特許第5971703号(P5971703)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5971703
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】無線電力伝送装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20160804BHJP
   H02J 50/20 20160101ALI20160804BHJP
   H02J 50/70 20160101ALI20160804BHJP
【FI】
   H02J50/12
   H02J50/20
   H02J50/70
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-136420(P2012-136420)
(22)【出願日】2012年6月15日
(65)【公開番号】特開2014-3773(P2014-3773A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2015年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】514235905
【氏名又は名称】石崎 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100121337
【弁理士】
【氏名又は名称】藤河 恒生
(72)【発明者】
【氏名】石崎 俊雄
【審査官】 大手 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−070048(JP,A)
【文献】 特開平07−122915(JP,A)
【文献】 特開平09−238025(JP,A)
【文献】 特開2002−217602(JP,A)
【文献】 特開2002−016410(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/062415(WO,A1)
【文献】 特開平07−212101(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/146494(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/046548(WO,A1)
【文献】 西川健太, 石崎俊雄,セラミック誘電体共振器を用いた無線電力伝送システムの伝搬モードの研究,電子情報通信学会技術研究報告,日本,一般財団法人 電子情報通信学会,2013年 5月23日,Vol.113, No.70,41-45
【文献】 藤山義祥,マイクロ波誘電体共振器を用いたワイヤレス電力伝送,電子情報通信学会通信ソサイエティ大会講演論文集,日本,一般財団法人電子情報通信学会通信ソサイエティ,2012年 8月28日,Vol.1,55
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00−50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合端子に結合している送電側共振器と受電側共振器を備え、該送電側共振器から該受電側共振器に非放射電磁界と放射電磁界を用いて電力伝送する無線電力伝送装置であって
前記送電側共振器と前記受電側共振器のうち少なくとも一方は、遮蔽ケースによって略全体が覆われた誘電体共振器で構成され、
前記遮蔽ケースは、放射電磁界を閉じ込め、近・中距離においては主に非放射電磁界の結合による電力伝送を行い遠距離においては主に放射電磁界の結合による電力伝送を行うように非放射電磁界と放射電磁界の量を決める形状及びサイズの開口部を有し、
結合される結合端子は、前記遮蔽ケースの外部に電気的に通じていることを特徴とする無線電力伝送装置。
【請求項2】
前記送電側共振器と前記受電側共振器のうちの少なくとも一方は、TE01δ型の誘電体共振器であることを特徴とする請求項1に記載の無線電力伝送装置。
【請求項3】
前記送電側共振器と前記受電側共振器のうちの少なくとも一方を覆う前記遮蔽ケースは、金属製の6面体であり、
該遮蔽ケースの前記開口部は該6面体の1面の一部を開口したものであり、磁界ベクトルの方向の開口の長さを直交する方向の長さより短くした形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の無線電力伝送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線で電力伝送する無線電力伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線電力伝送には、磁気誘導方式、共振型結合方式、放射電磁波方式などがある。これらの中で、非放射電磁界結合を用いる共振型結合方式は、近・中距離の電力伝送となるが、受電側が存在すればそれとの結合に応じて送電側の電力が伝送されるので、高い電力伝送効率を得ることができる。そのため、共振型結合方式は、近年、非常に注目を集めている。
【0003】
