特許第5971723号(P5971723)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5971723プラズマ処理装置およびプラズマ処理装置防着板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5971723
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置およびプラズマ処理装置防着板
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/00 20060101AFI20160804BHJP
【FI】
   C23C14/00 B
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-2906(P2013-2906)
(22)【出願日】2013年1月10日
(65)【公開番号】特開2014-133927(P2014-133927A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2015年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100091926
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 幸喜
(72)【発明者】
【氏名】竹田 悦治
(72)【発明者】
【氏名】真下 徹
(72)【発明者】
【氏名】内田 良平
【審査官】 安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0085121(US,A1)
【文献】 特開平10−055983(JP,A)
【文献】 特開2003−086575(JP,A)
【文献】 特開2007−277649(JP,A)
【文献】 特開2009−256740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
C23C 16/00−16/56
H05H 1/00−1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室内でプラズマにより基板上に薄膜を形成するプラズマ処理装置において、
前記処理室内で前記基板上以外に絶縁物が付着するのを妨げ、かつアノードとして機能する複数の導電性の防着板と、
前記処理室内で放電電圧を印加する電源部と、を備え、
前記防着板の少なくとも一部は、板面を表裏に貫通する、大きさが1〜5mmである複数の貫通孔が設けられ、かつ前記貫通孔が設けられた前記防着板同士が互いに1〜5mmの間隔をあけて板面を対向させ、互いに間隔をあけて配置されている前記防着板の一方に設けられた前記貫通孔と前記防着板の他方に設けられた前記貫通孔とが、プラズマ発生側方向に対し、前記方向に沿って位置しないように配置され、板面を対向する防着板同士は、断面積が10mm以下の導電性の接続具によって電気的に接続され、処理室内壁側に位置する防着板は、処理室内壁に沿って配置され、かつ前記処理室に電気的に接続されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記薄膜が電気的に絶縁物であることを特徴とする請求項1記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記処理室内に、前記薄膜の原料の少なくとも一部となるターゲットが配置されることを特徴とする請求項1または2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記薄膜の原料の少なくとも一部となる原料ガスを前記処理室内に供給する原料ガス供給部をさらに備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
処理室内でプラズマにより基板上に薄膜を形成するためのプラズマ処理装置に配置され、アノードとして機能する複数の導電性の防着板であって、
板面を表裏に貫通する、大きさが1〜5mmである複数の貫通孔が設けられ、かつ互いに1〜5mmの間隔をあけて板面を対向させ、互いに間隔をあけて配置されている前記防着板の一方に設けられた前記貫通孔と前記防着板の他方に設けられた前記貫通孔とが、プラズマ発生側方向に対し、前記方向に沿って位置しないように位置づけられ、板面を対向する防着板同士は、断面積が10mm以下の導電性の接続具によって電気的に接続され、処理室内壁側に位置する防着板は、処理室内壁に沿って配置されて前記処理室に電気的に接続されて配置されることを特徴とするプラズマ処理装置防着板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理室内でプラズマにより基板上に電気的に絶縁物である薄膜を形成するプラズマ処理装置およびこれに用いられる防着板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板上に電気的に絶縁物である薄膜を形成するプラズマ処理装置では、処理室を有し、該処理室内に基板を配置し、処理室内にプラズマ用ガスおよび反応性ガスを導入してプラズマ処理を行う。このプラズマ処理により、処理室内では、薄膜を構成するスパッタリング粒子やガス成分が生成される。スパッタリング粒子やガス成分は、処理室内に配置された基板上に堆積し、または基板と反応するなどして絶縁性の薄膜を基板上に形成する。
