(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記張り出し部が、前記ボックスカルバート本体の高さ方向において分割された複数で構成され、高さ方向に重ねて前記ボックスカルバート本体に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のボックスカルバート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述した張り出し部付きボックスカルバートの施工方法では、張り出し部となる生コンクリートが硬化するまでの養生期間が必要であったため、作業効率が低下し易く、工期が長期化する原因となっていた。また、通常、ボックスカルバートを設置する現場は屋外であるため、屋外で張り出し部を製作すると、気温や湿度の変化、及び雨、風、又は雪等の様々な気候要因(外的要因、環境要因)の影響により、張り出し部の品質がばらつくおそれがあった。
【0005】
本願発明は、以上説明した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、作業効率を高めて工期の短縮を図ることができるとともに、品質の向上を図ることができるボックスカルバートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決して目的を達成するために、本願の請求項1に係るボックスカルバートは、両端部に開口を有する筒形状から成るボックスカルバート本体と、前記各開口のうち少なくとも一方の開口の縁部から外側に張り出した張り出し部と、を具備して成るボックスカルバートであって、前記張り出し部が、前記ボックスカルバート本体の周壁に
ボルト固定される固定部と、この固定部から折れ曲がり前記ボックスカルバート本体から離れる向きに延びる延出部と、を有することを特徴とするものである。
【0007】
この本願請求項1に係るボックスカルバートにおいては、ボックスカルバート本体に設けられる張り出し部を工場でプレキャスト化し、現場でボックスカルバート本体に固定するだけでよいため、現場において張り出し部を製作するための生コンクリートの養生期間が必要無い。また、ボックスカルバートの設置現場において気温や湿度の変化、及び雨、風、又は雪等の様々な気候要因(外的要因、環境要因)による影響を受け難く、品質を安定させることができる。さらに、張り出し部は、ボックスカルバート本体とは別体に成形されてボックスカルバート本体の周壁に固定されるので、ボックスカルバート本体の端部に一体に成形される張り出し部に比べて、取り付けの自由度が向上されているとともに、運搬する際にも嵩張らず、搬送性を向上させることができる。
【0008】
また、本願の請求項2に係るボックスカルバートは、本願の請求項1に記載のボックスカルバートにおいて、前記張り出し部が、前記ボックスカルバート本体の高さ方向において分割された複数で構成され、高さ方向に重ねて前記ボックスカルバート本体に取り付けられていることを特徴とするものである。
【0009】
また、本願の請求項3に係るボックスカルバートは、本願の請求項2に記載のボックスカルバートにおいて、前記各張り出し部のうちの少なくとも1つの張り出し部の延出部の長さが、他の張り出し部の延出部の長さと異なっていることを特徴とするものである。
【0010】
また、本願の請求項4に係るボックスカルバートは、本願の請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載のボックスカルバートにおいて、前記張り出し部の延出部の先端部が高さ方向に傾斜して形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
また、本願の請求項5に係るボックスカルバートは、本願の請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載のボックスカルバートにおいて、前記張り出し部の延出部の先端部に延長部材が取り付けられていることを特徴とするものである。
【0012】
