特許第5971810号(P5971810)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許59718103ノード双方向協働のためのマルチイン・マルチアウト・ネットワーク符号化増幅転送中継方式
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5971810
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】3ノード双方向協働のためのマルチイン・マルチアウト・ネットワーク符号化増幅転送中継方式
(51)【国際特許分類】
   H04J 99/00 20090101AFI20160804BHJP
   H04B 7/04 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   H04J15/00
   H04B7/04
【請求項の数】22
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2013-521746(P2013-521746)
(86)(22)【出願日】2010年7月29日
(65)【公表番号】特表2013-536626(P2013-536626A)
(43)【公表日】2013年9月19日
(86)【国際出願番号】US2010043655
(87)【国際公開番号】WO2012015409
(87)【国際公開日】20120202
【審査請求日】2013年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】501263810
【氏名又は名称】トムソン ライセンシング
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing
(74)【代理人】
【識別番号】100134094
【弁理士】
【氏名又は名称】倉持 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100123629
【弁理士】
【氏名又は名称】吹田 礼子
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジアリン
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,ウエン
【審査官】 羽岡 さやか
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−171576(JP,A)
【文献】 特表2008−527795(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/057183(WO,A1)
【文献】 特表2009−534995(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/096145(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/026695(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0149117(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0136903(US,A1)
【文献】 特開2010−252292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04J 99/00
H04B 7/04
H04B 7/15
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中継ノードを用いる双方向通信システムの動作方法であって、
前記中継ノードが、第1のチャネルの第1のタイム・スロットにおいて第1のデータを含む第1の信号を受信するステップと、
前記中継ノードが、第2のチャネルの第2のタイム・スロットにおいて第2のデータを含む第2の信号を受信するステップであって、前記第1の信号および前記第2の信号が、前記中継ノードを介して互いに通信するソース・ノードと宛先ノードとの間で交換される該ステップと、
前記中継ノードが、前記第1のチャネルの第1の推定チャネル行列および前記第2のチャネルの第2の推定チャネル行列を生成するステップと、
前記中継ノードが、前記第1のチャネルおよび前記第2のチャネルの統合チャネル容量を最大にするように第1の事前符号化行列を決定するステップと、
前記中継ノードが、前記第1のチャネルおよび前記第2のチャネルの統合チャネル容量を最大にするように第2の事前符号化行列を決定するステップと、
前記中継ノードが、前記第1のデータに前記第1の事前符号化行列を適用して、事前符号化された第1のデータを生成するステップであって、前記適用が行列の乗算によって達成される該ステップと、
前記中継ノードが、前記第2のデータに前記第2の事前符号化行列を適用して、事前符号化された第2のデータを生成するステップであって、前記適用が行列の乗算によって達成される該ステップと、
前記中継ノードが、前記事前符号化された第1のデータと前記事前符号化された第2のデータとを結合することによって第3の信号を生成するステップであって、前記結合が行列の加算によって達成され、前記第3の信号は、前記第3の信号の先頭に追加されたトレーニング・シーケンスをさらに含む、該ステップと、
前記中継ノードが、前記第1の推定チャネル行列を乗算した前記第1の事前符号化行列および前記第2の推定チャネル行列を乗算した前記第2の事前符号化行列を、前記第3の信号の前記トレーニング・シーケンスと符号化された混合信号との間に挿入するステップと、
