特許第5971785号(P5971785)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5971785可搬無線通信装置、無線通信方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5971785
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】可搬無線通信装置、無線通信方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04M 1/00 20060101AFI20160804BHJP
   H04W 92/18 20090101ALI20160804BHJP
   H04W 76/02 20090101ALI20160804BHJP
【FI】
   H04M1/00 R
   H04W92/18
   H04W76/02
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-560895(P2015-560895)
(86)(22)【出願日】2015年3月13日
(86)【国際出願番号】JP2015057596
【審査請求日】2015年12月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399037405
【氏名又は名称】楽天株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムジビヤ アディヤン
(72)【発明者】
【氏名】チュン ジョナサン
【審査官】 圓道 浩史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−096102(JP,A)
【文献】 特表2011−518452(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/124851(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M 1/00
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00− 8/24
8/26−16/32
24/00−28/00
28/02−72/02
72/04−74/02
74/04−74/06
74/08−84/10
84/12−88/06
88/08−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
数の相手通信装置の相対位置を記憶する相対位置記憶手段と、
前記複数の相手通信装置の移動先を示す移動先情報を順次受信する移動先情報受信手段と、
前記移動先情報に基づいて前記複数の相手通信装置の相対位置を更新する相対位置更新手段と、
ユーザによる通信方向の指定を受け付ける受付手段と、
前記通信方向と前記各相手通信装置の相対位置とに基づいて1の前記相手通信装置を特定する特定手段と、
特定される前記相手通信装置にデータを送信する送信手段と、
を含む可搬無線通信装置において、
1の前記相手通信装置に対する他の前記相手通信装置の相対位置を受信する相対位置受信手段と、
前記可搬無線通信装置に対する前記1の前記相手通信装置の相対位置を前記相対位置記憶手段から読み出す相対位置読出手段と、
前記相対位置受信手段により受信される相対位置と、前記相対位置読出手段により読み出される相対位置と、に基づいて、前記可搬無線通信装置に対する前記他の前記相手通信装置の相対位置を算出する相対位置算出手段と、
前記相対位置算出手段により算出される相対位置を前記他の前記相手通信装置に関連づけて前記相対位置記憶手段に格納する相対位置格納手段と、
をさらに含む可搬無線通信装置
【請求項2】
請求項1に記載の可搬無線通信装置において、
前記相手通信装置からその方位情報を受信する方位情報受信手段と、
当該可搬無線通信装置の方位情報を取得する方位情報取得手段と、
前記相手通信装置からの無線信号の受信レベルを取得する受信レベル取得手段と、
前記受信レベルが所定レベル以上であり、前記相手通信装置の方位情報と当該可搬無線通信装置の方位情報が互いに向き合うことを示す場合、所定位置を前記相手通信装置の相対位置として前記相対位置記憶手段に記憶させる相対位置初期化手段と、
をさらに含む可搬無線通信装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の可搬無線通信装置において、
