(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0010】
物品を保持して搬送するスチール製のエンドレスベルト、
前記エンドレスベルトを駆動する駆動プーリー、
前記駆動プ―リーとともに前記エンドレスベルトが巻き掛けられるアイドラープーリー、
前記駆動プーリーと前記アイドラープーリーとの間にて前記エンドレスベルトに沿って往復運動する往復運動部、
前記駆動プーリーと前記駆動プーリーを駆動する動力部との間に介在され、前記駆動プーリーが設けられた出力軸と、前記出力軸と係合し前記動力部の動力を前記出力軸に伝達する伝達軸とが直交する運動方向変更部、及び、
前記伝達軸にて伝達される前記動力にて駆動され前記往復運動部を前記往復運動させる往復機構、を備え、
前記伝達軸は、前記駆動プーリーと前記アイドラープーリーとの間にて前記エンドレスベルトに沿って配置されていることを特徴とする物品搬送ユニットである。
【0011】
このような物品搬送ユニットによれば、エンドレスベルトを駆動する駆動プーリーの軸と、移動するエンドレスベルトの移動方向とは直交しているので、駆動プーリーが設けられている出力軸と係合して直交する、運動方向変更部の伝達軸を、駆動プーリーとアイドラープーリーとに巻き掛けられたエンドレスベルトに沿わせて配置することが可能である。このため、伝達軸にて伝達される動力部の動力にて駆動される往復機構により往復運動部を往復運動させることにより、往復運動部をエンドレスベルトに沿わせて容易に移動させることが可能である。このとき、駆動プーリーとアイドラープーリーとの間では、往復運動部とエンドレスベルトとが平行に移動するので、往復運動部との位置を一定に保ちつつエンドレスベルトに保持された物品を搬送することが可能である。このため、往復運動部に各種装置を設置して搬送される物品に様々な処理や作業等を容易に施すことが可能である。
【0012】
かかる物品搬送ユニットであって、
前記往復機構は、
前記伝達軸に設けられた円筒リブカムと、
前記往復運動部に設けられ、前記往復運動部の往復方向における両側から前記円筒リブカムのリブ面に接触する2つのカムフォロアと、を備える円筒リブカム機構であることが望ましい。
このような物品搬送ユニットによれば、伝達軸が回転することにより円筒リブカムのリブ面に接触するカムフォロアが設けられた往復運動部をより確実にエンドレスベルトに沿わせることが可能である。
【0013】
かかる物品搬送ユニットであって、
前記運動方向変更部は、前記伝達軸がテーパーリブカムを備え、前記出力軸が前記テーパーリブカムと係合して回転されるターレットを備えたローラーギアカム減速機であることが望ましい。
このような物品搬送ユニットによれば、運動方向変更部が、バックラッシが無く入力の回転を正確な減速回転を出力軸から得られるローラーギアカム減速機なので、伝達軸にて往復機構を駆動し、出力軸にて駆動プーリーを駆動するので、エンドレスベルトと往復運動部とをより正確に移動させることが可能である。また、減速機により動力部から入力された回転を減速して駆動プーリーを適切な速度に駆動できるとともに、往復機構が駆動される伝達軸と駆動プーリーが駆動される出力軸とに適正な速度差を設けることが可能である。
【0014】
かかる物品搬送ユニットであって、前記円筒リブカムは、前記エンドレスベルトに保持された前記物品の搬送速度と、前記往復運動部の一方向への移動速度とが一致するように前記カムフォロアと係合する前記リブ面を有していることが望ましい。
このような物品搬送ユニットによれば、円筒リブカムにより、エンドレスベルトに保持された物品の移動速度と、往復運動部の一方向への移動速度とが一致するので、物品と往復運動部との相対速度を零にすることが可能である。このため、例えば往復運動部に物品に対する処理及び作業をするための装置を備えると、物品が停止した状態と同様に処理及び作業を行うことが可能である。
【0015】
かかる物品搬送ユニットであって、
前記往復運動部には、前記エンドレスベルトを挟持して当該往復運動部と前記エンドレスベルトとを一体に移動させるクランプ機構を備えていることが望ましい。
このような物品搬送ユニットによれば、クランプ機構に挟持されてエンドレスベルトと往復運動部とが一体に移動するので、エンドレスベルトと往復運動部との微少な速度差をも生じさせることなく相対速度を確実に零にすることが可能である。
【0016】
かかる物品搬送ユニットであって、
前記クランプ機構は、前記伝達軸に設けられた板カムと、前記板カムにより前記往復運動部の往復方向と直交する方向に移動される直交移動部と、前記往復運動部に設けられ前記直交移動部と前記エンドレスベルトを介して対向する対向部と、を有し、
前記板カムにより移動された前記直交移動部と前記対向部とにて前記エンドレスベルトを挟持することが望ましい。
このような物品搬送ユニットによれば、クランプ機構は、伝達軸に設けられた板カムにより移動された、往復運動部の往復方向と直交する方向に移動される直交移動部と、往復運動部に設けられ直交移動部とエンドレスベルトを介して対向する対向部とにてエンドレスベルトを挟持するので、特段の制御を必要とすることなく伝達軸から入力される動力により確実にクランプすることが可能である。
【0017】
また、物品搬送ユニットであって、前記クランプ機構は、前記往復運動部の往復方向と直交する方向に移動する直交移動部と、前記直交移動部を移動させるアクチェーターと、前記往復運動部に設けられ前記直交移動部と前記エンドレスベルトを介して対向する対向部と、を有し、
前記アクチェーターにより移動された前記直交移動部と前記対向部とにて前記エンドレスベルトを挟持することとしてもよい。
このような物品搬送ユニットによれば、クランプ機構は、アクチェーターにより、往復運動部の往復方向と直交する方向に移動された直交移動部と、往復運動部に設けられ直交移動部とエンドレスベルトを介して対向する対向部とにてエンドレスベルトを挟持するので、確実にクランプすることが可能である。このとき、アクチェーターを用いているので、クランプしている時間やタイミングを自由に設定できるとともに、クランプする強さも自由に設定することが可能である。
【0018】
かかる物品搬送ユニットであって、
前記エンドレスベルトは、2つの前記アイドラープーリーが互いに間隔を隔てて連結部材にて連結されたアイドラーユニットと、前記駆動プーリーと、に巻き掛けられており、
前記アイドラーユニットは、前記連結部材が前記往復運動部の往復方向と交差する交差方向に向けられて配置され、
