特許第5971870号(P5971870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5971870基板処理装置、半導体装置の製造方法及び記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5971870
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】基板処理装置、半導体装置の製造方法及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/455 20060101AFI20160804BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   C23C16/455
   H01L21/31 C
【請求項の数】20
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-69339(P2014-69339)
(22)【出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2015-127453(P2015-127453A)
(43)【公開日】2015年7月9日
【審査請求日】2014年3月31日
(31)【優先権主張番号】特願2013-248056(P2013-248056)
(32)【優先日】2013年11月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(72)【発明者】
【氏名】西堂 周平
【審査官】 吉野 涼
(56)【参考文献】
【文献】 特表平07−507843(JP,A)
【文献】 特表2009−524244(JP,A)
【文献】 特開2009−088473(JP,A)
【文献】 特開2011−151356(JP,A)
【文献】 特開2002−155364(JP,A)
【文献】 特開2008−240158(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/115170(WO,A1)
【文献】 特開2000−150330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00−16/56
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が載置される載置面を有する載置部を有する処理室と、
ガスが供給される孔が設けられた天井壁と、下流側の壁として構成される分散板とで構成されるバッファ室と、
前記天井壁から連続して構成されると共に、前記分散板と対向する面に突起または溝を有する凸構造が設けられたガスガイドと、
前記処理室の上流に設けられ、前記バッファ室と前記ガスガイドを有するシャワーヘッドと、
前記バッファ室を介して、少なくとも二種類のガスを交互に前記処理室に供給するガス供給系と、
前記ガス供給系からガスを供給する間、前記バッファ室を第1の温度で加熱し、更に前記処理室を前記第1の温度よりも高い第2の温度で加熱する加熱部と、
を有する基板処理装置。
【請求項2】
前記加熱部は、前記載置部に内包された第1の加熱部と、前記バッファ室の上流に設けられた第2の加熱部とを少なくとも有する請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記第2の加熱部は前記シャワーヘッドの天井壁に設けられる請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記加熱部は、更にバッファ室の下流に設けられた第3の加熱部とを有する請求項2又は請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記第3の加熱部は、前記シャワーヘッドの分散板に設けられる請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記ガスを処理室に供給する間、前記第1の加熱部温度よりも前記第2の加熱部温度を低くするよう制御する請求項2又は請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記シャワーヘッドには共通ガス供給管が接続され、前記少なくとも二種類のガスのうち、第1のガスを供給する第1ガス供給系及び第2ガス供給系は前記ガス供給管に接続される請求項1から請求項6のうち、いずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記第2の加熱部は、前記バッファ室雰囲気の温度を供給されるガスの副生成物が付着する温度以上であり、供給ガスの熱分解温度未満もしくは前記少なくとも二種類のガスが反応し膜を形成する際の反応温度未満とするよう制御される請求項2から請求項6のうち、いずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記第1の加熱部と前記第3の加熱部は、前記処理室の雰囲気の温度が反応温度以上となるよう制御される請求項4又は請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記第3の加熱部は、前記載置部に載置される基板表面と並行な加熱面を有する請求項4又は請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記共通ガス供給管の外周に第4の加熱部が設けられ、内周には凸構造が設けられる請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記第3の加熱部は、分散板に設けられた分散孔と重ならない位置に配される請求項4または請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記ガスガイドに設けられた前記凸構造は、前記天井壁に設けられた孔から供給されたガスの接触面積が増加するよう構成される請求項1から請求項12のうち、いずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記ガスガイドに設けられた前記凸構造は、前記天井壁に設けられた孔を中心として放射状に設けられる請求項1から請求項13のうち、いずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記ガスガイドに設けられた前記凸構造は、前記天井壁に設けられた孔を中心として円周状に設けられる請求項1から請求項13のうち、いずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記ガスガイドに設けられた前記凸構造は、前記天井壁に設けられた孔を起点として渦巻き状に設けられる請求項1から請求項13のうち、いずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項17】
前記ガスガイドに設けられた前記凸構造は、独立した点状態で構成される請求項1から請求項13のうち、いずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項18】
基板を、処理室に内包された載置部の載置面に載置する基板載置工程と、
ガスが供給される孔が設けられた天井壁と、下流側の壁として構成される分散板とで構成されるバッファ室と、前記天井壁から連続して構成されると共に、前記分散板と対向する面に突起または溝を有する凸構造が設けられたガスガイドと、前記処理室の上流に設けられ前記バッファ室と前記ガスガイドを有するシャワーヘッドのうち、前記バッファ室を第1の温度で加熱し、更に前記処理室を前記第1の温度よりも高い第2の温度で加熱すると共に、少なくとも二種類のガスを、前記シャワーヘッドを介して交互に前記処理室に供給し、前記基板上に膜を形成する成膜工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項19】
基板を、処理室に内包された載置部の載置面に載置する手順と、
ガスが供給される孔が設けられた天井壁と、下流側の壁として構成される分散板とで構成されるバッファ室と、前記天井壁から連続して構成されると共に、前記分散板と対向する面に突起または溝を有する凸構造が設けられたガスガイドと、前記処理室の上流に設けられ前記バッファ室と前記ガスガイドを有するシャワーヘッドのうち、前記バッファ室を第1の温度で加熱し、更に前記処理室を前記第1の温度よりも高い温度で加熱すると共に、
少なくとも二種類のガスを、前記シャワーヘッドを介して交互に前記処理室に供給し、前記基板上に膜を形成する手順と、