前記移動先情報受信手段は、前記相手通信装置が移動した場合に前記移動先情報を受信する、可搬無線通信装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の可搬無線通信装置において、
前記特定手段は、前記通信方向に複数の前記相手通信装置がある場合に、そのうち1つを前記可搬無線通信装置の傾きに基づいて特定する、可搬無線通信装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載の可搬無線通信装置において、
前記受付手段は、タッチパネルに対するスワイプ操作の方向に基づいて、前記通信方向の指定を受け付け、
前記特定手段は、受け付けられる前記方向に複数の前記相手通信装置がある場合に、そのうち1つを前記スワイプ操作におけるスワイプ長に基づいて特定する、可搬無線通信装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の可搬無線通信装置において、
前記特定手段は、前記各相手通信装置の相対位置に基づいて、前記可搬無線通信装置を中心とした前記各相手通信装置の方向が互いに離れるよう、それら相対位置を修正した前記各相手通信装置の修正相対位置を算出し、受け付けられる前記方向と前記各相手通信装置の修正相対位置とに基づいて、1の前記相手通信装置を特定する、可搬無線通信装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の可搬無線通信装置において、
前記移動先情報受信手段は、少なくとも1つの前記相手通信装置の移動先情報を、他の少なくとも1つの前記相手通信装置を中継して受信する、可搬無線通信装置。
【請求項8】
数の相手通信装置の移動先を示す移動先情報を順次受信する移動先情報受信ステップと、
前記移動先情報に基づいて相対位置記憶手段に記憶される前記複数の相手通信装置の相対位置を更新する相対位置更新ステップと、
ユーザによる通信方向の指定を受け付ける受付ステップと、
前記通信方向と前記各相手通信装置の相対位置とに基づいて1の前記相手通信装置を特定する特定ステップと、
特定される前記相手通信装置にデータを送信する送信ステップと、
を含む可搬無線通信装置の無線通信方法において、
1の前記相手通信装置に対する他の前記相手通信装置の相対位置を受信する相対位置受信ステップと、
前記可搬無線通信装置に対する前記1の前記相手通信装置の相対位置を前記相対位置記憶手段から読み出す相対位置読出ステップと、
前記相対位置受信ステップにより受信される相対位置と、前記相対位置読出ステップにより読み出される相対位置と、に基づいて、前記可搬無線通信装置に対する前記他の前記相手通信装置の相対位置を算出する相対位置算出ステップと、
前記相対位置算出ステップにより算出される相対位置を前記他の前記相手通信装置に関連づけて前記相対位置記憶手段に格納する相対位置格納ステップと、
をさらに含む無線通信方法
【請求項9】
複数の相手通信装置の相対位置を記憶する相対位置記憶手段、
前記複数の相手通信装置の移動先を示す移動先情報を順次受信する移動先情報受信手段、
前記移動先情報に基づいて前記複数の相手通信装置の相対位置を更新する相対位置更新手段、
ユーザによる通信方向の指定を受け付ける受付手段、
前記通信方向と前記各相手通信装置の相対位置とに基づいて1の前記相手通信装置を特定する特定手段、及び
特定される前記相手通信装置にデータを送信する送信手段
としてコンピュータを機能させるためのプログラムにおいて、
1の前記相手通信装置に対する他の前記相手通信装置の相対位置を受信する相対位置受信手段、
前記コンピュータに対する前記1の前記相手通信装置の相対位置を前記相対位置記憶手段から読み出す相対位置読出手段、
前記相対位置受信手段により受信される相対位置と、前記相対位置読出手段により読み出される相対位置と、に基づいて、前記コンピュータに対する前記他の前記相手通信装置の相対位置を算出する相対位置算出手段、及び
前記相対位置算出手段により算出される相対位置を前記他の前記相手通信装置に関連づけて前記相対位置記憶手段に格納する相対位置格納手段
として前記コンピュータをさらに機能させるためのプログラム
【請求項10】
可搬無線通信装置において、
複数の相手通信装置の相対位置を記憶する相対位置記憶手段と、
前記複数の相手通信装置の移動先を示す移動先情報を順次受信する移動先情報受信手段と、
前記移動先情報に基づいて前記複数の相手通信装置の相対位置を更新する相対位置更新手段と、
ユーザによる通信方向の指定を受け付ける受付手段と、
前記通信方向と前記各相手通信装置の相対位置とに基づいて1の前記相手通信装置を特定する特定手段と、
特定される前記相手通信装置にデータを送信する送信手段と、を含み、
