(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1のエアゾール製品P1は、エアゾール容器Aと、そのバルブに取り付けた吐出部材10とからなる。なお、符号15は、エアゾール容器Aの上部に連結される肩カバーである。この肩カバー15は、吐出部材10の上下動をガイドし、エアゾール容器Aを保護するものである。このエアゾール製品P1は、掌を吐出部材10の開口部に置き、エアゾール容器Aに対して吐出部材10を押し下げ操作するものである。そのため、エアゾール容器Aは、高さが低いものが好ましく、例えば、エアゾール容器Aの高さがエアゾール容器の径と同じかそれ以下のものが好ましい。しかし、吐出部材10の開口部を目的表面に当接して、エアゾール容器Aを目的表面に向かって操作してもよい。いずれの場合も、リング状の吐出物が形成される。
吐出部材10は、
図2aに示すように、エアゾール容器Aに取り付けられる基材11と、その上部に上下移動自在に配置されるカップ部材12と、そのカップ部材内の中央に設けられた制御部材13とを備えている。また、基材11とカップ部材12との間には、カップ部材12を常時上方に付勢するバネ14が設けられている。吐出部材10は、カップ部材12の側壁22内および制御部材13の間の空間Sが発泡部を構成し、基部11が通路部を構成し、制御部材13が制御部を構成している。また、通路部には定量噴射機構が設けられている。
【0015】
基材11は、
図2bに示すように、円状の底面16と、その底面から上方に延びる内筒部17と備えている。底面の縁部は、内筒部17から半径方向外側に突出したフランジ部16aとなっている。底面16の中央には、エアゾール容器AのステムR(
図1参照)を受け入れる底面から上方に突出した筒状のステム係合部18が形成されている。ステム係合部18の上端には、上面19aが円弧状に湾曲した筒状の第1連通部19が形成されている。この第1連通部19には、第1連通部19内(およびステム係合部18内)と内筒部17内とを連通する連通孔19bが形成されている。この連通孔19bは、後述する第2連通部24の下面24aが当接したとき、連通孔19bが閉じないように配置されている。この実施形態では、連通孔19bは複数個形成されているが、その数は特に限定されるものではない。
【0016】
カップ部材12は、
図2cに示すように、平面状の基部21と、その基部21の縁部から上方に立ち上がる側壁22と、その基部の縁部から下方に延びる外筒部23と、その基部21の中心を上下に貫通する筒状の第2連通部24とを備えている。
基部21は、円形を呈している。泡体のリング形状は、この基部21の縁部から上方に延びる側壁22によって決定される。そのため、望む泡体のリングの外形に基づいて基部21の形状も適宜設計される。
側壁22は、泡体を発泡させ、そして、その泡体を蓄積させるためのものである。側壁22は、外側に突出する湾曲形状を呈しており、カップ状となっている。このようにカップ状とすることで形成される泡体を圧縮することなく発泡させ、蓄積できる。
外筒部23は、内筒部17の外周に沿って上下動できるように配置され、内筒部17と外筒部23との間はシールされている。
第2連通部24は、その下面24aが第1連通部19の上面19aと当接できるように湾曲凹面となっている。上面19aと下面24aは、第2連通路24内の通路をシールできるように当接できればその面形状は適宜設定してよい。第2連通部24の上端には、制御部材13が連結される。
【0017】
制御部材13は、側面に吐出孔26が形成され、第2連通部24を挿入する筒状の中筒部27と、その上部に設けられた拡径部28とを有する。吐出孔26は、複数個が放射状に配置されている、あるいは、環状に形成されている。拡径部28は、上方に向かって拡径している。特に、外側に突出するように湾曲しながら拡径している。拡径部28は、発泡部で形成され、また蓄積される泡体が中心で結合しないように制御するものである。
【0018】
この実施形態では、
図2aに示すように、上述したようにカップ部材12の側壁22と制御部材13とによって形成される空間Sが発泡部となる。そして、ステム係合部18、第1連通部19、基材11の底面16および内筒部17とカップ部材12の基部21の間の定量空間S1、第2連通部24によって通路部が構成される。発泡部と通路部とは制御部によって連通される。なお、定量空間S1は、定量室としても機能する。
【0019】
