(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(D)潤滑剤が、アルコール、脂肪酸、アルコールと脂肪酸とのエステル、アルコールとジカルボン酸とのエステル、平均重合度が10〜500であるオレフィン化合物、及びシリコーン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1に記載の搬送装置用摺動部材の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0013】
〔搬送装置用摺動部材〕
本実施形態の搬送装置用摺動部材は、
(A)ポリアセタール樹脂:100質量部、
(B)イソシアネート化合物とポリアルキレンオキサイドとの重合体:0.5〜10質量部、
(C)平均粒子径が5〜20μmの範囲であるタルク:0.005〜0.01質量部、及び
(D)潤滑剤:0〜10質量部を含むポリアセタール樹脂組成物を、押出成形及びアニーリング処理し、切削加工してなり、
結晶化度が70%以上である。
【0014】
〔ポリアセタール樹脂(A)〕
本実施形態に係るポリアセタール樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂(A)を含む。用いるポリアセタール樹脂(A)としては、特に限定されないが、具体的には、ホルムアルデヒド単量体、及び/又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーを単独重合して得られる実質上オキシメチレン単位のみから成るポリアセタールホモポリマー;ホルムアルデヒド単量体及び/又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロルヒドリン、1,3−ジオキソランや1,4−ブタンジオールホルマール等のグリコールやジグリコールの環状ホルマール等の環状エーテル、環状ホルマールと、を共重合させて得られたポリアセタールコポリマー;ホルムアルデヒド単量体及び/又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、単官能グリシジルエーテルとを共重合させて得られる、分岐を有するポリアセタールコポリマー;ホルムアルデヒド単量体及び/又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、多官能グリシジルエーテルとを共重合させて得られる、架橋構造を有するポリアセタールコポリマー;両末端または片末端に水酸基等の官能基を有する化合物、例えばポリアルキレングリコールの存在下、ホルムアルデヒド単量体及び/又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーを重合して得られるブロック成分を有するポリアセタールホモポリマー;両末端又は片末端に水酸基等の官能基を有する化合物、例えば水素添加ポリブタジエングリコールの存在下、ホルムアルデヒド単量体又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、環状エーテルや環状ホルマールと、を共重合させて得られるブロック成分を有するポリアセタールコポリマーを用いることができる。以上のように、本実施形態においては、ポリアセタールホモポリマー、ポリアセタールコポリマーのいずれも用いることが可能である。好ましいのはポリアセタールコポリマーである。
【0015】
1,3−ジオキソラン等のコモノマーは、特に限定されないが、一般的にはオキシメチレン1molに対して0.1〜20mol%、好ましくは0.1〜10mol%、より好ましくは0.2〜5mol%の範囲で用いられる。
【0016】
本実施形態に係るポリアセタール樹脂(A)の融点は、特に限定されないが、162℃〜173℃が好ましく、より好ましくは164℃〜173℃、さらに好ましくは167℃〜171℃である。融点が167℃〜171℃のポリアセタールコポリマーは、トリオキサンに対して0.4〜1.2mol%程度のコモノマーを用いることにより得ることができる。なお、ポリアセタール樹脂(A)の融点は、DSCにより測定することができる。
【0017】
(ポリアセタール樹脂(A)の製造方法)
ポリアセタール樹脂(A)の重合における重合触媒としては、特に限定されないが、具体的には、ルイス酸、プロトン酸、及びルイス酸又はプロトン酸の、エステル又は無水物等のカチオン活性触媒が好ましい。ルイス酸としては、特に限定されないが、具体的には、ホウ酸、スズ、チタン、リン、ヒ素、及びアンチモンの、ハロゲン化物が挙げられる。ルイス酸として、より具体的には三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化リン、五塩化リン、五フッ化アンチモン、及びそれらの、錯化合物又は塩が挙げられる。また、プロトン酸、プロトン酸の、エステル又は無水物としては、特に限定されないが、具体的には、パークロル酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パークロル酸−3級ブチルエステル、アセチルパークロラート、トリメチルオキソニウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。この中でも、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素水和物、及び酸素原子又は硫黄原子を含む有機化合物と三フッ化ホウ素との配位錯化合物が好ましく、具体的には、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル、三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテルを好適例として挙げることができる。
【0018】
(重合工程)
ポリアセタール樹脂(A)の重合方法としては、特に限定されないが、一般には塊状重合で行うことができ、バッチ式、連続式いずれも可能である。用いられる重合装置としては、特に限定されないが、具体的には、コニーダー、2軸スクリュー式連続押出混錬機、2軸パドル型連続混合機等のセルフクリーニング型押出混錬機が使用される。これら重合装置を用いた場合には、溶融状態のモノマーが重合機に供給され、重合の進行とともに固体塊状のポリアセタール樹脂(A)が得られる。
【0019】
(不安定末端部の分解除去処理工程)
以上の重合で得られたポリアセタール樹脂(A)には、熱的に不安定な末端部〔−(OCH
2)
n−OH基〕が存在するため、不安定な末端部の分解除去処理を実施することが好ましい。特定の不安定末端部の分解除去処理としては、特に限定されないが、具体的には、下記一般式(1)で表わされる少なくとも1種の第4級アンモニウム化合物の存在下に、ポリアセタール樹脂(A)の融点以上260℃以下の温度で、ポリアセタール樹脂(A)を溶融させた状態で熱処理する方法が挙げられる。
[R
1R
2R
3R
4N
+]
nX
-n 式(1)
(式中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、各々独立して、炭素数1〜30の非置換アルキル基若しくは置換アルキル基;炭素数6〜20のアリール基;炭素数1〜30の非置換アルキル基若しくは置換アルキル基の水素原子が少なくとも1個の炭素数6〜20のアリール基で置換されたアラルキル基;又は炭素数6〜20のアリール基の水素原子が少なくとも1個の炭素数1〜30の非置換アルキル基若しくは置換アルキル基で置換されたアルキルアリール基を表わし、前記非置換アルキル基又は前記置換アルキル基は直鎖状、分岐状、又は環状である。上記置換アルキル基の置換基はハロゲン、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、又はアミド基である。また、上記非置換アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基は水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。nは1〜3の整数を表わす。Xは水酸基、又は炭素数1〜20のカルボン酸、ハロゲン化水素以外の水素酸、オキソ酸、無機チオ酸若しくは炭素数1〜20の有機チオ酸の酸残基を表わす。)
【0020】
本実施形態に用いる第4級アンモニウム化合物は、上記式(1)で表わされるものであれば特に制限はされないが、式(1)におけるR
