特許第5971855号(P5971855)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5971855
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】振動ローラ車両
(51)【国際特許分類】
   E01C 19/26 20060101AFI20160804BHJP
【FI】
   E01C19/26
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-258723(P2012-258723)
(22)【出願日】2012年11月27日
(65)【公開番号】特開2014-105470(P2014-105470A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】飯田 勉
(72)【発明者】
【氏名】竹内 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】阿部 浩
(72)【発明者】
【氏名】早坂 喜憲
(72)【発明者】
【氏名】眞下 哉葵
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−001771(JP,A)
【文献】 特開2000−336609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/00−19/52
E02F 9/16
B60R 3/00−5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前部車体と、該前部車体に対し水平方向に屈曲可能に連結された後部車体と、該後部車体に設けられたアクスルと、該アクスルを構成するモータハウジングに収容された油圧モータと、該油圧モータの左右両側に互いに離間して配置され上記油圧モータにより回転駆動されるタイヤと、上記後部車体の上記タイヤの直上付近に配設され上部に給水口を備えた貯水タンクと、該貯水タンクに貯留された水を上記タイヤ又は路面の少なくとも一方に散水する散水手段とを備えた振動ローラ車両において、
上記左右のタイヤの間に形成された間隙内に、上記油圧モータに接続された油圧ホースを保護するためのカバーを配設し、該間隙内における上記アクスルの左右方向の中央部分に、ステップを配設すると共に、該ステップを上記カバーに固定したことを特徴とする振動ローラ車両。
【請求項2】
上記ステップは、その後端を上記タイヤの最外周円内に位置させたことを特徴とする請求項1記載の振動ローラ車両。
【請求項3】
上記カバーは、上記後部車体又は上記油圧モータを収容するモータハウジングに取り付けられ、該カバーに上記ステップが固定されたことを特徴とする請求項1または2記載の振動ローラ車両。
【請求項4】
上記ステップは、基端を中心として直立姿勢の格納位置と水平姿勢の使用位置との間で回動可能に構成され、上記使用位置では後端を上記タイヤの最外周円よりも突出させることを特徴とする請求項1または3記載の振動ローラ車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面の舗装工事に用いられる振動ローラ車両に関し、より詳しくは、転圧ローラや転圧後の路面への散水に使用する水を貯留する貯水タンクのメンテナンス用ステップに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の振動ローラ車両は、路面の舗装工事等で舗装材を締め固める(以下、この動作を転圧という)ために使用されている。車体の前側や後側には車輪を兼ねた転圧ローラが備えられ、アスファルト混合物等の舗装材を敷きつめた路面を走行しながら、転圧ローラによって舗装材の締め固めを行っている。舗装工事の際には、転圧ローラへの舗装材の付着防止等を目的とした転圧ローラへの散水、或いは転圧後の路面の冷却硬化促進を目的とした路面への散水が行われ、これらの用途に使用する多量の水は振動ローラ車両の車体上に設けられた貯水タンクに貯留されている。