前記中継ノードが、前記第1のチャネルおよび前記第2のチャネル上で前記第3の信号を伝送するステップと、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記中継ノードが、前記挿入の前に、前記第1の推定チャネル行列を乗算した前記第1の事前符号化行列を量子化し、前記第2の推定チャネル行列を乗算した前記第2の事前符号化行列を量子化するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記トレーニング・シーケンスは、第1のトレーニング・シーケンスおよび第2のトレーニング・シーケンスを含み、前記第1のトレーニング・シーケンスは前記第1のチャネル用であり、前記第2のトレーニング・シーケンスは前記第2のチャネル用である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の信号はトレーニング・シーケンスおよびデータを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の信号はトレーニング・シーケンスおよびデータを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記中継ノードが、第1のビーム形成行列を決定するステップと、
前記中継ノードが、第2のビーム形成行列を決定するステップと、
前記中継ノードが、前記第3の信号を生成する前に、前記第1のデータに前記第1のビーム形成行列を適用し、前記第2のデータに前記第2のビーム形成行列を適用するステップであって、前記適用が行列の乗算によって達成される該ステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記中継ノードが、前記第1の推定チャネル行列を乗算した前記第1の事前符号化行列および前記第2の推定チャネル行列を乗算した前記第2の事前符号化行列を、前記第3の信号の前記トレーニング・シーケンスと符号化された混合信号との間に挿入する前に、前記第1の推定チャネル行列を乗算した前記第1の事前符号化行列に前記第1のビーム形成行列を適用し、前記第2の推定チャネル行列を乗算した前記第2の事前符号化行列に前記第2のビーム形成行列を適用するステップであって、前記適用が行列の乗算によって達成される該ステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のチャネルと前記第2のチャネルとが直交している、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第2のタイム・スロットは、前記第1のタイム・スロットを使用したノードによって与えられる逆方向である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
第1のチャネルの第1のタイム・スロットにおいて第1のデータを含む第1の信号を受信する手段と、
第2のチャネルの第2のタイム・スロットにおいて第2のデータを含む第2の信号を受信する手段であって、前記第1の信号および前記第2の信号が、中継ノードを介して互いに通信するソース・ノードと宛先ノードとの間で交換される該手段と、
前記第1のチャネルの第1の推定チャネル行列および前記第2のチャネルの第2の推定チャネル行列を生成する手段と、
前記第1のチャネルおよび前記第2のチャネルの統合チャネル容量を最大にするように第1の事前符号化行列を決定する手段と、
前記第1のチャネルおよび前記第2のチャネルの統合チャネル容量を最大にするように第2の事前符号化行列を決定する手段と、
前記第1のデータに前記第1の事前符号化行列を適用して、事前符号化された第1のデータを生成する手段であって、前記適用が行列の乗算によって達成される該手段と、
前記第2のデータに前記第2の事前符号化行列を適用して、事前符号化された第2のデータを生成する手段であって、前記適用が行列の乗算によって達成される該手段と、
前記事前符号化された第1のデータと前記事前符号化された第2のデータとを結合することによって第3の信号を生成する手段であって、前記結合が行列の加算によって達成され、前記第3の信号は、前記第3の信号の先頭に追加されたトレーニング・シーケンスをさらに含む該手段と、
前記第1の推定チャネル行列を乗算した前記第1の事前符号化行列および前記第2の推定チャネル行列を乗算した前記第2の事前符号化行列を、前記第3の信号の前記トレーニング・シーケンスと符号化された混合信号との間に挿入する手段と、
前記第1のチャネルおよび前記第2のチャネル上で前記第3の信号を伝送する手段と、
を含む、双方向通信システムの中継ノードである、装置。
【請求項11】
前記挿入手段が実行される前に、前記第1の推定チャネル行列を乗算した前記第1の事前符号化行列を量子化する手段と、前記挿入手段が実行される前に、前記第2の推定チャネル行列を乗算した前記第2の事前符号化行列を量子化する手段とをさらに含む、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記トレーニング・シーケンスは、第1のトレーニング・シーケンスおよび第2のトレーニング・シーケンスを含み、前記第1のトレーニング・シーケンスは前記第1のチャネル用であり、前記第2のトレーニング・シーケンスは前記第2のチャネル用である、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記第1の信号はトレーニング・シーケンスおよびデータを含む、請求項10に記載の装置。
【請求項14】
前記第2の信号はトレーニング・シーケンスおよびデータを含む、請求項10に記載の装置。
【請求項15】
第1のビーム形成行列を決定する手段と、
第2のビーム形成行列を決定する手段と、
前記第3の信号を生成する前に、前記第1のデータに前記第1のビーム形成行列を適用し、前記第2のデータに前記第2のビーム形成行列を適用する手段であって、前記適用が行列の乗算によって達成される該手段と、
をさらに含む、請求項10に記載の装置。
【請求項16】
前記第1の推定チャネル行列を乗算した前記第1の事前符号化行列および前記第2の推定チャネル行列を乗算した前記第2の事前符号化行列を、前記第3の信号の前記トレーニング・シーケンスと符号化された混合信号との間に挿入する前に、前記第1の推定チャネル行列を乗算した前記第1の事前符号化行列に前記第1のビーム形成行列を適用する手段と、前記第1の推定チャネル行列を乗算した前記第1の事前符号化行列および前記第2の推定チャネル行列を乗算した前記第2の事前符号化行列を前記第3の信号の前記トレーニング・シーケンスと符号化された混合信号との間に挿入する前に、前記第2の推定チャネル行列を乗算した前記第2の事前符号化行列に前記第2のビーム形成行列を適用する手段であって、前記適用が行列の乗算によって達成される該手段と、をさらに含む、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記第1のチャネルと前記第2のチャネルとが直交している、請求項10に記載の装置。
