(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
試料水を通水させる試料通水部と、試料通水部の上流側位置に配置する第1分画フィルタと、試料通水部の下流側位置に配置する第2分画フィルタと、第1分画フィルタと第2分画フィルタ間の測定領域を流れる試料水中に含まれた測定対象の不可逆的膜ファウリング物質量を測定する測定装置を備え、
第1分画フィルタで分画範囲上限粒径以上の物質と分画範囲上限粒径以下の不可逆的膜ファウリング物質とを分画し、第2分画フィルタで分画範囲下限粒径以下の物質と分画範囲下限粒径以上の不可逆的膜ファウリング物質とを分画して、測定領域の試料水中に測定対象の不可逆的膜ファウリング物質を滞留させることを特徴とする不可逆的膜ファウリング物質のモニタリング装置。
不可逆的膜ファウリング物質量を測定する測定装置は、紫外線吸光度計測装置からなることを特徴する請求項1に記載の不可逆的膜ファウリング物質のモニタリング装置。
試料通水部に試料水を通水させ、試料通水部の上流側位置に配置した第1分画フィルタで分画範囲上限粒径以上の物質と分画範囲上限粒径以下の不可逆的膜ファウリング物質とを分画して不可逆的膜ファウリング物質の通過を許容し、試料通水部の下流側位置に配置した第2分画フィルタで分画範囲下限粒径以下の物質と分画範囲下限粒径以上の不可逆的膜ファウリング物質とを分画して不可逆的膜ファウリング物質の通過を阻止し、第1分画フィルタと第2分画フィルタ間の測定領域において試料水中に滞留する測定対象物質の不可逆的膜ファウリング物質量を測定装置で測定することを特徴とする不可逆的膜ファウリング物質のモニタリング方法。
凝集反応槽の被処理水の流入路途中に介装する流入側検出部と、凝集反応槽の被処理水の流出路途中に介装する流出側検出部と、凝集反応槽に供給する凝集剤の供給量を制御する凝集制御部を備え、
流入側検出部と流出側検出部は、被処理水の一部を試料水として通水させる試料通水部と、試料通水部の上流側位置に配置する第1分画フィルタと、試料通水部の下流側位置に配置する第2分画フィルタと、第1分画フィルタと第2分画フィルタ間の測定領域において試料水中に滞留する測定対象の不可逆的膜ファウリング物質量を測定する測定装置を備え、
第1分画フィルタは分画範囲上限粒径以上の物質と分画範囲上限粒径以下の不可逆的膜ファウリング物質とを分画し、第2分画フィルタは分画範囲下限粒径以下の物質と分画範囲下限粒径以上の不可逆的膜ファウリング物質とを分画し、
凝集制御部は、流入側検出部の測定装置の測定値と流出側検出部の測定装置の測定値に基づいて凝集剤の供給量を増減調整することを特徴とする凝集制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した膜ろ過処理を行なう場合には、膜ファウリングが問題となる。膜ファウリングは、物理洗浄で除去可能な可逆的膜ファウリングと化学薬品洗浄によって解消される不可逆的膜ファウリングに分類される。可逆的膜ファウリングは、膜細孔よりも大きい粒子が膜表面に蓄積し、ケーキ層を形成することにより顕在化するものであり、不可逆的膜ファウリングは、膜細孔内に吸着された低分子フミン質、多糖類、タンパク質により起こることが、「河川水UF膜ろ過における膜ファウリングの原因物質」(第13回衛生工学シンポジウム、山村寛、木村克輝、渡辺義公)等の論文にて知られている。
【0006】
特許文献2は、流入量と差圧の上昇速度に基づいて凝集剤注入量を制御して、膜表面を覆う凝集フロックの堆積量の時間当たり量を操作するものであり、不可逆的膜ファウリングを抑制する制御を行うことができない。
【0007】
原水中の不可逆的膜ファウリング物質量を測定する手段として、紫外線の吸光度を用いるものがある。これは、溶媒中に分散している粒子を測定波長E260の紫外線で計測するものであり、不可逆的膜ファウリング物質でない粒子も計測の対象になっており、膜の種類によって変わるとされている不可逆的膜ファウリング物質を特定できず、高い精度を実現できない。
【0008】
