特許第5971805号(P5971805)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5971805-削片板および繊維板の製造方法 図000010
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5971805
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】削片板および繊維板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B27N 3/00 20060101AFI20160804BHJP
   B29C 43/02 20060101ALI20160804BHJP
   B29C 43/34 20060101ALI20160804BHJP
   C08L 97/00 20060101ALI20160804BHJP
   C08K 5/092 20060101ALI20160804BHJP
   C08K 5/29 20060101ALI20160804BHJP
   C08L 5/00 20060101ALI20160804BHJP
   B27K 5/00 20060101ALI20160804BHJP
   B29K 1/00 20060101ALN20160804BHJP
   B29K 35/00 20060101ALN20160804BHJP
   B29K 83/00 20060101ALN20160804BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20160804BHJP
【FI】
   B27N3/00 D
   B29C43/02
   B29C43/34
   C08L97/00
   C08K5/092
   C08K5/29
   C08L5/00
   B27K5/00 G
   B29K1:00
   B29K35:00
   B29K83:00
   B29L7:00
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-553563(P2012-553563)
(86)(22)【出願日】2011年11月7日
(86)【国際出願番号】JP2011075595
(87)【国際公開番号】WO2012098749
(87)【国際公開日】20120726
【審査請求日】2014年7月1日
(31)【優先権主張番号】特願2011-9924(P2011-9924)
(32)【優先日】2011年1月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000183428
【氏名又は名称】住友林業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅村 研二
(72)【発明者】
【氏名】安井 悦也
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−008971(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/001988(WO,A1)
【文献】 特開2000−119509(JP,A)
【文献】 特表2002−508254(JP,A)
【文献】 特開平11−207711(JP,A)
【文献】 特開平10−231164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27N 1/00 − 9/00
C08K 3/00 − 13/08
C08L 1/00 −101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小片化または繊維化された植物由来物にポリカルボン酸を添加する工程を含む削片板または繊維板の製造方法であって、前記植物由来物および/またはポリカルボン酸に1種または2種以上のイソシアネート基を有する化合物を少量添加する工程をさらに含み、植物由来物とイソシアネート基を有する化合物の重量比が、100:0.1〜100:3.0であり、ポリカルボン酸とイソシアネート基を有する化合物の重量比が、100:0.2〜100:30である、製造方法。
【請求項2】
植物由来物、ポリカルボン酸およびイソシアネート基を有する化合物の1種または2種以上に、糖類を添加する工程をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
小片化または繊維化された植物由来物を用いる削片板または繊維板の製造方法であって、前記小片化または繊維化された植物由来物、ポリカルボン酸および少量のイソシアネート基を有する化合物を含む混合物を熱圧成型する工程を含み、植物由来物とイソシアネート基を有する化合物の重量比が、100:0.1〜100:3.0であり、ポリカルボン酸とイソシアネート基を有する化合物の重量比が、100:0.2〜100:30である、製造方法。