これら本願の請求項2〜5に係るボックスカルバートにおいては、張り出し部の構成や形状を種々様々な構成や形状に設定することができる。これにより、例えば山裾や崖、或いは川岸の土手の傾斜等々のボックスカルバートの施工現場の地形条件に合わせて、張り出し部の構成や形状を適正に設定することができる。
【発明の効果】
【0013】
本願請求項1に係る発明によれば、作業効率を高めて工期の短縮を図ることができるとともに、品質の向上を図ることができるボックスカルバートを提供することができる。それとともに、このボックスカルバートは、搬送性や張り出し部の取り付けの自由度が向上されている。
【0014】
また、本願請求項2〜5に係る発明によれば、ボックスカルバートの施工現場の地形条件に対する適応性の向上が図られている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本願発明に係るボックスカルバートについて、
図1〜
図9を参照しつつ具体的に説明する。なお、
図1〜
図4及び
図6〜
図9においては、説明を簡潔に且つ分かり易くするため、前後、左右、及び上下の向きを、各図中の矢印の示す通りに設定する。ただし、この設定はあくまで説明上の便宜的なものであり、本願発明に係るボックスカルバートが常にそのような設定の向きで実施されることを意味するものではない。先ず、
図1〜
図5を参照して、本願発明の第1の実施の形態に係るボックスカルバート1について説明する。
【0017】
[第1の実施の形態]
図1、
図2、及び
図4に示すように、この第1実施形態に係るボックスカルバート1は、主にボックスカルバート本体2及び張り出し部3から構成されている。ボックスカルバート本体2は、プレキャスト化されたコンクリート製の二次製品であり、両端部に開口4を有する筒形状に形成されている。ただし、
図1、
図2、及び
図4においては、前側(手前側)の一方の開口4のみを図示し、後側(奥側)の他方の開口の図示を省略する。ボックスカルバート本体2は、略四角枠形状(略四角環形状)に形成された複数の単位ユニット5をそれらの厚さ方向に沿って連結することにより構成されている。各単位ユニット5同士は、例えば図示しないボルト等の連結治具を用いて連結されて一体に固定される。また、各単位ユニット5は、上下に分割可能な上側単位ユニット5a及び下側単位ユニット5bを組み合わせて構成されている。上側単位ユニット5aと下側単位ユニット5bとは、前述した各単位ユニット5と同様に、図示しないボルト等の連結治具を用いて連結されて一体に固定される。
【0018】
図1及び
図4に示すように、上側単位ユニット5aの上壁5cを集合したものが、ボックスカルバート本体2が有する4つの周壁6のうちの上側周壁(天井壁)6aとなる。また、下側単位ユニット5bの下壁5dを集合したものが、各周壁6のうちの下側周壁(底壁)6bとなる。そして、上側単位ユニット5aの右側壁5eと下側単位ユニット5bの右側壁5fとを組み合わせて集合したものが、各周壁6のうちの右側周壁6cとなる。同様に、上側単位ユニット5aの左側壁5gと下側単位ユニット5bの左側壁5hとを組み合わせて集合したものが、各周壁6のうちの左側周壁6dとなる。
【0019】
図1、
図2、及び
図4に示すように、張り出し部3は、ボックスカルバート本体2がその両端部に有する2つの開口4のうち少なくとも一方の開口4の縁部7から外側に張り出して設けられている。ただし、
図1〜
図4においては、ボックスカルバート本体2の前側(手前側)の一方の開口4の縁部7から外側に張り出した張り出し部3のみを図示し、後側(奥側)の他方の開口4の縁部7から外側に張り出した張り出し部3の図示を省略する。そして、本実施形態においては、張り出し部3は、ボックスカルバート本体2の前側(手前側)の一方の開口4を間に挟んで左右一対として設けられている。張り出し部3も、ボックスカルバート本体2と同様に、プレキャスト化されたコンクリート製の二次製品であり、ボックスカルバート本体2に取り付けられるのに先立って、ボックスカルバート本体2とは別体に製作されている。
【0020】
図1及び
