム試薬を用いてハロゲン原子がリチオ化される。好ましくは、n−ブチルリチウムである。
【0065】
マグネシウム試薬としては、例えば、マグネシウム金属、アルキルマグネシウムハライド(例えば、イソプロピルマグネシウムクロリド、イソプロピルマグネシウムブロミド等)等が挙げられる。かかるリチウム試薬を用いてハロゲン原子がマグネシオ化される。好ましくは、イソプロピルマグネシウムクロリドである。
【0066】
上記の金属試薬は市販されているか、或いは当業者が公知技術に基づき容易に調製することができる。
【0067】
金属試薬の使用量は、一般式(4)で表される化合物1モルに対し、通常1〜1.5モル、好ましくは1〜1.2モル、より好ましくは1〜1.15モルである。
【0068】
一般式(5)で表される化合物の使用量は、一般式(4)で表される化合物1モルに対し、通常0.1〜0.6モル、好ましくは0.3〜0.5モル、より好ましくは0.35〜0.5モル、特に好ましくは0.4〜0.5モルである。
【0069】
上記の金属試薬と共に、塩化セリウム、塩化リチウム、臭化マグネシウム、塩化銅等の金属塩を使用することができる。これにより、副反応を抑制したり、試薬の有機溶媒への溶解性を向上させたりして、反応を促進することができる。特に、上記金属試薬のうちリチウム試薬と共に金属塩を用いた場合にその効果が高い。
【0070】
金属塩を用いる場合の使用量は、一般式(4)で表される化合物1モルに対し、通常0.1〜100モル、好ましくは0.5〜20モルである。
【0071】
反応温度は、第1工程及び第2工程ともに、通常、−100℃〜溶媒の沸点(溶媒がジエチルエーテルの場合は35℃)までの範囲から適宜選択できる。好ましくは、第1工程においてアルキルリチウムを用いた場合には、−100℃〜0℃、好ましくは−80℃〜−40℃程度である。また、第1工程及び第2工程の反応温度は同一でも異なっていてもよい。
【0072】
反応は、第1工程及び第2工程ともに、通常、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン等)雰囲気下で実施することが好ましい。
【0073】
反応時間は特に限定はなく、第1工程及び第2工程ともに、例えば、1分〜24時間が例示される。
【0074】
反応終了後は、反応混合物を通常の濾過、濃縮、抽出等の単離手段に供し、必要に応じカラムクロマトグラフィ、再結晶化等の通常の精製手段に供することにより、反応生成物を単離及び精製することができる。
【0075】
上記反応で得られる一般式(3a)で表される化合物は、通常、下記のシス体(3a−cis)及びトランス体(3a−trans)の立体配置の異なる異性体を与えるが、シス体が選択的に得られる。シス体は上記の単離及び精製手段で容易に得ることができる。シス体(3a−cis)は、分子が屈曲しておりL字型の構造を有しているため、後述するカップリング反応において効率的に輪状生成物を与える。例えば、一般式(3a−cis)において、全てのkが0であり、全てのmが1である化合物の場合、1,4−ジヒドロナフタレン環の1位及び4位の2つの縮合芳香族基のなす角度は約70°となる。
【0076】
得られた一般式(3a)で表される化合物は、混合物のまま次の反応に供することができ、必要に応じシス体を単離及び精製して次の反応に供することもできる。
【0078】
(式中、X、k及びmは前記に同じ;太線は紙面手前側に、点線は紙面奥側に配置していることを示す。但し、いずれも相対配置である。)
【0079】
化合物(3b)の合成:
一般式(3b)で表される化合物は、一般式(3a)で表される化合物(特に、一般式(3a−cis)で表される化合物)の水酸基をアルキル化又は水酸基の保護基で保護することにより製造することができる。
【0080】
アルキル化反応は、通常、溶媒の存在下又は非存在下、塩基の存在下、アルキル化剤を反応させて実施することができる。
【0081】
用い得る溶媒として、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン(DME)、ジグライム、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、t−ブチルメチルエーテル(TBME)等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、N−メチルピロリドン(NMP)等のアミド類;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。好ましくはエーテル類、特に好ましくはテトラヒドロフランである。反応は無水の条件で実施することが好ましい。
【0082】
塩基としては、例えば、水素化ナトリウム、水素化カルシウム、水素化リチウム等のアルカリ金属ハイドライド;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、等のアルカリ金属水酸化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、ピリジン等の含窒素有機化合物等が挙げられる。好ましくはアルカリ金属ハイドライド、特に好ましくは水素化ナトリウムである。
【0083】
