【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これら従来技術によれば、汚染された配管を所定の長さに切断して施設外に搬出する際に、高レベルに放射能汚染された配管内部の露出を防ぐことが可能となっている。一方、そのようにして搬出された配管をスクラップ処理する際に、高濃度に汚染された配管内部については、適宜除染を行なったうえで、更に細かく裁断、圧縮等を施すことが、保管箱(キャスク)の収納効率を高める上で望ましい。
従来、配管の除染を行なうに際しては、
図9上段に示されるように、配管を所定の長さに切断した管材100の壁面に、端部から長手方向の切れ目102を入れ、
図9中段に示されるように、切れ目102から管材100を開き、
図9下段に示されるように内壁104が露出するようにして、汚染レベルが高い内壁104を、グラインダー処理する等の作業手順を取る必要があった。しかも、これらの作業は、作業員が工具を使用して手作業で行なう必要があることから、作業員の被爆リスクを考慮すると、特に高線量の配管については、このような除染処理を行なうことなくキャスクに投入、密閉して保管することが現実的な処理方法で
あった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、作業員の被爆のリスクを無くしつつ、
長尺のスクラップ管材をスクラップ処理する際の、処理効率を高めることにある。
【0005】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項分けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)
一度に複数の長尺の
スクラップ管材を
、その表面のみならず切断面方向からも洗浄され得る長さに調整された、短尺のスクラップ片に切断する切断手段と、該切断手段により切断された前記
スクラップ管材のスクラップ片を洗浄する洗浄手段と、前記スクラップ片の放射能を連続的に測定する放射能測定手段と、該放射能測定手段によって検出された放射能の値に応じて前記スクラップ片を選別
し、放射能の値に応じた貯留場所へと振り分ける選別手段と、上記各手段間での前記スクラップ片の運搬を行なう運搬手段と、上記各手段の動作を制御する制御手段とを含むスクラップ処理システム(請求項1)。
本項に記載のスクラップ処理システムは、切断手段によって、
一度に複数の長尺の
スクラップ管材を
、その表面のみならず切断面方向からも洗浄され得る長さに調整された、短尺のスクラップ片に切断することで、長尺の
スクラップ管材の長さ方向と交差する方向の断面を露出させるものである。そして、切断手段によって切断された長尺の
スクラップ管材のスクラップ片は、洗浄手段によって洗浄される際に、スクラップ片の表面のみならず切断面方向からも洗浄を行なうものである。又、スクラップ片の放射能を、放射能測定手段によって連続的に測定し、放射能測定手段によって検出された放射能の値に応じて、選別手段によりスクラップ片を選別
し、放射能の値に応じた貯留場所へと振り分ける。しかも、上記各手段間でのスクラップ片の運搬は、運搬手段によって行なわれるものである。上記各手段は、制御装置によって適切なタイミングで動作するよう制御されることにより、上述のごとく、長尺の
スクラップ管材を、放射能汚染レベルに応じて選別処理する作業を、無人で連続的に行なうものである。
【0007】
なお、
スクラップ管材は管状部材である
ことから、切断手段において切断された
スクラップ管材は、リング状のスクラップ片となる。したがって、洗浄手段によってスクラップ片を洗浄する際に、スクラップ片の表面のみならず切断面方向からも洗浄を行なうことで、リング状のスクラップ片の内壁部分、すなわち、管状部材の内壁部分も効果的に洗浄されることとなる。
又、長尺の
スクラップ管材が、切断手段によって短尺のスクラップ片に切断され、内壁が切断面から露出することから、放射能測定手段によって放射能測定する際にも、
スクラップ管材自体の遮蔽機能の影響を受けて、線量測定値の精度が低下することを回避するものとなる。
【0008】
(2)上記(1)項において、前記洗浄手段は、ショットブラスト装置であるスクラップ処理システム(請求項2)。
本項に記載のスクラップ処理システムは、切断手段により切断された
スクラップ管材のスクラップ片を洗浄する際に、ショットブラスト装置内で、金属ワイヤーを切断したカットワイヤーやその角を丸めた粒子、鋳鉄や鋳鋼の球形粒子(スチールショット、スチールビーズ)等の投射材を、スクラップ片へと投射することで、スクラップ片の表面のみならず切断面方向からも、乾式洗浄が効果的に行われるものである。
(2.2)上記(1)項において、前記洗浄手段は、ドラム式湿式洗浄装置であるスクラップ処理システム。
本項に記載のスクラップ処理システムは、切断手段により切断された
スクラップ管材のスクラップ片を洗浄する際に、ドラム式湿式洗浄装置内で、水、又は水及び研磨媒体とともに撹拌されることで、スクラップ片の表面のみならず切断面方向からも湿式洗浄が効果的に行われるものである。
【0009】
(3)上記(1)(2)(2.2)項において、前記切断手段は、前記長尺の
スクラップ管材を長さ方向に揃えるホッパーと、前記長尺の
スクラップ管材を長さ方向へと送るコンベヤと、該コンベヤの端部に配置されたカッターとを備えるスクラップ処理システム(請求項3)。
本項に記載のスクラップ処理システムは、切断手段において、長尺の
スクラップ管材を投入することで、長さ方向に揃えることが可能な形状を有するホッパーにより、長尺の
