【文献】
BLOM, A.W. et al.,Optimization of course locations in fiber-placed panels for general fiber angle distributions,Composites Science And Technology,Elsevier,2010年,Vol. 70,pp. 564-570
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
繊維強化複合材料は、熱硬化性または熱可塑性ポリマー樹脂のようなマトリクス材料に含浸した繊維を含む。繊維は、荷重に耐え、そして強度及び剛性を発現する。複合材料のテープ層は、繊維の方向に高い強度及び剛性を有し、そして繊維に直交する方向に、それよりも低い強度及び剛性を有する。
【0003】
最先端繊維プレースメント(tow placement technology(トウプレースメント技術)としても知られている)は、複合材積層板を製造する自動プロセスである。スリットプリプレグテープの複数の狭幅ストリップ(すなわち「tows(トウ:繊維束)」)が表面に、「cources(コース)」と表記される帯状の平行トウとして配置される。この方法によって、繊維を屈曲させ、そしてトウを切断し、そして再び繰り出すことができる。コースが収束する場合、重なりは、トウを切断し、そして再び繰り出すことにより無くすことができる。繊維配置機械によって積層される複合材の製造時の制約として、最小の回転半径、及び最大の厚さ方向の積層数を挙げることができる。通常の設計局面では、繊維が方向を変えない、すなわち各繊維がプライ内で直線状である構成のプライ群を利用する。これらの設計は、本開示の残りの部分では、「conventional(従来設計)」と表記することとする。
【0004】
種々の面内繊維配向を有する繊維強化複合材料に関する研究から、剛性を可変とすることによって、構造性能を向上させることができることが判明している。複合材を積層する際の配向操作繊維(steered fibers)の使用は、剛性及び強度を種々の方向に調整して、要求性能を持つ構造の重量を最小限に抑える手段として認識されている。種々の繊維配向を有するプライ群から成る複合材は、「variable−stiffness composites(可変剛性複合材)」と表記される。殆どの場合において、トウプレースメントにより形成される曲線繊維経路を使用して、これらの可変剛性複合材を構成する。
【0005】
配向操作繊維プライ群を取り入れた設計が行なわれてきた。これらのアプローチは、設計空間が小さく限定されるか、または製造可能にならないおそれがある。製造可能な設計の場合、1次元繊維経路記述を使用して、円筒状積層板及び円錐状積層板の座屈荷重を最適化している。仮想設計(仮想設計は製造可能であるか、または製造可能にならないおそれがある)では:(1)繊維を、解析及び実験の両方に基づいて主応力方向に配向させ;そして(2)繊維角度を、フラットパネルの2つの方向に変化させる。
【0006】
複合材プライ群を設計するこれらの公知の方法では、繊維角度を空間的に変化させる。繊維強化複合材料は普通、複数プライを含むので、特定の荷重状態に対して最適化を行なうと、複数プライは、異なる繊維角度分布を持つようになる。配向操作繊維プライ設計アプローチはこれまで、通常、繊維角度分布によって直接表現されて(例えば、Bezier曲面として)おり、この繊維角度分布は、簡単な角度分布以外の角度分布の場合に、所定の角度分布に関連する厚さ方向の積層数を計算するために高いコストを要するという不具合がある。これにより、製造不能になる可能性のある積層板を設計してしまう(過剰な厚さ方向の積層数、またはトウ切断及びトウ集束に起因する)、簡単な角度分布を持つ小さく限定された設計空間を使用することになって、設計が、もっと大きい許容設計空間で行なわれる場合よりも低い効率で行なわれる、または膨大な計算時間を要する逆解法を用いて、流線関数を作成して厚さ方向の積層数を評価することになる、のいずれかである。
【0007】
計算最適化手法を利用して、製造可能性を確保しながら大きい設計空間を扱うことができる、配向操作繊維プライ群の設計方法が必要になる。
【発明の概要】
【0008】
本明細書において開示される計算最適化プロセスでは、配向操作繊維によって得られる複合材積層板の可変剛性特性を利用して、繊維を表わす流線関数の設計を誘導することにより当該設計を行なう。この設計プロセスでは、有限要素解析ツール(例えば、Abaqus(登録商標)または他のいずれかの適切な有限要素ソルバ)、適切な故障基準、及び幾何学最適化を組み合わせて、流線関数群に関連する配向角度を、最適化プログラムによって決定することにより、目標性能要求、例えば荷重条件(群)、及び準静的または動的イベントの故障基準を満たす。開示のプロセスによって更に、設計者は、最小繊維配向半径のような製造上の制約を与えることができる。最適解は、配向操作繊維を有する所定の被荷重構造の好ましい応力または歪み分布から得られる、例えば印加荷重をパネルの周縁部の方に誘導し直し、従って応力集中が所定の荷重に対応して極めて大きくなる切欠き領域を避けることにより得られる。次に、この解析プロセスにより作成される流線関数が、繊維トウ配置の目標経路として使用される。最適化手順における性能目標は、構造の準静的応答から動的応答に跨っている。このプロセスは、上に挙げた以外の有限要素解析ツール、故障基準、及び最適化プログラムに適用することができる。このプロセスによって、設計空間を、繊維角度分布の1次元パラメータ化と比較してはるかに大きくすることができるとともに、製造可能性制約の適用を容易にすることができる。当該プロセスによって、多数の実現可能な設計候補を同定して、耐荷重性を向上させることができる。これにより、重量を、厚さのような制約に従って低減することができるので、理想的な軽量設計候補が、試験の繰り返しを無くすことにより、大幅に短い時間で、かつ大幅に低いコストで得られる。
