特許第5971792号(P5971792)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5971792
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】変速機操作装置および変速機操作方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/18 20060101AFI20160804BHJP
   B60K 20/02 20060101ALI20160804BHJP
   F16H 59/04 20060101ALI20160804BHJP
   F16H 61/02 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   F16H61/18
   B60K20/02 A
   F16H59/04
   F16H61/02
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-63220(P2012-63220)
(22)【出願日】2012年3月21日
(65)【公開番号】特開2013-194840(P2013-194840A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年2月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003333
【氏名又は名称】ボッシュ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 成樹
【審査官】 中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特許第2867960(JP,B2)
【文献】 特開2002−031220(JP,A)
【文献】 特開2010−090925(JP,A)
【文献】 特開2000−337504(JP,A)
【文献】 特開平04−107360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/18
B60K 20/02
F16H 59/04
F16H 61/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持位置と前記保持位置の一側に位置する第1シフト位置と前記保持位置の他側に位置する第2シフト位置とが直線上に少なくとも設けられたシフトパターンに沿って操作されるとともに付勢手段で前記保持位置の方へ常時付勢されるチェンジレバーと、
前記チェンジレバーのシフト位置を検出して位置検出信号を出力するシフト位置検出部と、
前記シフト位置検出部からの前記位置検出信号に基づいて判定した前記チェンジレバーのシフト位置に対応した変速制御信号を出力するとともに、前記チェンジレバーの前記保持位置で前記判定したチェンジレバーの前記シフト位置を保持する制御部とを備え、
前記制御部は、
時間をカウントする第1タイマと、
時間をカウントする第2タイマと、
前記シフト位置検出部からの前記位置検出信号に基づいて、前記第2位置からの前記チェンジレバーの前記保持位置を検出したとき前記第1タイマに時間をカウントさせるとともに前記第1位置からの前記チェンジレバーの前記保持位置を検出したとき前記第2タイマに時間をカウントさせ、前記チェンジレバーが前記保持位置から前記第1位置に操作されたとき前記第1タイマがカウントしたタイマ値が予め定められた第1設定時間値を経過したと判断したときは前記第1シフト位置のシフト位置信号を出力し、前記チェンジレバーが前記保持位置から前記第1位置に操作されたとき前記第1タイマがカウントしたタイマ値が前記第1設定時間値を経過していないと判断したときは前記保持位置で保持されていたシフト位置のシフト位置信号を出力し、前記チェンジレバーが前記第2位置に操作されたとき前記第2タイマがカウントしたタイマ値が予め定められた第2設定時間値を経過したと判断したときは前記第2シフト位置のシフト位置信号を出力し、前記チェンジレバーが前記第2位置に操作されたとき前記第2タイマがカウントしたタイマ値が前記第2設定時間値を経過していないと判断したときは前記保持位置で保持されていたシフト位置のシフト位置信号を出力するチェンジレバー位置判定部と、
前記チェンジレバー位置判定部からの前記シフト位置信号に基づいた変速制御信号を出力する変速制御信号出力部とを有し、
前記予め定められた第1設定時間値は、チェンジレバーのシフトUP操作がドライバーの意図による操作であると判断する時間であり、
前記予め定められた第2設定時間値は、チェンジレバーのシフトDOWN操作がドライバーの意図による操作であると判断する基準となる時間である
ことを特徴とする変速機操作装置。
【請求項2】
前記保持位置はホールド位置であり、前記第1シフト位置はシフトアップ位置であり、前記第2シフト位置はシフトダウン位置であり、
前記チェンジレバーの前記ホールド位置で前記チェンジレバーの前記シフト位置が保持されることを特徴とする請求項1に記載の変速機操作装置。
【請求項3】
前記第1および第2タイマは、それぞれ前記チェンジレバーが前記ホールド位置であると判断されたとき、前記時間をカウントすることを特徴とする請求項2に記載の変速機操作装置。
【請求項4】
前記第1および第2タイマは、それぞれ前記時間を前記第1および第2設定時間値からカウントダウン方式でカウントすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1に記載の変速機操作装置。
【請求項5】
前記第1設定時間値と第2設定時間値とは、互いに同じに設定されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1に記載の変速機操作装置。
【請求項6】