この吐出部材10が用いられるエアゾール容器Aは、水性原液と、液化ガスとからなる発泡性の内容物Cが充填されている。エアゾール容器内では、水性原液および液化ガスは乳化しており、吐出すると、液化ガスが気化し、水性原液が発泡し、泡体となる。このような内容物Cは、水性原液が40〜97質量%であり液化ガスが3〜60質量%、さらには、水性原液が50〜95質量%であり液化ガスが5〜50質量%含有していることが好ましい。液化ガスが3質量%より少ないと、形成される泡体が水っぽくなり形状が壊れやすくなり、液化ガスが60質量%より大きいと、形成される泡体の寿命が小さくなる。
水性原液としては、泡体を形成するために界面活性剤を含有させるのが好ましい。このような界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、
陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン界面活性剤等が好ましく、さらに、良質な泡体を形成できることから陰イオン界面活性剤が好ましく、特に脂肪酸石鹸が好ましい。
【0020】
次に、この吐出部材10の動作を
図3を用いて説明する。初めに、掌を吐出部材10のカップ部材12の開口に載せ、吐出部材10をエアゾール容器Aに対して下方に押圧する(
図3a参照)。これによりバネ14が圧縮され、カップ部材12が基材11に対して下方に移動する。このとき、カップ部材12の第2連通部24の下面24aと、基材11の第1連通部19の上面19aとが当接し、通路部(定量空間S1と第2連通部24の間)が遮断される。また、外筒部23の下端がフランジ部16aと当接する。さらに、
図3bに示すように、吐出部材10を下方に押圧すると、カップ部材12と基材11とが一体となり、ステムRを押し下げる。これによりエアゾール容器Aが開放され、内容物Cが吐出
部材10内に導入される。このとき、定量空間S1と第2連通部24とは遮断されているため、内容物は定量空間S1内に蓄積される。
次いで、
図3cに示すように、掌を吐出部材10から離すと、ステムRは元の位置に戻り、それに伴い基材11およびカップ部材12が一体で上方に移動する。それと同時にバネ14による弾性力によりカップ部材12が基材11に対して上方に移動して吐出部材10は操作前の状態(
図1の状態)に戻る。これにより、下面24aおよび上面19aの当接も解除され、通路部は再び連通する。そのため、定量空間S1に貯められた内容物Cは、吐出孔26より発泡部Sに供給される。この実施形態では、バネ14を用いているが、バネ14を用いなくても定量空間S1内は内容物C(液体成分および液化ガス成分)によって高圧となっているため、カップ部材12は基材11に対して上方に移動する。しかし、バネ14を用いた方が確実に定量空間S1内の内容物Cを発泡部Sに供給できる。発泡部Sは大気と連通しているため、内容物Cは発泡部Sにおいてリング状の泡体C1となる。吐出部材10(エアゾール容器A)を裏返してこの泡体C1を取り出してもよく、そのまま発泡部に置いておいてもよい。
【0021】
なお吐出部材10は、吐出孔26が制御部材13の中筒部27の側面に設けられているため、吐出孔26がカップ部材12の側壁22に向かって環状に開口しており、発泡性内容物は側壁22に沿って吐出され、泡体はその側壁22に沿って蓄積される。そのため、中筒部27を中心としたリング形状となる。このように中筒部27が側壁22内の中心に設けられているため、泡体を側壁22内一杯に蓄積させても、中筒部27を囲むようにして蓄積された泡体C1はリング形状を残す。なお、
図1の吐出部材10の制御部材13は、中筒部27の上端に拡径部28を設けているため、リング形状の泡体の中心孔が一層明確に残る。
このように泡体をリング形状とすることにより、その表面積を大きくすることができる。例えば、内容物Cの液体成分に香料を含めた場合、表面積を大きくすることにより小量の吐出で香りを強くすることができる。また、殺虫成分あるいは虫よけや忌避成分を含めることにより、その効果を強く発揮させることができる。そして、使用者は、泡が乾燥したり萎むなどにより効果が完了したことを確認することができる。
【0022】
図4の吐出部材30は、エアゾール容器Aに連結される押ボタン31と、その前方(
図4の左側)に取り付けられたカップ部材32と、そのカップ部材32に取り付けられる制御部材33とを備えている。吐出部材30は、カップ部材32の側壁42および制御部材33の間の空間Sが発泡部を構成し、押ボタン31が通路部を構成し、制御部材13が制御部を構成している。符号34は、押ボタン31の上下動をガイドし、エアゾール容器Aの保護する肩カバーである。この吐出部材30は、発泡部が横方向に開口しており、定量噴射機構を備えていない点で
図1の吐出部材10と相違する。
【0023】