本発明は上記した課題を解決するものであり、不可逆的膜ファウリングの発生を未然に抑制し、不可逆的膜ファウリングを起こし難い凝集塊を作る凝集条件をリアルタイムに制御することができる不可逆的膜ファウリング物質のモニタリング装置、凝集制御装置および凝集ろ過処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の不可逆的膜ファウリング物質のモニタリング装置は、試料水を通水させる試料通水部と、試料通水部の上流側位置に配置する第1分画フィルタと、試料通水部の下流側位置に配置する第2分画フィルタと、第1分画フィルタと第2分画フィルタ間の
測定領域を流れる試料水中に含まれた測定対象の不可逆的膜ファウリング物質量を測定する測定装置を備え、第1分画フィルタ
で分画範囲上限粒径以上の物質と分画範囲上限粒径以下の不可逆的膜ファウリング物質とを分画し、第2分画フィルタ
で分画範囲下限粒径以下の物質と分画範囲下限粒径以上の不可逆的膜ファウリング物質とを分画
して、測定領域の試料水中に測定対象の不可逆的膜ファウリング物質を滞留させることを特徴とする。
【0010】
本発明の不可逆的膜ファウリング物質のモニタリング装置において、不可逆的膜ファウリング物質量を測定する測定装置は、紫外線吸光度計測装置からなることを特徴する。
本発明の不可逆的膜ファウリング物質の
モニタリング方法は、試料通水部に試料水を通水させ、試料通水部の上流側位置に配置した第1分画フィルタで分画範囲上限粒径以上の物質と分画範囲上限粒径以下の不可逆的膜ファウリング物質とを分画して不可逆的膜ファウリング物質の通過を許容し、試料通水部の下流側位置に配置した第2分画フィルタで分画範囲下限粒径以下の物質と分画範囲下限粒径以上の不可逆的膜ファウリング物質とを分画して不可逆的膜ファウリング物質の通過を阻止し、第1分画フィルタと第2分画フィルタ間の測定領域において
試料水中に滞留する測定対象物質の不可逆的膜ファウリング物質量を測定装置で測定することを特徴とする。
【0011】
本発明の凝集制御装置は、凝集反応槽の被処理水の流入路途中に介装する流入側検出部と、凝集反応槽の被処理水の流出路途中に介装する流出側検出部と、凝集反応槽に供給する凝集剤の供給量を制御する凝集制御部を備え、流入側検出部と流出側検出部は、被処理水の一部を試料水として通水させる試料通水部と、試料通水部の上流側位置に配置する第1分画フィルタと、試料通水部の下流側位置に配置する第2分画フィルタと、第1分画フィルタと第2分画フィルタ間
の測定領域において試料水中に滞留する測定対象の不可逆的膜ファウリング物質量を測定する測定装置を備え、第1分画フィルタは分画範囲上限粒径以上の物質と分画範囲上限粒径以下の不可逆的膜ファウリング物質とを分画し、第2分画フィルタは分画範囲下限粒径以下の物質と分画範囲下限粒径以上の不可逆的膜ファウリング物質とを分画し、凝集制御部は、流入側検出部の測定装置の測定値と流出側検出部の測定装置の測定値に基づいて凝集剤の供給量を増減調整することを特徴とする。
【0012】
本発明の凝集制御装置は、凝集反応槽の被処理水の流入路と流出路のうちで少なくとも流出路の途中に介装する検出部と、凝集反応槽に供給する凝集剤の供給量を制御する凝集制御部を備え、検出部は、被処理水の一部を試料水として通水させる試料通水部と、試料通水部の上流側位置に配置する第1分画フィルタと、試料通水部の下流側位置に配置する第2分画フィルタと、第1分画フィルタと第2分画フィルタ間の
測定領域において試料水中に滞留する測定対象の不可逆的膜ファウリング物質量を測定する測定装置を備え、第1分画フィルタは分画範囲上限粒径以上の物質と分画範囲上限粒径以下の不可逆的膜ファウリング物質とを分画し、第2分画フィルタは分画範囲下限粒径以下の物質と分画範囲下限粒径以上の不可逆的膜ファウリング物質とを分画し、凝集制御部は、検出部の測定装置の測定値に基づいて凝集剤の供給量を増減調整することを特徴とする。
【0013】
