(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5971885
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】無段変速機
(51)【国際特許分類】
F16H 37/02 20060101AFI20160804BHJP
【FI】
F16H37/02 Z
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2009-21601(P2009-21601)
(22)【出願日】2009年2月2日
(65)【公開番号】特開2009-186011(P2009-186011A)
(43)【公開日】2009年8月20日
【審査請求日】2012年1月6日
【審判番号】不服2014-13562(P2014-13562/J1)
【審判請求日】2014年7月11日
(31)【優先権主張番号】61/006,829
(32)【優先日】2008年2月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599075531
【氏名又は名称】楊 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】楊 泰和
【合議体】
【審判長】
森川 元嗣
【審判官】
中川 隆司
【審判官】
内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】
特開平1−255759(JP,A)
【文献】
特開昭60−249758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローギア・トランスミッション・プーリーセットを有する無段変速機であって、
無段変速機の入力軸と出力軸との間に、同じ回転方向に伝動可能な固定速度比のローギア・トランスミッション・プーリーセットを設置し、かつ一方向性伝動装置を配置可能であり、重負荷においてローギア・トランスミッション・プーリーセットの原動プーリーの回転速度が同じ回転方向の入力軸より低くなるとき、入力軸の回転キネティックエナジーが一方向性伝動装置及びローギア・トランスミッション・プーリーセットを経て伝動され、出力軸を駆動してから、更に負荷を駆動し、この状態で伝動する動力は元々異軸式無段変速機を経由するが、ローギア・トランスミッション・プーリーセットを経由して伝動するように変わり、
異軸式無段変速機(100)と、入力軸(101)と、出力軸(103)と、一つの一方向性伝動装置(111)と、ローギア・トランスミッション・プーリーセット(102)と、駆動制御装置(800)とを備え、
前記異軸式無段変速機(100)は、入力軸と出力軸とによって異軸式構成の無段変速機を呈し、ゴムベルト式、金属ベルト式、チェーン式の無段変速機、電子制御電磁クラッチ式無段変速機、摩擦ディスク式の中の少なくとも一種によって構成し、或いは外部から駆動されるリニア駆動装置或いは機械伝動装置を経由した回転駆動装置によって発生するリニア駆動力に適用することにより能動的に調整し、原動プーリー或いは受動プーリーの二者或いはその中の一つのV型伝動ベルトスロットのピッチを変更させることによって、伝動速度比を調整変更し、無段変速伝動機能を能動制御し、
前記入力軸(101)は、回転キネティックエナジーを入力する回転軸であって、回転キネティックエナジーを前記異軸式無段変速機(100)の原動プーリーへ伝送し、かつ前記一方向性伝動装置(111)の入力軸へ伝送し、
前記出力軸(103)は、負荷を駆動するために回転キネティックエナジーを出力する回転軸であって、前記異軸式無段変速機(100)の受動プーリーによって伝送され、或いは前記ローギア・トランスミッション・プーリーセット(102)の受動プーリーから伝送される回転キネティックエナジーを負荷へ伝送し、
