特許第5971888号(P5971888)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5971888-測長装置および切断機を一体とした装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5971888
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】測長装置および切断機を一体とした装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/02 20060101AFI20160804BHJP
   B23D 33/10 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   G01B5/02
   B23D33/10 Z
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-138821(P2010-138821)
(22)【出願日】2010年6月18日
(65)【公開番号】特開2012-2706(P2012-2706A)
(43)【公開日】2012年1月5日
【審査請求日】2013年6月13日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507075107
【氏名又は名称】菅 英治
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅 英治
【審査官】 ▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−207022(JP,A)
【文献】 実開平04−019719(JP,U)
【文献】 特開昭62−241609(JP,A)
【文献】 特開2001−138130(JP,A)
【文献】 特開2002−122422(JP,A)
【文献】 特開平08−122045(JP,A)
【文献】 特表2009−539071(JP,A)
【文献】 特開平10−296533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00− 5/30
G01B 21/00−21/32
B23D 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールに移動可能に案内されるとともに当該レールに沿って配置された鋼材の端面に当接してレール上における移動距離を検出することにより当該鋼材を測長し得る測定器を有する測長装置と、この測長装置に固定されるとともに上記鋼材を上記測長後に切断する切断機とを一体とした装置であって、
上記測定器に、鋼材の端面に当接し得る当接部材が設けられた主ロッド部を測定器の移動方向に沿って所定距離だけ移動可能に接続体により保持させ、
上記主ロッド部が、その一端部を上記当接部材に設けるとともに他端部を上記接続体に設け、長手方向を上記移動方向に沿って配置されたものであり、
上記接続体が、上記移動方向に直交する鉛直面内で揺動可能に配置されたものであり、
上記測定器が、その移動をロックするクランプレバーを有し、
上記主ロッド部を鋼材に切断機の方向へ付勢するスプリングを設けるとともに、
鋼材の測長時に、上記測定器の切断機からの移動距離を鋼材の必要とする長さと一致させて、上記クランプレバーにより測定器の移動をロックし、上記切断機に載置された鋼材が当接部材に接触するまで当該鋼材を搬送するようにし、
上記切断機が、鋼材を載置する切断台と、この切断台に載置された鋼材の上方から切断台まで下降させることで当該鋼材を切断する回転カッターとを有することを特徴とする鋼材の測長装置および切断機を一体とした装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測長装置および切断機を一体とした装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物品の測長には、巻尺や定規等を用いた方法や、測長機を用いた方法などがある。このような測長機としては、図5に示すように、基台70上に載置した被測定物Wの長さ方向に移動可能な移動体63に、被測定物Wの端面に当接する当接部64を設け、この当接部64と基台70上の端部との距離を測定することで被測定物Wの長さを測定するものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−122422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載の測長機は、単に当接部を被測定物に当接して、被測定物の長さを測定するものである。したがって、被測定物を所定の位置で曲げや切断などの加工を行う場合、すなわち、基台上に載置した被測定物に当接部を当接した状態で加工する場合では、上記測長機を破損するおそれがあった。具体的に説明すると、被測定物が薄ければ特に問題は生じないが、被測定物が厚ければ、曲げや切断加工により被測定物が加工箇所から傾き、被測定物の端面が当接部を押し上げるので、この被測定物からの急激な力を受けた当接部やこの当接部を支持する部材が破損するおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、加工時の鋼材から受ける力を適切に逃がすことができ、また、鋼材の加工時の傾きを抑制して安全に鋼材の測長ができるだけでなく、回転カッターの破損や摩耗を防止できる測長装置および切断機を一体とした装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る測長装置および切断機を一体とした装置は、レールに移動可能に案内されるとともに当該レールに沿って配置された鋼材の端面に当接してレール上における移動距離を検出することにより当該鋼材を測長し得る測定器を有する測長装置と、この測長装置に固定されるとともに上記鋼材を上記測長後に切断する切断機とを一体とした装置であって、