【0009】
本発明の1つの態様は、複合材積層板を設計する方法であり、該方法は:(a)第1プライを設計するための設計変数値を選択するステップと;(b)前記第1プライを表わす流線関数を、前記選択設計変数値に従って計算するステップと;(c)前記第1プライとバランスする、または略バランスする第2プライを表わすバランスプライ流線関数(balancing ply stream function)を計算するステップと;(d)前記第1及び第2プライの各プライのそれぞれの繊維角度分布を、前記第1及び第2プライを表わすそれぞれの流線関数に基づいて計算するステップと;(e)前記第1プライの厚さ方向の積層数を、前記第1プライを表わす前記流線関数に基づいて計算するステップと;(f)前記計算ステップ群の結果によりシミュレートされる第1及び第2プライと、そして付加的なプライ群と、を含む積層板のシミュレート構造体を解析するステップと;(g)前記シミュレート構造体の1つ以上のメリット指数を計算するステップと;そして(h)ステップ(a)〜(g)を、前記メリット指数群のうちの1つ以上のメリット指数の最適値が得られるまで繰り返すステップと、を含む。
【0010】
本発明の別の態様は、複合材積層板を製造する方法であり、該方法は:(a)プライを設計するための設計変数値を選択するステップと;(b)前記プライを表わす流線関数を、前記選択設計変数値に従って計算するステップと;(c)前記プライの繊維角度分布を、前記プライを表わす前記流線関数に基づいて計算するステップと;(d)前記プライの厚さ方向の積層数を、前記プライを表わす前記流線関数に基づいて計算するステップと;(e)前記計算ステップ群の結果によりシミュレートされる前記プライと、そして付加的なプライ群と、を含む積層板のシミュレート構造体を解析するステップと;(f)前記シミュレート構造体の1つ以上のメリット指数を計算するステップと;(g)ステップ(a)〜(f)を、前記メリット指数群のうちの1つ以上のメリット指数の最適値が得られるまで繰り返すステップと;(h)マシンを制御してコースを、前記メリット指数群のうちの1つ以上のメリット指数の前記最適値を得るために適用した前記流線関数により定義される経路に沿って設定するコンピュータプログラムを作成するステップと;(i)複合材積層板上でのコースを前記コンピュータプログラムに従ったプロセスで自動的に設定するステップと、を含む。
【0011】
本発明の別の態様は、少なくとも1つの配向操作繊維プライを有する複合材積層板を設計するシステムであって、該システムはプロセッサを備え、該プロセッサをプログラムして:(a)配向操作繊維プライを設計するための設計変数値を選択する操作;(b)前記プライを表わす流線関数を、前記選択設計変数値に従って計算する操作;(c)前記プライの繊維角度分布を前記プライを表わす前記流線関数に基づいて計算する操作;(d)前記プライの厚さ方向の積層数を前記プライを表わす前記流線関数に基づいて計算する操作;(e)前記計算ステップ群の結果によりシミュレートされる前記プライと、そして付加的なプライ群と、を含む積層板のシミュレート構造体を解析する操作;(f)前記シミュレート構造体の1つ以上のメリット指数を計算する操作;及び(g)ステップ(a)〜(f)を、前記メリット指数群のうちの1つ以上のメリット指数の最適値が得られるまで繰り返す操作を実行する。
【0012】
本発明の更に別の態様は、以下の方法を含むことができる:
【0013】
A.複合材積層板を設計する方法を含み、該方法は:
(a)第1プライを設計するための設計変数値を選択するステップと;
(b)前記第1プライを表わす流線関数を、前記選択設計変数値に従って計算するステップと;
(c)前記第1プライとバランスする、または略バランスする第2プライを表わすバランスプライ流線関数を計算するステップと;
(d)前記第1及び第2プライの各プライのそれぞれの繊維角度分布を、前記第1及び第2プライを表わすそれぞれの流線関数に基づいて計算するステップと;
(e)前記第1プライの厚さ方向の積層数を、前記第1プライを表わす前記流線関数に基づいて計算するステップと;
(f)前記計算ステップ群の結果によりシミュレートされる前記第1及び第2プライと、そして付加的なプライ群と、を含む積層板のシミュレート構造体を解析するステップと;
(g)前記シミュレート構造体の1つ以上のメリット指数を計算するステップと;そして
(h)ステップ(a)〜(g)を、前記メリット指数群のうちの1つ以上のメリット指数の最適値が得られるまで繰り返すステップと、を含む、方法。
【0014】
B.ステップ(a)において、下限値を上回る半径の配向操作繊維を有するコースを指定する設計変数値を選択する、段落Aに記載の方法。
【0015】
C.ステップ(a)において、コースオーバーラップが上限値を下回ることに起因する厚さ方向の積層数を有するコースを指定する設計変数値を選択する、段落Aに記載の方法。
【0016】
D.ステップ(f)において、有限要素解析を実行する、段落Aに記載の方法。
【0017】
E.ステップ(f)において、前記シミュレート構造体が単位荷重を受けている状態のひずみ場の解を求め、そして当該ひずみ場を処理して積層板強度を、単位荷重結果に基づいて計算する、段落Aに記載の方法。
【0018】
F.ステップ(b)〜(g)を、並列動作する複数のプロセッサの各プロセッサによって実行する、段落Aに記載の方法。
【0019】