【請求項4】
前記混合物がさらに糖類を含む、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
イソシアネート基を有する化合物が、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物を含む、請求項1〜のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
ポリカルボン酸がクエン酸、イタコン酸またはリンゴ酸からの1種または2種以上である、請求項1〜のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
糖類がスクロース、キシロースまたはデキストリンからの1種または2種以上である、請求項2、4および5〜のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
イソシアネート基を有する化合物の前記添加により、ポリカルボン酸の添加量またはポリカルボン酸と糖類の総添加量が低減される、請求項1〜のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
ポリカルボン酸溶液、またはポリカルボン酸および糖類を含む混合溶液を、植物由来物に添加する工程を含む、請求項1〜のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
小片化または繊維化された植物由来物、ポリカルボン酸及び少量の1種または2種以上のイソシアネート基を有する化合物を含む混合物の熱圧成型物である削片板または繊維板を含む複合板(ただし前記混合物において、植物由来物とイソシアネート基を有する化合物の重量比は100:0.1〜100:3.0であり、ポリカルボン酸とイソシアネート基を有する化合物の重量比は100:0.2〜100:30である)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、削片板または繊維板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木質の繊維板や削片板の製造における接着剤として、従来、専らユリア樹脂、メラミンユリア、メラミン、フェノール、イソシアネート系樹脂接着剤等が用いられていた。
しかしながら、地球環境問題や将来的な化石資源の枯渇に備え、非化石資源由来の天然物質を用いた接着技術が注目を集めつつあり、例えば、特許文献1には小片化された植物由来物に、ポリカルボン酸を溶液の状態で添加し、加熱・加圧する工程を含むことを特徴とする成形体の製造方法が開示されている。
【0003】
また、既存の木質材料の多くは、循環型材料である木材を化石資源由来の合成系接着剤によって補完したという一面があり、将来的には天然系接着剤への移行が強く求められると予想されている。しかしながら、一般に天然由来物質を用いた木材接着は、硬化に要する時間が長く、また高い添加率を要するものが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2010/001988号
【特許文献2】特開2006−205695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の製造方法、例えば特許文献1に記載の製造方法によって成形体である前記削片板または繊維板に実用上必要な接着強度を発現させるには、相当に長い熱圧時間とポリカルボン酸及び糖類の相当に高い添加率が必要とされ、実用的な生産効率およびコストを達成する妨げとなっている。
したがって、上記従来の製造方法を上回る製造効率およびコストを実現するための製造方法が希求されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑み、本発明者らは、前記削片板または繊維板の製造において、製造効率の向上および用いられる天然系接着剤の量の低減に資する接着剤について検討したところ、驚くべきことに、ある種の接着剤を用いることによって製造効率が向上され、かつ天然系接着剤の量を顕著に低減することが可能であることを見出し、さらに鋭意研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、小片化または繊維化された植物由来物にポリカルボン酸を添加する工程を含む削片板または繊維板の製造方法であって、前記植物由来物および/またはポリカルボン酸に1種または2種以上のイソシアネート基を有する化合物を少量添加する工程をさらに含む、製造方法に関する。
【0007】
また、本発明は、植物由来物、ポリカルボン酸およびイソシアネート基を有する化合物の1種または2種以上に、糖類を添加する工程をさらに含む、前記製造方法に関する。