を行うよう、コントローラにより基板処理装置を制御するためのプログラムを格納する記録媒体。
【請求項20】
基板を、処理室に内包された載置部の載置面に載置する手順と、
ガスが供給される孔が設けられた天井壁と、下流側の壁として構成される分散板とで構成されるバッファ室と、前記天井壁から連続して構成されると共に、前記分散板と対向する面に突起または溝を有する凸構造が設けられたガスガイドと、前記処理室の上流に設けられ前記バッファ室と前記ガスガイドを有するシャワーヘッドのうち、前記バッファ室を第1の温度で加熱し、更に前記処理室を前記第1の温度よりも高い温度で加熱すると共に、少なくとも二種類のガスを、前記シャワーヘッドを介して交互に前記処理室に供給し、前記基板上に膜を形成する手順と、
を行うよう、コントローラにより基板処理装置を制御するためのプログラム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラッシュメモリ等の半導体装置は高集積化の傾向にある。それに伴い、パターンサイズが著しく微細化されている。これらのパターンを形成する際、製造工程の一工程として、基板に酸化処理や窒化処理等の所定の処理を行う工程が実施される場合がある。
【0003】
上記パターンを形成する方法の一つとして、回路間に溝を形成し、そこにライナー膜や配線を形成する工程が存在する。この溝は、近年の微細化に伴い、高いアスペクト比となるよう構成されている。
【0004】
ライナー膜等を形成するに際しては、溝の上部側面、中部側面、下部側面、底部においても膜厚にばらつきが無い良好なステップカバレッジの膜を形成することが求められている。良好なステップカバレッジの膜とすることで、半導体デバイスの特性を溝間で均一とすることができ、それにより半導体デバイスの特性ばらつきを抑制することができるためである。
【0005】
この高いアスペクト比の溝を処理するために、ガスを加熱して処理することや、ガスをプラズマ状態として処理することが試みられたが、良好なステップカバレッジを有する膜を形成することは困難であった。
【0006】
上記膜を形成する方法として、少なくとも二種類の処理ガスを交互に供給し、それらのガスを反応させ膜を形成する交互供給法がある。交互供給法は、原料ガスと反応ガスを基板表面で反応させる方法であるが、この方法では原料ガスと反応ガスを基板表面以外で反応させないために、各ガスを供給する間に残ガスを除去するためのパージ工程を有することが望ましい。
【0007】
ところで、半導体デバイスの歩留まりを向上させるためには、基板表面における膜特性を均一とする必要があることから、薄膜を形成する際、基板面内に対してガスを均一に供給する。それを実現するために、基板の処理面から均一にガスを供給することが可能な枚葉装置が開発されている。この枚葉装置では、ガスをより均一に供給するために、例えば基板上にバッファ空間を有するシャワーヘッドを設けている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この枚葉装置を用いて膜を形成する際は、少なくとも二種類のガスを基板上方もしくは基板表面で反応させることで膜を形成している。ところが、この装置の場合、二種類のガスを、バッファ空間を介して供給するため、バッファ空間内で残留ガスが反応し、バッファ空間内に副生成物が発生してしまうことが考えられる。発生した副生成物は、基板の特性に悪影響を及ぼすことがあった。更には、処理工程数が多いために生産性が低いという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明の目的は、生産性の高く、且つ特性の良い膜を形成可能な基板処理装置及び半導体装置の製造方法を提供するものである。
【0010】
本発明の一態様によれば、基板が載置される載置面を有する載置部を有する処理室と、バッファ室を有すると共に、前記処理室の上流に設けられるシャワーヘッドと、前記シャワーヘッドのバッファ室を介して、少なくとも二種類のガスを交互に前記処理室に供給するガス供給系と、前記ガス供給系からガスを供給する間、バッファ室を第1の温度で加熱し、更に前記処理室を前記第1の温度よりも高い第2の温度で加熱する加熱部と、を有する基板処理装置が提供される。
【0011】
さらに、基板を、処理室に内包された載置部の載置面に載置する基板載置工程と、シャワーヘッドのバッファ室を第1の温度で加熱し、更に前記処理室を前記第1の温度よりも高い第2の温度で加熱すると共に、少なくとも二種類のガスを、前記シャワーヘッドを介して交互に前記処理室に供給し、前記基板上に膜を形成する成膜工程と、を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、バッファ空間を有するシャワーヘッドを用いた枚葉装置においても、バッファ空間の副生成物発生を抑制可能な基板処理装置及び半導体装置の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る基板処理装置の断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る基板処理工程を示すフロー図である。
図3】本発明の実施形態に係る成膜工程のガス供給タイミングを説明する説明図である。
図4】本発明の実施形態に係る成膜工程を示すフロー図である。
図5】本発明の実施形態に係るシャワーヘッドの排気工程を示すフロー図である。
図6】本発明の実施形態に係る分散板加熱部を説明する説明図である。
図7】本発明の実施形態に係る共通ガス供給管の断面図である。
図8】本発明の実施形態に係るガスガイドの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<本発明の第1の実施形態>
(1)基板処理装置の構成
本発明の第1実施形態に係る基板処理装置について、図1から図3を用いて以下に説明する。図1は、本実施形態に係る基板処理装置の断面図である。
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に即して説明する。
【0016】
(1)基板処理装置の構成
まず、本発明の一実施形態に係る基板処理装置について説明する。
【0017】
本実施形態に係る処理装置100について説明する。基板処理装置100は、薄膜を形成する装置であり、図1に示されているように、枚葉式基板処理装置として構成されている。
【0018】
図1に示すとおり、基板処理装置100は処理容器202を備えている。処理容器202は、例えば横断面が円形であり扁平な密閉容器として構成されている。また、処理容器202の側壁や底壁は、例えばアルミニウム(Al)やステンレス(SUS)などの金属材料により構成されている。処理容器202内には、基板としてのシリコンウエハ等のウエハ200を処理する処理室201、搬送空間203が形成されている。処理容器202は、上部容器202aと下部容器202b、天井部であるシャワーヘッド230で構成される。上部容器202aと下部容器202bの間には仕切り板204が設けられる。上部処理容器202a及びシャワーヘッド230に囲まれた空間であって、仕切り板204よりも上方の空間を処理室空間と呼び、下部容器202bに囲まれた空間であって、仕切り板よりも下方の空間を搬送空間と呼ぶ。上部処理容器202a及びシャワーヘッド230で構成され、処理空間を囲む構成を処理室201と呼ぶ。更には、搬送空間を囲む構成を処理室内搬送室203と呼ぶ。各構造の間には、処理容器202内を機密にするためのOリング208が設けられている。
【0019】
下部容器202bの側面には、ゲートバルブ205に隣接した基板搬入出口206が設けられており、ウエハ200は基板搬入出口206を介して図示しない搬送室との間を移動する。下部容器202bの底部には、リフトピン207が複数設けられている。更に、下部容器202bは接地されている。
【0020】
処理室201内には、ウエハ200を支持する基板支持部(基板載置部とも呼ぶ)210が位置するよう構成される。基板支持部210は、ウエハ200を載置する載置面211と、載置面211を表面に持つ載置台212、基板載置台212に内包された、ウエハを加熱する加熱源としての基板載置台加熱部213(第1の加熱部とも呼ぶ)を主に有する。基板載置台212には、リフトピン207が貫通する貫通孔214が、リフトピン207と対応する位置にそれぞれ設けられている。
【0021】
