(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スナップ係合穴と前記スナップ係合突起は複数設けられており、前記保護突起は、前記スライド係合穴又は前記スライド係合突起に最も近い位置に設けられた前記スナップ係合穴又は前記スナップ係合突起の近傍に設けられる請求項1又は2記載の電子機器の筺体。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0009】
図1は、本実施形態に係る電子機器の筺体1の外観斜視図である。筺体1はその内部に各種電子部品を収容する箱状の本体2を備えており、本体2の上面であって、図中向かって右側にはスライド蓋4が設けられている。スライド蓋4は、図中向かって左側にスライドさせることにより本体2内部に収められた機器、この例では、光学ディスクドライブを露出するようになっている。また、化粧パネル3は、着脱可能に本体2に後述する機構により固定されており、本体2の表面の一部分を覆っている。本体2内部には、回路基板や記憶装置等の各種電子部品が収容される。
【0010】
図2は、筺体1から化粧パネル3を取り外した状態を示す外観斜視図である。同図では、化粧パネル3(
図1参照)に覆われていた領域である、被覆領域21内部の構造が見えている。被覆領域21の外形は本実施形態では図中左右方向を長軸とする概略長方形状をしており、その内部には、本体2の上面より内側に位置する内部表面22が形成されている。また、本実施形態では、被覆領域21の左右方向中央部付近には、スライド蓋4を付勢し、所定の位置でロックするための開閉機構41が設けられている。なお、本明細書では、「被覆領域」という語は化粧パネル3により覆われる領域を指すものとし、「内部表面」という語は、被覆領域の内部に位置し、その少なくとも一部分を占める表面を指すものとする。本実施形態では、内部表面22は本体2の上面より内側に設けられているため、内部表面21は本体2の上面から一段下がった棚状の表面となっているが、これに限定されるものでなく、内部表面21は本体2の上面と面一に連続する表面であってもよい。また、本実施形態のように、被覆領域21は筺体1の内部の機器にアクセスするための開口であってよく、その場合には、化粧パネル3はかかる開口を塞ぐ蓋としての機能を有することになる。
【0011】
内部表面22の一方の側である左側には、スライド係合穴23A、23B及び23Cが、また、内部表面22の他方の側である右側にはスナップ係合穴24A及び24Bがそれぞれ左側からこの順に設けられている。これらスライド係合穴23A、23B、23C及びスナップ係合穴24A、24Bは被覆領域21の長手方向である左右方向に関し、概ね直線上に配置されている。なお、ここで「一方の側」とは、ある領域の所定の位置(本実施形態の場合、中央)を境界とした時のいずれかの側を指し、「他方の側」とは、その逆の側を指すものとする。
【0012】
さらに、内部表面22のスナップ係合穴24Aの近傍、本実施形態ではスナップ係合穴24Aの図中向かって手前側に、保護突起収容穴25が設けられる。なお、詳細は後述するが、保護突起収容穴25は必ずしもスナップ係合穴24Aに対し図中手前側に隣接するように設ける必要はなく、スナップ係合穴24Aに対しスライド係合穴23C側(図中左方向)に設けても、スナップ係合穴24B側(図中右方向)に設けても、或いは他の方向に設けてもよい。
【0013】
本体2の材質はその形状が安定に保持され得るものであればどのようなものであってもよく特に限定はない。本実施形態では、強度、成形の容易さ、コストといった観点から、FRP(Fiber Reinforced Plastics)を用いている。
【0014】
図3は、化粧パネル3の内面を示す外観斜視図である。化粧パネル3は、被覆領域21に対応した概略長方形状をしており、その短手方向に外側が凸となるよう湾曲していることにより、自身の形状を保持するに足る剛性をもっていると同時に、その長手方向に関して弾性変形による若干の撓みを許容する。化粧パネル3の材質もまた特に限定されるものではないが、本実施形態では、本体2と同様にFRPを用いている。
