【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を具体的に示すが、本発明はこれら実施例によってなんら限定されるものではない。
【0041】
本願において、「重量平均分子量(以下Mwと略す)」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと略す)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出するものである。GPC分析システム装置は、HLC−8220 GPC(東ソー社製)、カラムは、TSKgel SuperMultiporeHZ−H(東ソー社製)を直列に2本接続し、検出器には示差屈折率計(RI)(東ソー社製 HLC−8220装置組込)、移動相にテトラヒドロフラン(流速0.35mL/分)を用いて、カラム温度40℃の条件にて測定を行った。
【0042】
(化合物(B1)の合成例)
〔下記構造式(1)で表されるウレタン骨格を有するとともに−X
1−、−X
2−がともに−C
4H
8−であり、末端にビニルエーテル基を有する化合物(B)の合成〕
【0043】
【化1】
ただし、式(1)−Z−は、下記構造式(4)で表されるイソホロンジイソシアネートに由来する置換基を表す。また、式(1)中、l、mは正の整数を表す。
【0044】
【化4】
【0045】
温度計、攪拌機及び還流冷却管を備えた反応容器内に、ポリカプロラクトンジオール477質量部、イソホロンジイソシアネート403質量部、及びジブチルスズジラウレート0.12質量部を入れ、攪拌下で、前記反応容器の内容物温度を60℃に昇温させ2時間反応させた。その後、ジブチルスズジラウレート0.72質量部、及び4−ヒドロキシブチルビニルエーテル227質量部を投入し、さらに2時間反応させた。冷却後、化合物(B)である、透明液体997質量部(化合物B1)を得た。
尚、反応終了は、赤外線吸収スペクトル(IR)でイソシアネート由来の2250cm
−1のピークが消失したことにより確認した。化合物B1は、GPCを用いて測定を行ったところ、Mw=2050であった。
【0046】
(化合物(B2)の合成例)
〔下記構造式(2)で示されるウレタン骨格を有するとともに−X
3−、−X
4−がともに−C
4H
8−であり、末端にビニルエーテル基を有する化合物(B)の合成〕
【0047】
【化2】
式(1)−Z−は、下記構造式(4)で表されるイソホロンジイソシアネートに由来する置換基を表す。また、式(2)中、nは正の整数を表す。
【0048】
【化4】
【0049】
温度計、攪拌機及び還流冷却管を備えた反応容器内に、ポリテトラメチレングリコール675質量部、イソホロンジイソシアネート300質量部、及びジブチルスズジラウレート0.12質量部を入れ、攪拌下で、前記反応容器の内容物温度を60℃に昇温させ2時間反応させた。その後、ジブチルスズジラウレート0.54質量部、及び4−ヒドロキシブチルビニルエーテル162質量部を投入し、さらに2時間反応させた。冷却後、化合物(B)である、透明液体1024質量部(化合物B2)を得た。
尚、反応終了は赤外線吸収スペクトル(IR)でイソシアネート由来の2250cm
−1のピークが消失したことにより確認した。化合物B2は、GPCを用いて測定を行ったところ、Mw=4040であった。
【0050】
(化合物(B3)の合成例)
〔下記構造式(1)で表されるウレタン骨格を有するとともに−X
1−、−X
2−がともに−C
2H
4OC
2H
4−であり、末端にビニルエーテル基を有する化合物(B)の合成〕
【0051】
【化1】
式(1)−Z−は、下記構造式(4)で表されるイソホロンジイソシアネートに由来する置換基を表す。また、式(1)中、l、mは正の整数を表す。
【0052】
【化4】
【0053】
4−ヒドロキシブチルビニルエーテルをジエチレングリコールモノビニルエーテル258質量部に変更した以外は、化合物(B1)の合成例と同様の方法にて透明液体1024質量部(化合物B3)を得た。
