(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5971838
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】圧電発振器
(51)【国際特許分類】
H03B 5/08 20060101AFI20160804BHJP
H03B 5/12 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
H03B5/08 A
H03B5/12 C
H03B5/08 C
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-21536(P2012-21536)
(22)【出願日】2012年2月3日
(65)【公開番号】特開2013-162259(P2013-162259A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2014年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】細田 朋之
【審査官】
石川 雄太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−024436(JP,A)
【文献】
特開2008−177800(JP,A)
【文献】
特開2001−326532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B 5/00−5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタを備えた圧電発振器であって、
前記トランジスタのゲートには並列接続のコイルと第1のコンデンサとを有するLC共振器が接続され、
前記トランジスタのドレインには電源電圧が印加され、
前記トランジスタのソースには反射素子としての圧電共振器が接続され、
前記トランジスタのドレイン側に出力端子が設けられ、
前記LC共振器に並列にバリキャップダイオードが接続され、
前記バリキャップダイオードのカソード側が前記トランジスタのゲートに接続されると共に、前記カソード側に時定数回路を介して電源電圧が印加されていることを特徴とする圧電発振器。
【請求項2】
バリキャップダイオードのアノード側に第2のコンデンサが接続され、前記バリキャップダイオードのカソード側に第3のコンデンサが接続され、
前記バリキャップダイオードのカソード側と前記第3のコンデンサとの間の点に時定数回路が接続されたことを特徴とする請求項1記載の圧電発振器。
【請求項3】
トランジスタを備えた圧電発振器であって、
前記トランジスタのゲートには並列接続のコイルと第1のコンデンサとを有するLC共振器が接続され、
前記トランジスタのドレインには電源電圧が印加され、
前記トランジスタのソースには反射素子としての圧電共振器が接続され、
前記トランジスタのドレイン側に出力端子が設けられ、
前記LC共振器において、前記第1のコンデンサに直列にバリキャップダイオードが接続され、
前記バリキャップダイオードのカソード側が前記トランジスタのゲートに接続されると共に、前記カソード側に時定数回路を介して電源電圧が印加されていることを特徴とする圧電発振器。
【請求項4】
LC共振器において、バリキャップダイオードのカソード側に第4のコンデンサが接続され、
前記バリキャップダイオードのカソード側と前記第4のコンデンサとの間の点に時定数回路が接続されたことを特徴とする請求項3記載の圧電発振器。
【請求項5】
時定数回路が、バリキャップダイオードのカソード側に一端が接続すると共に他端が電源電圧に接続する抵抗と、
前記抵抗と前記バリキャップダイオードのカソード側との間の点に一端が接続すると共に他端が接地する第5のコンデンサとを有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の圧電発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射素子を用いた圧電発振器に係り、特に、反射素子の反射特性を用いて高周波化、周波数安定化を図ると共に、反射素子の特性に応じて安定して発振させることができる圧電発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
圧電発振器では、コルピッツ型、ピアース型等の回路がある。
従来の発振器は、共振器の位相を制御して発振させる回路を用いて、その周波数を制御していた。
従来の圧電発振器について、コルピッツ回路の水晶発振回路とインバータ回路の水晶発振回路について説明する。
【0003】
[コルピッツ型水晶発振回路:
図5]
従来のコルピッツ型水晶発振回路について
