(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポンプ制御手段は、前記低気圧制御パターンの実行時において、前記タンク圧力が前記負圧アクチュエータの最低作動圧を超える前に前記バキュームポンプを駆動させる、請求項1に記載の車両制動用の負圧アクチュエータ制御装置。
前記ポンプ制御手段は、前記通常気圧制御パターンの実行時において、前記タンク圧力が所定のポンプ駆動開始圧力以上の場合に前記バキュームポンプを駆動させると共に、前記タンク圧力が所定のポンプ停止圧力以下の場合に前記バキュームポンプを停止させ、
前記ポンプ駆動開始圧力及び前記ポンプ停止圧力は、前記ポンプ駆動開始圧力及び前記ポンプ停止圧力の差圧が前記負圧アクチュエータの複数回分の負圧消費量を含むように設定されている、請求項1又は2に記載の車両制動用の負圧アクチュエータ制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、負圧アクチュエータの作動のためには、大気圧と負圧タンク内のタンク圧力との差圧(負圧)が一定値以上必要となる。しかしながら、前述した従来の制御方法では、大気圧が低くなると大気圧を考慮しないポンプ制御に切り替わるため、大気圧がタンク圧力に近づいて負圧が不足する状況を検知できず、負圧アクチュエータの作動不良が生じるおそれがあった。また、ポンプ性能については更なる長寿命化が市場から望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、負圧アクチュエータの作動不良を避けつつ、ポンプの長寿命化を図ることができる負圧アクチュエータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、車両に備えられ、バキュームタンク内に蓄えた負圧を利用して負圧アクチュエータを制御する車両制動用の負圧アクチュエータ制御装置であって、バキュームタンク内の気体を吸引するバキュームポンプと、バキュームポンプを制御するポンプ制御手段と、を備え、ポンプ制御手段は、バキュームタンク内のタンク圧力に基づいてバキュームポンプを制御する通常気圧制御パターンを実行すると共に、車両の周囲の大気圧が所定のパターン切替え圧力以下であり、かつ、車両のアクセルがオフの状態で車両が加速している場合に、大気圧及びタンク圧力に基づいてバキュームポンプを制御する低気圧制御パターンを実行する、ことを特徴とする。
【0007】
上述した車両制動用の負圧アクチュエータ制御装置によれば、大気圧がパターン切替え圧力以下まで低下すると、下り道などで車両が加速される状況下において、大気圧及びタンク圧力を考慮した低気圧制御パターンが実行される。このため、車両を制動する状況において大気圧とタンク圧力の差圧(負圧)が不足しないようにバキュームポンプを制御することができるので、負圧不足による負圧アクチュエータの作動不良を避けることができる。しかも、この負圧アクチュエータ制御装置では、大気圧がパターン切替え圧力以下であっても、運転者がアクセルをオンにして意識して加速している場合や平坦な道を慣性走行するような場合には、タンク圧力に応じた通常気圧制御パターンを実行する。従って、この負圧アクチュエータ制御装置によれば、台風などの気候の変化や車両の走行する標高の変化で大気圧が変化したとしても、制動の必要がない間は通常気圧制御パターンを実行するので、大気圧の変化に伴ってポンプの駆動と停止が繰り返される事態が避けられ、バキュームポンプの長寿命化を図ることができる。また、この負圧アクチュエータ制御装置では、もし大気圧が下がり過ぎて、負圧確保のためにバキュームポンプの性能限界を超えてタンク圧力を低下させる状況となり、ポンプが連続駆動状態に陥ったとしても、車両が強制的に加速されない場合は通常気圧制御パターンに戻るので、ポンプの連続駆動状態が長時間続くことを防止できる。
【0008】
上述した車両制動用の負圧アクチュエータ制御装置において、低気圧制御パターンの実行時において、タンク圧力が負圧アクチュエータの最低作動圧を超える前にバキュームポンプを駆動させてもよい。
【0009】
この負圧アクチュエータ制御装置によれば、低気圧制御パターンの実行時に、負圧アクチュエータを作動可能な最低限の負圧を確保することができるので、より確実に負圧アクチュエータの作動不良を避けることができる。
【0010】
