(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記昆虫誘引剤が、酢類、酒類、果汁、乳酸菌飲料、酵母エキス、及び糖類からなる群より選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水性誘引殺虫組成物。
前記吸水性担体を収容した容器と、当該容器の開口部を覆う蓋部とを備え、当該蓋部には前記容器に連通する複数の小孔が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の殺虫用具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、高い殺虫効力を有するクロチアニジンを家庭用殺虫剤分野、特に誘引性ベイト剤へ適用する場合、水性の殺虫組成物であることが好ましい。そこで本発明は、殺虫成分として高い濃度のクロチアニジンを含有する水性誘引殺虫組成物を提供すると共に、当該組成物を使用した殺虫用具及び殺虫方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、クロチアニジン、N−メチルピロリドン、昆虫誘引剤、及び水を含有し、
組成物中でクロチアニジンが溶解しており、組成物中におけるクロチアニジンの含有率が0.05〜0.5重量%であり、水の含有率が50重量%以上であることを特徴とする水性誘引殺虫組成物である。
【0007】
本発明は、殺虫成分として所定濃度のクロチアニジンを含有する水性かつ昆虫誘引性の殺虫組成物(水性誘引殺虫組成物)に係るものである。本発明の水性誘引殺虫組成物は、水以外の溶媒としてN−メチルピロリドンを含有しており、水単独では溶解できない濃度のクロチアニジンが溶解している。
本発明の水性誘引殺虫組成物は、殺虫成分としてクロチアニジンを含有していることから、高い殺虫効果を示し、また、水以外の溶媒としてN−メチルピロリドンを使用しているので、十分な殺虫効果が発現するクロチアニジン濃度を得るのにも溶媒の添加量が少量で済む。そのため、昆虫誘引剤による誘引作用が損なわれず、高い害虫駆除効果を得ることができる。さらに、本発明の水性誘引殺虫組成物は水性であることから、臭気の点や、引火性が低くなること等によって家庭用製剤に適した組成物となる。本発明の水性誘引殺虫組成物は、例えば、ハエやコバエ等の飛翔害虫を駆除するためのベイト剤として有用である。
【0008】
請求項1に記載の水性誘引殺虫組成物において、組成物中におけるN−メチルピロリドンの含有率が0.5〜30重量%である構成が好ましい(請求項2)。
【0009】
請求項1又は2に記載の水性誘引殺虫組成物において、前記昆虫誘引剤が、酢類、酒類、果汁、乳酸菌飲料、酵母エキス、及び糖類からなる群より選ばれた少なくとも1種である構成が好ましい(請求項3)。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の水性誘引殺虫組成物を保持させた吸水性担体を有することを特徴とする殺虫用具である。
【0011】
本発明は殺虫用具に係るものであり、上記した水性誘引殺虫組成物を保持させた吸水性担体を有するものである。本発明の殺虫用具によれば、クロチアニジンを含有する水性誘引殺虫組成物をより効率的に害虫に摂取させることができる。
【0012】
請求項4に記載の殺虫用具において、前記吸水性担体を収容した容器と、当該容器の開口部を覆う蓋部とを備え、当該蓋部には前記容器に連通する複数の小孔が設けられている構成が好ましい(請求項5)。
【0013】
請求項4又は5に記載の殺虫用具において、前記吸水性担体は、スポンジ又は不織布からなる構成が好ましい(請求項6)。他の吸水性担体の例としては、ろ紙、フェルト、レーヨンや綿繊維等の編物、織物等を挙げることができる。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の水性誘引殺虫組成物を害虫に摂取させることを特徴とする殺虫方法である。
【0015】