アルキル化剤としては、通常C1〜6のアルキル化剤が好ましく、例えば、アルキルハライド(例えば、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル等)、ジアルキル硫酸(例えば、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等)、アルキルトリフラート、アルキルトシラート等が挙げられる。好ましくはアルキルハライド、特に好ましくはヨウ化メチルである。
【0084】
塩基の使用量は、一般式(3a)で表される化合物1モルに対し、通常2〜50モル程度、好ましくは2〜30モル程度、より好ましくは2〜15モル程度である。
【0085】
アルキル化剤の使用量は、一般式(3a)で表される化合物1モルに対し、通常2〜50モル程度、好ましくは2〜30モル程度、より好ましくは2〜15モル程度である。
【0086】
反応温度は、通常、−50℃〜溶媒の沸点までの範囲から適宜選択できる。好ましくは、−10℃〜溶媒の沸点である。
【0087】
反応は、通常、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン等)雰囲気下で実施することが好ましい。
【0088】
反応時間は特に限定はなく、例えば、1分〜100時間が例示される。
【0089】
或いは、水酸基の保護基で保護する反応は、水酸基の保護基(例えば、アルカノイル基、置換されていてもよいアラルキル基、シリル基、アルコキシアルキル基、テトラヒドロピラニル基等)を導入し得る公知の保護反応を用いて実施することができる。
【0090】
反応終了後は、反応混合物を通常の濾過、濃縮、抽出等の単離手段に供し、必要に応じカラムクロマトグラフィ、再結晶化等の通常の精製手段に供することにより、反応生成物を単離及び精製することができる。
【0091】
上記反応で得られる一般式(3b)で表される化合物は、一般式(3a)で表される化合物がシス体及びトランス体の混合物の場合は、シス体(3b−cis)及びトランス体(3b−trans)の立体配置の異なる異性体を与えるが、上記の単離手段でシス体のみを得ることができる。
【0092】
本反応で得られるシス体(3b−cis)のうち、例えば、実施例2で得られる化合物のX線結晶構造解析の結果を表1及び
図2に示す。
【0093】
ここで、一般式(3a)で表される化合物と一般式(3b)で表される化合物を併せて、一般式(3)で表される化合物として表すことができる。一般式(3)で表される化合物は、共につぎの反応に供することができる。
【0095】
(式中、R、X、k及びmは前記に同じである。)
【0096】
化合物(2)の合成:
一般式(2)で表される化合物は、通常、溶媒の存在下、遷移金属化合物の存在下、一般式(3)で表される化合物(好ましくは一般式(3b−cis)で表される化合物)を反応(ホモカップリング反応)させて製造することができる。
【0097】
遷移金属化合物としては、例えば、10族の遷移金属(Ni、Pd、Pt)を含む化合物が挙げられ、好ましくはニッケル(Ni)を含む化合物である。このNiを含む化合物としては、0価のNi(0)又は2価のNi(II)の化合物(塩又は錯体)が好ましい。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0098】
上記Ni(0)の化合物としては、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)(Ni(cod)
2)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジカルボニル、ニッケルカルボニル等が挙げられる。
【0099】
また、上記Ni(II)の化合物としては、酢酸ニッケル(II)、トリフルオロ酢酸ニッケル(II)、硝酸ニッケル(II)、塩化ニッケル(II)、臭化ニッケル(II)、ニッケル(II)アセチルアセトナート、過塩素酸ニッケル(II)、クエン酸ニッケル(II)、シュウ酸ニッケル(II)、シクロヘキサン酪酸ニッケル(II)、安息香酸ニッケル(II)、ステアリン酸ニッケル(II)、ステアリン酸ニッケル(II)、スルファミンニッケル(II)、炭酸ニッケル(II)、チオシアン酸ニッケル(II)、トリフルオロメタンスルホン酸ニッケル(II)、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(II)、ビス(4−ジエチルアミノジチオベンジル)ニッケル(II)、シアン化ニッケル(II)、フッ化ニッケル(II)、ホウ化ニッケル(II)、ホウ酸ニッケル(II)、次亜リン酸ニッケル(II)、硫酸アンモニウムニッケル(II)、水酸化ニッケル(II)、シクロペンタジエニルニッケル(II)、及びこれらの水和物、並びにこれらの混合物等が挙げられる。
【0100】
0価のNi(0)、2価のNi(II)の化合物としては、好ましくは0価のNi(0)の化合物、特に好ましくはビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)である。
【0101】
0価のNi(0)、2価のNi(II)の化合物としては、配位子を事前に配位させた化合物を使用してもよい。
【0102】
遷移金属化合物の使用量は、原料の一般式(3)で表される化合物1モルに対して、通常、0.01〜50モル、好ましくは0.1〜10モル、より好ましくは0.5〜5モルであり、特に好ましくは1〜3モルである。
【0103】