基板載置台212はシャフト217によって支持される。シャフト217は、処理容器202の底部を貫通しており、更には処理容器202の外部で昇降機構218に接続されている。昇降機構218を作動させてシャフト217及び支持台212を昇降させることにより、基板載置面211上に載置されるウエハ200を昇降させることが可能となっている。なお、シャフト217下端部の周囲はベローズ219により覆われており、処理容器202内は気密に保持されている。
【0022】
基板載置台212は、ウエハ200の搬送時には、基板載置面211が基板搬入出口206の位置(ウエハ搬送位置)となるよう基板支持台まで下降し、ウエハ200の処理時には図1で示されるように、ウエハ200が処理室201内の処理位置(ウエハ処理位置)まで上昇する。
【0023】
具体的には、基板載置台212をウエハ搬送位置まで下降させた時には、リフトピン207の上端部が基板載置面211の上面から突出して、リフトピン207がウエハ200を下方から支持するようになっている。また、基板載置台212をウエハ処理位置まで上昇させたときには、リフトピン207は基板載置面211の上面から埋没して、基板載置面211がウエハ200を下方から支持するようになっている。なお、リフトピン207は、ウエハ200と直接触れるため、例えば、石英やアルミナなどの材質で形成することが望ましい。
【0024】
(ガス導入口)
処理室201の上部に設けられる後述のシャワーヘッド230の上面(天井壁)には、処理室201内に各種ガスを供給するためのガス導入口241が設けられている。ガス導入口241に接続されるガス供給系の構成については後述する。
【0025】
(シャワーヘッド)
ガス導入口241と処理室201との間には、処理室201に連通するガス分散機構としてのシャワーヘッド230が設けられている。即ち、処理室201の上流方向にシャワーヘッド230が設けられている。ガス導入口241はシャワーヘッド230の蓋231に接続されている。ガス導入口241から導入されるガスは蓋231に設けられた孔231aを介してシャワーヘッド230のバッファ室232内のバッファ空間に供給される。即ち、蓋231は、バッファ室232から見て、ガス供給方向の上流に設けられている。バッファ室232は、蓋231の下端部と後述する分散板234の上端で形成される。即ち、分散板234は、バッファ室から見て、ガス供給方向下流(ここでは処理室方向)に設けられている。
【0026】
シャワーヘッドの蓋231は導電性/熱伝導性のある金属で形成され、バッファ室232内のバッファ空間又は処理室201内でプラズマを生成するための電極として用いられる。蓋231と上部容器202aとの間には絶縁ブロック233が設けられ、蓋231と上部容器202aの間を絶縁している。更に、シャワーヘッドの蓋231には、蓋加熱部231c(第2の加熱部とも呼ぶ)が設けられており、バッファ室232の雰囲気や後述するガスガイド235を加熱する。
【0027】
シャワーヘッド230は、バッファ室232内の空間と処理室201の処理空間との間に、ガス導入口241から導入されるガスを分散させるための分散板234を備えている。分散板234には、複数の貫通孔234aが設けられている。分散板234は、基板載置面211と対向するように配置されている。分散板は、貫通孔234aが設けられた凸状部と、凸状部の周囲に設けられたフランジ部を有し、フランジ部は絶縁ブロック233に支持されている。更には、貫通孔234aの周囲に、円周状の分散板ヒータ234b(第3の加熱部とも呼ぶ)を有する。分散板ヒータ234bは分散板を加熱し、バッファ室232内の雰囲気や処理室201の雰囲気の温度に影響を与える。
【0028】
ところで、分散板234と基板の間には処理室の空間が存在するために、ウエハ200は分散板234から輻射によって間接的に加熱される。一方、ウエハ200は基板載置台212に載置されているため、基板載置台加熱部213は伝導によってウエハ200を直接的に加熱する。従ってウエハ200を加熱する際、基板載置台加熱部213による加熱は分散板加熱部234bによる加熱と比べて支配的である。そのため、ウエハ200の温度を制御する際は、基板載置台加熱部213を優先的に制御する。
【0029】
バッファ室232には、供給されたガスの流れを形成するガスガイド235が設けられる。ガスガイド235は、孔231aを頂点として分散板234方向に向かうにつれ径が広がる円錐形状である。ガスガイド235の下端の水平方向の径は貫通孔234a群の最外周よりも更に外周に形成される。ガスガイド235は蓋231に接続されており、蓋加熱部231cによって加熱され、更にバッファ室内の雰囲気を加熱する。
【0030】
バッファ室232の上方には、シャワーヘッド用排気孔231bを介して、排気管236が接続されている。排気管236には、排気のオン/オフを切り替えるバルブ237、排気バッファ室232内を所定の圧力に制御するAPC(Auto Pressure Controller)等の圧力調整器238、真空ポンプ239が順に直列に接続されている。
【0031】
排気孔231bは、ガスガイド235の上方にあるため、後述するシャワーヘッド排気工程では次のようにガスが流れるよう構成されている。孔231aから供給された不活性ガスはガスガイド235によって分散され、バッファ室232の空間中央及び下方に流れる。その後ガスガイド235の端部で折り返して、排気孔231bから排気される。
尚、排気管236、バルブ237、圧力調整記238をまとめて第1の排気系と呼ぶ。
【0032】
(供給系)
シャワーヘッド230の蓋231に接続されたガス導入孔241には、共通ガス供給管242が接続されている。共通ガス供給管242には、共通ガス供給管242を加熱する共通ガス供給管ヒータ242a(第四の加熱部とも呼ぶ)が設けられ、共通ガス供給管242の内側を通過するガスを加熱するよう構成されている。バッファ室232に供給する前に、共通ガス供給管ヒータ242aによって事前にガスを加熱することで、副生成物である反応阻害物が付着しない温度まで容易にガスの温度を上昇させることができる。共通ガス供給管242には、第1ガス供給管243a、第2ガス供給管244a、第3ガス供給管245aが接続されている。第2ガス供給管244aは、リモートプラズマユニット244eを介して接続される。
【0033】
第1ガス供給管243aを含む第1ガス供給系243からは第1元素含有ガスが主に供給され、第2ガス供給管244aを含む第2ガス供給系244からは主に第2元素含有ガスが供給される。第3ガス供給管245aを含む第3ガス供給系245からは、ウエハを処理する際には主に不活性ガスが供給され、処理室をクリーニングする際はクリーニングガスが主に供給される。
【0034】
(第1ガス供給系)
第1ガス供給管243aには、上流方向から順に、第1ガス供給源243b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)243c、及び開閉弁であるバルブ243dが設けられている。
【0035】
第1ガス供給管243aから、第1元素を含有するガス(以下、「第1元素含有ガス」)が、マスフローコントローラ243c、バルブ243d、共通ガス供給管242を介してシャワーヘッド230に供給される。
【0036】
第1元素含有ガスは、原料ガス、すなわち、処理ガスの一つである。
ここで、第1元素は、例えばチタン(Ti)である。すなわち、第1元素含有ガスは、例えばチタン含有ガスである。チタン含有ガスとしては、例えばTiClガスを用いることができる。なお、第1元素含有ガスは、常温常圧で固体、液体、及び気体のいずれであっても良い。第1元素含有ガスが常温常圧で液体の場合は、第1ガス供給源232bとマスフローコントローラ243cとの間に、図示しない気化器を設ければよい。ここでは気体として説明する。
【0037】
なお、シリコン含有ガスを用いても良い。シリコン含有ガスとしては、例えば有機シリコン材料であるヘキサメチルジシラザン(C19NSi、略称:HMDS)やトリシリルアミン((SiHN、略称:TSA)、BTBAS(SiH(NH(C))(ビス ターシャル ブチル アミノ シラン)ガス等を用いることができる。これらのガスは、プリカーサーとして働く。
【0038】
第1ガス供給管243aのバルブ243dよりも下流側には、第1不活性ガス供給管246aの下流端が接続されている。第1不活性ガス供給管246aには、上流方向から順に、不活性ガス供給源246b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)246c、及び開閉弁であるバルブ246dが設けられている。
【0039】
ここで、不活性ガスは、例えば窒素(N)ガスである。なお、不活性ガスとして、Nガスのほか、例えばヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、アルゴン(Ar)ガス等の希ガスを用いることができる。
