【課題を解決するための手段】
【0008】
第
1の本発明のエアゾール缶胴用アルミニウム合金板の製造方法は、Mgの含有量を1.1質量%以下としたJIS A3104合金の鋳塊を均質化処理した後、熱間圧延を行い、その後、冷間圧延を行うとともに、少なくとも1回の中間焼鈍を連続焼鈍炉を使用して到達温度505〜565℃で行い、最後の中間焼鈍後、最終板厚に至るまでの最終冷間圧延における圧延率を8〜18%とすることを特徴とする。
【0009】
第
2の本発明のエアゾール缶胴用アルミニウム合金板の製造方法は、前記第
1の本発明において、前記最終冷間圧延後に安定化焼鈍を行うことを特徴とする。
【0010】
第
3の本発明のエアゾール缶胴用アルミニウム合金板の製造方法は、前記第
2の本発明において、前記安定化焼鈍は、190〜210℃×1〜4時間の条件で行うことを特徴とする。
【0011】
本発明のエアゾール缶胴用アルミニウム合金板の成分などの限定理由について説明する。なお、以下の含有量はいずれも質量%で示される。
【0012】
JIS A3104合金
本発明のエアゾール缶胴用アルミニウム合金板を構成するアルミニウム合金は、JIS A3104合金のうち、Mg含有量を1.1%以下とするものである。
JIS A3104合金は、Si:0.6%以下、Fe:0.8%以下、Cu:0.05〜0.25%、Mn:0.8〜1.4%、Mg:0.8〜1.3%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなる組成を有するものである。
また、JIS A3104合金は、Znを0.25%以下、Tiを0.1%以下で含有してもよく、所望により、Ga、V、Ni、B、Zrをそれぞれ0.05%以下含有してもよく、不可避不純物を個々に0.05%以下、総量で0.15%以下含有してもよい。
【0013】
Mg:1.1%以下
Mgは、アルミニウム合金の強度を向上させるのに必要な元素であるが、JIS A3104合金でMgの含有量が1.1質量%を超えると加工性が劣化し、その結果、耳率が高くなる。このため、Mgの含有量は、上記のように1.1質量%以下に制限する。これにより、JIS A3104アルミニウム合金であっても、アルミニウム合金板の加工性が良好なものとなり、耳率を低く抑制することができる。
なお、同様の理由により、Mgの含有量は、0.85%以上であるのが望ましく、0.95%以下であるのが望ましい。
【0014】
板厚:0.6〜0.8mm
本発明のエアゾール缶胴用アルミニウム合金板は、板厚が0.6〜0.8mmのものに限定される。なお、高い耐圧性を確保する観点からは、アルミニウム合金板の板厚は、0.65mm以上であることが望ましく、更に、0.7mm以上が望ましい。
【0015】
耳率:2%以下
上記板厚において耳率2%以下を達成することで、軽量化とDI加工性とを両立することができる。本発明における耳率は、深絞り試験において、絞り比1.67のときの山高さの平均と谷高さの平均との差を、谷高さの平均で割って求めた比率(%)で表す。
【0016】
次に、本発明の製造方法における条件の限定理由について説明する。
【0017】
均質化処理
上記組成のアルミニウム合金鋳塊に均質化処理することで、析出物のα−Al(Fe,Mn)Si相への変態を促進し、絞り成形性を向上する。
なお、均質化処理の条件は、本発明としては特定のものに限定されるものではないが、例えば540〜580℃×5〜10時間が好適なものとして示される。
【0018】
熱間圧延
熱間圧延は常法により行うことができ、本発明としては特定の条件に限定されるものではないが、好適な条件としては、熱間圧延性及びその後の冷間圧延性を考慮すると、300℃以上の熱間圧延仕上り温度が好ましい。
なお、アルミニウム合金板の熱間圧延による仕上がり板厚は、3〜8mmであることが望ましい。これは、3mm未満では、冷間圧延率が低くなり十分な機械的特性が得られなくなり、また、8mmを超えると、冷間圧延率が高くなり耳率が悪化するためである。
また、熱間圧延後の冷間圧延率が70%超となるように熱間圧延での圧延率を定めるのが望ましい。
【0019】
冷間圧延
冷間圧延は、常法により行うことができるが、冷間圧延前または冷間圧延の途中で少なくとも1回の中間焼鈍を行うものが望ましい。冷間圧延の途中でのみ中間焼鈍を行う場合、最初の中間焼鈍前の冷間圧延率は70%超であるのが望ましい。この冷間圧延率を70%超にすることで、最終板および製缶後の機械的性質が向上し、高い耐圧性が確保できる。
なお、最終の中間焼鈍時後、最終板厚に至るまでの最終冷間圧延における冷間圧延率は8〜18%に限定する。
この冷間圧延率が8%未満であると、アルミニウム合金板の強度が不足する。一方、最終冷延率が18%超になると、耳率が高くなる。このため、上記冷間圧延率を規定する。なお、同様の理由により、上記冷間圧延率は10%以上であることが望ましく、14%以下であることが望ましい。
【0020】
中間焼鈍
上記冷間圧延前または冷間圧延の途中に、少なくとも1回行われる中間焼鈍は、連続焼鈍炉を使用して到達温度505〜565℃で行う。
中間焼鈍の際の到達温度を505℃以上にすることにより、溶体化効果を期待することができ、中間焼鈍の際の到達温度が565℃を超えると材料が溶融するおそれがあるため、中間焼鈍の際の到達温度は、565℃以下にする。
なお、同様の理由により、中間焼鈍の際の到達温度は、530℃以上であることが好ましく、550℃以下であることが好ましい。
また、中間焼鈍では、溶体化効果を得るために、昇温の際は常温から設定到達温度まで、冷却の際は最大到達温度から100℃まで10分以下とすることが望ましい。
【0021】
安定化焼鈍
上記最終冷間圧延後に、安定化焼鈍を行うようにしてもよい。安定化焼鈍を行うことにより、アルミニウム合金板に対してDI加工を実施する際に底抜けの発生を低減することができる。
安定化焼鈍の条件は、190〜210℃×1〜4時間の条件を好適なものとして示すことができる。焼鈍温度190℃未満では底抜け性の改善効果が得られず、210℃を超えると耐圧性が低下する。