特許第5972108号(P5972108)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972108
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】橋桁と下部構造との接合部構造
(51)【国際特許分類】
   E01D 2/00 20060101AFI20160804BHJP
【FI】
   E01D2/00
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-188160(P2012-188160)
(22)【出願日】2012年8月29日
(65)【公開番号】特開2014-43752(P2014-43752A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2015年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124316
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】平 陽兵
(72)【発明者】
【氏名】山野辺 慎一
(72)【発明者】
【氏名】一宮 利通
(72)【発明者】
【氏名】矢野 一正
(72)【発明者】
【氏名】白浜 寛
(72)【発明者】
【氏名】田島 新一
【審査官】 桐山 愛世
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−092078(JP,A)
【文献】 特開2004−324216(JP,A)
【文献】 特開2007−039897(JP,A)
【文献】 実開平04−065879(JP,U)
【文献】 特開平11−229412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00−24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する下部構造上に架設され、両端において前記下部構造に剛に接合されるプレキャストコンクリート製の橋桁と前記下部構造との接合部構造であり、
前記橋桁は床版部と、この床版部の幅方向両側の少なくとも下側に、前記床版部の橋軸方向を向いて突設された両側リブとを備え、前記下部構造の天端からは縦筋が突出し、
前記橋桁は前記両側リブにおいて前記下部構造の天端上に載置され、前記下部構造の縦筋が前記両側リブ間に配筋されると共に、前記両側リブ間に、前記縦筋を埋設するコンクリート、もしくはモルタルが一体化して前記橋桁が前記下部構造に接合され
前記床版部下側の前記両側リブ間の、少なくとも前記床版部の端部寄りの、前記下部構造の天端上の領域を含む区間に、前記床版部の橋軸方向を向く中間部リブが突設され、前記下部構造の前記縦筋が前記中間部リブ以外の前記コンクリート、もしくはモルタル中に配筋され、
前記下部構造の天端上に位置する部分に前記縦筋に直交して配筋され、前記両側リブに定着された横筋が前記中間部リブを幅方向に挿通していることを特徴とする橋桁と下部構造との接合部構造。
【請求項2】
前記床版部下側の前記両側リブ間の、前記下部構造の天端上の領域に、前記床版部の幅方向を向き、前記両側リブ間に一体化するコンクリート、もしくはモルタルからなる横桁部が形成され、この横桁部内に前記下部構造の前記縦筋が挿入され、埋設されていることを特徴とする請求項に記載の橋桁と下部構造との接合部構造。
【請求項3】
記床版部の幅方向に隣接する前記両側リブと前記中間部リブ間、及び前記中間部リブ間にコンクリート、もしくはモルタルが充填され、このコンクリート、もしくはモルタル中に前記下部構造の前記縦筋が埋設されていることを特徴とする請求項に記載の橋桁と下部構造との接合部構造。
【請求項4】
前記床版部下側の前記両側リブ間の、少なくとも前記下部構造の天端上の領域を含む前記床版部の端部寄りの区間にコンクリート、もしくはモルタルが充填され、このコンクリート、もしくはモルタル中に前記下部構造の前記縦筋が埋設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の橋桁と下部構造との接合部構造
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は隣接する橋台間、もしくは橋脚間等、隣接する下部構造間に架設されるプレキャストコンクリート製の橋桁の端部を各下部構造に剛に接合する橋桁と下部構造との接合部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば歩道橋、車道橋等のように橋桁(主桁)の両端が橋台等の下部構造に剛に接合される1径間のラーメン橋では、橋桁の端部に生ずる曲げモーメントとせん断力が下部構造に集中して伝達されることから、多径間連続橋の場合より下部構造の負担が大きくなるため、橋桁と下部構造との接合部には両者間での力の伝達が確実に行われるだけの能力を持たせる必要がある。
【0003】
この場合、橋桁から接合部を経て下部構造に曲げモーメントを伝達させる上では、接合部における引張力に対する耐力を確保することが不可欠になるため、耐力を鋼材に依存し、鋼材を橋桁と下部構造の双方に跨るように接合部に配置することが多い(特許文献1〜3参照)。
【0004】
但し、特許文献1〜3のように例えば鋼材を橋桁の端部に埋設しておき、鋼材を橋台に接合する方法では橋桁と橋台との接合時に鋼材周辺に存在するコンクリートに対する補強のための鉄筋を配筋する必要もあり、施工が煩雑化する他、橋桁への鋼材の埋設がある分、橋桁の製作も複雑化する。