さらに、本発明は、小片化または繊維化された植物由来物を用いる削片板または繊維板の製造方法であって、前記小片化または繊維化された植物由来物、ポリカルボン酸および少量のイソシアネート基を有する化合物を含む混合物を熱圧成型する工程を含む製造方法に関する。
またさらに、本発明は、前記混合物がさらに糖類を含む、前記製造方法に関する。
さらにまた、本発明は、ポリカルボン酸、またはポリカルボン酸および糖類とイソシアネート基を有する化合物の重量比が、100:0.2〜100:30である、前記いずれかの製造方法に関する。
また、本発明は、イソシアネート基を有する化合物が、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物を含む、前記いずれかの製造方法に関する。
さらに、本発明は、ポリカルボン酸がクエン酸、イタコン酸またはリンゴ酸からの1種または2種以上である、前記いずれかの製造方法に関する。
また、本発明は、糖類がスクロース、キシロースまたはデキストリンからの1種または2種以上である、前記いずれかの製造方法に関する。
【0008】
さらに、本発明は、イソシアネート基を有する化合物の前記添加により、ポリカルボン酸の添加量またはポリカルボン酸と糖類の総添加量が低減される、前記いずれかの製造方法に関する。
またさらに、本発明は、植物由来物とイソシアネート基を有する化合物の重量比が、100:0.1〜100:3.0である、前記いずれかの製造方法に関する。
さらにまた、本発明は、ポリカルボン酸溶液、またはポリカルボン酸および糖類を含む混合溶液を、植物由来物に添加する工程を含む、前記いずれかの製造方法に関する。
そして、本発明は、前記いずれかの製造方法によって製造される削片板または繊維板を用いる複合板に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、イソシアネート化合物の少量添加により、ポリカルボン酸と植物由来物のホロセルロース成分(セルロースおよびヘミセルロース)との架橋が補填され、削片板または繊維板の製造に必要なプレス時間を約20%程度短縮することができる。
また、本発明の製造方法によれば、削片板または繊維板といった成形体の接着強度において、ポリカルボン酸とイソシアネート基を有する化合物(以下「イソシアネート化合物」と記載する場合がある。)との間で相乗効果が奏され、削片板または繊維板の製造において用いられるポリカルボン酸の添加量を、イソシアネート化合物を少量添加することによって顕著に低減することができるばかりでなく、他の接着補助成分(糖類等)の添加量も顕著に低減することができる。
木質繊維板の製造において、イソシアネート基を有する化合物を接着剤として用いることは、例えば特許文献2に記載のとおり、公知である。しかしながら、上記のようなポリカルボン酸とイソシアネート化合物との間の相乗効果に基づく削片板または繊維板の製造方法の製造方法は、これまで報告されていない。
理論に束縛されるものではないが、イソシアネート化合物の添加によって硬化の遅いポリカルボン酸と植物由来物の木質部との架橋が補填され、+αの架橋が生じることにより、本発明の格別な効果が奏されるものと推察される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】はく離強さ(IB)における本発明の効果の例を示す図である。なお、図中の矢印は、CS、MDI各接着剤の単体添加ボードのそれぞれにおけるIBの合算値より、これらの混合添加ボードにおけるIBの方が顕著に大きいことをより明確に示すためのものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の製造方法は、小片化または繊維化された植物由来物にポリカルボン酸を添加する工程を含む削片板または繊維板の製造方法であって、前記植物由来物および/またはポリカルボン酸に1種または2種以上のイソシアネート基を有する化合物を少量添加する工程をさらに含むものである。
また、本発明は、小片化または繊維化された植物由来物を用いる削片板または繊維板の製造方法であって、前記小片化または繊維化された植物由来物、ポリカルボン酸および少量のイソシアネート基を有する化合物を含む混合物を熱圧成型する工程を含む製造方法も包含する。
以下に、本発明についてより詳細に説明する。
なお、本明細書において、「重量比」の語は、他に記載がない限り、本発明の目的を実質的に達成するために用いられる各成分の重量の比を表す。
また、本明細書において、「少量(の)」の語は、他に記載がない限り、ある成分の量として、同成分とともに用いられる他の成分に対する重量比が通常想定される重量比に比較してはるかに少ない重量比である場合の量を表す。さらに、「添加」とは、ある成分が他の成分とともに用いられるように配合することを示し、量の大小によって限定されることはなく、供給される順番によって限定されることもない。
【0012】
[1]植物由来物
