(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の成形部材のみによる温度制御を伴う成形と第1の成形部材に対して着脱自在な第2の成形部材を取付けて行う成形とが選択的に実施可能な成形機の温度制御方法であって、
成形面を備えた第1の成形部材と、
第1の成形部材を加熱可能な加熱手段または冷却可能な冷却手段と、
第1の成形部材か加熱手段または冷却手段の少なくとも一方の温度を検出可能な第1の温度センサと、
第1の成形部材に対して着脱自在に取付けられ成形面を備えた第2の成形部材と、
第2の成形部材の温度を検出可能な第2の温度センサとが設けられ、
第1の成形部材のみにより成形を行う際には第1の温度センサを用いて前記加熱手段または冷却手段の温度制御を実施し、
第1の成形部材に第2の成形部材を取付けて成形を行う際には少なくとも第2の成形部材の温度センサの値を用いて前記加熱手段または冷却手段の温度制御を実施することを特徴とする成形機の温度制御方法。
【背景技術】
【0002】
第1の成形部材のみによる成形と、第1の成形部材に対して着脱自在な第2の成形部材を取付けて行う成形を選択的に実施可能な文献ではないが、第1の成形部材に対して着脱自在な第2の成形部材を取付けて成形を行う成形機としては特許文献1および特許文献2に記載されたものが知られている。特許文献1は、射出成形機の成形型に関するものであり、成形型とは別体に形成された標識部を入子として交換自在にすることにより、摩耗等が発生した場合でも標識部の部分のみの交換を行うことができ、生産性が高いことが記載されている。特許文献1では温度制御に関する直接の記載はないが、一般的な射出成形機の成形金型は、温調装置の側で金型に送られる温調水の温度を検出して温度制御することにより金型の温度を制御している。
【0003】
特許文献2は、プレス成形機とその型に関するものであり、加熱された型の少なくとも一方にスタンパを取付けて光学製品のプレス成形を行うことが記載されている。特許文献2には直接の記載は無いが、一般的にスタンパは光学製品に応じて多数が準備され交換自在となっている。また特許文献2は、1台のプレス装置においてスタンパを取付ける成形と取付けない成形の双方を選択的に実施する記載は無いが、発明事項である樹脂板をプレスの両面に同時に当接させる機構をスタンパを取付けないで行う成形に用いることについて記載がされている。更に特許文献2では、上下の型の流体通路に温度調整された温水、油、蒸気等が流通され型の温度が調整可能なことが記載され、加熱手段はヒータでもよいことや、スタンパに加熱手段を取付けることも記載されている。
【0004】
また特許文献3は、多段プレスを用いた炭素繊維複合成形品のプレス成形装置に関するものである。特許文献3の場合、多段プレスで成形した1次成形品を別の2次成形工程のプレス装置に送り2次成形を行う。この装置の場合、それぞれ専用のプレス装置を必要とし、大量生産には向くが多品種少量生産には向かないという問題がある。また特許文献3の
図4においては平板ではなく凹凸を有する1次成形品を成形することも示されているが着脱自在な成形部材を用いるものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1および特許文献2は、第1の成形部材に対して着脱自在な第2の成形部材を取付けて成形を行うものではあるが、第1の成形部材のみの成形も選択的に実施可能なものではないので成形のバリエーションが乏しい。そして特許文献1および特許文献2は第2の成形部材に相当する部材を取付けて成形を行う場合も、前記第2の成形部材に相当する部材に温度センサが設けられていないので、より成形品に近い部分の温度検出ができずに正確な温度制御が行えなかった。そのため成形機で成形される成形品に不良が発生したり品質が安定しないといった問題を生じていた。
【0007】