前記一方向性伝動装置(111)は、径方向の一方向性伝動装置によって構成され、或いは軸方向の一方向性伝動装置によって構成され、一方向性伝動機能を有する一方向性ベアリング、一方向性クラッチ或いは一方向性伝動機能メカニズムまたは装置を備え、前記一方向性伝動装置(111)は、前記入力軸(101)と前記ローギア・トランスミッション・プーリーセット(102)の原動プーリーとの間に設置されており、或いは前記ローギア・トランスミッション・プーリーセット(102)の受動プーリーと前記出力軸(103)との間に設置し、
前記一方向性伝動装置(111)の伝動方向は、前記入力軸(101)の回転速度が同じ回転方向の前記ローギア・トランスミッション・プーリーセット(102)の原動プーリーより大きいとき、前記ローギア・トランスミッション・プーリーセット(102)の原動プーリーに対して回転キネティックエナジーを伝送し、逆の場合は、前記入力軸(101)は前記ローギア・トランスミッション・プーリーセット(102)の原動プーリーに対して回転キネティックエナジーの伝送が不能であり、
前記ローギア・トランスミッション・プーリーセット(102)は、前記入力軸(101)によって駆動する原動プーリーと前記出力軸(103)を駆動する受動プーリーとを受け、原動プーリーと受動プーリーとは同じ回転方向に伝動し、その伝動速度比は前記異軸式無段変速機(100)の伝動速度が減速伝動を呈すローギア伝動機能に相対し、前記ローギア・トランスミッション・プーリーセット(102)と前記異軸式無段変速機(100)の速度比の関係は、前記ローギア・トランスミッション・プーリーセット(102)の原動プーリーが受動プーリーを駆動する速度比は、前記異軸式無段変速機(100)の低速出力時の速度比よりも小さいか等しく、または、前記異軸式無段変速機(100)の低速出力時の速度比は、前記ローギア・トランスミッション・プーリーセット(102)の原動プーリーが受動プーリーを駆動する速度比より小さく、かつ前記ローギア・トランスミッション・プーリーセット(102)の原動プーリーが受動プーリーを駆動する速度比は、前記異軸式無段変速機(100)の高速出力時の速度比より小さく、
前記ローギア・トランスミッション・プーリーセット(102)の構成は、原動チェーンプーリーと受動チェーンプーリーと伝動チェーンとによって構成して、或いは、原動プーリーと中間自由プーリーと受動プーリーとによって構成し、ギア或いは摩擦プーリーによって原動プーリーと中間自由プーリーと受動プーリーとを構成し、或いは、外径がより小さいトランスミッションプーリーと外径がより大きい内向きトランスミッションプーリーの内ギアセット或いは内摩擦プーリーセットによって構成し、或いは、原動ベルトプーリーと受動ベルトプーリーとキャンバスベルト、スチールベルト或いはチェーンベルトのような伝動ベルトによって構成し、
前記駆動制御装置(800)は、選択された前記異軸式無段変速機(100)の特性によって設けられ、前記駆動制御装置にドライビングフォースを設け、電気エネルギー供給ユニット、油圧供給ユニット、或いは気圧供給ユニット、及び電気エネルギー関連の制御ユニット、油圧制御ユニット或いは気圧制御ユニットを設け、前記異軸式無段変速機(100)の伝動速度比を能動制御することを特徴とする無段変速機。
【請求項2】
前記異軸式無段変速機(100)の前記入力軸(101)に、前記ローギア・トランスミッション・プーリーセット(102)の原動プーリーを加設し、また二者の間に前記一方向性伝動装置(111)を設置し、前記一方向性伝動装置(111)の伝動方向は、前記ローギア・トランスミッション・プーリーセット(102)の無段変速機がより重い負荷において、前記ローギア・トランスミッション・プーリーセット(102)の原動プーリーの回転速度が同じ回転方向の前記入力軸(101)より低くなるとき、前記入力軸(101)の回転キネティックエナジーは、前記一方向性伝動装置(111)及び前記ローギア・トランスミッション・プーリーセット(102)を経て伝動され、前記出力軸(103)を駆動してから、更に負荷を駆動し、この状態で、伝動する動力は元は異軸式無段変速機(100)を経由するが、前記ローギア・トランスミッション・プーリーセット(102)を経由するように変わり、前記出力軸(103)を駆動し、より軽い負荷において、前記異軸式無段変速機(100)を経て、キネティックエナジーを直接伝送し、前記出力軸(103)を駆動することを特徴とする請求項1に記載の無段変速機。