1、R
2、R
3、及びR
4が、各々独立して、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基であることが好ましく、この内、R
1、R
2、R
3、及びR
4の少なくとも1つが、ヒドロキシエチル基であるものが特に好ましい。このような第4級アンモニウム化合物は、特に限定されないが、具体的には、テトラメチルアンモニウム、テトエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、1,6−ヘキサメチレンビス(トリメチルアンモニウム)、デカメチレン−ビス−(トリメチルアンモニウム)、トリメチル−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリプロピル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリ−n−ブチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、トリプロピルベンジルアンモニウム、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、トリエチルフェニルアンモニウム、トリメチル−2−オキシエチルアンモニウム、モノメチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、モノエチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、オクダデシルトリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、テトラキス(ヒドロキシエチル)アンモニウム等の水酸化物;塩酸、臭酸、フッ酸等の水素酸塩;硫酸、硝酸、燐酸、炭酸、ホウ酸、塩素酸、よう素酸、珪酸、過塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、クロロ硫酸、アミド硫酸、二硫酸、トリポリ燐酸等のオキソ酸塩;チオ硫酸等のチオ酸塩;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソ酪酸、ペンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、安息香酸、シュウ酸等のカルボン酸塩等が挙げられる。中でも、水酸化物(OH
-)、硫酸(HSO
4-、SO
42-)、炭酸(HCO
3-、CO
32-)、ホウ酸(B(OH)
4-)、カルボン酸の塩が好ましい。カルボン酸の内、蟻酸、酢酸、プロピオン酸が特に好ましい。これら第4級アンモニウム化合物は、単独で用いてもよいし、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記第4級アンモニウム化合物に加えて、公知の不安定末端部の分解促進剤であるアンモニアやトリエチルアミン等のアミン類等を併用することもできる。
【0021】
第4級アンモニウム化合物の使用量は、ポリアセタール樹脂(A)と第4級アンモニウム化合物の合計質量に対する下記式(2)で表わされる第4級アンモニウム化合物由来の窒素の量に換算して0.05〜50質量ppmが好ましく、より好ましくは1〜30質量ppmである。
〔第4級アンモニウム化合物の使用量〕=P×14/Q 式(2)
(式中、Pは第4級アンモニウム化合物のポリアセタール樹脂(A)に対する濃度(質量ppm)を表わし、14は窒素の原子量であり、Qは第4級アンモニウム化合物の分子量を表わす。)
【0022】
第4級アンモニウム化合物の使用量を、0.05質量ppm以上とすることにより、不安定末端部の分解除去速度が向上する傾向にあり、50質量ppm以下とすることにより、不安定末端部分解除去後のポリアセタール樹脂(A)の色調が良くなる傾向にある。
【0023】
本実施形態に用いるポリアセタール樹脂(A)の不安定末端部の分解除去処理は、ポリアセタール樹脂(A)の融点以上260℃以下の温度でポリアセタール樹脂(A)を溶融させた状態で熱処理することにより行なうことができる。用いる装置としては、特に限定されないが、押出機、ニーダー等を用いて熱処理することが好適である。また、不安定末端部の分解除去処理により発生したホルムアルデヒドは減圧下で系中から除去できる。第4級アンモニウム化合物の添加方法としては、特に限定されないが、重合触媒を失活する工程において、水溶液として加える方法、重合で生成したポリアセタール樹脂(A)に吹きかける方法等がある。いずれの添加方法を用いても、ポリアセタール樹脂(A)を熱処理する工程で添加されていればよく、押出機の中に注入したり、押出機等を用いてフィラーやピグメントの配合を行なう品種であれば、樹脂ペレットに該化合物を添着し、その後の配合工程で不安定末端分解除去処理を実施してもよい。
【0024】
不安定末端分解除去処理は、重合で得られたポリアセタール樹脂(A)中の重合触媒を失活させた後に行なうことも可能であるし、また重合触媒を失活させずに行なうことも可能である。重合触媒の失活操作としては、アミン類等の塩基性の水溶液中で重合触媒を中和失活する方法を代表例として挙げることができる。また、重合触媒の失活を行なわずに、融点以下の温度で不活性ガス雰囲気下にて加熱し、重合触媒を揮発低減した後、不安定末端分解除去処理を行なうことも有効な方法である。
【0025】
以上の特定の不安定末端部分解除去処理により、不安定末端部が殆ど存在しない非常に熱安定性に優れたポリアセタール樹脂(A)を得ることができる。
【0026】
〔イソシアネート化合物とポリアルキレンオキサイドとの重合体(B)〕
本実施形態に係る(B)成分は、イソシアネート化合物とポリアルキレンオキサイドとの重合体である。(B)成分は、イソシアネート化合物とポリアルキレンオキサイドとの重合体であれば特に制限されず、必要に応じて低分子量ジオール化合物を共重合させた重合体であってもよい。このような重合体は、特開平6−144889号公報、特開平7−316421号公報、及び特開平8−92476号公報等に記載された方法で製造することができる。
【0027】
(B)成分に用いられるイソシアネート化合物としては、特に限定されないが、具体的には、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、ヘキサメチレンジジイソシアネート、及びこれらの環状3量体等が挙げられる。これらの中ではトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましく、さらにトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートがより好ましい。イソシアネート化合物は、一種単独で用いても、二種以上を併用してもよい。
【0028】
(B)成分に用いられるポリアルキレンオキサイドとしては、特に限定されないが、具体的には、ポリエチレングリコール、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体、エチレンオキサイドと1,4ブタンジオールとの共重合体、エチレンオキサイドとテトラメチレングルコールとの共重合体、ポリプロピレングリコール、ポリ−1,4−ブタンジオール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。ここで共重合体は、ブロック共重合体でもランダム共重合体であってもよい。ポリアルキレンオキサイドは、一種単独で用いても、二種以上を併用してもよい。また、ポリアルキレンオキサイドの好ましい平均重合度は4〜1000の範囲であり、より好ましくは10〜500の範囲である。
【0029】
ポリアルキレンオキサイド成分中のポリエチレンオキサイド成分とポリエチレンオキサイド以外の成分との比率は、ポリエチレンオキサイド成分が40質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。ポリエチレンオキサイド成分が40質量%以上であることにより、帯電防止性能、摩擦摩耗性能及び衝撃強度により優れる搬送装置用摺動部材となる。
【0030】
必要に応じて用いられる低分子ジオール化合物としては、特に限定されないが、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、重合度4未満のポリアルキレンオキサイド(ポリエチレングリコール、エチレンオキサイドプロピレンオキサイド共重合体、ポリプロピレングリコール、ポリ1,4−ブタンジオール、ポリテトラメチレングリコール等)を用いることが可能である。このなかでも、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールが好ましい。