G.前記第1及び第2プライの各プライが該当する切欠き部を有するように設計される、段落Aに記載の方法。
【0020】
H.更に、コンピュータ数値制御トウプレースメントマシンのコントローラを命令群でプログラムし、これらの命令によって、前記トウプレースメントマシンが、プライのトウを、前記第1プライを表わし、かつ前記メリット指数群のうちの1つ以上のメリット指数の前記最適値を得るために適用した前記流線関数により定義される経路に沿って配置するようになるステップを含む、段落Aに記載の方法。
【0021】
I.更に、コンピュータ可読媒体に、特定プライの製造計画を表わすデータを格納するステップを含み、前記製造計画は、前記プライを表わし、かつ前記メリット指数群のうちの1つ以上のメリット指数の前記最適値を得るために適用した前記流線関数を含む、段落Aに記載の方法。
【0022】
本発明の他の態様は、以下に開示され、そして請求される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の開示は、可変剛性複合材シェルの設計及び解析を行なうための最適化プロセスを開発し、そして当該最適化プロセスが有効であることを立証することにより得られる結果である。この作業の過程において、積層板構造における繊維配向操作の実現可能性及び重量低減可能性について検討した。
【0026】
本明細書において開示される設計プロセスでは、荷重の向きを、繊維配向を操作することにより操作することができる。従来の積層板は、切欠き部の周りの面内荷重に、プライ群(例えば、0°プライ群から±45°プライ群)の間の荷重を伝達することにより耐えることができる。繊維がプライ内の屈曲経路を追従することができる場合、荷重には、切欠き部の周りでより効率的に耐えることができる。積層板を、繊維配向を操作して設計するという解決困難な課題は、製造可能な繊維経路を効果的に記述することで解決される。効果的に記述する見返りとして、最終的な製造構造の重量及び費用を低減することができる可能性が生じる。
【0027】
フラットパネル上の従来のプライの場合、繊維経路は、プライ角度により完全に記述される。従来の積層板の場合、プライ角度は、0°、±45°、90°のうちの1つである。
図1は、互いに平行な直線状繊維4を有する複合材料により形成されるプライ2を示している。
図1には示していない他のプライ群はプライ2の上に配置される。結果として得られる積層板は、円形切欠き部6を有するものとして図示され、円形切欠き部6は、積層プライ群を硬化させた後にフライス加工することにより形成することができる。荷重経路は、この0°プライから隣接する45°プライ(図示せず)に達して、切欠き部6で終端する繊維から、切欠き部6の傍を通り、かつ切欠き部と交差しない繊維に至る。
【0028】
「non−traditional(非従来式)」と表記される積層板が従来式積層板として普及すると、直線状繊維プライ群をいずれの角度にも配置することができるようになる。
【0029】
もっと普及するようになるのが「配向操作繊維」積層板または「可変剛性」積層板であり、これらの積層板では、繊維経路はプライ内で屈曲することができる。
図2は、配向操作繊維10が屈曲経路を追従する構成の複合材料により形成されるプライ8を示している。
図2に示していない他のプライ群はプライ8の上に配置される。結果として得られる積層板は、円形切欠き部6を有するものとして図示される。
図2から分かるように、幾つかの繊維は依然として、この配向操作繊維プライの切欠き部6で終端しているが、他の繊維群は、切欠き部の周りを巡っている。繊維配向を操作することにより、剛性及び強度を空間的に変化させることができ、剛性及び強度を空間的に変化させることによる正味の効果は、より高効率の構造が得られることである。
【0030】
配向操作繊維は、プライ内で屈曲経路を採り、そしてこれらの経路は、何らかの形で記述する必要がある。非常に多種多様な繊維経路が可能であるが、これらの経路は、製造可能となるように特定のルールに従う必要もある:(1)経路は過剰に曲がってはならない(配向操作半径が余りにも小さくなりすぎると、シワができる);そして(2)経路は、過度に収束してはならない(厚さ方向の積層、またはトウ切断/トウ集束が生じる)。繊維経路曲率(または、配向操作半径)及び収束は、幾つかの簡単な経路記述の場合に比較的容易に制御することができる。本明細書において開示される設計プロセスにより、更に複雑な(かつ確実な)経路記述が可能になり、この経路記述によって、これらの製造可能性制約を満たすことができる。経路記述がどのようなものであっても、配向操作繊維プライを設計する殆どのアプローチでは、最適化手法を利用して、配向操作経路の大きい設計空間を扱うことができる。本明細書において開示されるプロセスにより、実際の設計に必須の製造可能性を確保しながら、設計空間を拡大することができる。
【0031】
別の設計に関する解決困難な課題には、構造解析方法が含まれる。構造は、これらの構造の強度を予測する方法を用いることなく設計することはできない(そして、構造的な効率は、当該方法の精度に依存する)。スリットテープに適用することができる解析方法が必要である。具体的には、配向操作繊維を製造に適用して、例えばトウ切断及び集束中央プライ、及び繊維曲率の影響に対処するために作業が必要になる。
【0032】