【0015】
化粧パネル3の内面の一方の側には、本体2のスライド係合穴23A、23B及び23Cに対応する位置にそれぞれスライド係合突起31A、31B及び31Cが設けられる。また、化粧パネル3の内面の他方の側には、本体2のスナップ係合穴24A及び24Bに対応する位置にそれぞれスナップ係合突起32A及び32Bが設けられる。
【0016】
スライド係合突起31A、31B及び31Cは、化粧パネル3の長手方向に関して側面視L字形状となる突起である。また、スナップ係合突起32A及び32Bは、一般的なスナップ止め機構に用いられるフックの形状を有する突起である。
【0017】
さらに、化粧パネル3の内面のスナップ係合突起32Aの近傍であって、本体2の保護突起収容穴25に対応する位置には、保護突起33が設けられる。保護突起33は、図示のように、フックのような部材固定のための引っ掛かりを持たない単なる突起となっている。
【0018】
図4は、化粧パネル3を取り外した状態での本体2の上面図である。なお、同図では、スライド係合穴23A、23B、23C及びスナップ係合穴24A、24B並びに保護突起収容穴25の位置を明示するため、それら穴を太線で囲んで示している。スライド係合穴23A、23B及び23Cは、ここでは図示の通り矩形の一角(ここでは右辺上部の角)から被覆領域21の長手方向に延びるスリットを有する形状の穴となっており、
図3に示されたスライド係合突起31A、31B及び31Cの形状から明らかなように、スライド係合穴23A、23B及び23Cにそれぞれスライド係合突起31A、31B及び31Cを挿し込んだ後に、化粧パネル3をその長手方向である
図4の右方向にスライドさせることによってスライド係合穴23A、23B及び23Cとスライド係合突起31A、31B及び31Cがそれぞれ噛み合い、化粧パネル3を固定するものである。なお、ここで示したスライド係合穴23A、23B及び23Cとスライド係合突起31A、31B及び31Cの具体的な形状は一例であり、化粧パネル3をスライドすることにより化粧パネル3と本体2とを互いに固定する構造であればどのようなものであってもよい。また、スライド係合穴23A、23B及び23Cとスライド係合突起31A、31B及び31Cの数も任意であり、少なくとも1つあればよい。
【0019】
また、スナップ係合穴24A及び24Bは単なる矩形の穴であり、スナップ係合突起32A及び32Bがそれぞれ差し込まれることによりスナップ係合突起32A及び32Bのフックがスナップ係合穴24A及び24Bの縁に引っかかり噛み合うことにより化粧パネル3を固定するものである。ここで示したスナップ係合穴24A、24B及びスナップ係合突起32A、32Bの具体的な形状もまた一例であって、いわゆるスナップ止め機構のゲンコとバネとして機能する形状であればどのようなものであってもよい。スナップ係合穴24A、24B及びスナップ係合突起32A、32Bの数もまた任意であり、少なくとも1つあればよい。
【0020】
さらに、保護突起収容穴25の形状は任意であるが、ここでは図示の通りの単なる矩形である。
【0021】
以上の構造を有する筺体1に化粧パネル3を取り付ける手順を
図5乃至
図7を参照して説明する。なお、
図5乃至
図7は、理解を容易にするため、本体2及び化粧パネル3の構造を模式的に示したものであり、各部分の形状や位置等は
図1乃至4に示したものと必ずしも一致しない。
【0022】
図5は化粧パネル3を取り付ける前の化粧パネル3と本体2の内部表面22を示す模式断面図である。図中上方向が筺体1の外側であり、図中下側が筺体1の内側となる。また、同図中左右方向が化粧パネル3(したがって、被覆領域21)の長軸方向となる。本図では、化粧パネル3と内部表面22以外の部分については図示を省略している。
【0023】
化粧パネル3を本体2に取り付ける際には、図示のように、化粧パネル3を内部表面22に対しやや左にずれた位置におく。この状態では、スライド係合突起31A、31B及び31Cはそれぞれ対応するスライド係合穴23A、23B及び23Cの直上に位置する。一方で、保護突起33並びにスナップ係合突起32A及び32Bは、保護突起収容穴25並びにスナップ係合穴24A及び24Bの直上からはずれた位置にあり、化粧パネル3を内部表面22に向かって押し付けると、内部表面22に突き当たる位置となっている。