【0040】
第1不活性ガス供給管246aからは、不活性ガスが、マスフローコントローラ246c、バルブ246d、第1ガス供給管243aを介して、シャワーヘッド230内に供給される。不活性ガスは、後述する薄膜形成工程(S104)ではキャリアガス或いは希釈ガスとして作用する。
【0041】
主に、第1ガス供給管243a、マスフローコントローラ243c、バルブ243dにより、第1元素含有ガス供給系243(チタン含有ガス供給系ともいう)が構成される。
【0042】
また、主に、第1不活性ガス供給管246a、マスフローコントローラ246c及びバルブ246dにより第1不活性ガス供給系が構成される。なお、不活性ガス供給源246b、第1ガス供給管243aを、第1不活性ガス供給系に含めて考えてもよい。
【0043】
更には、第1ガス供給源243b、第1不活性ガス供給系を、第1元素含有ガス供給系に含めて考えてもよい。
【0044】
(第2ガス供給系)
第2ガス供給管244aの下流にはリモートプラズマユニット244eが設けられている。上流には、上流方向から順に、第2ガス供給源244b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)244c、及び開閉弁であるバルブ244dが設けられている。
【0045】
第2ガス供給管244aからは、第2元素を含有するガス(以下、「第2元素含有ガス」)が、マスフローコントローラ244c、バルブ244d、リモートプラズマユニット244e、共通ガス供給管242を介して、シャワーヘッド230内に供給される。第2元素含有ガスは、リモートプラズマユニット244eによりプラズマ状態とされ、ウエハ200上に照射される。
【0046】
第2元素含有ガスは、処理ガスの一つである。なお、第2元素含有ガスは、反応ガスまたは改質ガスとして考えてもよい。
【0047】
ここで、第2元素含有ガスは、第1元素と異なる第2元素を含有する。第2元素としては、例えば、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)のいずれか一つである。本実施形態では、第2元素含有ガスは、例えば窒素含有ガスとする。具体的には、窒素含有ガスとしてアンモニア(NH3)ガスが用いられる。
【0048】
主に、第2ガス供給管244a、マスフローコントローラ244c、バルブ244dにより、第2元素含有ガス供給系244(窒素含有ガス供給系ともいう)が構成される。
【0049】
また、第2ガス供給管244aのバルブ244dよりも下流側には、第2不活性ガス供給管247aの下流端が接続されている。第2不活性ガス供給管247aには、上流方向から順に、不活性ガス供給源247b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)247c、及び開閉弁であるバルブ247dが設けられている。
【0050】
第2不活性ガス供給管247aからは、不活性ガスが、マスフローコントローラ247c、バルブ247d、第2ガス供給管244a、リモートプラズマユニット244eを介して、シャワーヘッド230内に供給される。不活性ガスは、後述する成膜工程(薄膜形成工程とも呼ぶ)(S104)ではキャリアガス或いは希釈ガスとして作用する。
【0051】
主に、第2不活性ガス供給管247a、マスフローコントローラ247c及びバルブ247dにより第2不活性ガス供給系が構成される。なお、不活性ガス供給源247b、第2ガス供給管244a、リモートプラズマユニット244eを第2不活性ガス供給系に含めて考えてもよい。
【0052】
更には、第2ガス供給源244b、リモートプラズマユニット244e、第2不活性ガス供給系を、第2元素含有ガス供給系244に含めて考えてもよい。
【0053】
(第3ガス供給系)
第3ガス供給管245aには、上流方向から順に、第3ガス供給源245b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)245c、及び開閉弁であるバルブ245dが設けられている。
【0054】
第3ガス供給管245aから、パージガスとしての不活性ガスが、マスフローコントローラ245c、バルブ245d、共通ガス供給管245を介してシャワーヘッド230に供給される。
【0055】
ここで、不活性ガスは、例えば、窒素(N)ガスである。なお、不活性ガスとして、Nガスのほか、例えばヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、アルゴン(Ar)ガス等の希ガスを用いることができる。
【0056】
第3ガス供給管245aのバルブ245dよりも下流側には、クリーニングガス供給管248aの下流端が接続されている。クリーニングガス供給管248aには、上流方向から順に、クリーニングガス供給源248b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)246c、及び開閉弁であるバルブ246dが設けられている。
【0057】
主に、第3ガス供給管245a、マスフローコントローラ245c、バルブ245dにより、第3ガス供給系245が構成される。
【0058】
また、主に、クリーニングガス供給管248a、マスフローコントローラ248c及びバルブ248dによりクリーニングガス供給系が構成される。なお、クリーニングガス源248b、第3ガス供給管245aを、クリーニングガス供給系に含めて考えてもよい。
【0059】
更には、第3ガス供給源245b、クリーニングガス供給系を、第3ガス供給系245に含めて考えてもよい。
【0060】
第3ガス供給管245aからは、基板処理工程では不活性ガスが、マスフローコントローラ245c、バルブ245d、共通ガス供給管242を介して、シャワーヘッド230内に供給される。また、クリーニング工程では、クリーニングガスが、マスフローコントローラ248c、バルブ248d、共通ガス供給管242を介して、シャワーヘッド230内に供給される。
【0061】
不活性ガス供給源245bから供給される不活性ガスは、後述する薄膜形成工程(S104)では、処理室201やシャワーヘッド230内に留まったガスをパージするパージガスとして作用する。また、クリーニング工程では、クリーニングガスのキャリアガス或いは希釈ガスとして作用しても良い。
【0062】
クリーニングガス供給源248bから供給されるクリーニングガスは、クリーニング工程ではシャワーヘッド230や処理室201に付着した副生成物等を除去するクリーニングガスとして作用する。
【0063】
ここで、クリーニングガスは、例えば三フッ化窒素(NF)ガスである。なお、クリーニングガスとして、例えば、フッ化水素(HF)ガス、三フッ化塩素(ClF)ガス、フッ素(F)ガス等を用いても良く、またこれらを組合せて用いても良い。
【0064】
(第2の排気系)
処理室201(上部容器202a)の内壁側面には、処理室201の雰囲気を排気する排気口221が設けられている。排気口221には排気管222が接続されており、排気管222には、処理室201内を所定の圧力に制御するAPC(Auto Pressure Controller)等の圧力調整器223、真空ポンプ224が順に直列に接続されている。主に、排気口221、排気管222、圧力調整器223、真空ポンプ224により第2の排気系(排気ライン)220が構成される。
【0065】
(プラズマ生成部)
シャワーヘッドの蓋231には、整合器251、高周波電源252が接続されている。高周波電源252、整合器251でインピーダンスを調整することで、シャワーヘッド230、処理室201にプラズマが生成される。
【0066】
(コントローラ)
基板処理装置100は、基板処理装置100の各部の動作を制御するコントローラ260を有している。コントローラ260は、演算部261及び記憶部262を少なくとも有する。コントローラ260は、上位コントローラや使用者の指示に応じて記憶部から基板処理装置のプログラムや制御レシピを呼び出し、その内容に応じて各構成を制御する。これらのプログラムは、ハードディスクやフラッシュメモリ等の記録媒体に記録される。
【0067】
(2)基板処理工程
【0068】
次に、基板処理装置100としての基板処理装置100を使用して、ウエハ200上に薄膜を形成する工程について、図2図3図4図5を参照しながら説明する。図2図3図4図5は、本発明の実施形態にかかる基板処理工程のフロー図である。なお、以下の説明において、基板処理装置100を構成する各部の動作はコントローラ260により制御される。