図4に示すように、各張り出し部3は、それぞれ主に固定部8及び延出部9から構成されている。そして、各張り出し部3は、それぞれボックスカルバート本体2の上下方向(高さ方向)において分割された複数で構成されており、高さ方向に重ねてボックスカルバート本体2に取り付けられている。本実施形態においては、左右の各張り出し部3は、前述した各単位ユニット5に合わせて、それぞれ上下に分割可能な上側張り出し部3aと下側張り出し部3bとを組み合わせて成る上下2段構成とされている。各上側張り出し部3aと各下側張り出し部3bとは、前述した各単位ユニット5、並びに上側及び下側の各単位ユニット5a,5bと同様に、図示しないボルト等の連結治具を用いて連結されて一体に固定される。
【0021】
図1〜
図3に示すように、各上側張り出し部3aは、それらの上下方向(幅方向)の大きさを、各上側単位ユニット5aの左右各側壁5e,5gの上下方向(高さ方向)の大きさに略一致して形成されている。そして、
図1及び
図4に示すように、各上側張り出し部3aは、それぞれの固定部8aを、ボックスカルバート本体2の前後方向(長手方向)に沿った上側単位ユニット5aの厚さ方向に沿って延ばされて、上側単位ユニット5aの左右各側壁5e,5gの外側表面上に固定されている。同様に、各下側張り出し部3bは、それらの上下方向(幅方向)の大きさを、各下側単位ユニット5bの左右各側壁5e,5gの上下方向(高さ方向)の大きさに略一致して形成されている。そして、各下側張り出し部3bは、それぞれの固定部8bを、ボックスカルバート本体2の前後方向(長手方向)に沿った下側単位ユニット5bの厚さ方向に沿って延ばされて、下側単位ユニット5bの左右各側壁5f,5hの外側表面上に固定されている。
【0022】
本実施形態においては、
図1及び
図4に示すように、各上側張り出し部3aの固定部8a及び各下側張り出し部3bの固定部8bはそれぞれ、上側及び下側の各単位ユニット5a,5bの集合体のうち、ボックスカルバート1の前側(手前側)から1つ目及び2つ目の上側及び下側の各単位ユニット5a,5bに亘って固定されている。即ち、上下一対且つ左右一対から成る各張り出し部3は、それぞれの固定部8をボックスカルバート本体2の軸方向(長手方向)に沿って延ばされて、ボックスカルバート本体2の右側及び左側の各周壁6c,6dに固定されている。上側及び下側の各固定部8a,8bは、共に同じ長さに形成されている。
【0023】
図2〜
図5に示すように、各張り出し部3は、それぞれ複数本のボルト11を用いてボックスカルバート本体2に固定されている。詳しくは、
図2及び
図3に示すように、上側及び下側の各張り出し部3a,3bの固定部8a,8bは、それぞれボックスカルバート1の上下方向(高さ方向)に5本ずつ、ボックスカルバート1の前後方向(奥行き方向)に3本乃至5本ずつ配設された合計17本のボルト11を用いて、ボックスカルバート本体2の右側及び左側の各周壁6c,6dに固定されている。
【0024】
図5(a),(b)は、
図4中破線で囲んで示す部分Aを拡大して示す図であり、(a)は断面図、(b)は側面図である。
図3及び
図5(a),(b)に示すように、左側の上側張り出し部3aの固定部8aには、ボルト用溝12が前述したボルト11の個数分形成されているとともに、それら各ボルト用溝12に連通して固定部8aをその厚さ方向に貫通するボルト挿通孔13が複数個形成されている。また、
図5(a),(b)に示すように、上側単位ユニット5aの左側壁5gには、各ボルト用溝12及び各ボルト挿通孔13に対応して、各ボルト11の先端部11aが螺合されるインサート14が複数個形成されている。
【0025】
各ボルト11は、各ボルト用溝12から各ボルト挿通孔13を通されて、その先端部11aが各インサート14の内部に螺合されて行き止まるまで、各ボルト挿通孔13及び各インサート14の奥側に向けてねじ込まれる。この後、各ボルト11と各ボルト挿通孔13及び各インサート14との隙間に例えば図示しない無収縮モルタル等を充填する。これにより、左側の上側張り出し部3aの固定部8aが上側単位ユニット5aの左側壁5gに各ボルト11を用いて連結されてボルト固定される。なお、