【0003】
しかし、成膜を継続していると、成膜粒子などが基板表面以外の処理室内部に付着、堆積するため、従来の装置では処理室内に防着板を配置して処理室内壁に成膜粒子が堆積するのを防止するものが提案されている。また、処理室内壁をアノードとして用いる装置では、防着板にアノードとしての機能を与えている。
成膜粒子などが防着板表面に堆積すると、堆積膜が厚く形成された部分と、堆積膜が比較的薄い部分とが生じて抵抗が不均一に増加しやすくなる。特に成膜粒子が絶縁物の性質を有するものでは、堆積膜が厚く形成された高抵抗の部分と堆積膜が比較的薄い低抵抗の部分とが生じて、抵抗不均一が顕著になる。
この状態でプラズマ処理を継続すると、抵抗の低いところに電子が集中するなどしてプラズマ放電が不安定になりプラズマ処理を安定的に行うことが難しくなる。
これを時系列で現すと以下のようになる。
1)防着板(アノード電位)に膜が堆積する。堆積する膜はプラズマの分布やガスのマス濃度により変化するため全体に均一に積層しない。
2)不均一に膜が堆積することにより電界(真空中の抵抗)に電位差を発生させる。
3)低抵抗部に、電子が集中することによりプラズマの分布は変化する。
4)更に現象が進むと発熱を発生して、ついには防着板自体の破壊に至ることがある。
【0004】
上記アノードの抵抗の不均一化を防止する技術としては、例えば特許文献1に記載された装置が提案されている。
この装置では、対向するターゲットの間に導電性アノードを配置し、ターゲットのエロージョン領域からアノードまでの距離を規定することでアノードの不動態化を抑えアノードの導電性を維持できるものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−131930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示される装置では、装置構成がマグネトロンスパッタリング装置に限定され、またターゲットやアノードなどの配置位置などに制約があり、処理室の適宜位置に配置される防着板の抵抗の不均一化を防ぐことはできない。
【0007】
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、配置の制約を受けることなく防着板として適宜位置に配置することができ、かつ防着板の抵抗の不均一化を回避して安定したプラズマ放電を可能にするプラズマ処理装置およびプラズマ処理装置防着板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明のプラズマ処理装置のうち、第1の本発明は、処理室内でプラズマにより基板上に薄膜を形成するプラズマ処理装置において、
前記処理室内で前記基板上以外に絶縁物が付着するのを妨げ、かつアノードとして機能する複数の導電性の防着板と、
前記処理室内で放電電圧を印加する電源部と、を備え、
前記防着板の少なくとも一部は、板面を表裏に貫通する、大きさが1〜5mmである複数の貫通孔が設けられ、かつ前記貫通孔が設けられた前記防着板同士が互いに1〜5mmの間隔をあけて板面を対向させ、互いに間隔をあけて配置されている前記防着板の一方に設けられた前記貫通孔と前記防着板の他方に設けられた前記貫通孔とが、プラズマ発生側方向に対し、前記方向に沿って位置しないように配置され、板面を対向する防着板同士は、断面積が10mm以下の導電性の接続具によって電気的に接続され、処理室内壁側に位置する防着板は、処理室内壁に沿って配置され、かつ前記処理室に電気的に接続されていることを特徴とする。
【0009】
第2の本発明のプラズマ処理装置は、前記第1の本発明において、前記薄膜が電気的に絶縁物であることを特徴とする。
【0015】
の本発明のプラズマ処理装置は、前記第1または第2の本発明において、前記処理室内に、前記薄膜の原料の少なくとも一部となるターゲットが配置されることを特徴とする。
【0016】
の本発明のプラズマ処理装置は、前記第1〜第の本発明のいずれかにおいて、前記薄膜の原料の少なくとも一部となる原料ガスを前記処理室内に供給する原料ガス供給部をさらに備えることを特徴とする。
【0017】
の本発明の防着板は、処理室内でプラズマにより基板上に薄膜を形成するためのプラズマ処理装置に配置され、アノードとして機能する複数の導電性の防着板であって、