【請求項3】
前記ローギア・トランスミッション・プーリーセット(102)の受動プーリー及び前記出力軸(103)の間に前記一方向性伝動装置(111)の設置を選択し、より重い負荷において、異軸式無段変速機(100)が減速型無段変速機を採用し、かつ最大減速度比或いは最大減速度比に近い状態で作動し、或いは加速型無段変速機を採用し、かつ最小加速度比或いは最小加速度比に近い状態で作動し、前記ローギア・トランスミッション・プーリーセット(102)の受動プーリーの回転速度が同じ回転方向の前記出力軸(103)より高くなるとき、回転キネティックエナジーは前記ローギア・トランスミッション・プーリーセット(102)及び前記一方向性伝動装置(111)を経て、出力軸(103)を駆動してから、更に負荷を駆動し、この状態で、伝動する動力は元は前記異軸式無段変速機(100)を経由するが、前記ローギア・トランスミッション・プーリーセット(102)を経由するように変わり、前記出力軸(103)を駆動し、より軽い負荷において、前記異軸式無段変速機(100)を経て、キネティックエナジーを伝送し、前記出力軸(103)を駆動することを特徴とする請求項1に記載の無段変速機。
【請求項4】
前記ローギア・トランスミッション・プーリーセットは、
ワンセグの固定速度比のローギア・トランスミッション・プーリーセットによって構成することを特徴とする請求項1に記載の無段変速機。
【請求項5】
前記ローギア・トランスミッション・プーリーセットは、
多段であり、マニュアル或いはオートマチックの操作機能を有し、変速比を切換可能なローギア・トランスミッション・プーリーセットによって構成することを特徴とする請求項1に記載の無段変速機。
【請求項6】
請求項1に記載の無段変速機の製造方法であって、
前記異軸式無段変速機(100)と前記ローギア・トランスミッション・プーリーセット(102)とを分離する独立機械装置に製作してから、伝動を連結し、或いは共同構成の機械装置を製作することを特徴とする無段変速機の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の無段変速機の製造方法であって、
前記異軸式無段変速機(100)と前記ローギア・トランスミッション・プーリーセット(102)とを分離する独立機械装置に製作してから、共同構成の機械装置及びマシンシェルの共用に製作することを特徴とする無段変速機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無段変速機に関し、特に、ローギア・トランスミッション・プーリーセットを有する無段変速機に関する。
従来の各種類の異軸式無段変速機の無段変速の作動方式は、原動プーリー及び受動プーリーの可変ピッチのV型伝動ベルトスロットのピッチを制御することによって、ベルト状伝動コンポネントが原動プーリー或いは受動プーリーの径方向距離での作動を変更させ、更に原動プーリー及び受動プーリー間の伝動速度比を変更させる。
【0002】
上述の異軸式無段変速機の原動プーリー或いは受動プーリーは、可変ピッチのV型伝動ベルトスロットのピッチを制御し、そのピッチ制御は、以下の一種或いは一種以上の軸方向の駆動力によって駆動する必要がある。
(1)入力軸の回転速度の変化につれて、遠心力が変動するメカニズムを通して、軸方向に変動する駆動力を形成することによって、原動プーリーの可変ピッチのV型伝動ベルトスロットのピッチを変更する。
【0003】
(2)出力軸の回転速度の変化につれて、遠心力が変動するメカニズムを通して、軸方向に変動する駆動力を形成することによって、受動プーリーの可変ピッチのV型伝動ベルトスロットのピッチを変更する。
(3)入力軸のトルクの変化につれて、軸方向の駆動力が変動するメカニズムを通して、軸方向に変動する駆動力を形成することによって、原動プーリーの可変ピッチのV型伝動ベルトスロットのピッチを変更する。
【0004】
(4)出力軸のトルクの変化につれて、軸方向の駆動力が変動するメカニズムを通して、軸方向に変動する駆動力を形成することによって、受動プーリーの可変ピッチのV型伝動ベルトスロットのピッチを変更する。