押ボタン31は、下端に形成されたエアゾール容器AのステムRを受け入れる筒状のステム係合部36と、前方に形成された筒状のノズル37と、ステム係合部36とノズル37を連通する部材内通路38とを備えている。また、上面31aは、押部となる。部材内通路38は、ステム係合部36から上方に延び、その上端近辺で前方に折れ曲がったものである。
【0024】
カップ部材32は、中心孔41aを有する基部41と、その基部の縁部から前方に延びる側壁42と、その基部の中心孔41aの縁部から前方に伸びるノズル挿入部43とを備えている。側壁42は、前方に向かって外側に突出する湾曲形状を呈しており、ノズル挿入部43(中心孔41a)内にノズル37を挿入して係合するように構成されている。また、
図4bに示すように、エアゾール製品を保管するときは、カップ部材32を押ボタン31から取り外し、カップ部材32の開口を肩カバー34に装着することができる。
【0025】
制御部材33は、側面に吐出孔46aが形成され、ノズル挿入部43を挿入して係合する筒状の中筒部46と、その前部(上部)に設けられた拡径部47とを備えている。吐出孔46aの開口は、側壁42に向かって複数個が放射状に配置されている、あるいは、吐出孔46aの開口が環状に形成されている。拡径部47は、外側に突出するように湾曲しながら前方に向かって拡径している。
【0026】
吐出部材30は、押ボタン31のノズル37にカップ部材32のノズル挿入部43を挿入し、その上から制御部材33の中筒部46を被せて一体化させたものである。そして、カップ部材32の側壁42と制御部43とによって形成される空間Sが発泡部を構成し、ステム係合部36、ノズル37が通路部を構成し、制御部材33が制御部を構成する。
【0027】
このように構成されているため、押ボタン31の押部(上面)31aを下方に押圧することにより、ステムRが押下げられエアゾール容器Aが開放する。これにより、エアゾール容器Aの内容物Cが通路部を通り、発泡部まで供給される。
一方、吐出部材30の吐出孔46aは、
図1の吐出部材10と同様に、吐出孔46aが制御部材33の中筒部46の側面に設けられているため、吐出孔46aがカップ部材32の側壁42に向かって環状に開口しており、泡体は前後に延びる筒状となる。特に、制御部材33が発泡部S内にあるため、制御部材33を囲むようにして筒状の泡体が前方に延びる。なお、吐出部材30では、重力によって泡体の筒形状が壊れる場合もあるが、泡体の密度を小さくすることによってきれいな筒形状を維持させることができる。この吐出部材30は、押ボタン31を押し続ける限り、発泡性内容物は吐出され続けるため、長い筒状の泡体を形成させることができる。このように泡体を筒形状とすることにより、さらに
図1の吐出部材10と同様に、泡体の表面積を大きくすることができ、芳香剤や殺虫剤、虫忌避剤等に好ましく使用できる。そして、使用者は、泡が乾燥したり萎むなどにより効果が完了したことを確認することができる。
【0028】
図5aの吐出部材50は、エアゾール容器Aに連結される押ボタン51と、その前方(
図5の左側)に取り付けられたカップ部材52と、そのカップ部材52に取り付けられる制御部材53とを備えている。この吐出部材50も、
図4の吐出部材30と同様に、カップ部材52の側壁42および制御部材53の間の空間Sが発泡部を構成し、押ボタン51が通路部を構成し、制御部材53が制御部を構成する。制御部材53は、
図4の制御部材33と実質的に同じものである。
押ボタン51は、前方に後述するカップ部材52の係合脚52aを受け入れる環状の溝部51aを備えている以外は、
図4の押ボタン31と実質的に同じであり、ステム係合部36と、ノズル37と、ステム係合部36とノズル37を連通する部材内通路38とを備えている。そして、上面31aが押部となる。
カップ部材52は、基材41の後方に延びる筒状の係合脚52aを備えている以外は、
図4のカップ部材32と実質的に同じであり、基部41、側壁42、ノズル挿入部43とを備えており、制御部材53で押ボタン51に連結される。また、係合脚52aには、内外を貫通する連通孔52bが形成されている。
このカップ部材52は、
図5bに示すように、空間S内に泡体C1を形成した後、カップ部材52を押ボタン51から取り外し、連通孔52bに針金等の線体54を通し、吊り下げることができる。なお、使用後は、
図4と同様にカップ部材52の開口を肩カバー34に装着できるようにしてもよい。
【0029】
図6の吐出部材60は、エアゾール容器Aのステムに連結される押ボタン61と、エアゾール容器の外周に取り付けられる肩カバー62とからなる。このものは押ボタン61と肩カバー62の側壁との間の空間Sが発泡部を構成し、押ボタン61が通路部および制御部を構成している。
【0030】
押ボタン61は、矩形状の本体63と、その上端に形成された制御筒64とを備えている。