前記特定手段は、前記各相手通信装置の相対位置に基づいて、前記可搬無線通信装置を中心とした前記各相手通信装置の方向が互いに離れるよう、それら相対位置を修正した前記各相手通信装置の修正相対位置を算出し、受け付けられる前記方向と前記各相手通信装置の修正相対位置とに基づいて、1の前記相手通信装置を特定する、可搬無線通信装置。
【請求項11】
可搬無線通信装置の無線通信方法において、
数の相手通信装置の移動先を示す移動先情報を順次受信する移動先情報受信ステップと、
前記移動先情報に基づいて前記複数の相手通信装置の相対位置を更新する相対位置更新ステップと、
ユーザによる通信方向の指定を受け付ける受付ステップと、
前記通信方向と前記各相手通信装置の相対位置とに基づいて1の前記相手通信装置を特定する特定ステップと、
特定される前記相手通信装置にデータを送信する送信ステップと、を含み、
前記特定ステップは、前記各相手通信装置の相対位置に基づいて、前記可搬無線通信装置を中心とした前記各相手通信装置の方向が互いに離れるよう、それら相対位置を修正した前記各相手通信装置の修正相対位置を算出し、受け付けられる前記方向と前記各相手通信装置の修正相対位置とに基づいて、1の前記相手通信装置を特定する、無線通信方法。
【請求項12】
複数の相手通信装置の相対位置を記憶する相対位置記憶手段、
前記複数の相手通信装置の移動先を示す移動先情報を順次受信する移動先情報受信手段、
前記移動先情報に基づいて前記複数の相手通信装置の相対位置を更新する相対位置更新手段、
ユーザによる通信方向の指定を受け付ける受付手段、
前記通信方向と前記各相手通信装置の相対位置とに基づいて1の前記相手通信装置を特定する特定手段、及び
特定される前記相手通信装置にデータを送信する送信手段
としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、
前記特定手段は、前記各相手通信装置の相対位置に基づいて、前記コンピュータを中心とした前記各相手通信装置の方向が互いに離れるよう、それら相対位置を修正した前記各相手通信装置の修正相対位置を算出し、受け付けられる前記方向と前記各相手通信装置の修正相対位置とに基づいて、1の前記相手通信装置を特定する、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可搬無線通信装置、無線通信方法及びプログラムに関し、特に、可搬無線通信装置間の通信における相手通信装置の指定に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、接続機器であるリモコン端末側で被接続機器であるテレビの方位情報を事前に登録しておくことで、接続機器で被接続機器の方位を示す操作、例えばその方向をタップすることで、接続機器が被接続機器と接続することを可能とする技術が開示されている。同技術によれば、被接続機器の方向を入力するだけでデータ送受信を行うことが可能となり、直観的なユーザインタフェースを実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−59090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では事前に被接続機器の方位情報を該機器の識別情報と関連づけて登録しておく必要があり、被接続機器が移動してしまった場合には、再度登録をやり直さなければならない。すなわち上記従来技術は、接続機器と被接続機器の双方が可搬無線通信装置である場合には適用できない。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、直観的操作により、複数の可搬無線通信装置のうち所望の装置にデータを送信できる可搬無線通信装置、無線通信方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一側面に係る可搬無線通信装置は、複数の相手通信装置の相対位置を記憶する相対位置記憶手段と、前記複数の相手通信装置の移動先を示す移動先情報を順次受信する移動先情報受信手段と、前記移動先情報に基づいて前記複数の相手通信装置の相対位置を更新する相対位置更新手段と、ユーザによる通信方向の指定を受け付ける受付手段と、前記通信方向と前記各相手通信装置の相対位置とに基づいて1の前記相手通信装置を特定する特定手段と、特定される前記相手通信装置にデータを送信する送信手段と、を含む。
【0007】
