特許第5972005号(P5972005)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972005
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】水溶性消泡剤および低泡性加工油剤
(51)【国際特許分類】
   B01D 19/04 20060101AFI20160804BHJP
【FI】
   B01D19/04 B
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-74484(P2012-74484)
(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公開番号】特開2013-202518(P2013-202518A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135265
【氏名又は名称】株式会社ネオス
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東田 遼
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 匠
【審査官】 関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−072000(JP,A)
【文献】 特開平01−045329(JP,A)
【文献】 特開昭62−101698(JP,A)
【文献】 特表2009−529597(JP,A)
【文献】 特公昭40−028250(JP,B1)
【文献】 国際公開第01/076729(WO,A1)
【文献】 特開2010−202826(JP,A)
【文献】 特開2007−204647(JP,A)
【文献】 特開平11−323376(JP,A)
【文献】 特開昭59−108098(JP,A)
【文献】 特開2000−034492(JP,A)
【文献】 特開2000−044505(JP,A)
【文献】 特開2007−099906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 19/04
C10M 133/06
C10M 133/54
C10M 173/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオキシアルキレンアミンを有効成分とする水溶性消泡剤を含有する金属・ガラス加工用の低泡性加工油剤であって、
前記ポリオキシアルキレンアミンが下記式のいずれかで表される化合物である、加工油剤。
【化1】
【請求項2】
ポリオキシアルキレンアミンの配合割合が5×10−7〜1重量%である、請求項1に記載の加工油剤。
【請求項3】
水溶性である、請求項1または2に記載の加工油剤。
【請求項4】
ブロック型酸化プロピレン−酸化エチレン共重合体またはリバース型プルロニック共重合体をさらに含有する、請求項3に記載の加工油剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性消泡剤に関する。また本発明は、該水溶性消泡剤を含有する金属・ガラス加工用の低泡性加工油剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、加工後の製品表面の清浄度はかつてにも増して求められており、製品の品質や歩留まりの悪化を抑えるべく、製品表面上の油分汚れや微粒子の異物の十分な清浄度が必要である。この清浄度を達成するためには、製品の洗浄のみならず、加工機械の洗浄も重要となる。しかしながら、シリコーン系の消泡剤を用いた場合、その疎水性ゆえに加工機械からの水洗浄による汚れの除去が困難であり、要求される清浄度の実現の妨げとなるといった問題点があった。
【0003】