本発明は殺虫方法に係るものであり、上記した水性誘引殺虫組成物を害虫に摂取させる。本発明の殺虫方法は、殺虫成分としてクロチアニジンを用いることで、高い殺虫効果を得られる方法である。また、水性誘引殺虫組成物の水以外の溶媒としてN−メチルピロリドンを使用することから、溶媒添加量が少量で済み、そのため、昆虫誘引剤による誘引作用が損なわれず、害虫の駆除を効率的に行うことができる。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項4〜6のいずれかに記載の殺虫用具を用いることを特徴とする請求項7に記載の殺虫方法である。
【0017】
かかる構成により、より効率的に害虫を駆除することができる。
【0018】
請求項7又は8に記載の殺虫方法において、前記害虫が、コバエ類である構成が好ましい(請求項9)。
【発明の効果】
【0019】
本発明の水性誘引殺虫組成物では、殺虫成分としてクロチアニジンを用いることで、高い殺虫効力を有する。また、水性誘引殺虫組成物の水以外の溶媒としてN−メチルピロリドンを使用することから、溶媒添加量が少量で済み、そのため、昆虫誘引剤による誘引作用が損なわれず、害虫の駆除を効率的に行うことができる。さらに、水性であるので家庭用製剤に適している。
【0020】
本発明の殺虫方法についても同様であり、殺虫成分としてクロチアニジンを用いるので、高い殺虫効果が得られる。また、昆虫誘引剤による誘引作用が損なわれず、害虫の駆除を効率的に行うことができる。
【0021】
本発明の殺虫用具によれば、クロチアニジンを含有する水性誘引殺虫組成物をより効率的に害虫に摂取させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の水性誘引殺虫組成物は、水を主たる溶媒とするものであり、殺虫成分としてクロチアニジン、水以外の溶媒としてN−メチルピロリドン、及び昆虫誘引剤を含有する。
【0024】
本発明の水性誘引殺虫組成物におけるクロチアニジンの含量(組成物中における含有率。以下同じ。)は、0.05〜0.5重量%であり、より好ましくは0.1〜0.3重量%である。なお、クロチアニジンの含量が0.5重量%を超えると、溶解に必要なN−メチルピロリドンの含量が多くなり、水の含量を50重量%以上にすることが難しくなる。
【0025】
本発明の水性誘引殺虫組成物におけるN−メチルピロリドンの含量は、クロチアニジンの含量に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは0.5〜30重量%、より好ましくは1〜15%である。
また、クロチアニジンとN−メチルピロリドンの配合重量比については、通常、クロチアニジン1に対してN−メチルピロリドンが10〜60倍程度である。
【0026】
なお、クロチアニジンを溶解させるための溶媒として、低級アルコール類やアセトンを採用することも考えられる。しかし、後述の実施例で示すように、低級アルコール類やアセトンを用いると、昆虫誘引剤の効果が阻害される。本発明におけるN−メチルピロリドンの使用は、昆虫誘引剤の効果を阻害しない点で特に優れている。
【0027】
本発明の水性誘引殺虫組成物における水の含量は50重量%以上である。昆虫誘引性を高めるためには、昆虫誘引剤中の水を含めた水分含量はできるだけ高いことが好ましく、組成物の溶状が安定である限りにおいて、70重量%以上であることが好ましい。
【0028】
本発明の水性誘引殺虫組成物に含まれる昆虫誘引剤としては特に限定はなく、液状、固体状のいずれの昆虫誘引剤であってもよい。例えば、酢類、酒類、果汁、乳酸菌飲料、酵母エキス、糖類などを用いることができる。これらの昆虫誘引剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
酢類の例としては、醸造酢、穀物酢、米酢、黒酢、りんご酢、レモン酢、ワインビネガー、いも酢、ゴマ酢、梅酢などが挙げられる。これらの酢類は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。用いる酢類の酸度としては特に限定はないが、例えば4〜10%のものを用いることができる。また、組成物中における酸含量が、例えば0.2〜4%程度となるように、酢類を添加することができる。