本発明では上記の問題を鑑みて、第1の成形部材のみによる成形と第1の成形部材に対して着脱自在な第2の成形部材を取付けて行う成形とが選択的に実施可能であって、1台の成形機で成形のバリエーションを確保できるともに、第2の成形部材を取付けて成形を行う際には第2の成形部材の温度制御をより正確に行える成形機および成形機の温度制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に記載の成形機は、第1の成形部材のみによる成形と第1の成形部材に対して着脱自在な第2の成形部材を取付けて行う成形とが選択的に実施可能な成形機であって、成形面を備えた第1の成形部材と、第1の成形部材を加熱可能な加熱手段または冷却可能な冷却手段と、第1の成形部材か加熱手段または冷却手段の少なくとも一方の温度を検出可能な第1の温度センサと、第1の成形部材に対して着脱自在に取付けられ成形面を備えた第2の成形部材と、第2の成形部材の温度を検出可能な第2の温度センサと、第1の成形部材のみにより成形を行う際には第1の温度センサを用いて前記加熱手段または冷却手段の温度制御を実施し、第1の成形部材に第2の成形部材を取付けて成形を行う際には少なくとも第2の温度センサの値を用いて前記加熱手段または冷却手段の温度制御を実施する温度制御機構とが備えられたことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項2に記載の成形機は、請求項1において、第2の成形部材には加熱手段または冷却手段が備えられていないことを特徴にする。
【0010】
本発明の請求項3に記載の成形機の温度制御方法は、第1の成形部材のみによる温度制御を伴う成形と第1の成形部材に対して着脱自在な第2の成形部材を取付けて行う成形とが選択的に実施可能な成形機の温度制御方法であって、成形面を備えた第1の成形部材と、第1の成形部材を加熱可能な加熱手段または冷却可能な冷却手段と、第1の成形部材か加熱手段または冷却手段の少なくとも一方の温度を検出可能な第1の温度センサと、第1の成形部材に対して着脱自在に取付けられ成形面を備えた第2の成形部材と、第2の成形部材の温度を検出可能な第2の温度センサとが設けられ、第1の成形部材のみにより成形を行う際には第1の温度センサを用いて前記加熱手段または冷却手段の温度制御を実施し、第1の成形部材に第2の成形部材を取付けて成形を行う際には少なくとも第2の成形部材の温度センサの値を用いて前記加熱手段または冷却手段の温度制御を実施することを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項4に記載の成形機の温度制御方法は、請求項3において、第1の温度センサと第2の温度センサの双方の検出値を用いて前記加熱手段または冷却手段の温度制御を実施することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の成形機は、第1の成形部材のみによる成形と第1の成形部材に対して着脱自在な第2の成形部材を取付けて行う成形とが選択的に実施可能な成形機であって、成形面を備えた第1の成形部材と、第1の成形部材を加熱可能な加熱手段または冷却可能な冷却手段と、第1の成形部材か加熱手段または冷却手段の少なくとも一方の温度を検出可能な第1の温度センサと、第1の成形部材に対して着脱自在に取付けられ成形面を備えた第2の成形部材と、第2の成形部材の温度を検出可能な第2の温度センサと、第1の成形部材のみにより成形を行う際には第1の温度センサを用いて前記加熱手段または冷却手段の温度制御を実施し、第1の成形部材に第2の成形部材を取付けて成形を行う際には少なくとも第2の温度センサの値を用いて前記加熱手段または冷却手段の温度制御を実施する温度制御機構とが備えられているので、1台の成形機で多品種の成形を行うことができ、その際正確な温度制御を行うことができる。また本発明の成形機の温度制御方法についても略同様の効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず本発明の第1の実施形態のプレス成形機11について
図1により簡単に説明する。全体の図示は省略するが、プレス成形機11は、特許文献3の
図2に示されるような多段プレスである。しかし