図5を参照しながら説明する。
図5は、従来のコルピッツ型水晶発振回路の回路図である。
従来のコルピッツ型水晶発振回路は、
図5に示すように、水晶振動子Xの一端が発振用のトランジスタTrのベースに接続し、水晶振動子Xの他端が接地している。
そして、トランジスタTrのコレクタには電源電圧Vが抵抗Rcを介して印加されると共にコンデンサを介して出力端子(OUTPUT)が設けられている。
また、トランジスタTrのエミッタは抵抗REを介して接地している。
【0004】
トランジスタTrのベースには、電源電圧Vが抵抗RAを介して印加され、当該ベースは抵抗RBを介して接地している。
更に当該ベースには容量C1,C2の直列接続の一端が接続し、他端が接地され、容量C1と容量C2の間の点がエミッタに接続している。
以上の構成の従来のコルピッツ型水晶発振回路で発振動作が行われる。
【0005】
[インバータ型水晶発振回路:
図6]
従来のインバータ型水晶発振回路について
図6を参照しながら説明する。
図6は、従来のインバータ型水晶発振回路の回路図である。
従来のインバータ型水晶発振回路は、
図6に示すように、インバータICの入力側に水晶振動子Xの一端が接続し、インバータICの出力側に水晶振動子Xの他端が接続し、更に入力側と出力側が抵抗RFを介して接続している。
【0006】
入力側には容量Cgの一端が接続し、他端が接地され、出力側には容量Cdの一端が接続され、他端が接地され、また、出力側には出力端子(OUTPUT)が設けられている。
以上の構成の従来のインバータ型水晶発振回路で発振動作が行われる。
【0007】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開平10−112612号公報「高周波発振回路」(株式会社村田製作所、特許文献1)、特開平05−304175号公報「電界効果トランジスタおよび高周波信号発振器および周波数変換回路」(日本電気株式会社、特許文献2)、特開平10−242755号公報「マイクロ波発振器」(株式会社村田製作所、特許文献3)、特開2006−42010号公報「高周波発振回路、高周波機器、および高周波発振回路の特性調整方法」(株式会社村田製作所、特許文献4)、特開2001−085947号公報「コルピッツ水晶発振回路」(東洋通信機株式会社、特許文献5)、特開2002−246842号公報「マイクロ波発振器」(アルプス電気株式会社、特許文献6)がある。
【0008】
特許文献1には、高周波発振回路において、出力フィルタで発振条件を設定することが示されている。
特許文献2には、帯域反射型発振器において、2つ以上のゲートパッド(ゲート端子)を備え、発振条件と出力整合条件を分けて設定することが記載されている。
【0009】
特許文献3には、マイクロ波発振器において、マイクロストリップライン上にトランジスタを実装し、誘電体同軸共振器の内導体を、引出電極を介してマイクロストリップラインの所定位置に近接させることが記載されている。
特許文献4には、高周波発振回路において、共振回路と増幅回路を接続するFETのドレイン端側に特性調整用のオープンスタブを設け、トリミング又は誘電体チップの付加により特性を調整することが記載されている。
【0010】
特許文献5には、水晶発振器において、エミッタ側に圧電発振器を接続して、SCカットの水晶振動子の出力を帰還し、コンデンサを介してベースに接続することで発振器同時の負性抵抗を確保することが記載されている。
特許文献6には、マイクロ波発振器において、誘電体共振器をバラクタダイオードを用いて制御して、ベース側に入力することが記載されている。
更に、非特許文献1には、反射型の発振器の例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10−112612号公報
【特許文献2】特開平05−304175号公報
【特許文献3】特開平10−242755号公報
【特許文献4】特開2006−42010号公報
【特許文献5】特開2001−085947号公報
【特許文献6】特開2002−246842号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】INTERNATIONAL STANDARD, Waveguide type dielectric resonators Part 2: Guidelines for oscillator and filter applications, IEC 61338-2, First edition 2004-05, International Electrotechnical Commission.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、従来の圧電発振器では、周波数が高周波になるに従い、その波長が短くなることから、プリント基板の線路長、共振子からパッケージまでの線路長、共振子搭載時のずれなどを考慮する必要があり、またこれらにより線路長がずれることから、所望の周波数からずれてしまい、周波数を調整するために位相調整がセンシティブとなり、高安定化させることが難しくなっているという問題点があった。