【0069】
図2図3図4図5を用い、基板処理工程の概略について説明する。図2は、本実施形態に係る基板処理工程を示すフロー図である。図3図4は、図5の成膜工程の詳細を説明するフローである。
【0070】
ここでは、第1元素含有ガスとしてTiClガスを用い、第2元素含有ガスとしてアンモニア(NH3)ガスを用い、ウエハ200上に薄膜として窒化チタン(TiN)膜を形成する例について説明する。また、例えば、ウエハ200上には、予め所定の膜が形成されていてもよい。また、ウエハ200または所定の膜には予め所定のパターンが形成されていてもよい。
【0071】
(基板搬入・載置工程S102)
処理装置100では基板載置台212をウエハ200の搬送位置まで下降させることにより、基板載置台212の貫通孔214にリフトピン207を貫通させる。その結果、リフトピン207が、基板載置台212表面よりも所定の高さ分だけ突出した状態となる。続いて、ゲートバルブ205を開き、図示しないウエハ移載機を用いて、処理室内にウエハ200(処理基板)を搬入し、リフトピン207上にウエハ200を移載する。これにより、ウエハ200は、基板載置台212の表面から突出したリフトピン207上に水平姿勢で支持される。
【0072】
処理容器202内にウエハ200を搬入したら、ウエハ移載機を処理容器202の外へ退避させ、ゲートバルブ205を閉じて処理容器202内を密閉する。その後、基板載置台212を上昇させることにより、基板載置台212に設けられた基板載置面211上にウエハ200を載置する。
【0073】
なお、ウエハ200を処理容器202内に搬入する際には、排気系により処理容器202内を排気しつつ、不活性ガス供給系から処理容器202内に不活性ガスとしてのNガスを供給することが好ましい。すなわち、真空ポンプ224を作動させAPCバルブ223を開けることにより処理容器202内を排気した状態で、少なくとも第3ガス供給系のバルブ245dを開けることにより、処理容器202内にNガスを供給することが好ましい。これにより、処理容器202内へのパーティクルの侵入や、ウエハ200上へのパーティクルの付着を抑制することが可能となる。また、真空ポンプ224は、少なくとも基板搬入・載置工程(S102)から後述する基板搬出工程(S106)が終了するまでの間は、常に作動させた状態とする。
【0074】
ウエハ200を基板載置台212の上に載置する際は、基板載置台212の内部に埋め込まれたヒータ213及び又は分散板ヒータ234bに電力を供給し、ウエハ200の表面が所定の温度となるよう制御される。ウエハ200の温度は、例えば室温以上500℃以下であり、好ましくは、室温以上であって400℃以下である。この際、ヒータ213の温度は、図示しない温度センサにより検出された温度情報に基づいてヒータ213への通電具合を制御することによって調整される。
【0075】
(成膜工程S104)
次に、成膜工程S104を行う。成膜工程S104の基本的な流れについて説明し、本実施形態の特徴部分については詳細を後述する。
【0076】
成膜工程S104では、シャワーヘッド230のバッファ室232を介して、処理室201内にTiClガスを供給する。TiClガスを供給し、所定の時間経過後、TiClガスの供給を停止し、パージガスにより、バッファ室232、処理室201からTiClガスを排出する。
【0077】
TiClガスを排出後、バッファ室232を介して、処理室201内にプラズマ状態のアンモニアガスを供給する。アンモニアガスは、ウエハ200上に形成されたチタン含有膜と反応し、窒化チタン膜を形成する。所定の時間経過後、アンモニアガスの供給を停止し、パージガスによりシャワーヘッド230、処理室201からアンモニアガスを排出する。
【0078】
成膜工程104では、以上を繰り返すことで、所望の膜厚の窒化チタン膜を形成する。
【0079】
(基板搬出工程S106)
次に、基板載置台212を下降させ、基板載置台212の表面から突出させたリフトピン207上にウエハ200を支持させる。その後、ゲートバルブ205を開き、ウエハ移載機を用いてウエハ200を処理容器202の外へ搬出する。その後、基板処理工程を終了する場合は、第3ガス供給系から処理容器202内に不活性ガスを供給することを停止する。
【0080】
(処理回数判定工程S108)
基板を搬出後、薄膜形成工程が所定の回数に到達したか否かを判定する。所定の回数に到達したと判断されたら、クリーニング工程に移行する。所定の回数に到達していないと判断されたら、次に待機しているウエハ200の処理を開始するため、基板搬入・載置工程S102に移行する。
【0081】
(クリーニング工程110)
処理回数判定工程S108で薄膜形成工程が所定の回数に到達したと判断したら、クリーニング工程を行う。ここでは、クリーニングガス供給系のバルブ248dを開け、シャワーヘッド230を介して、クリーニングガスを処理室201へ供給する。
【0082】
クリーニングガスがシャワーヘッド230、処理室201を満たしたら、高周波電源252で電力を印加すると共に整合器251によりインピーダンスを整合させ、シャワーヘッド230、処理室201にクリーニングガスのプラズマを生成する。生成されたクリーニングガスプラズマは、シャワーヘッド230、処理室201内の壁に付着した副生成物を除去する。
【0083】
続いて、成膜工程S104の詳細について図4を用いて説明する。
【0084】
(第1の処理ガス供給工程S202)
本実施形態の加熱部である蓋加熱部231c、分散板加熱部234b、基板載置台加熱部213が既にオンとなった状態で処理を開始する。具体的には、蓋加熱部231cによってバッファ室232内の雰囲気を、分散板加熱部234bによって分散板234(分散板234のウエハ対向面、貫通孔234a含む)とウエハ200を、基板載置台加熱部213によって基板載置部211のウエハ200が加熱される。
【0085】
このとき、加熱部(蓋加熱部231c、分散板加熱部234b、基板載置台加熱部213)の協業によって、バッファ室232内の雰囲気の温度がウエハ200の温度よりも低くなるよう制御される。より良くは、ウエハ温度を成膜処理可能な温度、例えば供給されるガスが反応する温度以上とし、バッファ室内部の温度をガスが反応しない温度とする。更には、バッファ室の温度を、副生成物が付着しない程度の温度以上とすることが望ましい。
【0086】
より具体的には、バッファ室232のバッファ空間の温度を制御するために、蓋加熱部231cと分散板加熱部234bを制御する。この制御では、ガスガイド235や分散板234のバッファ室側面に副生成物が付着しないような温度以上であって、更には供給されるガスがバッファ室232の内壁やガスガイド235に付着する温度未満、供給するガスが熱分解する温度未満、もしくは供給される少なくとも二種類のガスが反応し膜を形成する際の反応温度未満とする。ここで言う副生成物とは、例えばバッファ室に残留したTiClとNHが反応して発生する塩化アンモニア(NHCl)である。塩化アンモニアの場合、150℃から160℃程度で付着されるので、その付着を抑制するために、ガスガイド235と分散板加熱部234bによって、塩化アンモニアが付着しない温度である160℃よりも高い温度になるよう制御する。更には、供給されるTiClやNH単独、もしくはその反応物が付着しないような温度とする。例えば、TiCl4とNH3を反応させて膜形成する温度が310℃から450℃であるので、その温度未満となるよう制御する。ここでは、バッファ空間の温度を第1の温度と呼ぶ。
【0087】
次に、ウエハ200の温度を制御するために、分散板加熱部234b、基板載置台加熱部213を制御する。この制御では、ウエハ200の温度および処理室201の温度を膜処理が促進される温度、すなわちガスが反応する温度とする。ウエハ200の膜処理が促進される温度とは、少なくとも二種類のガスがウエハ200上で反応する温度、もしくは供給されるガスがウエハ200上で付着する温度を言う。ここでは、処理室201の温度を第2の温度と呼ぶ。
【0088】
また、処理室201の温度(ウエハ200の温度)をバッファ室232の温度よりも高くすることから、蓋加熱部231c、基板載置台加熱部213の相対的関係を次のようにすることが望ましい。
蓋加熱部231cの温度<基板載置台加熱部213の温度
言い換えれば、次のような関係とも言える。
バッファ室232内の空間の温度<処理室201内の空間の温度
【0089】