【請求項18】
前記第2のタイム・スロットは、前記第1のタイム・スロットを使用したノードによって与えられる逆方向である、請求項10に記載の装置。
【請求項19】
第1のノードの動作方法であって、
第1のチャネルの第1のタイム・スロットにおいて第1の信号を伝送するステップであって、前記第1の信号は第1のデータを含む該ステップと、
第3のタイム・スロットにおいて中継ノードから第3の信号を受信するステップであって、前記第3の信号は、第1の事前符号化行列を前記第1のデータに適用して前記第1の信号を形成し、かつ、第2の事前符号化行列を第2のデータに適用して第2の信号を形成することによって生成された事前符号化されたデータを含み、前記第2のデータは第2のチャネルの第2のタイム・スロットにおいて第2のノードから伝送されており、前記第1の事前符号化行列および前記第2の事前符号化行列は前記中継ノードによって決定されており、前記第1の事前符号化行列が前記第1のチャネルおよび前記第2のチャネルの統合チャネル容量を最大にし、かつ、前記第2の事前符号化行列が前記第1のチャネルおよび前記第2のチャネルの統合チャネル容量を最大にし、前記適用が行列の乗算によって達成される該ステップと、
前記第3の信号を復号することによって前記第2のデータを得るステップであって、前記第3の信号は前記第3の信号から前記第1の信号を除去することによって復号される、該ステップと、を含み、
第1の推定チャネル行列を前記第1の事前符号化行列に乗算することによって生成された第1の結果、および、第2の推定チャネル行列を前記第2の事前符号化行列に乗算することによって生成された第2の結果前記第3の信号の先頭に追加された第1のトレーニング・シーケンスと前記第3の信号のデータとの間に含まれている、前記方法。
【請求項20】
第1のビーム形成行列が、前記第1の事前符号化行列および前記第1のデータに適用され、第2のビーム形成行列が、前記第2の事前符号化行列および前記第2のデータに適用されており、前記適用が行列の乗算によって達成される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
第1のチャネルの第1のタイム・スロットにおいて第1の信号を伝送する手段であって、前記第1の信号は第1のデータを含む該手段と、
第3のタイム・スロットにおいて中継ノードから第3の信号を受信する手段であって、前記第3の信号は、第1の事前符号化行列を前記第1のデータに適用して前記第1の信号を形成し、かつ、第2の事前符号化行列を第2のデータに適用して第2の信号を形成することによって生成された事前符号化されたデータを含み、前記第2のデータは第2のチャネルの第2のタイム・スロットにおいて他の装置から伝送されており、前記第1の事前符号化行列および前記第2の事前符号化行列は前記中継ノードによって決定されており、前記第1の事前符号化行列が前記第1のチャネルおよび前記第2のチャネルの統合チャネル容量を最大にし、かつ、前記第2の事前符号化行列が前記第1のチャネルおよび前記第2のチャネルの統合チャネル容量を最大にし、前記適用が行列の乗算によって達成される該手段と、
前記第3の信号を復号することによって前記第2のデータを得る手段であって、前記第3の信号は前記第3の信号から前記第1の信号を除去することによって復号される、該手段と、を含み、
第1の推定チャネル行列を前記第1の事前符号化行列に乗算することによって生成された第1の結果、および、第2の推定チャネル行列を前記第2の事前符号化行列に乗算することによって生成された第2の結果前記第3の信号の先頭に追加された第1のトレーニング・シーケンスと前記第3の信号のデータとの間に含まれている装置。
【請求項22】
第1のビーム形成行列が、前記第1の事前符号化行列および前記第1のデータに適用され、第2のビーム形成行列が、前記第2の事前符号化行列および前記第2のデータに適用されており、前記適用が行列の乗算によって達成される、請求項21に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IEEE802.11nドラフト標準の双方向伝送(通信)を補助する3ノード協働方式に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチキャストおよびブロードキャストの分野では、有線および/または無線のネットワークを介して、1つのサーバから複数の受信側にデータが伝送される。本明細書で使用するマルチキャスト・システムは、1つのサーバが同じデータを複数のレシーバに同時に伝送し、これら複数のレシーバは、これらレシーバの一部または全体を含むサブセットを構成している。ブロードキャスト・システムは、1つのサーバが同じデータを全ての受信側に同時に伝送するシステムである。すなわち、定義によれば、マルチキャスト・システムはブロードキャスト・システムを含むことができる。
【0003】
1つのアクセス・ポイント(AP)と複数のノードとを有するマルチキャスト(ダウンリンク)・チャネルおよびマルチアクセス(アップリンク)・チャネルを考える。IEEE802.11nドラフト標準では、逆方向(RD)プロトコルを導入して、TXOP(Transmission Opportunity)内の双方向トラフィック・フローの高速スケジューリングを行う。この逆方向プロトコルによって、TXOPを得たノードは、TXOPの制御権を維持したまま、別のノードの逆方向伝送を認可することができる。ノード間のチャネル条件が不適切(低品位)である場合には、これら2つのノード間の伝送の質が低下する。この質の低下は、データ転送速度の低下および/またはスループットの低下であることがある。
【0004】
IEEE802.11nドラフト標準では、逆方向(RD)プロトコルは、図1に示すように提案されている。IEEE802.11nドラフト標準の逆方向プロトコルは、2つのノード間の双方向伝送のスケジューリングしか行わない。各ノードは、ソース・ノードであり、宛先ノードでもある。IEEE802.11WLAN標準には、3ノード双方向伝送のための既存のスケジューリング・プロトコルはない。図1は、半二重中継ノード(RN)を用いた従来の1方向協働を示す。図1aは、ノードがノードおよびRNの両方にデータSを伝送(送信、通信)する、第1の通信ステージを示す。図1bは、RNがノードにデータ