(5)原動プーリー或いは受動プーリーに軸方向予圧ばねを配置し、原動プーリー或いは受動プーリーを通してベルト状伝動コンポネントの拉力を受け、軸方向の駆動力を発生することによって、原動プーリーや受動プーリーの二者或いはその中の一つのプーリーの可変ピッチのV型伝動ベルトスロットのピッチを変更する。
【0005】
上記の(1)〜(5)の方式は、受動作動の無段変速伝動機能である。
(6)能動的に人力、機械力、電磁効果、油圧、気圧駆動のリニア駆動装置によってリニア駆動力を発生させ、或いは電気モーター、油圧モーター或いは気圧モーターによって形成される回転動力を駆動してから、更に機械伝動装置によって軸方向のリニア駆動力に変換することによって、原動プーリーや受動プーリーの二者或いはその中の一つのプーリーの可変ピッチのV型伝動ベルトスロットのピッチを変更する。この方式は能動制御式無段変速伝動機能である。
【背景技術】
【0006】
伝統的の入力軸と出力軸は、異軸式構成の無段変速機(Continuous Variable Transmission)を呈し、ゴムベルト式(Rubber Belt Type)、金属ベルト式(Metal Belt Type)、チェーン式(Chain Type)無段変速機、或いは電子制御電磁クラッチ式無段変速機(ECVT)、摩擦ディスク式(Friction Disk Type)、よく使われる異軸式無段変速機等の多種形態を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の主な目的は、低回転速度の出力剛性が高い、ローギア・トランスミッション・プーリーセットを有する無段変速機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による無段変速機は、トルク或いは回転速度の作動を通して、人力制御を伴って、原動プーリー或いは受動プーリーに対して、軸方向に駆動する軸方向の駆動力を形成し、或いは軸方向に予圧ばねによって構成する受動作動する無段変速伝動機能を配置し、或いは人力、電気エネルギー、機械力、油圧、気圧等によって構成する無段変速伝動機能を能動的に制御し、更に入力設定の作動様式、速度検測、トルクを参照することによって、無段変速伝動の速度比を制御及び作動を行う。
【0009】
異軸式無段変速機は、原動プーリー入力軸の回転速度に従う変速を提供し、かつ負荷側の負荷トルクの大小は自動的に速度比を調整することができるので、操作上便利な点があるが、異軸式無段変速機は下記のような欠点がある。
(1)伝送できるパワーは大きくないので、中小パワーの応用のみに適する。
(2)異軸式無段変速機の伝動効率は低すぎる。
(3)耐用性を強化する必要がある。
【0010】
本発明の無段変速機は、無段変速機の入力軸と出力軸の間に、同じ回転方向に伝動することができる固定速度比のローギア・トランスミッション・プーリーセットを設置し、かつ一方向性伝動装置を配置することができる。例えば、減速式無段変速機を使用し、最大減速度比或いは最大減速度比に近い状態で作動させ、或いは加速式無段変速機を使用し、最小加速度比或いは最小加速度比に近い状態で作動させる場合、重負荷においてローギア・トランスミッション・プーリーセットの原動プーリーの回転速度が同じ回転方向の入力軸より低くなるとき、入力軸の回転キネティックエナジーが一方向性伝動装置及びローギア・トランスミッション・プーリーセットを経て伝動され、出力軸を駆動し、更に負荷を駆動する。この状態で、元々異軸式無段変速機を経由して伝動された動力は、ローギア・トランスミッション・プーリーセットを経由して伝動されるように変わる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態による無段変速機の構成を示す模式図。
【
図2】本発明の第1実施形態による無段変速機の他の構成を示す模式図。
【
図3】本発明の第1実施形態による無段変速機のさらに他の構成を示す模式図。
【
図4】本発明の第1実施形態に係るローギア・トランスミッション・プーリーセットの構成を示す側面図。