図1において第1の成形部材である熱板12は最低必要枚数である上下2枚しか記載せず他は図示を省略する。そして熱板12には熱板12を直接加熱する加熱手段であるヒータ13が備えられている。第1の実施形態ではヒータ13はカートリッジヒータが用いられるがヒータ13の種類や制御方式は限定されない。また加熱手段についてはヒータ13の他、蒸気や油等の熱媒により加熱を行う加熱手段や誘導加熱を用いた加熱手段でもよく、ヒータ13を含めてそれらを併用した加熱手段でもよい。またプレス装置11は、加熱手段とともに、そして熱板12の上方または下方には加圧手段である型締シリンダ(図示せず)が設けられている。プレス装置11の熱板12を含む成形部は真空チャンバ内に収容されるものでもよい。
【0015】
熱板12は所定厚みを有した鋼鉄または鋳鉄等の板であり、その表面に平坦な成形面12aを備えている。また熱板12には第1の温度センサ14(熱電対)が直接設けられており、熱板12の温度が検出可能となっている。第1の温度センサ14は温度制御装置15に接続されている。なお第1の温度センサ14の数と種類は限定されず、第1の温度センサが非接触式のもので、熱板12に直接取付けられていないものでもよい。また熱板12を加熱する加熱手段を蒸気や油といった熱媒とする場合には、熱板12の第1の温度センサ14の他、熱板へ熱媒を供給または排出する通路や熱媒の供給装置にも第1の温度センサ14を設ける場合も想定される。更に加熱手段を前記熱媒とする場合に熱媒を供給または排出する通路や熱媒の供給装置といった加熱手段のみに第1の成形部材側の第1の温度センサ14を設ける場合も想定される。従って第1の温度センサ13は、熱板12か加熱手段(または冷却手段)の少なくとも一方に設けられていればよい。
【0016】
温度制御装置15は第1の温度センサ14の信号が入力される入力部16、前記信号を用いた温度制御を行う演算処理部17、前記温度データや設定値を保存する記憶部18、温度の設定を行う設定入力部19、ヒータ13への指令信号を出力する出力部20等の各機能部が設けられている。そして出力部20とヒータ13の間にはヒータ13への通電を制御するSSR21が設けられている。
図1では下側の熱板12の温度制御装置15との接続関係のみ記載するが、上側の熱板12や各熱板も同様の構造を備える。
【0017】
次に熱板上面の成形面12aと熱板下面の成形面12aに取付けられる第2の成形部材である成形型22について記載する。成形型22は熱板12に対して着脱自在に設けられている。成形型22のうち下側の熱板12に取付けられる下型23は、取付時の上面側に凸状の成形面23aを備えており、その下面側に熱板12への当接面23bを備えている。また成形型22のうち上側の熱板12に取付けられる上型24は取付時の下面側に凹状の成形面24aを備えており、その上面側に熱板12への当接面24bを備えている。一対の下型23と上型24とからなる成形型22は、鋼鉄、鋳鉄、ステンレス鋼等の金属から構成される。ただし加圧力が一定以下で熱伝導率を良好な部材を用いる場合は、一部や全部に真ちゅうやアルミニウムを用いてもよい。そして成形品の形状によっては、成形型22は下型23か上型24のいずれか一方だけしか無いものでもよい
【0018】
更に成形型22について下型23を例に説明すると、下型23の内部の成形面23aの近傍には第2の温度センサ25(熱電対)が設置されており、下型23の温度が検出可能となっている。そして第2の温度センサ25は、前記温度制御装置15の入力部16に接続されている。上型24も同様の構造であるので説明および図示を省略する。なお第2の温度センサ25は下型23か上型24のいずれか一方に設けてもよい。また成形型22への第2の温度センサ25の取付は、成形面の表面に第2の温度センサ25を取付けてもよい。更に成形型22がスタンパのような薄板の場合は、成形型22の裏面に第2の温度センサ25を取付けてもよい。また上記において前記第2の温度センサ25とは測温部を差し、測温部が成形型22の内部または表面に設けられているものであれば、温度センサの他の部分は熱板12内や外部にあるものでもよい。なお第2の温度センサ25についても数と種類は限定されず、第2の温度センサが非接触式のもので、成形型22に直接取付けられていないものでもよい。
【0019】
また第1の実施形態では、第2の成形部材である成形型22はヒータ等の加熱手段を備えていない。そのため成形型22の構造が簡単になり製造コストと金型重量が低減できる。また成形型22の使用時に加熱手段と温度制御装置や媒体の供給装置を接続するなどの手間が軽減できる。更には加熱手段を備えないため成形型22のメンテナンスも容易になる。