【0014】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、反射素子の反射特性を用いて高周波化、周波数安定化を図ることができ、更に反射素子の特性に応じて起動条件を緩和して安定して発振させることができる圧電発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、トランジスタを備えた圧電発振器であって、トランジスタのゲートには並列接続のコイルと第1のコンデンサとを有するLC共振器が接続され、トランジスタのドレインには電源電圧が印加され、トランジスタのソースには反射素子としての圧電共振器が接続され、トランジスタのドレイン側に出力端子が設けられ、LC共振器に並列にバリキャップダイオードが接続され、バリキャップダイオードのカソード側がトランジスタのゲートに接続されると共に、カソード側に時定数回路を介して電源電圧が印加されていることを特徴としている。
【0016】
また、本発明は、上記圧電発振器において、バリキャップダイオードのアノード側に第2のコンデンサが接続され、バリキャップダイオードのカソード側に第3のコンデンサが接続され、バリキャップダイオードのカソード側と第3のコンデンサとの間の点に時定数回路が接続されたことを特徴としている。
【0017】
また、上記従来例の問題点を解決するための本発明は、トランジスタを備えた圧電発振器であって、トランジスタのゲートには並列接続のコイルと第1のコンデンサとを有するLC共振器が接続され、トランジスタのドレインには電源電圧が印加され、トランジスタのソースには反射素子としての圧電共振器が接続され、トランジスタのドレイン側に出力端子が設けられ、LC共振器
において、第1のコンデンサに直列にバリキャップダイオードが接続され、バリキャップダイオードのカソード側がトランジスタのゲートに接続されると共に、カソード側に時定数回路を介して電源電圧が印加されていることを特徴としている。
【0018】
また、本発明は、上記圧電発振器において、
LC共振器における、バリキャップダイオードのカソード側に第4のコンデンサが接続され、バリキャップダイオードのカソード側と前記第4のコンデンサとの間の点に時定数回路が接続されたことを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、上記圧電発振器において、時定数回路が、バリキャップダイオードのカソード側に一端が接続すると共に他端が電源電圧に接続する抵抗と、抵抗とバリキャップダイオードのカソード側との間の点に一端が接続すると共に他端が接地する第5のコンデンサとを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、トランジスタを備えた圧電発振器であって、トランジスタのゲートには並列接続のコイルと第1のコンデンサとを有するLC共振器が接続され、トランジスタのドレインには電源電圧が印加され、トランジスタのソースには反射素子としての圧電共振器が接続され、トランジスタのドレイン側に出力端子が設けられ、LC共振器に並列にバリキャップダイオードが接続され、バリキャップダイオードのカソード側がトランジスタのゲートに接続されると共に、カソード側に時定数回路を介して電源電圧が印加されている圧電発振器としているので、反射素子の反射特性を用いて高周波化、周波数安定化を図ると共に、圧電共振器の特性に応じてLC共振器の容量を広い範囲で可変し、起動条件を緩和して安定して発振させることができ、種々の圧電共振器に対応可能として汎用性を向上させることができる効果がある。
【0021】
また、本発明によれば、トランジスタを備えた圧電発振器であって、トランジスタのゲートには並列接続のコイルと第1のコンデンサとを有するLC共振器が接続され、トランジスタのドレインには電源電圧が印加され、トランジスタのソースには反射素子としての圧電共振器が接続され、トランジスタのドレイン側に出力端子が設けられ、LC共振器
において、第1のコンデンサに直列にバリキャップダイオードが接続され、バリキャップダイオードのカソード側がトランジスタのゲートに接続されると共に、カソード側に時定数回路を介して電源電圧が印加されている圧電発振器としているので、反射素子の反射特性を用いて高周波化、周波数安定化を図ると共に、圧電共振器の特性に応じてLC共振器の容量を特定の範囲で可変し、起動条件を緩和して安定して発振させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る圧電発振器の回路図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態に係る圧電発振器の回路図である。