配向操作繊維プライを設計するための既存の解決策は、A. W. Blomによる「Structural Performance of Fiber−Placed, Variable−Stiffness Composite Conical and Cylindrical Shells(繊維配置した可変剛性複合材円錐形及び円筒形シェルの構造性能)」と題する論文(2010年)に開示されている。この解決策は、1次最適化ループを含み、この1次最適化ループでは、設計変数を選択し、繊維角度分布を定義し、厚さ方向の積層数を計算し、構造を解析し、そして構造のメリット指数を計算する。1次最適化ループの内部には、2次最適化ループがあり、この2次最適化ループは、流線関数を計算するために必要であり、この流線関数が今度は、厚さ分布の計算に必要になる。2次最適化ループでは、偏微分方程式の境界条件を選択し、偏微分方程式を解いて流線関数を求め、厚さ分布を計算し、そして厚さ分布の許容範囲を計算する。
【0033】
これとは異なり、本明細書において開示される設計プロセスでは、設計変数で、流線関数を直接定義するので、2次最適化ループは必要ではない。流線関数が定義されると、厚さ分布、及び繊維角度分布は、流線関数から容易に計算される。流線関数自体は、例えばテンソル積多項式スプラインにより簡単にパラメータ化することができる。
【0034】
図3は、本明細書において開示される設計プロセスを繰り返す様子を表わすフローチャートである。ステップ30では、設計を、最適化プログラムにより、設計空間に関する現時点における情報に基づいて選択する。次に、最適化プログラムから設計パラメータ群がプログラムに渡され(
図3のステップ32)、このプログラムで、パラメトリック幾何学的形状を処理し、そして次に、データをフォーマット化して有限要素解析する。ステップ34では、有限要素解析プログラムで、所定の荷重を受けている状態のひずみ場の解を求める。次に、ステップ36では、有限要素解析プログラムで、ひずみ場を後処理して、パネル強度を、これらの結果に基づいて計算する。構造解析は、オプティマイザーによって行なわれ、そしてスクリプティングを使用して自動的に行なわれる。スクリプトを使用してデータを分配することにより、高性能計算クラスタの異なるコンピュータで、この計算クラスタが利用可能な場合に、当該データを並列に実行する。有限要素解析を並列に行なうことにより、膨大な時間を節約することができる。
【0035】
図4は、本発明の1つの実施形態による最適化プロセスの主要ステップ群を表わすフローチャートである。設計空間を、最適化プログラムにより探索する(ステップ38)。実験は、応答データを、初期近似モデルにおける設計空間で収集するために行なわれる(例えば、162回の初期Abaqus実行)。この設計空間では、領域(入力パラメータ群、出力応答群、及びパラメータ群の境界の指定)を定義し、そして実験を定義する(最大の情報を提供するサンプル群に関する統計データを与える実験設計に基づく実験の定義)。次に、代用モデル群を作成し、これらの代用モデルによって、最適化アルゴリズムは、種々の構造のメリットに関する推定を設計空間で行なうことができる(ステップ40)。その後、最適化問題を定義する(ステップ42)。次に、最適化問題を、アルゴリズムを使用して解き(ステップ44)、当該アルゴリズムでは、近似モデル群を用いて、有限要素解析プログラム実行点を賢明に選択し、そしてこれらの有限要素解析の結果を定期的に利用して、近似モデルの精度を向上させる。このプロセスは、最適化が完了するまで繰り返される。
【0036】
コンピュータシミュレーションを技術的意思決定に使用する場合の最適化に適する1つのアルゴリズムは、CRPC−TR98739−S, Center for Research on Parallel Computationに1998年2月に掲載されたRice UniversityのBookerらによる「A Rigorous Framework for Optimization of Expensive Functions by Surrogates(計算量が多い関数を代理関数で最適化する厳密なフレームワーク)」と題する論文に開示されている。しかしながら、可変剛性複合材積層板の屈曲繊維経路を設計するためには、いずれの適切な公知の最適化プログラムを用いることができる。
【0037】
最適化は膨大な計算時間を要する。本明細書において開示される方法の1つの実施形態では、最適化実行時間を、最適化問題を細心の注意を払って数式化し(応答関数の変換、最適化パラメータ群の調整などを行なうことにより)、並列計算を活用し、そして高性能計算クラスタを用いることにより短くすることができる。プロセスを並列に実行することにより、多くの解析を同時に実行することができるので、合計設計時間を大幅に短くすることができる。
【0038】
図5は、1つの実施形態による設計プロセスを詳述したフローチャートである。まず、流線関数を直接定義する設計変数値を選択する(ステップ12)。流線関数は、例えばテンソル積多項式スプラインを使用してパラメータ化することができる。次に、角度分布を、流線関数を計算し(ステップ14)、偏微分方程式を解いて、バランスプライ流線関数を計算し(ステップ16)、そして各流線関数に対応する角度分布を計算する(ステップ18)ことにより定義する。また、厚さ方向の積層数は、1つの流線関数から計算される(ステップ20)が、その理由は、厚さ方向の積層数が、バランスペアの各プライに関して同じであるからである。配向操作半径は、ステップ20における厚さ方向の積層数と一緒に計算することができる(両方の指数は、流線関数の微分関数である)。ステップ14,16,18,及び20は、コンピュータをプログラムしてパラメトリック幾何学的形状を処理することにより行なわれる。次に、これまでの計算ステップの結果によりシミュレートされる構造体をステップ22において、Abaqusのような有限要素解析プログラムによって解析する。メリット指数を、シミュレート構造体に対応して、有限要素解析プログラムに組み込まれるサブルーチンを使用して計算する(ステップ24)。これまでのステップは、メリット指数の最良値が得られるまで繰り返される。矢印28は、最適化ループを指し、この最適化ループに従って、新規設計変数値が、メリット指数計算結果によって変わるように、最適設計が得られるまで繰り返し選択される。配向操作半径、及び厚さ方向の積層数に対する制約は、