また、本発明の一側面に係る無線通信方法は、前記複数の相手通信装置の移動先を示す移動先情報を順次受信する移動先情報受信ステップと、前記移動先情報に基づいて前記複数の相手通信装置の相対位置を更新する相対位置更新ステップと、ユーザによる通信方向の指定を受け付ける受付ステップと、前記通信方向と前記各相手通信装置の相対位置とに基づいて1の前記相手通信装置を特定する特定ステップと、特定される前記相手通信装置にデータを送信する送信ステップと、を含む。
【0008】
さらに本発明の一側面に係るプログラムは、複数の相手通信装置の相対位置を記憶する相対位置記憶手段、前記複数の相手通信装置の移動先を示す移動先情報を順次受信する移動先情報受信手段、前記移動先情報に基づいて前記複数の相手通信装置の相対位置を更新する相対位置更新手段、ユーザによる通信方向の指定を受け付ける受付手段、前記通信方向と前記各相手通信装置の相対位置とに基づいて1の前記相手通信装置を特定する特定手段、及び特定される前記相手通信装置にデータを送信する送信手段としてコンピュータを機能させるためのプログラムである。このプログラムは、コンピュータ可読情報記憶媒体に格納されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る可搬無線通信装置の構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る可搬無線通信装置の外観斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る可搬無線通信装置の機能ブロック図である。
図4】2台の可搬無線通信装置の通信接続を確立する作業を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る可搬無線通信装置における通信接続を示すフロー図である。
図6】相対位置情報記憶部の記憶内容を模式的に示す図である。
図7】3台の可搬無線通信装置の配置例を示す図である。
図8】所望の可搬無線通信装置に宛ててデータを送信する操作を示す図である。
図9】3台の可搬無線通信装置の他の配置例を示す図である。
図10】本発明の実施形態に係る可搬無線通信装置におけるデータ送信処理を示すフロー図である。
図11】可搬無線通信装置の相対位置の補正を説明する図である。
図12】複数の可搬無線通信装置によるネットワークを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る可搬無線通信装置の構成図である。同図に示す可搬無線通信装置10は、スマートフォンとして構成されており、携帯電話通信部12、メモリ14、プロセッサ16、電源・オーディオLSI18、表示パネル20、カメラ22、無線LAN通信部24、近距離無線通信部26、3軸ジャイロセンサ28、3軸加速度センサ30、電子コンパス32及び入力部34を備えている。図2に示すように、可搬無線通信装置10は例えば薄型の矩形状の筐体を有し、筐体表面には平板状の表示パネル20及び入力部34の一部であるボタンが設けられている。
【0012】
図1において、携帯電話通信部12はモデム及び無線通信部を含んでおり、携帯電話の各種通信規格に従って、携帯電話無線通信を行うものである。メモリ14は揮発性メモリ及び不揮発性メモリを含んで構成されており、プロセッサ16によりアクセスされる。プロセッサ16はCPUや内蔵メモリを含んで構成されており、プログラムを実行することにより可搬無線通信装置10を制御する。表示パネル20は液晶パネルや有機ELパネルなどにより構成されており、プロセッサ16により供給される表示データを出力する。カメラ22は静止画及び動画を撮影する。無線LAN通信部26は、IEEE802.11規格に従って、無線LAN通信を行うものである。近距離無線通信部26は、比較的近距離の装置との間で省電力無線通信を行うものであり、例えばBluetooth(登録商標)による近距離無線通信を行う。
【0013】
3軸ジャイロセンサ28は、図2に示すように、表示パネル20の上下方向に設定されたロール軸を中心とする筐体のロール角速度、左右方向に設定されたピッチ軸を中心とする筐体のピッチ角速度、法線方向に設定されたヨー軸を中心とする筐体のヨー角速度を検出する。プロセッサ16は、これらの値を時間積分することにより、ロール角、ピッチ角及びヨー角といった姿勢情報を得ることができる。
【0014】
3軸加速度センサ30は、図2に示す3つの軸方向の筐体の加速度を検出する。プロセッサ16は、これら3方向の加速度に基づいて、筐体が水平方向に対してどの向きに保持されているか、どの向きにどれだけ移動したかを判断できる。近距離無線通信部26は、他の可搬無線通信装置10から送信される無線信号の受信レベル(RSSI:Received Signal Strength Indicator)を取得するようになっているので、プロセッサ16は、この受信レベルからも筐体がどの位置にあるかを判断できる。すなわち、3軸加速度センサ30の出力値だけでは、等速運動による移動距離が分からないため、他の可搬無線通信装置10からの無線信号の受信レベルを3方向の加速度と併用することで、自機の位置を精度よく計算することができる。