保持位置と前記保持位置の一側に位置する第1シフト位置と前記保持位置の他側に位置する第2シフト位置とが直線上に少なくとも設けられたシフトパターンに沿って操作されるとともに付勢手段で前記保持位置の方へ常時付勢されるチェンジレバーのシフト位置をシフト位置検出部で検出して位置検出信号を出力し、
前記チェンジレバーの前記第2シフト位置からの前記保持位置が検出されたとき時間を第1タイマでカウントし、
前記チェンジレバーの前記第1シフト位置からの前記保持位置が検出されたとき時間を第2タイマでカウントし、
前記チェンジレバーが前記保持位置から前記第2シフト位置に移動したときで、前記第2タイマで計測された時間が予め定められた第2設定時間値を経過したときは、前記第2シフト位置のシフト位置信号を出力し、
前記チェンジレバーが前記保持位置から前記第2シフト位置に移動したときで、前記第2タイマで計測された時間が前記第2設定時間値を経過していないときは、前記保持位置で保持されていたシフト位置信号を出力し、
前記チェンジレバーが前記保持位置から前記第1シフト位置に移動したときで、前記第1タイマで計測された時間が予め定められた第1設定時間値を経過したときは、前記第1シフト位置のシフト位置信号を出力し、
前記チェンジレバーが前記保持位置から前記第1シフト位置に移動したときで、前記第1タイマで計測された時間が前記第1設定時間値を経過していないときは、前記保持位置で保持されていたシフト位置信号を出力し、
前記シフト位置信号に対応した変速制御信号を出力することで変速機を操作する変速機操作方法であって、
前記予め定められた第1設定時間値は、チェンジレバーのシフトUP操作がドライバーの意図による操作であると判断する時間であり、
前記予め定められた第2設定時間値は、チェンジレバーのシフトDOWN操作がドライバーの意図による操作であると判断する基準となる時間である
ことを特徴とする変速機操作方法。
【請求項7】
前記保持位置はホールド位置であり、前記第1シフト位置はシフトアップ位置であり、
前記第2シフト位置はシフトダウン位置であり、前記チェンジレバーの前記ホールド位置で前記チェンジレバーの前記シフト位置を保持することを特徴とする請求項6に記載の変速機操作方法。
【請求項8】
前記第1および第2タイマは、それぞれ前記時間を前記第1および第2設定時間値からカウントダウン方式でカウントすることを特徴とする請求項6または7に記載の変速機操作方法。
【請求項9】
前記第1設定時間値と第2設定時間値とは、互いに同じに設定されていることを特徴とする請求項6ないし8のいずれか1に記載の変速機操作方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定条件下でチェンジレバーが操作されたとき、その操作を無効にする変速機操作装置および変速機操作方法の各技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車には、変速機の変速操作を行うための変速機操作装置には、チェンジレバーが用いられている。このチェンジレバーが所望のシフト位置に操作されると、変速機制御装置(ECU)がシフト位置を検出する位置センサからの位置検出信号に基づいて、操作されたシフト位置を判断するとともに、判断したシフト位置に対応して変速機の変速制御を行う。このとき、チェンジレバーは、車両の変速機操作装置に対して予め設定されているシフトパターンに沿って操作される。
【0003】
従来、このような変速機操作装置として、HOLD位置、UP位置、およびDOWN位置の3つのシフト位置が直線上に配設されるとともにHOLD位置がUP位置とDOWN位置との間に配置されたシフトパターンに沿ってチェンジレバーが操作される変速機操作装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。その場合、この特許文献1に記載の変速機操作装置では、チェンジレバーはリターンスプリングの付勢力で常時HOLD位置に向かって付勢されており、ドライバーがチェンジレバーを手で掴んでUP位置またはDOWN位置に操作した後手をチェンジレバーから放すと、リターンスプリングの付勢力でHOLD位置に自動的に戻るようになっている。そして、チェンジレバーがHOLD位置に自動的に戻っても、変速機は、操作されたUP位置またはDOWN位置に対応した変速段に制御されるとともに、チェンジレバーのHOLD位置ではチェンジレバーが操作されたUP位置またはDOWN位置で選択された変速段を保持する。
【0004】
ところで、このようなチェンジレバーがHOLD位置に自動的に戻る変速機操作装置では、チェンジレバーがUP位置またはDOWN位置に操作された後、チェンジレバーがリターンスプリングの付勢力で自動的にHOLD位置に戻るとき、HOLD位置を越えて反対側で位置センサがDOWN位置またはUP位置を検出可能な領域まで移動してしまうことがある。このチェンジレバーの移動は、ドライバーが意図しない移動である。このため、ECUは位置センサからの位置検出信号に基づいてチェンジレバーのシフト位置を検出し、ドライバーが意図しない変速段に設定してしまうという問題がある。
【0005】
そこで、特許文献1に記載の変速機操作装置では、チェンジレバーがHOLD位置からUP位置またはDOWN位置に操作されたとき(具体的には、位置センサによりチェンジレバーがUP位置またはDOWN位置であることを検出可能な領域に移動したことを検出したとき)にタイマが作動して時間が計測され、このタイマの計測時間が予め設定された所定時間以内であるときに他のDOWN位置またはUP位置の検出信号が出力されたときには、ECUはこの他のDOWN位置またはUP位置の検出信号が無効であるとして変速機をこの他のDOWN位置またはUP位置に設定しないようにしている。