それぞれ所望とする温度に達したら、バルブ243dを開け、ガス導入孔241、バッファ室232、複数の貫通孔234aを介して、処理室201内に第1の処理ガスとしてのTiClを供給開始する。更にそれと併行してバルブ245dを開け、ガス導入孔241、バッファ室232、複数の貫通孔234aを介して、処理室201内に第3の処理ガスとしてのパージガスを供給開始する。バッファ室232内ではガスガイド235によってTiClガスが均一に分散される。均一に分散されたガスは複数の貫通孔234aを介して、処理室201内のウエハ200上に均一に供給される。
【0090】
バッファ室232では、供給された第1の処理ガスが壁に付着しない温度としているので、バッファ室232内の第1処理ガス残留を抑制する。
【0091】
このとき、第1の処理ガスであるTiCl4ガスの流量が所定の流量となるように、マスフローコントローラ243cを調整する。更には、第3の処理ガスである不活性ガスの流量が所定の流量となるように、マスフローコントローラ245cを調整する。なお、TiClの供給流量は、例えば100sccm以上5000sccm以下である。なお、TiClガスとともに、第1不活性ガス供給系からキャリアガスとしてNガスを流してもよい。また、排気ポンプ224を作動させ、APCバルブ223の弁開度を適正に調整することにより、処理容器202内の圧力を、所定の圧力とする。
【0092】
供給されたTiClガスはウエハ200上に供給される。ウエハ200表面の上には、TiClガスがウエハ200の上に接触することによって「第1元素含有層」としてのチタン含有層が形成される。
【0093】
チタン含有層は、例えば、処理容器202内の圧力、TiClガスの流量、ウエハ200の温度、処理室201での処理時間等に応じて、所定の厚さ及び所定の分布で形成される。
【0094】
所定の時間経過後、バルブ243dを閉じ、TiClガスの供給を停止する。バルブ245dは開を維持し、不活性ガスの供給を継続する。
【0095】
(第1のシャワーヘッド排気工程S204)
TiClガスの供給を停止した後、バルブ237を開とし、シャワーヘッド230内の雰囲気を排気する。具体的には、バッファ室232内の雰囲気を排気する。このとき、真空ポンプ239は事前に作動させておく。シャワーヘッド排気工程204については、後に詳述する。
【0096】
このとき、バッファ室232における第1の排気系からの排気コンダクタンスが、処理室を介した排気ポンプ224のコンダクタンスよりも高くなるよう、バルブ237の開閉弁及び真空ポンプ239を制御する。このように調整することで、バッファ室232の中央からシャワーヘッド排気孔231bに向けたガス流れが形成される。このようにして、バッファ室232の壁に付着したガスや、バッファ空間内に浮遊したガスが、処理室201に進入することなく第1の排気系から排気される。
【0097】
(第1の処理室排気工程S206)
所定の時間経過後、引き続き第2の排気系の排気ポンプ224を作動させつつ、処理空間において第2の排気系からの排気コンダクタンスが、シャワーヘッド230を介した第1の排気系からの排気コンダクタンスよりも高くなるようAPCバルブ223の弁開度及びバルブ237の弁解度を調整する。このように調整することで、処理室201を経由した第2の排気系に向けたガス流れが形成される。したがって、バッファ室232に供給された不活性ガスを確実に基板上に供給することが可能となり、基板上の残留ガスの除去効率が高くなる。
【0098】
処理室排気工程において供給された不活性ガスは、第1の処理ガス供給工程S202でウエハ200に結合できなかったチタン成分を、ウエハ200上から除去する。更には、バルブ237を開け、圧力調整器238、真空ポンプ239を制御して、シャワーヘッド230内に残留したTiCl4ガスを除去する。所定の時間経過後、バブル237を閉じてシャワーヘッド230と真空ポンプ239の間を遮断する。
【0099】
より良くは、所定の時間経過後、第2の排気系の排気ポンプ224を引き続き作動させつつ、バルブ237を閉じることが望ましい。このようにすると、処理室201を経由した第2の排気系に向けた流れが第1の排気系の影響を受けないので、より確実に不活性ガスを基板上に供給することが可能となり、基板上の残留ガスの除去効率が更に高くなる。
【0100】
また、シャワーヘッド排気工程S204の後に引き続き処理室排気工程S206を行うことで、次の効果を見出すことができる。即ち、シャワーヘッド排気工程S204でバッファ室232内の残留物を除去しているので、処理室排気工程S206においてガス流れがウエハ200上を経由したとしても、残留ガスが基板上に付着することを防ぐことができる。
【0101】
(第2の処理ガス供給工程S206)
第1の処理室排気工程の後、バルブ244dを開け、ガス導入孔241、バッファ室232、複数の貫通孔234aを介して、処理室201内にアンモニアガスを供給する。バッファ室232、貫通孔234aを介して処理室に供給するので、基板上に均一にガスを供給することができる。そのため、膜厚を均一にすることができる。
【0102】
このとき、アンモニアガスの流量が所定の流量となるように、マスフローコントローラ244cを調整する。なお、アンモニアガスの供給流量は、例えば100sccm以上5000sccm以下である。なお、アンモニアガスとともに、第2不活性ガス供給系からキャリアガスとしてNガスを流してもよい。また、APCバルブ223の弁開度を適正に調整することにより、処理容器202内の圧力を、所定の圧力とする。
【0103】
プラズマ状態のアンモニアガスはウエハ200上に供給される。既に形成されているチタン含有層がアンモニアガスのプラズマによって改質されることにより、ウエハ200の上には、例えばチタン元素および窒素元素を含有する層が形成される。
【0104】
改質層は、例えば、処理容器202内の圧力、アンモニアガスの流量、基板載置台212の温度、リモートプラズマユニット244eの電力供給具合等に応じて、所定の厚さ、所定の分布、チタン含有層に対する所定の窒素成分等の侵入深さで形成される。
【0105】
所定の時間経過後、バルブ244dを閉じ、アンモニアガスの供給を停止する。
【0106】
(第2のシャワーヘッド排気工程S210)
アンモニアガスの供給を停止した後、バルブ237を開とし、シャワーヘッド230内の雰囲気を排気する。具体的には、バッファ室232内の雰囲気を排気する。このとき、真空ポンプ239は事前に作動させておく。シャワーヘッド排気工程210については、後に詳述する。
【0107】
バッファ室232における第1の排気系からの排気コンダクタンスが、処理室を介した排気ポンプ224のコンダクタンスよりも高くなるよう、バルブ237の開閉弁及び真空ポンプ239を制御する。このように調整することで、バッファ室232の中央からシャワーヘッド排気孔231bに向けたガス流れが形成される。このようにして、バッファ室232の壁に付着したガスや、バッファ空間内に浮遊したガスが、処理室201に進入することなく第1の排気系から排気される。
【0108】
(第2の処理室排気工程S212)
所定の時間経過後、第2の排気系の排気ポンプ224を作動させつつ、処理空間において第2の排気系からの排気コンダクタンスが、シャワーヘッド230を介した第1の排気系からの排気コンダクタンスよりも高くなるようAPCバルブ223の弁開度及びバルブ237の弁解度を調整する。このように調整することで、処理室201を経由した第2の排気系に向けたガス流れが形成される。したがって、バッファ室232に供給された不活性ガスを確実に基板上に供給することが可能となり、基板上の残留ガスの除去効率が高くなる。
【0109】
処理室排気工程において供給された不活性ガスは、第2の処理ガス供給工程S206でウエハ200に結合できなかったアンモニア成分を、ウエハ200上から除去する。更には、バルブ237を開け、圧力調整器238、真空ポンプ239を制御して、シャワーヘッド230内に残留したアンモニアガスを除去する。所定の時間経過後、バブル237を閉じてシャワーヘッド230と真空ポンプ239の間を遮断する。
【0110】
より良くは、所定の時間経過後、第2の排気系の排気ポンプ224を引き続き作動させつつ、バルブ237を閉じることが望ましい。このようにすると、バッファ室内232内の残留ガスや、供給された不活性ガスは、処理室201を経由した第2の排気系に向けた流れが第1の排気系の影響を受けないので、より確実に不活性ガスを基板上に供給することが可能となるため、基板上で、第1のガスと反応しきれなかった残留ガスの除去効率が更に高くなる。
【0111】
また、シャワーヘッド排気工程S210の後に引き続き処理室排気工程S212を行うことで、次の効果を見出すことができる。即ち、シャワーヘッド排気工程S210でバッファ室232内の残留物を除去しているので、処理室排気工程S212においてガス流れがウエハ200上を経由したとしても、残留ガスが基板上に付着することを防ぐことができる。