本明細書において、「植物由来物」の語は、草木等の木部・樹皮・種子・葉等から得られる植物体のあらゆる部位由来の材料を意味する。植物由来物は、未利用のバージン材や廃棄物でもよいし、リサイクル材等の再利用材であってもよい。植物由来物は、さらに、1種類の植物に由来するものであってもよく、複数種の植物に由来するものの混合物であってもよい。
また、本明細書において、植物由来物の重量は、他に記載がない限り絶乾重量で表される。
【0013】
本明細書において「小片化する(される)」とは、植物由来物を例えば厚さ0.3〜2.0mm、幅1〜30mm、長さ10〜100mm程度の切削片や破砕片に加工することを意味する。また、本明細書において「繊維化する(される)」とは、植物由来物を解繊し、繊維束に加工することを意味する。
本明細書において「削片板」の語は、上記小片を相互に付着させて得られる成形体を意味する。削片板としては、パーティクルボード、ストランドボード、ウェファーボード、ストランドランバー等が例示される。
本明細書において「繊維板」の語は、上記繊維束を相互に付着させて得られる成形体を意味する。繊維板としては、中密度繊維板等が例示される。
本明細書において「複合板」の語は、上記削片板および/または繊維板を相互にあるいは合板等と張り合わせて得られる板状成形体を意味する。
【0014】
本発明においては、小片化または繊維化植物由来物の大きさは、従来のパーティクルボード、ストランドボードや中密度繊維板で使用されているものと同様でよい。
【0015】
[2]イソシアネート基を有する化合物
本発明において用いられるイソシアネート基を有する化合物はとくに限定されず、公知の各種多官能性の脂肪族、脂環族及び芳香族イソシアネートを用いることができる。イソシアネート基を有する化合物の例として、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製トリレンジイソシアネート、変性トリレンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’−MDI)、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2’−MDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−MDI)、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)、変性ジフェニルメタンジイソシアネート(カルボジイミド変性、プレポリマー変性等)、オルトトルイジンジイソシアネート(TODI)、ナフチレンジイソシアネート(NDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、リジンジイソシアネート(LDI)等が挙げられる。
【0016】
イソシアネート基を有する化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
また、イソシアネート基を有する化合物は水分散型でもよいし、非水分散型でもよい。
【0017】
本発明におけるイソシアネート基を有する化合物として、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物は好ましい。また、本発明においては、取り扱い上および作業環境上の観点、また植物由来物成形物のより効果的な高強度化の観点から、イソシアネート基を有する化合物として、2,4’−MDI、2,2’−MDI、4,4’−MDI、およびベンゼン環を3つ以上有するポリメリックMDIの混合物(以下「p−MDI」と記載する)が好ましい。
【0018】
イソシアネート基を有する化合物の量は、少なくとも、用いられるポリカルボン酸の量を低減せしめる量であればとくに限定されず、例えば植物由来物とイソシアネート基を有する化合物との重量比は、好ましくは100:0.1〜100:3.0であり、より好ましくは100:0.5〜100:2.0であり、一層より好ましくは100:1.0〜100:2.0である。
また、ポリカルボン酸とイソシアネート基を有する化合物との重量比として、100:0.2〜100:30である本発明の製造方法は好ましく、同比が100:1.0〜100:30であるものはより好ましく、100:2.0〜100:25であるものは一層より好ましい。なお、ポリカルボン酸とイソシアネート基を有する化合物との当該重量比は、本発明のうち糖類を用いない態様に関するものであって、糖類を用いる場合の同重量比については後述する。
【0019】
本発明において、植物由来物に対するイソシアネート基を有する化合物の重量比を100:0.1以上とすることにより、該イソシアネート化合物の添加によるプレス時間を短縮する効果がより確実に奏され、また、同重量比を100:3.0以下にすることによってポリカルボン酸添加量に対する低減効果がより顕著に担保され、用いられる接着剤によって発生するコストがより大幅に削減されるため経済性に優れる。
【0020】
[3]ポリカルボン酸