【数1】
を伝送(通信、送信)する、第2の通信ステージを示す。すなわち、RNは、ノードに対して、データS
【数2】
として伝送(通信、転送、送信)する。これに応じて(図示していないが)、第3の通信ステージでは、ノードが、ノードおよびRNの両方にデータSを伝送(送信、通信)する。第4の通信ステージでは、RNは、ノードにデータ
【数3】
を伝送(通信、転送、送信)する。すなわち、RNは、ノードに対して、データS
【数4】
として伝送(通信、転送、送信)する。従って、従来の手法では、ノードおよびノードを補助するための半二重RNを用いた通信を完了するのに、4つのステージ(段階)がある。
【0005】
=L=1、かつL=2である場合における、単一アンテナ・システムにおいての復号転送法、ソフト復号転送法および増幅転送法をそれぞれ用いて、3ステージのネットワーク符号化3ノード双方向協働(すなわち、RNにおける複数のノード(ソースおよび宛先)からの信号の受信が直交(分離)している)が研究されている。なお、L(i=1,2,R)は、それぞれ、ノード、ノードおよびRNのアンテナ数を表すことに留意されたい。本発明では、ノードに任意数のアンテナがある一般的なMIMOの場合に増幅転送法を用いる。これは、出願人が知るいかなる公開文献でも述べられていないことである。
【0006】
本明細書で使用するノードは、局(STA)、移動機器、移動端末、デュアル・モード・スマート・フォン、コンピュータ、ラップトップ・コンピュータ、またはIEEE802.11nドラフト標準で動作可能なその他の任意の等価な装置を含む(ただしこれらに限定されない)。
【0007】
1つのアクセス・ポイント(AP)および複数のノードを有するマルチキャスト(ダウンリンク)・チャネルおよびマルチアクセス(アップリンク)・チャネルを考える。IEEE802.11nドラフト標準では、逆方向(RD)プロトコルを導入して、TXOP内の双方向トラフィック・フローの高速スケジューリングを行う。この逆方向プロトコルによって、TXOPを得たノードは、TXOPの制御権を維持したまま、別のノードの逆方向伝送を認可することができる。ただし、これら2つのノード間のチャネル状態(チャネル条件)が両者の間で高速かつ信頼性の高い伝送(通信)を行うのに不十分である場合には、第3のノードである半二重中継ノード(RN)を介した協働を用いて、伝送(通信)を補助することが可能である。これら2つのノードの間の伝送が第3のノードである半二重中継ノード(RN)を介した協働を含むときには、状況がより複雑になるが、無線ネットワーク符号化を利用して、システムのスループットをさらに向上させることができる。各ノードは、ソース・ノードであり、宛先ノードでもある。
【0008】
本発明では、図2に示し、かつ以下でさらに詳細に述べるように、無線ネットワーク符号化をこのシステムに導入し、双方向協働と組み合わせて、システムのスループットを向上させる。本発明では、このような3ノード双方向協働のシナリオにおけるネットワーク符号化増幅転送(NCAF)中継方式について述べる。
【0009】
本発明の3ノード双方向協働方式では、ノードおよびノードの2つのノードは、ソース・ノードであると同時に宛先ノードでもあり、RNは、ノードとノードの間の双方向伝送を補助する中継ノードである。中継ノード(RN)は、ノードおよびノードの両方から信号を順次受信し、この2つの信号をそれぞれの事前符号化行列を用いて結合し、この混合信号を直交するチャネルで両ノードにブロードキャストする。各ノード(ソースおよび宛先)は、他方のノードからの所望の信号の伝送(通信)と、RNからの混合信号の伝送(通信)の両方を受信する。各ノードは、当該ノードが送出(伝送、通信)した信号の情報に基づいて、当該ノードが望むデータを統合的に復号することができる。このプロセスを、以下でさらに詳細に述べる図3に示す。本発明では、上記のネットワーク符号化増幅転送(NCAF)中継方式について述べるだけでなく、以下の2つの場合のチャネル状態情報(CSI)が与えられたものとして、RNにおける総パワー制約を受ける双方向協働システムの瞬間容量を最大にするように、各ノード(ソースおよび宛先)からの受信信号のRNにおける事前符号化行列の設計問題も解決する。
(1)RNにおいて直接リンクのCSIがない:ノード(ソースおよび宛先)からRNへのチャネルおよびRNからノード(ソースおよび宛先)へのチャネルのCSIのみが、RNにおいて既知である。2つのノード(ソースおよび宛先)の間のチャネルのCSIは、RNでは未知である。
(2)RNにおいて直接リンクのCSIがある:ノード(ソースおよび宛先)からRNへのチャネル、RNからノード(ソースおよび宛先)へのチャネル、および2つのノード(ソースおよび宛先)の間のチャネルのCSIが、RNにおいて未知である。
【0010】
本発明のネットワーク符号化増幅転送(NCAF)中継方式では、RNは、従来の増幅転送協働のように、あるノードから別のノードに増幅受信信号を転送しない。その代わりに、RNは、2つのノードから受信した2つの信号に最初に事前符号化行列を乗算することによって、それら2つの受信した信号を結合する。その後、RNは、双方向トラフィック・フローの混合データを含むこの結合信号をブロードキャスト(マルチキャスト)する。各終点ノードはRNからの信号を受信する。その後、ノードは、当該ノードが送出(伝送、通信)した信号の情報に基づいて、当該ノードが望む信号を統合的に復号することができる。この協働では、依然としてダイバーシティがある。
【0011】
本発明のNCAF中継方式は、IEEE802.11ドラフトVHT(Very High Throughput)標準で将来重要になる可能性がある。本発明のNCAF中継方式の利点は、中継ノード(RN)において、簡単な処理、すなわち線形事前符号化しか必要とされない点である。また、本発明のNCAF中継方式は、増幅転送中継方式を用いた従来の協働との互換性もある。また、本発明のNCAF中継方式は、RNに備えられたアンテナの数が不十分であるためにRNが受信データを復号することができないときに問題を解決し、いかなる複数アンテナ・システムでも常に実現可能である。