【0112】
(判定工程S214)
この間、コントローラ260は、上記1サイクルを所定回数実施したか否かを判定する。
【0113】
所定回数実施していないとき(S214でNoの場合)、第1の処理ガス供給工程S202、第1シャワーヘッド排気工程S204、第1処理室排気工程S206、第2の処理ガス供給工程S208、第2のシャワーヘッド排気工程S210、第2処理室排気工程S212のサイクルを繰り返す。所定回数実施したとき(S214でYesの場合)、成膜工程S104を終了する。
【0114】
続いて、第1のシャワーヘッド排気工程S204の詳細について図5を用いて説明する。第2のシャワーヘッド排気工程S210は第1のシャワーヘッド排気工程S204と同様の処理であるので、一部説明を省略する。
【0115】
ところで、本実施例に係る装置においては、第1のガスと第2のガスはシャワーヘッド230を介して処理室に供給されるため、バッファ室232内にいずれかのガスが残留した場合、バッファ室232内でガスが反応してしまう。反応することで副生成物が発生し、その付着物がバッファ室壁に付着することが考えられる。発生した副生成物が剥がれ、ウエハ200に付着した場合、基板特性に悪影響を及ぼす可能性があることから、付着物や残留ガスを確実に排気する必要がある。
【0116】
一方、バッファ室232にはガスが滞留する領域が存在する。例えば領域232aのように、蓋231と分散板234フランジの間に形成される角状の空間である。そのような空間は、孔231aからガスガイド235を介したシャワーヘッド排気孔231bへの経路で形成されるガス流れの影響を受けづらいため、他の部分に比べガスが滞留しやすく、ガスの淀みができやすい。更には、図2に記載のように、加工精度によっては各構造間で隙間ができてしまい、隙間の大きさによってはそこにガスが入り込んでしまう。そのため、ガスが残留しやすく、残留したガスが反応することによる反応生成物、副生成物が発生しやすい構造となっている。発生した反応生成物、副生成物、残留ガスは滞留領域232aの壁に付着してしまうことがあるが、それらを除去しようとしても、ガス流れと付着物の間に滞留したガスが存在するため、単にパージガスを供給しただけでは付着物を除去することが難しい。以下、発生した反応生成物、副生成物、残留ガスの付着物をバッファ室付着物と呼ぶ。
【0117】
そこで、本実施形態においては、ガスが滞留する領域においても、より確実に残留ガスや副生成物を除去する方法を説明する。以下に、シャワーヘッド排気工程の詳細を、図5を用いて説明する。
【0118】
(第1排気工程S302)
第1の処理ガス供給工程S202にてバルブ243dを閉じた後(第2のシャワーヘッド排気工程S210では第2の処理ガス供給工程S208にてバルブ244dを閉じた後)、バルブ237を開とし、第3ガス供給系のバルブ245dを閉じた状態で、バッファ室232内の雰囲気を排気する。このとき、バルブ237を有する第1排気系のコンダクタンスが、複数の貫通孔234aから排気されるコンダクタンスよりも大きくなるようバルブ237の開度を調整する。
【0119】
このようにして排気をすると、孔231aからシャワーヘッド排気孔231bに流れるガス流れが形成されないため、バッファ室232の中心部だけでなく、角部分のような滞留領域においても残留ガスを除去することができる。
【0120】
尚、バルブ245dを開けて不活性ガスを供給しても良い。その場合、滞留領域の残留ガスが除去できる程度の量とする。
【0121】
(パージ工程S304)
所定時間経過後、バルブ237の開度を維持しつつ、第3ガス供給系のバルブ245dを開とし、パージガスである不活性ガスをバッファ室232内に供給する。バッファ室付着物が付着した壁の周囲には滞留ガスが存在しないので、供給された不活性ガスはバッファ室付着物へのアタックが可能となる。アタックされたバッファ室付着物は、バッファ室232の壁から剥がれ落ちる。剥がされたバッファ室付着物は、一時的にバッファ室232内に浮遊する。
【0122】
パージ工程S304では、第1排気工程S302と同様に、バルブ237を有する第1排気系のコンダクタンスが、処理室201に連通する第2排気系のコンダクタンスよりも大きくなるようバルブ237の開度が維持されている。
【0123】
尚、第1排気工程にて不活性ガスを供給している場合、パージ工程S304では、第1排気工程に比べ、第3ガス供給系からさらにパージガスの供給量を増加させればよい。
【0124】
(第2排気工程S306)
所定時間経過後、バルブ237の開度を維持しつつ、第3ガス供給系のバルブ245dを閉じる。このとき、第1排気工程S302、パージ工程S304と同様に、バルブ237を有する第1排気系のコンダクタンスが、処理室201に連通する第2排気系のコンダクタンスよりも大きくするようバルブ237の開度が維持されている。
【0125】
このようにすると、孔231aからガスガイド235を介してシャワーヘッド排気孔231bに流れるガス流れが形成されないため、バッファ室232の中心部だけでなく、角部分のような滞留領域においても、パージ工程S304で剥がれ落ちたバッファ室付着物を除去することが可能となる。また、第1排気系のコンダクタンスが第2排気系のコンダクタンスよりも大きくなるよう制御されているので、パージ工程で剥がれ落ちたバッファ室付着物が処理室内のウエハ200上にふり落ちることなく、バッファ室付着物を除去することができる。
【0126】
さらには、バルブ237の開度を維持しつつ、バルブ245dの開閉度を制御するという単純な動作で副生成物及び残留ガスを除去することができるので、処理スループットを高くすることができる。
【0127】
所定の時間経過後、バルブ237を閉とし、バルブ245dを開として、第1の処理室排気工程S206(もしくは第2の処理室排気工程S212)に移行する。
【0128】
尚、第1排気工程S302、パージ工程S304、第2真空排気工程S306では、バルブ237の開度を維持していたが、それに限るものではなく、第1排気系のコンダクタンスが第2排気系のコンダクタンスよりも大きくなる状態を維持すれば、開度を変更しても良い。この場合開度を維持することに比べスループットが落ちるものの、ガスの性質や副生成物の粘着性に応じた排気制御が可能となる。
【0129】
続いて、分散板加熱部234bの他の実施例について図6(a)から図6(c)を用いて説明する。図6は、分散板加熱部234bの形状や位置を説明するための説明図であり、分散板234を基板方向から見た際の分散板234、貫通孔234a、分散板加熱部234bの位置関係を説明した図である。分散板加熱部234bは、分散板234の貫通孔234aを避けるように配置されている。
【0130】
図6(a)は、内周、外周それぞれに分散板加熱部を配置した構造である。円周方向及び径方向に均一に配置されているので、分散板234等を円周方向及び径方向に均一に加熱することができる。図6(b)は、外周から内周に向かうヒータ配線を複数設けた配置構造である。このような配置とすることで、分散板234等の径方向に対して均一に加熱することができる。図6(c)は、図6(a)と同様に内周、外周それぞれに分散板加熱部を配置した構造であるが、図6(a)に比べ鋭角な折り返しが少ない点で相違する。即ち、鈍角状の折り返しとしている。鋭角な折り返しが少ないので、折り返し箇所による局所的な加熱が産まれないため、より均一に分散板234等を均一に加熱することができる。
【0131】
続いて、ガス共通供給管242の他の実施例について図7を用いて説明する。図7は、ガス供給管242の断面図である。説明の便宜上、ガス供給管242の外周に設けられたガス供給管加熱部242aの記載を省略している。
【0132】
ところで、ガスが加熱される際、次の式(1)からもわかるように、ガスが固体表面から受け取る熱量Qは、ガスの接触表面積に比例する。したがって図7に示す実施例では、ガス導入管242の内周のガス接触表面積を大きくするような形状とすることで、ガスを効率的に加熱できる。
【数1】
【0133】