【
図3】本発明の第3の実施形態に係る圧電発振器の回路図である。
【
図4】本発明の第4の実施形態に係る圧電発振器の回路図である。
【
図5】従来のコルピッツ型水晶発振回路の回路図である。
【
図6】従来のインバータ型水晶発振回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る圧電発振器は、トランジスタのゲートにLC共振回路が接続され、ドレインに出力端子が接続され、当該出力端子側に電源電圧が印加され、ソースに反射素子が接続され、更に、LC共振回路に並列にバリキャップダイオードが接続され、バリキャップダイオードが時定数回路を介して電源電圧に接続されたものであり、反射素子の反射特性を用いて高周波化、周波数安定化を図ると共に、バリキャップダイオードに印加される電圧を時定数に応じて徐々に変化させて、反射素子の特性に応じてLC共振回路の共振周波数をより広い範囲で調整可能として、安定して発振させることができ、また、種々の反射素子に対応可能とし、汎用性を向上させるものである。
【0024】
また、本発明の実施の形態に係る圧電発振器は、トランジスタのゲートにLC共振回路が接続され、ドレインに出力端子が接続され、当該出力端子側に電源電圧が印加され、ソースに反射素子が接続され、更に、LC共振回路のコンデンサに直列にバリキャップダイオードが接続され、バリキャップダイオードが時定数回路を介して電源電圧に接続されたものであり、反射素子の反射特性を用いて高周波化、周波数安定化を図ると共に、バリキャップダイオードに印加される電圧を時定数に応じて徐々に変化させて、反射素子の特性に応じてLC共振回路の共振周波数を特定の範囲で細かく調整可能として、安定して発振させることができるものである。
【0025】
[第1の実施形態の圧電発振器:
図1]
本発明の第1の実施形態に係る圧電発振器について
図1を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る圧電発振器の回路図である。
本発明の第1の実施形態に係る圧電発振器(第1の圧電発振器)は、
図1に示すように、基本的な構成部分として、トランジスタ1と、コイル(L1)2と、コンデンサ(C1)3と、インピーダンスとなる抵抗(R2)4と、反射素子の圧電共振器5と、抵抗(R3)6と、出力端子(OUTPUT)10とを備え、更に、第1の圧電発振器の特徴部分として、バリキャップダイオード7と、抵抗(R4)8と、コンデンサ(C2)9とを備えている。
【0026】
[実施の形態の圧電発振器の基本的な構成部分]
まず、第1の圧電発振器の基本的な構成部分について説明する。尚、この基本的な構成部分は、後述する第2〜第4の実施形態においても共通である。
コイル(L1)2とコンデンサ(C1)3とは並列に接続されて、LC共振器を構成しており、周波数の発振動作を行う。コンデンサ(C1)3は、請求項に記載した第1のコンデンサに相当している。
【0027】
トランジスタ1は、電界効果型トランジスタ(FET; Field Effect Transistor)であり、発振周波数を増幅する。トランジスタ1のドレイン(D)には出力端子10が接続され、ソース(S)には反射素子の圧電共振器5が接続され、ゲート(G)には、コイル(L1)2とコンデンサ(C1)3とから成るLC共振器の一端が接続されている。
LC共振器の他端は、抵抗(R2)4を介して接地されている。
また、出力端子7側に電源電圧が抵抗(R3)6を介して印加されるようになっている。
【0028】
尚、トランジスタ1は、FETトランジスタの代わりにNPN型トランジスタとしてもよい。この場合、NPN型トランジスタのゲートはFETトランジスタのベース、ドレインはコレクタ、ソースはエミッタとして動作するものである。
【0029】
反射素子の圧電共振器5は、反射特性を用いて共振させるものである。
具体的には、圧電共振器5を反射素子として共振させることで、高周波にて周波数を安定化させることができる。
【0030】
上述した基本的な構成部分においては、コイル(L1)2とコンデンサ(C1)3とから成るLC共振器での発振周波数と、反射素子である圧電共振器5の共振周波数とが等しくなると発振が起動される。
【0031】
発振周波数は、LC共振器を構成するコイル(L1)2、コンデンサ(C1)3の素子定数や、圧電共振器5の特性によって決まり、通常は、実装される圧電共振器5の共振特性に合わせてLC共振器の素子を適切に選択することにより構成される。このような構成とすることで、高周波に対応可能とし、周波数の安定化を図るものである。