前記往復機構と前記アイドラーユニットとの間には、前記伝達軸と連結された交差運動入力軸と、前記交差運動入力軸と直交する交差運動出力軸とを有し、前記アイドラーユニットを前記交差方向に往復運動させるカム機構が介在されていることが望ましい。
このような物品搬送ユニットによれば、エンドレスベルトが、駆動プーリーとともに巻き掛けられている、アイドラーユニットは、2つのアイドラープーリーが互いに間隔を隔てて連結された連結部材が往復運動部の往復方向と交差する交差方向に向けられており、往復機構とアイドラーユニットとの間には、交差運動入力軸と交差運動出力軸とが直交し、アイドラーユニットを交差方向に往復移動させるカム機構が介在されているので、アイドラーユニットをエンドレスベルトの移動方向と同方向または反対方向に移動させることにより、エンドレスベルトに保持された物品の移動速度を変更することが可能である。このとき、カム機構の交差運動入力軸は往復機構の入力軸と連結されているので、エンドレスベルト、往復運動部、及び、アイドラーユニットとを容易に同期させることが可能である。
【0019】
かかる物品搬送ユニットであって、
前記アイドラーユニットの前記2つのアイドラープーリー間にて前記エンドレスベルトに保持された前記物品は、前記アイドラーユニットが前記往復運動のうち前記エンドレスベルトの移動方向と反対方向に移動する際には移動しないことが望ましい。
このような物品搬送ユニットによれば、アイドラーユニットの往復運動のうちエンドレスベルトの移動方向と反対方向にアイドラーユニットが移動する際には、アイドラーユニットの2つのアイドラープーリー間のエンドレスベルトに保持された物品は移動しないので、エンドレスベルトを停止することなく2つのアイドラープーリー間の物品だけを停止させることが可能である。このため、2つのアイドラープーリー間以外ではエンドレスベルトを移動させたままで、例えば、2つのアイドラープーリー間にてエンドレスベルトに保持された複数の物品に対して、同一の処理や作業を一挙に行うことが可能である。
【0020】
===実施形態===
以下、本実施形態の物品搬送ユニットの一例について図を用いて詳細に説明する。
本実施形態の物品搬送ユニットは、物品を移動しつつ当該物品に対して様々な作業を行うことが可能であるが、ここでは、注射器に用いられるシリンジに薬液を注入して打栓した、物品としてのプレフィルドシリンジを検査する工程を本発明に係る物品搬送ユニットを用いて行うためのプレフィルドシリンジ自動検査装置を例に挙げて説明する。
【0021】
図1は、プレフィルドシリンジ自動検査装置の構成を説明するための図である。
本実施形態のプレフィルドシリンジ自動検査装置1は、
図1に示すように、スチール製のエンドレスベルト3に保持されて搬送されるプレフィルドシリンジ5を検査するための装置であるが、前工程にて製造されたプレフィルドシリンジ5をエンドレスベルト3に保持させ、検査後のプレフィルドシリンジ5をエンドレスベルト3から取り外すために、エンドレスベルト3が搬送されている状態にてプレフィルドシリンジ5を停止した状態(停留状態)とする装置も備えている。
【0022】
図2(a)は、プレフィルドシリンジを用いた注射器を示す図であり、
図2(b)は、プレフィルドシリンジの製造方法を説明する図である。
本プレフィルドシリンジ自動検査装置1にて検査されるプレフィルドシリンジ5は、
図2(a)に示すように、注射針5eとプランジャー5fとが取り付けられ、医薬品である薬液を注射すための医療用機器となるものである。プレフィルドシリンジ5は、円筒状をなし、
図2(b)に示すように、一方の端に注射針装着部5bが、他方の端にフランジ部5gがそれぞれ設けられたシリンジ5aの注射針装着部5bにキャップ6が嵌められた状態にて、フランジ部5g側の端部から薬液5cが充填された後にゴム栓5dにより封止されることにより製造される。
【0023】
図3は、プレフィルドシリンジの検査項目を説明するための図である。
上述したように、プレフィルドシリンジ5は医薬品及び医療用機器であるため、薬液5cはシリンジ5aに無菌充填される。このため、充填時の菌の混入はもちろん、菌が混入する可能性を高めてしまうシリンジ5aのキズの発生も避けなければならない。特に、滅菌されたシリンジ5aは、移動時に接触するとキズが発生し易い。このため検査工程では、
図3に示すように、製造されたプレフィルドシリンジ5の薬液5c内への異物の混入及びゴム栓5dへの異物の付着とシリンジ5aのキズや割れ、欠けの有無を検査する。具体的には、薬液の液面異物、液中異物、液底異物、シリンジ5aの胴キズ、フランジ部5gの割れや欠け、ゴム栓液漏れ、ゴム栓付着異物、胴付異物、薬液量、エアー量、キャップ色、キャップ位置などを検査する。本プレフィルドシリンジ自動検査装置1には、上記検査にて規格から外れていると判定されたプレフィルドシリンジ5をエンドレスベルト3から外して回収する回収ユニット4(
図1)が設けられている。
【0024】
次にプレフィルドシリンジ5の検査方法について説明する。
図4は、透過光を用いた検査方法を示す図である。
図5は、反射光を用いた検査方法を示す図である。
【0025】
プレフィルドシリンジ5の検査には、例えば、
図4、
図5に示すようにCCD(Charge Coupled Device)カメラ82を使用する2つの方法がある。1つ目の方法は、
図4に示すように、検査装置80の光源(バックライト)81とCCDカメラ82との間に検査対象となるプレフィルドシリンジ5を配置して、検査対象となるプレフィルドシリンジ5を透過した光をCCDカメラ82で捉え、CCDカメラ82にて捉えた画像を処理することにより、主に薬液5cの液中異物や、液面異物、その他シリンジ5aのキズや割れ、欠けの有無等を検査する場合に用いられる。もう一つの方法は、
図5に示すように、光源としてリングライト83を用い、検査対象となるプレフィルドシリンジ5に照射した光の反射光をCCDカメラ82で捉え、CCDカメラ82にて捉えた画像を処理することにより、不透明な検査対象物や、外観を検査する場合に用いられる。本実施形態においては、
図4に示すような、透過光を利用した検査方法にて検査する例について説明する。
【0026】