上述した車両制動用の負圧アクチュエータ制御装置において、ポンプ制御手段は、通常気圧制御パターンの実行時において、タンク圧力が所定のポンプ駆動開始圧力以上の場合にバキュームポンプを駆動させると共に、タンク圧力が所定のポンプ停止圧力以下の場合にバキュームポンプを停止させ、ポンプ駆動開始圧力及びポンプ停止圧力は、ポンプ駆動開始圧力及びポンプ停止圧力の差圧が負圧アクチュエータの複数回分の負圧消費量を含むように設定されていてもよい。
【0011】
この負圧アクチュエータ制御装置によれば、通常気圧制御パターンの実行時に、負圧アクチュエータを複数回作動可能な量の負圧をバキュームタンクに貯めることができるので、その分ポンプの作動回数を減らすことができ、ポンプの長寿命化に有利である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、負圧アクチュエータの作動不良を回避しつつ、ポンプの長寿命化を図ることができる負圧アクチュエータ制御装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1に示されるように、本実施形態に係る車両制動用の負圧アクチュエータ制御装置1は、ディーゼルエンジンの車両に備えられ、排気ブレーキ用の負圧アクチュエータ2を制御するものである。排気ブレーキ用の負圧アクチュエータ2は、バキュームタンク3内に蓄えられた負圧により作動するアクチュエータであり、車両の排気管Exに設けられたシャッタバルブSを開閉することによって排気ブレーキの作動と非作動とを切り替える。
【0016】
負圧アクチュエータ制御装置1は、車両制御ECU[Electronic Control Unit]4及びエンジンECU[EngineControl Unit]5を有しており、エンジンECU5によって負圧アクチュエータ2を制御している。車両制御ECU4は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]などから構成される電子制御ユニットである。車両制御ECU4には、エンジンECU5、車速センサ6、大気圧センサ7、及びバキュームセンサ8が接続されている。
【0017】
エンジンECU5は、車両のディーゼルエンジンを制御する電子制御ユニットである。エンジンECU5は、車両制御ECU4との間でエンジン制御に関する各種情報の送受信を行う。
【0018】
エンジンECU5は、エンジンの始動や停止、排気ブレーキの作動や非作動に関する情報信号を車両制御ECU4に送信する。また、エンジンECU5は、運転者のアクセル操作に関する情報をアクセル操作信号として車両制御ECU4へ送信する。
【0019】
車速センサ6は、例えば車両の変速機付近に配置され、変速機出力軸の回転数を検出するセンサである。車速センサ6は、検出した変速機出力軸の回転数を車速信号として車両制御ECU4へ送信する。
【0020】
大気圧センサ7は、例えば車両下面に配置され、車両の周囲の大気圧Aを検出するセンサである。大気圧センサ7は、検出した車両周囲の大気圧Aを大気圧信号として車両制御ECU4へ送信する。
【0021】
バキュームセンサ8は、バキュームタンク3内のタンク圧力Pを検出するセンサである。タンク圧力Pを大気圧Aから引いた差分の圧力が、バキュームタンク3内に蓄えられる負圧となる。バキュームセンサ8は、検出したタンク圧力Pをタンク圧力信号として車両制御ECU4へ送信する。
【0022】
エンジンECU5は、負圧アクチュエータ2を制御する。具体的には、エンジンECU5は、負圧アクチュエータ2とバキュームタンク3とを繋ぐ配管Hに設けられた電磁弁9を操作することで負圧アクチュエータ2に対する負圧の供給を制御する。
【0023】
エンジンECU5は、排気ブレーキを作動させる場合、電磁弁9を開いてバキュームタンク3内に蓄えた負圧を供給することで負圧アクチュエータ2を作動させ、排気ブレーキ用のシャッタバルブSを閉鎖する。一方、エンジンECU5は、排気ブレーキを非作動にする場合、電磁弁9を閉じて負圧アクチュエータ2への負圧供給を止めることで、バネ機構などにより負圧アクチュエータ2を非作動の状態に戻し、シャッタバルブSを開放する。
【0024】
車両制御ECU4は、バキュームタンク3内の気体を吸引するバキュームポンプ10を制御している。具体的には、車両制御ECU4は、電源12と接続されたリレー13のONとOFFとを切り替えることによってバキュームポンプ10を制御する。なお、バキュームポンプ10とバキュームタンク3とを接続する配管Hには逆止弁11が設けられている。車両制御ECU4は、特許請求の範囲に記載のポンプ制御手段に相当する。
【0025】