これにより、上記の問題を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2867960号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の変速機操作装置では、チェンジレバーがUP位置またはDOWN位置に操作された後、タイマの計測時間が前述の所定時間経過後にドライバーが手をチェンジレバーから放したとき、リタースプリングの付勢力および車両の振動等により、前述と同様にチェンジレバーがドライバーの意図とは異なり、HOLD位置を越えて反対側の位置センサがDOWN位置またはUP位置の検出可能な領域まで移動してしまうことがある。このため、特許文献1に記載の変速機操作装置のように所定時間を設けても、ドライバーが意図しない変速機の変速制御が行われ、変速に違和感を生じるとともに、乗り心地が悪くなるという問題が考えられる。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、シフト位置から保持位置へ自動的に復帰されるチェンジレバーが所定の条件下において操作されたとき、このチェンジレバーのチェンジレバーの操作を無効にすることのできる変速機操作装置および変速機操作方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決するために、本発明に係る変速機操作装置は、保持位置と前記保持位置の一側に位置する第1シフト位置と前記保持位置の他側に位置する第2シフト位置とが直線上に少なくとも設けられたシフトパターンに沿って操作されるとともに付勢手段で前記保持位置の方へ常時付勢されるチェンジレバーと、前記チェンジレバーのシフト位置を検出して位置検出信号を出力するシフト位置検出部と、前記シフト位置検出部からの前記位置検出信号に基づいて判定した前記チェンジレバーのシフト位置に対応した変速制御信号を出力するとともに、前記チェンジレバーの前記保持位置で前記判定したチェンジレバーの前記シフト位置を保持する制御部とを備え、前記制御部が、時間をカウントする第1タイマと、時間をカウントする第2タイマと、前記シフト位置検出部からの前記位置検出信号に基づいて、前記第2位置からの前記チェンジレバーの前記保持位置を検出したとき前記第1タイマに時間をカウントさせるとともに前記第1位置からの前記チェンジレバーの前記保持位置を検出したとき前記第2タイマに時間をカウントさせ、前記チェンジレバーが前記保持位置から前記第1位置に操作されたとき前記第1タイマがカウントしたタイマ値が予め定められた第1設定時間値を経過したと判断したときは前記第1シフト位置のシフト位置信号を出力し、前記チェンジレバーが前記保持位置から前記第1位置に操作されたとき前記第1タイマがカウントしたタイマ値が前記第1設定時間値を経過していないと判断したときは前記保持位置で保持されていたシフト位置のシフト位置信号を出力し、前記チェンジレバーが前記第2位置に操作されたとき前記第2タイマがカウントしたタイマ値が予め定められた第2設定時間値を経過したと判断したときは前記第2シフト位置のシフト位置信号を出力し、前記チェンジレバーが前記第2位置に操作されたとき前記第2タイマがカウントしたタイマ値が前記第2設定時間値を経過していないと判断したときは前記保持位置で保持されていたシフト位置のシフト位置信号を出力するチェンジレバー位置判定部と、前記チェンジレバー位置判定部からの前記シフト位置信号に基づいた変速制御信号を出力する変速制御信号出力部とを有することを特徴としている。
【0010】
また、本発明に係る変速機操作装置は、前記保持位置がホールド位置であり、前記第1シフト位置がシフトアップ位置であり、前記第2シフト位置がシフトダウン位置であり、
前記チェンジレバーの前記ホールド位置で前記チェンジレバーの前記シフト位置が保持されることを特徴としている。
【0011】
更に、本発明に係る変速機操作装置は、前記第1および第2タイマは、それぞれ前記チェンジレバーが前記ホールド位置であると判断されたとき、前記時間をカウントすることを特徴としている。
更に、本発明に係る変速機操作装置は、前記第1および第2タイマが、それぞれ前記時間を前記第1および第2設定時間値からカウントダウン方式でカウントすることを特徴と
している。
【0012】
更に、本発明に係る変速機操作装置は、前記第1設定時間値と第2設定時間値とが、互いに同じに設定されていることを特徴としている。
【0013】
一方、本発明に係る変速機操作方法は、保持位置と前記保持位置の一側に位置する第1シフト位置と前記保持位置の他側に位置する第2シフト位置とが直線上に少なくとも設けられたシフトパターンに沿って操作されるとともに付勢手段で前記保持位置の方へ常時付勢されるチェンジレバーのシフト位置をシフト位置検出部で検出して位置検出信号を出力し、前記チェンジレバーの前記第2シフト位置からの前記保持位置が検出されたとき時間を第1タイマでカウントし、前記チェンジレバーの前記第1シフト位置からの前記保持位置が検出されたとき時間を第2タイマでカウントし、前記チェンジレバーが前記保持位置から前記第2シフト位置に移動したときで、前記第2タイマで計測された時間が予め定められた第2設定時間値を経過したときは、前記第2シフト位置のシフト位置信号を出力し、前記チェンジレバーが前記保持位置から前記第2シフト位置に移動したときで、前記第2タイマで計測された時間が前記第2設定時間値を経過していないときは、前記保持位置で保持されていたシフト位置信号を出力し、前記チェンジレバーが前記保持位置から前記第1シフト位置に移動したときで、前記第1タイマで計測された時間が予め定められた第1設定時間値を経過したときは、前記第1シフト位置のシフト位置信号を出力し、前記チェンジレバーが前記保持位置から前記第1シフト位置に移動したときで、前記第1タイマで計測された時間が前記第1設定時間値を経過していないときは、前記保持位置で保持されていたシフト位置信号を出力し、前記シフト位置信号に対応した変速制御信号を出力することで変速機を操作することを特徴としている。
【0014】
また、本発明に係る変速機操作方法は、前記保持位置がホールド位置であり、前記第1シフト位置がシフトアップ位置であり、前記第2シフト位置がシフトダウン位置であり、前記チェンジレバーの前記ホールド位置で前記チェンジレバーの前記シフト位置を保持することを特徴としている。