板面を表裏に貫通する、大きさが1〜5mmである複数の貫通孔が設けられ、かつ互いに1〜5mmの間隔をあけて板面を対向させ、互いに間隔をあけて配置されている前記防着板の一方に設けられた前記貫通孔と前記防着板の他方に設けられた前記貫通孔とが、プラズマ発生側方向に対し、前記方向に沿って位置しないように位置づけられ、板面を対向する防着板同士は、断面積が10mm以下の導電性の接続具によって電気的に接続され、処理室内壁側に位置する防着板は、処理室内壁に沿って配置されて前記処理室に電気的に接続されて配置されることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、防着板の貫通孔により全面にわたって絶縁物が付着しても、電子の通過空間が確保され、対向する防着板や処理室内壁に電子が到達することができ、防着板で電子の移動が遮断されることはない。
【0022】
本発明のプラズマ処理装置は、反応性スパッタ装置、プラズマCVD装置などをその具体例として挙げることができるが、これに限定されるものではない。形成可能な薄膜としては、酸化膜、窒化膜などが例示され、具体的には、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、チタン窒化膜などを示すことができる。電気的に絶縁物である薄膜の形成において本発明は特に好適である。
【0023】
電源部は、処理室内で放電電圧を印加するものであり、放電電圧の印加により、処理室内においてプラズマを発生させることができる。電源部としては、直流電圧、交流電圧、パルス電圧などを用いることができ、特定のものに限定されるものではない
【0024】
処理室内では、薄膜の原料の少なくとも一部となるターゲットを設置して、プラズマ処理することができ、また、原料ガスを処理室に供給する原料ガス供給部を設けることができる。ターゲットを用いることなく原料ガスのみで薄膜材料を得るものや、基板との反応によって薄膜材料を得るものであってもよい。
【0025】
また、プラズマ処理装置内に配置される防着板は導電性を有し、アノードとして機能する。防着板は、処理室と電気的に接続することができる。
さらに、少なくとも一部の防着板は、表裏に貫通する貫通孔を有し、互いに間隔を空けて板面を対向させて配置される
【0026】
貫通孔の横断面形状や大きさは特に限定されるものではないが、円形状、多角形状などとすることができる。貫通孔の大きさは、1〜5mmとするのが望ましい。異形の形状では、例えば、最小大きさ、最大大きさともに1〜5mmに収まるものとする。すなわち、貫通孔は、直径1mmの円形と直径5mmの円形との間に収まる大きさを有するものとすることができる。
貫通孔の大きさが1mm未満であると、電子の通過が妨げられ、放電の不安定化を招きやすくなる。また、貫通孔の大きさが5mmを超えると、1枚目の貫通孔を通過した成膜粒子などが2枚目の防着板の広い面積に付着、堆積し、電子の透過性を損ない、放電の不安定化を招く。
貫通孔は、板の全面にわたってまたは面の一部に分散して形成されたものとすることができ、例えば、所定の間隔をおいて配列することができる。孔同士の間隔としては、例えば孔の周縁間距離として1〜5mmを挙げることができる。
1mm未満では貫通孔の面積が小さくなりすぎ、プラズマ放電が不安定となり、5mmを超えると、貫通孔の効果が少なく、プラズマ放電が不安定となる。
なお、貫通孔の大きさと貫通孔間の間隔は同じにするのが望ましい。
【0027】
貫通孔を有する防着板同士を対向させる際の互いの間隔は特に限定されるものではないが、例えば1〜5mmの間隔とすることができる。
その間隔が1mm未満であると、1枚目の防着板の貫通孔を通過した電子の直進性によって成膜粒子などが堆積した部分にしか電子が至らず、通電が阻害され放電安定性を得ることが難しい。
一方、間隔が5mmを超えると、1枚目の貫通孔を通過した成膜粒子などが2枚目の防着板の広い面積に付着、堆積し、電子の透過性を損ない、放電の不安定化を招く。
【0028】
また、対向配置する防着板は、導電性のねじなどからなる接続具で互いに接続するのが望ましい。これにより、接続具を通して徐々に電流が流れ、授電流分散効果と時間差伝導効果がある。このため、接続具は、面接続するものではなく、小さい面(例えば10mm以下)で点接続するねじなどを面上に分散することが望ましい。
【0029】
また、対向配置する防着板では、一方に設けられた貫通孔と他方に設けられた貫通孔とが、プラズマ発生側方向に対し、両貫通孔がこの方向に沿っていないのが望ましい。両貫通孔がこの方向に沿っていると、1枚目の貫通孔を通過した成膜粒子などがそのまま2枚目の貫通孔を通って処理室内壁に到達してしまい、防着板としての機能を損なうためである。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明によれば、部材配置に制約を生じることなく、安定したプラズマ放電を実現することができ、長期にわたって安定したプラズマ処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施形態を示すものであり、孔プレートを配置された時のプラズマ処理装置を示す概略図である。