尚、反応終了は、赤外線吸収スペクトル(IR)でイソシアネート由来の2250cm
−1のピークが消失したことにより確認した。化合物B3は、GPCを用いて測定を行ったところ、Mw=1930であった。
【0054】
(化合物(B4)合成例)
〔下記構造式(2)で示されるウレタン骨格を有するとともに−X
3−、−X
4−がともに−C
2H
4OC
2H
4−であり、末端にビニルエーテル基を有する化合物(B)の合成〕
【0055】
【化2】
式(1)−Z−は、下記構造式(4)で表されるイソホロンジイソシアネートに由来する置換基を表す。また、式(2)中、nは正の整数を表す。
【0056】
【化4】
【0057】
4−ヒドロキシブチルビニルエーテルをジエチレングリコールモノビニルエーテル184質量部に変更した以外は、化合物(B2)の合成例と同様の方法にて透明液体1043質量部(化合物B4)を得た。
尚、反応終了は、赤外線吸収スペクトル(IR)でイソシアネート由来の2250cm
−1のピークが消失したことにより確認した。化合物B4は、GPCを用いて測定を行ったところ、Mw=3840であった。
【0058】
(化合物(B5)合成例)
〔下記構造式(1)で表されるウレタン骨格を有するとともに−X
1−、−X
2−がともに−C
3H
6OC
3H
6−であり、末端にビニルエーテル基を有する化合物(B)の合成〕
【0059】
【化1】
式(1)−Z−は、下記構造式(4)で表されるイソホロンジイソシアネートに由来する置換基を表す。式(1)中、l、mは正の整数を表す。
【0060】
【化4】
【0061】
4−ヒドロキシブチルビニルエーテルをジプロピレングリコールモノビニルエーテル313質量部に変更した以外は、化合物(B1)の合成例と同様の方法にて透明液体1074質量部(化合物B5)を得た。
尚、反応終了は、赤外線吸収スペクトル(IR)でイソシアネート由来の2250cm
−1のピークが消失したことにより確認した。化合物B5のGPC測定を行ったところ、Mw=2160であった。
【0062】
(化合物(B6)合成例)
〔下記構造式(2)で示されるウレタン骨格を有するとともに−X
3−、−X
4−がともに−C
3H
6OC
3H
6−であり、末端にビニルエーテル基を有する化合物(B)の合成〕
【0063】
【化2】
式(1)−Z−は、下記構造式(4)で表されるイソホロンジイソシアネートに由来する置換基を表す。式(2)中、nは正の整数を表す。
【0064】
【化4】
【0065】
4−ヒドロキシブチルビニルエーテルをジプロピレングリコールモノビニルエーテル223質量部に変更した以外は、化合物(B2)の合成例と同様の方法にて透明液体1079質量部(化合物B6)を得た。
尚、反応終了は、赤外線吸収スペクトル(IR)でイソシアネート由来の2250cm
−1のピークが消失したことにより確認した。化合物B6は、GPCを用いて測定を行ったところ、Mw=3860であった。
【0066】
(化合物(B7)合成例)
〔下記構造式(1)で表されるウレタン骨格を有するとともに−X
1−、−X
2−がともに下記構造式(3)で表される置換基であり、末端にビニルエーテル基を有する化合物(B)の合成〕
【0067】
【化1】
式(1)−Z−は、下記構造式(4)で表されるイソホロンジイソシアネートに由来する置換基を表す。式(1)中、l、mは正の整数を表す。
【0068】
【化3】
【0069】
【化4】
【0070】
4−ヒドロキシブチルビニルエーテルをシクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル333質量部に変更した以外は、化合物(B1)の合成例と同様の方法にて透明液体1091質量部(化合物B7)を得た。
尚、反応終了は、赤外線吸収スペクトル(IR)でイソシアネート由来の2250cm
−1のピークが消失したことにより確認した。化合物B7は、GPCを用いて測定を行ったところ、Mw=2070であった。
【0071】
(化合物(B8)合成例)
〔下記構造式(2)で示されるウレタン骨格を有するとともに−X
3−、−X
