(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
図1および
図2に示されるように、コンクリートブロック(コンクリート製品)12は、炭酸ガスを吸収させた環境配慮型のコンクリート製二次製品である。コンクリートブロック12の利用形態としては、例えば、歩車道境界ブロック、地先境界ブロック、フェンス基礎ブロック、側溝ブロック、漁礁ブロック、消波ブロック等の各種形態が挙げられる。本実施形態の説明では、コンクリートブロック12が四角錐台状をなす場合を例として説明するが、これに限られず、例えば直方体状、円柱状、円錐台状、等々のあらゆる形状とすることができる。一部に開口を有し、それ以外の部分は閉じられたような型枠を用いて製造されるコンクリートブロックであれば、いかなる形状とすることもできる。
【0018】
コンクリートブロック12は、ポーラスコンクリート3を有してなる炭酸化体13を備えている。このポーラスコンクリート3には、後述する製造方法により、全体にわたって炭酸ガスが吸収させられている。炭酸化体13内の空隙にはセメントミルク11が充填されている。コンクリートブロック12は、平滑な表面状態を有すると共に、内部には空隙がない。そのためコンクリートブロック12の外見は、通常の密実なコンクリートブロックと変わらないようになっている。
【0019】
続いて、コンクリートブロック12の製造方法について説明する。本実施形態の製造方法において、コンクリートブロック12の大きさは限定されないが、下記製造方法は、特に大型のコンクリートブロック12の製造に適している。
【0020】
まず、型枠1を用意する。この型枠1は、上部に開口1aを有すると共に、開口1aの周縁から外方に延びるフランジ部1bを有している。型枠1は、鉄製であり、何度も組んだりばらしたりすることができるようになっている。次に、
図1(a)に示されるように、型枠1内にポーラスコンクリート3を打設する。ポーラスコンクリート3は、CO
2吸収性能に優れたダイカルシウムシリケートγ相(γ−C
2S)を含有することが好ましいが、ダイカルシウムシリケートγ相を含有していなくてもよい。ポーラスコンクリート3の最大粒径や粒度分布は、最後に注入されるセメントミルク11(
図2(b)参照)を全体に行き渡らせることを考慮して適宜設定される。ポーラスコンクリート3の空隙率は、10〜30%であることが好ましい。
【0021】
より具体的には、ポーラスコンクリート3のセメントとして、普通ポルトランドセメントを用いることができ、また、高炉セメントB種を用いることもできる。ポーラスコンクリートの使用材料の一例と配合の一例を表1,2にそれぞれ示す。
【0024】
なお、
図1(a)〜(c)および
図2(a),(b)では、説明を容易にするため、鉛直方向に沿った断面を示している。
【0025】
次に、
図1(b)に示されるように、タンパ等の締固め機Bを用いて、締め固めを行う。ポーラスコンクリート3の投入と締め固めを何度か繰り返し、開口1aの位置に達するまでポーラスコンクリート3を打設し、ポーラスコンクリート充填部6を形成する。そして、一定期間経過後、
図1(c)に示されるように、脱型を行い、ブロック中間体7を得る。脱型は、型枠1をばらすことにより行う。ブロック中間体7を得た時点で、その内部には全体にわたり空隙が形成されている。
【0026】
次に、
図2(a)に示されるように、ブロック中間体7の初期養生を行った後、ブロック中間体7を養生システム8の養生槽9内に設置し、炭酸ガス雰囲気下で炭酸化養生を行う。炭酸化養生を行うまでの初期養生期間は、例えば1日〜4日程度とする。炭酸化養生は、5〜100%の炭酸ガス濃度において、温度を20〜80℃とし、湿度を30〜70%RHとし、例えば約2週間かけて行う。これにより、炭酸ガスを内部に吸収した炭酸化体13が形成される。なお、炭酸化養生期間は、養生槽9内を高圧の雰囲気とすることにより、3日程度に短縮できる。この炭酸化養生としては、公知の方法を用いることができる。火力発電所などの炭酸ガス発生サイトに養生システム8を設置し、炭酸ガスを含む排ガスを養生槽9内に導入してもよい。
【0027】
ポーラスコンクリート3からなるブロック中間体7においては、ポーラスコンクリート3がある程度固まっているため取り扱いが容易である。また、脱型を行うことで、側面7aや上面7bが露出するため、側面7aや上面7bを介して炭酸ガス吸収が吸収され、炭酸化体13全体としてのCO