【0031】
(イソシアネート化合物とポリアルキレンオキサイドとの重合体(B)の製造方法)
このイソシアネート化合物とポリアルキレンオキサイドとの重合体(B)は、前記公報に記載された方法で製造することができる。具体的には、押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等を用いて、イソシアネート化合物とポリアルキレンオキサイド、及び必要に応じて低分子量ジオール化合物を反応させることにより得られる。反応温度は一般的には30〜230℃であり、好ましくは40〜200℃で、反応時間は一般的には1分〜30時間であり、好ましくは3分〜5時間である。この反応は溶剤等を用いてもよく、溶剤としては、特に限定されないが、具体的には、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド、ジオキサン、メチルエチルケトン及びトルエン等の溶媒が挙げられる。また、触媒として、特に限定されないが、具体的には、ジブチル錫ラウレート、ジオクチル錫ラウレート等の有機金属化合物;トリエチルアミン、ジアザビシクロウンデセン等のアミン類等のウレタン化触媒を用いることも可能である。
【0032】
イソシアネート化合物とポリアルキレンオキサイドとの重合体(B)の重量平均分子量はクロロホルムを溶媒として、GPCで測定したポリスチレン換算重量平均分子量で10,000〜500,000の範囲が好ましく、30,000〜400,000の範囲がより好ましく、50,000〜300,000の範囲がさらに好ましい。分子量が10,000以上であることにより、衝撃強度の改良効果がより高くなる傾向にあり、分子量が500,000以下であることにより、摺動性能がより良好となる傾向にある。
【0033】
イソシアネート化合物とポリアルキレンオキサイドとの重合体(B)の体積固有抵抗値は、ポリエチレンオキサイドの含有量や添加剤により制御することができる。イソシアネート化合物とポリアルキレンオキサイドとの重合体(B)の体積固有抵抗値は、1×10
12Ω・cm以下であることが好ましく、1×10
11Ω・cm以下であることがより好ましく、1×10
10Ω・cm以下であることがさらに好ましい。体積固有抵抗値が1×10
12Ω・cm以下であることにより、搬送装置用摺動部材の体積固有抵抗値が良好な範囲となる。なお、重合体(B)の体積固有抵抗値は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0034】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物中のイソシアネート化合物とポリアルキレンオキサイドとの重合体(B)の含有量は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、0.5〜10質量部である。含有量が、0.5〜10質量部であれば、帯電防止性能、摩擦摩耗性及び耐衝撃性が良好となる。重合体(B)の含有量は、1〜10質量部であることが好ましく、1〜8質量部の範囲であることがより好ましい。上記好ましい範囲であることにより、帯電防止性能、摩擦摩耗性及び耐衝撃性がより優れる傾向にある。
【0035】
〔タルク(C)〕
次に本実施形態で用いる(C)成分のタルクについて説明する。タルクの化学名は含水珪酸マグネシウムであり、一般的にSiO
2約60%、MgO約30%と結晶水4.8%が主成分である。真比重は一般的に2.7〜2.8であり、白色度はJIS K−8123に準じて測定した数値が93%以上であることが好ましく、pHはJIS K−5101に準じて測定した数値が9.0〜10の範囲であることが好ましい。また、45μm篩残分はJIS K−5101に準じて測定した数値が0.2%以下であることが好ましく、0.1%以下であることがより好ましく、0.08%以下であるであることがさらに好ましい。45μm篩残分が上記好ましい範囲であることにより、耐衝撃性(繰返衝撃性)により優れる傾向にある。
【0036】
タルク(C)の平均粒子径は、レーザー回折法で測定された50%体積平均粒子径として求めることができる。タルク(C)の平均粒子径は、5〜20μmであり、10〜20μmであることがより好ましい。5〜20μmであれば、摩擦摩耗性能と耐衝撃性(繰返衝撃性)に優れる。
【0037】
本実施形態で用いられるタルク(C)としては、樹脂との親和性を向上させるために公知の表面処理剤を用いて表面処理したものを用いることができる。表面処理剤としては、特に限定されないが、具体的には、アミノシラン、エポキシシラン等のシランカップリング剤;チタネート系カップリング剤;脂肪酸(飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸)、脂環族カルボン酸及び樹脂酸;金属石鹸を挙げることができる。表面処理剤の添加量としては好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下であり、さらに好ましくは実質的に添加されていないことである。
【0038】
本実施形態に係るポリアセタール樹脂組成物中のタルク(C)の含有量はポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して0.005〜0.03質量部であり、結晶化度を適正範囲にする点から0.005質量部以上、繰返衝撃強度の点から0.03質量部以下である必要がある。好ましくは0.01〜0.03質量部、より好ましくは0.01〜0.02質量部である。
【0039】
〔(D)潤滑剤〕
本実施形態の(D)成分に用いられる潤滑剤は、特に限定されないが、具体的には、アルコール、脂肪酸、アルコールと脂肪酸とのエステル、アルコールとジカルボン酸とのエステル、ポリオキシアルキレングリコール、及び平均重合度が10〜500であるオレフィン化合物、及びシリコーン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。潤滑剤を配合する場合の配合量は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して10質量部以下であることが好ましい。好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.01〜1質量部である。
【0040】
アルコールとしては、特に限定されないが、具体的には、1価アルコール又は多価アルコールが挙げられる。1価アルコールとしては、特に限定されないが、具体的には、オクチルアルコール、カプリルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ベンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘブタデシルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール、ペヘニルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、2−ヘキシルデカノール、2−イソヘプチルイシウンデカノール、2−オクチルドデカノール、2−デシルテトラデカノール、2−メチルステアリルアルコール、ユニリンアルコール等が挙げられる。
【0041】
多価アルコールとしては、特に限定されないが、具体的には、2〜6個の炭素原子を含有する多価アルコールが挙げられ、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、トレイトール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール、キシリトール、ソルバイト、ソルビタン、ソルビトール、マンニトールが挙げられる。
【0042】
脂肪酸としては、特に限定されないが、具体的には、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシ酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ペンタデシル酸、ステアリン酸、ナノデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、プロピオール酸、ステアロール酸;これら成分を含有してなる天然に存在する脂肪酸;又はそれらの混合物等が挙げられる。これらの脂肪酸はヒドロキシ基で置換されていてもよい。