4−がともに下記構造式(3)で表される置換基であり、末端にビニルエーテル基を有する化合物(B)の合成〕
【0072】
【化2】
式(2)−Z−は、下記構造式(4)で表されるイソホロンジイソシアネートに由来する置換基を表す。式(2)中、nは正の整数を表す。
【0073】
【化3】
【0074】
【化4】
【0075】
4−ヒドロキシブチルビニルエーテルをシクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル237質量部に変更した以外は、化合物(B2)の合成例と同様の方法にて透明液体1091質量部(化合物B8)を得た。
尚、反応終了は、赤外線吸収スペクトル(IR)でイソシアネート由来の2250cm
−1のピークが消失したことにより確認した。化合物B8は、GPCを用いて測定を行ったところ、Mw=3870であった。
【0076】
(実施例1〜46及び比較例1〜9)
上記合成例によって得られた化合物B1〜B8と、各種のビニルエーテルモノマーと、各種の光重合開始剤(C)とを、それぞれ組み合わせて混合し、ビニルエーテル系樹脂組成物の各試験の評価を行った。実施例及び比較例の各処方と、溶解性試験、硬化性試験及び接着強度試験の各評価結果とを、表1、表2及び表3にそれぞれまとめた。
【0077】
それぞれの実施例および比較例で使用したビニルエーテルモノマー(A)と光重合開始剤(C)の名称および構造を下に記す。A1〜A4はビニルエーテル基を2つ以上有するビニルエーテルモノマーである。
「ビニルエーテルモノマー(A)」
・エチレン系ビニルエーテル
A1:ジエチレングリコールジビニルエーテル[日本カーバイド工業社製]
A2:トリエチレングリコールジビニルエーテル[日本カーバイド工業社製]
・プロピレン系ビニルエーテル
A3:ジプロピレングリコールジビニルエーテル[日本カーバイド工業社製]
A4:トリプロピレングリコールジビニルエーテル[日本カーバイド工業社製]
・モノビニルエーテル
A5:シクロヘキシルビニルエーテル[日本カーバイド工業社製]
「光重合開始剤(C)」
C1:トリス(4−メチルフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスファート(下記構造式(5))[三和ケミカル社製、製品名 TS−91]
【0078】
【化5】
C2:ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロホスファート(下記構造式(6))[サンアプロ社製、製品名 CPI−110P]
【0079】
【化6】
【0080】
(溶解性試験)
溶解性試験は、各ビニルエーテル系樹脂組成物における光重合開始剤の溶解性を評価することでおこなった。ビニルエーテル系樹脂組成物の調製時、光重合開始剤が経時で析出しなければ、貯蔵安定性に優れる。室温下で調製した時に溶解しないものを「×」、配合調製直後は溶解しているが、2時間室温下にて静置後に不溶化物が析出するものを「△」、2時間室温下にて静置後でも溶解しているものを「○」とそれぞれ評価した。
【0081】
(硬化性試験)
塗布膜厚7μmのアプリケーターを用いて、PETフィルム上に、各ビニルエーテル系樹脂組成物の塗膜(膜厚30μm)を形成させ、照射強度160Wの高圧水銀ランプを用いて、ランプ高さ22cm、コンベア速度8m/分の条件で1回照射を行った。その1回の照射量は170mJ/cm
2であった。照射量170mJ/cm
2で硬化したものを「○」と、硬化不十分なものを「×」とそれぞれ評価した。
尚、上記溶解性試験で溶解せず「×」と評価したビニルエーテル系樹脂組成物は、硬化性試験を実施しなかった。
【0082】
(接着強度試験)
接着強度試験は、下記の硬化方法で得られた試験片を硬化24時間後、JIS K 6854−2に準じ、引張速度を300mm/分の条件で180度剥離させその強度を測定することで行った。