2吸収量が高められる。
【0028】
次に、
図2(b)に示されるように、炭酸化されたブロック中間体7である炭酸化体13を、組み直した型枠1内に再度設置する。
図1(a)〜(c)、
図2(a)、および
図2(b)における型枠1内へのブロック中間体7(炭酸化体13)の設置までの工程は、型枠1内に炭酸化体13を形成する工程に相当する。
【0029】
さらに、型枠1上に押さえ金網14を載置し、留め具15によってこの押さえ金網14を固定する。より具体的には、押さえ金網14は、開口1aに対応する形状および大きさの金網部14aと、金網部14aの両側に設けられてフランジ部1bに対面する板状の取付部14bとを有しており、この取付部14bがフランジ部1b上に重ねられて、留め具15によりこれらが挟持されることで、押さえ金網14が固定される。これらの押さえ金網14および留め具15によって、炭酸化体13の開口1aからの浮き上がりを防止する浮き上がり防止具17が構成される。
【0030】
浮き上がり防止具17を型枠1に設置したら、炭酸化体13内の空隙に漏斗10等を用いて固化材としてのセメントミルク11を注入し、固化させる。漏斗10は、金網部14aの開口に挿入される。セメントミルク11を注入(充填)するにあたり、炭酸化体13には注入圧により浮力がはたらくが、炭酸化体13は、浮き上がり防止具17により抑えられて型枠1内に保持される。よって、炭酸化体13が開口1aから浮き上がることはない。なお、固化材として、モルタルやペーストを用いてもよい。
【0031】
そして、一定期間養生後、脱型を行い、
図2(c)に示されるコンクリートブロック12が完成する。このように固化材を炭酸化体13内の空隙に充填して固化させることにより、コンクリートブロックとしての強度や重量が確保されると共に、設置後、内部に水や土が入り込むことを避けることができる。
【0032】
以上説明したコンクリートブロック12の製造方法によれば、型枠1内にポーラスコンクリート3を有してなる炭酸化体13が形成される。ポーラスコンクリート3は多孔性であるため、炭酸化の際に炭酸ガスが全体に行き渡りやすい。よって、炭酸化体13の内部まで炭酸ガスが吸収され、炭酸ガスの吸収量をコンクリートブロック12全体として増大させることができる。また、炭酸化体13内の空隙にはセメントミルク11が充填されるが、セメントミルク11の充填にあたっては、浮き上がり防止具17が設置されるため、炭酸化体13は開口1aから浮き上がることなく型枠1内に保持され、セメントミルク11と一体になって所定の形状に固化される。このようにセメントミルク11が充填されて固化されるため、例えば、炭酸化体13内に空隙が残っているために全体の比重が小さくなって水域での使用の際に浮力が発生したり、内部に水が入り込んだりすること等を防止でき、通常の密実なコンクリート製品と同等の品質が実現される。さらには、このように炭酸化されたコンクリートブロック12によれば、通常のコンクリートブロックよりも消波効果が高いという効果も奏される。
【0033】
また、炭酸化体13の形成にあたり、ポーラスコンクリート3を型枠1内に打設し、得られたブロック中間体7を炭酸化養生するため、ポーラスコンクリート3に炭酸ガスを確実かつ十分に吸収させることができる。
【0034】
また、ブロック中間体7を炭酸ガスの雰囲気下に設置し炭酸化養生するため、ブロック中間体7の表面(側面7aや上面7b)が炭酸ガス雰囲気に晒され、ブロック中間体7すなわち炭酸化体13における炭酸ガスの吸収量を増大させることができる。また、炭酸化体13を型枠1内に再度設置するため、その後のセメントミルク11の充填・固化を支障なく行うことができる。さらにまた、コンクリートブロック12の平滑な表面(側面12aや上面12b)を形成することができ、コンクリート製品としての美観が保たれる。
【0035】
図3および
図4は、
第1参考形態に係るコンクリートブロック12の製造手順を示す斜視図である。本
参考形態の製造方法が第1実施形態の製造方法と違う点は、型枠1に代えて、透水性を有する型枠1Aを用いた点と、型枠1を脱型せず、ポーラスコンクリート3からなるポーラスコンクリート充填部6を型枠1内に設置したまま炭酸化養生を行う点である。ここで、透水性の型枠1Aとしては、例えば、排水ネットおよび透水シートからなる二重構造の脱水クロスを表面に積層させた型枠(一例として前田工繊株式会社製「RCクロス」)を用いることができる。