本明細書において「ポリカルボン酸」の語は、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物を意味する。ポリカルボン酸には、各種の直鎖状脂肪族ポリカルボン酸、分枝状脂肪族ポリカルボン酸、脂環族ポリカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸等が包含され、水酸基、ハロゲン原子、カルボニル基、炭素−炭素二重結合等を有するものも包含される。
本発明において用いられる1種または2種以上のポリカルボン酸の種類はとくに限定されない。かかるポリカルボン酸としては、常温で固体であるポリカルボン酸が好ましく、クエン酸、イタコン酸およびリンゴ酸はとくに好ましい。
【0021】
ポリカルボン酸の量はとくに限定されず、例えば植物由来物とポリカルボン酸との重量比は、好ましくは100:1.0〜100:50であり、より好ましくは100:2.0〜100:40であり、一層より好ましくは100:2.5〜100:20である。
ポリカルボン酸は水溶液等の溶液にして用いてよい。
【0022】
[4]その他の成分
本発明においては適宜他の成分を用いることができるところ、小片化または繊維化された植物由来物に接着剤として糖類をさらに添加することによって糖類によって接着剤と植物由来物との硬化が促進され、その結果硬化後の削片板または繊維板の強度を高めることができる。したがって、本発明のうち、その他の成分として1種または2種以上の糖類を用いるものは好ましい。
糖類は水溶液等の溶液にして単独で添加できるほか、ポリカルボン酸溶液および/またはイソシアネート化合物を含む混合溶液として、小片化または繊維化された植物由来物に添加してよい。
【0023】
本発明において用いられる糖類は限定されず、単糖類、オリゴ糖類および多糖類のいずれも用いることができる。
本発明において用いられる単糖類、オリゴ糖類および多糖類として、それぞれ以下のものが例示される。
単糖類:キシロース、フルクトース、リボース、アラビノース、ラムノース、キシルロースおよびデオキシリボース等。
オリゴ糖類:ショ糖(スクロース)、マルトース、トレハロースおよびツラノース等の二糖類、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マンナンオリゴ糖ならびにスタキオース等。
多糖類:デンプン、アガロース、アルギン酸、グルコマンナン、イヌリン、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、グリコーゲン、デキストリンおよびセルロース等。
これらの糖類のうち、スクロース、キシロースおよびデキストリンが好ましく、スクロースがとくに好ましい。
【0024】
糖類の量はとくに限定されず、例えば植物由来物と、ポリカルボン酸および糖類(本明細書において「(ポリカルボン酸+糖類)」と示すことがある)との重量比は、好ましくは100:5〜100:50であり、より好ましくは100:5〜100:40であり、一層より好ましくは100:8〜100:25である。
【0025】
また、本発明の製造法において糖類が用いられる場合のポリカルボン酸と糖類との重量比は限定されないところ、同比が1:0.1〜1:5である本発明の製造方法は好ましく、1:0.5〜1:4であるものはより好ましく、1:1〜1:4であるものは一層より好ましい。
糖類が用いられる本発明の製造法においては、ポリカルボン酸と糖類との重量比に応じて、用いられるイソシアネート化合物の量を適宜調節することができる。
【0026】
本発明の製造法のうち、糖類を添加しない場合における植物由来物、ポリカルボン酸およびイソシアネート基を有する化合物の総量、または糖類を添加する場合における植物由来物、ポリカルボン酸、イソシアネート基を有する化合物および糖類の総量が、それぞれ組成物全量の80重量%以上であるものは好ましく、90重量%以上であるものはより好ましく、95重量%以上であるものはとくに好ましい。
【0027】
糖類を用いる本発明の製造方法において、ポリカルボン酸と糖類の総量が通常用いられる量より低減されているものは好ましい。
また、本発明においては、所望の物性値が得られる範囲において、ポリカルボン酸と糖類の総量に対するイソシアネート基を有する化合物の量が小さい方が好ましい。(ポリカルボン酸+糖類)とイソシアネート基を有する化合物との重量比が100:0.2〜100:30である本発明の製造方法は好ましく、同比が、100:1〜100:25であるものはより好ましく、100:2〜100:20であるものは一層より好ましい。
また、糖類を用いる本発明の製造方法において、ポリカルボン酸とイソシアネート基を有する化合物との重量比として、100:0.2〜100:120である製造方法は好ましく、同比が100:1.0〜100:60であるものはより好ましく、100:2.0〜100:30であるものは一層より好ましい。
【0028】
[5]本発明の製造方法の工程