車両制御ECU4は、バキュームタンク3内の負圧(大気圧Aとタンク圧力Pとの差圧)が負圧アクチュエータ2の最低作動負圧F以上となるように、バキュームポンプ10を制御する。負圧アクチュエータ2の最低作動負圧Fとは、負圧アクチュエータ2を作動(すなわちシャッタバルブSを閉鎖)させるために最低限必要な負圧を意味する。負圧アクチュエータ2の最低作動負圧Fは一定値である。
【0026】
車両制御ECU4は、バキュームポンプ10の制御パターンとして、通常気圧制御パターン又は低気圧制御パターンを実行する。車両制御ECU4は、大気圧A及び車両の加速状態に基づいて通常気圧制御パターンと低気圧制御パターンとを切り替える。
【0027】
図2は、通常気圧制御パターンを説明するためのグラフである。
図2の縦軸はタンク圧力Pの高さ、横軸は大気圧Aの高さを示している。また、負圧アクチュエータ2の最低作動圧Eの変化を一点鎖線、大気圧Aの変化を二点鎖線として示す。
【0028】
負圧アクチュエータ2の最低作動圧Eとは、大気圧Aとの関係において、負圧アクチュエータ2を作動するために最低限必要なタンク圧力である。すなわち、バキュームタンク3内のタンク圧力Pが最低作動圧Eより高い場合には、負圧不足により負圧アクチュエータ2を作動できない。なお、大気圧Aと最低作動圧Eとの差は一定であり、その差は負圧アクチュエータ2の最低作動負圧Fに等しい。
【0029】
図2に示されるように、車両制御ECU4は、通常気圧制御パターンにおいて、負圧アクチュエータ2の作動によりバキュームタンク3内の負圧が使われ、タンク圧力Pが所定のポンプ駆動開始圧力Pa以上になると、バキュームポンプ10を駆動させる(ON状態にする)。
【0030】
そして、車両制御ECU4は、バキュームポンプ10の駆動によりバキュームタンク3内のタンク圧力Pが下げられて、所定のポンプ停止圧力Pb以下になると、バキュームポンプ10を停止させる(OFF状態にする)。
【0031】
通常気圧制御パターンでは、ポンプ駆動開始圧力Pa及びポンプ停止圧力Pbが大気圧Aに関わらず一定値として設定される。ポンプ駆動開始圧力Pa及びポンプ停止圧力Pbは、車両の諸元やバキュームポンプ10の性能などに基づき、燃費やポンプ寿命の点から適切な値が設定される。
【0032】
また、ポンプ駆動開始圧力Pa及びポンプ停止圧力Pbは、その差圧が負圧アクチュエータ2の複数回分の負圧消費量を含むように設定される。例えば、負圧アクチュエータ2は、四回以上作動可能であることが好ましい。
【0033】
通常気圧制御パターンでは、台風などの気候変化や車両の走行する標高の変化によって大気圧Aが低下すると、大気圧Aに併せてバキュームポンプ10の最低作動圧Eが低下してポンプ駆動開始圧力Paを下回る場合がある。この場合、タンク圧力Pがポンプ駆動開始圧力Pa以上であっても、負圧不足によりバキュームポンプ10の作動不良が生じる。
【0034】
このため、本実施形態に係る負圧アクチュエータ制御装置1では、所定条件下で通常気圧制御パターンから低気圧制御パターンへとバキュームポンプ10の制御パターンの切り替えを行う。
【0035】
なお、
図2に、制御パターン切替えの判定基準となるパターン切替え圧力Tを示す。パターン切替え圧力Tは、例えば、バキュームポンプ10の最低作動圧Eがポンプ駆動開始圧力Paと一致する大気圧Aより、余裕を持って少しだけ高い圧力として設定される。
【0036】
図3は、低気圧制御パターンを説明するためのグラフである。
図3に示されるように、低気圧制御パターンでは、大気圧Aの変化に応じてポンプ駆動開始圧力Pa及びポンプ停止圧力Pbが変化する。本実施形態においては、大気圧Aの低下と同じ量だけポンプ駆動開始圧力Pa及びポンプ停止圧力Pbを低い圧力に変化させる。
【0037】
すなわち、低気圧制御パターンでは、バキュームポンプ10の最低作動圧Eより常に低い圧力としてポンプ駆動開始圧力Paが設定される。言い換えると、大気圧Aとポンプ駆動開始圧力Paとの差圧が負圧アクチュエータ2の最低作動負圧Fより大きくなるように、ポンプ駆動開始圧力Paが設定される。これにより、タンク圧力Pがバキュームポンプ10の最低作動圧Eを上回る前にバキュームポンプ10が駆動されるので、負圧不足により負圧アクチュエータ2の作動不良が生じることが避けられる。
【0038】
車両制御ECU4では、大気圧Aが所定のパターン切替え圧力T以下の場合であり、かつ、車両のアクセルがオフの状態で車両が加速している場合に、低気圧制御パターンが実行される。車両のアクセルがオフの状態で車両が加速している場合とは、車両が下り坂において重力により加速される場合や、強風などにより車両が強制的に加速される場合などである。
【0039】