本発明の凝集ろ過処理装置は、上記した凝集制御装置と、凝集反応槽の下流側に配置する膜処理部を備え、凝集制御装置において、第1分画フィルタの分画範囲上限粒径は膜処理部の分離膜の孔径に対して4.5倍以上の粒径をなし、第2分画フィルタの分画範囲下限粒径は膜処理部の分離膜の孔径に対して0.5倍以下の粒径をなすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明によれば、試料通水部の上流側位置に配置した第1分画フィルタで分画範囲上限粒径以上の物質と分画範囲上限粒径以下の不可逆的膜ファウリング物質とを分画して不可逆的膜ファウリング物質の通過を許容し、試料通水部の下流側位置に配置した第2分画フィルタで分画範囲下限粒径以下の物質と分画範囲下限粒径以上の不可逆的膜ファウリング物質とを分画して不可逆的膜ファウリング物質の通過を阻止することで、第1分画フィルタと第2分画フィルタ間の測定領域には不可逆的膜ファウリング物質が滞留する。よって、全ての有機物粒子から物理的なふるいによって膜ファウリングに関与しているもののみを選び出すので、ノイズ物質に阻害されずに選択的に測定対象の不可逆的膜ファウリング物質量を正確に測定可能である。その結果、凝集剤の供給量を不可逆的膜ファウリング物質量に応じて適切に調整することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、不可逆的膜ファウリング物質のモニタリング装置1は、原水を試料水2として通水させる試料通水部3を有しており、試料通水部3の上流側位置に配置した第1分画フィルタ4と試料通水部3の下流側位置に配置した第2分画フィルタ5を備えている。
【0017】
試料通水部3は、第1分画フィルタ4と第2分画フィルタ5の間が測定領域6をなし、測定領域6に対応する管路壁に測定装置7を備えている。測定装置7は、例えば紫外線吸光度計測装置からなり、測定領域6を流れる試料水2中に含まれた測定対象の不可逆的膜ファウリング物質、ここでは膜ファウリングの原因物質とされる低分子フミン質、多糖類、タンパク質、未凝集のPACの量を測定するものであり、低分子フミン質、多糖類、タンパク質の測定に適した測定波長E260の紫外線を照射する水銀ランプを光源として備えている。光源にはLED等の他の照明ランプを使用することも可能である。紫外線吸光度計測装置は一般的なものであり、ここではその説明を省略する。本実施の形態では、測定装置7として紫外線吸光度計測装置を使用するが、TOC計や高感度AL(アルミニウム)測定計を使用することも可能である。
【0018】
第1分画フィルタ4は有機膜あるいは無機膜からなり、分画範囲上限粒径以上の有機物粒子と分画範囲上限粒径以下の不可逆的膜ファウリング物質粒子とを分画するもので、ここでは細孔径の平均サイズが0.45μmである。第2分画フィルタ5は有機膜あるいは無機膜からなり、分画範囲下限粒径以下の有機物粒子と分画範囲下限粒径以上の不可逆的膜ファウリング物質粒子とを分画するもので、ここでは細孔径の平均サイズが0.05μmである。
【0019】
上記した構成により、試料通水部3の上流側位置に配置した第1分画フィルタ4で分画範囲上限粒径以上の有機物粒子の通過を阻止し、分画範囲上限粒径以下の測定対象の不可逆的膜ファウリング物質粒子の通過を許容して分画し、試料通水部3の下流側位置に配置した第2分画フィルタ5で分画範囲下限粒径以下の有機物粒子の通過を許容し、分画範囲下限粒径以上の測定対象の不可逆的膜ファウリング物質粒子の通過を阻止して分画することで、第1分画フィルタ4と第2分画フィルタ5の間の測定領域6には不可逆的膜ファウリング物質粒子が滞留する。
【0020】
この測定領域6を流れる試料水2中の不可逆的膜ファウリング物質粒子を測定装置7で測定する。このとき、紫外線の測定波長をE260として紫外線吸光度を得ることで、その値から不可逆膜ファウリングの原因物質である低分子フミン質、多糖類、タンパク質をリアルタイムに計測可能である。
【0021】
第1分画フィルタ4と第2分画フィルタ5による分画範囲は、細孔径を適宜に設定することで変更可能であり、後述する分離膜の種類に固有の不可逆的膜ファウリング物質に応じて選定する。よって、全ての有機物粒子から物理的なふるいによって膜ファウリングに関与しているもののみを選び出すので、ノイズ物質に阻害され難く、選択的に測定対象の不可逆的膜ファウリング物質量を正確に測定可能である。