貯水タンクに貯留された水は、配管を通じて車体上の所定位置に設置されたノズルに供給されて転圧ローラや路面への散水に供されるため、車体上での貯水タンクの設置場所は、例えばパワートレイン等の機械的な構成に比較して自由度が高い。このため、通常はパワートレイン等のレイアウトを優先して決定し、余ったスペースから貯水タンクの設置位置が決定されており、例えば特許文献1に記載された振動ローラ車両では、車体の後部転圧ローラの直上に貯水タンクが設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−1771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、その図1に示されるように、後部転圧ローラの直上に設置されることで貯水タンクが車体上のかなり上部に位置し、水を補給し難いという弊害が生じている。即ち、貯水タンクに補給される水としては、水道水、河川や池の水等が利用されるが、何れにしても水の補給は、水道蛇口や汲み上げポンプからホースを通じて送られる水を貯水タンクの給水口に流し入れることで実施される。
【0005】
ところが、貯水タンク自体の設置位置が高い上に、給水口は貯水タンクの最上部に設けられるため、作業者にとって給水口は非常に高い位置にある。特に小柄な作業者では給水口を直接的に目視することが困難、若しくは目視できたとしても給水口にホースの先端が辛うじて届く程度であり、ホースから出た水を給水口にうまく定めることができなかった。従って、従来から水の補給作業を行い易くする抜本的な対策が要望されていた。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、貯水タンクが車体の高い位置に設置されている場合であっても、水の補給作業を容易に実施することができる振動ローラ車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、前部車体と、前部車体に対し水平方向に屈曲可能に連結された後部車体と、後部車体に設けられたアクスルと、アクスルを構成するモータハウジングに収容された油圧モータと、油圧モータの左右両側に互いに離間して配置され油圧モータにより回転駆動されるタイヤと、後部車体の上記タイヤの直上付近に配設され、上部に給水口を備えた貯水タンクと、貯水タンクに貯留された水をタイヤ又は路面の少なくとも一方に散水する散水手段とを備えた振動ローラ車両において、左右のタイヤの間に形成された間隙内に、油圧モータに接続された油圧ホースを保護するためのカバーを配設し、間隙内におけるアクスルの左右方向の中央部分に、ステップを配設すると共に、ステップをカバーに固定したものである。
請求項2の発明は、請求項1において、ステップが、その後端を転圧ローラの最外周円内に位置させたものである。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、カバーが、車体又は油圧モータを収容するモータハウジングに取り付けられ、カバーにステップが固定されたものである。
請求項の発明は、請求項1または3において、ステップが、基端を中心として直立姿勢の格納位置と水平姿勢の使用位置との間で回動可能に構成され、使用位置では後端を転圧ローラの最外周円よりも突出させるものである。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように請求項1の発明の振動ローラ車両によれば、油圧モータの左右両側に互いに離間して転圧ローラを配置し、これらの転圧ローラの直上付近に散水用の貯水タンクを配設する一方、左右の転圧ローラ間に形成された間隙内にステップを配設して、間隙内に配設された油圧ホースを保護するカバーにステップを固定した。
従って、貯水タンクに水を補給する際に、作業者はステップ上に足を乗せて立つことにより立ち位置を高めることができ、水の補給作業を容易に実施することができる。また、既存のカバーにステップを固定するだけの簡単な構成により実施することができる。
請求項2の発明の振動ローラ車両によれば、請求項1に加えて、ステップの後端を転圧ローラの最外周円内に位置させた。このため、振動ローラ車両の取回しを悪化させることなく良好な作業性を維持することができる。
【0009】
請求項3の発明の振動ローラ車両によれば、請求項1又は2に加えて、車体又はモータハウジングに取り付けられたカバーにステップを固定した。従って、ステップはカバーを介して十分な強度を有する車体やモータハウジングに固定されるため、作業者の全体重を受けても何ら問題なく支えることができる。