【0043】
アルコールと脂肪酸とのエステルとしては下記に示す、アルコールと、脂肪酸とのエステルが挙げられる。アルコールとしては特に限定されないが、1価アルコール、多価アルコールが挙げられ、1価アルコールとしては、特に限定されないが、具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ベンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール、セリルアルコール、ベヘニルアルコール、メリシルアルコール、ヘキシルデシルアルコール、オクチルドデシルアルコール、デシルミリスチルアルコール、デシルステアリルアルコール、ユニリンアルコール等の飽和・不飽和アルコールが挙げられる。多価アルコールとしては、特に限定されないが、具体的には、2〜6個の炭素原子を含有する多価アルコールであり、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール、キシリトール、ソルバイト、ソルビタン、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。
【0044】
脂肪酸としては、特に限定されないが、具体的には、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシ酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ペンタデシル酸、ステアリン酸、ナノデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、プロピオール酸、ステアロール酸等;これら成分を含有してなる天然に存在する脂肪酸;又はそれらの混合物等が挙げられる。これらの脂肪酸はヒドロキシ基で置換されていてもよい。これら、アルコールと脂肪酸とのエステルとしては、特に限定されないが、炭素数12以上の脂肪酸とアルコールとのエステルが好ましく、炭素数12以上の脂肪酸と炭素数10以上のアルコールとのエステルがより好ましく、炭素数12〜30の脂肪酸と炭素数10〜20のアルコールとのエステルがさらに好ましい。
【0045】
アルコールとジカルボン酸のエステルとしては、特に限定されないが、具体的には、飽和・不飽和の一級アルコールとジカルボン酸とのモノエステル、ジエステル及びこれらの混合物が挙げられる。飽和・不飽和の一級アルコールとしては、特に限定されないが、具体的には、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ベンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール、セリルアルコール、ベヘニルアルコール、メリシルアルコール、ヘキシルデシルアルコール、オクチルドデシルアルコール、デシルミリスチルアルコール、デシルステアリルアルコール、ユニリンアルコール等が挙げられる。また、ジカルボン酸としては、特に限定されないが、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカニン酸、ブラシリン酸、マレイン酸、フマール酸、グルタコン酸等が挙げられる。これらのアルコールとジカルボン酸のエステルとしては、特に限定されないが、具体的には、炭素数10以上のアルコールとジカルボン酸とのエステルが好ましい。
【0046】
ポリオキシアルキレングリコール化合物としては、特に限定されないが、3つのグループに属する化合物が挙げられる。第1のグループとしては、アルキレングリコールをモノマーとする重縮合物が挙げられる。例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールのブロックポリマー等が挙げられる。これらの平均重合度の好ましい範囲は5〜1000であり、より好ましい範囲は10〜500である。
【0047】
第2のグループとしては、第1のグループと脂肪族アルコールとのエーテル化合物である。例えば、ポリエチレングリコールオレイルエーテル(エチレンオキサイド平均重合度5〜50)、ポリエチレングリコールセチルエーテル(エチレンオキサイド平均重合度5〜50)、ポリエチレングリコールステアリルエーテル(エチレンオキサイド平均重合度5〜30)、ポリエチレングリコールラウリルエーテル(エチレンオキサイド平均重合度5〜30)、ポリエチレングリコールトリデシルエーテル(エチレンオキサイド平均重合度5〜30)、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル(エチレンオキサイド平均重合度2〜100)、ポリエチレングリコールオキチルフェニルエーテル(エチレンオキサイド平均重合度4〜50)等が挙げられる。
【0048】
第3のグループとしては、第1のグループと高級脂肪酸とのエステル化合物である。例えば、ポリエチレングリコールモノラウレート(エチレンオキサイド平均重合度2〜30)、ポリエチレングリコールモノステアレート(エチレンオキサイド平均重合度2〜50)、ポリエチレングリコールモノオレート(エチレンオキサイド平均重合度2〜50)等が挙げられる。
【0049】
平均重合度が10〜500であるオレフィン化合物としては、特に限定されないが、具体的には、式(2)で示される化合物が挙げられる。
【化1】
〔式中、R
5、R
6は、水素、アルキル基、アリール基、エーテル基より選ばれ、各々同一でも異なっていてもよい。nは平均重合度で10〜500である。〕
【0050】
上記アルキル基としては、特に限定されないが、具体的には、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ラウリル基、セチル基、ステアリル基等が挙げられる。また、アリール基としては、特に限定されないが、具体的には、フェニル基、p−ブチルフェニル基、p−オクチルフェニル基、p−ノニルフェニル基、ベンジル基、p−ブチルベンジル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。さらに、エーテル基としては、特に限定されないが、具体的には、エチルエーテル基、プロピルエーテル基、ブチルエーテル基等が挙げられる。
【0051】
このようなオレフィン化合物を構成するモノマーとしては、特に限定されないが、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、2−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、1−ヘキセン、2,3−ジメチル−2−ブテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等で表されるオレフィン系モノマー;アレン、1,2−ブタジエン、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、シクロペンタジエン等で表されるジオレフィン系モノマーが挙げられる。これらオレフィン系モノマー、ジオレフィン系モノマーの2種以上を共重合して得られる化合物であってもかまわない。
【0052】
オレフィン化合物がジオレフィン系モノマーを重合して得られる化合物である場合は、熱安定性向上の観点から慣用の水素添加法を用いて炭素−炭素不飽和結合を極力少なくしたオレフィン化合物を用いる方が好ましい。オレフィン化合物を構成するオレフィン単位の平均重合度nは10〜500の間にあることが好ましく、より好ましくは15〜300の範囲である。平均重合度nが10より大きい場合は、長期の潤滑特性が向上すると共に、金型汚染性へも悪影響を抑制できるため好ましい。nが500より大きい場合は、初期の潤滑特性が低下するため好ましくない。
【0053】
シリコーン化合物としては、特に限定されないが、具体的には、公知のシリコーン化合物、及びその変性品から選ばれるものが挙げられる。例えば、式(3)で表されるジメチルポリシロキサン、及びそのメチル基が水素、アルキル基、アリール基、エーテル基、エステル基や反応性置換基であるアミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、カルビノール基、メタクリル基、メルカプト基、フェノール基、ビニル基、ポリエーテル基、フッ素含有アルキル基等で置換されたシリコーン化合物を用いることができる。また、後述するように他の樹脂に上記シリコーン化合物をグラフト重合させたものも使用可能である。