【0015】
電子コンパス32は、地磁気の向きを検知することにより、筐体に設定されたロール軸(図2参照)がどの方位を向いているかを出力する。なお、電子コンパス32は、筐体のピッチ角やロール角が水平に対して一定角度未満であれば、正しく方位を取得することができる。より正確な方位を得るために、電子コンパス32により出力される方位を、ジャイロセンサ28の出力値により補正してよい。入力部34は、筐体表面に設けられたボタンや、表示パネル20の表面に設けられたタッチパネルから構成されている。
【0016】
本実施形態では可搬無線通信装置10は、近距離無線通信部26により他の可搬無線通信装置10とデータの送受信を行う、データ通信プログラムを実行する。既に説明したように近距離無線通信部26は、ここではBluetoothによるデータ通信を行う。2以上の可搬無線通信装置10がBluetoothにより直接又は間接に接続され、全体としてネットワークを構成する(図12参照)。後述するように、可搬無線通信装置10はデータ中継部10i(図3参照)を機能的に有しており、該データ中継部10iは他の可搬無線通信装置10から送信された各種データを別の可搬無線通信装置10に転送する。これによりネットワークに含まれる任意の可搬無線通信装置10にデータを送信できる。また、必要に応じてすべての可搬無線通信装置10でデータを共有できる。
【0017】
図3は、近距離無線通信によるデータ送受信を行う場合の可搬無線通信装置10の機能ブロック図である。同図に示される各機能は、上記データ通信プログラムをプロセッサ16が実行することにより実現されるものである。同図に示すように、可搬無線通信装置10は、機能的には相対位置記憶部10a、相対位置更新部10b、送信指示部10c、データ送信部10d、通信接続部10e、移動情報受信部10f、移動情報送信部10g、相対位置受信部10h及びデータ中継部10iを含んでいる。なお、このデータ通信プログラムは、携帯電話ネットワークなどの通信ネットワークからダウンロードされてもよいし、各種メモリカードからインストールされてもよい。
【0018】
通信接続部10eは、他の可搬無線通信装置10との通信接続を確立する。従来技術によれば、近距離無線通信の接続を確立するためには、2つの可搬無線通信装置10の間でペアリングと呼ばれる通信接続手順を手作業で実行しなければならない。本実施形態では、この手順を以下のように直観的に行うようにしている。
【0019】
図4は、接続手順中の2つの可搬無線通信装置10を示す斜視図であり、本実施形態における可搬無線通信装置10の無線通信接続の手順を示している。同図に示すように、2つの可搬無線通信装置10の各ユーザは、互いが可搬無線通信装置10を手に持って、それらを近づける。このとき、各ユーザは、相手の可搬無線通信装置10を見ながら、2つの可搬無線通信装置10の距離が近づくように、また筐体が向き合うように、自分の可搬無線通信装置10の位置及び姿勢を動かす。
【0020】
各可搬無線通信装置10では、自らが向いている方位を電子コンパス32から取得する。また、相手装置がその電子コンパス32から取得した方位を、近距離無線通信部26により相手装置から受信する。さらに、各可搬無線通信装置10は、相手装置からの無線信号の受信レベルを近距離無線通信部26から取得する。
【0021】
そして、2つの可搬無線通信装置10の方位、相手装置からの無線信号の受信レベルに基づいて、相手装置との通信接続を確立するか否かを判断する。より具体的には、方位の差から180度引いた値が所定値未満であり、受信レベルが一定以上の場合(ここでは、RSSIが”Immediate”である場合)、相手装置との通信接続を確立する。
【0022】
このように本実施形態によれば、各ユーザは、相手の可搬無線通信装置10を見ながら、2つの可搬無線通信装置10の距離が近づくように、また筐体が向き合うように、自分の可搬無線通信装置10の位置及び姿勢を動かすという直観的操作により、それら可搬無線通信装置10の通信接続を確立させることができる。
【0023】
図5は、通信接続部10eの処理を示すフロー図である。同図に示す処理(S101〜S104)は、可搬無線通信装置10において通信機能が起動された場合に、所定時間ごとに繰り返して実行されるものである。また、可搬無線通信装置10は、Bluetooth LE(Low Energy)によるアドバタイズメントパケットを常時ブロードキャストしており、このアドバタイズメントパケットには、可搬無線通信装置10の端末ID、電子コンパス32から出力される方位が含められている。