【0012】
第1のチャネルの第1のタイム・スロットにおいて第1のデータを含む第1の信号を受信すること、第2のチャネルの第2のタイム・スロットにおいて第2のデータを含む第2の信号を受信すること、第1の事前符号化行列を決定すること、第2の事前符号化行列を決定すること、第1のデータに第1の事前符号化行列を適用して、事前符号化された第1のデータを生成すること、第2のデータに第2の事前符号化行列を適用して、事前符号化された第2のデータを生成すること、事前符号化された第1のデータと事前符号化された第2のデータを結合することによって第3の信号を生成すること、ならびに第1のチャネルおよび第2のチャネル上で第3の信号を伝送することを含む、方法および装置について述べる。また、第1の信号を伝送すること、第2の信号を受信すること、ならびに第1のトレーニング・シーケンスを含む第2の信号を、第1のトレーニング・シーケンスを除去し、第1の信号を除去することによって統合的に復号することを含む、方法および装置についても述べる。
【0013】
本発明は、以下の詳細な説明を添付の図面と関連付けて読めば、最もよく理解される。図面は、以下に簡単に説明する図面を含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】増幅転送中継方式を示す図である。
図2】半二重中継ノードを用いる本発明の双方向協働のためのネットワーク符号化増幅転送中継方式の動作を示す図である。
図3a】本発明のネットワーク符号化増幅転送中継方式の伝送側の例示的な実施例の動作のブロック図である。
図3b】ノードから見た本発明のネットワーク符号化増幅転送中継方式の受信側の例示的な実施例の動作のブロック図である。
図3c】ノードから見た本発明のネットワーク符号化増幅転送中継方式の受信側の例示的な実施例の動作のブロック図である。
図4】本発明のソース・ノードにおけるビーム形成を行わないネットワーク符号化増幅転送中継方式の一括して簡略化した例示的なフレーム構造を示す図である。
図5】本発明のソース・ノードにおけるビーム形成を行うネットワーク符号化増幅転送中継方式の一括して簡略化した例示的なフレーム構造を示す図である。
図6】ノード(ソースおよび宛先)から見た本発明の例示的な実施例のフローチャートである。
図7】中継ノードから見た本発明の例示的な実施例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図2は、半二重中継ノードを用いる本発明の双方向協働のためのネットワーク符号化増幅転送中継方式の動作を示す。図2aは、ノードがノードおよびRNの両方にデータSを伝送(送信、通信)する、第1の通信ステージを示す。図2bに示す第2の通信ステージでは、ノードが、ノードおよびRNの両方にデータSを伝送(送信、通信)する。図2cに示す第3の通信ステージでは、RNが、データ
【数5】
の結合(混合)を行い、ノードおよびノードの両方に伝送(通信)する。データ
【数6】
は、データSおよびデータSに事前符号化行列を適用することによって形成される。データ
【数7】
の結合は、
【数8】
である。このように、ステージの数は、4ステージから3ステージに減少している。なお、データに事前符号化行列を適用することに加えて、データにビーム形成行列を適用することもできることに留意されたい。
【0016】
システム・モデルおよび表記の一部について、最初に述べる。Xは、ノード(i=1,2,R、ノードはRNを示す)から伝送される信号である。Qは、ノードにおけるビーム形成行列であり、ビーム形成を用いない場合には恒等行列である。Hijは、ノードからノードへのチャネル行列である。YijおよびNijは、ノードからノードの受信信号およびノイズであり、要素は、分散
【数9】
を有する独立および同分布のガウス分布であるものと仮定する。Wは、RNにおいてYRiに適用される事前符号化行列である。総伝送パワーは、ノード(i=1,2)ではPであり、RNではPである。
【0017】
RNは、第1のタイム・スロットでノードからYR1=HR1+NR1を受信し、第2のタイム・スロットでノードからYR2=HR2+NR2を受信する。次いで、RNは、加重受信信号を、そのブロードキャスト信号
=WR1+WR2=WR1+WR2+WR1+WR2
として混合する。
【0018】
一方のノード(ソースおよび宛先)での受信および復号は、1つの例として用いたものである。言うまでもなく、受信端では復調が行われる。他方のノード(ソースおよび宛先)における処理も同様である。ノードは、第2のタイム・スロットでノードからY12=H12+N12を受信し、第3のタイム・スロットでRNからY1R=H1R+N1R、すなわちY1R=H1RR1+H1RR2+H1RR1+H1RR2+N1Rを受信する。行列の形状は、以下の通りである。
【数10】
すなわち、Y=D+A+Bである。ここで、
【数11】
であり、
【数12】
はゼロ行列であり、I∈CN×Nは、恒等行列である。なお、ノードでは、Xは既知であるが、Xは未知であり、求める必要があることに留意されたい。
【数13】
は、ノードにおけるノイズ・ベクトルであり、行列
【数14】
および
【数15】
は、既知であるものと仮定する。Xの情報に基づいて、ノードは、Z=Y−D=A+Bを得ることができる。ここで、Zは、等価な受信信号であり、Aは、信号Xの等価なチャネル行列である。その後、ノードは、Xを統合的に復号することができる。
【0019】
同様に、Z=A+Bである。Z、A、B、およびNは、それぞれが対をなす相手方における添え字「1」および「2」ならびに「N」および「N」を入れ替えることによって定義される。
【0020】
問題は、RNにおいて伝送パワー制約を受けるシステムの瞬間容量を最大にする
【数16】
を決定することである。WおよびWは、事前符号化行列である。すなわち、
【数17】
の制約を受ける
【数18】
を最大にするようにWおよびWを決定する。ここで、tr{X}は、行列Xのトレースを表す。Q(i=1,2)をユニタリ行列とすると、この制約は、以下のように簡略化することができる。
【数19】
【0021】