図6は従来の共振型結合方式の無線電力伝送装置の基本構成を示す図である。無線電力伝送装置101では、外部から供給される電力(高周波交流電力)は、結合ループなどのインピーダンス整合手段122aを含む結合端子122を介して、金属導線をコイル状に巻いて構成される送電側共振器102に供給される。そして、その電力は、送電側共振器102と受電側共振器103の間の伝送距離sに応じた結合係数kで電磁界結合していて、金属導線をコイル状に巻いて構成される受電側共振器103に伝送される。その後、同じく結合ループなどのインピーダンス整合手段132aを含む結合端子132を介して外部の負荷に電力が供給される。この際の最大電力伝送効率は、共振器間の結合係数kと共振器の良さを示す無負荷Q値の積によって決まることが知られている。
【0004】
電力伝送効率の更なる向上のため、従来より、さまざまな構造の提案がなされている。例えば、特許文献1には、インピーダンス整合手段と送電側共振器との間又は受電側共振器とインピーダンス整合手段との間に、別のインダクタ或いはコンデンサを配置して、無負荷Q値を高くしようとするものが記載されている。また、特許文献2には、送電側共振器及び受電側共振器のそれぞれのコイル状の金属導線を、互いに誘電率の異なる2個の誘電体で挟んで支持し、誘電率の低い方の誘電体を相手の共振器に対向させることにより、電力伝送効率を向上させようとするものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−142724号公報
【特許文献2】特開2011−211792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2を含め従来の無線電力伝送装置では、送電側共振器及び受電側共振器は金属導線(通常は、銅線)をコイル状に巻いて構成されており、金属の導電率で決まる抵抗損のため、無負荷Q値の向上には限界がある。例えば、この場合の無負荷Q値は、大きくても数百〜一千のオーダーである。
【0007】
また、共振型結合方式の無線電力伝送装置での結合係数kは、受電側共振器の近傍の非放射電磁界との相互作用によって決まるものであるため、送電側共振器と受電側共振器の間の距離が大きくなると、指数関数的に小さくなることは避けられないことであり、電力伝送の可能な距離には限界がある。
【0008】
本発明は、係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、無負荷Q値を向上させて電力伝送効率を向上させることができ、また、電力伝送の可能な距離を大きくすることができる無線電力伝送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の無線電力伝送装置は、結合端子に結合している送電側共振器と受電側共振器を備え、該送電側共振器から該受電側共振器に非放射電磁界と放射電磁界を用いて電力伝送する無線電力伝送装置であって、前記送電側共振器と前記受電側共振器のうち少なくとも一方は、遮蔽ケースによって略全体が覆われた誘電体共振器で構成され、前記遮蔽ケースは、放射電磁界を閉じ込め、近・中距離においては主に非放射電磁界の結合による電力伝送を行い遠距離においては主に放射電磁界の結合による電力伝送を行うように非放射電磁界と放射電磁界の量を決める形状及びサイズの開口部を有し、結合される結合端子は、前記遮蔽ケースの外部に電気的に通じていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の無線電力伝送装置は、請求項1に記載の無線電力伝送装置において、前記送電側共振器と前記受電側共振器のうちの少なくとも一方は、TE01δ型の誘電体共振器であることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の無線電力伝送装置は、請求項1又は2に記載の無線電力伝送装置において、前記送電側共振器と前記受電側共振器のうちの少なくとも一方を覆う前記遮蔽ケースは、金属製の6面体であり、該遮蔽ケースの前記開口部は、該6面体の1面の一部を開口したものであり、磁界ベクトルの方向の開口の長さを直交する方向の長さより短くした形状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の無線電力伝送装置によれば、無負荷Q値を向上させ、電力伝送効率を向上させることができ、ま、電力伝送の可能な距離を大きくすることができる
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る無線電力伝送装置の構成を示す斜視図である。
図2】同上の無線電力伝送装置の送電側共振器(及び受電側共振器)を示す斜視図である。
図3】同上の無線電力伝送装置の送電側共振器(及び受電側共振器)の無負荷Q値についての特性図である。
図4】同上の無線電力伝送装置の構成の変形例を示す斜視図である。
図5】同上の無線電力伝送装置の無負荷Q値と結合係数kとの積についての特性図である。
図6】従来の無線電力伝送装置の構成を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態に係る無線電力伝送装置1は、図1に示すように、送電側共振器2と受電側共振器3を備え、送電側共振器2から受電側共振器3に電磁界を用いて電力伝送するものである。送電側共振器2と受電側共振器3はそれぞれ、後述する結合端子22、32に結合している。この無線電力伝送装置1では、送電側共振器2の構造及びその近傍の構造と受電側共振器3の構造及びその近傍の構造とが実質的に同様なものとなっている。
【0015】