【0054】
これらのシリコーン化合物は2種以上を併用してもかまわない。本実施形態に係る搬送装置用摺動部材の摺動性能の観点から、シリコーン化合物の平均重合度は1,000〜10,000であることが好ましく、1,000〜8,000であることがより好ましい。平均重合度が1,000以上であることにより長期の摩擦摩耗性により優れる傾向にあり、10,000以下であることにより摩擦摩耗性が向上する傾向にある。この摩擦摩耗性能の向上は、上記好ましい範囲のシリコーン化合物であれば、樹脂中に均一に分散することができるためではないかと推測される。
【化2】
(kは平均重合度、k=1,000〜10,000である。)
【0055】
これらシリコーン化合物は、取り扱いの利便性から他の樹脂(例えばポリエチレンやポリプロピレン樹脂等のオレフィン系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリスチレン樹脂等の熱可塑性樹脂)と予め混練し、ペレット化されたマスターバッチを用いることや、他の樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂)に上記のシリコーン化合物をグラフトさせたもの等を用いることも可能である。ポリオレフィン系樹脂にシリコーン化合物がグラフトした樹脂は、特に限定されないが、具体的には、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン及びテトラフルオロエチレン−エチレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂(これらは酢酸ビニル等の少量のビニル系単量体を含有していてもよい。)に、上記式(3)に示す平均重合度が1,000〜10,000のポリジメチルシロキサンに代表される化合物をグラフト重合したものが挙げられる。このポリオレフィンにシリコーン化合物がグラフトした樹脂は特公昭52−36898号公報に示す様に、ポリオレフィンとシリコーン化合物を有機過酸化物、紫外線、ガンマー放射線及びイオウの存在下で特定の温度及び剪断条件下で溶融混練することによって製造する事ができる。また、同様の技術は特公昭56−1201号公報にも示されている。また、特公平6−43472号公報に提案されているような触媒を用いてシリコーン化合物にポリマーをグラフト共重合させる方法でもよい。
【0056】
また、これらシリコーン化合物は電気的接点不良を防止する上から、環状低分子モノマー及びオリゴマーの含有量を極力少なくしたものがより好ましい。
【0057】
(その他の成分) 本実施形態に係るポリアセタール樹脂組成物は、用途に応じて適当な添加剤を配合することができる。これにより、熱安定性に優れたポリアセタール樹脂組成物を得ることができる。好適な具体的としては、ポリアセタール樹脂100質量部に対し、酸化防止剤、ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体又は化合物、ギ酸捕捉剤、耐候(光)安定剤、離型剤の少なくとも1種を0.01〜10質量部含有してなるポリアセタール樹脂組成物を挙げることができる。
【0058】
酸化防止剤としてはヒンダートフェノール系酸化防止剤が好ましい。ヒンダートフェノール系酸化防止剤としては、特に限定されないが、具体的には、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、1,4−ブタンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。このなかでも、好ましくは、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]及びペンタエリスリトールテトラキス[メチレン‐3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンである。これらの酸化防止剤は1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体又は化合物としては、特に限定されないが、具体的には、ナイロン4−6、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン6−12、ナイロン12等のポリアミド樹脂;ナイロン6/6−6/6−10、ナイロン6/6−12等の共重合体;アクリルアミド及びその誘導体の共重合体;アクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとの共重合体;アミド化合物;アミノ置換トリアジン化合物;アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドの付加物;アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドの縮合物;尿素;尿素誘導体;ヒドラジン誘導体;イミダゾール化合物;イミド化合物等を挙げることができる。なお、アクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとの共重合体としては、例えばアクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとを金属アルコラートの存在下で重合して得られたポリ−β−アラニン共重合体を挙げることができる。
【0060】
上記アミド化合物の具体例としては、特に限定されないが、イソフタル酸ジアミド等の多価カルボン酸アミド、アントラニルアミドが挙げられる。アミノ置換トリアジン化合物の具体例としては、特に限定されないが、2,4−ジアミノ−sym−トリアジン、2,4,6−トリアミノ−sym−トリアジン、N−ブチルメラミン、N−フェニルメラミン、N,N−ジフェニルメラミン、N,N−ジアリルメラミン、ベンゾグアナミン(2,4−ジアミノ−6−フェニル−sym−トリアジン)、アセトグアナミン(2,4−ジアミノ−6−メチル−sym−トリアジン)、2,4−ジアミノ−6−ブチル−sym−トリアジン等である。アミノ置換トリアジン類化合物とホルムアルデヒドとの付加物の具体例としては、特に限定されないが、N−メチロールメラミン、N,N’−ジメチロールメラミン、N,N’,N”−トリメチロールメラミンを挙げることができる。アミノ置換トリアジン類化合物とホルムアルデヒドとの縮合物の具体例としては、特に限定されないが、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物を挙げることができる。尿素誘導体の具体例としては、特に限定されないが、N−置換尿素、尿素縮合体、エチレン尿素、ヒダントイン化合物、ウレイド化合物を挙げることができる。N−置換尿素の具体例としては、特に限定されないが、アルキル基等の置換基が置換したメチル尿素、アルキレンビス尿素、アリール置換尿素を挙げることができる。尿素縮合体の具体例としては、特に限定されないが、尿素とホルムアルデヒドの縮合体等が挙げられる。ヒダントイン化合物の具体例としては、特に限定されないが、ヒダントイン、5,5−ジメチルヒダントイン、5,5−ジフェニルヒダントイン等が挙げられる。ウレイド化合物の具体例としては、特に限定されないが、アラントイン等が挙げられる。ヒドラジン誘導体の具体例としては、特に限定されないが、ヒドラジド化合物を挙げることができる。ヒドラジド化合物の具体例としては、特に限定されないが、ジカルボン酸ジヒドラジドを挙げることができ、例えば、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スペリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボジヒドラジド等が挙げることができる。イミド化合物の具体例としては、特に限定されないが、スクシンイミド、グルタルイミド、フタルイミドを挙げることができる。これらのホルムアルデヒド反応性窒素原子を含む重合体又化合物は、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