【0005】
これに対し、橋桁と橋台間に跨ってPC鋼材を配置し、橋桁端部と橋台上部に生ずる曲げモーメントに伴う引張力を相殺するプレストレスを導入することにより接合部を単純化させる方法もある(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−132046号公報(請求項1、段落0031、図2図5
【特許文献2】特開2007−284914号公報(請求項1、段落0034〜0038、0045、図2図8
【特許文献3】特開2010−101094号公報(請求項1、段落0020〜0032、0045〜0071、図16図8
【特許文献4】特開2002−266503号公報(請求項1、2、段落0007〜0014、図1図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、プレストレスの導入によって接合部に生ずる曲げモーメントに抵抗させる方法では、1本のPC鋼材によってプレストレスを橋桁と下部構造の軸方向に同時に作用させることが難しいため、接合部を経由させてPC鋼材を橋桁と下部構造間に連続的に配置することができず、橋桁に添って配置されるPC鋼材と、橋台に添って配置されるPC鋼材を必要とする(特許文献4の段落0016、図1図5)。1本のPC鋼材を、接合部を経由させて橋桁と下部構造間に連続的に配置した場合、PC鋼材配置上の隅角部である接合部に外周側から内部へ向けて不必要な圧縮力(腹圧力)を加えることになり、合理的な補強ができないことによる。
【0008】
一方、特許文献4において橋桁自体の曲げ変形抑制のために、あるいは曲げ変形抑制効果に伴う薄肉化のために、橋桁の内部に橋軸直角方向(幅方向)に並列するPC鋼材を配置しようとする場合には、接合部に役割の異なる2種類のPC鋼材を混在させて定着することになるため、橋桁と橋台の双方に、PC鋼材の配置と定着に十分な断面を持たせることが必要になり、薄肉化の要請に反する結果を招く。
【0009】
本発明は上記背景より、橋桁自体の薄肉化を可能にしながらも、単純な構造で橋桁の端部を下部構造に剛に接合することを可能にするプレキャストコンクリート製の橋桁と下部構造との接合部構造を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明の橋桁と下部構造との接合部構造は、隣接する下部構造上に架設され、両端において前記下部構造に剛に接合されるプレキャストコンクリート製の橋桁と前記下部構造との接合部構造であり、
前記橋桁は床版部と、この床版部の幅方向両側の少なくとも下側に、前記床版部の橋軸方向を向いて突設された両側リブとを備え、前記下部構造の天端からは縦筋が突出し、
前記橋桁は前記両側リブにおいて前記下部構造の天端上に載置され、前記下部構造の縦筋が前記両側リブ間に配筋されると共に、前記両側リブ間に、前記縦筋を埋設するコンクリート、もしくはモルタルが一体化して前記橋桁が前記下部構造に接合され
前記床版部下側の前記両側リブ間の、少なくとも前記床版部の端部寄りの、前記下部構造の天端上の領域を含む区間に、前記床版部の橋軸方向を向く中間部リブが突設され、前記下部構造の前記縦筋が前記中間部リブ以外の前記コンクリート、もしくはモルタル中に配筋され、
前記下部構造の天端上に位置する部分に前記縦筋に直交して配筋され、前記両側リブに定着された横筋が前記中間部リブを幅方向に挿通していることを構成要件とする。
【0011】
橋桁は下部構造と共に1径間、もしくは多径間のラーメン橋を構成するため、橋の形態としては橋桁が歩道橋、車道橋等のように橋台間に架設される形式と、橋桁が隣接する橋台と橋脚間、及び隣接する橋脚間に架設され、同一の橋脚上に隣接する橋桁が支持される形式がある。よって橋桁は橋台と橋脚間、または橋脚間に架設される場合があるため、下部構造には橋台と橋脚が含まれる。多径間のラーメン橋は橋軸方向中間の橋脚がシュー構造(滑り支承)の場合を含む。
【0012】
「床版部の幅方向両側の少なくとも下側に突設された両側リブ」とは、床版部の幅方向両側の下側(下面側)にのみ両側リブが突設される場合と、図1等に示すように下側と上側(上面側)に突設される場合があることを言う。「床版部の橋軸方向を向く」とは、両側リブが床版部の橋軸方向に沿って形成されることを言う。「床版部の幅方向」は主に橋軸直角方向を指すが、床版部が例えば平行四辺形状の場合には短辺方向を指す。
【0013】
橋桁は床版部の幅方向両側に両側リブを有することで、橋軸方向に見たときに溝形(逆溝形)、もしくはH形の断面形状をし、橋桁が受ける曲げモーメントを両側リブが床版部と共に負担しながら、下部構造に伝達する働きをする。橋桁は両側リブが床版部の下側にのみ形成される場合に、溝形の断面形状をし、上側にも形成される場合にH形の断面形状をするが、両側リブの形状は後述のように基本的には床版部上の荷重による橋桁の曲げモーメント分布に対応して決められる。両側リブは床版部の橋軸方向の全長に亘って形成される場合と、床版部の端部寄りの区間に形成される場合がある。「床版部の端部寄りの区間」は橋桁の橋軸方向中間部(中央部)の位置から下部構造上の端部にかけての区間であり、下部構造の天端上の領域を含む場合と含まない場合がある。
【0014】