【0036】
このような製造方法によっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、型枠1Aに設けたまま炭酸化養生を行うため、炭酸化養生の際の設置安定性が確保される。さらに、型枠1Aは透水性を有するため通気性も有しており、開口1aを介して炭酸ガスが吸収されるのみならず、型枠1Aの側面1cを介しての炭酸ガス吸収も行われることとなり、CO
2の吸収が促進される。その結果、炭酸化体13全体としてのCO
2吸収量が高められる。
【0037】
図5および
図6は、
第2参考形態に係るコンクリートブロック12Bの製造手順を示す斜視図である。本
参考形態の製造方法が第1実施形態の製造方法と違う点は、炭酸化体を形成する工程において、ポーラスコンクリート3に代えて再生骨材16を型枠1内に充填する点と、型枠1を脱型せずに炭酸化を行う点である。再生骨材16は、最大寸法が40mm以下のものである。
【0038】
再生骨材16を充填した再生骨材充填部6Bにおいては、第1実施形態のポーラスコンクリート充填部6に比してより多くの空隙が存在する。そのため、再生骨材充填部6B内における炭酸ガスの流通性が向上しており、側方からの炭酸ガスの流入がなくても、炭酸ガスを十分に行き渡らせることができる。本実施形態の製造方法によっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。また、型枠1に設けたまま炭酸化を行うため、炭酸化の際の設置安定性が確保される。また、再生骨材を有してなる炭酸化体13Bが形成されるため、リサイクルの観点からもより環境に配慮したコンクリートブロック12Bが実現される。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、炭酸化体を形成する工程において、あらかじめ炭酸化された再生骨材を型枠内に充填してもよい。この場合、再生骨材は、公知の炭酸化方法によって炭酸化することができる。このような製造方法によれば、型枠内に再生骨材を設けた後に炭酸化するといった工程を省略することができる。また、再生骨材を用いるため、リサイクルに有効であり、より環境に配慮したコンクリート製品を実現できる。
【0040】
また、炭酸化体を形成する工程において、ポーラスコンクリート3の骨材として、または、再生骨材16として、重量骨材を用いてもよい。この場合、コンクリート製品としての比重が増大し、外力に対する安定性を高めることができる。例えば、消波ブロックに適用した場合、高い波消し効果を得ることができる。
【0041】
また、上記第1
実施形態および
第1参考形態において、型枠1内にポーラスコンクリート3および再生骨材16を一緒に充填してもよい。例えば、ポーラスコンクリート3の骨材として再生骨材16を用いてもよい。
【0042】
また、ポーラスコンクリート3や再生骨材16を型枠内に設けるにあたり、パイプを型枠内に立設すると共に、セメントミルク11を注入するにあたり、そのパイプを利用してセメントミルク11を注入してもよい。この場合、炭酸化養生の際にパイプ内を炭酸ガスが通るようにでき、炭酸ガスを型枠内の深い箇所まで確実に行き渡らせることができる。そして、パイプをセメントミルク11の注入にも利用することにより、セメントミルク11を炭酸化体13内に確実かつ容易に充填することができる。
【0043】
また、型枠にフランジ部が設けられる場合に限られず、例えば、浮き上がり防止具17に係合する凹部が型枠の表面に形成されてもよい。浮き上がり防止具は、型枠に固定される場合に限られず、型枠以外の他の固定物に固定されてもよい。浮き上がり防止具は押さえ金網を有する場合に限られず、例えば、一または複数の孔部が形成された鉄板を有してもよい。上記
第2参考形態において、透水性の型枠1Aを用いてもよい。
【0044】
上記第1