【0024】
可搬無線通信装置10は、他の可搬無線通信装置10と通信接続する場合には、まず近距離無線通信部26に含まれる受信バッファから端末ID及び方位を読みだす。これらのデータは、他の可搬無線通信装置10から送信されるアドバタイズメントパケットから取得したものである。また、可搬無線通信装置10は、受信したアドバタイズメントパケットの受信レベルを近距離無線通信部26から取得する(S101)。
【0025】
次に、可搬無線通信装置10は、電子コンパス32から方位を取得し、取得した方位と、他の可搬無線通信装置10から受信した方位と、の差から180度を引いた値が所定値α未満かを判断する。さらに、S101で取得した受信レベルが所定値以上(ここではRSSI=”immediate”)であるか否かを判断する(S102)。S102の判断が肯定的であれば、他の可搬無線通信装置10と通信接続を確立する(S103)。例えば、暗証情報である互いのリンクキーを交換し、相互に暗号化通信が可能な状態とする。さらに、相手装置の相対位置を初期化するよう相対位置更新部10Bに指示するとともに、接続済みの他の可搬無線通信装置10に対し、新たに接続した相手装置の端末ID(被接続端末ID)、初期相対位置(後述)及び自機の端末ID(接続端末ID)を送信し(S104)、S101に戻る。相対位置の初期化については後に詳述する。S102の判断が否定的であれば、S103及びS104の処理をスキップし、S101に戻る。
【0026】
相対位置記憶部10aは、既に通信接続が確立されている、他の可搬無線通信装置10の相対位置を記憶する。図6は、相対位置情報記憶部10aの記憶内容を模式的に示している。相対位置は、自装置を中心とした座標系における、他の可搬無線通信装置10の位置座標を示す。相対位置は、例えば極座標系により記述される。
【0027】
相対位置更新部10bは、相対位置記憶部10aに記憶される他の可搬無線通信装置10の相対位置を更新する。上述のように、他の可搬無線通信装置10と通信接続を確立した場合には、通信接続部10eより相対位置の初期化が指示される(図5のS104)。他の可搬無線通信装置10と通信接続を確立する場合、通信接続を確立したタイミングにおいては、相手装置は自機のすぐ前方に位置していると見做すことができるからである。そこで、相対位置更新部10bは、通信接続部10eがすでに取得している端末IDに関連づけて、自機のすぐ前方の位置、例えば前方に0.5m離れた位置を初期相対位置として、相対位置記憶部10aに格納する。すなわち、例えば極座標系が用いられる場合、(0.5,0)が初期相対位置として相対位置記憶部10aに格納される。なお、受信レベルの値により、自機の前方において、どれだけ離れた位置に相手装置があるかを判断し、その値により初期相対位置を決定してよい。
【0028】
また上述のように、通信接続部10eは、新たに可搬無線通信装置10と通信接続すると、被接続端末ID、上記初期相対位置、及び接続端末IDを、直接又は間接に接続されたすべての他の可搬無線通信装置10に送信する。これらの情報は、他の可搬無線通信装置10の相対位置受信部10hにより受信される。相対位置更新部10bは、接続端末IDに関連づけて記憶された相対位置を相対位置記憶部10aから読出し、相対位置受信部10hが受信した初期相対位置とベクトル加算する。これにより、自機に対する、新たにネットワークに接続された可搬無線通信装置10の相対位置を算出する。そして、相対位置更新部10bは、算出された相対位置を、相対位置受信部10hが受信した被接続端末IDに関連づけて、相対位置記憶部10aに記憶する。例えば、可搬無線通信装置Aに可搬無線通信装置Bが接続している状態で、可搬無線通信装置Bに可搬無線通信装置Cが新たに接続すると、可搬無線通信装置Bから可搬無線通信装置Aに対して、可搬無線通信Cの端末ID(被接続端末ID)、可搬無線通信装置Bの端末ID(接続端末ID)、可搬無線通信装置Bに対する可搬無線通信装置Cの初期相対位置が送信される。可搬無線通信装置Aでは、可搬無線通信装置Aに対する可搬無線通信Bの相対位置を示すベクトルと、可搬無線通信装置Bから受信した初期相対位置を示すベクトルと、を加算することにより、可搬無線通信装置Aに対する可搬無線通信装置Cの相対位置を示すベクトルを得ることができる。可搬無線通信装置Aの相対位置更新部10Bは、得られたベクトルが示す相対位置を、可搬無線通信装置Cの端末IDに関連づけて、相対位置記憶部10aに関連づけて記憶する。