橋桁の両側リブは床版部と共に橋桁の曲げモーメントを負担しながら、下部構造に伝達することで、床版部のみが曲げモーメントを負担することから解放させ、床版部を薄肉化することに寄与する。床版部の薄肉化は図2図5図7に示す、床版部31の内部に橋軸方向に配置されるPC鋼材等の緊張材35によるプレストレスの導入によっても可能になっている。
【0015】
両側リブは橋軸方向の曲げモーメントに対する剛性を橋桁に付与し、橋桁の曲げ変形を抑制する働きもする。両側リブ32は図8に示すように橋桁3に生ずる曲げモーメントの分布に対応し、橋桁3の橋軸方向中間部側から端部へかけて次第に高さ(成)が大きくなる形状に形成されることで、橋桁3の端部の桁高を増し、橋桁3端部における剛性と耐力を高める。
【0016】
床版部31下側の両側リブ32、32間の、少なくとも床版部31の端部寄りの区間には、両側リブ32、32に平行に、中間部リブ33が突設され。中間部リブ33は両側リブ32、32の役割を補い、床版部31及び両側リブ32、32と共に床版部31に作用する曲げモーメントを負担しながら、下部構造1に伝達する働きをする。
【0017】
中間部リブ33は床版部31の橋軸方向を向き、両側リブ32に平行に1枚、もしくは複数枚、突設される。中間部リブ33は両側リブ32と同様、橋桁3に生ずる橋軸方向の曲げモーメントに対する抵抗要素でもあるため、少なくとも床版部31の端部寄りの区間に突設され。少なくとも端部寄りの区間であるから、中間部リブ33は下部構造1の天端上の領域を含めて、あるい床版部31の全長に形成されることもある。中間部リブ33の高さは図1図4に示すように曲げモーメント分布に対応し、橋桁3の端部から中間部側へかけて次第に小さくなる形に形成されることが合理的である。床版部31に中間部リブ33が形成される場合、下部構造1の縦筋2は図2図5に示すように中間部リブ33以外のコンクリート4等中に配筋される
【0018】
床版部31下側の両側リブ32、32間に突設される中間部リブ33は前記のように床版部31下側の、下部構造1の天端上の領域(接合部30)に、図4図5に示すように横桁部34としてのコンクリート4等が床版部31の一部として一体的に形成されている場合(請求項)と、図1図2に示すように中間部リブ33が床版部31の中間部寄りの位置から下部構造1の天端上の領域(接合部30)を含む区間にまで連続して形成されている場合(請求項)がある。
【0019】
また橋桁3に一体化するコンクリート4等の一体化の方法で分類すれば、コンクリート4等は図4図5に示すように橋桁3の一部の横桁部34として橋桁3の製作時に予め形成されている場合(請求項)と、図1図2、及び図6図7に示すように下部構造1との接合時に現場で充填(打設)されることにより一体化する場合(請求項)がある。現場で一体化する場合(請求項)には、コンクリート4等が下部構造1上の接合部30にのみ充填される場合(請求項)と、接合部30を含め、請求項の中間部リブ33の形成区間に充填される場合(請求項)がある。図4図7は中間部リブ33が下部構造1の天端上にまで連続していない様子を示しているため、図4図7自体は本発明の参考例を示しているが、図4図7においても下部構造1の天端上に中間部リブ33が形成されていると考えれば、これらを本発明を示す図面として見ることができる。
【0020】
図4図5に示す例の場合(請求項)、コンクリート4等からなる横桁部34が床版部31下側の両側リブ32、32間の、下部構造1の天端上の領域(接合部30)に、床版部31の幅方向を向いて橋桁3の一部として形成され、床版部31と両側リブ32、32間に一体化する。「床版部31の幅方向を向く」とは、横桁部34の長さ方向が床版部31の幅方向を向くことを言う。この場合、下部構造1の縦筋2は図5に示すように中間部リブ33以外の横桁部34中に配筋され、埋設される
【0021】
図4図5に示す例では横桁部34の、縦筋2の挿入部分には挿通孔34aが形成され、挿通孔34a内に縦筋2が挿入され、現場でモルタル等の充填材が充填されることにより縦筋2がコンクリート4等の横桁部34に埋設され、定着される。横桁部34は下部構造1の厚さ方向には下部構造1の天端部分の厚さと同等の厚さを持ち、下部構造1の幅方向(橋桁3の幅方向(幅方向))に床版部31の幅と同等の長さを持つ。
【0022】
図1図2に示す例の場合(請求項)は、中間部リブ33が床版部31の中間部寄りの位置から下部構造1の天端上の領域(接合部30)を含む区間にまで連続することで、床版部31の幅方向に隣接する両側リブ32と中間部リブ33間、及び中間部リブ33、33間にコンクリート4等が充填される。この中間部リブ33で区画された領域毎に充填されるコンクリート4等が中間部リブ33の下部構造1の天端上の部分(端部33a)と共に、図4図5に示す例の横桁部34を構成する。下部構造1の縦筋2は図2に示すように中間部リブ33で区画された領域毎のコンクリート4等中に埋設され、定着される。
【0023】
図1図2に示す例における中間部リブ33は下部構造1の天端上の領域にまで連続することで、両側リブ32と中間部リブ33間に充填されるコンクリート4等の打設時の型枠を兼ねるため、コンクリート4等の充填領域が区画され、限られた領域に効率的にコンクリート4等を充填することを可能にする。
【0024】
図6図7に示す例の場合(請求項)、コンクリート4等は床版部31下側の両側リブ32、32間の、少なくとも下部構造1の天端上の領域を含む床版部31の端部寄りの区間に充填され、下部構造1の天端上のコンクリート4等中に下部構造1の縦筋2が埋設される。「下部構造1の天端上の領域(区間)」は橋桁3の内、下部構造1との接合部30を指し、この領域に充填されるコンクリート4等が図4図5に示す例の横桁部34を構成する。「少なくとも」とは、図6に示すように下部構造1の天端上の領域(接合部30)から床版部31の橋軸方向中間部寄りの区間にかけて充填されることがある趣旨である。