図5に矢印28及びステップ12により表わされるオプティマイザーによって適用される、すなわち設計変数値群に対する将来時点の選択は、所定の設計に対応する配向操作半径、及び厚さ方向の積層数が許容可能であったかどうかにより影響される。最適設計が得られる場合、当該最適設計は、コンピュータ数値制御トウプレースメントマシンのコントローラによって実行されるプログラムに変換することができる。当該コントローラをプログラムして、当該トウプレースメントマシンで、繊維を、メリット指数の許容可能値を得るために適用した流線関数により定義される経路に沿って配置する。
【0039】
図5に示すフローチャートは、プライを連続角度分布として設計する様子を表わしている。設計の別の局面では、角度分布を離散化することにより製造に用いる。
【0040】
製造パラメータ群をシミュレートするために、本明細書において開示されるプライ設計プロセスは以下の制約を含む。
【0041】
まず、配向操作半径を制限して、繊維しわを回避する。繊維配向を操作するためには、トウを面内で屈曲させて、配向操作半径が小さくなるときに、屈曲トウの内周に局所的な座屈またはしわが生じるようにする必要がある。小半径の内部の繊維は、これらの繊維が外部繊維よりも短い経路を採るのでしわになる。十分大きい半径を設計に使用してしわを回避する必要がある。
【0042】
次に、厚さ方向の積層数、または切断トウ数を制限する必要がある。設計において繊維のコースを収束させる必要がある場合、厚さ方向の積層が積層板内で生じる。
図6は、一対のコース50及び52を示しており、これらのコースは、収束して重なり領域54を生じる。トウを切断して(または、集束して)撚りをほぐしてしまわない限り、この重なりによって厚さ方向の積層が生じる。
図7は、トウ56及び58をそれぞれ有する一対のコース50及び52を示しており、これらのトウを切断すると、楔形の隙間60が積層時に残る。積層、及び切断による隙間は共に、コースの収束をプライ設計において制限することにより小さくすることができる。
【0043】
1つの実施形態によれば、配向操作繊維パネル内の繊維は、トウと表記される帯状に配置され、これらのトウは1/8インチの幅であり、そして幾つかのトウは1コース当たり12トウの割合で、1コースに集合的に堆積させる。各離散コースは個別に表わすことができるが、設計を行なう場合、配向操作繊維プライは通常、個別にではなく、方向場として扱われる。
図8は、配向操作繊維プライの方向場(すなわち、繊維配向変化)を示す図である。
図8の矢印62は方向場を表わしている(各矢印は、該当する点を通過する繊維の方向を示す)。実線64は繊維経路群を表わしている。各繊維経路は、該当するコースの一方の端部から他方の端部に延びている。
【0044】
数学的には、配向操作繊維プライの方向場は、プライの平面内のベクトル値関数として表わすことができる。繊維方向場も、繊維がプライ軸となす局所角度により表わすことができる。これにより、スカラー値関数が得られる。角度分布を単一方向変数の関数として直接表わす手法は、既に成功裏に応用されている。しかしながら、角度分布が両方向の関数として変化すると、厚さ方向の積層、及び配向操作半径を制御するに当たって問題が生じる。
【0045】
平面内の繊維角度分布は、当該平面内のいずれかのスカラー値関数で表わすことができる。角度分布が、当該平面内の両方向の関数(φ=φ(x,y))である場合、角度表現式は、例えばBezier(ベジェ)曲面として表わすことができ、このBezier曲面は、16個の制御点を設計パラメータ群として有する。Bezier曲面から16個の数値を連続表面にマッピングし、この表面の高さで局所プライ角度を定義する。
【0046】
一旦、繊維角度分布が定義されると、コースの収束に起因する厚さ方向の積層数は、方向場を表わす流線関数を見付け出すことにより求めることができる。このような流線関数を見付け出すことは非常に簡単であるという訳ではない−解は、所定の方向場に関して唯一ではなく、そして数値計算手順を繰り返す必要がある。1つのこのような手順は、Composite Science and Technology, 70(4), 564−570(2010)に掲載されたBlomらによる「Optimization of Course Locations in Fiber−Placed Panels for General Fiber Angle Distributions(全体の繊維角度分布に関する繊維配置パネルにおけるコース位置の最適化)」という論文に開示されている。一旦、流線関数が見付け出されると、厚さ方向の積層数は、流線関数の勾配の関数として計算することができる。
【0047】
別の構成として、選択される繊維角度分布にフィッティングする流線関数を見付け出すのではなく、流線関数を直接選択する(すなわち、パラメータ化する)ことができ、そして次に、角度分布を、当該流線関数から計算する。これが、本明細書において採用される方法である。
図9に示す表面66は、流線関数を表わし、そして当該表面66の等高線68は、流線曲線である。流体経路を表わすのではなく、これらの流線曲線は、繊維経路群を表わしている。本明細書において使用されるように、「fiber path(繊維経路)」は、有限幅のコースの中心線を追従する。厚さ方向の積層は、流線曲線群68が接近して合体する箇所に生じる。曲率及び厚さ方向の積層数は共に、数学的に、流線関数の勾配の関数として表わすことができる。
【0048】