本発明の製造方法においては、通常の製造方法と同様な工程により、十分な強度を有する削片板または繊維板をより高い効率で製造することができる。
すなわち、例えば、ポリカルボン酸溶液、またはポリカルボン酸および糖類を含む混合溶液、およびイソシアネート化合物を、小片化または繊維化された植物由来物にスプレー塗布し、成形し、加熱下において加圧することにより削片板または繊維板をそれぞれ製造することができる。
イソシアネート基を有する化合物は、単独で添加してもよく、あるいは当該水分散液をポリカルボン酸溶液および/または糖類溶液と混合して添加してもよい。
また、本発明の製造方法においては、小片化または繊維化された植物由来物を用いる削片板または繊維板の製造方法であって、前記小片化または繊維化された植物由来物、ポリカルボン酸またはポリカルボン酸および糖類、ならびに少量のイソシアネート基を有する化合物を含む混合物を熱圧成型する工程が含まれるところ、該混合物の生成における各成分の配合の順序や配合される対象となる成分は限定されない。
熱圧成形時における圧力は、従来のパーティクルボードや木質繊維板の製造方法と同様に植物由来物が十分に圧縮される圧力以上とすればよい。より具体的には、前記圧力は約4MPa〜約7MPaでよく、従来の方法と同様に、成形物の目標密度や厚み方向の密度分布等によって適宜調節すればよい。また、熱圧成形時における温度は、上記と同様に160℃〜250℃が適切であり、180℃〜220℃がより好ましい。
【0029】
[6]本発明の製造方法によって製造される削片板または繊維板等
本発明の上記いずれかの製造方法によって製造される削片板または繊維板は、これら通常備えるべき物性を具備するところ、本発明の製造方法においては、かかる物性の付与を従来の方法より短時間で達成することができる。
【0030】
上記通常備えるべき物性としては、以下のものが例示される:
・約0.8N/mm以上のはく離強さ
・約18N/mm以上の曲げ強さ
・約35%以下の20℃厚さ膨張率
上記物性値は、いずれもJIS−A5908に規定される方法に準じて測定されるものである。
ただし、これらの物性値が具備しない削片板または繊維板であっても、本発明の構成を実質的にすべて具備するものにおいては、本発明の範囲に包含されると理解されるべきである。
【0031】
また、上記削片板または繊維板を用いて複合板を製造することができるところ、かかる複合板を製造方法は限定されず、本技術分野において通常用いられる製造方法を用いることができる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。
[実施例1]イソシアネート化合物少量添加の物性への影響
イソシアネート化合物をポリカルボン酸(クエン酸)および糖類(スクロース)を含む接着剤に少量添加することによる、ボード製造に必要なポリカルボン酸および糖類の総量の低減における効果等について調べた。
(1)製造条件
以下に示す各製造条件によりパーティクルボードを製造した:
・ボード仕様:パーティクルボード(単層)、設定比重0.8、ボードサイズ厚9×巾300×長さ300mm
・原材料:広葉樹フレーク(フレーカー刃の出1.1mm、フレーク粒度2〜9mm)
・接着剤:クエン酸、スクロース、p−MDI(商品名:WC−300(日本ポリウレタン工業(株)製)。以下「MDI」と記載する。)
・クエン酸/スクロース混合液(以下「CS溶液」と記載する。また、クエン酸/スクロースを「CS」と記載することがある。):
クエン酸/スクロース混合比率:25/75、CS溶液濃度:59%固形分
・MDI:水分散型、100%固形分
・固形分添加率の組み合わせ(CS溶液/MDIの固形分添加率(重量%)):下表に示すとおり
【表1】
【0033】
・マット含水率:10〜12%
・プレス温度:200℃
・初期プレス圧力:6MPa
・プレス時間:560〜600秒
【0034】
(2)成形方法
予め105℃で絶乾状態に乾燥した上記の広葉樹フレークをドラムブレンダー内で攪拌し、これにCS溶液及びMDI接着剤を所定の固形分添加率の組み合わせに基づく固形分添加率でスプレー塗布した。なおマット含水率を調整するため、上記30/0%の固形分添加率の組み合わせについてはCS溶液塗布後一旦絶乾状態に乾燥後、0/0.5%および0/1.0%の固形分添加率の組み合わせについてはMDI接着剤と同時に、ドラムブレンダーにて所定量の水を塗布した。引き続き、該接着剤が塗布された木質フレークを熱圧成形体の密度が設定値になるように計量、フォーミングし、コールドプレスで予備圧締した後、前記条件でホットプレスにより熱圧成形した。
【0035】
(3)物性評価
パーティクルボードの各種物性値については、JIS−A5908に準じて測定を行った。
【0036】
(4)結果と考察
試験結果の一覧を表1.に示す。
0.5〜1.0重量%のMDI添加により、はく離強さは約4倍に、曲げ強さは約1.3倍に向上し、特にはく離強さでの改善効果が大きかった。(表2.)