図2】同じく、プラズマ処理装置に用いられる防着板を示す概略図である。
図3】本発明の一実施形態のプラズマ処理装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明の一実施形態のプラズマ処理装置およびプラズマ処理装置防着板について図1および図2を用いて説明する。
プラズマ処理装置1は処理室2を備えており、処理室2は、真空減圧可能な気密構造を有し、電気的に接地されている。処理室は、その内部においてプラズマを発生して基板上に薄膜の形成が可能な構造のものであれば特に限定されるものではないが、例えば0.1〜10Pa程度の真空状態に減圧可能な気密構造のものとすることができる。
【0033】
処理室2には、処理室2内を真空引きする真空ポンプ3が接続され、また、処理室2内にガスを導入するガス導入ライン4が接続されている。ガス導入ライン4は、例えば、アルゴンガスなどのスパッタガスや、酸素ガス、窒素ガスなどの反応性ガスの導入が可能であり、ガスを選択して導入することもできる。ガス導入ライン4は、本発明の原料ガス供給部に相当する。
なお、処理室2内にスパッタガスを導入するラインと、処理室2内に反応性ガスを導入するラインとを別個独立に処理室2に接続してもよい。
また処理室2には、処理室2内のガスを排気するための排気ライン5が接続されている。
また、本発明としては反応性ガスを用いないものであってもよく、例えば、スパッタに使用するArなどを用いるものでもよい。
【0034】
処理室2内の天板には、基板20を下面側で保持する基板ホルダー6が設けられており、基板ホルダー6は接地されている。基板20は、特にその種類が限定されるものではなく、シリコン基板などの半導体基板、ガラス基板などを例示することができる。
【0035】
処理室2内の底部には、ターゲット支持台7が処理室2とは絶縁した状態で取り付けられており、ターゲット支持台7上にターゲット21を設置する。ターゲット21には、形成する薄膜の種類に応じて適宜の材料を選択することができ、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜を形成する場合のシリコンターゲット、チタン窒化膜を形成する場合のチタンターゲットなどを例示することができる。ターゲットとしては、金属材料や絶縁材料からなるものを用いることができる。
また、ターゲット支持台7には、本発明の電源部に相当する直流電源9の負極が電気的に接続されており、直流電源9の正極は接地されている。
【0036】
処理室2内には、ターゲット支持台7と基板ホルダー6との間の周囲の処理室内側面と、処理室内底面とを覆うように、2枚の導電性の防着板10、11が互いに間隔を有して設置されている。防着板の板厚は、特に限定されるものではない。
【0037】
防着板10、11は、図1、2に示すようにそれぞれ表裏に貫通する円形状の貫通孔12、13を有しており、貫通孔12、13は、縦横に配列されている。貫通孔は直径が1〜5mmの大きさを有し、互いに1〜5mmの間隔(周縁間距離)を有している。なお、防着板は、一部に貫通孔を有しないものを含むものであってもよい。
【0038】
防着板10、11のうち、処理室内壁2a側に位置する防着板10は、処理室内壁2aに沿って配置され、かつ処理室2aに電気的に接続されている。
また、防着板11は、防着板10と間隙を有し、かつ防着板10とは板面を対向するように配置されており、導電性のボルト15によって適所で互いに電気的かつ機械的に接続されている。ボルト15は、断面積が10mmと小さく、防着板10、11を点接触により電気的に接続している。ボルト15の接続により防着板10、11の間隔が設定されており、その間隔は1〜5mmとされている。
【0039】
また、防着板10、11の各貫通孔12、13は、互いに位置をずらしてプラズマ発生側に対する方向に沿って位置しないように位置付けられている。基板20直下の下方側空間をプラズマ発生側として見ることができる。
なお、図1および図2では、防着板10、11の2枚が対向して配置された構成を示しているが、3枚以上の防着板を間隔を置いて配置するものであってもよい。
【0040】
次に、上記プラズマ処理装置1の動作について説明する。
まず、処理室2内の天板下面側の基板ホルダー6に基板20を設置し、ターゲット支持台7上に、ターゲット21を設置する。
