【課題を解決するための手段】
【0007】
そのために、容器内で容器の流体入口から流体を分配するための分配機構が提案される。その際、この分配機構は、案内部とこの案内部に隣接する分配部とを備えた少なくとも1つの案内板を有する。この案内部は、流体を通すための開口部を備えた領域を持つ。
【0008】
本分配機構の側部は、流体が専ら開口部からのみ下方へ進むことができてそれ以外は分配機構によって保持されるように、流体密に閉塞しておくことが可能である。
【0009】
流体は、特に液体成分と気体成分とを含んでいてもよい。例えば、流体は、気体/液体混合物として容器としてのジャケット室内へ流入する冷媒であってもよい。
【0010】
一般的に、適当な流体は、ただ局所的に容器の流体入口または入口ノズルの領域から流入するので、入口分流器(Inlet Flow Diverter )とも呼ぶことができる分配機構によって特に有利な均質の流体分配が実現される。
【0011】
本分配機構は、特に低温設備での利用に適している。しかし、利用分野には、熱交換器が用いられる他のプロセス設備も含まれ、例えば、ガス液化や空気分別などでの利用が考えられる。
【0012】
本分配機構の一実施形態では、案内板が、異形断面を有する曲げ加工した薄板として実施されている。この場合、異形断面は、例えば、弓形や屈曲した山形、あるいはエッジ形状、例えばL字角の形状であってもよい。
【0013】
本分配機構の一実施形態では、案内部と分配部とが、互いに隣接しかつ互いにほぼ垂直に配置された少なくとも2つの案内板によって形成されている。
【0014】
案内板の形状は例えば矩形であってもよい。
【0015】
分配板は、孔、間隙、スロット、あるいは、例えば、材料を除去することによって作られた他の形状の開口部を有し、これにより、特に流体を下方へ通過させることができる。好ましくは、本分配機構は水平に配置されている。分配部は、例えば孔またはスロット開口部を有する水平面を形成する。
【0016】
従って、容器内で容器の流体入口から流体を分配するための本分配機構の実施形態は、互いに隣接してかつ互いにほぼ垂直に配置された少なくとも2つの案内板を含む。その際、一方の案内板は、流体を通過させるための開口部を備えた領域を有する。この第1の案内板は特に衝突板として構成可能であり、第2の案内板は分配薄板として構成可能である。衝突板として構成された案内板は好ましくは垂直に延在し、分配薄板として構成された案内板は水平に延在する。
【0017】
好ましくは、本分配機構の側部が垂直方向に全体的または部分的に閉塞されており、これにより、流体の流れがほぼ分配薄板の開口部を通るように案内される。
【0018】
案内板は、材料を一体的に用いて、屈曲した薄板として構成することが可能である。
【0019】
本分配機構の一態様では、2つの案内板がL形材を形成し、このL形材の端面に側部板が配置されている。側部板は、例えば本分配機構の側部を流体密に封止する。特に側部板を有する屈曲した態様によって、例えば分配通路として機能する部分スペースを容器内に画成することができる。
【0020】
好ましくは、開口部はスロットとして構成されている。スロットは、特に分配薄板に、この薄板のエッジに対してまたは形材の角に対してほぼ垂直方向に形成されている。
【0021】
本分配機構は、好ましくは、少なくとも部分的にアルミニウムまたは特殊鋼から成る。材料は、本分配機構のそれぞれの用途に合わせて、例えば低温設備での利用に適合するように選定できる。
【0022】
さらに、流体入口を有する容器と、この容器内に配置された少なくとも1つの熱交換器ブロックと、この容器内において熱交換器ブロックの上方に配置された分配機構とを備えた熱交換装置が提案される。
【0023】
この熱交換装置は、特に容器内ブロック組み込み式の熱交換器として構成される。これはまた、コア・イン・シェル式(Core-in-Shell)またはブロック・イン・ケトル式(Block-in-Kettle)の熱交換器構成とも呼ぶ。この場合、一般的に、通例プレート式熱交換器として構成された複数の熱交換器ブロックが、1つの容器内あるいは1つのジャケット室内に並べて配置されている。ジャケット室は例えば冷媒用の流動室を形成し、冷媒は大抵の場合等温蒸発され、その際、熱交換器ブロック内を流れる流体が冷却される。これらの熱交換器ブロックは、好ましくは同じ高さに配置されている。また、非等温蒸発を行うことも可能である。
【0024】
上記の通り、本熱交換装置の実施形態は、流体入口を備えた容器と、この容器内に配置された複数の熱交換器ブロックとを有し、かつ、流体入口を貫流する流体を分配するための分配機構を前記熱交換器ブロックの上方に有する。その際、分配機構は、案内部とこの案内部に隣接する分配部とを備えた少なくとも1つの案内板を有し、かつ、この分配部が流体を通過させるための開口部を備えた領域を有する。
【0025】
一実施形態では、容器は円筒状に構成されており、冷媒用流動領域のためのジャケット室を形成する。その際、円筒軸は、好ましくは水平に配置されている。
【0026】
好適な一実施形態では、分配機構が、円筒軸に対して垂直方向に延在する衝突板と、円筒軸に沿って水平方向にまたは円筒軸に対して平行に延在する分配薄板とから成る。分配薄板における下向きの開口部は、複数または単一の熱交換器ブロックの上方に位置している。上方とは、垂直方向に、より高い位置であることを意味する。本分配機構は、必ずしも熱交換器ブロック全体にわたって延在している必要はない。