【0025】
図6図7に示す例では、コンクリート4等は橋桁3との一体化により床版部31の全幅に亘る幅を持ち、結果として、橋桁3の少なくとも端部寄りの区間においてコンクリート4等が床版部31の厚さを増す形になるため、橋桁3の少なくとも端部寄りの区間における剛性と耐力を上昇させることが可能になる。この場合、橋桁3には現場でコンクリート4等が一体化するため、横桁部34が予め一体化している請求項の場合より橋桁3自体の軽量化が図られる。
【0026】
下部構造1の天端上の接合部30上で両側リブ32、32に一体化するコンクリート4等は、中間部リブ33の一部が下部構造1上の接合部30にまで連続する場合(図1図2)に、その中間部リブ33の一部と共に横桁部34を構成する
【0027】
換言すれば、横桁部34を含め、「両側リブ32、32間に一体化するコンクリート4等」は図4図5に示すように床版部31の両側リブ32、32間に、橋桁3の一部として予め一体化している場合(請求項)と、図1図2、及び図6図7に示すように現場で両側リブ32、32間に打設(充填)されて橋桁3に一体化する場合(請求項)がある。コンクリート4等が現場で打設される場合(請求項)には、コンクリート4等は少なくとも下部構造1の厚さ(橋桁3の橋軸方向の距離)の範囲で(下部構造1の天端上の接合部30上で)、橋桁3の対向する両側リブ32、32間に一体化するため、下部構造1の天端上の部分が横桁部34として橋桁3の一部になる。
【0028】
図6図7に示す請求項におけるコンクリート4等は下部構造1の天端上の領域から床版部31の橋軸方向中間部寄りの区間にまで充填(打設)されることで、橋桁3の橋軸方向には請求項における横桁部34を含む中間部リブ33の区間に亘り、幅方向には床版部31の全幅に亘って床版部31に一体化するため、橋桁3の少なくとも端部寄りの区間における剛性と耐力を上昇させる。この場合もコンクリート4等が橋桁3の剛性と耐力を増す働きをするため、橋桁3の端部から中間部にかけ、橋桁3を幅方向に見たときに図6図8に示すように曲げモーメント分布に対応した断面形状が与えられることが合理的である。
【0029】
橋桁3と下部構造1からなる構造体を1径間のラーメン橋として見れば、橋桁3上の荷重による曲げモーメントは橋桁3の端部寄りで上側に引張応力が生じ、中間部では下側に引張応力が生ずる分布になる。このことから、図8に示すように床版部31に一体化する両側リブ32、32を床版部31の軸方向中間部寄りで床版部31に関して上側に形成し、軸方向端部寄りで床版部31に関して下側に形成することで、曲げモーメントによる引張応力を床版部31に負担させることが可能になる。この場合、上部構造としての橋桁3は、橋桁3に生ずる橋軸方向の曲げモーメントの引張応力を図2に示すように床版部31内に挿通している緊張材35によるプレストレスで相殺させることに適した構造になる。
【0030】
図8に示すように上部構造としての橋桁3を側面(立面)で見たとき、両側リブ32が全体として上に凸に湾曲した形状をし、水平版である床版部31が両側リブ32の端部寄りでは両側リブ32の上側に位置し、中間部寄りで両側リブ32の下側に位置することで、橋桁3は中路形式になっている。このように床版部31が両側リブ32の端部寄りでは両側リブ32の上側に位置することで、橋桁3を両側リブ32において下部構造1上に載置したときに、下部構造1の縦筋2を床版部31下のコンクリート4等中に深く配筋することと、横筋5を高さ方向に多く配筋することが可能になり、下部構造1と橋桁3との一体性を確保することが容易になっている。
【0031】
請求項ではまた、中間部リブ33の、下部構造1の天端上に位置する部分(端部33a)が幅方向に、下部構造1の縦筋2に直交して配筋される横筋5(配力筋)を挿通させ、係合させるために利用される。横筋5を、中間部リブ33(端部33a)を貫通させて床版部31に幅方向に配筋することで、橋桁3に作用する曲げモーメントを幅方向に分散させて下部構造1の縦筋2に伝達することができるため、下部構造1の負担を幅方向に分散させる効果が向上する。また横筋5を中間部リブ33に係合させることができることで、縦筋2が負担する引張力を橋桁3に伝達する効果と、橋桁3が負担する引張力を下部構造1の縦筋2に伝達する効果も向上する。
【0032】
床版部31の横桁部34となるコンクリート4等が橋桁3と下部構造1との接合時に現場で充填(打設)される、図1図2、及び図6図7に示す場合(請求項)にはこの他、床版部31の両側リブ32、32間に幅方向にPC鋼材等の緊張材を挿通させてこれに緊張力を与え、コンクリート4等にプレストレスを与えることで、両側リブ32、32とコンクリート4等との一体性を強化させることも可能である。その場合、図1図2図6等に示す横筋5を緊張材として利用することも可能である。
【0033】
横筋5を配筋することは、図4図5の例(請求項)においても横桁部34内に予め埋設しておくことで可能であり、図6図7の例(請求項)においても現場でのコンクリート4等の打設時に縦筋2に交差させて配筋しておくことで可能である。
【0034】
図4図5に示す請求項では下部構造1天端上の横桁部34が図1図2に示す請求項4における中間部リブ33の下部構造1上の部分(端部33a)と、現場打ちのコンクリート4等によって形成され、横桁部34は現場で橋桁3の一部として完成する