【0015】
更に、本発明に係る変速機操作方法は、前記第1および第2タイマが、それぞれ前記時間を前記第1および第2設定時間値からカウントダウン方式でカウントすることを特徴としている。
【0016】
更に、本発明に係る変速機操作方法は、前記第1設定時間値と第2設定時間値とが、互いに同じに設定されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
このように構成された本発明の変速機操作装置および変速機操作方法によれば、第1位置または第2位置から保持位置へ付勢手段の付勢力で自動的に復帰されるチェンジレバーであっても、所定条件下におけるチェンジレバーの操作を無効にすることができる。したがって、ドライバーが意図しないチェンジレバーの操作による変速機の変速制御を抑制することができ、変速に違和感が生じたり、乗り心地が悪くなったりすることを防止できる。
【0018】
また、チェンジレバーが第2位置から操作されてチェンジレバーの保持位置が検出されたときから第1タイマが時間をカウントするとともに、チェンジレバーが第1位置から操作されてチェンジレバーの保持位置が検出されたときから第2タイマが時間をカウントするするようにしている。つまり、第1および第2タイマによる時間のカウントがチェンジレバーが保持位置になったことを検出したときを基準として行われる。このようにチェンジレバーの保持位置が検出された時点から時間をカウントすることで、例えば、ドライバ
ーの操作によりチェンジレバーが第2位置に操作された後、ドライバーが意図することなくチェンジレバーが保持位置を通過して第1位置へ操作された場合であっても、チェンジレバーが第2位置から保持位置へ操作されたときから第1タイマによる時間がカウントされることになる。したがって、チェンジレバーが保持位置を通過する時点で第1タイマによりカウントされた時間が第1設定時間値を経過していなければ、位置検出部からの第1位置のシフト位置信号が無効となる。これにより、変速機の操作をより高精度に行うことが可能となる。ドライバーの操作によりチェンジレバーが第1位置に操作された後、ドライバーが意図することなくチェンジレバーが保持位置を通過して第2位置へ操作された場合も同様である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(A)は、本発明に係る変速機操作装置および変速機操作方法の実施の形態の一例が用いられる変速のためのシフトパターンの一例を示す図、(B)はHOLD位置からのUP位置またはDOWN位置へのチェンジレバーの動作を説明する図である。
図2】この例の変速機操作装置の一部を模式的に示すブロック図である。
図3】この例のシフト位置無効判定装置によるシフト位置無効判定制御のためのフローを全体的に示す図である。
図4図2に示す例のシフト位置無効判定装置の第1および第2HOLDタイマによる時間のカウント動作を行うためのフローを示す図である。
図5】ドライバーが意図したHOLD位置からのシフトUP操作のフローを示す図である。
図6】ドライバーが意図したHOLD位置からのシフトDOWN操作のフローを示す図である。
図7】ドライバーが意図しないHOLD位置からのシフトUP操作のフローを示す図である。
図8】ドライバーが意図しないHOLD位置からのシフトDOWN操作のフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて、本発明を実施するための形態について説明する。
図1(A)は、本発明に係る変速機操作装置および変速機操作方法の実施の形態の一例が用いられる変速のためのシフトパターンの一例を示す図、図1(B)はHOLD位置からのUP位置またはDOWN位置へのチェンジレバーの動作を説明する図、図2はこの例の変速機操作装置の一部を模式的に示すブロック図である。なお以下の説明において、シフトアップ位置(UP位置)は本発明の第1位置に相当し、HOLD位置は本発明の保持位置に相当し、シフトダウン位置(DOWN位置)は本発明の第2位置に相当する。
【0021】
この例の変速機の変速機操作装置は、従来と同様に変速操作のためのシフトパターンおよびこのシフトパターンに沿って操作されるチェンジレバーを有している。
図1(A)に示すように、この例のシフトパターンは、それぞれ平行な直線状に形成される2つの第1および第2シフト列1,2と、これらの第1および第2シフト列1,2と直交して直線状に形成される1つのセレクト列3とを有している。第1シフト列1には、後進位置(R位置)、ニュートラル位置(N位置)、およびドライブ位置(D位置)の各シフト位置がこれらの順に配置されている。
【0022】
また、第2シフト列2には、UP位置、HOLD位置、およびDOWN位置の各シフト位置がこれらの順に配置されている。その場合、これらのUP位置、HOLD位置、およびDOWN位置は、UP位置がHOLD位置の一側に位置するとともにDOWN位置がHOLD位置の他側に位置して直線上に設けられる。
【0023】
また、第1シフト列1のN位置と第2シフト列2のUP位置は、それぞれセレクト列3の位置からのシフト方向のチェンジレバー4の操作角が実質的に同じとなる位置に設定されている。更に、第1シフト列1のD位置と第2シフト列2のHOLD位置は、それぞれ第1および第2シフト列1,2とセレクト列3とが交差する位置に設定されている。更に
、第2シフト列2のDOWN位置はセレクト列3の位置からのシフト方向のチェンジレバー4の操作角がシフトアップ(UP)のシフト位置と絶対値(チェンジレバー4の操作方向が互いに逆方向)で実質的に同じとなる位置に設定されている。
【0024】