図7(a)はガス供給管242を熱伝導部材としている。熱伝導部材とすることでガス供給管242の内側を通過するガスに対して加熱する事が可能となる。図7(b)は、内側に複数の凸形状を有している。供給されたガスは凸形状と接触する。接触面積が図7(a)に比べ大きいので、より効率的な熱伝導が可能となる。図7(c)は、ガスの流れに対して垂直方向に分散板を設ける。分散板には孔が均一に配置されており、供給されたガスは分散板を通過する際に均一に加熱することが可能となる。図7(d)は、ガス供給管242の中央に熱伝導部材を設けている。このような形状の場合、ガス流れを阻害する構成が無く、更には供給管242と中央の熱伝導部材間の距離が近いことから、均一に加熱されたガスを滞留することなく供給することが可能となる。したがって、残留物による副生成物の発生等を抑制することができる。図7(e)は、図7(d)の構成に対して、中央の第1の熱伝導部材と供給管242内周の間に更に第2の熱伝導部材を追加したものである。図7(e)に比べより均一に加熱することが可能となる。図7(f)は、図7(d)の構成に対して、中央の熱伝導部材に凸形状を設けた点で相違する。中央の熱伝導部材を取り外し可能な構成とすることで、凸形状のような複雑な構成にガスが付着したとしても、取り外した上でクリーニングを行うことが可能となるので、容易にメンテナンスが可能である。
【0134】
続いてガスガイド235の他の実施例について図8を用いて説明する。図8は、分散板234から見たガスガイド235であり、中央に蓋部231に設けられた孔231aが配置されている。ガスガイド235も前述のガス供給管と同様に、突起あるいは溝を設けガス接触表面積を大きくすることで効率的に加熱可能な構造としている。
【0135】
図8(a)は、孔231aを中心として放射状に凸構造を設けている。孔231aから供給されたガスは凸構造と接触し、加熱される。凸構造がガス流れと並行であるので、ガス流れを阻害しない。従って、残留物が溜まりにくいため、例えば残留した第1の処理ガス(例えばTiCl)と第2の処理ガス(例えばNH)が反応した際に発生する副生成物や反応阻害物、バッファ室内壁への付着等を抑制することができる。図8(b)は、孔231aを中心とした複数の円周状の凸構造を設ける。ガスガイド235に沿って流れたガスは円周状凸構造に接触することで加熱され、更には分散板方向の流れが形成される。従って、バッファ室内232に供給されたガスをより均一に加熱することが可能となる。図8(c)は、凸構造を、孔231aを基点として渦巻状に形成したものである。図8(b)と同様、凸部によってガスを加熱するものであるが、渦巻き形状とすることで図8(b)の構造に比べ乱流を形成することが可能となるので、バッファ室内232に供給されたガスを更に均一に加熱することが可能となる。図8(d)は凸状を独立した点状態とした構造である。このようにしてガス接触表面積を大きくすることで効率的に加熱可能な構造としている。
【0136】
尚、図8においては、供給されたガスが接触する面積を増やすよう構成されれば良く、凸構造の替わりに溝であっても良い。
【0137】
上述の実施形態では、第1元素含有ガスとしてチタン含有ガスを用い、第2元素含有ガスとして窒素含有ガスを用い、ウエハ200上に窒化チタン膜を形成する場合について説明したが、それに限るものではない。第1元素含有ガスとして、例えばシリコン(Si)、ハフニウム(Hf)含有ガス、ジルコニウム(Zr)含有ガス、チタン(Ti)含有ガスを用い、酸化ハフニウム膜(HfO膜)、酸化ジルコニウム膜(ZrO膜)、酸化チタン膜(TiO膜)等のHigh−k膜等をウエハ200上に形成してもよい。
【0138】
また、上述の実施形態では、第1ガス、第2ガス、第3ガスを、共通ガス供給管242を介してバッファ室に供給していたが、それに限るものではない。例えば、供給するガス毎に、シャワーヘッド230に接続しても良い。
【0139】
また、上述の実施形態では、第1の排気系に接続されるシャワーヘッド排気孔231bをシャワーヘッドの蓋231に設けていたが、それに限るものではなく、例えばバッファ室の側面に設けても良い。
【0140】
(3)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の代表的な効果を奏する。
【0141】
(a)ウエハ200の温度をバッファ室232の温度よりも高くすることで、バッファ室232の供給されるガスがバッファ室内壁に付着すること等を防ぎつつ、ガスの加熱効率を向上させることができる。
【0142】
(b)バッファ室内の残留物を抑制することができるので、バッファ室内の付着物等を少なくすることができる。
【0143】
(付記)
本発明は、特許請求の範囲に記載した通りであり、さらに次に付記した事項を含む。
【0144】
(付記1)
基板が載置される載置面を有する載置部を有する処理室と、バッファ室を有すると共に、前記処理室の上流に設けられるシャワーヘッドと、前記シャワーヘッドのバッファ室を介して、少なくとも二種類のガスを交互に前記処理室に供給するガス供給系と、前記ガス供給系からガスを供給する間、バッファ室を第1の温度で加熱し、更に前記処理室を前記第1の温度よりも高い温度で加熱する加熱部と、を有する基板処理装置。
【0145】
(付記2)
前記加熱部は、前記載置部に内包された第1の加熱部と、前記バッファ室の上流に設けられた第2の加熱部とを少なくとも有する付記1記載の基板処理装置。
【0146】
(付記3)
前記第2の加熱部は前記シャワーヘッドの蓋体に設けられる付記2記載の基板処理装置。
【0147】
(付記4)
前記加熱部は、更にバッファ室の下流に設けられた第3の加熱部とを有する付記2又は3記載の基板処理装置。
【0148】
(付記5)
前記第3の加熱部は、前記シャワーヘッドの分散板に設けられる付記4記載の基板処理装置。
【0149】
(付記6)
前記ガスを処理室に供給する間、前記第1の加熱部温度よりも前記第2の加熱部温度を低くするよう制御する付記2又は3記載の基板処理装置。
【0150】
(付記7)
前記シャワーヘッドには共通ガス供給管が接続され、前記少なくとも二種類のガスのうち、第1のガスを供給する第1ガス供給系及び第2ガス供給系は前記ガス供給管に接続される付記1から6いずれか一つに記載の基板処理装置。
【0151】
(付記8)
前記第2の加熱部は、前記バッファ室雰囲気の温度を供給されるガスの副生成物が付着する温度以上、供給ガスの熱分解温度未満、もしくは前記少なくとも二種類のガスが反応し膜を形成する際の反応温度未満とする付記2から7のうち、いずれか一項に記載の基板処理装置
【0152】
(付記9)
前記第1の加熱部と前記第3の加熱部は、前記処理室の雰囲気の温度が熱分解温度以上となるよう制御する付記4又は5に記載の基板処理装置。
【0153】
(付記10)
前記第3の加熱部は、前記載置部に載置される基板表面と並行な加熱面を有する付記4又は5に記載の基板処理装置。
【0154】
(付記11)
前記共通ガス供給管の外周に第四の加熱部が設けられ、内周には凸構造が設けられる付記7記載の基板処理装置。
【0155】
(付記12)
前記第3の加熱部は分散板に設けられた分散孔と重ならない位置に配される付記6記載の基板処理装置。
【0156】
(付記13)
前記シャワーヘッドは、更に前記天井部から連続して構成されるガスガイドが設けられ、前記ガスガイドは凸状構造を有する付記1から12のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【0157】
(付記14)
基板を、処理室に内包された載置部の載置面に載置する基板載置工程と、
シャワーヘッドのバッファ室を第1の温度で加熱し、更に前記処理室を前記第1の温度よりも高い温度で加熱すると共に、少なくとも二種類のガスを、前記シャワーヘッドを介して交互に前記処理室に供給し、前記基板上に膜を形成する成膜工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【0158】
(付記15)
基板を、処理室に内包された載置部の載置面に載置する基板載置工程と、
シャワーヘッドのバッファ室を第1の温度で加熱し、更に前記処理室を前記第1の温度よりも高い温度で加熱すると共に、少なくとも二種類のガスを、前記シャワーヘッドを介して交互に前記処理室に供給し、前記基板上に膜を形成する成膜工程と、
を行うよう制御するプログラム。
【0159】
(付記16)
基板を、処理室に内包された載置部の載置面に載置する基板載置工程と、
シャワーヘッドのバッファ室を第1の温度で加熱し、更に前記処理室を前記第1の温度よりも高い温度で加熱すると共に、少なくとも二種類のガスを、前記シャワーヘッドを介して交互に前記処理室に供給し、前記基板上に膜を形成する成膜工程と、
を行うよう制御するプログラムを格納する記録媒体。
【符号の説明】
【0160】
100…処理装置
200…ウエハ
210…基板載置部
220…第1の排気系
230…シャワーヘッド
243…第1ガス供給系
244…第2ガス供給系
245…第3ガス供給系
260…コントローラ


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8