次いで、真空ポンプ3により処理室2内を所定の圧力の真空状態、例えば、0.1〜10Paに減圧する。次いで、処理室2内に、ガス導入ライン4を通して、アルゴンガスなどのプラズマガスと、酸素ガス、窒素ガスなどの反応性ガスの混合ガスを所定の流量で導入する。その後、直流電源9により、接地側に直流電圧を印加する。この電圧の印加により、基板ホルダー6、処理室内壁2a、防着板10とターゲット支持台7との間に放電が生じ、プラズマガスによるプラズマが発生する。プラズマ発生部16は、主として基板ホルダー6の下方側に位置する。プラズマは、ターゲット21をスパッタリングするとともに反応性ガスを励起して絶縁性の成膜粒子を生成する。生成された成膜粒子は、基板20上で薄膜を形成するとともに一部は処理室2内において四散し、防着板10、11にも付着堆積する。
【0041】
防着板11では、表面に成膜粒子が付着し、一部は防着板11の貫通孔13を通過して防着板10の表面に至る。但し、貫通孔13の大きさは小さいので、成膜粒子の通過は限られる。また、防着板11の貫通孔13と防着板10の貫通孔12とは、プラズマ発生源側からは直線状に位置していないため、貫通孔13を通った成膜粒子は防着板10の貫通孔12を通過することなく防着板10の表面に堆積する。したがって、貫通孔13、貫通孔12を通して処理室内壁2aが露出した状態が維持され、電子の移動が確保されて導電性が維持される。
したがって、薄膜の形成を継続した場合であっても、防着板10、11が絶縁化しても処理室内壁2aとの導電性が失われることはなく、プラズマ放電が安定化される。
【0042】
なお、上記実施形態では、ターゲットを用いたプラズマ処理装置について説明したが、本発明としてはこれに限定されるものではなく、ターゲットを用いることなくプラズマ放電により原料ガスをプラズマ化して基板上に絶縁物薄膜を形成するプラズマCVD装置に適用することも可能である。
以下に、プラズマCVD装置について詳細に説明する。
【0043】
図3は、他の実施形態のプラズマ処理装置1aを示す断面図である。図示するように、プラズマ処理装置1aは、プラズマCVD装置であり、処理室2を備えている。処理室2は、真空減圧可能な気密構造を有し、また、電気的に接地されている。なお、前記実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明する。
【0044】
処理室2には、処理室2内を真空引きするための機構としての真空ポンプ3および処理室2内を排気するための排気ライン5が接続されている。
また、処理室2には、処理室2内に雰囲気ガスを導入するガス導入ライン4が接続されている。ガス導入ライン4は、例えば、酸素ガス、窒素ガスなどのなどの原料ガスや、アルゴンガスなどのキャリアガスの導入が可能に構成されている。
【0045】
処理室2内の天板下面側には、電気的に絶縁物である薄膜を形成すべき基板20を保持する基板ホルダー6が設けられている。
処理室2内には、電極22と基板ホルダー6との間の空間の底部および天板下面側を除く周囲を囲むように、導電性の防着板10、11が設置されている。
防着板10は、基板20上に形成すべき薄膜を構成する絶縁物が基板20上以外に付着するのを妨げるものである。特に、図3に示す構成では、防着板10、11は、処理室2の内側壁面2aに絶縁物が付着するのを妨げるように配置されている。防着板10、11は、前記実施形態のプラズマ処理装置1と同様の構造であり、ここでは詳細な説明を省略する。
【0046】
次に、上記プラズマ処理装置1aの動作について説明する。
まず、基板ホルダー6上に基板20を取り付ける。
次いで、真空ポンプ3により処理室2内を所定の圧力の真空状態まで減圧し、処理室2内に、ガス導入ライン4を通して、アルゴンガスなどのプラズマガスと、酸素ガス、窒素ガスなどの原料ガス、キャリアガスとの混合ガスを所定の流量で導入する。その後、直流電源9により、接地側に直流電圧を印加する。この電圧の印加により、電極22と基板ホルダー6、処理室内壁2a、防着板10、11との間に放電が生じ、プラズマガスによりプラズマを発生させる。
【0047】
プラズマの発生により、原料ガスに一定(電離電圧)以上のエネルギーを持つ電子が衝突し、化学的に活性な成膜粒子が生成される。
成膜粒子は、基板20表面に付着堆積して薄膜を形成するとともに、防着板10、11にも付着堆積する。
しかし、防着板10、11では、前記実施形態で説明したように、防着板10、11が絶縁化しても処理室内壁との導電性が失われることはなく、プラズマ放電が安定化される。
【0048】
以上、本発明について上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りは適宜の変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 プラズマ処理装置
2 処理室
2a 内側壁面
3 真空ポンプ
4 ガス導入ライン
6 基板ホルダー
7 ターゲット支持台
9 直流電源
10 防着板
11 防着板
12 貫通孔
13 貫通孔
15 固定ねじ
16 プラズマ発生部
20 基板
21 ターゲット
図1
図2
図3