送電側共振器2は、誘電体共振器で構成されている。この誘電体共振器は、誘電正接(tanδ)が低ければ、その材料が限定されるものではないが、セラミック製であるのが好ましい。誘電正接が低い程、高い無負荷Q値が得られる。セラミック製のものは、誘電正接が極めて低いものがすでに公知である。
【0016】
送電側共振器2の形状及び大きさは、使用する共振周波数及び共振モードに応じたものである。図1に示すこの実施形態では、TE01δモードを共振モードとして使用しているTE01δ型の誘電体共振器なので、中心軸近傍をくり抜いた円柱形状となっている。共振周波数は、例えば、約2.4GHzとすることができる。この場合の電磁界分布は、図2に示すように、電界ベクトルが円柱形状の円周方向に発生して分布し、磁界ベクトルは電界ベクトルに直交して送電側共振器2の内部と外部に発生して分布する。なお、使用する共振周波数及び共振モード、及びそれに応じた送電側共振器2の形状及び大きさは、限定されるものではなく、所望の特性に合わせて種々のものを適用することが可能である。
【0017】
送電側共振器2は、遮蔽ケース21によって覆われている。遮蔽ケース21には、一部に電磁界が通過する開口部21aを有している。この遮蔽ケース21は、開口部21aの部分を除いて送電側共振器2のほぼ全体を覆う。詳細には、遮蔽ケース21は、金属製の6面体(直方体或いは立方体)であり、開口部21aはこの6面体の1面の一部を開口したものである。また、開口部21aは、送電側共振器2と受電側共振器3の間の位置に設けられている。なお、図1においては、遮蔽ケース21(及び後述する遮蔽ケース31)を透視して内部を描いている。
【0018】
遮蔽ケース21は、開口部21a以外の部分において、放射電磁界(電磁波)を閉じ込めるものである。誘電体共振器で構成される送電側共振器2は、非放射電磁界とともに放射電磁界を多く発生するので、放射電磁界を閉じ込めないと、電力(エネルギー)が周囲に放射されて無負荷Q値が急激に下がるからである。
【0019】
遮蔽ケース21の開口部21aは、非放射電磁界と放射電磁界が通過する。遮蔽ケース21の開口部21aは、適切な量に放射電磁界を抑制するように、形状及びサイズを決めることになる。開口部21aを通過する非放射電磁界と放射電磁界を含む電磁界の量は、後述する実験結果に示すように、開口部21aのサイズ(面積)だけではなく、その形状にも依存する。
【0020】
送電側共振器2は、上述したように結合端子22に結合しており、結合端子22は、遮蔽ケース21の外部に電気的に通じている。詳細には、結合端子22は、遮蔽ケース21の内側に設けられ、磁界などによって送電側共振器2と結合する結合ループ22aと、その結合ループ22aに電気的に接続され、外部から電力(高周波交流電力)が供給され得る外部端子部22bと、を有している。
【0021】
送電側共振器2は、それよりも低い誘電率の支持台23により、遮蔽ケース21に接しないように保持されている。支持台23は、セラミック製とすることができる。
【0022】
このような送電側共振器2は、結合端子22を介して外部からの電力に励振され、非放射電磁界と放射電磁界を発生する。送電側共振器2は、セラミック製のような誘電正接が極めて低い材料を用いることにより、損失が格段に少なくすることができ、無負荷Q値を向上(例えば、数万のオーダーに)することが可能である。その結果、電力伝送効率を向上させることができる。
【0023】
また、送電側共振器2は、適切な量の放射電磁界が非放射電磁界に加えられることにより、電力伝送の可能な距離を大きくすることができる。受電側共振器3は、非放射電磁界が強い近・中距離に位置していると、非放射電磁界に主に結合して最適な(電力伝送効率の高い)電力伝送が可能である。受電側共振器3は、非放射電磁界が微弱になる遠距離に位置していると、そこに伝播する放射電磁界に主に結合してある程度の(少なくとも最低限の)電力伝送が可能になる。その結果、電力伝送の可能な距離を大きくすることができる。
【0024】
次に、受電側共振器3を説明する。受電側共振器3は、上述したように、送電側共振器2と実質的に同様の構造であり、受電側共振器3の近傍の構造も送電側共振器2の近傍と実質的に同様の構造である。すなわち、受電側共振器3は、送電側共振器2と同様の誘電体共振器で構成されており、遮蔽ケース21と同様の遮蔽ケース31によって覆われている。遮蔽ケース31は、開口部21aと同様の開口部31aを有している。開口部31aは、送電側共振器2と受電側共振器3の間の位置に設けられている。受電側共振器3は、結合端子22と同様の結合端子32に結合している。結合端子32は、結合ループ22aと同様の結合ループ32aと、外部端子部22bと同様であって外部に電力(高周波交流電力)を出力し得る外部端子部32bと、を有している。受電側共振器3は、支持台23と同様の支持台33により保持されている。
【0025】
受電側共振器3には、送電側共振器2からの距離に応じて非放射電磁界又は放射電磁界を用いて電力伝送される。受電側共振器3に伝送された電力は、結合端子32を介して外部の負荷に供給される。負荷は、通信端末機などの機器の所要の機能を発揮するための回路である。受電側共振器3は、送電側共振器2と同様に、セラミック製のような誘電正接が極めて低い材料を用いることにより、損失を格段に少なくすることができ、無負荷Q値を向上(例えば、数万のオーダーに)することが可能である。その結果、電力伝送効率を向上させることができる。
【0026】