第1の場合には、ノードからRNおよびRNからノードへのチャネル(リンク)のCSIが、RNで利用可能であるものと仮定する。ノードとノード(i,j=1,2、i≠j)の間のリンク(チャネル)のCSIは、利用不能である。このシナリオでは、情報の欠如のために、f自体の代わりにfの上界を最大にする必要がある。すなわち、数式(2)に示すように、
【数20】
の制約を受ける
【数21】
を最大にするようにWおよびWを決定する。
【0022】
第2の場合には、ノードからRN、RNからノードおよびノードからノードへのチャネルのCSIが、RNに利用可能であるものと仮定する(i,j=1,2、i≠j)。このシナリオでは、設計問題は、(2)の制約を受ける(1)を最大にすることである。
【0023】
特異値分解(SVD)の定理により、チャネル(リンク)は、
【数22】
および
【数23】
に分解することができる。ここで、
【数24】
および
【数25】
は、ユニタリ行列であり、
【数26】
は、特異値行列である。特に、
【数27】
であり、ここで(・)および(・)は、それぞれ行列転置演算および共役転置演算を表す。また、
【数28】
を定義し、T=(tij)(i,j=1,…,L)と表す。
【0024】
ノードとノードの間の直接リンクのCSIが利用不能であるときには、
【数29】
および
【数30】
とする。ここで、
【数31】
が決定される。閉形式解はない。しかし、
【数32】
および
【数33】
は、ニュートン法を繰り返し用いることによって解くことができる。
【0025】
さらに、この問題の記述は、以下の形式に書き直すことができる。表記については、この手法を紹介した後で説明する。
【0026】
(λ) (4)
を最小にするλを決定する。ただし
λ≧0 (5)
Sλ=q (6)
【0027】
ラグランジュ関数は、
L(λ,μ)=f(λ)−μ(Sλ−q) (7)
である。ここで、μは、ラグランジュの乗数を含むベクトルである。ニュートンの手法を用いて、以下の反復手法を用いて、λについて解く。
ステップ1:λ∈(0,max_λ)を初期化する。
ステップ2:各反復において、
【数34】
を解く。
ステップ3:次の反復として
【数35】
をとる。
ステップ4:sum(sign(λk+1))≠length(λk+1)またはsum(sign(max_λ−λk+1))≠length(λk+1)である場合には、ステップ1に戻る。それ以外の場合には、ステップ5に進む。
ステップ5:
【数36】
である場合には、終了する。それ以外の場合には、k=k+1であり、ステップ2に進む。
【0028】
ステップ4で、x=(x,…xが列ベクトルまたは長さMであるとすると、length(x)=M、かつ、
【数37】
である。
【数38】
【0029】
条件αが、「L≧Lの場合、または、L<LおよびL(L−1)≧Lが満たされる場合」として定義され、条件βが、「L<LおよびL(L−1)≦L−1が満たされる場合」として定義される。従って、以下のような3通りの解がある。
【0030】
一般ケース1:αおよびαが存在するとき、
【数39】
および
【数40】
は、それぞれ定数を乗算された恒等行列である。すなわち、
【数41】
である。反復手法での表記は、以下の通りである。
【数42】
【数43】
であり、ここで、
【数44】
であり、M=min(L,L,L)である。f(λ)のヘッシアンおよび勾配(グラジエント)は、以下のように表される。
【数45】
ここで、
【数46】
であり、かつ
【数47】
である。
【0031】
一般ケース2:αおよびβが存在するとき、
【数48】
は、定数を乗算された恒等行列であり、すなわち、
【数49】
であり、一方、
【数50】
は、対角行列である。反復手法での表記は、以下の通りである。
【数51】
ここで、
【数52】
である。
【0032】
また、
【数53】
であり、ここで、Re{・}およびIm{・}は、変数の実数部および虚数部をとる関数であり、sは、線形方程式
【数54】
から得られ、すなわち
【数55】
である。
【数56】
であり、ここで、
【数57】
である。
【0033】
一般ケース3:βおよびβが存在するとき、
【数58】
および
【数59】
は、両方とも対角行列である。反復手法での表記は、以下の通りである。
【数60】
【数61】
であり、ここで、
【数62】
である。また、
【数63】
であり、ここで、Re{・}およびIm{・}は、変数の実数部および虚数部をとる関数であり、sおよびsは、線形方程式
【数64】
からそれぞれ得られ、すなわち、
【数65】
である。
【数66】
である。
【数67】
および
【数68】
と表す。これらは、ともにエルミートであり、
【数69】
として、
【数70】
および
【数71】
はユニタリ行列であり、
【数72】
は対角行列である。
【数73】
および
【数74】
とする。ノードとノードの間の直接リンクのCSIが利用可能であるときの
【数75】
を決定する問題は、ノードとノードの間の直接リンクのCSIが利用不能であるときの上記の問題とRNが同じ形であり、この解を見つける反復手法は、単にλR2,iおよびλR1,i
【数76】
および
【数77】
でそれぞれ置換するだけで、上記の3つのケースとほぼ同じである。
【0034】
設計問題では、両ノード(ソースおよび宛先)がトレーニング・シーケンスをRNに送出(伝送、通信、転送)して、RNが入来チャネルを推定することができるようにする。また、RNも、ノード(ソースおよび宛先)がRNから各ノードへのチャネル(リンク)を推定するための1つまたは複数のトレーニング・シーケンスを送出(伝送、通信、転送)する必要があり、また、RNが使用する事前符号化行列に関する情報を伝送(送出、転送、通信)する必要がある。
【0035】
本発明で使用するものとして、2つの基本的なデータ・フレーム構造を提案する。
(1)図4aおよび図5aに示すように、RNが、受信したトレーニング・シーケンスに事前符号化行列を適用し、それらを転送する。
(2)図4bおよび図5bに示すように、RNが、入来チャネル行列を推定し、それらに事前符号化行列を乗算し、その結果得られた行列を量子化し、それらを返送する。RNは、RNから各ノードまでのチャネル状態(チャネル条件)を推定するための自身のトレーニング・シーケンスを各ノード(ソースおよび宛先)に送出する。RNにおけるRNから各ノード(ソースおよび宛先)への発信チャネルのCSIやRNにおける直接リンクのCSIなど、行う必要があるチャネル推定は他にもある。これらは、制御フレームなど、その他のフレームによって行われる。