【0022】
なお、本実施の形態では、第1分画フィルタ4と第2分画フィルタ5の間に測定装置7を配置したが、
図7に示すように、測定装置7は第2分画フィルタ5の下流側に配置することも可能である。
【0023】
図2は本発明の凝集制御装置を備えた凝集ろ過処理装置を示している。凝集ろ過処理装置は、凝集制御装置10と凝集混和槽20と膜ろ過ユニット30を備えている。凝集反応槽をなす凝集混和槽20には被処理水が流入する流入路21と被処理水が流出する流出路22が連通しており、流出路22が膜ろ過ユニット30に接続している。
【0024】
凝集制御装置10は、流入路21の途中に介装する流入側検出部11と、流出路22の途中に介装する流出側検出部12と、凝集混和槽20に供給する凝集剤の供給量を制御する凝集制御部をなす凝集制御ユニット13を備えている。
【0025】
流入側検出部11と流出側検出部12は、流入路21および流出路22のバイパス路をなして被処理水の一部を試料水として通水させる試料通水部(図示省略)を有し、それぞれ
図1に示したモニタリング装置1を備えている。
【0026】
凝集制御ユニット13は、流入側検出部11の測定装置7の測定値と流出側検出部12の測定装置7の測定値との差に基づいて凝集剤の供給量を増減調整する。
凝集制御装置10は、流入側検出部11と流出側検出部12の何れか一方を設ける構造とすることも可能である。この場合に、凝集制御ユニット13は、流入側検出部11と流出側検出部12の何れか一方の測定装置7の測定値に基づいて凝集剤の供給量を増減調整する。
【0027】
膜ろ過ユニット30は、膜分離装置31を備えており、凝集処理された被処理水を膜分離装置31で膜分離処理するものであり、膜透過液を取り出して給水する。膜分離装置31は公知のものを使用しており、ここではその説明を省略するが、膜材質は有機膜でも、セラミック膜でもよく、構造は平膜でも、チューブラー膜でもその他の形式のものでもよい。
【0028】
上述した構成において、流入側検出部11、流出側検出部12は、第1分画フィルタ4と第2分画フィルタ5による分画により、全ての有機物粒子から物理的なふるいによって膜ファウリングに関与しているもののみを選び出すので、ノイズ物質に阻害されずに選択的に測定対象の不可逆的膜ファウリング物質量を正確に測定可能である。
【0029】
凝集制御ユニット13は、流入側検出部11の測定装置7の測定値と流出側検出部12の測定装置7の測定値との差に基づいて、凝集剤の効果を判断して凝集剤の供給量を増減調整する。
【0030】
すなわち、流入側検出部11の測定装置7の測定値と流出側検出部12の測定装置7の測定値との差が小さい場合には、凝集剤による不可逆的膜ファウリング物質の凝集作用が不十分であると判断して凝集剤の供給量を増加させる。
【0031】
流入側検出部11の測定装置7の測定値と流出側検出部12の測定装置7の測定値との差が大きい場合には、凝集剤による不可逆的膜ファウリング物質の凝集作用が十分であると判断して凝集剤の供給量を現状に維持し、あるいは減少させる。その結果、凝集剤の供給量を不可逆的膜ファウリング物質量に応じて適切に調整することができる。
以下に、本発明者らが行なった試験について説明する。
試験1
図3は本発明に係る試験1を示すものであり、ある浄水施設の原水Aに凝集剤としてPAC(ポリ塩化アルミニウム)を添加して処理した被処理水を50kPaで定圧ろ過を15分行なった後に、−400kPaで逆洗を10秒行なった結果を示している。
【0032】
PACを何も添加しない被処理水、つまりPAC注入率0の場合は、定圧ろ過と逆洗を繰り返すとろ過抵抗が増加し、図中における1サイクル中のろ過抵抗傾き(5回の平均)が0.0002となり、逆洗の効果を示す値、つまり逆洗後抵抗÷ろ過前抵抗(4回の平均)は1.26となる。以下においてはこの値を逆洗回復Iと呼称する。
【0033】
PAC注入率5mg−PAC/Lの場合は、定圧ろ過と逆洗を繰り返すとろ過抵抗が漸増し、図中における1サイクル中のろ過抵抗傾き(5回の平均)が0.0005となり、逆洗回復Iが1.05となる。