【0032】
しかしながら、基本的な構成部分のみの場合、圧電共振器5の特性によってLC共振器の共振周波数帯が固定され、更に高周波になると、一層狭い周波数帯での発振となって起動条件が非常に厳しくなり、調整が困難である。
【0033】
[第1の圧電発振器の特徴部分]
そこで、第1の圧電発振器では、上述した基本的な構成部分に、更に、コイル(L1)2とコンデンサ(C1)3とから成るLC共振器に並列に容量を可変するバリキャップダイオード7を接続し、更に、バリキャップダイオード7と電源電圧(Vcc)との間に、抵抗(R4)8とコンデンサ(C2)9とから成る時定数回路を備えている。
つまり、バリキャップダイオード7は、時定数回路を介して電源電圧(Vcc)が印加されるものである。
【0034】
時定数回路においては、抵抗(R4)8の一端が電源電圧(Vcc)に接続され、他端がコンデンサ(C2)9の一端に接続され、コンデンサ(C2)9の他端が接地されている。抵抗(R4)8、コンデンサ(C2)9は、請求項における抵抗、第5のコンデンサにそれぞれ相当している。
そして、抵抗(R4)8の他端とのコンデンサ(C2)9の一端との間の点にバリキャップダイオード7のカソード側及びLC共振器の一端が接続している。
【0035】
時定数回路は、電源投入時にバリキャップダイオード7に印加される電圧をその時定数に応じて徐々に増加させるものであり、それに伴ってLC共振器のコンデンサ部の容量を一定の範囲内で変化させるものである。時定数回路の特性は、抵抗(R4)8とコンデンサ(C2)9の素子定数によって決まり、所望の発振器出力が得られるよう適宜選択される。
これにより、LC共振器の共振特性をある程度の幅で変化させることができ、圧電共振器5の特性に応じた容量になったときに特定の周波数で発振する。
【0036】
図1の構成例においては、バリキャップダイオード7と並列にコンデンサ(C1)3が接続されていることから、バリキャップダイオード7に掛かる電圧変化を大きくすることができ、可変できる容量を広く取ることができるものである。
電源投入後、バリキャップダイオード7に印加される電圧が変化することで容量が変化し、コイル(L1)2、コンデンサ(C1)3、バリキャップダイオード7により共振した周波数が、圧電共振器5の共振周波数となった場合に発振状態となる。
すなわち、第1の圧電発振器では、高周波になると非常に厳しくなる発振の起動条件を緩和して、調整を容易にし、より広い周波数範囲で安定して発振させることができるものである。
【0037】
特に、第1の圧電発振器では、LC共振器の容量の可変範囲が広いため、特性の異なる圧電共振器5が実装された場合でも、バリキャップダイオード7及び時定数回路によりLC共振器の容量を調整して異なる周波数での発振を起動することができ、より広い周波数範囲で安定した発振を提供することができるものであり、種々の圧電共振器5を用いて発振器を構成することができ、汎用性を向上させるものである。
【0038】
[第2の実施形態の圧電発振器:
図2]
次に、本発明の第2の実施形態に係る圧電発振器について
図2を参照しながら説明する。
図2は、本発明の第2の実施形態に係る圧電発振器の回路図である。
図2に示すように、本発明の第2の実施形態に係る圧電発振器(第2の圧電発振器)は、LC共振器において、コンデンサ(C1)3に直列にバリキャップダイオード7が接続され、バリキャップダイオードのカソード側に第1の圧電発振器と同様の時定数回路が接続されている。
他の構成部分は、第1の圧電発振器と同様であり、反射素子の反射特性を用いて高周波化、周波数安定化を図ることができるものである。
【0039】
第2の圧電発振器では、LC共振器の容量は、直列接続のコンデンサ(C1)3とバリキャップダイオード7により決まり、ある程度の範囲で容量を可変することができるものであるが、容量を可変する範囲は、第1及び第2の圧電発振器よりも狭くなる。
【0040】
それでも、バリキャップダイオード7及び時定数回路を備えない場合に比べて、発振起動条件を緩和することができ、特に、LC共振器の周波数を特定の狭い周波数範囲で細かく調整することが可能となり、圧電共振器5の特性に応じた調整を容易にし、安定した発振周波数を出力することができるものである。
【0041】
[第3の実施形態の圧電発振器:
図3]
次に、本発明の第3の実施形態に係る圧電発振器について
図3を参照しながら説明する。
図3は、本発明の第3の実施形態に係る圧電発振器の回路図である。
図3に示すように、本発明の第3の実施形態に係る圧電発振器(第3の圧電発振器)は、第2の圧電発振器とほぼ同様の構成であり、LC共振器において、バリキャップダイオード7のカソード側に、更にコンデンサ(C5)13が接続され、バリキャップダイオード7のカソードとコンデンサ(C5)13との間の点に時定数回路が接続された構成となっている。