【0029】
移動情報送信部10gは、加速度センサ30の出力を監視しており、加速度センサ30の出力により筐体が並進移動したと判断すれば、その相対的な移動先の情報、すなわち移動方向及び移動量を通信接続している他の可搬無線通信装置10に送信する。移動方向及び移動量を計算するために、上述のように加速度センサ30の出力値のみならず、他の可搬無線通信装置10からの無線信号の受信レベルを用いてよい。また、移動情報受信部10fは、こうして送信される移動方向及び移動量を、通信接続している他の可搬無線通信装置10から受信する。
【0030】
相対位置更新部10bは、移動情報受信部10fが他の可搬無線通信装置10から移動方向及び移動量を受信する場合に、その可搬無線通信装置10の端末IDに関連づけて記憶された相対位置を、受信した移動方向に、受信した移動量だけずらすことにより、相対位置を更新する。相対位置更新部10bは、さらに、移動情報送信部10gが他の可搬無線通信装置に移動方向及び移動量を送信する場合に、相対位置記憶部10aに記憶されたすべての相対位置を、送信した移動方向と逆向きに、送信した移動量だけずらすことにより、それら相対位置を更新する。こうして、相対位置記憶部10aには、通信接続を確立したすべての可搬無線通信装置10の相対位置を正確に記憶している。
【0031】
送信指示部10cは、ユーザによる通信方向の指定を受け付ける。そして、指定された通信方向と、相対位置記憶部10aに記憶されている、他の可搬無線通信装置10の相対位置と、に基づいて、送信先となる1つの可搬無線通信装置10を特定する。具体的には、ユーザにより指定された方向に自機から伸びる直線に対し、所定距離内にある可搬無線通信装置10のうち1つを送信先として特定する。
【0032】
送信指示部10cは、表示パネル20に取り付けられたタッチパネルに対するスワイプ操作、すなわち指やスタイラスをタッチパネルに接触させた状態で指やスタイラスを所期の方向に滑らせる操作により、通信方向の指定を受け付けてよい。この場合、スワイプ操作の方向を通信方向としてよい。その他、筐体の向きにより、通信方向の指定を受け付けてよい。この場合、電子コンパス32やジャイロセンサ28の出力から筐体の向きを特定し、その向きを通信方向としてよい。
【0033】
図7は、3台の可搬無線通信装置(A〜C)の配置例を示している。同図において、xy座標系の原点は自機の位置を示しており、A〜Cの各丸印は接続済みの可搬無線通信装置の位置を示している。図8は、図7における可搬無線通信装置Bに宛ててデータを送信する操作を示している。同図に示される可搬無線通信装置10は、その上方が図7におけるy方向を向くようにして、水平に配置されているものとする。図8に示すように、表示パネル20に取り付けられたタッチパネルに対して、ユーザが左下から右上の方向にスワイプ操作すると、そのスワイプ操作の方向に対応する可搬無線装置Bが送信指示部10cにより送信先として特定される。すなわち、図8においてスワイプ操作の方向として示される矢印の方向に、可搬無線通信装置Bは位置している。
【0034】
また、送信指示部10cは、指定された通信方向に複数の接続済み可搬無線通信装置10がある場合には、可搬無線通信装置10の傾きなどの他の情報を用いて、そのうち1つを送信先として特定する。図9は、3台の接続済み可搬無線通信装置A〜Cが、自機から見て一直線上に位置している様子を示している。こうした場合、送信指示部10cは、例えば可搬無線通信装置10のピッチ角を取得し、その大きさに基づいて、そのうち1つを送信先として特定する。図9の例では、ピッチ角が第1の範囲にあれば、可搬無線通信装置Aを送信先として特定し、それよりも大きな第2の範囲にあれば、可搬無線通信無線通信装置Bを送信先として特定する。また、ピッチ角がそれよりさらに大きな第3の範囲にあれば、可搬無線通信装置Cを送信先として特定する。また、ピッチ角の代わりにロール角を用いてもよい。あるいはジャイロセンサ28及び加速度センサ30の出力に基づいてスワイプ操作の方向、すなわち通信方向に対する筐体の傾きを算出して、その値を用いてもよい。
【0035】
その他、送信指示部10cは通信方向を指示する際のスワイプ操作のスワイプ長、すなわち指やスタイラスがタッチパネル上を滑った距離を取得し、その大きさに基づいて送信先を特定してよい。図9の例では、スワイプ長が第1の範囲にあれば、可搬無線通信装置Aを送信先として特定し、それよりも大きな第2の範囲にあれば、可搬無線通信無線通信装置Bを送信先として特定する。また、スワイプ長がそれよりさらに大きな第3の範囲にあれば、可搬無線通信装置Cを送信先として特定する。スワイプ長の代わりに、スワイプの速度、すなわち指やスタイラスが滑った距離をそれに要した時間で除した値を用いてよい。また、スワイプの時間長、すなわち指やスタイラスがタッチパネルに接してから、タッチパネルから離れるまでの経過時間を用いてもよい。面積の小さなタッチパネルであっても、スワイプの速度や時間長であれば有意な差を表現し易いので、良好な操作性を実現できる。