更に図1(B)に示すように、チェンジレバー4はHOLD位置からUP位置またはDOWN位置へ操作されるときはドライバーによる手動で行われる。また、チェンジレバー4は図示しないリターンスプリングの付勢力で常時HOLD位置の方へ付勢されている。そして、ドライバーがチェンジレバー4をUP位置またはDOWN位置、あるいはHOLD位置とUP位置またはDOWN位置との間の位置で押さえていると、チェンジレバー4はその押さえられている位置に保持される。一方、ドライバーがチェンジレバー4をUP位置またはDOWN位置、あるいはHOLD位置とUP位置またはDOWN位置との間の位置で手を放すと、チェンジレバー4はリターンスプリングの付勢力で自動的にHOLD位置に戻る。そして、チェンジレバー4のHOLD位置では、変速機の変速段はチェンジレバー4がHOLD位置になった直前のシフト位置(D位置、UP位置、DOWN位置)の変速段に保持される。
【0025】
図2に示すように、この例の変速機操作装置はチェンジレバー4のシフト位置無効判定装置5を備えている。このシフト位置無効判定装置5は、チェンジレバー4のシフト位置を検出するチェンジレバー位置検出部6、チェンジレバー位置判定部7、第1HOLDタイマ8、第2HOLDタイマ9、およびタイマ値判定部10を有している。その場合、チェンジレバー位置判定部7、第1HOLDタイマ8、第2HOLDタイマ9、およびタイマ値判定部10は、変速機またはこの変速機が搭載される車両の電子制御装置(ECU)11に配設される。また、ECU11は変速制御信号出力部12を有している。
【0026】
チェンジレバー位置検出部6は、チェンジレバー4のシフト方向の位置を検出するシフト方向位置センサ6aおよびチェンジレバー4のセレクト方向の位置を検出するセレクト方向位置センサ6bを有する。シフト方向位置センサ6aは、チェンジレバー4の各シフト位置であるR位置、N位置、D位置、UP位置、HOLD位置、DOWN位置を検出しする。また、セレクト方向位置センサ6bは、チェンジレバー4の第1シフト列1(第1セレクト位置)および第2シフト列2(第2セレクト位置)を検出する。これらのシフト方向位置センサ6aおよびセレクト方向位置センサ6bには、例えばホール素子を用いた位置センサ等の従来公知の位置センサが用いられる。
【0027】
そして、シフト方向位置センサ6aおよびセレクト方向位置センサ6bは、それぞれチェンジレバー4がシフト(移動)されたシフト位置に対応するシフト位置検出信号およびセレクト位置検出信号をチェンジレバー位置判定部7に出力する。シフト方向位置センサ6aおよびセレクト方向位置センサ6bは、対応するシフト位置を検出可能な領域内で検出する。このため、これらのシフト位置検出信号およびセレクト位置検出信号は、現在のシフト位置から今回シフトされるシフト位置への移動方向によって異なる(例えば、シフト位置検出信号およびセレクト位置検出信号が電流による信号であれば電流値が異なり、また電圧による信号であれば電圧値が異なる。)。この例のチェンジレバー4のシフト位置無効判定装置5では、チェンジレバー4のシフト位置検出が10msecの検出サイクルで実施される。なお、この検出サイクルは10msecに限定されることはなく、任意の検出サイクルに設定することができる。
【0028】
チェンジレバー位置判定部7は、前述のシフト位置検出信号およびセレクト位置検出信
号に基づいて、チェンジレバー4のシフトされたシフト位置を判定するとともにこのシフト位置を内蔵されている記憶部(不図示)に記憶する。
【0029】
そして、チェンジレバー位置判定部7は、チェンジレバー4がHOLD位置からUP位置にシフトされたと判定すると、第2HOLDタイマ9へシフトUP信号の操作信号を出力する。また、チェンジレバー位置判定部7は、チェンジレバー4がHOLD位置から今回のシフト位置であるDOWN位置にシフトされたと判定すると、第1HOLDタイマ8へシフトDOWN信号の操作信号を出力する。
【0030】
第1HOLDタイマ8は、チェンジレバー位置判定部7からシフトDOWN信号が入力されたとき、チェンジレバー位置判定部7によりそのタイマ値が予め定められた第1設定時間値t1(msec)に設定される。そして、第1HOLDタイマ8は、チェンジレバー4
のDOWN位置からのHOLD位置が検出されたとき、この第1設定時間値t1(msec)
からカウントダウン方式で時間のカウントを開始する。その場合、第1HOLDタイマ8はそのタイマ値が0(msec)になったとき時間のカウントを停止し、このとき、第1HOLDタイマ8のタイマ値は0(msec)に保持される。第1設定時間値t1(msec)は、第
1HOLDタイマ8のタイマ値がこの第1設定時間値t1(msec)から0(msec)になっ
た以後にチェンジレバー4がHOLD位置からUP位置に操作されたときに、このチェンジレバー4のシフトUP操作がドライバーの意図による操作であると判断する基準となる時間である。また、第1HOLDタイマ8は チェンジレバー4がHOLD位置から脱出したとき時間のカウントを停止し、このときの第1HOLDタイマ8のタイマ値が保持される。
【0031】
第2HOLDタイマ9は、チェンジレバー位置判定部7からシフトUP信号が入力されたとき、チェンジレバー位置判定部7によりそのタイマ値が予め定められた第2設定時間値t2(msec)に設定される。そして、第2HOLDタイマ9は、チェンジレバー4のU
P位置からのHOLD位置が検出されたとき、この第2設定時間値t2(msec)からカウ
ントダウン方式で時間のカウントを開始する。その場合、第2HOLDタイマ9はそのタイマ値が0(msec)になったとき時間のカウントを停止し、このとき、第2HOLDタイマ9のタイマ値は0(msec)に保持される。第2設定時間値t2(msec)は、第2HOL
Dタイマ9のタイマ値がこの第2設定時間値t2(msec)から0(msec)になった以後に
チェンジレバー4がHOLD位置からDOWN位置に操作されたときに、このチェンジレバー4のシフトDOWN操作がドライバーの意図による操作であると判断する基準となる時間である。また、第2HOLDタイマ9は チェンジレバー4がHOLD位置から脱出したとき時間のカウントを停止し、このときの第2HOLDタイマ9のタイマ値が保持される。
【0032】