また、使用時においても、シリコーン系の消泡剤は水に難溶性であるため、(i)通常の状態では、水溶性切削油剤等のような水溶性の系と分離してしまうこと、(ii)このため、系作動時には攪拌して系と均一にする手間が必要なこと、(iii)低濃度で使用する場合は該消泡剤が金属屑などに付着するため、短時間で効果が減少してしまうこと、(iv)このため、効果を長期維持するためには添加量を増したり、連続的に添加する必要があること等の問題もある。それに対し、従来では、例えば、消泡剤としてポリエチレンイミンを用いるような方法(特許文献1)が提案されていたが、その場合には鉄等の金属への腐食性が問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3632104号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、加工作業後の加工機械を洗浄する工程において、要求される機械表面の高清浄度を実現することの妨げとならず、かつ、従来の消泡剤の問題点を解決した消泡剤を提供することである。また、本発明の他の目的は、かかる消泡剤を含有することを特徴とする金属・ガラス加工用の低泡性加工油剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、金属・ガラス加工用の研削加工油剤用の消泡剤について研究を行った結果、シリコーン系消泡剤に比べ高い水溶性を有するポリオキシアルキレンアミン類の中で特定の構造の化合物が消泡剤として利用できることを見出し、更に鋭意検討を重ねて本発明を完成するに至った。本発明は、下記項1〜5に示す水溶性消泡剤及び該消泡剤を含有する金属・ガラス加工用の低泡性加工油剤を提供する。
【0007】
項1. ポリオキシアルキレンアミンを有効成分とする消泡剤であって、前記ポリオキシアルキレンアミンが下記式(1)
【0008】
【化1】
【0009】
{ここで、A1は炭素数2〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基であり、A2は炭素数3〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基であり、A1とA2は互いに同一であっても異なっていてもよい。−R1は−CH3もしくは−A3NH2(A3は炭素数2〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基)もしくは下記式(2)
【0010】
【化2】
【0011】
(ここで、mは0または1であり、R2はH、CH3またはCH2CH3であり、かつ、R2= CH3またはCH2CH3かつm=1もしくはR2=Hかつm=0であり、A1並びにA2は前記に定義されるとおりである)で表される有機基であり、かつ、下記式(3)
500≦P×Q×R≦10000 (3)
(式中、Pは 式(1)で表されるポリオキシアルキレンアミンの重量平均分子量、Qは (OA1)n1(OA2)n2で表されるポリアルキレン基におけるA1、A2の炭素数が3或いは4である部分のn1+n2数のA1、A2の炭素数が2である部分も含んだ全n1+n2数に対するモル分率、及び Rは分子中のアミノ基の数である)の要件を満たす。}
で表される化合物であることを特徴とする水溶性消泡剤。
項2. R1がCH3である場合、Pが1,500以上であり、かつ、Qが0.5以上である項1に記載の水溶性消泡剤。
項3. R1がA3NH2(A3は炭素数2〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基)である場合、Pが300以上であり、かつ、Qが0.5以上である項1に記載の水溶性消泡剤。
項4. R1が一般式(2)で表される有機基である場合、Pが400以上であり、かつ、Qが0.5以上である項1に記載の水溶性消泡剤。
項5. 項1〜4のいずれかに記載の水溶性消泡剤を含有する金属・ガラス加工用の低泡性加工油剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水溶性消泡剤及び該消泡剤を含有する低泡性加工油剤を用いることにより加工作業後の加工機械を洗浄する工程において、水洗浄のみにより本発明の消泡剤が除去可能であるために、要求される機械表面の高清浄度を実現でき、製品の品質や歩留まりの悪化を抑えることができる。また、従来の消泡剤の問題点(原液中の安定性、希釈液中の安定性、金属屑等への付着、消泡効果の持続性、金属への腐食性等)も解決することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の水溶性消泡剤は、ポリオキシアルキレンアミンを有効成分として含み、ポリオキシアルキレンアミンが下記式(1)、
【0014】
【化3】
【0015】