【
図5】本発明の第1実施形態に係るローギア・トランスミッション・プーリーセットの他の構成を示す側面図。
【
図6】本発明の第1実施形態に係るローギア・トランスミッション・プーリーセットのさらに他の構成を示す側面図。
【
図7】本発明の第1実施形態に係るローギア・トランスミッション・プーリーセットのまたさらに他の構成を示す側面図。
【
図8】本発明の第2実施形態による無段変速機の構成を示す模式図。
【
図9】本発明の第2実施形態による無段変速機の他の構成を示す模式図。
【
図10】本発明の第2実施形態による無段変速機のさらに他の構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による無段変速機は、トルク或いは回転速度の作動を通して、人力制御を伴って、原動プーリー或いは受動プーリーに対して、軸方向に駆動する軸方向の駆動力を形成し、或いは軸方向に予圧ばねによって構成する受動作動する無段変速伝動機能を配置し、或いは人力、電気エネルギー、機械力、油圧、気圧等によって構成する無段変速伝動機能を能動的に制御し、更に入力設定の作動様式、速度検測、トルクを参照することによって、無段変速伝動の速度比を制御及び作動させる。
【0013】
異軸式無段変速機は、原動プーリー入力軸の回転速度に従う変速を提供し、かつ負荷側の負荷トルクの大小は自動的に速度比を調整することができるので、操作上便利は点があるが、異軸式無段変速機は以下のような欠点がある。
(1)伝送できるパワーは大きくないので、中小パワーの応用のみに適する。
(2)異軸式無段変速機の伝動効率は低すぎる。
(3)耐用性を強化する必要がある。
【0014】
本発明の第1実施形態による無段変速機は、無段変速機の入力軸と出力軸との間に、同じ回転方向に伝動することができる固定速度比のローギア・トランスミッション・プーリーセットを設置し、かつ一方向性伝動装置を配置することができる。もし減速式無段変速機を使用し、最大減速度比或いは最大減速度比に近い状態で作動させ、或いは加速式無段変速機を使用し、最小加速度比或いは最小加速度比に近い状態で作動させる場合、重負荷においてローギア・トランスミッション・プーリーセットの原動プーリーの回転速度が同じ回転方向の入力軸より低くなるとき、入力軸の回転キネティックエナジーが一方向性伝動装置及びローギア・トランスミッション・プーリーセットを経て伝導され、出力軸を駆動し、更に負荷を駆動する。この状態で元々異軸式無段変速機を経由して伝動された動力は、ローギア・トランスミッション・プーリーセットを経由して伝導されるように変わる。
【0015】
本発明の第1実施形態による無段変速機の構成を以下に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による無段変速機である。伝統的な無段変速機のメカニズム関連装置を設ける以外に、本発明の第1実施形態による無段変速機は、主な構成として、異軸式無段変速機100、入力軸101、出力軸103、一方向性伝動装置111、ローギア・トランスミッション・プーリーセット102及び駆動制御装置800を備える。
【0016】
異軸式無段変速機100は、入力軸と出力軸によって異軸式構成の無段変速機を呈し、ゴムベルト式、金属ベルト式、チェーン式の無段変速機、電子制御電磁クラッチ式無段変速機、摩擦ディスク式等の中の少なくとも一種によって構成し、その伝動速度比は、受動的にトルク或いは回転速度に従って自動調整変更し、或いは外部から駆動されるリニア駆動装置或いは機械伝動装置を経由した回転駆動装置によって発生するリニア駆動力を適用することにより能動的に調整する。これにより、原動プーリー或いは受動プーリーの二者或いはその中の一つのV型伝動ベルトスロットのピッチを変更させる。
【0017】
入力軸101は、回転キネティックエナジーを入力する回転軸であって、回転キネティックエナジーを異軸式無段変速機100の原動プーリーへ伝送し、かつ一方向性伝動装置111の入力軸へ伝送する。