請求項の発明の振動ローラ車両によれば、請求項1または3に加えて、ステップを基端を中心として格納位置と使用位置との間で回動可能とし、使用位置では後端を転圧ローラの最外周円よりも突出させるようにした。従って、作業者がステップに足を掛け易くなるため、水の補給作業を一層容易に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態の振動ローラ車両を示す正面図である。
図2】同じく振動ローラ車両を後方より見た側面図である。
図3】同じく振動ローラ車両を上方より見た平面図である。
図4】ステップの取付状態を示す図2のIV−IV線断面図である。
図5】同じくステップの取付状態を示す斜め下方より見た斜視図である。
図6】同じくステップの取付状態を示す斜め上方より見た斜視図である。
図7】第2実施形態のステップの取付状態を示す部分断面図である。
図8】同じくステップの取付状態を示す斜め下方より見た斜視図である。
図9】同じくステップの取付状態を示す斜め上方より見た斜視図である。
図10】ステップの支持機構を示す図7の拡大断面図である。
図11】同じくステップの支持機構を示す図10のX1−X1線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
以下、本発明を具体化した振動ローラ車両の第1実施形態を説明する。
図1は本実施形態の振動ローラ車両を示す正面図、図2は同じく振動ローラ車両を後方より見た側面図,図3は同じく振動ローラ車両を上方より見た平面図である。
振動ローラ車両の車体は、前部転圧ローラ1を備えた前部車体2と後部転圧ローラ3(タイヤ)を備えた後部車体4とから構成されている。これらの前部車体2と後部車体4とは、センタピン5を介して水平方向に屈曲可能なアーティキュレート式に連結され、相互に屈曲することで車両の旋回を行うようになっている。前部転圧ローラ1はほぼ車幅と対応する長さを有する金属ドラムから構成され、前部車体2から下方に延設された左右一対の支持アーム6により回転可能に支持されている。
又、後部転圧ローラ3は左右2本ずつ計4本のゴムタイヤから構成され、後部車体4に設けられたアクスル7により回転可能に支持されている。結果として本実施形態の振動ローラ車両は、前部転圧ローラ1を金属ドラムとし、後部転圧ローラ3をゴムタイヤとした所謂コンバインド型として構成されている。
【0012】
図4はアクスル7に対するステップの取付状態を示す図2のIV−IV線断面図、図5は同じくステップの取付状態を示す斜め下方より見た斜視図、図6は同じくステップの取付状態を示す斜め上方より見た斜視図である。
アクスル7は左右の後部転圧ローラ3の間に配設されており、後部転圧ローラ3を支持しながら回転駆動する左右一対の油圧モータ10、これらの油圧モータ10を収容するモータハウジング11等の部材から構成されている。図4に示すように、モータハウジング11は断面略C字状をなして左右方向に延設され、左右両側方及び後方に向けて開口している。モータハウジング11の外周面の上下にはそれぞれフランジ部11aが突設され、これらのフランジ部11aが後部車体4側に設けられた上下一対の取付ベース4aにそれぞれボルト12で固定されることにより、モータハウジング11が後部車体4の所定位置に取り付けられている。
【0013】
モータハウジング11内には上記一対の油圧モータ10が左右に併設された状態で収容され、各油圧モータ10に設けられたハブユニット10aは、モータハウジング11の左右の開口部から左方及び右方に突出して上記後部転圧ローラ3がそれぞれ固定・支持されている。各油圧モータ10には油圧ホース13の一端が接続され、油圧ホース13はモータハウジング11の後方に面した開口部を介して後部車体4内に引き込まれて前部車体2側に案内され、その他端を前部車体2内に収容された油圧ポンプに接続されている。
図示はしないが油圧ポンプはエンジンにより駆動され、油圧ポンプから吐出された作動油がバルブの切換に応じて油圧ホース13を経て各油圧モータ10に供給される。作動油の供給状態に応じて油圧モータ10により後部転圧ローラ3が正転方向又は逆転方向に駆動され、これにより振動ローラ車両が任意の速度で前進または後退するようになっている。尚、詳細は説明しないが油圧ポンプからの作動油は、前部転圧ローラ1の回転駆動や路面の転圧のための前部転圧ローラ1の加振にも利用される。
【0014】