本反応において、遷移金属化合物とともに、遷移金属化合物を構成する繊維金属(ニッケル(ニッケル原子)等)に配位し得る配位子を用いることができる。この配位子としては、カルボン酸系、アミド系、ホスフィン系、オキシム系、スルホン酸系、1,3−ジケトン系、シッフ塩基系、オキサゾリン系、ジアミン系、一酸化炭素、カルベン系等の配位子等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記配位子における配位原子は窒素原子、リン原子、酸素原子、硫黄原子等であり、これらの配位子には配位原子を1箇所のみ有する単座配位子と2箇所以上を有する多座配位子がある。また、一酸化炭素、カルベン系に関しては、炭素原子を配位原子とする配位子である。
【0104】
上記単座の配位子としては、トリフェニルホスフィン、トリメトキシホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ(i−プロピル)ホスフィン、トリ(tert−ブチル)ホスフィン、トリ(n−ブチル)ホスフィン、トリ(イソプロポキシ)ホスフィン、トリ(シクロペンチル)ホスフィン、トリ(シクロヘキシル)ホスフィン、トリ(オルト−トルイル)ホスフィン、トリ(メシチル)ホスフィン、トリ(フェノキシ)ホスフィン、トリ−(2−フリル)ホスフィン、ビス(p−スルホナートフェニル)フェニルホスフィンカリウム、ジ(tert−ブチル)メチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、トリエチルアミン、ピリジン等が挙げられる。
【0105】
上記二座の配位子としては、2,2’−ビピリジル、4,4’−(tert−ブチル)ビピリジル、フェナントロリン、2,2’−ビピリミジル、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、2−(ジメチルアミノ)エタノール、テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、2−アミノメチルピリジン、又は(NE)−N−(ピリジン−2−イルメチリデン)アニリン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、1,1’−ビス(tert−ブチル)フェロセン、ジフェニルホスフィノメタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン、1,2−ビス(ジペンタフルオロフェニルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタン、1,3−(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロパン、1,2−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)プロパン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、1,5−シクロオクタジエン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(BINAP)、2,2’−ジメチル−6,6’−ビス(ジフェニルホスフィノ)ビフェニル(BIPHEMP)、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(PROPHOS)、2,3−O−イソプロピリデン−2,3−ジヒドロキシ−1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(DIOP)、3,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1−ベンジルピロリジン(DEGUPHOS)、1,2−ビス[(2−メトキシフェニル)フェニルホスフィノ]エタン(DIPAMP)、置換−1,2−ビスホスホラノベンゼン(DuPHOS)、5,6−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−2−ノルボルネン(NORPHOS)、N,N’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−N,N’−ビス(1−フェニルエチル)エチレンジアミン(PNNP)、2,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン(SKEWPHOS)、1−[1’,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチレンジアミン(BPPFA)、2,2’−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、((4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)(SEGPHOS)、2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(CHIRAPHOS)、1−[2−(2置換ホスフィノ)フェロセニル]エチル−2置換ホスフィン(JOSIPHOS)等、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0106】