出力軸103は、負荷を駆動する回転キネティックエナジーを出力する回転軸であって、異軸式無段変速機100の受動プーリーから伝送され、或いはローギア・トランスミッション・プーリーセット102の受動プーリーから伝送される回転キネティックエナジーを負荷へ伝送する。
【0018】
一方向性伝動装置111は、
図1に示すような径方向の一方向性伝動装置によって構成され、或いは、
図2に示すような軸方向の一方向性伝動装置によって構成される。またこれらは一方向性伝動機能を有する一方向性ベアリング、一方向性クラッチ、或いは一方向性伝動機能メカニズムまたは装置を備える。一方向性伝動装置111は必要に応じて、入力軸101とローギア・トランスミッション・プーリーセット102との原動プーリーの間に設置することができる。或いは、
図3に示すようにローギア・トランスミッション・プーリーセット102の受動プーリーと出力軸103の間に設置することができる。
【0019】
一方向性伝動装置111の伝動方向は、入力軸101の回転速度が同じ回転方向のローギア・トランスミッション・プーリーセット102の原動プーリーより大きいとき、ローギア・トランスミッション・プーリーセット102の原動プーリーに対して回転キネティックエナジーを伝送する。逆の場合は、入力軸101はローギア・トランスミッション・プーリーセット102の原動プーリーに対して回転キネティックエナジーを伝送しない。
【0020】
ローギア・トランスミッション・プーリーセット102は、入力軸101によって駆動する原動プーリーと出力軸103とを駆動する受動プーリーを受け、原動プーリーと受動プーリーとは同じ回転方向に伝動する。その伝動速度比は異軸式無段変速機100の伝動速度が減速伝動を呈するローギア伝動機能に相対し、ローギア・トランスミッション・プーリーセット102と異軸式無段変速機100との速度比の関係を以下に示す。
【0021】
(1)ローギア・トランスミッション・プーリーセット102の原動プーリーが受動プーリーを駆動する速度比≦異軸式無段変速機100が低速出力時の速度比
(2)異軸式無段変速機100が低速出力ときの速度比<ローギア・トランスミッション・プーリーセット102の原動プーリーが受動プーリーを駆動する速度比<異軸式無段変速機100が高速出力時の速度比
【0022】
ローギア・トランスミッション・プーリーセット102の構成は、以下のいずれかである。
(1)原動チェーンプーリーと受動チェーンプーリーと伝動チェーンとによって構成する。
図4は、本発明の第1実施形態によるローギア・トランスミッション・プーリーセット102が原動チェーンプーリーと受動チェーンプーリーとチェーンとによって構成されたときの側面図である。
【0023】
(2)原動プーリーと中間自由プーリーと受動プーリーとによって構成し、前記の原動プーリーと中間自由プーリーと受動プーリーとはギア或いは摩擦プーリーによる構成を含む。
図5は、本発明の第1実施形態によるローギア・トランスミッション・プーリーセット102が原動プーリーと中間プーリーと受動プーリーとによって構成されたときの側面図である。
【0024】
(3)外径がより小さいトランスミッションプーリーと外径がより大きい内向きトランスミッションプーリーとからなる内ギアセット或いは内摩擦プーリーセットによって構成される。
図6は、本発明の第1実施形態によるローギア・トランスミッション・プーリーセット102が外径がより小さいトランスミッションプーリーと外径がより大きい内向きトランスミッションプーリーによって構成されたときの側面図である。
【0025】
(4)原動ベルトプーリー、受動ベルトプーリー、及びキャンバスベルト、スチールベルト或いはチェーンベルトのような付属の伝動ベルトによって構成する。
図7は、本発明の第1実施形態によるローギア・トランスミッション・プーリーセット102が原動ベルトプーリーと受動ベルトプーリーと伝動ベルトとによって構成されたときの側面図である。
【0026】