実施形態、第1および第2参考形態において、ポーラスコンクリート3や再生骨材16に代えて、コンクリート構造物の解体時に得られるコンクリート塊や、産業副産物を主要成分とする固形化物を、型枠1内に充填してもよい。この場合、解体したコンクリート塊を40mm以上の比較的大きな径のままで投入することができる。産業副産物を主要成分とする固形化物としては、高炉スラグやフライアッシュを比較的大きな径に固めたものが挙げられる。さらにまた、コンクリート塊や、産業副産物を主要成分とする固形化物といった材料であって、あらかじめ炭酸化されたものを型枠1内に充填してもよい。
【0045】
次に、炭酸化させた再生骨材を用いたコンクリートブロックにおけるCO
2の吸収効果を確認した。具体的には、コンクリートで1m×1m×1mのブロック型試験体を作製し、同ブロック製造時のCO
2排出量を試算した。試算ケースは、表3に示す3ケースである。ケース1は、普通コンクリートを標準水中養生したケースである。ケース2は、普通コンクリートを温度50℃,湿度50%,CO
2濃度20%の環境下で7日間炭酸化養生したケースである。ケース3は、ケース1に用いたコンクリート配合のうち、セメントに高炉セメントB種を用い、骨材を普通骨材から炭酸化させた再生骨材に変更し、コンクリートとして成型後にケース2と同様の環境で7日間炭酸化養生を行ったケースである。
【0047】
使用材料および普通コンクリートの配合は、表4,5にそれぞれ示すとおりである。
【0050】
ケース1〜3における各コンクリートのCO
2排出量を試算した。CO
2排出量の試算には、表6に示す各使用材料のCO
2排出量原単位(出典:土木学会 コンクリートライブラリー125)を用いた。
【0052】
また、炭酸化養生によってCO
2を吸収したコンクリートおよび骨材については、それらによるCO
2吸収量を差し引き、以下の式によってCO
2排出量を算出した。
コンクリートのCO
2排出量(kg/m
3)
=(使用材料のCO
2排出量の総和kg/m
3)−(コンクリートまたは骨材が吸収したCO
2量kg/m
3)
【0053】
以上を踏まえると、ケース1におけるCO
2排出量は、表5,6から、
291×0.7666+788×0.0037+1065×0.0029
=229.1kg/m
3と試算される。
【0054】
次に、ケース2におけるCO
2排出量の算出には、炭酸化養生によってコンクリートが吸収したCO
2の量を算出する必要がある。ここで、7日間の炭酸化養生でコンクリートが炭酸化によってCO
2を吸収した領域は、表面から10cmであり、CO
2を吸収した部分の体積は、全体の炭酸化部分における27.1%であり(炭酸化した領域の体積:(1m×1m×1m)−(0.9m×0.9m×0.9m)=0.271m
3)、CO
2吸収量は134.8kg/m
3であった。このことから、同ブロックにおけるCO
2吸収量は、135kg/m3×27.1%=36.5kg/m
3となる。
【0055】
以上を踏まえると,ケース2におけるCO
2排出量は、
229.1−36.5=192.6kg/m
3と試算される。
【0056】
ケース3におけるCO
2排出量の算出には、高炉セメントB種を用いたコンクリート配合におけるCO
2排出量、再生骨材が炭酸化養生によって吸収したCO
2量を考慮し、さらに、成型後の炭酸化養生によってコンクリートが吸収したCO
2の量を算出する必要がある。
【0057】
ケース3のコンクリート配合における使用材料のCO
2排出量の総和は、表5,6から、
291×0.4587+707×0.0037+965×0.0029
=138.9kg/m
3となる。
【0058】
ここで、再生骨材が炭酸化養生によって吸収したCO
2の量は、表7に示すとおりRSの場合で骨材重量×7.8%、RGの場合で骨材重量×8.5%であった。このことから、ケース3において骨材が吸収したCO
2の量は、表5,7から、
707×7.8%+965×8.5%=137.2kg/m
3となる。
【0060】
さらに、ケース3でコンクリート成型後に行った7日間の炭酸化養生で、コンクリートが炭酸化によってCO
2を吸収した領域は、ケース2と同様、表面から10cmであった。このことから、同ブロックにおけるCO
2吸収量は、
135kg/m
3×27.1%=36.5kg/m
3となる。
【0061】
以上を踏まえると、ケース3におけるCO
2排出量は、
138.9−36.5−137.2=−34.8kg/m
3と試算される。
【0062】
ケース1〜3におけるCO
2排出量の試算結果を表8に示す。本発明によれば、CO
2排出量をマイナスにすることが可能となる。