【0024】
この状態で化粧パネル3を内部表面22に向かって押し付けると、
図6に示すように、スライド係合突起31A、31B及び31Cはそれぞれ対応するスライド係合穴23A、23B及び23Cに挿し込まれる。一方で、保護突起33は内部表面22に突き当たるため、化粧パネル3は図に示すように長手方向に関し撓む。そして、保護突起33は前述したように、スナップ係合突起32Aの近傍に設けられており、そのために、スナップ係合突起32A及び32Bは、内部表面22に突き当たることなく離間され、無理な力が作用することによる破損から保護される。このことは、換言すれば、保護突起33の位置は、保護突起33が内部表面22に突き当たった際に、スナップ係合突起32Aを内部表面22から離間することができる限度において、スナップ係合突起32Aの近傍でなければならない、ということを意味している。また、保護突起33の高さも同様であり、保護突起33の高さは、保護突起33が内部表面22に突き当たった際に、スナップ係合突起32Aを内部表面22から離間することができる高さである。この高さは、保護突起33が配置される位置により異なり、
図6に示したように保護突起33がスナップ係合突起32Aに対しスライド係合突起31Cの側に設けられている場合には、スナップ係合突起32Aの高さと同じかそれより低くともよい。保護突起33がスナップ係合突起32Aに対し並列となる側(
図6の紙面に対し手前方向又は奥行き方向となる側)に設けられている場合には、保護突起33の高さは、スナップ係合突起32Aの高さと同じかそれより高くするとよい。保護突起33がスナップ係合突起32Aに対しスナップ係合突起32Bの側に設けられている場合には、保護突起33の高さは、スナップ係合突起32Aの高さより高くなければならない。
【0025】
なお、このとき、保護突起33はスライド係合突起31Cに最も近い位置にあるスナップ係合突起32Aの近傍に設けられる。
図6より明らかなように、化粧パネル3が変形している状態では、かかる位置にあるスナップ係合突起32Aが内部表面22に最も近づくため、このスナップ係合突起32Aを内部表面22から離間するよう保護突起33を設けると他のスナップ係合突起32Bもまた内部表面22に突き当たることがないからである。
【0026】
さらに、化粧パネル3を内部表面22に押し付けた状態で、図示の例では図中右側に向かいスライドされると、
図7に示す状態となる。この状態では、スライド係合突起31A、31B及び31Cはそれぞれ対応するスライド係合穴23A、23B及び23Cと噛み合い、化粧パネル3を固定する。また、保護突起33は保護突起収容穴25に収容されるので化粧パネル3の撓みが解消され、それに伴いスナップ係合突起32A及び32Bがそれぞれスナップ係合穴24A及び24Bと噛み合い化粧パネル3が容易に外れることなく固定される。
【0027】
化粧パネル3を筺体1から取り外す際には以上の逆の手順を行えばよく、まず、
図7において化粧パネル3の右端を図中上側に持ち上げるようにしてスナップ係合穴24A及び24Bからスナップ係合突起32A及び32Bを外す。次いで、
図6の状態となるよう、化粧パネル3を先ほどとは逆の方向である左方向にスライドさせ、スライド係合突起31A、31B及び31Cとスライド係合穴23A、23B及び23Cとの噛み合いを解除し、
図5に示すように化粧パネル3を持ち上げ取り外す。
【0028】
ここで、
図5乃至
図7に示されているように、保護突起33は、化粧パネル3を固定する際のスライド方向と反対側の側面に窪みを有しており、その先端に行くに従い面積が増加する楔形状となっている。この構造は必須のものではないが、
図7に示す化粧パネル3を筺体1に取り付けた状態において、保護突起33と保護突起収容穴25との間に若干の隙間を設け、化粧パネル3を長手方向にわずかに移動可能にすることにより、化粧パネル3を取り外す際にスナップ係合穴24A及び24Bとスナップ係合突起32A及び32Bとの噛み合いを解除しやすいようにしている。