図2,5に示すように、左右の後部転圧ローラ3は所定距離だけ離間し、油圧モータ10からの油圧ホース13を後部車体4内に引き込むための間隙Sが形成されている。このため、アクスル7の大部分は左右の後部転圧ローラ3内(リム内)に位置しているものの、アクスル7の左右方向の中央部分、例えば油圧ホース13の接続箇所の周辺等は左右の後部転圧ローラ3の間隙Sを介して後方に露出している。そこで、露出部分の保護を目的として、後部転圧ローラ3間にカバー14が配設されている。
カバー14は金属板材を折曲加工して製作され、全体として中央部14aから上側傾斜部14b及び下側傾斜部14cを上下方向に延設した長方形状をなしている。カバー14の中央部14aは剛性確保のために左右両側部14dを車両前方に折曲させた断面コ字状をなし、その中央部14aに対して上側傾斜部14b及び下側傾斜部14cは、モータハウジング11を取り囲むように車両前方に向けて鈍角状に折曲されている。カバー14の上側傾斜部14bの上端は後部車体4側に設けられた取付ベース4bにボルト15で固定され、カバー14の下側傾斜部14cの下端はモータハウジング11側に設けられた取付ベース11bにボルト15で固定されている。
これにより左右の後部転圧ローラ3間にカバー14が固定されて、油圧モータ10に対する油圧ホース13の接続箇所等を後方から隠蔽している。ボルト15,16の脱着によりカバー14は取外可能であり、油圧モータ10や油圧ホース13のメンテナンスはカバー14を取り外して実施される。
【0015】
後部車体4上の前側位置にはステアリング18を備えた操作台19が設置され、操作台19の後側には座席20が設置されている。座席20に着座した作業者はステアリング18及び操作台両脇の前後進レバー17や足下のブレーキペダルを操作し、その操作に応じて振動ローラ車両の走行や前部転圧ローラ1の加振が行われる。
座席20の後側位置に相当する後部車体4上の最後部には貯水タンク21が設置され、この貯水タンク21はほぼ車幅と対応する幅を有している。貯水タンク21には、前部及び後部転圧ローラ1,3の近傍に配設されたローラ散水ノズル22、及び後部車体4の後端に配設された図示しない路面散水ノズルが配管及び給水ポンプを介して接続されている。貯水タンク21には水が貯留され、舗装作業時には前部及び後部転圧ローラ1,3への舗装材の付着防止、或いは転圧後の舗装材の冷却硬化促進等を目的として、貯水タンク21内の水が給水ポンプにより各散水ノズル22に供給されて前部及び後部転圧ローラ1,3や路面へと散水される。
【0016】
貯水タンク21上の左右方向中央には水位表示用のレベルゲージ25が設けられ、レベルゲージ25の左側には脱着可能なキャップ26aを備えた給水口26が設けられている。
図2などから明らかなように、貯水タンク21は後部転圧ローラ3の直上に設置されており、必然的に貯水タンク21の給水口26やレベルゲージ25は高所に位置しているため、水の補給作業やレベルゲージ25による貯水量の確認が行い難いという問題がある。その対策として、給水口26までのアクセス性を向上させるべく、貯水タンク21の直下にメンテナンス用のステップを設けることも考えられるが、車体後方に突出したステップは振動ローラ車両の取回しを悪化させるという弊害を生じてしまう。
【0017】
ここで本発明者は、本実施形態のようなコンバインド型の振動ローラ車両では、油圧モータ10から後部車体4内への油圧ホース13の引き込みのために左右の後部転圧ローラ3間に間隙Sが形成されており、この間隙Sが何ら利用されていない点に着目した。即ち、このデッドスペースである間隙S内にステップを配設すれば、周辺部品に影響することなくステップを設置でき、しかも、間隙S内への配設によりステップは車体後方に突出し難くなるため車両の取回しを悪化させる虞もなくなる。そこで、本実施形態では、左右の後部転圧ローラ3の間隙S内にステップ28を配設しており、以下、当該ステップ28の取付構造について詳述する。
ステップ28は帯状の金属板材を折曲加工して製作され、左右方向に延びる後側辺29の両端から左側辺30及び右側辺31をそれぞれ前方に向けて延設したコ字状をなしている。左側辺30と右側辺31とは相対向し、その前後方向の中間付近が連結部32を介して溶接により相互に連結されている。
【0018】
ステップ28はカバー14の後方位置に水平姿勢で配設され、左側辺30及び右側辺31の前端をカバー14の中央部14aの下部の左右両側部14dにそれぞれ溶接されている。これによりステップ28は、図4に示すように後部転圧ローラ3の回転中心付近の高さでカバー14に対して固定され、その後端は車両後方に指向している。左右の後部転圧ローラ3の間隙Sは一般的な靴の幅よりも十分に広いため、作業者が間隙S内に片足を差し入れてステップ28上に立つことが容易に可能となっている。