図5(a),(b)に示すボルト固定構造は、左側の上側張り出し部3aの固定部8aと上側単位ユニット5aの左側壁5gとの間だけではなく、右側の上側張り出し部3aの固定部8aと上側単位ユニット5aの右側壁5e、及び左右の各下側張り出し部3bの固定部8bと下側単位ユニット5bの左右の各側壁5f,5hとの間においても同様に適用される。
【0026】
本実施形態においては、上側及び下側の各張り出し部3a,3bの固定部8a,8bの最も上側にボルト11が5本ずつ打ち込まれており、その下側にはボルト11が3本ずつ打ち込まれている。これは、各張り出し部3a,3bがそれぞれの自重により、ボックスカルバート本体2の右側及び左側の各周壁6c,6dから離れたり落下したりしないように、各固定部8a,8bのうち最も負荷が掛かる最上部の接合強度を上げるためになされている。
【0027】
また、
図3及び
図4に示すように、ボックスカルバート1の前後方向(奥行き方向)において最前部となる1番前の単位ユニット5と、上側及び下側の各張り出し部3a,3bの固定部8a,8bとの接合部には、それぞれ当該前後方向における1列分となる5本のボルト11が打ち込まれている。これに対して、ボックスカルバート1の前後方向において前から2番目の単位ユニット5と各固定部8a,8bとの接合部には、それぞれ当該前後方向における2列分乃至4列分となる合計12本のボルト11が打ち込まれている。これは、
図4中白抜き矢印Bで示す向きに沿って各張り出し部3a,3bの延出部9a,9bに対してボックスカルバート1の奥側から手前側に向かう土圧等の負荷が掛かった場合でも、各張り出し部3a,3b(各固定部8a,8b)がボックスカルバート本体2の右側及び左側の各周壁6c,6dから離れないように、1番前の単位ユニット5と各固定部8a,8bとの接合部よりも大きな負荷が掛かり易い前から2番目の単位ユニット5と各固定部8a,8bとの接合部との接合強度を上げるためになされている。
【0028】
上側及び下側の各張り出し部3a,3bの延出部9a,9bは、
図1及び
図4に示すように、それぞれ固定部8a,8bから折れ曲がり、ボックスカルバート本体2から離れる向きに延ばされて形成されている。本実施形態においては、
図4中両向き矢印Cで示すように、各延出部9a,9bは、ボックスカルバート本体2の一方の開口4側の端面と面一で、且つ、この端面に沿って互いに平行に両外側反対方向に向けて延ばされている。当該端面は、
図4中一点鎖線Dで示すボックスカルバート本体2の軸芯に沿った方向(軸方向、長手方向)に略直交して形成されている。したがって、各延出部9a,9bは、ボックスカルバート本体2の軸方向に略直交する方向に向けて延ばされており、各固定部8a,8bに対して略直交して形成されている。
【0029】
なお、上側及び下側の各延出部9a,9bの長さは、共に略同じ大きさに設定されている。それとともに、各延出部9a,9bの長さは、左右の各張り出し部3同士の間で、共に略同じ長さ大きさに設定されている。したがって、各張り出し部3は、左右対称に形成されている。
【0030】
図1及び
図4に示すように、上側及び下側の各張り出し部3a,3bの固定部8a,8bと延出部9a,9bとの接合部10a,10bは、各固定部8a,8b及び各延出部9a,9bに対してテーパーを付けられて斜交する形状に形成されている。これにより、各接合部10a,10bは、各固定部8a,8b及び各延出部9a,9bよりも肉厚に形成されている。このような形状によれば、各固定部と各延出部とが単純に直交して接合されている構造に比べて、各接合部10a,10bの強度が高められている。この結果、
図4中白抜き矢印Bで示す向きに沿って各張り出し部3a,3bの延出部9a,9bに対してボックスカルバート1の奥側から手前側に向かう土圧等の大きな負荷が掛かった場合でも、この負荷に十分余裕を以って耐えることができる。なお、各張り出し部3は、その形状からウィングと称されることもある。このため、前述した構造から成るボックスカルバート1は、ウィング付きボックスカルバート称されることもある。
【0031】