また、上記BINAPとしては、BINAP(2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル)の誘導体も含まれ、具体例としては、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−p−第3級ブチルフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−m−トリルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−3,5−ジメチルフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−p−メトキシフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジシクロペンチルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2−ジ(β−ナフチル)ホスフィノ−2’−ジフェニルホスフィノ−1,1’−ビナフチル、及び2−ジフェニルホスフィノ−2’−ジ(p−トリフルオロメチルフェニル)ホスフィノ−1,1’−ビナフチル等が挙げられる。
【0107】
また、上記BIPHEMPとしては、BIPHEMP(2,2’−ジメチル−6,6’−ビス(ジフェニルホスフィノ)ビフェニル)の誘導体も含まれ、具体例としては、2,2’−ジメチル−6,6’−ビス(ジフェニルホスフィノ−1,1’−ビフェニル、2,2’−ジメチル−6,6’−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ビス(ジメチルアミノ)−6,6’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル、2,2’,4,4’−テトラメチル−6,6‘−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル、2,2’−ジメトキシ−6,6’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル、2,2’,3,3’−テトラメトキシ−6,6’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル、2,2’,4,4’−テトラメチル−3,3’ジメトキシ−6,6’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル、2,2’−ジメチル−6,6’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル、2,2’−ジメチル−6,6’−ビス(ジ−p−第3級ブチルフェニルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル、及び2,2’,4,4’−テトラメチル−3,3’−ジメトキシ−6,6’−ビス(ジ−p−メトキシフェニルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル等が挙げられる。
【0108】
上記配位子のうち、好ましくは2,2’−ビピリジルである。
【0109】
配位子を使用する場合、その使用量は、原料の一般式(3)で表される化合物1モルに対して、通常、0.01〜50モル、好ましくは0.1〜10モル、より好ましくは0.5〜5モルであり、特に好ましくは1〜3モルである。
【0110】
用いる反応溶媒としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン等の脂肪族ハロゲン化炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン(DME)、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、プロピオン酸エチル等のエステル類;ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、N−メチルピロリドン(NMP)等のアミド類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましくはエーテル類又はアミド類、特に好ましくはテトラヒドロフラン又はジメチルホルムアミドである。反応は無水の条件で実施することが好ましい。
【0111】
溶媒の使用量は、一般式(3)で表される化合物100質量部に対して、通常、1〜1000質量部、好ましくは5〜200質量部、より好ましくは10〜100質量部である。
【0112】
反応温度は、通常、0℃以上であり且つ上記反応溶媒の沸点以下である範囲から選択される。
【0113】
また、反応雰囲気は、特に限定されないが、好ましくは不活性ガス雰囲気であり、アルゴンガス雰囲気、窒素ガス雰囲気等とすることができる。尚、空気雰囲気とすることもできる。
【0114】
反応終了後は、反応混合物を通常の濾過、濃縮、抽出等の単離手段に供し、必要に応じカラムクロマトグラフィ、再結晶化等の通常の精製手段に供することにより、反応生成物を単離及び精製することができる。
【0115】
本反応では、一般式(3)で表される化合物がL字型を有しているため、反応点であるハロゲン原子(X)が分子間で近接し易くなり、ホモカップリング反応が効率よく進行して、容易に輪状化合物を得ることができる。その結果、一般式(3)で表される化合物の3量体、4量体、5量体等の輪状化合物を与える。それぞれ、一般式(2)で表される化合物におけるn=3、4、5の輪状化合物に相当する。
【0116】
化合物(1)の合成:
一般式(1)で表される化合物(シクロポリアリーレン化合物)は、通常、溶媒の存在下、還元剤の存在下、一般式(2)で表される化合物を還元(具体的には、還元的芳香族化)して製造することができる。