ギ酸捕捉剤としては、特に限定されないが、具体的には、上記のアミノ置換トリアジン化合物やアミノ置換トリアジン類化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、例えばメラミン・ホルムアルデヒド縮合物等を挙げることができる。他のギ酸捕捉剤としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、カルボン酸塩又はアルコキシドが挙げられる。例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム若しくはバリウム等の水酸化物、上記金属の炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、ホウ酸塩、カルボン酸塩、さらには層状複水酸化物を挙げることができる。
【0062】
上記カルボン酸塩のカルボン酸としては、特に限定されないが、具体的には、10〜36個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸が好ましく、これらのカルボン酸は水酸基で置換されていてもよい。飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸塩の具体的な例としては、ジミリスチン酸カルシウム、ジパルミチン酸カルシウム、ジステアリン酸カルシウム、(ミリスチン酸−パルミチン酸)カルシウム、(ミリスチン酸−ステアリン酸)カルシウム、(パルミチン酸−ステアリン酸)カルシウムが挙げられる。この中でも好ましくは、ジパルミチン酸カルシウム、ジステアリン酸カルシウムである。
【0063】
層状複水酸化物としては例えば下記式(4)で表されるハイドロタルサイト類を挙げることができる。
〔(M
2+)
1-X(M
3+)
X(OH)
2〕
X+〔(A
n-)
x/n・mH
2O〕
X- (4)
〔式中、M
2+は2価金属、M
3+は3価金属、An
-はn価(nは1以上の整数)のアニオン表わし、Xは、0<X≦0.33の範囲にあり、mは正の数である。〕
【0064】
式(4)において、M
2+の例としては、Mg
2+、Mn
2+、Fe
2+、Co
2+、Ni
2+、Cu
2+、Zn
2+等が挙げられる。また、M
3+の例としては、Al
3+、Fe
3+、Cr
3+、Co
3+、In
3+等が挙げられる。さらに、A
n-の例としては、OH
-、F
-、Cl
-、Br
-、NO
3-、CO
32-、SO
42-、Fe(CN)
63-、CH
3COO
-、シュウ酸イオン、サリチル酸イオン等を挙げることができる。特に好ましい例としてはCO
32-、OH
-を挙げることができる。式(4)で表されるハイドロタルサイト類の具体例としては、Mg
0.75Al
0.25(OH)
2(CO
3)
0.125・0.5H
2Oで示される天然ハイドロタルサイト、Mg
4.5Al
2(OH)
13CO
3・3.5H
2O、Mg
4.3Al
2(OH)
12.6CO
3等で示される合成ハイドロタルサイトを挙げることができる。これらのギ酸捕捉剤は、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
本実施形態で言う耐候(光)安定剤は、ベンゾトリアゾール系及び蓚酸アニリド系紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤の中から選ばれる1種若しくは2種以上が好ましい。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、具体的には、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。このなかでも、好ましくは2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾールである。これらのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
蓚酸アリニド系紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、具体的には、2−エトキシ−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−5−t−ブチル−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−3’−ドデシルオキザリックアシッドビスアニリド等が挙げられる。蓚酸アリニド系紫外線吸収剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、特に限定されないが、具体的には、N,N’,N’’,N’’’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6,テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6,テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3―テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6,テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6,テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの縮合物、デカン2酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステルと1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、メチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールと6,6,6‘,6’,−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物等が挙げられる。このなかでも、好ましくはビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールと6,6,6‘,6’,−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物である。これらヒンダードアミン系光安定剤はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
さらに本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、必要に応じて、従来ポリアセタール樹脂で用いられる各種の添加剤(例えば、ポリアセタール樹脂で一般的に使用される結晶核剤、離型剤、無機フィラー、導電材、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー及び染顔料等)を用いることができる。
【0069】
〔ポリアセタール樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物の製造方法は一般的に使用されている溶融混練機を用いることができる。溶融混練機としてはニーダー、ロールミル、単軸押出機、二軸押出機、多軸押出機等上げることができる。このときの加工温度は180〜240℃であることが好ましく、品質や作業環境の保持のためには不活性ガスによる置換や一段及び多段ベントで脱気することが好ましい。
【0070】
〔搬送装置用摺動部材の製造方法〕
本実施形態の搬送装置用摺動部材は、ポリアセタール樹脂組成物を、押出成形及びアニーリング処理し、切削加工して得ることができる。
【0071】
(押出成形)
押出成形は、単軸押出機或いは二軸押出機に成形金型を接続させ、金型出口近傍に押出されてきた成形品を押さえるローラー等を組み合わせた装置を用いて、180〜220℃の温度条件で行なうことができる。
【0072】
(アニーリング処理)
アニーリング処理は、ギヤオーブン等の加熱処理招致用いて、100〜150℃で数時間〜100時間という条件で行なうことができる。この際、加熱温度と処理時間で結晶化度を制御することができる。
【0073】
(切削加工)
切削加工においては、特に限定されないが、具体的には、押出成形で成形した直径数mm〜数10cmφの丸棒や数mm〜数10cmの厚板をアニール処理(通常は100〜150℃で数時間〜100時間の加熱処理)を行った後、フライス盤等の切削加工機械を用いて切削することで行うことができる。これにより成形品が用いられる。