ところで、本検査にて検出しなければならない、プレフィルドシリンジ5の薬液中異物などの大きさは、例えば、医薬品等の製造品質管理基準を、アメリカ食品医薬品局(FDA)が定めた、GMP(Good Manufacturing Practice)による50μm以上が目安となる。50μmの異物を静止しているCCDカメラ82により検出するためには、搬送されてくる、検査対象となるプレフィルドシリンジ5を停止させて、静止した状態のCCDカメラ82により撮影することが望ましく、プレフィルドシリンジ5を停止しない場合には画像が乱れ、誤検出するおそれがある。しかしながら、順次搬送されてくる、検査対象となるプレフィルドシリンジ5を、1本毎に停止させて検査すると効率が低下する。そこで、本プレフィルドシリンジ自動検査装置1は、検査対象となるプレフィルドシリンジ5を精確に移動させるためにスチール製のエンドレスベルト3にプレフィルドシリンジ5を保持させ、CCDカメラ82及び光源81を有する検査装置80をエンドレスベルト3の速度と完全に一致させてエンドレスベルト3に沿って移動させることとした。このため、検査装置80をエンドレスベルト3の速度と完全に一致させてエンドレスベルト3に沿って移動させるために、エンドレスベルト3とほぼ平行に往復運動する平行往復機構により駆動される平行往復運動部に検査装置を設けている。平行往復運動部及び平行往復機構については後述する。
【0027】
次に、スチール製のエンドレスベルト3に、プレフィルドシリンジ5を保持させ、検査後のプレフィルドシリンジ5をエンドレスベルト3から取り外す着脱工程について説明する。
【0028】
上述したプレフィルドシリンジ5は、たとえば毎分600本〜毎分800本の速度での生産が要求される場合がある。一方、上述したプレフィルドシリンジ5を検査する場合には、プレフィルドシリンジ5を1本ずつハンドリング、すなわち、エンドレスベルト3に対して1本ずつ着脱するような、たとえば最も単純なピックアンドプレースであってもせいぜい120〜200回転が限界である。すなわち、本実施形態はあまりにも高速なので、1本ずつのハンドリングでは間に合わない。このため、ハンドリング装置においてプレフィルドシリンジ5を着脱するためのフィンガーに相当する部分を複数個用い、複数取りのハンドリング装置を用いることとする。たとえば、2本とか5本とか10本、20本、30本とフィンガーの数を増やすことにより、運転速度はフィンガーの増加分だけ下げられるので、ハンドリング装置の適用範囲が広がり、搬用ロボットも使用できるようになる。
【0029】
このように複数取りのハンドリング装置を用いて一度に複数のプレフィルドシリンジ5を同時に着脱する手法としては、少なくとも2つの手法がある。1つは、ハンドリング装置を、連続的に移動しているエンドレスベルトと平行に移動可能な構成とし、エンドレスベルトの搬送速度と、ハンドリング装置の移動速度とを同期させ、同期区間内において、一度に複数のプレフィルドシリンジ5を同時に着脱する同期型の手法であり、もう1つは、連続的に移動しているエンドレスベルト3が回巻されているアイドラープーリーを移動させることによりエンドレスベルト3の一部を一時的に停止(停留)させ、停止しているハンドリング装置により停止区間内において、一度に複数のプレフィルドシリンジ5を同時に着脱する停留型の手法である。これら2つの手法のうち停留型の手法の方が、ハンドリング装置に対し速度的制約が少なく、高速運転に適している。このため、本プレフィルドシリンジ自動検査装置1は、検査対象となるプレフィルドシリンジ5及び検査後のプレフィルドシリンジ5が保持されているエンドレスベルト3を停止することなく、エンドレスベルト3に保持されたプレフィルドシリンジ5を停止させた状態(停留状態)とする、プレフィルドシリンジの着脱用の往復機構を、揺動運動機構を用いて構成することとした。着脱用の往復機構及び揺動運動機構については後述する。
【0030】
図6(a)は、シリンジ搬送治具の構成を示す図であり、
図6(b)は、プレフィルドシリンジが収容されたシリンジ搬送治具の平面図であり、
図6(c)は、
図6(b)のA−A断面図である。
【0031】
プレフィルドシリンジ5の製造時には随所に滅菌処理工程が含まれるので、それらの工程を合理的にしかも完全に次工程に流すことを目的として、シリンジ搬送治具10を用いる。シリンジ搬送治具10は、
図6(a)に示すように、シリンジ5a及びプレフィルドシリンジ5が1本ずつ挿入される挿入孔11aを有するネストと呼ばれる支持器11と、シリンジ5a及びプレフィルドシリンジ5が支持された支持器11を収容し器状をなすタブと呼ばれる収容器12とを有している。支持器11は、挿入孔11aと同じ内形をなす筒状のボス11bが、挿入孔11aが設けられた板状の基部11c上に突出されており、各ボス11bの上端部にフランジ部5gが支持されてシリンジ5aまたはプレフィルドシリンジ5が挿入孔11aに挿入されるように構成されている。シリンジ5aまたはプレフィルドシリンジ5が挿入された支持器11は、
図6(b)、
図6(c)に示すように、基部11cが収容器12の上部側に設けられた段部12aに支持された状態で、シリンジ5aのフランジ部5g側が上方に向くように収容器12に収容される。
【0032】
支持器11にはシリンジ5aの自動取出しができるよう、シリンジ5aのフランジ部5gがボス11bからはみ出した状態で挿入され、シリンジ5aを取り出す際にはボス11bの間にフィンガー等を差し込んでフランジ部5gをひっかけて上方に持ち上げることにより取り出せるように構成されている。シリンジ5aが挿入された支持器11は収容器12に入れられ、外気と遮断するように格納されて次工程に送られる。次工程では無菌状態で開封され、シリンジ5aを取出し自動機に供給し、処理後は再び支持器11に挿入し収容器12に入れて密封してさらに次工程へと進むようになっている。このとき、シリンジ5aが供給される装置が、薬液5cを充填する装置の場合には、支持器11からは薬液5cが未充填のシリンジ5aが取り出され、薬液5cが充填されたプレフィルドシリンジ5が支持器11及び収容器12に戻される。本実施形態のプレフィルドシリンジ自動検査装置の場合には、支持器11からは検査前のプレフィルドシリンジ5が取り出され、検査後のプレフィルドシリンジ5が支持器11及び収容器12に戻される。
【0033】
本実施形態のプレフィルドシリンジ自動検査装置は、
図1に示すように、シリンジ5aを保持するホルダー15(