【0035】
以上のように橋桁3は少なくとも両側リブ32、32の形成によって自重と活荷重による曲げモーメントに対する一定の抵抗力を確保した上で、両側リブ32、32間に充填(打設)、もしくは形成され、一体化するコンクリート4等と両側リブ32、32とによって高い剛性と耐力を確保するため、橋桁3自身が曲げモーメントに対する抵抗力と、下部構造1との間での曲げモーメントの伝達能力を保有することになる。橋桁3自身が曲げモーメントに対する抵抗力と、曲げモーメントの伝達能力を持つことで、橋桁3に対しては鋼材の埋設、曲げモーメント用のPC鋼材の配置等、曲げモーメントに抵抗させるための格別な補強を施すことが必要ではなくなる。
【0036】
橋桁3に対する格別な補強が不要になることで、橋桁3は基本的に、両側リブ32、32において下部構造1の天端上に載置され、下部構造1の天端から突出した縦筋2が両側リブ32、32間に配筋されることと、両側リブ間32、32に、縦筋2を埋設するコンクリート4等が一体化することのみによって下部構造1に剛に接合されることになる。両側リブ32、32間に一体化するコンクリート4等は橋桁3と下部構造1との間で圧縮力を伝達し、橋桁3と下部構造1との間の引張力は下部構造1から突出する縦筋2がコンクリート4等内に埋設され、定着されることにより伝達する。
【0037】
図1図7に示すいずれの例(請求項1〜)においても、橋桁3が両側リブ32、32を持ち、橋桁3の両側リブ32、32間にコンクリート4等の横桁部34が一体化する結果として橋桁3に対する格別な補強が不要になることで、下部構造1の天端上の、両側リブ32、32に挟まれた空間(領域)に、下部構造1から突出する縦筋2の配筋の障害になり得る、何らかの補強要素(部材)を配置する必要性が解消される。
【0038】
この結果、図1図2の例を含むいずれの例(請求項1〜5)においても、実質的に縦筋2を橋桁3の両側リブ32、32に挟まれた領域(空間)内の全体に配筋することが可能になるため、橋桁3と下部構造1との接合部30の引張抵抗要素としての十分な数の縦筋2を配筋することが可能になり、下部構造1に対しても格別な補強材を配置(付加)する必要がなくなる。
【0039】
結局、請求項1〜のいずれの場合も、下部構造1の天端上の領域の、両側リブ32、32間に下部構造1の縦筋2を埋設するコンクリート4等が一体化することの結果として、橋桁3の下部構造1との接合部30は補強要素を要しない鉄筋コンクリート造でありながらも高い剛性を確保し、コンクリート4等内に下部構造1の縦筋2が密に配筋可能であることと併せ、曲げモーメントによる引張力と圧縮力に対する高い耐力を保有する。
【0040】
橋桁3は基本的にプレキャストコンクリート(鉄筋コンクリート造(プレストレストコンクリート造を含む))で製作されるが、コンクリートに代わり、引張強度を増すための補強繊維が混入されたモルタルが使用されることもある。その場合も橋桁3はプレキャスト化されるため、実質的にはプレキャストコンクリートと同等である。補強繊維が混入されたモルタルが使用される場合には、床版部31の一層の薄肉化が図られる。図示する橋桁3は前記のように床版部31の軸方向に緊張材35が配置されたプレストレストコンクリート造になっている。
【0041】
コンクリートと並列的な関係にあるモルタルはコンクリート中に混入される粗骨材が不在であることで、図4図5に示すように縦筋2が埋設されるコンクリート4等が床版部31に一体化している場合の挿通孔34a内に充填される充填材としても使用される。またモルタルへの繊維混入等によりコンクリートに劣らない程度の高い圧縮強度、並びに引張強度を得ることができることからも、コンクリートに代わる材料として使用される。繊維混入モルタルはコンクリートの引張強度以上の引張強度を持つこともある。
【発明の効果】
【0042】
下部構造に剛に接合されるべきプレキャストコンクリート製の橋桁が幅方向両側の少なくとも下側に床版部の橋軸方向を向いて突設された両側リブを備えることで、橋桁が受ける曲げモーメントを両側リブが負担しながら、下部構造に伝達する働きをするため、橋桁に対し、曲げモーメントに抵抗させるための格別な補強を施すことが不要になる。従って下部構造の天端上の、橋桁の両側リブに挟まれた空間(領域)から何らかの補強要素(部材)を不在にすることができるため、両側リブに挟まれた空間内の全体に、橋桁と下部構造間の引張抵抗要素としての十分な数の縦筋を配筋することができる。
【0043】
この結果、橋桁を両側リブにおいて下部構造の天端上に載置し、下部構造の天端から突出した縦筋が両側リブ間に配筋されることと、両側リブ間に、縦筋を埋設するコンクリート、もしくはモルタルが一体化することのみにより下部構造に剛に接合することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】中間部リブが床版部の端部寄りの区間から下部構造の天端上の領域にまで連続して形成された橋桁と下部構造との接合部を示した、幅方向に見た縦断面図であり、図2−(a)のz−z線断面図である。
図2】(a)は図1のx−x線断面図、(b)は図1のy−y線断面図である。
図3図1に示す橋桁の中間部リブにおける挿通孔の形成例を示した縦断面図である。
図4】両側リブ間の、下部構造の天端上の領域に、幅方向を向くコンクリート等からなる横桁部が形成された橋桁と下部構造との接合部を示した、幅方向に見た縦断面図であり、図5−(a)のz−z線断面図である。