駆動制御装置800は、選択された異軸式無段変速機100の特性によって設けられ、駆動制御装置にドライビングフォースを設け、ドライビングフォースは、電気エネルギー供給ユニット、油圧供給ユニット、或いは気圧供給ユニット、及び、電気エネルギー関連の制御ユニット、油圧制御ユニット、或いは気圧制御ユニットにより構成され、異軸式無段変速機100の伝動速度比を能動制御する。例えば、異軸式無段変速機100が自動的にトルクに従って伝動速度比の作動構成を調整変更し、或いは回転速度に従って伝動速度比の作動構成を調整変更し、受動作動の無段変速機に属する場合、駆動制御装置800は設置しなくてよい。もし外部からドライビングフォースを加えて、伝動速度比を制御する能動制御式無段変速機を選択する場合は、駆動制御装置800の設置が必要で、異軸式無段変速機100の速度比を能動制御する。
【0027】
上記の主な構成による無段変速機は、異軸式無段変速機100の入力軸101に、ローギア・トランスミッション・プーリーセット102の原動プーリーを加設し、また二者の間に一方向性伝動装置111を設置する。一方向性伝動装置111の伝動方向は、ローギア・トランスミッション・プーリーセット102の無段変速機がより重い負荷において、例えば異軸式無段変速機100が減速型無段変速機を採用して、最大減速度比或いは最大減速度比に近い状態で作動する場合、或いは加速型無段変速機を採用し、最小加速度比或いは最小加速度比に近い状態で作動する場合、ローギア・トランスミッション・プーリーセット102の原動プーリーの回転速度が同じ回転方向の入力軸101より低くなるとき、入力軸101の回転キネティックエナジーは、一方向性伝動装置111及びローギア・トランスミッション・プーリーセット102を経て伝動され、出力軸103を駆動し、更に負荷を駆動する。この状態で、伝動する動力は元は異軸式無段変速機100を経由するが、ローギア・トランスミッション・プーリーセット102を経由するように変わり、出力軸103を駆動する。より軽い負荷において、異軸式無段変速機100を経て、キネティックエナジーを直接伝送し、出力軸103を駆動する。
【0028】
ローギア・トランスミッション・プーリーセット102の受動プーリー及び出力軸103の間に一方向性伝動装置111の設置を選択する場合、より重い負荷において、もし異軸式無段変速機100が減速型無段変速機を採用し、かつ最大減速度比或いは最大減速度比に近い状態で作動し、或いは加速型無段変速機を採用し、かつ最小加速度比或いは最小加速度比に近い状態で作動し、ローギア・トランスミッション・プーリーセット102の受動プーリーの回転速度が同じ回転方向の出力軸103より高くなるとき、回転キネティックエナジーはローギア・トランスミッション・プーリーセット102及び一方向性伝動装置111を経て、出力軸103を駆動し、更に負荷を駆動する。この状態で、伝動する動力は元は異軸式無段変速機100を経由するが、ローギア・トランスミッション・プーリーセット102を経由するように変わり、出力軸103を駆動する。より軽い負荷において、異軸式無段変速機100を経て、キネティックエナジーを直接伝送し、出力軸103を駆動する。
【0029】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態による無段変速機の異軸式無段変速機100の原動プーリーと受動プーリーの直径が、より近く良い効率を維持するものを採用するとき、速度比が増加する或いは速度比が減少する中間トランスミッションプーリーを加設することによって、そのより大きい増速度比或いは減速度比のニーズに応え、より良い伝動効率を保証する。その中間トランスミッションプーリーは以下のいずれかである。
【0030】
(1)入力軸101と異軸式無段変速機100の原動プーリーとの間に、変速プーリーセット302を加設することによって、入力軸101と出力軸103との全速度比を変更させ、また必要な回転方向に一致させる。
図8は、本発明の第2実施形態に係る入力軸101と異軸式無段変速機100の原動プーリーとの間に、変速プーリーセットを加設する構成を示す模式図である。
【0031】
(2)出力軸103と異軸式無段変速機100の受動プーリーとの間に変速プーリーセット402を加設することによって、入力軸101と出力軸103との全速度比を変更させ、また必要な回転方向に一致させる。
図9は、本発明の第2実施形態による出力軸103と異軸式無段変速機100の受動プーリーとの間に、変速プーリーセットを加設する構成を示す模式図である。