【0117】
用い得る溶媒として、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン(DME)、ジグライム、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、t−ブチルメチルエーテル(TBME)等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。好ましくはエーテル類、特にテトラヒドロフランである。反応は無水の条件で実施することが好ましい。
【0118】
還元剤としては、例えば、金属リチウム、金属ナトリウム、金属カリウム、金属マグネシウム、塩化スズ(II)等が挙げられる。好ましくは、金属リチウムである。
【0119】
還元剤の使用量は、一般式(2)で表される化合物1モルに対し、通常1〜500モル、好ましくは5〜300モルである。
【0120】
反応温度は、通常、0℃以上であり且つ上記反応溶媒の沸点以下である範囲から選択される。
【0121】
また、反応雰囲気は、特に限定されないが、好ましくは不活性ガス雰囲気であり、アルゴンガス雰囲気、窒素ガス雰囲気等とすることができる。尚、空気雰囲気とすることもできる。
【0122】
反応終了後は、反応混合物を通常の濾過、濃縮、抽出等の単離手段に供し、必要に応じカラムクロマトグラフィ、再結晶化等の通常の精製手段に供することにより、反応生成物を単離及び精製することができる。
【0123】
一般式(1)で表される化合物は、nが3,4、5及び6のリング状となるが、nが奇数の場合には軸不斉(軸性キラリティー)を有する。
【0124】
本発明の製造方法を用いることにより、一般式(1)で表されるシクロポリアリーレン化合物(nが3、4、5及び6)を簡便に製造することができる。
【実施例】
【0125】
以下、本発明について、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。また、実施例におけるNMRの測定は、JEOL社製、核磁気共鳴装置「A−400」(型式名)により行った。
【0126】
実施例1
化合物1の合成
【0127】
【化17】
【0128】
撹拌子を入れた500mLの三つ口丸底フラスコを、減圧下に加熱乾燥し、室温まで冷却した後アルゴンを充填した。1.4M n-ブチルリチウムのヘキサン溶液(21.0 mL, 29.4 mmol)を、−78℃で、1,4−ジブロモナフタレン(7.51 g, 26.3 mmol)の乾燥ジエチルエーテル(345 mL) 溶液にゆっくり加えた。反応混合物を−78℃で1時間撹拌した。その後、1,4−ナフトキノン(1.66 g, 10.5 mmol)の乾燥ジエチルエーテル(100 mL)溶液を加え、混合物を−78℃で1時間、室温で15時間撹拌した。反応混合物を水でクエンチし、EtOAc(100 mL × 3)で抽出し、Na
2SO
4で乾燥した後、減圧下で濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl
3/EtOAc = 20/1)及び再沈殿(THF/hexane)にて精製した。化合物1を白色固体として得た(1.28 g, 21%)。溶媒の量と反応時間を調整することにより、収率を36%まで向上させることが可能であった。
【0129】
化合物1:
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 3.52 (br, 2H), 6.58 (s, 2H), 6.84 (br, 2H), 7.05 (s, 2H), 7.42 (dd, J = 7 Hz, 2H), 7.58 (dd, J = 8 Hz, 2H), 7.68 (br, 2H), 7.98 (d, J = 8 Hz, 2H), 8.09 (br, 2H), 8.39 (d, J = 8 Hz, 2H).
【0130】
実施例2
化合物2の合成(メチル化反応)
【0131】
【化18】
【0132】
撹拌子を入れた200mLの二口丸底フラスコを、減圧下に加熱乾燥し、室温まで冷却した後アルゴンを充填した。化合物1(200 mg, 350 μmol)の乾燥THF(3.5 mL)溶液を、水素化ナトリウム(60% 油状懸濁物, 108 mg, 2.45 mmol)と乾燥THF(6 mL)の混合物に、0℃にてゆっくり加えた。この反応混合物に、ヨウ化メチル(170 μL, 2.73 mmol)を0℃にて滴下し、反応混合物を54℃で2.5日撹拌した。反応混合物を水でクエンチし、EtOAc(30 mL × 3)で抽出し、併せた有機層をNa
2SO
4で乾燥し、減圧下で濃縮した。粗生成物を再沈殿(THF/hexane)にて精製した。化合物2を白色固体として得た(200 mg, 96%)。
【0133】
化合物2:
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 3.35 (s, 6H), 6.73 (s, 2H), 6.93 (d, J = 8 Hz, 2H), 7.46 (dd, J = 3 Hz, J = 6 Hz, 2H), 7.56 (d, J = 8 Hz, 2H), 7.62 (dd, J = 3 Hz, J = 6 Hz, 2H) 8.28 (dd, J = 1 Hz, J = 8 Hz, 2H), 8.85 (d, J = 9 Hz, 2H).