コンデンサ(C5)13は、請求項に記載した第4のコンデンサに相当している。
【0042】
第3の圧電発振器においては、第2の圧電発振器よりLC共振器における容量可変範囲をより細かく設計することができ、第2の圧電発振器と同様に発振起動条件を緩和して、LC共振器の周波数を特定の狭い周波数範囲で細かく調整することが可能となり、圧電共振器5の特性に応じた調整を容易にし、安定した発振周波数を出力することができるものである。
【0043】
[第4の実施形態の圧電発振器:
図4]
次に、本発明の第4の実施形態に係る圧電発振器について
図4を参照しながら説明する。
図4は、本発明の第4の実施形態に係る圧電発振器の回路図である。
図4に示すように、本発明の第4の実施形態に係る圧電発振器(第4の圧電発振器)は、コイル(L1)2とコンデンサ(C1)3とから成るLC共振器に並列にバリキャップダイオード7が接続されており、更に、バリキャップダイオード7のアノード側にコンデンサ(C3)11が接続され、カソード側にコンデンサ(C4)12が接続されている。
コンデンサ(C3)11、コンデンサ(C4)12は、それぞれ、請求項に記載した第2のコンデンサ、第3のコンデンサに相当している。
【0044】
そして、バリキャップダイオード7のカソード側とコンデンサ(C4)12との間の点に、第3の圧電発振器と同様の時定数回路が接続され、バリキャップダイオード7に時定数回路を介して電源電圧が印加されるようになっている。
これにより、バリキャップダイオード7に印加される電圧が除所に増加し、LC共振器の容量が圧電共振器5の特性に応じた容量となったところで発振を起動でき、LC共振器の発振周波数を特定の範囲内で可変することができるものである。
尚、それ以外の第4の圧電発振器の基本的な構成部分は、上述した第1〜第3の圧電発振器と同様であるため、説明は省略する。
【0045】
第4の圧電発振器においても、第1〜第3の圧電発振器と同様に、反射素子の反射特性を用いて高周波化、周波数安定化を図ると共に、LC共振器の容量を特定の範囲で可変として起動条件を緩和し、LC共振器をより広い周波数範囲で発振させることができ、圧電共振器5の特性に応じた調整を容易にし、異なる特性の圧電共振器5が実装されても安定した発振周波数を出力することができるものである。
尚、第4の圧電発振器におけるLC共振器の容量可変範囲は、コイル(L1)2と並列でバリキャップダイオード7と直列になるように、コンデンサ(C3)11とコンデンサ(C4)12が2つ接続されていることから、容量値はこの3つの合成容量となり、第1の圧電発振器と比べ容量可変範囲は狭くなる。
【0046】
[実施の形態の効果]
本発明の第1の実施形態に係る圧電発振器によれば、トランジスタ1のゲートにコイル(L1)2とコンデンサ(C1)3が並列接続されたLC共振回路が接続され、ドレインに出力端子10が接続され、当該出力端子10側に電源電圧(Vcc)が印加され、ソースに反射素子としての圧電共振器5が接続され、更に、LC共振器に並列にバリキャップダイオード7が接続され、バリキャップダイオード7のカソード側に、抵抗(R4)8及びコンデンサ(C2)9から成る時定数回路を介して電源電圧(Vcc)が印加される構成としているので、反射素子の反射特性を用いて高周波化、周波数安定化を図ると共に、LC共振器の容量を広い範囲で可変し、またバリキャップダイオード7に印加される電圧を徐々に増加させることで、圧電共振器5の特性に応じた起動条件を緩和して安定した発振を得ることができ、更に、種々の圧電共振器5に対応可能として汎用性を向上させることができる効果がある。
【0047】
また、本発明の第2の実施形態に係る圧電発振器によれば、コイル(L1)2とコンデンサ(C1)3が並列接続されたLC共振器の、コンデンサ(C1)3に直列にバリキャップダイオード7が接続され、バリキャップダイオード7のカソード側に時定数回路が接続された構成であり、LC共振器の容量を特定の範囲で可変し、更にバリキャップダイオード7に印加される電圧を徐々に増加させて、圧電共振器5の特性に応じた起動条件を緩和して安定した発振を得ることができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、反射素子の反射特性を用いて高周波化、周波数安定化を図ることができると共に、反射素子の特性に応じて安定して発振させることができる圧電発振器に適している。
【符号の説明】
【0049】
1...トランジスタ、 2...コイル(L1)、 3...コンデンサ(C1)、 4...抵抗(R2)、 5...圧電共振器、 6...抵抗(R3)、 7...バリキャップダイオード、 8...抵抗(R4)、 9...コンデンサ(C2)、 10...出力端子