繊維経路を表わす流線関数の1つの利点は、流線関数の微分に関連する厚さ方向の積層数及び配向操作半径は共に、更に直接的に制御することができることである。
図10は、繊維角度を直接表わす表面70を示している。
図10に示す角度分布を
図9に示す流線関数から計算するのは、
図9に示す流線関数を
図10に示す角度分布から計算するよりもはるかに簡単(かつ、安価)である。
【0049】
本開示は、2つの変数から成るスカラー値関数φを、特定のプライの製造計画を表わす手段として使用することを提案する。これは、個々のテープコース(tape courses)をφの等高線として表わすことができるので有効である。具体的には、j番目のテープコースは、次式で表わされる関数に対応する等高線を追跡することにより求めることができる:
φ(x,y)=jδ (1)
上式では、或るδは、テープ幅の関数であり、そして関数φのスケーリングである。
【0050】
候補関数φは必ず、テープコースの間隔だけでなく、これらのテープコースの曲率に対する制約を満たす必要がある。テープの幅がwで与えられるとする。次式で表わされる制約、
1−ε
1≦‖∇φ(x,y)‖≦1+ε
2 (2)
がφに、x及びyの全ての値に対して課され、かつδがwに等しくなるように設定される場合、テープコース群の間の間隔は必ず、w(1−ε
1)とw(1+ε
2)との間の値になるという制約を受ける。
【0051】
曲率は、扱いが更に難しい。ツールパスをuでパラメータ化して、点(x(u),y(u))の全てが次式を満たすと仮定する:
φ(x(u),y(u))=jδ (3)
この方程式をuで微分すると次式が得られる:
φ
xx’+φ
yy’=0 (4)
上式では、φ
xは、φをxで偏微分したものであると見なされ、そしてφ
yも同様に定義される。方程式(4)は、いずれの点におけるテープコースの正接も、φの勾配に直交することを示唆している。ツールパスのパラメータ速度を任意の値から始めることができたので、次式:
【数1】
(5)
を点(x(u),y(u))の定義として簡単に取り込むことができる。方程式(5)を微分すると、次式が得られる:
【数2】
(6)
曲率の標準定義を適用すると、次式が得られる:
【数3】
(7)
ここで、曲率がこの場合、2次元で処理しているので符号付きの量であることに注目されたい。曲率の限界には、次式により表わされる制約を課すことができる:
κ
l≦κ(x,y)≦κ
u (8)
【0052】
φで定義されるプライをψで定義される別のプライとバランスさせたいと仮定する。この場合、バランス(balance)とは、ψで与えられる繊維方向が、φで定義される繊維方向と、これらの繊維方向が、或る好適な方向dに対して対称に反射された後に同じになることを意味する。dが単位ベクトル(d
1,d
2)で与えられると仮定する。1つのベクトルνが在る場合、このベクトルがdに対して対称に反射されると、当該ベクトルは次式により与えられる:
【数4】
(9)
φで与えられる繊維方向を反射することは、φの勾配を反射勾配にすることと等価である(ベクトルを或る方向に対して対称に反射させることは、当該ベクトルの法線を当該方向に対して対称に反射させることと等価である)ので、次式が得られる:
∇ψ=2(∇φ・d)d−∇φ (10)
方程式(10)は、ψの勾配が、x及びyの或る所定の関数である、すなわち次の形式の偏微分方程式であることを示唆している:
∇u=f(x,y) (11)
この形式の偏微分方程式は、fの回転がいずれの場合でもゼロになる場合に正確に積分することができる(解を有する):
∇×f=0 (12)
回転を方程式(10)の右辺に適用し、そして回転を適用した後の右辺をゼロに等しくすると、次の条件式が得られる:
d
1d
2(φ
xx−φ
yy)+(d
12−d
22)φ
xy=0 (13)
別の表現をすると、この条件式は、φで与えられるプライを、好適な方向dが付与されるプライψとバランスさせるために、関数φが、方程式(13)で与えられる偏微分方程式の解にならなければならないことを意味している。このように、φで与えられ、かつ構造的にバランスさせることができるプライ群のパラメトリック定義は、方程式(2)及び(8)も満たす方程式(13)の解の中から選択する必要がある。
【0053】
図11は、バランスする複合材積層板の2プライの代表的な繊維経路を示している。実線等高線64が、第1プライの繊維経路を表わしているのに対し、破線等高線66は、第1プライとバランスする第2プライの繊維経路を表わしている。実線等高線及び破線等高線が交差する箇所では必ず、これらの等高線は垂直(主荷重)軸に対して対称な角度を有する。
【0054】
注記1:方程式(13)の数値解であるスプライン関数φが存在すると仮定する。従って、関数ψは、以下の擬似符号におけるように簡単に解析的に計算することができる:
xphi=phi.Differentiate(0)
yphi=phi.Differentiate(1)
dprod=2.0
*(d1
*xphi+d2
*yphi)
xpsi=d1
*dprod−xphi
ypsi=d2
*dprod−yphi
psitemp=xpsi.Integrate(0)
correction=(ypsi−psitemp.Differentiate(1)).Integrate(1)
psi=psitemp+correction
【0055】
注記2:方程式(13)の幾つかの簡易解は、当該方程式が、φ
xy=0かつφ
xx=φ
yyが成り立つ場合には必ず満たされると見なすことにより求めることができる。条件φ
xy=0は、φがφ(x,y)=f(x)+g(y)の形式で表わされることを意味する。この条件に結び付いた条件φ
xx=φ