【0030】
酒類の例としては、清酒、ワイン、梅酒、ウイスキー、焼酎、ビール、みりん等が挙げられる。これらの酒類は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。酒類の添加量としては、例えば、組成物中におけるエタノール濃度が0.1〜15重量%となるように添加することができる。
【0031】
果汁の例としては、ブドウ、パイナップル、メロン、スイカ、イチゴ、リンゴ、モモ、ミカン、マンゴー、グァバなどの果汁が挙げられる。これらの果汁は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、これらの果汁は、果物から直接搾取したものでもよいし、濃縮還元した加工品でもよい。果汁の添加量としては、例えば、組成物中における果汁の含有率(配合率)が5〜60重量%程度とすることができる。
【0032】
乳酸菌飲料の例としては、カルピス(商品名、カルピス株式会社)、のむヨーグルト(商品名、株式会社明治)、ヤクルト(商品名、株式会社ヤクルト本社)などが挙げられる。これらの乳酸菌飲料は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。乳酸菌飲料の添加量としては、例えば、組成物中における乳酸菌飲料の含有率(配合率)が5〜60重量%程度とすることができる。
【0033】
糖類の例としては、ショ糖、ブドウ糖、果糖、デキストリン、ソルビトール、黒糖、蜂蜜などが挙げられる。これらの糖類は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。糖類の添加量としては、例えば、組成物中における含有率が0.5〜10%程度とすることができる。
【0034】
酵母エキスの例としては、水に溶解しやすいものが好ましく、例えばミーストAP−1122(商品名、アサヒフードアンドヘルスケア株式会社)、サンライク酵母0409P(商品名、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)などが挙げられる。これらの酵母エキスは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。酵母エキスの添加量としては、例えば、組成物中における含有率が0.5〜10%程度とすることができる。
【0035】
その他の昆虫誘引剤としては、フルーツ系香料、発酵食品系香料等の各種香料;発酵食品;酢酸、プロピオン酸等の各種有機酸;乳製品;酒粕、等が挙げられる。
【0036】
なお、昆虫誘引剤として添加された酢類、酒類、果汁、乳酸菌飲料等に含まれている水分は、組成物に持ち込まれ、組成物全体に占める水の一部となる。
【0037】
本発明の水性誘引殺虫組成物には、さらに他の成分を含有させてもよい。他の成分の例としては、安定化剤、防腐剤、着色料、誤飲防止剤、水分保持剤等が挙げられる。
安定化剤の例としては、アスコルビン酸等の酸化防止剤が挙げられる。
防腐剤の例としては、ソルビン酸、ソルビン酸塩、パラヒドロキシ安息香酸エステル類、チアベンダゾール、等が挙げられる。
着色料としては、カラメル色素、クチナシ色素、アントシアニン色素、紅花色素、フラボノイド色素、赤色2号、赤色3号、黄色4号、黄色5号、等が挙げられる。
誤飲防止剤としては、安息香酸デナトニウム、等が挙げられる。
水分保持剤としてはグリセリン、プロピレングリコール、等が挙げられる。
【0038】
本発明の水性誘引殺虫組成物は、例えば、以下のようにして製造することができる。まず、所定量のクロチアニジンをN−メチルピロリドンに溶解する。この溶解液に昆虫誘引剤を添加し、必要に応じて他の成分も添加し、さらに水を加えて攪拌、混和する。最終的に、組成物中におけるクロチアニジンの含有率が0.05〜0.5重量%、水の含有率が50重量%以上となるように、水の添加量を調節する。このようにして、本発明の水性誘引殺虫組成物を製造することができる。
【0039】
本発明の殺虫用具は、上記した水性誘引殺虫組成物を保持させた吸水性担体を有するものである。ここで、本発明の殺虫用具の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0040】