具体的には、車両制御ECU4は、大気圧センサ7から送信された大気圧信号に基づいて、大気圧Aがパターン切替え圧力T以下であるか否かを判定する。車両制御ECU4は、大気圧Aがパターン切替え圧力T以下ではないと判定した場合、車両の加速状況にかかわらず、通常気圧制御パターンを実行する。
【0040】
一方、車両制御ECU4は、大気圧Aがパターン切替え圧力T以下であると判定した場合、次に、車両のアクセルがオフの状態で車両が加速しているか否かを判定する。車両制御ECU4は、エンジンECU5から送信されたアクセル操作信号や車速センサ6から送信された車速信号に基づいて、車両のアクセルがオフの状態で車両が加速しているか否かを判定する。なお、車両制御ECU4は、加速度センサから車両の加速度に関する信号を受け取ることで、加速の有無を判定してもよい。
【0041】
車両制御ECU4は、車両のアクセルがオフの状態ではない、又は、車両が加速していないと判定した場合、
図2に示す通常気圧制御パターンを実行する。一方、車両制御ECU4は、車両のアクセルがオフの状態で車両が加速していると判定した場合、通常気圧制御パターンに代えて
図3に示す低気圧制御パターンを実行する。
【0042】
以上説明した本実施形態に係る車両制動用の負圧アクチュエータ制御装置1によれば、大気圧Aがパターン切替え圧力T以下まで低下すると、下り道などで車両が加速される状況下において大気圧A及びタンク圧力Pを考慮した低気圧制御パターンが実行される。このため、車両を制動する状況において大気圧Aとタンク圧力Pの差圧(負圧)が不足しないようにバキュームポンプ10を制御することができるので、負圧不足による負圧アクチュエータ2の作動不良を避けることができ、排気ブレーキの効き低下を防止することができる。
【0043】
しかも、この負圧アクチュエータ制御装置1では、大気圧Aがパターン切替え圧力T以下であっても、運転者がアクセルをオンの状態にして意識的に加速している場合や車両が加速をしていない場合には、タンク圧力Pに応じた通常気圧制御パターンを実行する。従って、この負圧アクチュエータ制御装置1によれば、台風などの気候の変化や車両の走行する標高の変化で大気圧Aが変化したとしても、制動の必要がない間は通常気圧制御パターンを実行するので、大気圧の変化によりポンプの駆動と停止が繰り返されることが避けられ、バキュームポンプの長寿命化を図ることができる。
【0044】
また、この負圧アクチュエータ制御装置1では、もし大気圧Aが下がり過ぎて、負圧確保のためにバキュームポンプ10の性能限界を超えてタンク圧力Pを低下させる状況となり、バキュームポンプ10が連続駆動状態に陥ったとしても、車両が強制的に加速されない場合は通常気圧制御パターンに戻るので、バキュームポンプ10の連続駆動状態が長時間続くことを防止できる。
【0045】
また、この負圧アクチュエータ制御装置1では、低気圧制御パターンの実行時において、タンク圧力Pが負圧アクチュエータ2の最低作動圧Eを超える前にバキュームポンプ10を駆動させるので、負圧アクチュエータ2を作動可能な最低限の負圧をバキュームタンク3内に確保することができ、より確実に負圧アクチュエータ2の作動不良を避けることができる。
【0046】
また、この負圧アクチュエータ制御装置1によれば、通常気圧制御パターンにおけるポンプ駆動開始圧力Pa及びポンプ停止圧力Pbの差圧が負圧アクチュエータ2の複数回分の負圧消費量を含むように設定することにより、通常気圧制御パターンの実行時に、一回のバキュームポンプ10の駆動で負圧アクチュエータ2の複数回分の負圧をバキュームタンク3内に貯めることができ、その分バキュームポンプ10の作動回数を減らすことができる。このことはバキュームポンプ10の長寿命化に寄与する。
【0047】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、車両制動用の負圧アクチュエータ制御装置は、排気ブレーキ用の負圧アクチュエータを制御する場合に限られず、エアブレーキその他の制動装置に用いる負圧アクチュエータの制御に用いてもよい。
【0048】
また、上述した通常気圧制御パターンは、一例であり、一定値であるポンプ駆動開始圧力Pa及びポンプ停止圧力Pbの値やその差圧は車種ごとに適切に設定することができる。同様に、上述した低気圧制御パターンは、一例であり、ポンプ駆動開始圧力Pa及びポンプ停止圧力Pbは必ずしも大気圧Aの低下と同じ量だけ低下させる必要はない。低気圧制御パターンにおいて、ポンプ駆動開始圧力Pa及びポンプ停止圧力Pbの変化はそれぞれ独立して変化する態様であってもよい。