{ここで、A1は炭素数2〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基であり、A2は炭素数3〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基であり、A1とA2は互いに同一であっても異なっていてもよい。−R1は−CH3もしくは−A3NH2(A3は炭素数2〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基)もしくは下記式(2)
【0016】
【化4】
【0017】
(ここで、mは0または1であり、R2はH、CH3またはCH2CH3であり、かつ、R2= CH3またはCH2CH3かつm=1もしくはR2=Hかつm=0であり、A1並びにA2は前記に定義されるとおりである)で表される有機基であり、かつ、下記式(3)
500≦P×Q×R≦10000 (3)
(式中、Pは 式(1)で表されるポリオキシアルキレンアミンの重量平均分子量、Qは (OA1)n1(OA2)n2で表されるポリアルキレン基におけるA1、A2の炭素数が3或いは4である部分のn1+n2数のA1、A2の炭素数が2である部分も含んだ全n1+n2数に対するモル分率、及び Rは分子中のアミノ基の数である)の要件を満たす。}
で表される化合物であることを特徴とする。
【0018】
A1とA2の一方は炭素数が3又は4のアルキレン基であり、他方は炭素数が2、3又は4
のアルキレン基であり、A1とA2は以下のいずれかの組み合わせになる。
(1)A1が炭素数2のアルキレン基の場合、A2は炭素数3又は4のアルキレン基。
この場合Q=n2/(n1+n2)である。
(2)A1が炭素数3のアルキレン基の場合、A2は炭素数3又は4のアルキレン基。
この場合Q=(n1+n2)/(n1+n2)=1である。
(3)A1が炭素数4のアルキレン基の場合、A2は炭素数3又は4のアルキレン基。
この場合Q=(n1+n2)/(n1+n2)=1である。
【0019】
A1で表される炭素数2〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基としては、CH2CH2、CH2CH(CH3)、CH2CH2CH2、CH2CH2CH2CH2、CH(CH3)CH2CH2、CH2CH(CH3) CH2、CH2CH(CH3)2、CH2CH(CH2CH3)2などが挙げられる。
【0020】
Pで表される式(1)のポリオキシアルキレンアミンの重量平均分子量は、300以上、350以上、400以上、500以上、600以上、800以上、1000以上、1200以上あるいは1500以上であり、かつ、20000以下、15000以下、10000以下、8000以下、6000以下、5000以下、4000以下、あるいは3000以下である。
【0021】
Rで表される式(1)のポリオキシアルキレンアミン分子中のアミノ基の数Rは、1個(R1=CH3)、2個(R1=A3NH2)または3個(R1=式(2)の有機基)である。
【0022】
n1、n2はPで表される重量平均分子量が上記の数値になるような整数であり、具体的にはn1は0〜200の整数、n2は2〜200の整数である。
【0023】
mは0または1である。
【0024】
R2はH、CH3またはCH2CH3である。
【0025】
本発明の水溶性消泡剤の有効成分であるポリオキシアルキレンアミンは公知の化合物であり、その多くがドイツにあるハンツマン社(Huntsman Corporation)から購入でき、R1がCH3である化合物はジェファーミン( JEFFAMINE、商標)M シリーズの名で、R1がA2NH2(A2は炭素数2〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基)である化合物は同じくジェファーミン D シリーズ及びXTJ シリーズの名で、R1が式(2)で表される構造である化合物は同じくジェファーミン T シリーズの名で、それぞれ販売されている。
【0026】
本発明の水溶性消泡剤は、適用する加工油剤や洗浄剤などの系に対して、5×10−7〜1重量%、好ましくは5×10−5〜5×10−1重量%、より好ましくは5×10−4〜10−1重量%の少ない配合割合で適用されて優れた消泡作用を発揮する。なお、本発明でいう消泡作用とは、一旦生じてしまった泡を破泡する作用を意味するものである。
【0027】
また、本発明は、前述の消泡剤の少なくとも一種を含有する金属・ガラス加工用の低泡性加工油剤である。本発明でいう加工油剤とは、金属・ガラス加工に用いられる潤滑、冷却作用を有するものを意味し、具体的には水溶性の切削油剤、研削油剤、研磨油剤が挙げられる。本発明の低泡性加工油剤は、前述の消泡剤の少なくとも一種を含んでいたらよいが、二種以上を適宜選択して配合されていても良い。