なお、この例ではHOLD位置からUP位置までのチェンジレバー4の操作角とHOLD位置からDOWN位置までのチェンジレバー4の操作角とが同じに設定されているので、通常は第1および第2設定時間値t1(msec),t2(msec)は互いに同じ値に設定され
る。しかし、これに限定されることはなく、第1および第2設定時間値t1(msec),t2
(msec)は互いに異なるように設定することもできる。
【0033】
タイマ値判定部10は、第1および第2HOLDタイマ8,9のその時点でのタイマ値
が0(msec)であるか否かを判定して、そのタイマ値判定信号をチェンジレバー位置判定部7に出力する。
【0034】
チェンジレバー位置判定部7は、タイマ値判定部10からのタイマ値判定信号に基づいて次のようにして変速制御信号出力部12へ操作信号を出力する。すなわち、チェンジレバー位置判定部7は、第1HOLDタイマ8のタイマ値が0(msec)である状態でチェン
ジレバー4がHOLD位置からUP位置に操作されたときには、このチェンジレバー4のシフトUP操作がドライバーの意図による操作であると判断して、変速制御信号出力部12へシフトUP信号を出力する。また、チェンジレバー位置判定部7は、第2HOLDタイマ9のタイマ値が0(msec)である状態でチェンジレバー4がHOLD位置からDOWN位置に操作されたときには、このチェンジレバー4のシフトDOWN操作がドライバーの意図による操作であると判断して、変速制御信号出力部12へシフトDOWN信号を出力する。
【0035】
更に、チェンジレバー位置判定部7は、第1HOLDタイマ8のタイマ値が0(msec)でない状態で、チェンジレバー4がHOLD位置からUP位置に操作されたとき(本発明の所定条件下)には、このチェンジレバー4のシフトUP操作がドライバーの意図によらない操作であると判断し今回のシフトUP操作は無効であるとして、変速制御信号出力部12へシフトUP信号を出力しない。そして、チェンジレバー位置判定部7は、前回HOLD(保持)されたシフト位置のシフト信号を出力してこのシフト位置の変速段が保持される。このように、シフト位置無効判定装置5は、チェンジレバー4がドライバーによってHOLD位置からDOWN位置の方へ操作されたにもかかわらず、リタースプリングの付勢力や車両の振動等により、チェンジレバー4がドライバーの意図と異なってHOLD位置を越えてシフト方向位置センサ6aが反対側のUP位置の検出可能な領域まで移動してこのシフト方向位置センサ6aからシフトUP位置検出信号が出力されても、チェンジレバー位置判定部7は、このチェンジレバー4のUP位置への移動は無効であると判断する。
【0036】
同様に、チェンジレバー位置判定部7は、第2HOLDタイマ9のタイマ値が0(msec)でない状態で、チェンジレバー4がHOLD位置からDOWN位置に操作されたとき(本発明の所定条件下)には、このチェンジレバー4のシフトDOWN操作がドライバーの意図によらない操作であると判断し今回のシフトDOWN操作は無効であるとして、変速制御信号出力部12へシフトDOWN信号を出力しない。そして、チェンジレバー位置判定部7は、前回HOLD(保持)されたシフト位置のシフト信号を出力してこのシフト位置の変速段が保持される。このように、シフト位置無効判定装置5は、チェンジレバー4がドライバーによってHOLD位置からUP位置の方へ操作されたにもかかわらず、リタースプリングの付勢力や車両の振動等により、チェンジレバー4がドライバーの意図と異なってHOLD位置を越えてシフト方向位置センサ6aが反対側のDOWN位置の検出可能な領域まで移動してこのシフト方向位置センサ6aからシフトDOWN位置検出信号が出力されても、チェンジレバー位置判定部7は、このチェンジレバー4のDOWN位置への移動は無効であると判断する。
【0037】
このようにして、第1HOLDタイマ8はチェンジレバー4のシフトUP操作を無効にするシフトUP無効タイマとして機能するとともに、第2HOLDタイマ9はチェンジレバー4のシフトDOWN操作を無効にするシフトDOWN無効タイマとして機能する。
【0038】
更に、ECU11の変速制御信号出力部12は、チェンジレバー位置判定部7からのチェンジレバー4のシフト位置の判定信号に基づいて変速機の変速制御信号を変速機のギヤユニット(不図示)に出力する。変速機のギヤユニットはこの変速制御信号に基づいて制御されて、変速機は判定されたチェンジレバー4のシフト位置に対応した変速段に変速制御される。
【0039】
図3は、この例のシフト位置無効判定装置によるシフト位置無効判定制御のためのフローを全体的に示す図、図4は、図3に示す例のシフト位置無効判定装置の第1および第2HOLDタイマの第1および第2設定時間値の設定を行うためのフローを示す図である。
【0040】
この例のシフト位置無効判定装置による変速操作でのシフト位置無効判定制御においては、HOLD⇒UP⇒HOLD⇒DOWNの順にシフト位置の判定が行われる。すなわち、図3に示すように、まずステップS1でチェンジレバー位置検出部6からのチェンジレバー4のシフトUPの入力信号がチェンジレバー位置判定部7に入力された否かが判断される。つまり、チェンジレバー位置検出部6からのシフト位置検出信号およびセレクト位置検出信号に基づいて、チェンジレバー位置判定部7がシフトUPの入力があるか否かが判断される。シフトUPの入力があると判断されると、ステップS2で第1HOLDタイマ8のタイマ値が0(msec)でないか否かが判断される。第1HOLDタイマ8のタイマ値が0(msec)でないと判断されると、今回のシフトUPの入力はドライバーが意図しないチェンジレバー4のシフトUP操作によるものであると判断され、ステップS3でチェンジレバー位置が制御上、前回HOLDされたシフト位置に保持される。すなわち、今回入力されたシフトUPが禁止される。したがって、チェンジレバー位置判定部7は今回入力されたシフトUP信号を変速制御信号出力部12に出力しなく、チェンジレバー4の前回HOLDされたシフト位置信号を変速制御信号出力部12に継続して出力する。