図5】(a)は図4のx−x線断面図、(b)は図4のy−y線断面図である。
図6】両側リブ間の、下部構造の天端上の領域を含む床版部の端部寄りの区間に、横桁部を有するコンクリート等が充填された橋桁と下部構造との接合部を示した、幅方向に見た縦断面図であり、図7−(a)のz−z線断面図である。
図7】(a)は図6のx−x線断面図、(b)は図6のy−y線断面図である。
図8】ラーメン橋の例としての歩道橋の全体を示した立面図である。
図9】(a)〜(d)は図1図2に示す接合方法により橋桁を下部構造としての橋台に接合する施工手順を示した斜視図である。
図10図9に示す施工手順を経て完成したラーメン橋としての歩道橋の完成状態を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0046】
図1図4図6は隣接する下部構造1、1上に架設され、両端において下部構造1、1に剛に接合される、図8に示すラーメン橋を構成するプレキャストコンクリート製の橋桁3と下部構造1との接合部の例を示す。
【0047】
本発明が対象とするラーメン橋は形式的には1径間のラーメン橋とそれが連続的に配置された形態のラーメン橋が含まれ、下部構造1は橋台の場合と橋脚の場合がある。図8は歩道橋の例を示しているが、用途上は車道橋、鉄道橋等も含まれる。図示する例での下部構造1は橋台を表している。橋桁3は主に鉄筋コンクリート造で製作されるが、コンクリートに代わり、補強繊維が混入されたモルタルを使用した超強度繊維補強コンクリート造で製作されることもある。
【0048】
図1のx−x線の断面とy−y線の断面を図2−(a)、(b)に示す。同様に図4のx−x線の断面とy−y線の断面を図5−(a)、(b)に、図6のx−x線の断面とy−y線の断面を図7−(a)、(b)に示す。図3図1における橋桁3の単体を示している。図1図2−(a)のz−z線の断面を示しており、図4図5−(a)のz−z線の断面を、図6図7−(a)のz−z線の断面を示している。図2−(a)、(b)、図5−(a)、(b)、図7−(a)、(b)中、橋桁3の床版部31内にある○の印は床版部31中に橋軸方向に添って配置され、床版部31にプレストレスを導入するためのPC鋼材等の緊張材35を表している。
【0049】
橋桁3は図2−(a)、(b)に示すように床版部31と、床版部31の幅方向両側の少なくとも下側に、床版部31の橋軸方向を向いて突設された両側リブ32、32とを備え、下部構造1とは下部構造1の天端上に位置し、橋桁3の橋軸方向端部の両側リブ32、32に挟まれた区間において接合される。下部構造1の天端上に位置し、下部構造1に接合される橋桁3の橋軸方向端部の区間を以下、接合部30と言う。
【0050】
橋桁3は図9−(b)に示すように両側リブ32、32において下部構造1の天端上に載置されるため、下部構造1上の接合部30を区画する橋桁3橋軸方向端部の区間(接合部30)の長さは下部構造1の天端の厚さ(橋桁3の橋軸方向の距離)に等しいか、それ以下の範囲内にある。
【0051】
両側リブ32、32が接合部30の区間において下部構造1の天端上に載置されることで、両側リブ32、32の全長の内、接合部30を区画する端部32aの下端面は下部構造1の天端の上面に合わせた面を持ち、例えば下部構造1の天端面が平坦な水平面であれば、両側リブ32、32の端部32aの下端面も平坦な水平面に形成され、天端面が水平に対して傾斜した平面、もしくは曲面をなしている場合には、端部32aの下端面もそれに応じた平面、もしくは曲面に形成される。図1では下部構造1の天端と床版部31に挟まれた領域が両側リブ32を表し、その内、下部構造1の厚さを示す線の延長線上の破線に挟まれた範囲が端部32aである。
【0052】
図面では両側リブ32、32を図8に示すように橋桁3に自重を含む長期荷重により生じる曲げモーメント分布に対応させ、高さが床版部31の橋軸方向中央部から端部にかけて次第に大きくなるように形成し、橋軸方向の各断面での曲げモーメントに対する抵抗力(曲げ応力度)が一様になるようにしている。図面ではまた、両側リブ32、32を床版部31の上側にも形成し、両側リブ32、32の下側への突出量が大きくならないようにしている。両側リブ32、32の床版部31の上側に突出した部分は高欄として利用される。
【0053】
橋桁3が接合される下部構造1の天端からは、両側リブ32、32の端部32a、32a間の接合部30の範囲内に配筋される縦筋2が突出し、この端部32a、32a間の接合部30の範囲内にコンクリート4、もしくはモルタル(以下、コンクリート4等)が予め、もしくは現場で一体化することにより橋桁3が下部構造1に接合される。橋桁3の接合部30に一体化するコンクリート4等は図1図6に示す例のように橋桁3の下部構造1上への載置後に現場で充填(打設)される場合と、図4に示す例のように予め橋桁3の一部を構成する横桁部34として後述の中間部リブ33と共に橋桁3に一体的に形成されている場合がある。
【0054】
図1図4は橋桁3の両側リブ32、32間の、少なくとも接合部30を含む床版部31の端部寄りの区間に、床版部31の橋軸方向を向く中間部リブ33が突設されている場合の例であり、図6は橋桁3の両側リブ32、32間の、少なくとも接合部30を含む床版部31の端部寄りの区間にコンクリート4等が充填される場合の例である。「床版部31の端部寄りの区間」は接合部30から、または接合部30付近から橋桁3の橋軸方向中間部、あるいは中央部側へかけての区間を指し、中間部リブ33は床版部31の橋軸方向中間部(中央部)側から端部側へかけて形成される。「少なくとも」であるから、中間部リブ33は橋桁3の全長に亘って形成されることもある。