【0027】
好ましくは、本熱交換装置の場合、分配機構は、流体入口を通って容器内へ流入する流体が、分配部の開口部を通って意図通りに所定のジャケット領域へ流入するように容器内に配置されている。例えば、流入する流体は、少なくとも一部が熱交換器ブロック上へ落下する。開口部のこの配置および構成によって、ジャケット室内において、流体の液体成分を開口部を通じて単一または複数の熱交換器ブロックの上面または横へ所望通りに分配することが可能となる。
【0028】
好ましくは、分配機構を用いて、流体、特に液体がジャケット室の領域内へ案内または分配され、そこでは、例えば熱交換器ブロックによる蒸発によって生成される気体は可能な限りわずかであるか、あるいは全く生成されない。気相と液相の分離はこれにより改善される。
【0029】
熱交換装置の一実施形態では、本分配機構は、容器の壁部およびオプションの側部板と共に容器内に部分スペースを画成する。分配機構と容器の壁部とが例えば部分スペースを包囲する。例えば分配通路としてのこの部分スペースは、分配機構の分配部にある開口部によって容器壁部の流体入口を流動室に接続する。
【0030】
例として、この部分スペースは流入側が流体入口に連結され、流出側が出口としての開口部に連結されている。
【0031】
本熱交換装置の一実施形態では、流体入口は一定の入口断面と入口方向とを有する。分配機構は、好ましくは、容器の長手延在方向に沿って水平および平行に構成された長手軸を有する。
【0032】
好ましくは、分配機構の長手方向延在部が入口方向に対して垂直に位置する。一実施形態では、開口部がスロットとして容器の長手軸に対して垂直に形成されている。スロットは、例えば、容器の長手軸に対して垂直に形成された部分スペース断面または容器断面に対して平行に延在する。
【0033】
本熱交換装置の好適な一実施形態では、分配機構と容器壁部とによって形成された分配通路の断面が、流体入口の入口断面に一致する。これにより、特に有利なことに、例えば、適当なノズルからの大量の流れを流体入口によって左右に分割することが実現できる。
【0034】
好適な一実施形態では、分配機構がL字形薄板として構成されている。好ましくは、スロット幅が30mmから70mmの間である。特に好ましくは、スロット幅が50mmである。
【0035】
本熱交換装置の一実施形態では、開口部がスロットとして構成されており、このスロットからL字形薄板のエッジまたは角までの距離が40mmから100mmの間である。特に好ましくは、上記距離が60mmから80mmの間である。
【0036】
本熱交換装置の更なる一実施形態では、全開口部の総断面積が流体入口の断面積の150%から250%の間である。特に好ましくは、全開口部の総断面積が流体入口の断面積の2倍である。分配機構の側部は、好ましくは側部板で閉塞される。この場合、原理上、複数の入口ノズルも考えられる。
【0037】
本熱交換装置の更なる一実施形態では、分配機構の分配部が、流体密な領域を有してこれらの流体密な領域の下に熱交換器ブロックが存在しないように構成されている。
【0038】
例えば、分配機構の前記分配部は、専ら単一または複数の熱交換器ブロックの直接上方にのみ開口部を備えており、それ以外は流体密に構成されている。これにより、容器内において互いに並んで位置する熱交換器ブロックの間の領域に流体が滴下あるいは流入することがない。
【0039】
特に、本熱交換装置の場合、熱交換器ブロックの上方に分配部の開口部が存在してそれ以外では分配部が閉塞されるように、熱交換器ブロックと分配機構とが配置されている。
【0040】
あるいはまた、分配機構の分配部が、専ら熱交換器ブロックの横または間にのみ開口部を備えており、それ以外は流体密に構成されている。これにより、容器内の熱交換器ブロックの上方の領域に流体が滴下あるいは流入することがない。
【0041】
特に、本熱交換装置の場合、熱交換器ブロックの横または側方に分配部の開口部が存在してそれ以外では分配部が閉塞されるように、熱交換器ブロックと分配機構とが配置されている。
【0042】
本熱交換装置の別の一態様では、流体入口の横に1つまたは複数の流体出口が設けられている。容器の、特に気体状流体用の流体出口ノズルの下方には、分配機構の分配部の開口部は設けられていない。
【0043】
ここに提案する熱交換装置の場合、冷媒としての流体は、分配機構によって上方から水平の分配通路を介して分配され、熱交換器ブロックの周囲を有利に流動できる位置へと至る。開口部の上記配置によって、流体を、熱交換器ブロックを備えた流動領域へ所望通りに案内することができ、そこで気体/液体分離を効率的に行うことが可能である。
【0044】
本分配機構または本熱交換装置の可能なその他の実施態様または変形態様には、上記または実施形態に関する下記説明に記載された特徴を、明示的には挙げていない形で組み合わせたものも含まれるものとする。その際、当業者は、本分配機構または本熱交換装置の各基本形態に対して改良または補完のために個々の特徴を付け加えることになるであろう。
【0045】
本発明のその他の構成は、従属請求項および以下に説明する本発明の実施形態に記載されている。さらに以下において、添付した図を参照しながら本発明について詳述する。