上記測定器に、鋼材の端面に当接し得る当接部材が設けられた主ロッド部を測定器の移動方向に沿って所定距離だけ移動可能に接続体により保持させ、
上記主ロッド部が、その一端部を上記当接部材に設けるとともに他端部を上記接続体に設け、長手方向を上記移動方向に沿って配置されたものであり、
上記接続体が、上記移動方向に直交する鉛直面内で揺動可能に配置されたものであり、
上記測定器が、その移動をロックするクランプレバーを有し、
上記主ロッド部を鋼材に切断機の方向へ付勢するスプリングを設けるとともに、
鋼材の測長時に、上記測定器の切断機からの移動距離を鋼材の必要とする長さと一致させて、上記クランプレバーにより測定器の移動をロックし、上記切断機に載置された鋼材が当接部材に接触するまで当該鋼材を搬送するようにし、
上記切断機が、鋼材を載置する切断台と、この切断台に載置された鋼材の上方から切断台まで下降させることで当該鋼材を切断する回転カッターとを有するようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
上記測長装置および切断機を一体とした装置の構成によると、鋼材の端面に当接する当接部材が有する当接ガイド体を移動可能に設けるとともに、この当接ガイド体を鋼材側に付勢する付勢手段を設けたので、例えば鋼材を所定長さに測定して切断する際に鋼材が傾いた場合でも、その傾いた鋼材から当接部材に作用する力を適切に逃がすことができるとともに、その傾きについても抑制することができ、したがって安全に鋼材の測長を行うことができるだけでなく、回転カッターの破損や摩耗を防止できる
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例に係る測長装置を支持コンベアおよび切断機に固定した側面図である。
図2】同測長装置の斜視図である。
図3】同測長装置における測定器および当接器の一部切欠断面図である。
図4】同測長装置を用いたワークの測長およびワークの切断加工を説明する図であり、(a)はワーク測長前の準備を説明する図、(b)はワークの測長を説明する図、(c)は測長したワークの切断を説明する図である。
図5】従来の測長装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0009】
以下に、本発明の実施例に係る測長装置1を図1図4に基づき説明する。
以下では、鋼材など(以下ではワークと言い、物品の一例である)を測長する測長装置を一例として説明する。
【0010】
この測長装置は、ワークを必要な長さで切断等の加工をするために、予めワークの端部から切断箇所までの長さを計測するものである。したがって、通常、図1に示すように、測長装置1は、ワークを載置する支持コンベア10上に取り付けられるとともに、ワークを切断する切断機15に固定される。以下では、測長装置1から見て切断機15側を後方向、その反対側を前方向とし、この前後方向に水平面で直交する方向を左右方向として説明する。
【0011】
図1および図2に基づいて具体的に説明すると、この測長装置1は、ワークを測長する方向である前後方向に配置されたレール(ガイド部材の一例である)2と、このレール2により前後方向で移動可能に案内される測定器3と、この測定器3に保持されるとともにワークを測長する際に当該ワークに当接する当接器4とから構成される。
【0012】
レール2の上面および左右側面には、レール2の長さ方向である前後方向にガイド溝22が形成されており、測定器3に設けられた図示しないガイドローラが、このガイド溝22により案内される。また、ガイド溝22には、図示しないが、前後方向に亘って磁気ストリップが設けられており、この磁気ストリップが測定器3の図示しないセンサーで検知されて、測定器3の移動距離が計測される。なお、測定器3がレール2の前端より前に移動することを防止するための脱落防止部材21が、レール2の前端部上面に取り付けられている。
【0013】
測定器3は、図2に示すように、上記レール2に案内されてレール2上を移動し得る本体部30と、この本体部30の上面に取り付けられた取付アーム36に支持されて当該本体部30のレール2上での移動距離を表示する表示部35と、本体部30を手動によりレール2上で移動させるため本体部30上面に設けられた移動グリップ33と、本体部30の左側面に設けられて本体部30の移動をロックするクランプレバー34とから構成される。なお、表示部35で表示される本体部30の移動距離は、本体部30に設けられたセンサーで上記磁気ストリップを検知して、計測されるものである。
【0014】
当接器4は、本体部30の右側面で前後方向に取り付けた支持軸42を介して鉛直面内で揺動可能に配置した接続体40と、主ロッド部51および副ロッド部44(いずれも後述する)を前後方向に案内する各貫通穴が形成されるとともに上記接続体40の後側面に取り付けられた案内支持板43と、この案内支持板43および接続体40に貫通させて前後方向に配置した主ロッド部(当接ガイド体の一例である)51と、前端側が案内支持板43の主ロッド用貫通穴の外周囲に取り付けられて主ロッド部51を後方向に付勢するスプリング(付勢手段の一例である)52と、前端部を上記案内支持板43の副ロッド用貫通穴に貫通させ且つ後端面を主ロッド部51とともに当接ブロック(後述する)45に取り付けてこの当接ブロック45を前後方向に移動可能とする副ロッド部44と、前面がこれら主ロッド部51および副ロッド部44における後端面に取り付けられて後面をワークに接触させ得る当接ブロック(当接部材の一例である)45とを具備する。
【0015】
ここで、主ロッド部51について詳細に説明する。主ロッド部51には、スプリング52による後方向への付勢力を受けるためのストッパーリング53と、スプリング52による付勢力で主ロッド部51が接続体40から脱落することを防止する脱落防止リング55と、この脱落防止リング55と接続体40の衝突による衝撃を吸収する緩衝リング56とが取り付けられている。また、上記ストッパーリング53は、スプリング52による付勢力を調整できるようにするため、主ロッド部51における前後方向での固定位置を自由に調整できる構造とする。例えば、ビス54によりストッパーリング53を主ロッド部51に固定する構造とすることで、その固定位置を前後方向で自由に調整できる。