yyは、f”(x)=g”(y)が成り立つことを意味する。この等式が成り立つのは、f及びgが、2次項の前に同じ定数群がある2次多項式である場合だけである。定数項は重要ではないので、これは、次式:
φ(x,y)=a(x
2+y
2)+bx+cy (14)
が、必ず方程式(13)を満たすことを意味する。これは、構造的にバランスさせることができる3パラメータ系列のプライ群を与える。
【0056】
注記3:好適な方向dが、水平方向または垂直方向のいずれかである場合、方程式(13)はφ
xy=0に簡易化される。別の表現をすると、方程式
φ(x,y)=f(x)+g(y) (15)
はいずれの単変量関数f及びgに対しても成り立つ。このように、この特殊ケースでは、簡易解は、f及びgを2次多項式に限定する必要を生じることなく得られる。
【0057】
注記4:好適な方向dが、±45°である場合、方程式(13)は:
φ
xx=φ
yy (16)
で表わされる最も簡単な2次線形波動方程式に簡略化される。これらの解は、容易に特徴付けることができる。
【0058】
例えば、φ(x,y)=xcos yと置く。従って、φ
x(x,y)=cos y及びφ
y(x,y)=−xsin yとなる。従って、次の微分方程式解く必要がある:
【数5】
【0059】
従来の解法から得られる一般解は、cos y=cxとなることが判明し、この場合、cは任意の定数である。cについて解くと、次式が得られる:
【数6】
上式は、求解関数ψが次式により表わされることを意味する:
【数7】
【0060】
図5に戻ってこの図を参照するに、設計変数値はステップ12において、例えば方程式(14)のa,b,及びcを選択することにより選択することができる。流線関数は、ステップ14において、方程式(14)の右辺の表現式を評価することにより計算される。バランスプライ流線関数は、ステップ16において、方程式(10)で表わされる偏微分方程式を解くことにより計算される。角度分布は、ステップ18において、流線関数から方程式(5)を使用して計算される。一旦、流線関数が求まると、厚さ方向の積層数を、流線関数の勾配の関数として、公知の方法(例えば、Composite Science and Technology, 70(4), 564−570(2010)に掲載されたBlomらによる「Optimization of Course Locations in Fiber−Placed Panels for General Fiber Angle Distributions(全体の繊維角度分布に関する繊維配置パネルにおけるコース位置の最適化)」(2010年)と題する論文に開示されている)で計算することができる(ステップ20)。
【0061】
図12は、前に説明したプロセスに従って設計される配向操作繊維プライを製造するプロセスの主要ステップ群を表わすフローチャートである。ステップ38,40,42,及び44は、
図4を参照して前に説明したものと同じである。設計空間を最適化プログラムにより探索する(ステップ38)。実験は、応答データを初期近似モデルにおける設計空間で収集するために行なわれる。次に、代用モデルを作成し、これにより最適化アルゴリズムで、設計空間における種々の構造のメリットに関する推定を行なうことができる(ステップ40)。その後、最適化問題を定義する(ステップ42)。次に、最適化問題を、アルゴリズムを使用して解き(ステップ44)、当該アルゴリズムは、近似モデル群を用いて、有限要素解析プログラム実行点を賢明に選択し、そしてこれらの有限要素解析の結果を定期的に利用して、近似モデルの精度を向上させる。このプロセスは、計算される流線関数を、配向操作繊維プライを製造する最適設計として見なすことができると判断されると終了する。次に、この最適流線関数をコンピュータプログラムに変換して、多軸コンピュータ数値制御トウプレースメントマシンを制御する(ステップ46)。このプログラムを実行して配向操作繊維プライを、複合材積層板の積層中に付加する場合、それぞれのコースを、最適流線関数の流線曲線に対応する曲線に沿って正確に配置する(すなわち、設定する)(ステップ48)。これは、トウプレースメントロボットヘッドを使用して行なわれ、トウプレースメントロボットヘッドの構造はこの技術分野で公知である。これらのコースを各屈曲経路の端部で切断し、そしてヘッドをリセットして次の積層を行なう。
【0062】
公知の如く、複合材パネルは、複数(例えば、20)プライにより構成することができる。フラットパネルの従来のプライの場合、各プライは繊維経路群を有し、これらの繊維経路は、0°、±45°、及び90°から成るグループから選択されるプライ角度により完全に記述される。1つの例示的な配向操作繊維複合材パネルは4配向操作プライを有することができ、この場合、他のプライ群は、従来の種類の角度を有する。例えば、従来のパネルの0°プライペア群または±45°プライペア群の替わりに、配向操作繊維プライペア群を用いることができ、この場合、各ペアのプライ群はバランスしている。各ペアの配向操作繊維プライ群は、1つ以上の従来のプライ群を介在させることにより分離することができる。この提案積層板構造は単なる例示に過ぎない。シミュレーションから、切欠き部を持つ繊維配向操作パネルは、最大歪みが小さくなり、そして歪みは、切欠き部から離れた位置で大きくなる、すなわちより大きな荷重に、穴から離れた位置で耐えることになることが判明している。従来のプライ群の20%が配向操作繊維プライ群によって置き換えられる状態では、予測される耐荷重性は、1つの例では、17%増大した。従って、同じ耐荷重性を実現するためには、配向操作繊維プライ群を有する複合材積層板によって、従来の積層板よりも重量をずっと軽くすることができる。
【0063】