【0034】
PAC注入率30mg−PAC/Lの場合は、定圧ろ過と逆洗を繰り返すとろ過抵抗が増加せず、図中における1サイクル中のろ過抵抗傾き(5回の平均)が0となり、逆洗回復Iが1.02となる。
【0035】
試験1の結果は、分画範囲0.05−0.45μmに含まれる有機物粒子をPACによって除去することにより、逆洗後のろ過抵抗がろ過前のろ過抵抗にほぼ等しくなることを示している。
試験2
図4は本発明に係る試験2を示すものであり、ある浄水施設の原水Bに凝集剤としてPAC(ポリ塩化アルミニウム)を添加して処理した被処理水を50kPaで定圧ろ過を15分行なった後に、−400kPaで逆洗を10秒行なった結果を示している。
【0036】
PACを何も添加しない被処理水、つまりPAC注入率0の場合は、定圧ろ過と逆洗を繰り返すとろ過抵抗が増加し、図中における1サイクル中のろ過抵抗傾き(5回の平均)が0.00109となり、逆洗の効果を示す値、逆洗回復Iは1.21となる。
【0037】
PAC注入率5mg−PAC/Lの場合は、定圧ろ過と逆洗を繰り返すとろ過抵抗が漸増し、図中における1サイクル中のろ過抵抗傾き(5回の平均)が0.00076となり、逆洗回復Iが1.1となる。
【0038】
PAC注入率30mg−PAC/Lの場合は、定圧ろ過と逆洗を繰り返すとろ過抵抗が増加せず、図中における1サイクル中のろ過抵抗傾き(5回の平均)が0.00007となり、逆洗回復Iが1.04となる。
【0039】
試験2の結果は、分画範囲0.05−0.45μmに含まれる有機物粒子をPACによって除去することにより、逆洗後のろ過抵抗がろ過前のろ過抵抗にほぼ等しくなることを示している。
試験3
図5は本発明に係る試験3を示すものであり、ある浄水施設の原水Cに凝集剤としてPAC(ポリ塩化アルミニウム)を添加して処理した被処理水を50kPaで定圧ろ過を15分行なった後に、−400kPaで逆洗を10秒行なった結果を示している。
【0040】
PACを何も添加しない被処理水、つまりPAC注入率0の場合は、定圧ろ過と逆洗を繰り返すとろ過抵抗が増加し、図中における1サイクル中のろ過抵抗傾き(5回の平均)が0.00229となり、逆洗の効果を示す値、逆洗回復Iは1.26となる。
【0041】
PAC注入率5mg−PAC/Lの場合は、定圧ろ過と逆洗を繰り返すとろ過抵抗が漸増し、図中における1サイクル中のろ過抵抗傾き(5回の平均)が0.00234となり、逆洗回復Iが1.04となる。
【0042】
PAC注入率30mg−PAC/Lの場合は、定圧ろ過と逆洗を繰り返すとろ過抵抗が増加せず、図中における1サイクル中のろ過抵抗傾き(5回の平均)が0.00301となり、逆洗回復Iが1.02となる。
【0043】
試験3の結果は、分画範囲0.05−0.45μmに含まれる有機物粒子をPACによって除去することにより、逆洗後のろ過抵抗がろ過前のろ過抵抗にほぼ等しくなることを示している。
【0044】
本発明者らは、試験1,2,3の結果から、これらの原水および膜分離処理に使用した分離膜の孔径の場合においては、分画範囲0.05〜0.45μmに含まれる有機物粒子が不可逆的膜ファウリングに関与している可能性があることを把握した。
【0045】
そして、分離膜の孔径に対してある範囲の粒径の物質の量を予測し、その物質を低減することで、膜分離工程の効率化が図れることを見出した。
すなわち、膜分離処理工程の前に、分離膜の孔径に対応した所定の範囲の粒径を有する物質をフィルタ等の物理的ふるいにより分画することで、全ての有機物粒子から不可逆的膜ファウリングに関与しているもののみを選び出せ、ノイズとなる物質に疎外され難くなり、選択的に測定対象の不可逆的膜ファウリング物質量を正確に測定可能である。そして、この結果に基づいて凝集剤の供給量を不可逆的膜ファウリング物質量に応じて適切調整すれば、分離膜に応じた不可逆的膜ファウリングの発生を未然に抑制できることの知見を得た。
【0046】