【0032】
(3)同時に入力軸101と異軸式無段変速機100の原動プーリーとの間、及び出力軸103と異軸式無段変速機100の受動プーリーとの間に、変速プーリーセット302、402を加設することによって、入力軸101が異軸式無段変速機100を経て、出力軸103に対する全速度比を変化させ、また必要な回転方向に一致させる。
図10は、本発明の第2実施形態による入力軸101と異軸式無段変速機100の原動プーリーとの間、及び出力軸103と異軸式無段変速機100の受動プーリーとの間に、変速プーリーセットを加設する構成を示す模式図である。
【0033】
本発明の実施形態による無段変速機の応用は、必要に応じて以下のローギア・トランスミッション・プーリーセットを選択することが可能である。
(1)ワンセグ固定速度比のローギア・トランスミッション・プーリーセットによって構成する。
(2)マルチセグメントのマニュアル或いはオートマチックの可変速度比のマルチセグメント式切換可能なローギア・トランスミッション・プーリーセットによって構成する。
【0034】
本発明の実施形態による無段変速機の応用は、必要に応じてその入力軸101へ伝送する回転キネティックエナジーの入力方式において、以下の選択が可能である。
(1)入力軸101は回転動力源、例えばエンジン、モーター、発電機、フライホイール、風力発電機のブレードセット、気流力或いは流体力ターボーセット、人力駆動等の回転動力源から直接入力する。
【0035】
(2)入力軸101に、(1)で述べた回転動力源の出力が、はじめにクラッチ装置の制御を経て、回転キネティックエナジー出力を供給する。
(3)入力軸101に、(1)で述べた回転動力源の出力が、固定速度比の変速装置、オートマチックまたはマニュアルの有段或いは無段変速装置、流体伝動装置、電磁ターボー伝動装置を経て、回転キネティックエナジー出力を供給する。
(4)入力軸101に、(1)で述べた回転動力源の出力が、クラッチ装置及び固定速度比の変速装置、オートマチックやマニュアルの有段或いは無段変速装置、流体伝動装置、電磁ターボー伝動装置を経て、回転キネティックエナジー出力を供給する。
【0036】
本発明の実施形態による無段変速機の応用は、必要に応じてその出力軸103からの回転キネティックエナジーの出力方式において、以下の選択が可能である。
(1)出力軸103から回転キネティックエナジーを出力し、負荷を直接駆動する。
(2)出力軸103から回転キネティックエナジーを出力し、クラッチ装置の制御を経て、更に負荷を駆動する。
【0037】
(3)出力軸103から回転キネティックエナジーを出力し、固定速度比の変速装置、マニュアルまたはオートマチックの無段或いは有段変速装置、流体伝動装置、電磁ターボー伝動装置を経て、更に負荷を駆動する。
(4)出力軸103から回転キネティックエナジーを出力し、クラッチ装置及び固定速度比、マニュアルまたはオートマチックの無段或いは有段変速装置、流体伝動装置、電磁ターボー伝動装置を経て、更に負荷を駆動する。
【0038】
本発明の実施形態による無段変速機の構成の実施、応用は、必要に応じて、異軸式無段変速機100とローギア・トランスミッション・プーリーセット102とを分離する独立機械装置に製作してから、伝動を連結し、或いは共同構成の機械装置を製作し、或いは共同構成の機械装置及びマシンシェルの共用に製作することを選択することができる。
【0039】
上述をまとめると、本発明の実施形態に係る無段変速機は、ローギア・トランスミッション・プーリーセット102を設置することによって、より重い負荷において、ローギア・トランスミッション・プーリーセット102を経由し、キネティックエナジーを伝送し、出力軸103を駆動してから、更に負荷を駆動することによって、無段変速機の寿命を延長し、負荷効率を高めることを特徴とする。
【符号の説明】
【0040】
100:異軸式無段変速機、101:入力軸、102:ローギア・トランスミッション・プーリーセット、103:出力軸、111:一方向性伝動装置、302、402:変速プーリーセット、800:駆動制御装置