【0020】
本発明においてヒータ等の加熱手段を備えない第2の成形部材の厚みについては、限定されないが、あまりに薄すぎる場合には第1の成形部材の第1の温度センサ14で成形面の今度コントロールが可能となることが多く、第2の成形部材に第2の温度センサを設ける意味が少なくなる。また第2の成形部材の厚みが厚すぎる場合には第1の成形部材の加熱手段からの加熱が第2の成形部材の成形面に良好に及ばなくなる。従って本発明が最も効果を上げるのは、第2の成形部材の当接面22bから成形面22a(当接面22bに略平行な成形面22a)までの最厚部の厚みが一例として5〜150mm、より好ましくは10〜100mmの場合である。
【0021】
これらの熱板12を加熱するヒータ13等の加熱手段、第1の温度センサ14、成形型22の第2の温度センサ25、温度制御装置15等からプレス成形機11の温度制御機構が構成される。なお本発明は、熱板12の流路に冷却水等の媒体を通水するコールドプレスにも適用ができる。その際は熱板12を冷却する冷却手段、第1の温度センサ14、成形型22の第2の温度センサ25、温度制御装置15等からプレス成形機11の温度制御機構が構成される。
【0022】
次に本発明のプレス成形機11の成形時の温度制御方法について説明する。本発明ではプリプレグや配線基板等の平板状の材料から平板状の最終成形品に成形する際は、第1の成形部材である熱板12のみを用い、加熱された熱板12,12の間で温度制御を伴うプレス成形を行う。しかし平板状または既に凹凸のある材料や溶融材料から凹凸のある成形品を成形する際は、熱板12に対応する成形型22を取付ける。このように本発明の温度制御機構は、成形型22を用いないで熱板12のみによる成形と成形型22を用いる成形を選択的に実施可能にすることにより、1台のプレス成形機11によって成形される成形品のバリエーションを広げることができる。
【0023】
成形型22を用いて成形を行う場合、成形型22の熱板12への取付方法は限定されず、図示しないボルトによる取付けの他、電磁石等により取付けるものでもよい。また熱板12と成形型22の間は何も設置しないでもよいが、一定以上熱伝導性を有するクッション材や金属板等を挿入するようにしてもよい。そして成形型22の第2の温度センサ25の信号線を温度制御装置15に接続する。
【0024】
次に温度制御機構の温度制御装置15からの指令によりSSR21を介して熱板12のヒータ13に通電を開始し、クローズドループ制御(PID制御)により熱板12と成形型22の昇温制御を開始する。その際、熱板12の第1の温度センサ14から検出される温度信号と成形型22の第2の温度センサ25から検出される温度信号の双方が入力部16から温度制御装置15に取込まれる。そして温度制御装置15の演算処理部17において、前記信号が予め設定した任意の割合で合成されヒータ13のグローズドループ制御に用いるフィードバック値が算出される。そして事前に設定された設定値に対して前記フィードバック値を比較し、過不足に応じて出力部20からSSR21へヒータ13の制御のための指令信号を出力する。
【0025】
前記のように熱板12と成形型22の温度を合成して使用するのは主に次のような理由による。熱板12の温度のみを第1の温度センサ14により測定しフィードバック制御することにより熱板12は直接加熱され設定温度に近づき、ヒータ等の加熱手段を備えていない成形型22は間接的に加熱され設定温度に近づく。しかし成形型22の温度は放熱や外乱により設定温度に対して差が生じる場合がある。本発明ではこの差を小さくする効果がある。また熱板12の第1の温度センサ14を使用せずに成形型22の第2の温度センサ25のみを使用して制御した場合、熱板12のヒータ13と第2の温度センサ25が離れていて間接的に加熱されることから応答が遅れることにより、オーバーシュートやハンチングが発生する可能性がある。本発明はこれを防止し、熱板12の温度と成形型22の温度の双方を検出してフィードバック制御に反映させることにより正確な温度制御を可能にする効果を有する。
【0026】