【0074】
本実施形態の搬送装置用摺動部材の体積固有抵抗値は、1×10
9〜1×10
13Ω・cmであることが好ましく、1×10
9〜1×10
12Ω・cmがより好ましい。体積固有抵抗値が、上記好ましい範囲であれば、帯電防止性により優れる傾向にある。なお、搬送装置用摺動部材の体積固有抵抗値は、実施例に記載の方法により測定することができる。体積固有抵抗値は、重合体(B)の種類及び含有量を制御することにより制御することができる。
【0075】
また、本実施形態の搬送装置用摺動部材の結晶化度は、70%以上であり、好ましくは71%以上、より好ましくは72%以上である。結晶化度が70%以上であることにより摩擦摩耗性能が良好となる。なお、搬送装置用摺動部材の結晶化度は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0076】
〔用途〕
本実施形態の搬送装置用摺動部材としては、特に限定されないが、例えば、回転軸受、コロ軸受、滑り軸受、搬送ローラー、プーリー、半導体搬送装置用の摺動部材等を挙げることができる。本実施形態の搬送装置用摺動部材は、帯電防止性、摩擦摩耗性能及び耐衝撃性に優れさらにポリアセタール樹脂の有する剛性、耐熱性、耐溶剤性、寸法安定性、耐クリープ特性等に優れており、導電性カーボンブラック、低分子の帯電防止剤を含有しないため、それらの成分のブリードや脱落による汚染を防止できる。そのため、特に、半導体搬送装置等の回転軸受け、搬送ローラー、プーリー等の半導体搬送装置用の摺動部材の用途に好適である。
【実施例】
【0077】
以下、実施例及び比較例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。尚、実施例及び比較例中の用語及び測定法は以下のとおりである。
【0078】
[使用成分の内容]
(A)ポリアセタール樹脂
a−1:熱媒を通すことができるジャッケット付きの2軸セルフクリーニングタイプの重合機(L/D=8)を80℃に調整し、トリオキサンを4kg/hr、コモノマーとして1,3−ジオキソランを42.8g/h(トリオキサン1molに対して、1.3mol%)、連鎖移動剤としてメチラールをトリオキサン1molに対して0.18×10
-3molを連続的に添加した。さらに重合触媒として三フッ化硼素ジ−n−ブチルエーテラートをトリオキサン1molに対して1.5×10
-5molで連続的に添加し重合を行なった。重合機より排出されたポリアセタールコポリマーをトリエチルアミン0.1%水溶液中に投入し重合触媒の失活を行なった。失活されたポリアセタールコポリマーを遠心分離機でろ過した後、ポリアセタールコポリマー100質量部に対して、第4級アンモニウム化合物として水酸化コリン蟻酸塩(トリエチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムフォルメート)を含有した水溶液1質量部を添加して、均一に混合した後120℃で乾燥した。水酸化コリン蟻酸塩の添加量は、添加する水酸化コリン蟻酸塩を含有した水溶液中の水酸化コリン蟻酸塩の濃度を調整することにより行い、窒素量に換算して20質量ppmとした。乾燥後のポリアセタールコポリマーをベント付き2軸スクリュー式押出機に供給し、押出機中の溶融しているポリアセタールコポリマー100質量部に対して水を0.5質量部添加し、押出機設定温度200℃、押出機における滞留時間7分で不安定末端部分の分解除去を行なった。不安定末端部分の分解されたポリアセタールコポリマーは、ベント真空度20Torrの条件下に脱揮され、押出機ダイス部よりストランドとして押出され、ペレタイズされた。このようにして得られたポリアセタール樹脂(a−1)の融点は169.5℃であった。
【0079】
a−2:ポリアセタール樹脂を重合する際、1,3−ジオキソランの連続添加量を128.3g/h(トリオキサン1molに対して、3.9mol%)とした以外はポリアセタール樹脂(a−1)の製造と同様の処理を行いポリアセタール樹脂(a−2)を得た。このようにして得られたポリアセタール樹脂(a−2)の融点は164.5であった。
【0080】
(B)イソシアネート化合物とポリアルキレンオキサイドとの重合体、他
b−1:重量平均分子量2000のポリエチレングリコール89.0質量部とジフェニルメタンジイソシアネート11.0質量部を池貝鉄工(株)製PCM−30二軸押出機(30mmφ、L/D=32)を用いて、シリンダー温度190℃で5分間溶融混練を行った。得られた樹脂をゲルパーメーションクロマトグラフ(クロロホルム溶媒)を用いて測定したポリスチレン換算重量平均分子量は200,000で、体積固有抵抗値は1×10
9Ω・cmであった。
【0081】
b−2:重量平均分子量2000のポリエチレングリコール68.3質量部と重量平均分子量1000のポリプロピレングリコール18.5質量部及びジフェニルメタンジイソシアネート13.2質量部の割合で調合し、池貝鉄工(株)製PCM−30二軸押出機(30mmφ、L/D=32)を用いて、シリンダー温度190℃で5分間溶融混練を行った。得られた樹脂をゲルパーメーションクロマトグラフ(クロロホルム溶媒)を用いて測定したポリスチレン換算重量平均分子量は200,000で、体積固有抵抗値は5×10
9Ω・cmであった。
【0082】
b−3:重量平均分子量2000のポリエチレングリコール62.7質量部、エチレングリコール5.8質量部及びジフェニルメタンジイソシアネート31.5質量部を池貝鉄工(株)製PCM−30二軸押出機(30mmφ、L/D=32)を用いて、シリンダー温度190℃で5分間溶融混練を行った。得られた樹脂をゲルパーメーションクロマトグラフ(クロロホルム溶媒)を用いて測定したポリスチレン換算重量平均分子量は180,000で、体積固有抵抗値は5×10
9Ω・cmであった。
【0083】
・熱可塑性ポリウレタン樹脂
b−4:日本ポリウレタン株式会社製、ミラクトランP22M(比較例)、体積固有抵抗値は1×10
14Ω・cm。
【0084】
・ポリエーテルエステルアミド樹脂
b−5:三洋化成工業株式会社製、ペレスタットNC6321NC(比較例)、体積固有抵抗値は1×10
9Ω・cm。
【0085】
(C)タルク、他
c−1:日本タルク株式会社製MS(表面未処理) 平均粒子径 14.5μm
c−2:日本タルク株式会社製MS(表面未処理) 平均粒子径 18.8μm
c−3:日本タルク株式会社製MS(表面未処理) 平均粒子径 11.1μm
c−4:日本タルク株式会社製K−1(表面未処理) 平均粒子径 8.2μm
c−5:日本タルク株式会社製P−3(表面未処理) 平均粒子径 5.2μm
c−6:日本タルク株式会社製SG−95(表面未処理) 平均粒子径 2.4μm
c−7:日本タルク株式会社製MS−KY(表面未処理) 平均粒子径 24.5μm
【0086】
・窒化硼素
c−8:電気化学工業社製デンカボロンナイトライド HGP(製品名)
平均粒子径 5.0μm
【0087】
(D)潤滑剤
d−1:ミリスチン酸セチルエステル
d−2:エチレングリコールジステアレート
d−3:ポリエチレングリコールモノラウレート(エチレンオキサイド重合度20)
【0088】
[評価方法]
1.メルトフローレート:
実施例、比較例の組成物を、ISO 1133に基づいて測定した。
【0089】
2.機械的特性評価
1)引張強度、引張弾性率:
ISOダンベル試験片を用い、ISO 527に基づき、引張強度、引張弾性率を測定した。
【0090】
2)シャルピー衝撃強度:
ISOダンベル試験片を用いISO 179に基づき、シャルピー衝撃強度を測定した。
【0091】
3.繰り返し衝撃強度:
ISOダンベル試験片を東洋精機(株)製繰り返し衝撃試験機 商品名「AT繰り返し衝撃試験機」で、荷重260g、落下高さ20mm、落下速度35回/分の条件で繰り返し衝撃試験を行い、破断するまでの回数を測定した。
【0092】
4.摩擦摩耗性能(摩擦係数・摩耗量):
ISOダンベル試験片を、往復動摩擦摩耗試験機(東洋精密(株)製AFT−15MS型)を用いて荷重4kg、線速度30mm/sec、往復距離20mm及び環境温度23℃の条件で30,000回往復し、摩擦係数と摩耗量の測定を行った。摩擦摩耗性能測定の相手材料としては、SUS304試験片(直径5mmの球)を用いた。
【0093】
5.体積固有抵抗値:
(B)成分の重合体で作製した試験片、及び実施例、比較例で作製した体積固有抵抗値測定用試験片(100×100×2mm)をそれぞれ用い、デジタル超抵抗計/微小電流計(アドバンテスト製、R8340/R12704(製品名))により、23℃、湿度50%RHの雰囲気下でASTM D257に準拠し測定を行った。
【0094】
6.結晶化度:
ISOダンベル試験片の中央部から、10mgの樹脂を削り出し、示唆熱量計(パーキンエルマー社製、DSC−80000)を用い、5℃/分の速度にて200℃まで昇温する過程で発生する発熱ピークから融解熱ΔH(J/g)を求め、これを文献(‘61Jounal of Research:Hoffman, Lauritzen)に記載された結晶化度100%の値(ΔHf=222J/g)から以下の式で計算して求めた。
結晶化度(%)=ΔH/ΔHf×100×組成物中のポリアセタールの重量比
【0095】
〔実施例1〕
a−1成分100質量部、b−1成分3質量部、c−1成分0.01質量部に、安定剤としてトリエチレングリコール−ビス−〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕0.3質量部、及びステアリン酸カルシウム0.05質量部をヘンシェルミキサーで均一にブレンドした後、200℃に設定されたL/D=30の二軸押出機を用い、ベント口より減圧脱気下で混練押出を行った。押出された樹脂はストランドカッターでペレットとした。このペレットを用いて、以下の条件で射出成形品、押出成形品を作製し、評価を行った。結果を表1に示した。
【0096】
1)射出成形
得られたペレットを80℃で3時間乾燥した後、シリンダー温度205℃に設定された5オンス成形機(東芝機械(株)製、商品名「IS−100GN」)を用いて、金型温度90℃、射出時間35秒、冷却時間15秒の条件で物性評価用ISOダンベル試験片と体積固有抵抗値測定用試験片を成形した。この試験片を用いて上記の試験を行った。
【0097】
2)押出成形
得られたペレットを80℃で3時間乾燥した後、シリンダー温度180℃に設定されたL/D=25の30mmφ単軸押出機を用いて、押出しを行い、押出し機の先端部に設置された、丸棒成形用金型(長さ0.5m、内径55mmφ、温度20℃)に流し込み、樹脂圧15kg/cm
2の条件で丸棒状の成形品を得た。この55mmφの丸棒を140℃のギヤオーブンで24時間アニーリングを行った。このアニーリング後の丸棒をフライス盤で縦方向で切削加工して、ISOダンベル試験片と体積固有抵抗値測定用試験片を成形した。この試験片を用いて上記の試験を行った。
【0098】
〔比較例1〕
押出成形後のアニール温度と時間を100℃、5時間としたこと以外は、実施例1と同様の処理をして、比較例1のISOダンベル試験片と体積固有抵抗値測定用試験片成形アニール後切削試験片を作製した。これら試験片について、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示した。
【0099】
〔比較例2〕
押出成形後のアニール温度と時間を120℃、5時間としたこと以外は、実施例1と同様の処理をして、比較例2のISOダンベル試験片と体積固有抵抗値測定用試験片を作製した。これら試験片について、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示した。
【0100】
〔実施例2〜5〕
c−1成分を、表1に示したc−2〜c−5成分に変更したこと以外は、実施例1と同様の処理をして、実施例2〜5の、ISOダンベル試験片と体積固有抵抗値測定用試験片を作製した。これら試験片について、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示した。
【0101】
〔比較例3〜5〕
c−1成分を、表1に示したc−6〜c−8成分と含有量に変更したこと以外は、実施例1と同様の処理をして、比較例3〜5の、ISOダンベル試験片と体積固有抵抗値測定用試験片を作製した。これら試験片について、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示した。
【0102】
〔比較例6〕
c−1成分を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様の処理をして、比較例6のISOダンベル試験片と体積固有抵抗値測定用試験片を作製した。これら試験片について、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示した。
【0103】
〔比較例7,8〕
c−1成分を、表1に示した含有量に変更したこと以外は、実施例1と同様の処理をして、比較例7,8の、ISOダンベル試験片と体積固有抵抗値測定用試験片を作製した。これら試験片について、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示した。
【0104】
〔実施例6〜8、比較例9〕
b−1成分を、表2に示した含有量に変更したこと以外は、実施例1と同様の処理をして、実施例6〜8、比較例9の、ISOダンベル試験片と体積固有抵抗値測定用試験片を作製した。これら試験片について、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示した。
【0105】
〔実施例9,10、比較例10、11〕
b−1成分を、表2に示したb−2〜b−5成分に変更したこと以外は実施例1と同様の処理をして、実施例9,10、比較例10、11の、ISOダンベル試験片と体積固有抵抗値測定用試験片を作製した。これら試験片について、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示した。
【0106】
〔実施例11〕
a−1成分100質量部、b−1成分3質量部、c−1成分0.01質量部、d−1成分0.5質量部に、安定剤としてトリエチレングリコール−ビス−〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕0.3質量部、ステアリン酸カルシウム0.05質量部をヘンシェルミキサーで均一にブレンドした後、200℃に設定されたL/D=30の二軸押出機を用い、ベント口より減圧脱気下で混練押出を行った。押出された樹脂はストランドカッターでペレットとした。このペレットを用いて、射出成形品、押出成形品を実施例1に記載した方法で作製し、評価を行った。結果を表3に示した。
【0107】
〔実施例12〜13〕
d−1成分を、表3に示したd−2〜3成分に変更したこと以外は、実施例11と同様の処理をして、実施例12〜13のISOダンベル試験片と体積固有抵抗値測定用試験片を作製した。これら試験片について、実施例1と同様に評価を行った。結果を表3に示した。
【0108】
〔実施例14〕
a−1成分を、表3に示したa−2成分に変更したこと以外は、実施例1と同様の処理をして、実施例14のISOダンベル試験片と体積固有抵抗値測定用試験片を作製した。これら試験片について、実施例1と同様に評価を行った。結果を表3に示した。
【0109】
〔実施例15〜18〕
c−1成分を、表3に示したc−2〜c−5成分に変更したこと以外は、実施例14と同様の処理をして、実施例15〜18の、ISOダンベル試験片と体積固有抵抗値測定用試験片を作製した。これら試験片について、実施例1と同様に評価を行った。結果を表3に示した。
【0110】
〔比較例12,13〕
c−1成分を、表3に示したc−6、c−7成分に変更したこと以外は、実施例14と同様の処理をして、比較例12,13の、ISOダンベル試験片と体積固有抵抗値測定用試験片を作製した。これら試験片について、実施例1と同様に評価を行った。結果を表3に示した。
【0111】
【表1】
【0112】
【表2】
【0113】
【表3】
【0114】
本発明の押出成形、及びアニール処理後切削加工することにより得られる搬送装置用摺動部材は、ポリアセタール樹脂と、イソシアネート化合物とポリアルキレンオキサイドとの重合体と、特定の粒子径のタルクと、潤滑剤とからなり、通常の射出成形品と比較して、優れた摩擦摩耗性と繰返し衝撃性を有するものである。
【0115】
(実施例1〜5の射出成形品と成形、及びアニール後切削試験片との比較)
この高性能の範囲はタルク成分の特定の粒子径範囲と添加量範囲にあることを実施例1〜5、比較例1〜6で示した。また、イソシアネート化合物とポリアルキレンオキサイドとの重合体の添加量範囲、潤滑剤成分の添加による摩擦摩耗性の更なる改良効果及びポリアセタールのコモノマーの影響等について、実施例6〜18、比較例8〜11に示した。