【0016】
次に、測定器3の本体部30と当接器4の接続体40との関係について、図3に基づき説明する。図3は、本体部30および接続体40の前後方向における中央断面を、後方向から前方向に見た一部切欠断面図である。この図3に示すように、接続体40には本体部30に向けて突起部41を形成するとともに、本体部30には接続体40に対向する面に切欠部31を形成し、この突起部41が切欠部31内に入るようにして接続体40が配置される。さらに、本体部30には、規制ボルト32を上方から螺挿して、この規制ボルト32の下部を切欠部31の上端面から突出させており、突起部41がこの規制ボルト32の下端面で規制されることで、案内支持板43が下方に移動する方向への接続体40の回転を規制する。一方、切欠部31は、その下端面と突起部41が接触しないような大きさで形成されているので、案内支持板43が上方に移動する方向へ接続体40を回転させることはできる。
【0017】
一方、ワークを載置するための支持コンベア10は、図1に示すように、鋼材を枠状に組んだ前後方向の架台部11と、この架台部11内に配置されるとともにワークを支持して前後方向へ搬送し得る複数のローラ12と、この架台部11を支持する伸縮自在の脚柱部13とから構成される。この支持コンベア10上への測長装置1の固定は、支持コンベア10の架台部11とレール2とを接続する保持金具14により行われる。
【0018】
また、切断機15は、ワークを載置する切断台16と、切断台16に載置したワークを切断するための回転カッター19を有するカッター部18と、カッター部18を切断台16の上方で保持するとともにこのカッター部18を下降させ得るレバー部17とを有する。
【0019】
以下、この測長装置1を用いたワークの測長およびワークの切断加工について説明する。
まず、図1に示すような状態にするため、クレーン等により、測長装置1を支持コンベア10上に配置し、保持金具14により固定する。そして、測長装置1を切断機15の前に配置し、切断台16の上面と支持コンベア10のローラ12上端が面一になるように、支持コンベア10の脚柱部13の伸縮を調節した後、切断機15と測長装置1を固定する。
【0020】
次に、図4(a)に示すように、切断機15のレバー部17によりカッター部18を下降させるとともに、測定器3の移動グリップ33を把持して手動により測定器3を後方向へ移動させ、当接ブロック45の後面を回転カッター19の前面に軽く(スプリング52が収縮しない程度に)接触させる。そして、この位置を基準とするため、表示部35に設けられた図示しないリセットボタンを押してセンサーによる計測をリセットする。これにより、表示部35には移動距離として「0」が表示される。
【0021】
その後、表示部35で表示される移動距離を確認しながら、測定器3を前方向へ移動させる。表示される移動距離が、必要とするワークの長さと一致すれば、測定器3の移動を停止し、クランプレバー34により測定器3の移動をロックして、測定器3をレール2上に固定する。
【0022】
そして、図4(b)に示すように、ワークWを切断台16およびローラ12の上面に載置し、このワークWが当接ブロック45の後面に軽く接触するまで、ワークWを前方向へ搬送する。この搬送により、ワークWが当接ブロック45を押してスプリング52が収縮した場合は、スプリング52が収縮しない程度にまで、ワークWを少しずつ後方向へ戻す。
【0023】
以上のような作業により、ワークWの測長が行われる。すなわち、ワークWの前端から切断予定位置までの長さが、必要とするワークWの長さと一致する。
その後、図4(c)に示すように、レバー部17によりカッター部18を下降させ、回転カッター19でワークWを切断する。この切断時には、ワークWが切断箇所から傾いてワークWの前端面が当接ブロック45を後方向から押し上げるが、この当接ブロック45は前方向に移動して、ワークWから受ける力を逃がす。また、前方向に移動した当接ブロック45は、スプリング52の付勢力でワークWを後方向へ押し戻す。
【0024】
一方、測長装置1を用いない場合は、図3に示すように、案内支持板43が上方に移動する方向へ接続体40を回転させて、当接器4を測定器3側に寄せることで、他の作業を支持コンベア10上で行う際に、この当接器4が妨げとならない。
【0025】
このように、当接器4がクランプレバー34により測定器3とともにレール2上で固定されていても、当接ブロック45が前方向に移動し得るので、切断中のワークWから受ける力を逃がして測長装置1の破損を防ぐことができる。また、ワークWが傾けば、当接ブロック45がスプリング52の付勢力でワークWを後方向へ押し戻すため、切断されたワークWの飛び跳ねを防止できるとともに、ワークWの切断時における傾きを抑制することで回転カッター19の破損や磨耗を防止できる。さらに、接続体40を回転させて当接器4を測定器3側に寄せることで、測長装置1が他の作業の妨げとなることを防ぐこともできる。
【0026】
ところで、上記実施例では、測長装置、支持コンベアおよび切断機を一体とした装置について説明したが、測長装置のみで用いてもよい。
また、上記実施例では、ワーク用の測長装置について説明したが、ワーク用に限定されるものではない。
【0027】
さらに、上記実施例における測長装置の主たる材質は、測長装置が固定された支持コンベアの安定性や防食を考慮すれば、アルミ製が軽量で耐食性を有するため適しているが、これに限定されるものではなく、他の材質であってもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 測長装置
2 レール
3 測定器
4 当接器
30 本体部
32 規制ボルト
34 クランプレバー
40 接続体
44 副ロッド部
45 当接ブロック
51 主ロッド部
53 ストッパーリング
55 脱落防止リング
56 緩衝リング
図1
図2
図3
図4
図5