剛性被着体には、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(サン・トックス社製、商品名:OPPフィルム PA21 厚み50μm コロナ処理面)を用い、たわみ性被着体には、無延伸ポリプロピレンフィルム(サン・トックス社製、商品名:CPPフィルム LU02 厚み40μm コロナ処理面)を用いた。
硬化方法は以下のとおりである。被着体同士に挟み込まれる各ビニルエーテル系樹脂組成物の厚みは、上記硬化性試験と同様に、膜厚30μmとした。上記硬化性試験と同様に、照射強度160Wの高圧水銀ランプにて170mJ/cm
2を照射して、各ビニルエーテル系樹脂組成物を硬化させた。
尚、上記の溶解性試験で溶解せず「×」と評価、または硬化性試験で硬化が不十分なため「×」と評価したビニルエーテル系樹脂組成物は、接着強度試験を実施しなかった。
また、上記溶解性試験において「△」と評価し、かつ上記硬化性試験において「○」と評価した実施例17及び26のビニルエーテル系樹脂組成物は、配合を調整して不溶化物が析出する前に、接着強度試験を実施した。
【0083】
【表1】
【0084】
表1の各評価結果により、ビニルエーテルモノマー(A)と化合物(B)との質量比がビニルエーテルモノマー(A)/化合物(B)=35/65〜90/10の範囲にある本発明の実施例1〜12のビニルエーテル系樹脂組成物は、比較例と比べて、硬化性及び難接着性材料(ポリプロピレンフィルム)に対する接着力がいずれも優れていることが確認された。
すなわち、本発明のビニルエーテル系樹脂組成物は、ポリオレフィン等の難接着性材料に対して優れた接着力を有することが確認された。
さらに、ビニルエーテルモノマー(A)と化合物(B)との質量比がビニルエーテルモノマー(A)/化合物(B)=35/65〜60/40の範囲にある、実施例3〜6及び9〜12の各ビニルエーテル系樹脂組成物は、実施例1、2、7、8及び各比較例と比べて、いずれも約2倍以上の接着力を有しているため、より優れていることが確認された。
【0085】
【表2】
【0086】
表2の各評価結果により、エチレン系ビニルエーテル(A1およびA2)とプロピレン系ビニルエーテル(A3およびA4)との質量比が、エチレン系ビニルエーテル/プロピレン系ビニルエーテル=10/40〜40/10の範囲にある実施例のビニルエーテル系樹脂組成物は、硬化性及び難接着性材料(ポリプロピレンフィルム)に対する接着強度がいずれも優れているとともに、溶解性が優れていることが確認された。
すなわち、ビニルエーテルモノマー(A)が、エチレン系ビニルエーテル(A1およびA2)とプロピレン系ビニルエーテル(A3およびA4)とを含み、その質量比がエチレン系ビニルエーテル/プロピレン系ビニルエーテル=10/40〜40/10の範囲にある本発明のビニルエーテル系樹脂組成物は、ポリオレフィン等の難接着性材料に対して優れた接着力を有し、かつ貯蔵安定性に優れる。
なお、表1に記載の実施例4と表2に記載の実施例33は同一のものである。
【0087】
【表3】
【0088】
表3の各評価結果により、ウレタン骨格を有するとともに末端にビニルエーテル基を有する化合物(B)を含む実施例49〜56は、化合物(B)を含まない比較例8と比べて接着力が優れていることが確認された。また、ビニルエーテル基を2つ以上有するビニルエーテルモノマー(A)であるトリエチレングリコールジビニルエーテルを含む実施例49〜56に記載のビニルエーテル系樹脂組成物は、比較例9に記載のビニルエーテル基を一つしか有さないモノビニルエーテルを含むビニルエーテル系樹脂組成物と比較して、溶解性試験の評価が優れていた。
なお、表1に記載の実施例4と表3に記載の実施例49、および表1に記載の実施例10と表3に記載の実施例50は、それぞれ同一のものである。
【0089】
表1から表3のそれぞれに記載の実施例1〜56および比較例1〜8のビニルエーテル系樹脂組成物は、低臭気ビニルエーテルモノマーであるジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル及びトリプロピレングリコールジビニルエーテルを使用している為、いずれも臭気をほとんど感じないものであった。また、皮膚への刺激性も低いものであった。