このときのステップ28は作業者の全体重を受けるが、上記のようにカバー14を介して十分な強度を有する後部車体4及びモータハウジング11に固定されているため、何ら問題なく作業者を支え続ける。
【0019】
そして、本実施形態では、ステップ28の後端が後部転圧ローラ3の最外周円内に位置するように、ステップ28の前後長さが設定されている。従って、ステップ28の後端は間隙S内から後方に突出せず、振動ローラ車両の全長は全く変化していない。但し、ステップ28の構成や大きさについては上記に限ることはない。例えばステップ28の形状を変更したり、或いはステップ28の後端を後部転圧ローラ3の最外周円から後方に若干突出させたりしてもよい。
【0020】
次に、以上のように構成された本実施形態の振動ローラ車両において貯水タンク21への水の補給作業やレベルゲージ25による貯水量の確認を実施する場合について説明する。
上記したように舗装工事の際にはローラ散水ノズル22及び路面散水ノズルからローラ1,3や転圧後の路面への散水を実施するため、工事に先立って貯水タンク21には水が補給される。水の補給はホースからの水を貯水タンク21の給水口26に流し入れることで行われるが、図1,2から明らかなように、貯水タンク21自体が後部転圧ローラ3上の高所に設置されている上に、給水口26やレベルゲージ25は貯水タンク21の最上部に設けられている。
【0021】
図4に示すように本実施形態では、給水口26やレベルゲージ25の直下にステップ28が位置しており、ステップ28の高さは後部転圧ローラ3の回転中心付近となっている。このため、作業者がステップ28上に片足を乗せて立つと、後部転圧ローラ3の半径相当分だけ立ち位置を高めることができる。よって、作業者はホースからの水を貯水タンク21の給水口26に流し入れたり、或いはレベルゲージ25により貯水量を確認したりする作業を容易に実施できる。
一方で、ステップ28の後端が後部転圧ローラ3の最外周円内に位置しているため、振動ローラ車両の取回しは何ら悪化せず良好な作業性を維持することができる。
また、以上のように既存のカバー14にステップ28を溶接しただけの非常に簡単な構成である。しかも、デッドスペースである左右の後部転圧ローラ3の間隙Sにステップ28が配設されるため、周辺部品への影響を防止できる。例えばステップ28を設置しても、近接位置にあるローラ散水ノズル22等の設置状態を変更する必要は一切ない。よって、振動ローラ車両の仕様を大幅に変更することなく低コストで実施することができる。
【0022】
[第2実施形態]
次に、本発明を別の振動ローラ車両に具体化した第2実施形態を説明する。
本実施形態の振動ローラ車両は第1実施形態で述べたものと基本的な構成は同一であり、相違点はステップ41の構造にある。そこで、共通する構成の箇所には同一部材番号を付して説明を省略し、相違点を重点的に説明する。
図7は本実施形態のステップ41の取付状態を示す部分断面図、図8は同じくステップ41の取付状態を示す斜め下方より見た斜視図、図9は同じくステップ41の取付状態を示す斜め上方より見た斜視図、図10はステップ41の支持機構を示す図7の拡大断面図、図11は同じくステップ41の支持機構を示す図10のX1−X1線断面図である。
【0023】
本実施形態のステップ41は非使用時に格納可能な可動式として構成されている。第1実施形態の車両と同じく左右の後部転圧ローラ3の間隙Sには、油圧ホース13の接続箇所等を保護するカバー14が取り付けられている。カバー14の全体的な形状は第1実施形態と同様であるが、カバー14にステップ28が直接的に溶接された第1実施形態に対し、本実施形態のカバー14にはステップ41を回動可能に支持する金属板材からなるブラケット42が溶接されている。ブラケット42は左右方向に延びる長方形状をなし、カバー14の中央部14aの下部に重ねられた状態で溶接されている。ブラケット42の左右両端は軸受部43として車両後方に折曲され、各軸受部43には軸受孔43aが貫設されている。
【0024】
第1実施形態のステップ28と同じく、ステップ41は折曲形成により後側辺44及び左右両側辺45,46からなるコ字状をなし、左側辺45及び右側辺46の基端(第1実施形態の前端に相当)をブラケット42の左右両側に位置させた姿勢で配設されている。ステップ41の左側辺45及び右側辺46にはブラケット42の軸受孔43aと一致するようにボルト孔45a,46aが貫設され、これらのボルト孔45a,46a及び軸受孔43aには左方よりボルト47が挿入されて、右方に突出したボルト47の先端にナット48が螺合している。