【0055】
中間部リブ33は床版部31の橋軸方向の中央部側から端部にまで連続して形成されるが、図1に示すように下部構造1上の接合部30を含む範囲にまで連続する
【0056】
「床版部31の端部寄りの区間」は下部構造1との接合部30を含め、あるいは接合部30を除き、床版部31の端部側から床版部31の橋軸方向中間部、あるいは橋軸方向中央部までに移行する区間であり、橋桁3の全長に亘る場合と、図1等に示すように橋軸方向中央部に至る手前の区間までに亘る場合がある。中間部リブ33は両側リブ32と共に橋桁3の曲げ剛性を上昇させる役目を持つが、中間部リブ33の形状と区間、高さは両側リブ32の形状と高さ等に応じ、自由に決められる。
【0057】
図1図2は特に中間部リブ33が床版部31の橋軸方向中間部側から下部構造1の天端上の領域(接合部30)にまで連続して形成され、中間部リブ33に、下部構造1の天端上に位置し、接合部30を区画する端部33aが連続して形成されている場合の例を示している。中間部リブ33の端部33aは両側リブ32の端部32aに幅方向に対向する。図1では中間部リブ33の橋軸方向端部側の端面(端部33aの端面)が両側リブ32の端面(端部32aの端面)に揃えられているが、必ずしもその必要はない。
【0058】
図1図2の例では中間部リブ33が両側リブ32の端部32aに対向する端部33aを持つことで、中間部リブ33は下部構造1上の接合部30の領域(空間)を幅方向に区分するため、コンクリート4等は区分された領域毎に、すなわち床版部31の幅方向に隣接する両側リブ32の端部32aと中間部リブ33の端部33a間、及び中間部リブ33、33の端部33a、33a間単位で充填(打設)される。
【0059】
この場合、中間部リブ33の端部33aが両側リブ32の端部32aと共に下部構造1の天端上に配置されることで、各端部33a、32aは下部構造1の天端上に打設されるコンクリート4等の打設領域と縦筋2の配筋領域を幅方向に区画し、コンクリート4等の充填時の幅方向の堰板(型枠)を兼ねるため、コンクリート4等は下部構造1の厚さ方向両側(橋桁3橋軸方向)に堰板(型枠)を配置した状態で充填される。
【0060】
下部構造1の縦筋2は両側リブ32の端部32aと中間部リブ33の端部33aとで区画された領域のコンクリート4等中に埋設され、定着される。下部構造1上の接合部30の領域に充填されたコンクリート4等は両側リブ32の端部32aと中間部リブ33の端部33aと共に、図4の例における横桁部34に相当する部分となる。
【0061】
中間部リブ33の端部33aが下部構造1の天端面から浮く等、天端面上に直接、載置されないような場合には、中間部リブ33の下端面が下部構造1の天端面に合わせた形状をする必要はないが、下部構造1の天端面上に載置される場合には、中間部リブ33の端部33aの下端面も両側リブ32の端部32aの下端面と同じく、天端面に合わせた平面状、もしくは曲面状に形成される。
【0062】
中間部リブ33は接合部30の領域を幅方向に区画することで、橋桁3に生じる曲げモーメントを幅方向に分散させて下部構造1に伝達させる横筋(配力筋)5を配筋する場合に、横筋5を保持し、横筋5が負担する縦筋2からの力を受けるためにも利用される。図1図2では両側リブ32、32間に中間部リブ33を貫通させて床版部31の幅方向に横筋5を配筋している。
【0063】
図1における接合部30の橋桁3の橋軸方向に見たときの断面を示す図2−(a)では、下部構造1の縦筋2を省略しているが、縦筋2は図9−(a)に示すように中間部リブ33(端部33a)で区画された領域単位で配筋される。縦筋2は橋桁3からの曲げモーメントによる引張力を下部構造1に伝達する働きをするため、下部構造1の厚さ方向には2列以上、配列し、それに合わせ、中間部リブ33の端部33aを挿通する横筋5も下部構造1の厚さ方向には2列以上、配列する。横筋5は縦筋2との間でコンクリート4等による付着力により、または係合により両者間での引張力の伝達が可能なように、直接、あるいはコンクリート4等を介して互いに交差するように配筋される。
【0064】
図2−(a)では代表的な横筋5のみを示しているが、中間部リブ33の端部33aには図3に示すように横筋5を挿通させるための挿通孔33bが高さ方向と下部構造1の厚さ方向(橋桁3の橋軸方向)にそれぞれ複数個、形成される。図3では挿通孔33bを縦筋2の配列数に合わせ、下部構造1の厚さ方向に2列、配列させ、高さ方向に複数段、形成しているが、下部構造1の厚さ方向に3列以上、配列させることもある。
【0065】
図1図2に示す例では橋桁3から伝達される曲げモーメントにより縦筋2が負担する引張力を横筋5がその橋軸方向である下部構造1の幅方向に分散させるため、中間部リブ33で区画されたいずれかの領域に引張力(応力)が集中する事態が回避され、応力の分散により接合部30の耐力が上昇することが期待される。
【0066】
図1図2に示す橋桁3と下部構造1の接合部の施工工程を示す図9−(a)〜(d)により施工手順を説明する。図9に示す工程を経て完成した図8に示す、ラーメン橋としての歩道橋の完成状態を図10に示す。下部構造1は前記のように橋台である。
【0067】