分離膜の孔径に応じた分画の範囲は、例えば表1に示すように、膜分離装置31の分離膜の孔径が0.01μmである場合には、第1分画フィルタ4に設定する分画範囲上限粒径は0.045であり、第2分画フィルタ5に設定する分画範囲下限粒径は0.005である。また、膜分離装置31の分離膜の孔径が0.05μmである場合には、第1分画フィルタ4に設定する分画範囲上限粒径は0.225であり、第2分画フィルタ5に設定する分画範囲下限粒径は0.025である。あるいは、膜分離装置31の分離膜の孔径が1μmである場合には、第1分画フィルタ4に設定する分画範囲上限粒径は4.5であり、第2分画フィルタ5に設定する分画範囲下限粒径は0.5である。
【0047】
【表1】
図6は、複数の原水A−Gの0.05−0.45μm分画範囲内にある有機物粒子のE260の紫外線吸光度と、この有機物粒子を含む被処理水を膜分離装置でろ過した場合の逆洗回復Iの相関を示しており、0.05−0.45μm分画範囲内にある有機物粒子の量が少なくなるほどに逆洗回復Iが良くなる。
【0048】
図9(b)は、従来の1μm未満の有機物粒子を計測したE260の紫外線吸光度とろ過抵抗増加率の相関を示し、
図9(a)は、本発明の分画範囲を0.05−0.45μmとする有機物粒子を計測したE260の紫外線吸光度とろ過抵抗増加率の相関を示している。
図9(b)に示す従来の指標では、基本的に紫外線吸光度が大きな値である場合にろ過抵抗増加率が増加しているが、E260の紫外線吸光度が大きな値である場合にもろ過抵抗増加率が小さい場合がある。この場合、凝集剤が無駄に消費される傾向にある。
【0049】
図9(a)に示すように、本発明の分画範囲を0.05−0.45μmとする場合には、E260の紫外線吸光度が極めて小さい値において顕著にろ過抵抗増加率が抑制されている。よって、凝集剤が有効に使用されており、0.05−0.45μmの分画範囲において計測したE260の紫外線吸光度を指標とする凝集剤の制御が有効であることを示している。
【0050】
また、
図10に示すように、0.05−0.45μmの分画範囲において計測したE260の紫外線吸光度を指標とする場合に、紫外線吸光度の範囲を複数の領域、ここでは4領域に分割し、各領域毎に凝集剤の供給量を設定する。
【0051】
例えば、対象水の紫外線吸光度の測定値が、領域0の範囲、つまり紫外線吸光度0.002未満の範囲にある場合には凝集剤の供給が適切であると判断し、凝集剤の供給量を現在の供給量M0に維持する。対象水の紫外線吸光度の測定値が、領域1の範囲、つまり紫外線吸光度0.002以上0.018未満の範囲にある場合には凝集剤の供給量を、現在の凝集剤の供給量M0より増やした供給量M1とし、対象水の紫外線吸光度の測定値が、領域2の範囲、つまり紫外線吸光度0.018以上0.042未満の範囲にある場合には凝集剤の供給量を、領域1の範囲の場合における供給量M1より増やした供給量M2とし、対象水の紫外線吸光度の測定値が、領域3の範囲、つまり紫外線吸光度0.042以上0.06以下の範囲にある場合には凝集剤の供給量を、領域1と領域2での凝集剤の供給量M1、M2の中間の供給量M3とするか、別な凝集剤を検討することで、的確な凝集剤の供給を行うことができる。
【0052】
また、0.05−0.45μmの分画範囲において計測したE260の紫外線吸光度を指標とすることで、凝集条件を的確に推測することができるため、一時的に高濃度の不可逆的膜ファウリング物質が分離膜へ流入する場合にあっても、自動的に凝集剤の量を増やしたり、警告を出して活性炭の量を加減するなどの操作が可能であり、不可逆膜ファウリングを防ぐことができる。
【0053】
また、恒常的に不可逆的膜ファウリング物質を低減させることにつながるので、分離膜の薬品洗浄回数が減り、分離膜の使用寿命の延命化を期待でき、造水コストの低下につながる。
【0054】
また、従来のように必要以上に凝集剤を添加する必要性がなくなるので、過剰のアルミがろ液に流出することもなく、高水質を確保できるとともに凝集剤の使用量の低下につながる。
【0055】
また、別な実施の形態として、
図8に示すように、流出側検出部は、膜ろ過ユニットの出口側に設けても良い。