図8)を備えたスチール製のエンドレスベルト3と、エンドレスベルト3を駆動する駆動プーリー20と、エンドレスベルト3と係合する2つの固定された固定アイドラープーリー21と、互いに間隔を隔てて連結された2つのアイドラープーリー22aがエンドレスベルト3と係合しつつ移動するアイドラーユニット22と、駆動プーリー20を駆動する動力部としてのサーボモーター23と、サーボモーター23と駆動プーリー20との間に介在される第1減速機30及び第2減速機40と、エンドレスベルト3が掛け渡された駆動プーリー20と固定アイドラープーリー21との間の直線移動部3aに沿って往復運動し検査装置80が設けられる平行往復機構50と、アイドラーユニット22を平行往復機構50の往復方向とほぼ直交する方向に往復運動させる交差往復機構60と、を有している。そして、サーボモーター23、第1減速機30及び第2減速機40、平行往復機構50、交差往復機構60、及び、固定アイドラープーリー21は、躯体(不図示)に固定されている。ここで、交差往復機構60がプレフィルドシリンジ5を着脱するため着脱用の往復機構に相当する。
【0034】
本プレフィルドシリンジ自動検査装置1は、駆動プーリー20、2つの固定アイドラープーリー21、アイドラーユニット22が有する2つのアイドラープーリー22aのいずれも、軸が鉛直方向に沿っている。すなわち、エンドレスベルト3は、幅hの方向が上下方向となるように配置されている。
【0035】
駆動プーリー20は、エンドレスベルト3の内側に位置し、2つの固定アイドラープーリー21は、エンドレスベルト3の外側に位置してエンドレスベルト3と係合している。2つの固定アイドラープーリー21は、駆動プーリー20と各固定アイドラープーリー21との間にて直線移動するエンドレスベルト3の直線移動部3aが平行になるように配置されている。アイドラーユニット22は、2つの固定アイドラープーリー21の軸を繋ぐ線と、連結された2つのアイドラープーリー22aの軸を繋ぐ線とが平行になるように配置され、固定アイドラープーリー21に対して、駆動プーリー20の反対側に位置している。このアイドラーユニット22は、エンドレスベルト3と係合した状態で着脱用の往復機構としての交差往復機構60により直線移動部3aとほぼ直交する方向(交差方向)に往復運動するように構成されている。
【0036】
図7は、スチール製のエンドレスベルトの駆動を説明するためのモデル図である。
エンドレスベルト3は、
図7に示すように、搬送されるプレフィルドシリンジ5の位置精度を高めるために、環状のエンドレスベルト3の両端部側に送り穴3b(パーフォレーション)が打ち抜かれており、駆動プーリー20、各固定アイドラープーリー21、各アイドラープーリー22aの周面に周方向に沿って等間隔にて周面から突出するように埋め込まれたピン20aや球と、エンドレスベルト3の送り穴3bとが噛み合うように構成されている。また、エンドレスベルト3は、駆動プーリー20及び各固定アイドラープーリー21、各アイドラープーリー22aに係合された状態で緩みなく緊張するように張力が掛けられている。また、駆動プーリー20及びアイドラーユニット22のアイドラープーリー22aにおいてはエンドレスベルト3の外側にホルダー15及びプレフィルドシリンジ5が配置されるが、固定アイドラープーリー21はエンドレスベルト3の外側にホルダー15及びプレフィルドシリンジ5が配置される。このため、固定アイドラープーリー21の外周面には、巻き付けられたエンドレスベルト3に保持されているプレフィルドシリンジ5を後述するホルダー15とともに収容する凹部(不図示)が設けられている。
【0037】
図8(a)は、プレフィルドシリンジ自動検査装置に用いられるスチール製のエンドレスベルトとプレフィルドシリンジを保持するホルダーを示す平面図であり、
図8(b)は、プレフィルドシリンジ自動検査装置に用いられるスチール製のエンドレスベルトとプレフィルドシリンジを保持するホルダーを示す正面図である。
【0038】
プレフィルドシリンジ自動検査装置1に用いるエンドレスベルト3には、
図8(a)、
図8(b)に示すように、エンドレスベルト3にて搬送されるプレフィルドシリンジ5を保持するためのホルダー15と、検査装置の光源81から照射される光がプレフィルドシリンジ5を透過するように、光源81とプレフィルドシリンジ5との間に介在される部位に、ホルダー15に保持されたプレフィルドシリンジ5と対向する部位より僅かに大きな開口3cとが設けられている。ホルダー15は、ホルダー15及びホルダー15に保持されたプレフィルドシリンジ5が、上下に設けられた送り穴3b間に位置するように設けられている。
【0039】
ホルダー15は、プレフィルドシリンジ5のフランジ部5gが下になるように配置され、脱落防止爪15aを備えた台座15bと、台座15bを回転させる回転機構15cとを有し、エンドレスベルト3の周方向に沿って等間隔で複数配置され、各プーリー20、21、22aの周面に沿ってエンドレスベルト3が屈曲可能に設けられている。
【0040】
スチール製のエンドレスベルト3は、ベルトの伸縮がほとんどないため精確な位置精度が得られる一方で、プーリーに巻き付ける曲率により寿命が左右されるため、エンドレスベルト3の厚さtと各プーリー径Dとの比率がD/t>500を満たすことが求められる。このため、サーボモーター23の回転速度を適切なエンドレスベルト3の速度に対応させるために、本実施形態では、サーボモーター23と駆動プーリー20との間に第1減速機30と第2減速機40との2つの減速機を介在させている。
【0041】
図9は、サーボモーターに連結された第1減速機と第2減速機とを示す斜視図である。
本実施形態のプレフィルドシリンジ自動検査装置1は、
図9に示すように、第1減速機30の入力軸31にはサーボモーター23の軸23aが連結されており、第1減速機30の出力軸32がそのまま第2減速機40の入力軸をなし、第2減速機40の出力軸41にはエンドレスベルト3を駆動する駆動プーリー20が設けられている。このため、サーボモーター23の回転は第1減速機30の減速比率に従っての減速された後、第2減速機40の減速比率に従って減速され、駆動プーリー20に伝達される。ここで、サーボモーター23の回転速度を適切なエンドレスベルト3の速度に対応させることが可能であれば、必ずしも減速機を介在させなくてもよく、また1つの減速機であっても構わない。このため、駆動プーリー20が設けられた出力軸41と、出力軸41と係合しサーボモーター23の動力を出力軸41に伝達し、出力軸41と直交する伝達軸は第1減速機30の出力軸32に相当し、第2減速機40が運動方向変更部に相当する。
【0042】
図10は、ローラーギアカム減速機を示す図である。
第1減速機30及び第2減速機40はいずれも、