化合物2のX線結晶構造解析の結果を表1に示し、ORTEPを
図2に示す。
【0134】
【表1】
【0135】
実施例3
化合物3の合成(ホモカップリング反応)
【0136】
【化19】
【0137】
撹拌子を入れたシュレンク管を、減圧下に加熱乾燥し、室温まで冷却した後アルゴンを充填した。グローブボックス内で、化合物2(50.0 mg, 83.3 μmol)、Ni(cod)
2 (50.8 mg, 183 μmol)、2,2’−ビピリジル(29.2 mg, 194 μmol)及び乾燥THF (3 mL)をシュレンク管に加えた。混合物を加圧下に還流下で2時間撹拌した。反応混合物に水を加えて、CH
2Cl
2(10 mL × 3)で抽出した。有機層を併せて、分取リサイクルゲルパーミエーションクロマトグラフィー(CHCl
3)に供し、その後、PTLC (CH
2Cl
2/hexane = 4/1)で精製して、化合物3を白色固体として得た(4.8 mg, 3.3%)。なお、化合物2(100 mg, 166μmol)、Ni(cod)
2(101 mg, 367μmol)、2,2'-ビピリジル(57.2 mg, 366μmol)及び乾燥DMF(20 mL)を用いて、加圧下、還流下に2時間ではなく、85℃で39時間同様の反応を行ったところ、同様に化合物3が得られた(3.8 mg, 2%)。
【0138】
化合物3:
1H NMR (600 MHz, CDCl
3) δ 3.35 (s, 4H) 3.38 (s, 4H), 3.39 (s, 4H), 3.43 (s, 4H), 3.44 (s, 4H), 3.47 (s, 4H), 6.58 (d, J = 10 Hz, 1H), 6.75 (d, J = 7 Hz, 1H), 6.82 (d, J = 7 Hz, 1H), 6.85 (d, J = 11 Hz, 1H), 6.95-7.83 (m, < 60 H), 8.08 (d, J = 8 Hz, 1H), 8.63 (d, J = 8 Hz, 1H), 9.06 (d, J = 9 Hz, 1H), 9.10 (d, J = 9 Hz, 1H), 9.16 (t, J = 8 Hz, 2H), 9.68 (d, J = 9 Hz, 1H); LRMS (FAB-MS) m/z calcd. for C
96H
72O
6 [M]
+: 1320.53, found: 1320.
【0139】
実施例4
化合物[9]シクロナフチレン([9]CN)の合成(還元的芳香族化反応)
【0140】
【化20】
【0141】
ガラスで被覆された撹拌子を入れた30mlバイアルを、減圧下に加熱乾燥し、室温まで冷却した後アルゴンを充填した。グローブボックス内で、化合物3(4.8 mg, 3.7 μmol)、粒状リチウム(7.2 mg, 1.0 mmol)及び乾燥THF(2 mL)を加えた。混合物を室温で40時間撹拌した。反応混合物をヘキサンで希釈し、メタノールでクエンチした。溶媒を留去した後、反応混合物をショートシリカゲルパッド(CHCl
3) に通した。濾液を濃縮した後、PTLC (CH
2Cl
2/hexane = 1/1)で精製した。化合物[9]シクロナフチレン([9]CN) (0.6 mg, 15%)を黄色固体として得た(0.6 mg, 15%)。実施例4を行う前に、化合物(3)の単離を繰り返し行い、粒状リチウムの量を調整することで、収率を59%まで向上させることが可能であった。
【0142】
化合物[9]CN:
1H NMR (600 MHz, CDCl
3) δ 6.33 (s, 2H), 7.01 (d, J = 5 Hz, 8H), 7.16 (d, J = 8 Hz, 2H), 7.20 (d, J = 7 Hz, 2H), 7.24 (s, 1H), 7.34 (t, J = 8 Hz, 2H), 7.42 (d, J = 8 Hz, 2H), 7.48 (t, J = 8 Hz, 2H), 7.59 (d, J = 10 Hz, 5H), 7.75 (d, J = 10 Hz, 2H), 8.33 (dd, J = 4 Hz, J = 6 Hz, 2H) 8.45 (d, J = 4 Hz, 2H), 8.50 (dd, J = 4 Hz, J = 6 Hz, 2H), 8.54 (dd, J = 4 Hz, J = 6 Hz, 2H), 8.58 (d, J = 10 Hz, 3H), 8.61 (d, J = 7 Hz, 3H) 8.78 (d, J = 8 Hz, 2H); HRMS (MALDI TOF-MS) m/z calcd. for C
90H
54 [M]
+: 1134.42, found: 1134.27.