以上説明したように、この第1実施形態に係るボックスカルバート1においては、ボックスカルバート本体2に設けられる張り出し部3を工場でプレキャスト化し、現場でボックスカルバート本体2に固定するだけでよいため、現場において張り出し部3を製作するための生コンクリートの養生期間が必要無い。また、ボックスカルバート1の設置現場において気温や湿度の変化、及び雨、風、又は雪等の様々な気候要因(外的要因、環境要因)による影響を受け難く、品質を安定させることができる。この結果、本実施形態に係るボックスカルバート1を用いることにより、作業効率を高めて工期の短縮を図ることができるとともに、品質の向上を図ることができる。また、張り出し部3は、ボックスカルバート本体2とは別体に成形されてボックスカルバート本体2の周壁に固定されるので、ボックスカルバート本体の端部に一体に成形される従来の技術に係る張り出し部に比べて取り付けの自由度が向上されているとともに、運搬する際にも嵩張らず、搬送性を向上させることができる。
【0032】
[第2の実施の形態]
次に、
図6を参照しつつ、本願発明の第2の実施の形態に係るボックスカルバート21について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一部分には同一符号を付して、その具体的且つ詳細な説明を省略する。
【0033】
図6に示すように、この第2実施形態に係るボックスカルバート21は、張り出し部22が第1実施形態の2段重ねではなく、4段重ねで構成されている。それとともに、各張り出し部22の延出部23の長さが、第1実施形態と異なり、上下方向(高さ方向)においてそれぞれ異なっている。
【0034】
詳しくは、左右の各張り出し部22のうち上から1段目及び2段目の各張り出し部22a,22bは、それらの固定部24a,24bを、前側から1番目及び2番目の各上側単位ユニット5aの左右各側壁5e,5gに固定されてボックスカルバート本体2に取り付けられている。同様に、左右の各張り出し部22のうち上から3段目及び4段目の各張り出し部22c,22dは、それらの固定部24c,24dを、前側から1番目及び2番目の各下側単位ユニット5bの左右各側壁5f,5hに固定されてボックスカルバート本体2に取り付けられている。したがって、各固定部24a,24b,24c,24dの長さは、第1実施形態と同様に、全て略同じである。即ち、各張り出し部22の固定部24の長さは、上下方向(高さ方向)において略一定である。
【0035】
これに対して、各張り出し部22a,22b,22c,22dの延出部23a,23b,23c,23dの長さは、第1実施形態と異なり、上下方向(高さ方向)において不連続に変化している。より具体的には、各延出部23a,23b,23c,23dは、上方から下方に向かうに連れてそれらの長さが段々に(不連続に)短くなるように形成されている。ただし、各延出部23a,23b,23c,23dの長さは、第1実施形態と同様に、左右の各張り出し部22a,22b,22c,22d同士の間では、略同じ大きさに設定されている。即ち、各張り出し部22a,22b,22c,22dは、左右対称に形成されている。
【0036】
以上説明したように、この第2実施形態に係るボックスカルバート21においては、左右の各張り出し部22の延出部23の構成や形状を種々様々な構成や形状に設定することができる。これにより、例えば山裾や崖、或いは川岸の土手の傾斜等々のボックスカルバート21の施工現場の地形条件に合わせて、張り出し部22の構成や形状を適正に設定することができる。即ち、この第2実施形態に係るボックスカルバート21は、その施工現場の地形条件に対する適応性の向上が図られている。
【0037】
[第3の実施の形態]
次に、
図7を参照しつつ、本願発明の第3の実施の形態に係るボックスカルバート31について説明する。なお、前述した第1及び第2の各実施形態と同一部分には同一符号を付して、その具体的且つ詳細な説明を省略する。
【0038】
図7に示すように、この第3実施形態に係るボックスカルバート31は、張り出し部32が第1実施形態の2段重ねではなく、第2実施形態と同様に4段重ねで構成されている。それとともに、各張り出し部32の延出部33の長さが、第1実施形態と異なり、上下方向(高さ方向)においてそれぞれ異なっている。
【0039】