図1〜3に示す本発明の一実施形態に係る殺虫用具1は、コバエ類を主たる殺虫対象とした殺虫用具であり、吸水性担体2と、容器3と、蓋(蓋部)5とで構成されている。
容器3は有底かつ円筒状であり、皿状あるいは桶状の形状を有する。
容器3の底には吸水性担体2が載置されている。
図4に示すように、吸水性担体2は円盤状であり、スポンジや不織布等で構成されている。吸水性担体2には本発明の水性誘引殺虫組成物が含漬し、保持されている。
容器3の開口部には蓋(蓋部)5が装着され、容器3を上方から覆っている。蓋5は正面視が長方形又は台形の円筒状部材であり、皿あるいは桶を逆さにしたような形状である。
図3に示すように、蓋5の天面6には複数の小孔7が設けられている。そして、小孔7を介して容器3の内外が連通している。小孔7はコバエ類が通過可能なサイズを有している。
【0041】
殺虫用具1を使用する場合は、コバエ類を駆除したい場所に殺虫用具1を置く。コバエは、水性誘引殺虫組成物に含まれる昆虫誘引剤の作用により、蓋5の小孔7から容器3の内部に侵入し、吸水性担体2に留まる。そして、吸水性担体2に保持された水性誘引殺虫組成物を摂取する(吸う)。これにより、コバエはその場で致死する。
【0042】
一方、
図5に示す他の実施形態に係る殺虫用具11は、コバエ類を主たる殺虫対象とした殺虫用具であり、吸水性担体12と、容器13と、死骸受け部15を有する。容器13には本発明の水性誘引殺虫組成物16が収容されている。
【0043】
容器13は細口瓶様の透明容器である。
吸水性担体12は紐状体であり、一方の端部17が容器13内の水性誘引殺虫組成物16に浸漬している。吸水性担体12の他方の端部18は、容器13の口部を介して外に露出している。容器13内の水性誘引殺虫組成物16は、端部17から吸水性担体12に吸い上げられて端部18に至っている。すなわち、容器13から吸水性担体12に水性誘引殺虫組成物が供給され、吸水性担体12の全体に水性誘引殺虫組成物が保持されている。吸水性担体12は、例えば、綿糸編物や不織布で構成されている。
死骸受け部15は上部が開放した筒状かつ有底の部材からなり、吸水性担体12の端部18を囲むように設置されている。死骸受け部15と端部18とは隙間なく接している。
【0044】
殺虫用具11を使用する場合は、コバエ類を駆除したい場所に殺虫用具11を置く。コバエは、水性誘引殺虫組成物16に含まれる昆虫誘引剤の作用により、死骸受け部15の上部から吸水性担体12の端部18に近づき、端部18上に留まる。そして、端部18に保持された水性誘引殺虫組成物16を摂取する(吸う)。これにより、コバエはその場で致死し、死骸が死骸受け部15に溜まる。ここで、死骸受け部15と端部18とは隙間なく接しているので、コバエの死骸は全て死骸受け部15の底部に溜まる。コバエの死骸が死骸受け部15からこぼれ落ちることはない。
【0045】
図1〜5に例示した以外に、本発明の殺虫用具は、水性誘引殺虫組成物を含漬させた吸水性担体を皿状の容器に載置するだけの構成を有するものでもよい。
【0046】
本発明の水性誘引殺虫組成物、殺虫用具、及び殺虫方法における対象害虫としては、キイロショウジョウバエ、クロショウジョウバエ等のショウジョウバエ科に属するコバエ類、ノミバエ科、キノコバエ科に属するコバエ類、が挙げられる。その他、イエバエ科やクロバエ科に属するハエ類が挙げられる。
【実施例】
【0047】
以下に、実施例をもって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0048】
〔実施例1〕
クロチアニジン(住友化学株式会社製、以下同じ)0.1重量部をN−メチルピロリドン(関東化学株式会社製、以下同じ)5重量部に溶解し、溶液を得た。この溶液にグリセリン(関東化学株式会社製、以下同じ)10重量部を加えて攪拌し、均一な溶液を得た。この溶液に70%ソルビトール溶液(関東化学株式会社製、以下同じ)10重量部、みりん(商品名:タカラ本みりん、宝酒造株式会社製、以下同じ)10重量部、リンゴ酢(酸度5%、マルカン酢株式会社製、以下同じ)20重量部、ゴマ酢(酸度5%、マルカン酢株式会社製)10重量部、及び水34.9重量部を添加し、攪拌して混和した。これにより、本発明組成物(1)を得た。