【0029】
なお、以上の説明では、保護突起33を化粧パネル3に、保護突起収容穴25を本体2に設けたが、これを逆にして、保護突起33を本体2に、保護突起収容穴25を化粧パネル3に設けるようにしてもよい。この場合には、保護突起33は、スライド係合突起31A、31B及び31Cをそれぞれ対応するスライド係合穴23A、23B及び23Cに挿し込んだ状態で化粧パネル3の内面に突き当たることとなり、また保護突起収容穴25は、化粧パネル3を固定する方向にスライドさせた状態で、本体2に設けられた保護突起33を収容することとなる。
【0030】
本実施形態に係る電子機器の筺体1が上述した化粧パネル3の固定構造を採用する理由は概ね次の通りである。すなわち、化粧パネル3を前述したスライド固定機構(例えば、スライド係合突起31Aとスライド係合穴23Aの噛み合いによる固定のような機構)やネジのような固定具により固定すると、化粧パネル3の取り付けや取り外しの方法が外観から推測しやすくなる上に、部品点数も増加する。一方で、化粧パネル3を専らスナップ止め機構により固定すると、化粧パネル3が本体2に強固に固定されてしまい、その取り外しは容易でなく、着脱の際に化粧パネル3を破損する恐れがある。そこで、本実施形態のようにスライド固定機構とスナップ止め機構を併用することによりスナップ止め機構の数を減じ、その取り外しを容易にするとともに、保護突起33によりスナップ止め機構を保護することで化粧パネル3の着脱の際に化粧パネル3を破損する可能性を減じているのである。
【0031】
以上説明した本発明の実施形態の一側面においては、保護突起が内部表面又は化粧パネルの内面に突き当たることにより前記化粧パネルが変形し、スナップ係合突起と前記内部表面とを離間する。
【0032】
また、スナップ係合穴とスナップ係合突起は複数設けられており、前記保護突起は、前記スライド係合穴又は前記スライド係合突起に最も近い位置に設けられた前記スナップ係合穴又は前記スナップ係合突起の近傍に設けられる。
【0033】
上記側面によれば、化粧パネルの着脱時にスナップ係合突起が保護され、その破損が防止される。
【0034】
また、本発明の実施形態の一側面においては、化粧パネルは、外側が凸となる湾曲形状である。
【0035】
上記側面によれば、化粧パネルの剛性を高めることができる。
【0036】
また、本発明の実施形態の一側面においては、電子機器の筺体の本体の一部分である被覆領域を覆う電子機器の筺体用化粧パネルであって、内面の一方の側に設けられた、前記被覆領域の内部に位置する内部表面に設けられたスライド係合穴に挿し込んだ後、前記化粧パネルをスライドさせることにより前記スライド係合穴と噛み合う少なくとも一つのスライド係合突起と、内面の他方の側に設けられた、前記内部表面に設けられたスナップ係合穴に挿し込むことにより前記スナップ係合穴と噛み合う少なくとも一つのスナップ係合突起と、前記スナップ係合突起の近傍に設けられた保護突起及び保護突起収容穴の一方と、を有し、前記保護突起は、前記スライド係合突起を前記スライド係合穴に挿し込んだ状態で前記内部表面に突き当たり、前記化粧パネルをスライドさせた状態で前記本体に設けられた保護突起収容穴に収容され、前記保護突起収容穴は、前記化粧パネルをスライドさせた状態で前記本体に設けられた保護突起を収容する、電子機器の筺体用化粧パネルが提供される。
【0037】
上記側面によれば、電子機器の筺体の被覆領域を塞ぐべく着脱可能に筺体に取り付けられ、その構造を知らない一般のユーザーが容易に外すことのない電子機器の筺体用化粧パネルが提供される。
【0038】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の説明のために示した具体例であって、かかる実施形態に本発明を限定するものではない。すなわち、実施形態において示した部材の数、配置、形状及び材質は、実施形態において示したものに限定されず、必要に応じ適宜最適化すべきものである。