本明細書において開示されるプロセスにおける設計変数によって個々のプライを設計することができる、またはひいては、バランスペアを設計することができる。更に多くの変数を追加して、更に多くのプライを同様に設計することができる。しかしながら、構造解析によって最適化/設計プロセスが異なってくるのではあるが、この構造解析から、積層板を全体として解明することができるので、設計がプライ群に関して定義される状態では、設計プロセス自体が積層板に影響する。
【0064】
本明細書において開示される設計プロセスは、単方向(バランスしない)プライ群の設計において有用であるだけでなく、バランスするプライペア群の設計において有用となり得る。別の可能性として、略バランスするプライペア群を、微小アンバランス項を流線関数定義に追加する(すなわち、x及びyの関数を方程式(15)に追加する)ことにより設計することができる。
【0065】
本発明について種々の実施形態を参照して説明してきたが、この技術分野の当業者であれば、本発明の範囲から逸脱しない範囲で、種々の変更を行ない、そして等価物を本発明の構成要素群の替わりに用いることができることを理解することができる。更に、本発明の基本的範囲から逸脱しない範囲で、多くの変形を加えて特定の状況を本発明の教唆に適合させることができる。従って、本発明は、本発明を実施するために想到される最良の形態として開示される特定の実施形態に限定されてはならない。
【0066】
方法に係る発明は、列挙されるステップ群が、これらのステップが列挙されるアルファベット順に、または順番に行なわれることを必要としていると解釈されるべきではない。
また、本発明は以下に記載する態様を含む。
(態様1)
複合材積層板を製造する方法であって:
(a)プライを設計するための設計変数値を選択するステップと;
(b)前記プライを表わす流線関数を、前記選択設計変数値に従って計算するステップと;
(c)前記プライの繊維角度分布を、前記プライを表わす前記流線関数に基づいて計算するステップと;
(d)前記プライの厚さ方向の積層数を、前記プライを表わす前記流線関数に基づいて計算するステップと;
(e)前記計算ステップ群の結果によりシミュレートされる前記プライと、そして付加的なプライ群と、を含む積層板のシミュレート構造体を分析するステップと;
(f)前記シミュレート構造体の1つ以上のメリット指数を計算するステップと;
(g)ステップ(a)〜(f)を、前記メリット指数群のうちの1つ以上のメリット指数の最適値が得られるまで繰り返すステップと;
(h)マシンを制御して、前記メリット指数群のうちの1つ以上のメリット指数の前記最適値を得るために適用した前記流線関数により定義される経路に沿ってコースを設定するコンピュータプログラムを作成するステップと;
(i)複合材積層板上でのコースを前記コンピュータプログラムに従ったプロセスで自動的に設定するステップと、
を含む、方法。
(態様2)
ステップ(a)では、下限値を上回る半径の配向操作繊維を有するコースを指定する設計変数値を選択する、態様1に記載の方法。
(態様3)
ステップ(a)では、コースオーバーラップが上限値を下回ることに起因する厚さ方向の積層数を有するコースを指定する設計変数値を選択する、態様1に記載の方法。
(態様4)
ステップ(e)では、有限要素解析を行なう、態様1に記載の方法。
(態様5)
ステップ(e)では、ひずみ場の解を、単位荷重を加えた状態における前記シミュレート構造体に関して求め、そして該ひずみ場を処理して積層板強度を単位荷重結果に基づいて計算する、態様1に記載の方法。
(態様6)
ステップ(b)〜(f)は、並列動作する複数のプロセッサの各プロセッサにより行なわれる、態様1に記載の方法。
(態様7)
前記プライは、切欠き部を有するように設計される、態様1に記載の方法。
(態様8)
更に、コンピュータ数値制御トウプレースメントマシンのコントローラを命令群でプログラムし、これらの命令によって、前記トウプレースメントマシンが、前記メリット指数群のうちの1つ以上のメリット指数の前記最適値を得るために適用した前記流線関数により定義される経路に沿ってコースを設定するようになるステップを含む、態様1に記載の方法。
(態様9)
更に、コンピュータ可読媒体に、特定プライの製造計画を表わすデータを格納するステップを含み、前記製造計画は、前記メリット指数群のうちの1つ以上のメリット指数の前記最適値を得るために適用した前記プライを表わす前記流線関数を含む、態様1に記載の方法。
(態様10)
少なくとも1つの配向操作繊維プライを有する複合材積層板を製造するシステムであって、該システムはプロセッサを備え、該プロセッサをプログラムして:
(a)配向操作繊維プライを設計するための設計変数値を選択する操作;
(b)前記プライを表わす流線関数を、前記選択設計変数値に従って計算する操作;
(c)前記プライの繊維角度分布を、前記プライを表わす前記流線関数に基づいて計算する操作;
(d)前記プライの厚さ方向の積層数を、前記プライを表わす前記流線関数に基づいて計算する操作;
(e)前記計算ステップ群の結果によりシミュレートされる前記プライと、そして付加的なプライ群と、を含む積層板のシミュレート構造体を解析する操作;
(f)前記シミュレート構造体の1つ以上のメリット指数を計算する操作;
(g)ステップ(a)〜(f)を、前記メリット指数群のうちの1つ以上のメリット指数の最適値が得られるまで繰り返す操作;
(h)マシンを制御してコースを、前記メリット指数群のうちの1つ以上のメリット指数の前記最適値を得るために適用した前記流線関数により定義される経路に沿って設定するコンピュータプログラムを作成する操作、
を実行する、システム。
(態様11)
各流線関数は、それぞれの配向操作繊維プライ設計のそれぞれのコース経路を表わす複数の等高線を含む、態様10に記載のシステム。