【0036】
データ送信部10dは、送信指示部10cにより特定された接続済み可搬無線通信装置10に対して、メッセージやファイルなどのデータを、近距離無線通信部26を用いて送信する。
【0037】
図10は、可搬無線通信装置10におけるデータ送信処理を示すフロー図である。同図に示すように、可搬無線通信装置10は、まず送信指示部10cがユーザから通信方向の指示を受け付ける(S201)。次に、送信指示部10cは相対位置記憶部10aにアクセスし、他のすべての接続済み可搬無線通信装置10の相対位置を読みだす(S202)。そして、指示された通信方向に自機から伸びる直線に対して、所定距離内に位置する可搬無線通信装置10が複数あるか否かを判断する(S203)。S203の判断が肯定的であれば、例えば通信方向に対する筐体の傾きを算出し(S204)、その値により1つの可搬無線通信装置10を選択する(S205)。その後、選択された可搬無線通信装置10に対してデータ送信部10dがデータを送信する。
【0038】
S203の判断が否定的であれば、次に指示された通信方向に伸びる直線に対して、所定距離内に位置する可搬無線通信装置10が1つだけあるか否かを判断する(S207)。S207の判断が肯定的であれば、その1つの可搬無線通信装置10に対してデータ送信部10dがデータを送信する(S206)。また、S207の判断が否定的であればデータの送信先が特定不能であるとして、データ送信処理を終了する。
【0039】
なお、以上の説明では、接続済み可搬無線通信装置10の相対位置を正確に取得し、それら相対位置と、ユーザにより指定された通信方向と、に基づいて送信先を特定するようにした。しかし、接続済み可搬無線通信装置10の相対位置を修正し、修正された相対位置と、ユーザにより指定された通信方向と、に基づいて送信先を特定してもよい。図11は、接続済み可搬無線通信装置10の相対位置の補正を説明する図である。同図(a)に示すように、可搬無線通信装置Aと可搬無線通信装置Bとが接近していれば、同図(b)に示すように、自機を中心としたそれら可搬無線通信装置A及びBの方向が互いに離れるよう、それら可搬無線通信装置A及びBの相対位置を仮想的に修正してよい。このような場合、ユーザは自分の可搬無線通信装置10の右前方に位置する可搬無線通信装置Aにデータを送信したい場合、実際よりもやや右側に自機から向かう方向を通信方向として入力することになる。こうすればユーザは、近接した可搬無線通信装置A及びBのうち、所望の装置を送信先として容易に指定することができるようになる。
【0040】
データ中継部10iは、他の可搬無線通信装置10から送信されるデータを中継する。図12は、可搬無線通信装置A〜Dによるネットワークの例を示している。同図の例では、例えば可搬無線通信装置Aと可搬無線通信装置Cとは直接的には無線接続されていない。しかし、可搬無線通信装置Bのデータ中継部10fにより、可搬無線通信装置Aと可搬無線通信装置Cとは通信を行うことができる。このように、本実施形態によれば、データ中継部10fにより、端末ID、移動情報、初期相対位置、メッセージやファイルなどの送信データを中継するので、直接的又は間接的に接続されたすべての可搬無線通信装置10の間でこれらのデータが供給される。
【0041】
以上説明した本実施形態によれば、ネットワークを構成するすべての可搬無線通信装置10の移動方向及び移動量を用いて、それぞれの可搬無線通信装置10を基準とした、他の接続済み可搬無線通信装置10の相対位置を正確に維持するので、それらが移動した場合であっても、スワイプ操作等の直観的操作により送信先を指定できる。
【要約】
可搬無線通信装置は、複数の相手通信装置の相対位置を記憶する相対位置記憶部(10a)と、前記複数の相手通信装置の移動先を示す移動先情報を順次受信する移動情報受信部(10f)と、前記移動先情報に基づいて前記複数の相手通信装置の相対位置を更新する相対位置更新部(10b)と、ユーザによる通信方向の指定を受け付けるとともに、前記通信方向と前記各相手通信装置の相対位置とに基づいて1の前記相手通信装置を特定する送信指示部(10c)と、特定される前記相手通信装置にデータを送信するデータ送信部(10d)と、を含む。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12