図10に示すような、ローラーギアカム減速機である。このため、ここでは、第1減速機30を例に挙げて構成を説明する。第1減速機30の入力軸31にはネジ状をなすテーパーリブでなるローラーギアカム33が一体に形成されており、出力軸32には、入力軸31のローラーギアカム33と係合する複数のカムフォロア34が外周に放射状に設けられたターレット35が一体に形成されている。また、第1減速機30の出力軸32は、第2減速機40の入力軸をなしているので、第1減速機30の出力軸32には、第2減速機40のローラーギアカム(不図示)も一体に形成されている。第2減速機40は、第1減速機30と同様に、出力軸41に第2減速機40のローラーギアカムと係合する複数のカムフォロアが外周に放射状に設けられた、第2減速機のターレットが一体に形成されている。
【0043】
第1減速機30及び第2減速機40をなす各ローラーギアカム減速機は、入力軸31と出力軸32との軸間距離を適切に設定しターレット35のカムフォロア34をローラーギアカム33のテーパーリブの両側に係合させることにより、出力軸32に作用する負荷に対して、バックラッシが無く入力軸31の回転を減速して精確な回転を出力軸32に伝達するように構成されている。そして、第1減速機30及び第2減速機40は、第1減速機30の出力軸32であり第2減速機40の入力軸が駆動プーリー20と固定アイドラープーリー21との間にて直線移動するエンドレスベルト3の直線移動部3aに沿って直線移動部3aとほぼ平行をなすように配置されている。このように回転性能の高いローラーギアカム減速機を第1減速機30及び第2減速機40に使用することにより、サーボモーター23の回転が高い回転精度にて第1減速機30の出力軸32と第2減速機40の出力軸41に伝えられ、第2減速機40の出力軸41に設けられている駆動プーリー20がより精確に駆動される。このため、駆動プーリー20により移動されるエンドレスベルト3およびエンドレスベルト3に保持されたプレフィルドシリンジ5もより精確に移動される。
【0044】
平行往復機構50は、エンドレスベルト3に保持されて移動する検査対象となるプレフィルドシリンジ5を検査するために、駆動プーリー20と固定アイドラープーリー21との間の直線移動部3aにおいて、移動されるプレフィルドシリンジ5と検査装置80であるCCDカメラ82及び光源81の速度を一致させて並進させる機構である。
【0045】
図11は、平行往復機構の外観を示す図である。
図12(a)は、平行往復機構の軸方向における縦断面図、
図12(b)は、平行往復機構の平面図、
図12(c)は、平行往復機構の直交方向における縦断面図である。
【0046】
平行往復機構50は、
図11、
図12(a)〜
図12(c)に示すように、円筒リブカム51と板カム52とが一体に形成された入力軸53と、円筒リブカム51により入力軸53に沿う方向(軸方向)に往復移動される軸方向往復移動部54と、軸方向往復移動部54とともに軸方向に往復移動しつつ軸方向往復移動部54に対して軸方向と直交する直交方向に往復移動する直交移動部55と、直交移動部55と直交方向において対向し軸方向往復移動部54に固定された対向部56と、直交移動部55を対向部56側に押圧する圧縮スプリング57と、軸方向往復移動部54上に固定され、光源81が載置される載置台58と、入力軸53と軸方向往復移動部54が案内される2本のレール59とが支持され円筒リブカム51と板カム52とが収容されるハウジング50aと、を有している。
【0047】
この平行往復機構50は、入力軸53がエンドレスベルト3の内側に位置するともに駆動プーリー20と固定アイドラープーリー21との間の直線移動部3aに沿って配置され、軸方向往復移動部54上をエンドレスベルト3の一方の直線移動部3aが横切るように配置される。このため、軸方向往復移動部54は、エンドレスベルト3の内側に位置する内領域54cと外側に位置する外領域54dとを有している。外領域54dには、検査装置80のCCDカメラ82と対向部56とが設けられ、内領域54cには、検査装置80の光源81と直交移動部55とが設けられている。
【0048】
本実施形態においては、対をなすCCDカメラ82と光源81とがエンドレスベルト3を挟んで対向するように配置された2つの検査装置80が、軸方向に間隔を隔てて軸方向往復移動部54上に設けられている。また、平行往復機構50は、エンドレスベルト3を挟んで対向するように配置された、外領域54dに固定された対向部56と、内領域54cに設けられた直交移動部55とが、エンドレスベルト3を挟持するようなクランプ機構48をなしている。このクランプ機構48は、平行往復機構50の入力軸53に設けられた板カム52により直交移動部55が対向部56に向かって移動されてエンドレスベルト3を挟持するように構成されている。
【0049】
ハウジング50aは、内部に中空部50bを有するほぼ直方体状をなし上方が開放された箱形の部材であり、直方体上の長手方向に沿って入力軸53と2本のレール59とが設けられている。ハウジング50aの長手方向において両端の面を形成する端壁部50cには、ほぼ中央に軸受け50dを介して入力軸53が回動自在に支持され、入力軸53の両端部は各々端壁部50cより外方向に延出されている。また、2本のレール59は、それぞれ入力軸53より上方にて、ハウジング50aの開放された部位にて端壁部50c間に掛け渡される円柱状の部材であり、軸方向往復移動部54を水平方向に貫通させて両端壁部50c間に掛け渡されている。
【0050】
軸方向往復移動部54は、検査装置80及び直交移動部55等が載置された状態で往復運動可能な十分な剛性を備えた板状の部材であり、2本のレール59が移動可能に貫通されてハウジング50aの開放された部位に、軸方向に移動可能に取り付けられている。軸方向往復移動部54の下面には、入力軸53の円筒リブカム51と係合する2つのカムフォロア54aが設けられている。
【0051】
入力軸53に一体に設けられた円筒リブカム51は、入力軸53と同心の円形状の外周をなし、リブ面51aが軸方向に変化する曲面をなしている。このリブ面51aには、軸方向における両側から軸方向往復移動部54に設けられたカムフォロア54aが接触されている。このため、入力軸53が回動するとカムフォロア54aがリブ面51aにより軸方向に往復移動され、軸方向往復移動部54も軸方向に往復移動される。このとき、円筒リブカム51のリブ面51aに両側からカムフォロア54aを接触させることにより、カムフォロア54aに作用する負荷に対して、バックラッシを無くしている。
【0052】
そして、円筒リブカム51により往復移動される軸方向往復移動部54の速度V
1、V
2(
図1参照)をエンドレスベルト3の移動速度V