【0036】
本発明のネットワーク符号化増幅転送中継方式の伝送側の例示的な実施例の動作のブロック図である図3aを再度参照する。データSは、第1のタイム・スロットで、ノードから信号XとしてRNに伝送(通信)され、データSは、第2のタイム・スロットで、ノードから信号XとしてRNに伝送(通信)される。次いで、RNは、これらのデータを事前符号化して混合(結合)し、この混合された事前符号化データ(X)をマルチキャスト(ブロードキャスト)し、これをノードおよびノードの両方が受信する。この混合(結合)された事前符号化データが変調されることは言うまでもない。
【0037】
ノードから見た本発明のネットワーク符号化増幅転送中継方式の受信側の例示的な実施例の動作のブロック図である図3bを再度参照する。ノードは、ノードから信号Y12を受信し、RNから信号Y1Rを受信し、統合ネットワーク・チャネル復号(joint network and channel decoding)を実行する。復号されたデータが復調されることは言うまでもない。
【0038】
ノードから見た本発明のネットワーク符号化増幅転送中継方式の受信側の例示的な実施例の動作のブロック図である図3cを再度参照する。ノードは、ノードから信号Y21を受信し、RNから信号Y2Rを受信し、統合ネットワーク・チャネル復号を実行する。復号されたデータが復調されることは言うまでもない。
【0039】
すなわち、TXOPを保持(保有)するノードの立場(観点)から見ると、このノードは、データを有する第1の信号を伝送(送出、通信)する手段と、第2の信号を受信する手段とを含む。伝送手段および受信手段は、1つのトランシーバであってもよいし、分離した伝送器と分離した受信器であってもよいし、任意の等価な手段であってもよい。このノードは、トレーニング・シーケンスおよび第1の信号を除去する(取り去る)ことによって第2の信号を統合的に復号する手段も有する。オプションとして、このノードは、第1のビーム形成行列の第1の信号のデータへの適用および第2のビーム形成行列の第2の信号のデータへの適用を考慮することにより、第2の信号を復号する手段も含む。
【0040】
中継ノード(RN)の立場(観点)から見ると、RNは、第1のチャネルの第1のタイム・スロットで第1の信号を受信する手段と、第2のチャネルの第2のタイム・スロットで第2の信号を受信する手段と、第1の事前符号化行列を決定する手段と、第2の事前符号化行列を決定する手段とを含み、これらの第1の事前符号化行列および第2の事前符号化行列は、それぞれ第1のチャネルおよび第2のチャネルの統合チャネル容量を最大にするものであり、RNは、さらに、第1の事前符号化行列を第1のデータに適用する手段と、第2の事前符号化行列を第2のデータに適用する手段と、事前符号化した第1のデータと事前符号化した第2のデータとを混合(結合)することによって第3の信号を生成する手段と、第3の信号を伝送する手段とを含む。伝送手段および受信手段は、1つのトランシーバであってもよいし、分離した伝送器と分離した受信器であってもよいし、任意の等価な手段であってもよい。RNは、第1のチャネル用の第1の推定チャネル行列および第2のチャネル用の第2の推定チャネル行列を生成する手段と、第1の推定チャネル行列を乗算した第1の事前符号化行列および第2の推定チャネル行列を乗算した第2の事前符号化行列を第3の信号のトレーニング・シーケンス中に挿入する手段と、挿入手段が実行される前に第1の推定チャネル行列を乗算した第1の事前符号化行列を量子化する手段と、挿入手段が実行される前に第2の推定チャネル行列を乗算した第2の事前符号化行列を量子化する手段とをさらに含む。オプションとして、このRNは、第1のビーム形成行列を決定する手段と、第2のビーム形成行列を決定する手段と、第3の信号を生成する前に第1のビーム形成行列を第1のデータに適用し、第2のビーム形成行列を第2のデータに適用する手段とをさらに含む。また、RNは、オプションとして、第1の推定チャネル行列を乗算した第1の事前符号化行列および第2の推定チャネル行列を乗算した第2の事前符号化行列を第3の信号のトレーニング・シーケンス中に挿入する前に第1の推定チャネル行列を乗算した第1の事前符号化行列に第1のビーム形成行列を適用する手段と、第1の推定チャネル行列を乗算した第1の事前符号化行列および第2の推定チャネル行列を乗算した第2の事前符号化行列を第3の信号のトレーニング・シーケンス中に挿入する前に第2の推定チャネル行列を乗算した第2の事前符号化行列に第2のビーム形成行列を適用する手段とをさらに含む。
【0041】
本発明のソース・ノードにおけるビーム形成を行わないネットワーク符号化増幅転送中継方式の一括して簡略化した例示的なフレーム構造である図4を再度参照する。図4aは、トレーニング・シーケンスがソース・ノードから送信される場合を示している。RNはトレーニング・シーケンスを送出するが、RNから送信されるトレーニング・シーケンスは、事実上、RNがノードおよびノードから受信し、複製してソース・ノード(ノードおよびノード)に戻したトレーニング・シーケンスである。第3のステージで、RNは、この2つのトレーニング・シーケンスおよび混合データXをノードに伝送する。事前符号化行列が、両トレーニング・シーケンスおよび混合データXに適用される。事前符号化行列WはT(第1のトレーニング・シーケンス)に適用され、事前符号化行列WはT(第2のトレーニング・シーケンス)に適用される。事前符号化行列Wは、混合信号XのHR1にも適用され、Wは、混合信号XのHR2にも適用される。なお、HR1は、RNがノードから受信した所望の信号である(ノードがXを送信した)ことに留意されたい。また、HR2は、RNがノードから受信した所望の信号である(ノードがXを送信した)ことに留意されたい。図4bでは、各ノードは、自身のトレーニング・シーケンスを送出(伝送、通信)し、RNも、混合データXに加えて事前符号化行列WおよびWを送出(伝送、通信)する。RNから送出(伝送、通信)されたトレーニング・シーケンスTには、事前符号化行列は適用されない。
【0042】