熱板12の温度と成形型22の温度からフィードバック値を求める際の係数は、ヒータの能力、熱板および成形型の熱容量や熱伝導率、成形型の形状や厚み、成形材料の成形前の温度、成形温度、成形品の体積等の種々の条件により影響を受けるのでそれらを勘案して決定する。よって交換される成形型22や成形品によって前記フィードバック値を求める際の係数は異なる場合もあり得る。
【0027】
そして熱板12の第1の温度センサ14と成形型22の第2の温度センサ25の検出値に基づくフィードバック値が成形開始温度に到達したら成形型22の下型23の成形面23aに成形材料Mを載置し、図示しない型締シリンダを作動させてプレス成形を開始する。プレス成形時間は成形品により相違するが加圧中も、昇圧中と同様に任意の係数により合算したフィードバック値と予め設定した温度設定値とを比較してクローズドループ制御(PID制御)による温度制御が行われる。また加圧制御についても多段制御等のクローズドループ制御(PID制御)が行われる。そして所定の加圧時間が経過すると、型締シリンダが作動して型開きがなされ、その後に成形品が取り出される。
【0028】
次に第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、射出成形機31の成形金型32が第1の成形部材に相当し、中子42A,42Bが第2の成形部材に相当する。射出成形機31は、図示を省略するが射出装置と型締装置を備えており、型締装置の固定盤33には固定金型34が取付けられている。また可動盤35には可動金型36が取付けられている。固定金型34と可動金型36の内部のキャビティ面の近傍には温調用の流路37,38がそれぞれ形成されている。そして前記流路37,38は、ホースを介してヒータ等が組み込まれた温調装置39に接続されている。温調装置39から流路37,38に送られる媒体は、一般的には温度制御された冷却水であり、その場合ホースを含む流路37と温調装置39は成形型22を冷却する冷却手段を構成する。また流路37に加熱媒体と冷却媒体を送る場合、ホースを含む流路37と温調装置39は、成形金型を加熱する加熱手段および冷却する冷却手段を構成する。更に熱硬化性樹脂用の成形金型の場合にはヒータ等の成形金型を加熱する加熱手段が備えられている。
【0029】
また第1の成形部材である可動金型36には、可動金型の温度を検出可能な第1の温度センサ40(熱電対)を備えている。そして第1の温度センサ40は、温度制御装置41に接続されている。なお第1の温度センサ40の種類と数は限定されず、固定金型34や成形金型32の外部に設けてもよい。
【0030】
そして可動金型36のキャビティ面36aには中子42Aが着脱可能に取付けられる。本実施形態では中子42Aには加熱手段または冷却手段は設けられておらず、第2の温度センサ43(熱電対)が取付けられている。そして第2の温度センサ43は、前記温度制御装置41に接続されている。なお前記第2の温度センサ43とは測温部を差し、測温部が中子42Aの内部または表面に設けられているものであれば、温度センサの他の部分は可動金型36の型内にあるものでもよい。第2の実施形態では成形金型32の流路37,38を含む温調装置39からなる冷却手段、成形金型32の温度を検出する第1の温度センサ40、中子42A等の温度を検出する第2の温度センサ43、温度制御装置41等から射出成形機31の温度制御機構が構成される。
【0031】
第2の実施形態の成形金型32では、中子42Aを取付けずに固定金型34と可動金型36だけでキャビティを形成して射出成形を行う場合と、キャビティ面を備えた中子42Aを取付けてキャビティを形成して射出成形を行う場合と、中子42Aに替えて別のキャビティ面を備えた中子42Bを取付けてキャビティを形成して射出成形を行う場合のいずれかを選択的に実施することができる。そのため一つの成形金型32で3種類の成形品を成形することが可能である。なお複数の着脱自在な中子を交換する場合、その数は限定されない。また中子は、可動金型36のキャビティ面の一部のみをカバーするものでもよい。更に中子が設けられるのは固定金型34でもよく、固定金型34と可動金型36の両方に設けてもよい。
【0032】