0と一致させることにより、プレフィルドシリンジ5を静止した状態と同様にCCDカメラ82にて撮影することが可能となる。しかしながら、上述したように、本実施形態の検査のように、微少な異物やキズを検出する場合には、より高い精度が求められるため、本実施形態では、エンドレスベルト3を挟持して、エンドレスベルト3と軸方向往復移動部54とを一体として移動させるためのクランプ機構48を備えている。
【0053】
クランプ機構48を構成する直交移動部55は、対向部56と対向してエンドレスベルト3を挟持する挟持部55aを備え、軸方向往復移動部54上に載置されて軸方向往復移動部54の上面を摺動しつつ移動する摺動移動部55bと、摺動移動部55bの、挟持部55aと反対側の端から下方に垂設された垂設部55cとを有している。垂設部55cは、摺動移動部55bが軸方向往復移動部54上に載置された状態にて、軸方向往復移動部54に設けられた開口54bに挿通されて軸方向往復移動部54より下方に至るように配置されている。開口54bに挿通された垂設部55cの、挟持部55aと反対側の部位と開口54bの縁との間には圧縮スプリング57が介在されており、直交移動部55が対向部56側に向かって押圧され、垂設部55cは軸方向往復移動部54の下方に設けられている板カム52に当接されている。このため、入力軸53とともに板カム52が回転すると、入力軸53の中心と垂設部55cが接触しているカム面52aとの距離の変化に伴って直交移動部55が、入力軸53と直交する直交方向に移動し、挟持部55aと対向部56とにてエンドレスベルト3を挟持可能に構成されている。このとき、対向部56及び挟持部55aのエンドレスベルト3に当接される部位には、滑り止めをなす硬質ゴムなどの緩衝材55d、56aが設けられている。
【0054】
本実施形態においては、軸方向往復移動部54上にて移動する直交移動部55の移動を阻害しないように、直交移動部55を跨ぐように光源81の載置台58が設けられている。
【0055】
駆動プーリー20と固定アイドラープーリー21との間の直線移動部3aに沿って配置されている、平行往復機構50の入力軸53の駆動プーリー20側の端部は、駆動プーリー20と固定アイドラープーリー21との間の直線移動部3aに沿って配置されている、第1減速機30の出力軸32(第2減速機の入力軸)と直線をなすように配置されカップリング37により連結されている。すなわち、第1減速機30の出力軸32及び平行往復機構50の入力軸53は、エンドレスベルト3の直線移動部3aに沿ってほぼ平行に配置されている。ここで、平行往復機構50の入力軸53と第1減速機30の出力軸32とをカップリング37にて連結している理由について説明する。本プレフィルドシリンジ自動検査装置1は、エンドレスベルト3がサーボモーター23の回転に対して忠実に移動するように第1減速機30として、バックラッシの無いローラーギアカム減速機を選定しているように、平行往復機構50の入力軸53の駆動においてもサーボモーター23の回転に対して忠実であることが望ましい。このため、第1減速機30の出力軸32と平行往復機構50の入力軸53とは一体であることが理想的である。しかしながら、第1減速機30の出力軸32と平行往復機構50の入力軸53とを一体とすると、第1減速機30と平行往復機構50とのアライメントに高い精度が要求されることになる。このため、平行往復機構50の入力軸53と第1減速機30の出力軸32とをカップリング37にて連結することにより、第1減速機30と平行往復機構50とのミスアライメントが生じた場合であっても、カップリング37により吸収させて、第1減速機30と平行往復機構50とを容易に配置することを可能をし、サーボモーター23の回転に対して忠実に駆動することを可能としている。このとき用いるカップリング37としては回転剛性の高いカップリングを選定することが望ましい。このように、平行往復機構50の入力軸53と第1減速機30の出力軸32とをカップリング37にて連結することにより、エンドレスベルト3と軸方向往復移動部54とはサーボモーター23の回転に対して忠実に同期運転することが可能となる。
【0056】
また、平行往復機構50の入力軸53の、駆動プーリー20と反対側の端部には、タイミングプーリー38が設けられており、交差往復機構60の交差運動入力軸61に設けられたタイミングプーリー39とタイミングベルト36にて連結されている。
【0057】
着脱部に用いられる交差往復機構60は、検査対象となるプレフィルドシリンジ5及び検査後のプレフィルドシリンジ5が保持されているエンドレスベルト3を停止することなく、エンドレスベルト3に保持されたプレフィルドシリンジ5を停留状態とする機構である。
【0058】
図13は、交差往復機構の外観を示す図である。
図14(a)は、交差往復機構に用いられるローラーギアカム機構を入力軸に沿う方向から見た図であり、
図14(b)は、
図14(a)におけるB矢視図である。
【0059】
交差往復機構60は、
図13に示すように、平行往復機構50の入力軸53とタイミングベルト36により連結された交差運動入力軸61の回転を、鉛直方向に沿った交差運動出力軸62を所定の角度範囲αの回動に変換するカム機構としてのカム式揺動装置63と、カム式揺動装置63の交差運動出力軸62に固定され交差運動出力軸62の回動により揺動する揺動アーム64と、プレフィルドシリンジ自動検査装置1の躯体(不図示)に支持されてエンドレスベルト3の直線移動部3aと直交する直交方向に沿って配置された2本のスライド軸65と、2本のスライド軸65が貫通されスライド軸65に沿ってスライド可能なスライダー66と、2つのアイドラープーリー22aを連結する連結部材22bがスライダー66に固定されるアイドラーユニット22と、を有している。
【0060】
カム式揺動装置63は、
図14(a)、
図14(b)に示すように、交差運動入力軸61にローラーギアカム61aが一体に設けられ、交差運動出力軸62に、交差運動入力軸61のローラーギアカム61aと係合する2つのカムフォロア62aが設けられたターレット62bが一体に形成されている。そして、交差運動入力軸61と交差運動出力軸62との軸間距離を適切に設定しターレット62bが有する2つのカムフォロア62aをローラーギアカム61aのテーパーリブの両側に係合させることにより、交差運動出力軸62に作用する負荷に対して、バックラッシが無く交差運動入力軸61の回転を精確に交差運動出力軸62に伝達するように構成されている。
【0061】