本発明組成物(1)15gを直径5.5cm、厚さ8mmの円盤状パルプ製不織布に含漬させ、内径6cm、深さ2.5cmの樹脂性円形カップ容器に収容し、本発明殺虫用具(1)とした。
【0049】
〔実施例2〕
クロチアニジン0.1重量部をN−メチルピロリドン5重量部に溶解し、溶液を得た。この溶液にグリセリン10重量部を加えて攪拌し、均一な溶液を得た。この溶液に70%ソルビトール溶液10重量部、みりん20重量部、リンゴ酢30重量部、酵母エキス(商品名:ミーストAP−1122、アサヒフードアンドヘルスケア株式会社製)4重量部、及び水30.9重量部を添加し、攪拌して混和した。これにより、本発明組成物(2)を得た。
本発明組成物(1)15gを直径5.5cm、厚さ8mmの円盤状パルプ製不織布に含漬させ、内径6cm、深さ2.5cmの樹脂性円形カップ容器に収容し、本発明殺虫用具(2)とした。
【0050】
〔実施例3〕
クロチアニジン0.05重量部をN−メチルピロリドン0.5重量部に溶解し、溶液を得た。この溶液に、リンゴ酢30重量部、及び水69.45重量部を添加し、攪拌して混和した。これにより、本発明組成物(3)を得た。
本発明組成物(3)12gを直径5.5cm、厚さ1cmの円盤状ウレタンスポンジに含漬させ、内径6cm、深さ2.5cmの樹脂性円形カップ容器に収容し、本発明殺虫用具(3)とした。
【0051】
〔実施例4〕
クロチアニジン0.1重量部をN−メチルピロリドン3重量部に溶解し、溶液を得た。この溶液に、リンゴ酢40重量部、及び水56.9重量部を添加し、攪拌して混和した。これにより、本発明組成物(4)を得た。
本発明組成物(4)12gを直径5.5cm、厚さ1cmの円盤状ウレタンスポンジに含漬させ、内径6cm、深さ2.5cmの樹脂性円形カップ容器に収容し、本発明殺虫用具(4)とした。
【0052】
〔実施例5〕
クロチアニジン0.2重量部をN−メチルピロリドン20重量部に溶解し、溶液を得た。この溶液に、ワイン(商品名:彩食健美 赤、サントリー株式会社製)20部、リンゴ酢40重量部、及び水19.8重量部を添加し、攪拌して混和した。これにより、本発明組成物(5)を得た。
本発明組成物(5)12gを直径5.5cm、厚さ1cmの円盤状ウレタンスポンジに含漬させ、内径6cm、深さ2.5cmの樹脂性円形カップ容器に収容し、本発明殺虫用具(5)とした。
【0053】
〔実施例6〕
クロチアニジン0.3重量部をN−メチルピロリドン25重量部に溶解し、溶液を得た。この溶液に、乳酸菌飲料(商品名:カルピスぶどう、カルピス株式会社製)10部、リンゴ酢40重量部、及び水24.7重量部を添加し、攪拌して混和した。これにより、本発明組成物(6)を得た。
本発明組成物(6)12gを直径5.5cm、厚さ1cmの円盤状ウレタンスポンジに含漬させ、内径6cm、深さ2.5cmの樹脂性円形カップ容器に収容し、本発明殺虫用具(6)とした。
【0054】
〔比較例1〕
本比較例では、N−メチルピロリドンに代えてエタノールを使用した。
クロチアニジン0.05重量部をエタノール30重量部に溶解し、溶液を得た。なお、エタノールに対するクロチアニジンの溶解度は高くなく、最終的にクロチアニジン0.05%含水溶液を得るには、30重量部程度のエタノール添加量が必要であった。この溶液に、リンゴ酢30重量部、及び水39.95重量部を添加し、攪拌して混和した。これにより、比較組成物(1)を得た。
比較組成物(1)12gを直径5.5cm、厚さ1cmの円盤状ウレタンスポンジに含漬させ、内径6cm、深さ2.5cmの樹脂性円形カップ容器に収容し、比較殺虫用具(1)とした。
【0055】
〔比較例2〕
本比較例では、N−メチルピロリドンに代えてアセトンを使用した。
クロチアニジン0.05重量部をアセトン30重量部に溶解し、溶液を得た。なお、アセトンに対するクロチアニジンの溶解度は高くなく、最終的にクロチアニジン0.05%含水溶液を得るには、30重量部程度のアセトン添加量が必要であった。この溶液に、リンゴ酢30重量部、及び水39.95重量部を添加し、攪拌して混和した。これにより、比較組成物(2)を得た。