【0041】
次いで、ステップS4で第1HOLDタイマ8のタイマ値が改められて0(msec)に設定される。次いで、ステップS5でチェンジレバー位置検出部6からのチェンジレバー4のシフトDOWNの入力信号がチェンジレバー位置判定部7に入力された否かが判断される。つまり、チェンジレバー位置検出部6からのシフト位置検出信号およびセレクト位置検出信号に基づいて、チェンジレバー位置判定部7がシフトDOWNの入力があるか否かが判断される。
【0042】
チェンジレバー4のシフトDOWNの入力があると判断されると、ステップS6で第2HOLDタイマ9のタイマ値が0(msec)でないか否かが判断される。第2HOLDタイマ9のタイマ値が0(msec)でないと判断されると、今回のシフトDOWNの入力はドライバーが意図しないシフトDOWN操作によるものであると判断され、ステップS7でチェンジレバー位置が制御上、前回HOLDされたチェンジレバー4のシフト位置に保持される。すなわち、今回入力されたシフトDOWNが禁止される。したがって、チェンジレバー位置判定部7は今回入力されたシフトDOWN信号を変速制御信号出力部12に出力しなく、チェンジレバー4の前回HOLDされたシフト位置信号を変速制御信号出力部12に継続して出力する。次いで、ステップS8で第2HOLDタイマ9のタイマ値が改められて0(msec)に設定された後、シフト位置無効判定制御を含むチェンジレバー4の位置判定処理が終了する。
【0043】
ステップS2で第1HOLDタイマ8のタイマ値が0(msec)でないことはない(つまり、タイマ値が0(msec)である)と判断されると、今回のシフトUPの入力はドライバーが意図した正しいシフトUP操作によるものであると判断され、ステップS9でチェンジレバー4のシフト位置が今回のUP位置に設定される(つまり、今回のシフトUPが有効である。)。次いで、ステップS10で第2HOLDタイマ9のタイマ値が改められて第2設定時間値t2(msec)に設定された後、ステップS5の処理に移行し、ステップS5
以降の各処理が実施される。
【0044】
また、ステップS6で第2HOLDタイマ9のタイマ値が0(msec)でないことはない(つまり、タイマ値が0(msec)である)と判断されると、今回シフトDOWNの入力はドライバーが意図した正しいシフトDOWN操作によるものであると判断され、ステップS11でチェンジレバー4のシフト位置が今回のDOWN位置に設定される(つまり、シフトDOWNが有効である。)。次いで、ステップS12で第1HOLDタイマ8のタイマ値が改められて第1設定時間値t1(msec)に設定された後、シフト位置無効判定制御を
含むチェンジレバー4の位置判定処理が終了する。更に、ステップS1でシフトUPの入力がないと判断されると、ステップS5に移行してステップS5以降の各処理が実施され
る。更に、ステップS5でシフトDOWNの入力がないと判断されると、シフト位置無効判定制御を含むチェンジレバー4の位置判定処理が終了する。
【0045】
次に、第1および第2HOLDタイマ8,9による時間のカウント動作について説明す
る。これらの時間のカウント動作は、いずれも前述の図3に示すシフト位置無効判定制御を含むチェンジレバー4の位置判定処理とは独立して予め設定された所定時間間隔で行われる。その場合、図3に示すチェンジレバー4の位置判定処理で第1および第2HOLDタイマ8,9のタイマ値が改められて設定されたときは、第1および第2HOLDタイマ
8,9のタイマ値は、この改められて設定されたタイマ値となる。
【0046】
図4に示すように第1および第2HOLDタイマ8,9による時間のカウント動作は、
まずステップS21でチェンジレバー4の位置がHOLD位置であるか否かがが判断される。チェンジレバー4の位置がHOLD位置である判断されると、ステップS22で第1HOLDタイマ8のタイマ値が0(msec)でないか否かが判断される。第1HOLDタイマ8のタイマ値が0(msec)でないと判断されると、ステップS23で第1HOLDタイマ8のタイマ値がデクリメントされる。つまり、第1HOLDタイマ8により時間がそのときの第1HOLDタイマ8のタイマ値からカウントダウン方式でカウントされる。
【0047】
次に、ステップS24で第2HOLDタイマ9のタイマ値が0(msec)でないか否かが判断される。第2HOLDタイマ9のタイマ値が0(msec)でないと判断されると、ステップS25で第2HOLDタイマ9のタイマ値がデクリメントされる。つまり、第2HOLDタイマ9により時間がそのときの第2HOLDタイマ9のタイマ値からカウントダウン方式でカウントされる。こうして、第1および第2HOLDタイマ8,9による時間の
カウント動作が終了する。
【0048】
また、ステップS21でチェンジレバー4の位置がHOLD位置でないと判断されると、第1および第2HOLDタイマ8,9による時間のカウント動作が終了する。すなわち
、チェンジレバー4のHOLD位置以外の位置では、第1および第2HOLDタイマ8,
9は時間をカウントしない。
【0049】
更に、ステップS22で第1HOLDタイマ8のタイマ値が0(msec)でなくない(つまり、第1HOLDタイマ8のタイマ値が0(msec)である)と判断されると、ステップS24に移行し、ステップS24以降の各処理が行われる。すなわち、第1HOLDタイマ8による時間のカウント処理は行われない。更に、ステップS24で第2HOLDタイマ9のタイマ値が0(msec)でなくない(つまり、第2HOLDタイマ9のタイマ値が0(msec)である)と判断されると、第1および第2HOLDタイマ8,9による時間のカ
ウント動作が終了する。すなわち、第2HOLDタイマ9による時間のカウント処理は行われない。
【0050】