【0028】
その消泡剤の含有量は、特に制限されないが、通常5×10−7〜10重量%の範囲から適宜選択される。前述するように、本発明の消泡剤は、適用する系に対して5×10−7〜1重量%、好ましくは5×10−5〜5×10−1重量%、より好ましくは5×10−4〜10−1重量%の配合割合で有意な消泡作用を発揮するため、この範囲で用いられるのが好ましい。また、使用の容易さ・簡便さから、予め、前述の消泡剤を10−4〜10重量%の比較的高い配合割合で含有する加工油剤を調製しておくのが好ましい。この場合、加工油剤使用時に、この高い配合割合で消泡剤を含有する低泡性加工油剤を、それらを適用する系に上記の配合量になるように添加・混合して用いることができる。
【0029】
本発明の消泡剤は、水溶性に優れるため、洗剤を用いずとも、水洗のみで容易に除去可能である。また、切削油剤、研削油剤等の水溶性の加工油剤に対して可溶性(混和性)に優れるため、低濃度から高濃度までの広い濃度範囲において、分離・沈殿することなく均一・均質な状態で存在している。さらに、5×10−7〜10重量%という低濃度の状態で加工油剤や洗浄剤中で使用されても、金属屑等に付着することにより濃度が変動し、消泡作用が低下する等といった従来の消泡剤の問題を生じない点で有用である。即ち、本発明で提供する消泡剤は、水溶性切削・研削油剤等の加工油剤で汎用されているシリコン系消泡剤が抱えている多くの問題(加工機への付着、原液中の安定性、希釈液中の安定性、消泡効果の持続性等)を解決した有用なものである。加えて、少量の添加で効果を発揮することや、金属に対する腐食性がないこと等様々な有利な点を持っている。
【0030】
本発明の加工油剤は、本発明の消泡剤とともに、通常の成分を配合することができる。このような成分としては、例えば市販のブロック型酸化ロピレン−酸化エチレン共重合体、具体的には、プルロニック型界面活性剤(例えば、三洋化成工業(株)製のニューポールPEシリーズや旭電化工業(株)製のアデカプルロニックLまたはFシリーズ)、リバース型プルロニックとして知られている共重合体(例えば旭電化工業(株)製アデカプルロニックRシリーズ、ミヨシ油脂(株)製のプリストールRMシリーズ、BASFジャパン社製のプルリオールPREシリーズ)、テトロニック型界面活性剤、およびリバース型テトロニック(例えば、旭電化工業(株)製のアデカテトロニックシリーズ、テトロニックRシリーズ)などが挙げられる。
【0031】
加工油剤は、防錆性の点から常套手段として用いられるpH調整を行うことが望ましい。一般にpHの範囲としては8〜11、好ましくは、9〜10.5である。pH調整剤としては水溶性の塩基性物質が用いられ、例示するとK、Naの水酸化物、モノ、ジまたはトリメチルアミン、モノ、ジまたはトリエチルアミン、モノ、ジまたはトリブチルアミン、モノまたはジシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のアミン、モノ、ジまたはトリエタノールアミン、モノ、ジまたはトリイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン等が挙げられる。好ましくは、KOH、NaOH、アンモニア、またはエタノールアミン類、プロパノールアミン類である。
【0032】
本発明の加工油剤には、所望により潤滑剤(例えば、鉱物油、動植物油、高級脂肪酸、脂肪酸エステル等)、防錆剤(例えば、p-t-ブチル安息香酸、高級脂肪酸塩、ほう酸、アルカノールアミン等)、極圧添加剤(例えば、塩素化パラフィン、硫黄化パラフィン、燐酸エステル等)、界面活性剤、防腐剤、染料、香料等の常套の添加剤を適宜配合してもよい。
【0033】
本発明で提供する消泡剤は、水溶性加工油剤、洗浄剤への添加で持続的な消泡効果を発揮するだけでなく、製紙・パルプ、塗料、廃水処理等の幅広い分野での消泡剤としても効果が期待される。
【実施例】
【0034】
以下に、本発明の水溶性消泡剤の評価を挙げて、本発明を一層明らかにするが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
実施例1−1〜1−7及び比較例1−1〜1−3
消泡性評価
以下の条件で消泡試験の評価を行った。