下部構造1の天端からは、図9−(a)に示すように下部構造1の天端上における、橋桁3の両側リブ32の端部32aと中間部リブ33の端部33aが載る部分以外の、両側リブ32と中間部リブ33で区画された領域毎に縦筋2が突出している。下部構造1の天端からの縦筋2の突出長さは、下部構造1の天端から橋桁3の床版部31の底面までの距離以下である。この下部構造1、1間に、予め製作されている橋桁3が吊り込まれて図8に示すように架設され、図9−(b)に示すように各下部構造1の天端上に橋桁3の端部が両側リブ32の端部32aと中間部リブ33の端部33aにおいて載置される。
【0068】
橋桁3の載置後、図9−(c)に示すように中間部リブ33の端部33aの挿通孔33bを挿通させ、縦筋2と互いに交差するように横筋5が配筋される。横筋5の両側の端部は両側リブ32の端部32aに定着させられる。
【0069】
横筋5の端部は例えば両側リブ32の端部32aの、中間部リブ33側から穿設された、または端部32aを貫通して形成された定着孔32bに挿入させられ、定着孔32bにモルタル、接着剤等の充填材が充填されることにより定着孔32b内に定着される。床版部31両側の両側リブ32、32の定着孔32b、32bの内、少なくとも一方が端部32aを貫通して形成されることで、横筋5を両側リブ32の厚さ方向外側から定着孔32bに差し込み、配筋することができる。
【0070】
横筋5の配筋後、下部構造1の厚さ方向両側に堰板が配置された状態で、両側リブ32の端部32aと中間部リブ33の端部33aとで区画された領域毎にコンクリート4等が充填(打設)され、縦筋2と横筋5がコンクリート4等中に埋設される。コンクリート4等の充填によって橋桁3と下部構造1の接合が完了し、図10に示すラーメン橋(歩道橋)が完成する。
【0071】
図4図5図1における中間部リブ33が橋桁3の橋軸方向中間部側から下部構造1上の接合部30の手前まで形成され、下部構造1の天端上、すなわち接合部30の領域の両側リブ32、32間に床版部31の幅方向を向く横桁部34が形成され、横桁部34が床版部31と両側リブ32、32、及び中間部リブ33に一体化した橋桁3の下部構造1との接合例を示す。中間部リブ33は横桁部34の、橋桁3の橋軸方向中間部側の側面から張り出すように形成され、横桁部34に一体化する。
【0072】
横桁部34は橋桁3の製作時に床版部31、両側リブ32、中間部リブ33と共に形成され、床版部31に一体化するため、横桁部34の、縦筋2に対応した位置には縦筋2が挿入される挿入孔34aが形成されており、橋桁3の下部構造1上への載置時に挿入孔34a内に縦筋2が挿入される。挿入孔34a内には橋桁3の載置後にモルタル、接着剤等の充填材が充填されることにより縦筋2が横桁部34に定着される。挿入孔34aは橋桁3の製作時に例えば横桁部34を構成するコンクリート4等中にスリーブ34b等の筒状の部品を埋設しておくことで形成される。
【0073】
図4の例では横桁部34に埋設され、挿入孔34aを構成するスリーブ34b等の床版部31側に縦筋34cを溶接等により固定しておくことで、挿入孔34a内に下部構造1の縦筋2が挿入されたときに、スリーブ34bを介して双方の縦筋2、34cが連結(接続)される状態にしている。この場合、スリーブ34bの長さ(挿入孔34aの深さ)と、下部構造1から突出する縦筋2の突出長さを小さくし、縦筋34cの長さを相対的に大きくしておくことで、下部構造1上への橋桁3の落とし込み時に、挿入孔34a内への縦筋2の挿入をし易くすることが可能である。
【0074】
図4の例においては、縦筋2の挿入位置、すなわち挿入孔34aの形成位置に合わせ、横桁部34の内部に図1図2の例における横筋5を予め埋設しておくことができ、横筋5の埋設により橋桁3に生じる曲げモーメントを、横筋5を通じて幅方向に分散させる効果を得ることができる。
【0075】
図6は橋桁3の両側リブ32、32間の、少なくとも下部構造1上の接合部30を含む床版部31の端部寄りの区間にコンクリート4等が橋桁3の設置後に充填(打設)されることにより橋桁3が下部構造1に接合される場合の接合例を示す。この例ではコンクリート4等は橋桁3を幅方向に見たときの断面上、図6に示すように図1に示す例における中間部リブ33の形成区間に亘り、両側リブ32、32に挟まれた区間に現場で打設される。コンクリート4等の全体の内、接合部30に存在する部分は図4に示す例における横桁部34に相当する。
【0076】
図6の例では、両側リブ32、32のみがコンクリート4等の打設時の型枠(堰板)になるため、下部構造1上には厚さ方向片側と、それと対になる橋桁3橋軸方向中間部側に堰板が配置され、その状態でコンクリート4等が打設される。この例ではコンクリート4等が橋桁3の全幅に亘って橋桁3に一体化し、橋桁3を補剛するため、下部構造1への接合後の橋桁3の剛性と耐力が図1図4に示す例より向上する利点がある。
【0077】
図6の例においても、コンクリート4等の内、接合部30(横桁部34)に相当する部分内に図1図2の例における横筋5を配筋することで、橋桁3に生じる曲げモーメントを橋桁3の幅方向に分散させる効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0078】
1……下部構造、2……縦筋、
3……橋桁、30……接合部、31……床版部、
32……両側リブ、32a……端部、32b……定着孔、
33……中間部リブ、33a……端部、33b……挿通孔、
34……横桁部、34a……挿入孔、34b……スリーブ、34c……縦筋、35……緊張材、
4……コンクリート、もしくはモルタル、
5……横筋。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10