次に、図3に示すフローを用いてシフト位置無効判定制御を含むチェンジレバー4の位置判定処理の具体的な例について説明する。図5はドライバーが意図したHOLD位置からのシフトUP操作のフローを示す図、図6はドライバーが意図したHOLD位置からのシフトDOWN操作のフローを示す図、図7はドライバーが意図しないHOLD位置からのシフトUP操作のフローを示す図、図8はドライバーが意図しないHOLD位置からのシフトDOWN操作のフローを示す図である。なお、図5ないし図8中、太い実線で示す処理は実施される処理であり、また、細い二点鎖線で示す処理は実施されない処理である。
【0051】
図5に示すように、ドライバーが意図してチェンジレバーをHOLD位置からシフトUP操作した場合には、図3に示すステップS1、S2、S9、S10、およびS5の各処
理が行われ、ステップS3、S4、S6、S7、S8、S11、およびS12の各処理は行われない。これにより、ECU11は、ドライバーの意図したシフトUP操作により、変速機の変速段を一段シフトUPする。
【0052】
また図6に示すように、ドライバーが意図してチェンジレバーをHOLD位置からシフトDOWN操作をした場合には、図3に示すステップS1、S5、S6、S11、およびS12の各処理が行われ、ステップS2、S3,S4、S7、S8、S9、およびS10の各処理は行われない。これにより、ECU11は、ドライバーの意図したシフトDOWN操作により、変速機の変速段を一段シフトDOWNする。
【0053】
更に図7に示すように、ドライバーが意図することなくチェンジレバーがHOLD位置からシフトUP操作された場合には、図3に示すステップS1、S2、S3、S4、およびS5の各処理が行われ、ステップS9、S10、S6、S7、S8、S11、およびS12の各処理は行われない。これにより、ECU11は、今回のシフトUP操作はドライバーの意図しないシフトUP操作であると判断し、変速機の変速段を変えないで制御上、前回HOLDされたシフト位置に保持する。
【0054】
更に図8に示すように、ドライバーが意図することなくチェンジレバーがHOLD位置からシフトDOWN操作された場合には、図3に示すステップS1、S5、S6、S7、およびS8の各処理が行われ、ステップS2、S3、S4、S9、S10、S11、およびS12の各処理は行われない。これにより、ECU11は、今回のシフトDOWN操作はドライバーの意図しないシフトDOWN操作であると判断し、変速機の変速段を変えないで制御上、前回HOLDされたシフト位置に保持する。
【0055】
この例の変速機操作装置および変速機操作方法によれば、UP位置またはDOWN位置からHOLD位置へリターンスプリングの付勢力で自動的に復帰されるチェンジレバー4であっても、所定条件下におけるチェンジレバー4の操作を無効にすることができる。したがって、ドライバーが意図しないチェンジレバー4の操作による変速機の変速制御を抑制することができ、変速に違和感が生じたり、乗り心地が悪くなったりすることを防止できる。
【0056】
また、チェンジレバー4がDOWN位置から操作されてチェンジレバー4のHOLD位置が検出されたときから第1HOLDタイマ8により時間が第1設定時間値t1(msec)
からカウントダウン方式でカウントされるとともに、チェンジレバー4がUP位置から操作されてチェンジレバー4のHOLD位置が検出されたときから第2HOLDタイマ9により時間が第2設定時間値t2(msec)からカウントダウン方式でカウントされる。つま
り、第1および第2HOLDタイマ8,9による時間のカウントがチェンジレバー4のH
OLD位置を検出した時点を基準として行われる。このようにチェンジレバー4のHOLD位置を検出した時点から時間をカウントすることで、例えば、ドライバーによりチェンジレバー4がUP位置に操作された後、ドライバーが意図することなくチェンジレバー4がHOLD位置を通過してDOWN位置の方へ移動した場合であっても、チェンジレバー4のHOLD位置が検出されたときから第2HOLDタイマ9による時間がカウントされることになる。したがって、チェンジレバー4がHOLD位置を通過する時点で第2HOLDタイマ9により第2設定時間値t2(msec)からカウントされた時間(第2HOLD
タイマ9のタイマ値)が0(msec)になっていなければ、このチェンジレバー4のDOWN位置への移動による操作を無効とすることができる。これにより、変速機の操作をより高精度に行うことが可能となる。
【0057】
なお、本発明は前述の実施の形態の例に限定されることはなく、種々設計変更が可能である。例えば、前述の例では、保持位置であるHOLD位置を挟んで一側にUP位置が、
また他側にDOWN位置がそれぞれ配設され、かつこれらの3つの位置が直線上に設けられるとともに、チェンジレバー4がリタースプリングの付勢力でHOLD位置の方へ常時付勢されている変速操作装置について説明しているが、保持位置を挟んで一側に第1シフト位置が、また他側に第2シフト位置がそれぞれ配設され、かつこれらの3つの位置が直線上に設けられるとともに、チェンジレバー4がリタースプリングの付勢力で保持位置の方へ常時付勢されている変速操作装置であれば、どのような変速操作装置にも、本発明は適用することができる。要は、本発明は、特許請求の範囲に記載されている技術的事項の範囲で種々の設計変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る変速機操作装置および変速機操作方法は、所定条件下でチェンジレバーが操作されたとき、その操作を無効であると判断する変速機操作装置および変速機操作方法に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1…第1シフト列、2…第2シフト列、3…セレクト列、4…チェンジレバー、5…シフト位置無効判定装置、6…チェンジレバー位置検出部、7…チェンジレバー位置判定部、8…第1HOLDタイマ、9…第2HOLDタイマ、10…タイマ値判定部、11…電子制御装置(ECU)、12…変速制御信号出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8