揺動アーム64は、一方の端部がカム式揺動装置63の鉛直方向に沿って設けられた交差運動出力軸62に固定されており、他方の端部には上側に突出させてカムフォロア64aが設けられている。
【0062】
2本のスライド軸65は、カム式揺動装置63の交差運動入力軸61と直交する方向に配置されており、スライド軸65に案内されてスライドするスライダー66の下面には、下方に開放された溝状のレール67aを形成するレールブロック67が設けられており、溝状のレール67aはスライド軸65と直交する方向、すなわち交差運動入力軸61に沿う方向に設けられている。この溝状のレール67aには、下方から揺動アーム64に設けられたカムフォロア64aが係合されており、揺動アーム64が揺動することにより、カムフォロア64aが溝状のレール67a内を移動しつつスライダー66がスライド軸65に沿ってスライドして往復運動するように構成されている。このスライダー66には、アイドラーユニット22が設けられているので、揺動アーム64の揺動によりアイドラーユニット22がスライド軸65に沿う方向に往復移動する。
【0063】
本プレフィルドシリンジ自動検査装置1において、サーボモーター23により駆動されている駆動プーリー20により移動されているエンドレスベルト3の移動速度V
0とし、交差往復機構60の揺動アーム64によるスライダー66の往復運動速度を±V
3すると、アイドラーユニット22が有する2つのアイドラープーリー22a間におけるエンドレスベルト3の、カム式揺動装置63が固定されている躯体に対する移動速度V
4、V
5は、(式1)(式2)にて示される。ここで、速度V
4、V
5は、エンドレスベルト3の移動速度であり、スライダー66に固定されているアイドラーユニット22は動滑車の運動に等しいので、アイドラーユニット22の往復運動速度をエンドレスベルト3の移動速度に変換して±2V
3となる。
V
4=V
0+2V
3・・・・(式1)
V
5=V
0−2V
3・・・・(式2)
【0064】
すなわち、スライダー66がエンドレスベルト3と同方向に移動するときの移動速度(往路速度)V
4は、V
0+2V
3であり、スライダー66がエンドレスベルト3と逆方向に移動するときの移動速度(復路速度)V
5は、V
0−2V
3である。
【0065】
本プレフィルドシリンジ自動検査装置1においては、交差往復機構60によりエンドレスベルト3に保持されたプレフィルドシリンジ5を、エンドレスベルト3を停止することなく停留状態とするので、V
5=0となるようにスライダー66の往復運動速度を±V
3を設定しなければならない。すなわち、V
0=2V
3となるように、V
3を1/2V
0と設定する。
【0066】
このように、スライダー66の往復運動速度±V
3を1/2V
0とすることにより、スライダー66がエンドレスベルト3の移動方向と反対方向にスライドする際には、アイドラーユニット22が有する2つのアイドラープーリー22a間におけるエンドレスベルト3が、躯体に対して停止している停留状態となる。
【0067】
そして、エンドレスベルト3が停留する距離は、スライダー66の往復動作においてエンドレスベルト3の移動方向と反対方向にアイドラーユニット22が移動する時間を変更することにより調整することが可能である。このとき、スライダー66の移動距離Lは、揺動アーム64の回動中心とカムフォロア64aの取付位置までの距離Rと揺動アーム64が取り付けられている、カム式揺動装置63の交差運動出力軸62の揺動角度α(deg)から(式3)に従って設定される。
L=2Rsin(α/2)・・・・(式3)
【0068】
図15は、プレフィルドシリンジ自動検査装置における、エンドレスベルト、平行往復機構の円筒リブカム、及び、交差往復機構のカム式揺動装置のタイミング線図である。
【0069】
本プレフィルドシリンジ自動検査装置1においては、
図15に示すようなタイミング線図を実現する、平行往復機構50の円筒リブカム51、及び、交差往復機構60のカム式揺動装置63により、エンドレスベルト3を連続的に回動しつつ、検査装置のCCDカメラ82及び光源81とプレフィルドシリンジ5とを速度差を生じることなく移動させ、また、プレフィルドシリンジ5を一時的に停留させることが可能となる。
【0070】
本実施形態のプレフィルドシリンジ自動検査装置1によれば、エンドレスベルト3を駆動する駆動プーリー20の軸、すなわち第2減速機40の出力軸41と、移動するエンドレスベルト3の移動方向とは直交しているので、駆動プーリー20が設けられている出力軸41と係合して直交する、第2減速機40の伝達軸、すなわち第1減速機30の出力軸32を、駆動プーリー20と固定アイドラープーリー21とに巻き掛けられたエンドレスベルト3の直線移動部3aに沿わせて配置することが可能である。このため、伝達軸である出力軸32にて伝達されるサーボモーター23の動力で駆動される平行往復機構50により軸方向往復移動部54を往復運動させて、軸方向往復移動部54をエンドレスベルト3に沿わせて容易に移動させることが可能である。このとき、駆動プーリー20とアイドラープーリー21との間では、軸方向往復移動部54とエンドレスベルト3とが平行に移動するので、軸方向往復移動部54との位置を一定に保ちつつエンドレスベルト3に保持されたプレフィルドシリンジ5を搬送することが可能である。このため、軸方向往復移動部54に検査装置80を設置して搬送されるプレフィルドシリンジ5をより精確に検査することが可能である。
【0071】
また、軸方向往復移動部54を往復運動させる機構を第1減速機30の出力軸32に設けられた円筒リブカム51のリブ面51a、軸方向往復移動部54に設けられたカムフォロア54aとにて構成したので、第1減速機30の出力軸32が回転することにより軸方向往復移動部54をより確実にエンドレスベルト3に沿わせて往復運動させることが可能である。
【0072】
また、第1減速機30及び第2減速機40が、バックラッシが無く入力の回転を正確な減速回転を出力軸32、41から得られるローラーギアカム減速機なので、第1減速機30の出力軸32にて平行往復機構50を駆動し、第2減速機40の出力軸41にて駆動プーリー20を駆動すると、エンドレスベルト3と軸方向往復移動部54とをより正確に移動させることが可能である。また、第1減速機30及び第2減速機40によりサーボモーター23から入力された回転を減速して駆動プーリー20を適切な速度に駆動できるとともに、平行往復機構50が駆動される第1減速機30の出力軸32と駆動プーリー20が駆動される出力軸41とに適正な速度差を確実に設けることが可能である。
【0073】