(i)表1に記載する配合処方によって、界面活性剤と消泡剤の混合水溶液の原液、比較例(1−1)〜(1−3)及び実施例(1−1)〜(1−7)を調製した。
【0036】
なお、表1におけるRM-183とはミヨシ油脂社製リバース型ポリマーのプリストールRM-183であり、MH-50とはADEKA社製ランダム型ポリマーのアデカカーポール MH-50であり、NN-61とは三洋化成工業社製ブロック型ポリマーのNN-61であり、PPG-200とはポリプロピレングリコール(重量平均分子量=200)である。また、KM-70とは信越化学工業社製シリコーン系消泡剤のKM-70であり、T-403、T-3000、M-2005、D-230、D-400、D-2000、ED-900、XTJ-542とはそれぞれ前述したハンツマン社製の水溶性消泡剤である(表2)。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
(ii)これをイオン交換水で20倍希釈して500mlとした。これを液温25℃下、ジューサーミキサーで一分間攪拌した後、停止し、その後の泡立ち量を体積換算して経時変化(0〜30分間)を測定した。
(iii)消泡性の判定は、消泡剤を添加していない場合に比べた、泡が消えるまでに要する時間の短縮率が、20%未満を×、20%以上50%未満を△、50%以上90%未満を○、90%以上を◎として行った。
消泡性評価結果を表3に示す。
【0040】
【表3】
【0041】
実施例(1−1)〜(1−4)の消泡剤においては、比較例(1−1)のシリコーン系消泡剤よりも、消泡性において優れた結果を示した。しかし、比較例(1−2)及び(1−3)に示すように、P×Q×Rの値が500以上10,000以下の範囲にないポリオキシアルキレンアミンは、消泡性を示さなかった。実施例(1−5)〜(1−7)の消泡剤においては、比較例(1−1)のシリコーン系消泡剤と同等程度の消泡性を示し、かつ、シリコーン系消泡剤と異なり水洗により容易に除去できることが確認された。
また、その他の界面活性剤においても実施例の消泡性は優れた結果を示した。
【0042】
実施例2−1〜2−6及び比較例2−1
洗浄性評価
以下の条件で洗浄試験の評価を行った。
(i)十分に脱脂した、ガラス板(松浪硝子工業株式会社製スライドガラス 白縁磨No.1:0.8〜1.0×26×76mm)を6枚1組として重量を測定した。
(ii)ガラス板に消泡剤を塗布し、乾燥後重量を測定し消泡剤の付着量を算出した。
(iii)テストピース6枚を水道水に浸漬させ、攪拌回転数100rpmで2分間、常温にて洗浄操作を行った。
(iv)洗浄後、常温で1分間イオン交換水に浸漬させることにより水洗を行い、十分に自然乾燥させた。
(v)テストピース6枚分の合計重量をそれぞれ測定し、消泡剤の除去量・除去率を算出した。
(vi)洗浄性の判定は、除去率50%未満を×、50%以上90%未満を○、90%以上を◎として行った。
洗浄性評価結果を表4に示す。
【0043】
【表4】
【0044】
実施例の消泡剤においては、比較例のシリコーン系消泡剤よりも、水による洗浄性において優れた結果を示した。
【0045】
実施例3−1〜3−5及び比較例3−1
鉄の腐食性評価
以下の条件で鉄の腐食試験の評価を行った。
(i)表5に記載する配合処方によって、防錆剤(ジエタノールアミン+ドデカン二酸)と消泡剤の混合水溶液の原液、比較例(3−1)及び実施例(3−1)〜(3−5)を調製した。
【0046】
なお、G-35とはBASF社製ポリエチレンイミン系消泡剤のルガルバン(Lugalvan、商標) G 35である。
【0047】
【表5】
【0048】
(ii)これをイオン交換水で10倍希釈し、50mlサンプル瓶に50gだけ入れた。ここに、鋳鉄チップ(株式会社エンジニアリングテストサービス製FC-250:5g)を加え、恒温機槽により50℃で1週間加温した。サンプル瓶を液濃度が均一になる程度に振盪し、チップが沈殿したことを目視で確認した後、液中の鉄イオン濃度を原子吸光計により測定した。
(iii)腐食性の判定は、鉄の溶出量が防錆剤のみの場合に比べ、500%以上を×、500%未満200%以上を△、200%未満50%以上を○、50%未満を◎として行った。
鉄の腐食性評価結果を表6に示す。
【0049】
【表6】
【0050】
実施例の消泡剤においては、比較例のポリエチレンイミン系消泡剤だけでなく、防錆剤のみの場合よりもなお、鉄の腐食において優れた結果を示した。