温度制御機構の温度制御装置41は、第1の温度センサ40および第2の温度センサ43の信号が入力される入力部44、前記信号を用いた温度制御を行う演算処理部45、前記温度データや設定値を保存する記憶部46、温度の設定を行う設定入力部47、温調装置39への指令信号を出力する出力部48等の各機能部が設けられている。なお温度制御装置41は、温調装置39内に組込まれたものでもよく射出成形機31の本体に組込まれたものでもよい。
【0033】
次に本発明の第2の実施形態の射出成形機31の温度制御機構を用いた温度制御方法について説明する。第2の実施形態では厚板を成形する際は、第1の成形部材である可動金型36と固定金型34のみを用いてキャビティを形成し射出成形を行う。この際少なくとも可動金型36の第1の温度センサ40により型温を検出し、温調装置39にて温調水の温度を制御し、型温が設定温度となるように型を直接冷却する。この際、中子42Aは冷却手段が備えられていないので可動金型36側から間接的に冷却されることになる。なお第1の温度センサ40は、金型内部の部材の温度を検出するものではなく、温調装置39内や流路38等の冷却水等温調媒体の温度を測定するものでもよい。
【0034】
次に薄板を成形する場合は、可動金型36のキャビティ面36aに中子42Aを取付けて射出成形を行う。この際は、可動金型36の第1の温度センサ40から検出される温度信号と中子42Aの温度センサ43から検出される温度信号の双方が入力部44から温度制御装置41に取込まれる。そして温度制御装置41の演算処理部45において、前記信号を予め設定した任意の割合の係数で合成してフィードバック値が算出される。そして事前に設定した設定値に対して前記フィードバック値を比較し、過不足に応じて出力部48から温調装置39へ温調媒体の温度制御のための指令信号を出力する。また別のキャビティ面を備えた中子42Bに交換された際も同様の制御を行う。
【0035】
この際のフィードバック値の算出は、成形金型32の流路38等が設けられた部分の熱容量、中子42A,B等の熱容量、厚み、熱伝導率、および表面形状、温調装置39の能力、加熱筒温度、成形材料の種類、成形品の体積等の種々の条件により影響を受けるのでそれらを勘案して決定される。よって前記係数は一定でない場合もあり得る。
【0036】
そして中子42Aの取付けられたキャビティ内で溶融樹脂が冷却すると可動金型36が型開きされ、図示しないエジェクタ装置により成形品が突き出され、図示しない取出装置により成形金型32の外部に取り出される。
【0037】
なお上記の第1の実施形態および第2の実施形態の温度制御機構を用いた温度制御方法は、それぞれ第1の成形部材(熱板12または成形金型32)と第2の成形部材(成形型22または中子42A)の温度センサ(14と25、或いは40と43)の値を加算してフィードバック値を求めるものである。しかし第1の実施形態および第2の実施形態ともに、第2の成形部材(成形型22または中子42A)の温度センサ43のみにより第1の成形部材(熱板12または成形金型32)の加熱手段または冷却手段(ヒータ13や温度装置39)の制御を行う温度制御方法であってもよい。
【0038】
更には第1の実施形態および第2の実施形態ともに温度制御機構は、第2の成形部材(成形型22または中子42A)に加熱手段または冷却手段(ヒータや温調用の流路等)が設けられ、第2の成形部材を直接加熱または冷却が可能なものでもよい。その場合、第2の成形部材の取付けて行う成形時には、第1の成形部材の第1の温度センサと第2の成形部材の第2の温度センサの検出値を加算したフィードバック値により、第1の成形部材と第2の成形部材の双方の加熱手段または冷却手段の制御が行われる。
【0039】
更にまた第1の実施形態の第2の成形部材である成形型22は、成形材料を載置する形または成形材料を挟む形で成形材料とともに搬入されるものでもよい。その場合成形型22の温度検出は、これに限定されるものではないが、非接触式の温度センサにより検出されるようにすることが好ましい。
【0040】
本発明については、一々列挙はしないが、上記した本実施形態のものに限定されず、当業者が本発明の趣旨を踏まえて変更を加えたものについても、適用されることは言うまでもないことである。本発明が対象とする成形機には金属成形を行うダイカスト成形機、中空成形機、下型に溶融樹脂を供給してプレスするスタンピング成形機等も含まれる。