また、円筒リブカム51により、エンドレスベルト3に保持されたプレフィルドシリンジ5の移動速度と、軸方向往復移動部54の一方向への移動速度とが一致するので、プレフィルドシリンジ5と軸方向往復移動部54との相対速度を零にすることが可能である。このため、軸方向往復移動部54に設けた検査装置80に対してエンドレスベルト3に保持されているプレフィルドシリンジ5が停止した状態と同様に検査を行うことが可能である。このため、より精確な検査を行うことが可能である。
【0074】
また、軸方向往復移動部54の往復方向と直交する方向に移動される直交移動部55と、軸方向往復移動部54に設けられ直交移動部55とエンドレスベルト3を介して対向する対向部56とにてエンドレスベルト3を挟持するクランプ機構48を備えているので、軸方向往復移動部54とエンドレスベルト3に保持されているプレフィルドシリンジ5とを一体として移動させることが可能である。このため、軸方向往復移動部54に設けた検査装置80に対してエンドレスベルト3に保持されているプレフィルドシリンジ5を確実に停止した状態することが可能である。また、クランプ機構48を構成する直交移動部55は、第1減速機30の出力軸32に設けられた板カム52により移動されるので、特段の制御を必要とすることなく確実にクランプすることが可能である。
【0075】
また、エンドレスベルト3が、駆動プーリー20とともに巻き掛けられている、アイドラーユニット22は、2つのアイドラープーリー22aを互いに間隔を隔てて連結する連結部材22bが軸方向往復移動部54の往復方向と交差する交差方向に向けられており、平行往復機構50とアイドラーユニット22との間には、交差運動入力軸61と交差運動出力軸62とが直交し、アイドラーユニット22を交差方向に往復移動させるカム式揺動装置63が介在されているので、アイドラーユニット22をエンドレスベルト3の移動方向と同方向または反対方向に移動させることにより、エンドレスベルト3に保持されたプレフィルドシリンジ5の移動速度を変更することが可能である。このとき、カム式揺動装置63の交差運動入力軸61は平行往復機構50の入力軸53と連結されているので、エンドレスベルト3、軸方向往復移動部54、及び、アイドラーユニット22とを容易に同期させることが可能である。
【0076】
また、アイドラーユニット22の往復運動のうちエンドレスベルト3の移動方向と反対方向にアイドラーユニット22が移動する際に、アイドラーユニット22の移動速度を、エンドレスベルト3の移動速度の1/2としたので、アイドラーユニット22の2つのアイドラープーリー22a間のエンドレスベルト3に保持されたプレフィルドシリンジ5は移動しない。このため、エンドレスベルト3を停止することなく2つのアイドラープーリー22a間のプレフィルドシリンジ5だけを停止させることが可能である。そして、2つのアイドラープーリー22a間以外ではエンドレスベルト3を移動させたままで、2つのアイドラープーリー22a間にてエンドレスベルト3に保持された複数のプレフィルドシリンジ5を着脱する作業を一挙に行うことが可能である。
【0077】
上記実施形態においては、クランプ機構48を構成する直交移動部55を板カム52により駆動する例について説明したが、これに限らず、例えばアクチェーターにより直交移動部55を駆動しても良い。この場合には、アクチェーターを制御することによりクランプしている時間やタイミングを自由に設定できるとともに、クランプする強さも自由に設定することが可能である。
【0078】
図16は、本発明に係る物品搬送ユニットをプレフィルドシリンジ製造装置として用いた例を示す図である。
図17は、プレフィルドシリンジ製造装置にてエンドレスベルトに保持されるシリンジを示す図である。
【0079】
このプレフィルドシリンジ製造装置100は、前述したプレフィルドシリンジ自動検査装置1の前工程にて、シリンジ5aに薬液5cを充填し打栓してプレフィルドシリンジ5を製造する装置である。このプレフィルドシリンジ製造装置100は、
図16に示すように、スチール製のエンドレスベルト3を用いてシリンジ5aを保持しつつ搬送させる物品搬送機構と、2つの平行往復機構50を用いた薬液自動充填装置70及び打栓装置71と、シリンジの着脱部を可能とする交差往復機構60とを有している。
【0080】
プレフィルドシリンジ製造装置100は、上記プレフィルドシリンジ自動検査装置1にて検査装置80が設けられていた平行往復機構50が、エンドレスベルト3が掛け渡された駆動プーリー20と固定アイドラープーリー21との間の直線移動部3aに沿って2つ並べて設けられている。一方の平行往復機構50には薬液5cを充填する薬液自動充填装置70が設けられ、他方の平行往復機構50にはシリンジ5aにゴム栓5dを打栓する打栓装置71が設けられている。また、エンドレスベルト3に保持されるシリンジ5aは、薬液5cを充填するため、フランジ部5g側が上方に位置するようにエンドレスベルト3に設けられたホルダー16に保持されるように構成されている。このとき、シリンジ5aは、内部に異物が混入しないように、
図17に示すように、シリンジ5aのフランジ部5g側となる開口部5hが、薬液自動充填装置70の最も高い位置に位置するように配置されており、HEAPフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)から流れる最も空気洗浄度が高いラミラエアフロー(Lamina Air Flow)を直接受けられるように構成されており、薬液自動充填装置の各部位からの異物の混入を防ぐように構成されている。
【0081】
上述したように本発明に係る物品搬送ユニットは、基本構成としてスチール製のエンドレスベルト3を用いた物品の搬送機構と、エンドレスベルト3の直線移動部3aと平行な入力軸にて直線移動部3aに沿って往復移動される平行往復機構50を少なくとも1つ備えており、交差往復機構60や他の平行往復機構50と組み合わせるとともに平行往復機構50に、搬送される物品に施す作業を行う装置等を設置することにより、物品を搬送しつつ各種作業を効率よく行うことを可能とする汎用性の高い装置である。また、交差往復機構60を物品着脱部とした本物品搬送ユニットを、物品着脱部が連なるように複数配置することにより、複数の作業工程を連続して行うことが可能な製造装置など構成することも可能である。
【0082】
以上、上記実施の形態に基づき本発明に係るカム装置等を説明したが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。