比較組成物(2)12gを直径5.5cm、厚さ1cmの円盤状ウレタンスポンジに含漬させ、内径6cm、深さ2.5cmの樹脂性円形カップ容器に収容し、比較殺虫用具(2)とした。
【0056】
〔比較例3〕
本比較例では、N−メチルピロリドンに代えてエタノールを使用した。
クロチアニジン0.1重量部をエタノール50重量部に溶解し、溶液を得た。なお、エタノールに対するクロチアニジンの溶解度は高くなく、最終的にクロチアニジン0.1%含水溶液を得るには、50重量部程度のエタノール添加量が必要であった。この溶液に、リンゴ酢40重量部、及び水9.9重量部を添加し、攪拌して混和した。これにより、比較組成物(3)を得た。
比較組成物(3)12gを直径5.5cm、厚さ1cmの円盤状ウレタンスポンジに含漬させ、内径6cm、深さ2.5cmの樹脂性円形カップ容器に収容し、比較殺虫用具(3)とした。
【0057】
〔比較例4〕
本比較例では、N−メチルピロリドンに代えてアセトンを使用した。
クロチアニジン0.1重量部をアセトン30重量部に溶解し、溶液を得た。なお、アセトンに対するクロチアニジンの溶解度は高くなく、最終的にクロチアニジン0.1%含水溶液を得るには、30重量部程度のアセトン添加量が必要であった。この溶液に、リンゴ酢40重量部、及び水9.9重量部を添加し、攪拌して混和した。これにより、比較組成物(4)を得た。
比較組成物(4)12gを直径5.5mm、厚さ1cmの円盤状ウレタンスポンジに含漬させ、内径6cm、深さ2.5cmの樹脂性円形カップ容器に収容し、比較殺虫用具(4)とした。
【0058】
〔試験例1〕
100メッシュナイロンゴースで6面を覆った一辺50cmの立方体のケージを準備した。このケージの床面の四隅のうちの3ヶ所に、本発明殺虫用具(3)、比較殺虫用具(1)、及び比較殺虫用具(2)を1個ずつ設置した。キイロショウジョウバエ約120頭をケージ内に放ち、20時間後に各殺虫用具に誘引されて致死した虫数を数えた。放った虫数に対する致死した虫数の割合(トラップ率)を算出した。試験は2回行い、トラップ率の平均値を求めた。結果を表1に示す。
すなわち、本発明殺虫用具(3)の場合は、87.9%の高いトラップ率が得られた。一方、比較殺虫用具(1)と比較殺虫用具(2)の場合は、それぞれ2.6%と4.4%の低いトラップ率しか得られなかった。これは、クロチアニジンを完全に溶解させるために溶媒として用いたエタノールとアセトンの含量が高いため、リンゴ酢の昆虫誘引作用を阻害し、コバエが近寄って来なかったためと考えられた。このように、クロチアニジンを溶解させるための溶媒としてN−メチルピロリドンを用いることにより、高い昆虫誘引性を有しクロチアニジンを殺虫成分とする水性誘引殺虫組成物が得られることが示された。
【0059】
【表1】
【0060】
〔試験例2〕
100メッシュナイロンゴースで6面を覆った一辺50cmの立方体のケージを準備した。このケージの床面の四隅のうちの3ヶ所に、本発明殺虫用具(4)、比較殺虫用具(3)、及び比較殺虫用具(4)を1個ずつ設置した。キイロショウジョウバエ約130頭をケージ内に放ち、20時間後に各殺虫用具に誘引されて致死した虫数を数えた。放った虫数に対する致死した虫数の割合(トラップ率)を算出した。試験は2回行い、トラップ率の平均値を求めた。結果を表2に示す。
【0061】
すなわち、本発明殺虫用具(4)の場合は、89.7%の高いトラップ率が得られた。一方、比較殺虫用具(3)と比較殺虫用具(4)の場合は、それぞれ1.3%と6.0%の低いトラップ率しか得られなかった。これは、クロチアニジンを完全に溶解させるために溶媒として用いたエタノールとアセトンの含量が高いため、リンゴ酢の昆虫誘引作用を阻害し、コバエが近寄って来なかったためと考えられた。このように、クロチアニジンを溶解させるための溶媒としてN−メチルピロリドンを用いることにより、高い昆虫誘引性を有しクロチアニジンを殺虫成分とする水性誘引殺虫組成物が得られることが示された。
【0062】
【表2】