本発明のソース・ノードにおけるビーム形成を行うネットワーク符号化増幅転送中継方式の一括して簡略化した例示的なフレーム構造である図5を再度参照する。図5aは、トレーニング・シーケンスがソース・ノードから送信される場合を示している。RNはトレーニング・シーケンスを送出するが、RNから送信されるトレーニング・シーケンスは、事実上、RNがノードおよびノードから受信し、複製してソース・ノード(ノードおよびノード)に戻したトレーニング・シーケンスである。第3のステージで、RNは、この2つのトレーニング・シーケンスおよび混合データXをノードに伝送する。事前符号化行列が、両トレーニング・シーケンスおよび混合データXに適用される。事前符号化行列WはT(第1のトレーニング・シーケンス)に適用され、事前符号化行列WはT(第2のトレーニング・シーケンス)に適用される。事前符号化行列Wは、混合信号XのHR1にも適用され、Wは、混合信号XのHR2にも適用される。なお、HR1は、RNがノードから受信した所望の信号である(ノードがXを送信した)ことに留意されたい。また、HR2は、RNがノードから受信した所望の信号である(ノードがXを送信した)ことに留意されたい。事前符号化行列をトレーニング・シーケンスおよび混合データに適用することに加えて、ビーム形成行列Qをトレーニング・シーケンスTに適用し、ビーム形成行列Qをトレーニング・シーケンスTに適用する。ビーム形成行列Qは、混合信号XのXにも適用され、ビーム形成行列Qは、混合信号XのXにも適用される。図5bでは、各ノードは、自身のトレーニング・シーケンスを送出(伝送、通信)し、RNも、混合信号Xに加えて事前符号化行列WおよびWを送出(伝送、通信)する。RNから送出(伝送、通信)されたトレーニング・シーケンスTには、事前符号化行列は適用されない。事前符号化行列は、混合信号Xに適用される。事前符号化行列Wは、混合信号XのHR1にも適用され、Wは、混合信号XのHR2にも適用される。なお、HR1は、RNがノードから受信した所望の信号である(ノードがXを送信した)ことに留意されたい。また、HR2は、RNがノードから受信した所望の信号である(ノードがXを送信した)ことに留意されたい。事前符号化行列を混合信号に適用することに加えて、ビーム形成行列Qを混合信号XのXにも適用し、ビーム形成行列Qを混合信号XのXにも適用する。
【0043】
ノード(ソースおよび宛先)から見た本発明の例示的な実施例のフローチャートである図6を参照すると、605で、ノードは、データを含む第1の信号(メッセージ)を伝送する。、データを含む第2の信号(メッセージ)を受信する。615で、トレーニング・シーケンスおよび第1のデータは両方とも第1のデータに適用された事前符号化行列と同様に既知であるので、610で、ノードは、第1のデータおよびトレーニング・シーケンスを除去する(取り去る)ことによって、当該ノードから伝送された第1のデータおよび別のノード(第1のデータの宛先ノードおよび第3のデータのソース・ノード)から伝送された第3のデータの両方を含む結合信号(メッセージ)であった第2の信号(メッセージ)を統合的に復号する。
【0044】
中継ノードから見た本発明の例示的な実施例のフローチャートである図7を参照すると、705で、中継ノードは、第1のチャネルの第1のタイム・スロットで、第1の信号(メッセージ)を受信する。第1の信号は、第1のデータおよび第1のトレーニング・シーケンスを含む。710で、中継ノードは、第2のチャネルの第2のタイム・スロットで、第2の信号を受信する。第2の信号は、第2のデータおよび第2のトレーニング・シーケンスを含む。715で、中継ノードは、チャネルの統合容量を最大にするように第1の事前符号化行列を決定する。720で、中継ノードは、チャネルの統合容量を最大にするように第2の事前符号化行列を決定する。725で、中継ノードは、第1の事前符号化行列を第1のデータに適用する。730で、中継ノードは、第2の事前符号化行列を第2のデータに適用する。735で、中継ノードは、事前符号化した第1のデータおよび事前符号化した第2のデータを混合(結合)することによって第3の信号を生成する。740で、中継ノードは、第1のチャネルおよび第2のチャネルの両方を介して(これらのチャネル上で)第3のデータを伝送(マルチキャスト、ブロードキャスト、通信、送出)する。
【0045】
本発明は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、特殊目的プロセッサ、またはそれらの組合せといった様々な形態で実施することができることを理解されたい。本発明は、ハードウェアとソフトウェアの組合せとして実施されることが好ましい。さらに、ソフトウェアは、プログラム記憶装置に有形に実装されたアプリケーション・プログラムとして実施されることが好ましい。アプリケーション・プログラムは、任意の適切なアーキテクチャを備える機械にアップロードし、この機械によって実行することができる。この機械は、1つまたは複数の中央処理装置(CPU)、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)および1つまたは複数の入出力(I/O)インタフェースなどのハードウェアを有するコンピュータ・プラットフォームで実施されることが好ましい。コンピュータ・プラットフォームは、オペレーティング・システムおよびマイクロ命令コードも備える。本明細書に記載する様々なプロセスおよび機能は、オペレーティング・システムを介して実行されるマイクロ命令コードの一部またはアプリケーション・プログラムの一部(あるいはそれらの組合せ)の何れかにすることができる。さらに、追加のデータ記憶装置や印刷装置など、その他の様々な周辺装置をコンピュータ・プラットフォームに接続することもできる。
【0046】
さらに、添付の図面に示すシステムの構成要素および方法のステップの一部はソフトウェアで実施することが好ましいので、システム構成要素(またはプロセス・ステップ)の間の実際の接続は、本発明をプログラミングする方法によって異なっていてもよいことも理解されたい。本明細書の教示があれば、当業者であれば、本発明の上記の実施態様または構成およびそれらと同様の実施態様または構成を思いつくことができるであろう。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図5a
図5b
図6
図7