詳しくは、各張り出し部32a,32b,32c,32dの延出部33a,33b,33c,33dの長さは、第1実施形態と異なり、上下方向(高さ方向)において連続して滑らかに変化している。より具体的には、各延出部33a,33b,33c,33dのうち、最上段の各延出部33aを除く他の各延出部33b,33c,33dは、最上段の各延出部33aから滑らかに連続して、上方から下方に向かうに連れてそれらの長さが徐々に短くなるように形成されている。即ち、上から2段目〜4段目の各延出部33b,33c,33dは、それらの先端部34b,34c,34dが高さ方向に一定の角度で傾斜して形成されている。これに対して、最上段の各延出部33aの先端部34aは、第1及び第2の各実施形態と同様に、高さ方向に傾斜することなく、矩形状に形成されている。
【0040】
なお、各延出部33a,33b,33c,33dの長さは、第1及び第2の各実施形態と同様に、左右の各張り出し部32a,32b,32c,32d同士の間では、略同じ大きさに設定されている。即ち、各張り出し部32a,32b,32c,32dは、左右対称に形成されている。
【0041】
以上説明したように、この第3実施形態に係るボックスカルバート31においては、前述した第2実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、この第3実施形態に係るボックスカルバート31においては、上から2段目〜4段目の各張り出し部32b,32c,32dの各延出部33b,33c,33dの先端部34b,34c,34dが高さ方向に一定の角度で傾斜して形成されている。このような構造によれば、不規則な形状から成る自然の地形のみならず、間知ブロック35等の規則的な形状を有する人工物の傾斜部に各張り出し部32b,32c,32dを殆ど隙間なく沿わせてボックスカルバート31を設置することができる。
【0042】
[第4の実施の形態]
次に、
図8を参照しつつ、本願発明の第4の実施の形態に係るボックスカルバート41について説明する。なお、前述した第1〜第3の各実施形態と同一部分には同一符号を付して、その具体的且つ詳細な説明を省略する。
【0043】
図8に示すように、この第4実施形態に係るボックスカルバート41は、張り出し部22が第1実施形態の2段重ねではなく、第2実施形態と同様に4段重ねで構成されている。それとともに、左右の各張り出し部22のうち左側の張り出し部22の延出部23の先端部42に延長部材43が1つずつ取り付けられている。
【0044】
左右の各張り出し部22は、第2実施形態と同様の構成及び形状から成る。また、各延長部材43は、それぞれの幅方向の大きさが各延出部23a,23b,23c,23dの上下方向の大きさに略等しい略矩形状に形成されている。このような延長部材43が、左右の各張り出し部22のうち左側の各張り出し部22a,22b,22c,22dの延出部23a,23b,23c,23dの先端部42a,42b,42c,42dに1つずつ取り付けられている。各延長部材43は、前述した各単位ユニット5、上側及び下側の各単位ユニット5a,5b、或いは各上側張り出し部3a及び各下側張り出し部3bと同様に、図示しないボルト等の連結治具を用いて各延出部23a,23b,23c,23dの先端部42a,42b,42c,42dに連結されて一体に固定される。
【0045】
以上説明したように、この第4実施形態に係るボックスカルバート41においては、前述した第2実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、この第4実施形態に係るボックスカルバート41においては、左右の各張り出し部22のうち左側の各張り出し部22a,22b,22c,22dにのみ延長部材43が1つずつ取り付けられている。この結果、左右の各張り出し部22は左右非対称となる。そして、様々な長さから成る延長部材43を組み合わせて使い分けることにより、左右の各張り出し部22をより複雑な構成や形状に変更して設定することができる。この結果、本実施形態に係るボックスカルバート41は、不規則で複雑な地形から成る場所により設置し易くなっており、施工現場の地形条件に束縛され難く、地形条件に対する適応性の更なる向上が図られている。
【0046】