また、受電側共振器3は、一部に開口部31aを有する遮蔽ケース31で誘電体共振器を覆うことで、電力伝送の電磁界が放射電磁界のときでも適切な量を受電し易くすることにより、電力伝送の可能な距離を大きくすることができる。
【0027】
次に、本願発明者によるシミュレーションとサンプルの実験について述べる。送電側共振器2と受電側共振器3はともに、中心軸近傍をくり抜いた円柱形状とし、大きさは、外径A、A’を25mm、長手方向の長さB、B’を10mmとしている。また、共振周波数が約2.4GHzのTE01δモードを共振モードとして使用している。遮蔽ケース21と遮蔽ケース31はともに、金属製の6面体とし、開口部21a、31aが形成される一面は互いに対面させている。遮蔽ケース21、31の開口部21a、31aが形成される一面は、送電側共振器2及び受電側共振器3の円柱形状の長手方向と同じ方向の辺の長さC、C’が50mm、それと垂直な方向の辺の長さD、D’が80mmとしている。また、この一面に対して垂直な方向の辺の長さE、E’は80mmとしている。
【0028】
図3は、送電側共振器2(又は受電側共振器3)の無負荷Q値(Qu)について、遮蔽ケース21(又は31)の一面に対する開口部21a(又は31a)の開口率(面積比)との関係を示すシミュレーション実験の結果である。図3の曲線a(実線)は、遮蔽ケース21(又は31)の100%開放された一面を、水平方向に長い2個の金属板でもって上端部及び下端部を塞いで、図1に示すように開口部21a(又は31a)を形成した場合のものである。曲線b(破線)は、遮蔽ケース21(又は31)の100%開放された一面を、垂直方向に長い2個の金属板でもって左端部及び右端部を塞いで、図4に示すように開口部21a(又は31a)を形成した場合のものである。曲線aは、開口率を減少させるに従って、負荷Q値が増加し、2万程度までに増加している。これより、磁界ベクトルの方向の開口の長さを短くすることによって放射が抑えられ、高い無負荷Q値が得られていることがわかる。一方、曲線bは、顕著な変化は見られない。
【0029】
図5は、無負荷Q値(Qu)と結合係数kとの積(k・Qu)について、遮蔽ケース21と遮蔽ケース31の距離s’に対する変化を示すシミュレーションとサンプルの実験の結果である。図5(a)の曲線c(破線)と曲線d(実線)はそれぞれ、遮蔽ケース21の一面に対する開口部21aの開口率(及び遮蔽ケース31の一面に対する開口部31aの開口率)が100%の場合のシミュレーションとサンプルの実験のものである。図5(b)の曲線e(破線)と曲線f(実線)はそれぞれ、水平方向に長い2個の金属板でもって上端部及び下端部を塞いで、遮蔽ケース21の一面に対する開口部21aの開口率(及び遮蔽ケース31の一面に対する開口部31aの開口率)を64%にした場合のシミュレーションとサンプルの実験のものである。
【0030】
この実験結果によると、遮蔽ケース21と遮蔽ケース31の距離s’が大きくなるに従って、無負荷Q値Quと結合係数kとの積の値は急激に減少するが、距離s’が大体2〜3cmのところから、減少の傾きが緩やかになる。これは、距離s’が大体2〜3cmまでは非放射電磁界の結合による伝送が主であるのに対して、それ以上では放射電磁界の結合による伝送が主となることを示している。これにより、電力伝送の可能な距離を大きくできることが分かる。
【0031】
なお、このような無線電力伝送装置1は、送電側共振器2と受電側共振器3のうち一方の共振器及びその近傍の構造だけを残し、他方の共振器及びその近傍の構造を他の構造のものに置き換えることも場合によっては可能である。送電側共振器2の方だけを残した場合は、上述したように、送電側共振器2の無負荷Q値を向上させて、電力伝送効率を向上させることができ、また、非放射電磁界と放射電磁界を用いて電力伝送の可能な距離を大きくすることができる。また、受電側共振器3の方だけを残した場合は、上述したように、受電側共振器3の無負荷Q値を向上させて、電力伝送効率を向上させることができ、また、電力伝送の電磁界が放射電磁界のときでも適切な量を受電し易くすることにより、電力伝送の可能な距離を大きくすることができる。
【0032】
また、このような無線電力伝送装置1による無線電力伝送方式、すなわち、近・中距離においては主に非放射電磁界の結合による最適な電力伝送を行い、遠距離においては主に放射電磁界の結合によるある程度の(少なくとも最低限の)電力伝送を行う方式は、近・中距離の電力伝送効率を維持しながら電力伝送の可能な距離を大きくすることができる非常に有用な方式である。この方式の実現には、送電側共振器2と受電側共振器3に誘電体共振器を用いるが、非放射電磁界の結合による電力伝送と放射電磁界の結合による電力伝送をともに行えるのならば、他の共振器を用いることも場合によっては可能である。いずれの場合でも、送電側共振器2と受電側共振器3のうち少なくとも一方は、上記の遮蔽ケース21(又は31)によって覆われ、上記の結合端子22(又は32)に結合されるのが好ましい。
【0033】
以上、本発明の実施形態に係る無線電力伝送装置について説明したが、本発明は、上述の実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 無線電力伝送装置
2 送電側共振器
21 送電側の遮蔽ケース
21a 送電側の遮蔽ケースの開口部
22 送電側の結合端子
23 送電側の支持台
3 受電側共振器
31 受電側の遮蔽ケース
31a 受電側の遮蔽ケースの開口部
32 受電側の結合端子
33 受電側の支持台
図1
図2
図3
図4
図5
図6