はく離強さ(IB)を、CS、MDI各接着剤単体添加ボードの加算値と混合添加ボードの値で比較すると、混合添加の方が28%程度高く、MDIの添加により+αの架橋が生じていると推察された(表3. 、図1)。
はく離強さ、曲げ強さ、20℃厚さ膨張率それぞれにおいて、CS溶液を20%添加した場合には、1.0重量%のMDI添加は10重量%のCS溶液添加とほぼ同等の効果がみられ(表4.)、実用上必要な物性を得るのに必要なCS溶液添加率を30重量%から20重量%に低減可能なことが確認された。
また、MDIの上記1.0重量%は、通常用いられるMDIの量である2〜4重量%と比較しても著しく少量である。このことは、ユリア系接着剤の通常の使用量が約10重量%であることを併せ考えると、一層顕著な効果であるといえる。
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
【表5】
【0041】
[実施例2]イソシアネート化合物少量添加のプレス時硬化性への影響
イソシアネート化合物をポリカルボン酸(クエン酸)および糖類(スクロース)を含む接着剤に少量添加することによる、ボード製造に必要なプレス時間の短縮における効果等について調べた。
(1)製造条件
・ボード仕様:パーティクルボード(単層)、設定比重0.8、ボードサイズ 厚9×巾300×長さ300mm
・原材料:広葉樹フレーク(フレーカー刃の出1.1mm、フレーク粒度 2〜9mm)
・接着剤:クエン酸、スクロース、p−MDI(商品名:WC−300(日本ポリウレタン工業(株)製)。以下「MDI」と記載する。)
・クエン酸/スクロース混合液(以下CS溶液):
クエン酸/スクロース混合比率:25/75、CS溶液濃度:59%固形分
・MDI:水分散型、100%固形分
・固形分添加率の組み合わせ(CS溶液/MDIの固形分添加率(重量%)):下表に示すとおり
【表6】
【0042】
・マット含水率:10〜13%
・プレス温度:200℃
・初期プレス圧力:6MPa
・プレス時間 :下表に示すとおり
【表7】
【0043】
(2)成形方法
予め105℃で絶乾状態に乾燥した上記の広葉樹フレークをドラムブレンダー内で攪拌し、これにCS溶液及びMDI接着剤を所定の固形分添加率の組み合わせに基づく固形分添加率でスプレー塗布した。マット含水率を調整するため、所定の固形分添加率の組み合わせ30/0%についてはCS溶液塗布後一旦絶乾状態に乾燥後、15/1.0%についてはCS溶液と同時に、ドラムブレンダーにて所定量の水を塗布した。引き続き、該接着剤が塗布された木質フレークを熱圧成形体の密度が設定値になるように計量、フォーミングし、コールドプレスで予備圧締した後、前記条件でホットプレスにより熱圧成形した。
【0044】
(3)物性評価
パーティクルボードの各種物性値については、JIS−A5908に準じて測定を行った。
【0045】
(4)結果と考察
試験結果の一覧を表5.に示す。
MDI添加率の高いボードほどはく離強さ、曲げ強さ、20℃厚さ膨張率が向上する傾向にあった。とくに、プレス時間が短いほど、その向上効果が大きかった。これは、クエン酸/スクロースと木質部の結合不足を硬化の速いMDI接着剤が補填した効果と考えられた。
とくに、15重量%のCS溶液添加に1.0重量%のMDIを添加することにより、CS溶液単体30重量%添加の場合に600秒のプレス時間を要して達成された強度性能、耐水性を達成するために必要なプレス時間は480秒であった。すなわち、CS溶液の半分の量をその1/15の量のMDIに代替することにより、同等の強度性能、耐水性の達成に必要なプレス時間は20%短縮された。
【0046】
【表8】
【0047】
(総合考察)
本発明の製造方法により、ポリカルボン酸(および糖類)といった天然由来物質を接着剤に用いた削片板および繊維板の製造において、ポリカルボン酸(および糖類)の添加率を低減し、また熱圧成形に要する時間を短縮することが可能となることが明らかになった。
なお、上記各試験においてはポリカルボン酸と木質部との結合を促進するために糖類を加えたが、糖類を用いずポリカルボン酸のみであっても、とくに植物由来物中にホロセルロース成分(セルロースおよびヘミセルロース)以外の糖類が存在する場合には、イソシアネート基を有する化合物の添加効果は上記各試験において確認されたものと同様に奏されると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の製造方法により、ポリカルボン酸や糖類といった天然由来物質を接着剤に用いた削片板および繊維板の製造において、熱圧成形に要する時間を短縮し、また上記天然由来物質の添加率を大幅に低減することが可能となる。したがって、本発明は、削片板および繊維板の製造産業およびその関連産業の発展に寄与するところ大である。
図1