本体63は、下端に形成されたエアゾール容器AのステムRを受け入れる筒状のステム係合部65と、側面に形成された吐出孔66と、ステム係合部65と吐出孔66とを連通する本体内通路(通路部)67とを備えている。吐出孔66は、複数個が本体63から放射状に配置されている、または、本体63に環状に設けられている。
制御筒64は、本体63の上面縁部から上方に延びる筒部であり、後述する肩カバーの側壁より上方に延びている。しかし、筒でなくてもよい。
【0031】
肩カバー62は、エアゾール容器Aの外周縁と係合する係合部68と、その上面68aから上方に延びる側壁69とを有している。係合部68の上部(上面68a)の内径と押ボタン61の本体63の外径とは、押ボタン61を肩カバー62に対して上下動できるように、しかし、それらの間にほぼ隙間がないように構成されている。
【0032】
この吐出部材60は、肩カバーの側壁69と押ボタン61との間が発泡部となる。上述したように押ボタン61の本体63と肩カバー62の係合部68の上部との間に若干隙間は形成されるが、吐出物が泡体であるため、内容物がエアゾール容器A上に落ちにくい。なお、発泡部の開口が下となるようにして使用する場合は、そのような問題はない。
この場合も、吐出孔66は発泡部あるいは側壁69に向かって環状に開口しているため、泡体は上下に延びる筒状となる。そして、制御部である押ボタン61が発泡部S内にあるため、押ボタン61を囲むようにして筒状の泡体が上方に蓄積される。この吐出部材60も、押ボタン61を押し続ける限り、発泡性内容物は吐出され続けるため、長い筒状の泡体を形成させることができる。
【0033】
図7のエアゾール製品P2は、エアゾール容器Aと、そのバルブに取り付けた吐出部材70とからなる。
吐出部材70は、エアゾール容器Aに取り付けられる操作部材71と、その上部に連結されるカップ部材72とを備えている。カップ部材72は、外側壁84と、その外側壁に対して隙間Yを空けて設けられた内側壁87とを備えている。また、肩カバー73がエアゾール容器の外周に取り付けられている。吐出部材70は、カップ部材72の内側壁87内の空間Sが発泡部を構成し、操作部材71が通路部を構成し、カップ部材72の内側壁87が制御部を構成する。
操作部材71は、下端に形成されたエアゾール容器AのステムRを受け入れる筒状のステム係合部76と、その上方に形成された筒状のノズル77と、ステム係合部76とノズル77を連通する部材内通路78とを備えている。また、ノズル77の中央あるいは下部側面にノズル77を中心として半径方向外側に円状あるいは扇状に突出する操作面79が形成されている。
【0034】
カップ部材62は、上述するように外筒部材81と、内筒部材82とからなり、外筒部材81と内筒部材82とが所定の隙間Yを空けて連結されたものである。
外筒部材81は、中央にノズル77を係合する係合孔83aが形成された外底面83と、その縁部から上方に延びる外側壁84とからなる。
内筒部材82は、内底面86と、その縁部から上方に延びる内側壁87とからなる。内側壁87の内面に複数の吐出孔88が形成されている。吐出孔88は縦スリットのような細長い形状であり、複数個を環状に、さらに、上下列に形成されている。しかし、複数個の吐出孔88が少なくとも一列環状に並んでいればはっきりとしたリング状の泡体を形成させることができる。内側壁87の上端に外側壁84の上端と連結し、隙間Yを閉じる天面89が形成されている。この天面89は、外筒部材81の外側壁84に設けられてもよい。
このように構成されているため、上述したようにカップ部材72の内側壁87内の空間
が発泡部を構成し、操作部材71が通路部を構成し、カップ部材72の内側壁87が制御部を構成する。
【0035】
この吐出部材70は、下にある目的表面に向かうようにカップ部材72の発泡部Sの開口を下に向け、操作面79を指等でエアゾール容器A側に引くようにして使用する。吐出部材70がエアゾール容器Aに対して上方(
図6は下方)に移動する。これによりエアゾール容器Aが開放され、内容物Cが吐出部材70内に導入され、内容物Cは吐出孔88から発泡部Sに供給される。また吐出孔88がカップ部材72の内側壁87の内面に環状に複数個形成されているため、制御部である内側壁87の内面に沿って環状に各吐出孔から発泡部の中心方向に発泡性内容物が吐出され、発泡した泡体同士がくっついて波状の泡体が形成される。さらに、発泡部Sの開口を下に向けて使用する場合、吐出孔88から吐出された内容物Cは発泡と同時に内側壁87に沿って発泡部Sの開口に向かい目的表面上でリング状の泡体が得られる。このように泡体をリング形状とすることにより、その表面積を大きくすることができ、目的成分の効果を強く発揮することができる。