[第5の実施の形態]
次に、
図9を参照しつつ、本願発明の第5の実施の形態に係るボックスカルバート51について説明する。なお、前述した第1〜第4の各実施形態と同一部分には同一符号を付して、その具体的且つ詳細な説明を省略する。
【0047】
図9に示すように、この第5実施形態に係るボックスカルバート51は、第1〜第4の各実施形態と異なり、
図9中両向き矢印Eで示すボックスカルバート本体52の一方の開口4側の端面に沿った方向が、
図9中一点鎖線Fで示すボックスカルバート本体52の軸芯方向(軸方向、長手方向)に対して傾けられて形成されている。また、ボックスカルバート本体52を構成する複数の単位ユニット53も、ボックスカルバート本体52の軸芯方向に対して傾けられて形成されている。さらに、左右の各張り出し部54a,54bは、それぞれの固定部55a,55bの延びる方向に対する延出部56a,56bの延びる方向の角度が共に約90°ではなく、互いに異なる大きさに設定されている。具体的には、右側の張り出し部54aの固定部55aに対する延出部56aの延出の角度が90°より小さく設定されているとともに、左側の張り出し部54bの固定部55bに対する延出部56bの延出の角度が90°より大きく設定されている。
【0048】
以上説明したように、この第5実施形態に係るボックスカルバート51においては、ボックスカルバート本体52の長手方向における両端面が、ボックスカルバート本体52の長手方向に対して傾けられて形成されている。このような形状から成るボックスカルバート51は、斜角ボックスカルバートと称されることもある。ボックスカルバート本体52の長手方向に対するボックスカルバート本体52の長手方向における両端面の傾きの角度は、例えば約90°から70°まで変更して設定移可能である。また、このボックスカルバート51を用いれば、
図9に示すように、ボックスカルバート本体52の内部空間を水路として用いて、ここに河川57の一部を通すことができる。そして、このボックスカルバート本体52の上に、
図9中白抜きの両向き矢印Gで示す方向に沿って、図示しない道路を敷設する。すると、地形状の制約により、道路を河川57の上方で即ち河川57の流れに斜交させて付設しなければならない場合でも、空間的な制約を受け難く、柔軟に適応することができる。
【0049】
なお、本願発明に係るボックスカルバートは、前述した第1〜第5の各実施形態には限定されない。本願発明の要旨を逸脱しない範囲内であれば、その構成や形状、或いは設定等々を種々様々に変更したり、あるいは組み合わせたりして実施して構わない。従って、そのような変更や組み合わせを以ってしてもなお、本願発明の構成を実質的に具備する限り、それら変更や組み合わせは本願発明の技術的範囲に含まれる。
【0050】
例えば、第1の実施形態においては、各張り出し部3及び各単位ユニット5を上下2分割の構造としたが、これには限定さない。各張り出し部3及び各単位ユニット5は、上下一体構造としても構わない。また、第1〜第3の実施形態においては、左右の各張り出し部3,22,32を左右対称の構造としたが、これには限定さない。左右の各張り出し部3,22,32を左右非対称の構造としても構わない。
【0051】
また、第2の実施形態においては、左右各張り出し部22a,22b,22c,22dの延出部23a,23b,23c,23dの長さが、上方から下方に向かうに連れて段々と短くなる設定としたが、これには限定されない。延出部23a,23b,23c,23dの長さは、上方から下方に向かうに連れて段々と長くなる設定としても構わない。あるいは、それら2種類の傾きを組みあわせて構成しても構わない。また、各延出部23a,23b,23c,23dの長さは全て異なっている必要もない。各延出部23a,23b,23c,23dのうち、少なくとも1つの延出部の長さが、他の延出部の長さと異なっていればよい。このような設定の変更は、第2の実施形態についても同様に成り立つ。
【0052】
さらに、第4実施形態において用いた各延長部材43は、必ずしも全て同じ長さである必要はない。各延長部材43の長さは、ボックスカルバート41が設置される現場の地形条件等に応じて適宜、適正な大きさに設定さればよい。