これによりステップ41は基端をブラケット42にボルト47を介して連結されて、基端を中心として先端側を回動し得るようになっている。ステップ41は、上方に回動した図10に実線で示す直立姿勢(以下、格納位置と称する)ではカバー14に当接して回動規制され、下方に回動した図10に仮想線で示す水平姿勢(以下、使用位置と称する)では基端のストッパ部49をカバー14の表面に当接させて回動規制される。よって、これらの格納位置と使用位置との間でステップ41が任意に回動し得るようになっている。
【0025】
ステップ41の左側辺45と右側辺46とを連結する連結部50は一対設けられ、一方の連結部50には固定面50aが直角に折曲されてボルト孔50bが貫設されている。ステップ41が格納位置にあるときにボルト孔50bと一致するようにカバー14には透孔51が貫設され、カバー14の前面には透孔51に対応してナット52が溶接されている。そして、格納位置にステップ41を回動させるとボルト孔50bがカバー14の透孔51と一致し、後方よりボルト53をボルト孔50b及び透孔51を介してナット52に螺合させることにより、ステップ41を格納位置に保持できるようになっている。
本実施形態では、使用位置にあるときのステップ41の後端が後部転圧ローラ3の最外周円よりも後方に突出するようになっている。但し、ステップ41を格納位置に回動させれば、ステップ41全体が後部転圧ローラ3の最外周円内に収まって後方への突出が防止される。
【0026】
次に、以上のように構成された本実施形態の振動ローラ車両において貯水タンク21への水の補給作業やレベルゲージ25による貯水量の確認を実施する場合について説明する。
舗装工事中等の通常時には、ボルト53によりステップ41を格納位置に保持して使用位置への回動を規制している。このため、ステップ41の後端が後部転圧ローラ3の最外周円よりも後方に突出することが防止され、振動ローラ車両の取回しは何ら悪化せず良好な作業性を維持することができる。
【0027】
一方、貯水タンク21に水を補給する際には、ボルト53を取り外してステップ41を使用位置まで回動させる。ストッパ部49がカバー14の表面に当接してステップ41は水平姿勢の使用位置に保持される。このため、作業者はステップ41上に片足を乗せて立った姿勢で、貯水タンク21への水の補給やレベルゲージ25による貯水量の確認等の作業を容易に実施することができる。そして、作業の終了後にステップ41を格納位置まで回動させた上でボルト53により固定すれば、上記のように舗装工事等を何ら問題なく実施することができる。
そして、通常時にはステップ41を格納位置に保持する構成のため、第1実施形態のようにステップ41の長さを後部転圧ローラ3の最外周円内に制限する必要がない。このためより長いステップ41を設けて、使用位置ではステップ41の後端を後部転圧ローラ3の最外周円よりも後方に突出させることができる。結果として作業者はステップ41に足を掛け易くなるため、水の補給作業を一層容易に実施することができる。
【0028】
以上で実施の形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施の形態に限定されるものではない。例えば上記各実施の形態では、後部転圧ローラ3を左右2本ずつ計4本のゴムタイヤとしたが、左右の後部転圧ローラ3の間隙S内にステップ28,41を配設した構成であれば、後部転圧ローラ3の構成はこれに限るものではない。例えば後部転圧ローラ3を左右1本ずつ計2本のゴムタイヤとしてもよい。
又、上記第2実施形態では、ステップ41を水平姿勢の使用位置から上方に回動させて格納したが、下方に回動させて格納するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0029】
2 前部車体
3 後部転圧ローラ(タイヤ)
4 後部車体
10 油圧モータ
11 モータハウジング
13 油圧ホース
14 カバー
21 貯水タンク
22 ローラ散水ノズル(散水手段)
26 給水口
28,41 ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11