スクラップ管材を長さ方向に揃え、その状態を維持して、コンベヤにより長尺の
スクラップ管材を長さ方向へと送る。そして、コンベヤの端部に配置されたカッターにより、長尺の
スクラップ管材を短尺のスクラップ片に切断することで、長尺の
スクラップ管材の長さ方向と交差する方向の断面を露出させるものである。なお、ここで用いられるカッターとしては、プラズマカッター、ガスカッター、水ジェットカッター等が上げられる。
【0010】
(4)上記(1)から(3)項において、前記放射能測定手段は、前記洗浄手段と前記選別手段との間に配置された、前記運搬手段に設置されているスクラップ処理システム(請求項4)。
本項に記載のスクラップ処理システムは、洗浄手段と選別手段との間に配置された、運搬手段に設置されている放射能測定手段によって、洗浄後のスクラップ片に残存する放射能レベルを検出し、検出された放射能レベルに応じて、選別手段においてスクラップ片を選別処理するものである。
【0011】
(5)上記(1)から(4)項において、前記放射能測定手段は、前記切断手段と前記洗浄手段との間に配置された、前記運搬手段に設置されているスクラップ処理システム(請求項5)。
本項に記載のスクラップ処理システムは、切断手段と洗浄手段との間に配置された、運搬手段に設置されている放射能測定手段によって、洗浄前のスクラップ片の放射能レベルを検出し、洗浄が必要な放射能レベルのスクラップ片を、洗浄手段へと運搬、投入するものである。一方、洗浄が不要な放射能レベルのスクラップ片については、洗浄手段へと送ることなくスクラップ処理するものである。この際の選別作業は、例えば、運搬手段の運搬方向の正逆方向ごとに運搬先を別けることで、行なうことが可能である。
【0012】
(6)上記(1)から(5)項において、前記洗浄手段からの排出物をスクラップ片とそれ以外の物とに分離する分離手段を備えるスクラップ処理システム(請求項6)。
本項に記載のスクラップ処理システムは、分離手段によって、洗浄手段からの排出物をスクラップ片とそれ以外の物とに分離することで、放射能測定手段における、洗浄後のスクラップ片に残存する放射能レベルの検出精度を、高めるものである。又、洗浄手段から排出されるスクラップ片以外のもの、例えば、洗浄手段としてショットブラスト装置を用いる場合には、ブラストによりスクラップ片から剥離した微細な粉塵等を分離し、廃棄物として処理するものである。又、例えば、洗浄手段としてドラム式湿式洗浄装置を用いる場合には、洗浄に用いられた水や、スクラップ片から除去された金属粉等のチリを分離し、水は洗浄手段に戻して再利用し、金属粉等のチリなどをまとめて、廃棄物として処理するものである。
【0013】
(6.2)上記(1)から(6)項において、前記各手段が移動可能に構成され、
スクラップ管材の発生地にて稼動するスクラップ処理システム。
本項に記載のスクラップ処理システムは、上記(1)から(6)項記載の各手段が移動可能に構成されることで、
スクラップ管材の発生地にて各手段を稼動させて、所定値以上の放射能が検出されたスクラップ片と、それ以外のスクラップ片とを選別処理し、かつ、所定値以上の放射能が検出されたスクラップ片については、放射能汚染レベルに応じた選別処理を行なうものである。又、上記(1)から(6)項記載の各手段が移動可能となるように、例えば、各手段をトレーラの荷台に搭載し、あるいは、各手段を搭載する特殊車両を構成するものである。これらのトレーラや特殊車両には、各手段の大きさに応じて、各々別々に載置され、又は、一台の車両に複数種類(或いは全て)が載置され、
スクラップ管材の発生地にて、上記所定の作業工程が円滑に実施されるように配置されるものである。しかも、本システムを
スクラップ管材の発生地にて展開する際に、外部電源を確保することなく、各手段の運転を可能とするものである。なお、当然ながら、周囲環境に放射能汚染が生じないように、十分な放射線の遮蔽対策が施されることとする。
【0014】
(7)
一度に複数の長尺の
スクラップ管材を
、その表面のみならず切断面方向からも洗浄され得る長さに調整された、短尺のスクラップ片に切断する切断工程と、該切断工程において切断された前記
スクラップ管材のスクラップ片を洗浄する洗浄工程と、該洗浄工程において洗浄されたスクラップ片の放射能を連続的に測定する線量計測工程と、該線量計測工程において検出された放射能の値に応じて前記スクラップ片を選別
し、放射能の値に応じた貯留場所へと振り分ける選別工程とを含むスクラップ処理方法(請求項7)。
本項に記載のスクラップ処理方法は、切断工程において、
一度に複数の長尺の
スクラップ管材を
、その表面のみならず切断面方向からも洗浄され得る長さに調整された、短尺のスクラップ片に切断することで、長尺の
スクラップ管材の長さ方向と交差する方向の断面を露出させるものである。そして、切断工程において切断された長尺の
スクラップ管材のスクラップ片は、洗浄工程において、スクラップ片の表面のみならず切断面方向からも洗浄を行なうものである。又、洗浄工程において洗浄されたスクラップ片の放射能を、線量計測工程において連続的に測定し、線量計測工程において検出された放射能の値に応じて、選別工程にてスクラップ片を選別
し、放射能の値に応じた貯留場所へと振り分けるものである。上記各工程を適切なタイミングで連動して行なうことにより、長尺の
スクラップ管材を、放射能汚染レベルに応じて選別処理する作業を、無人で連続的に行なうものである。
【0015】
なお、
スクラップ管材が管状部材である場合には、切断工程において切断された管状部材は、リング状のスクラップ片となる。したがって、洗浄工程においてスクラップ片を洗浄する際に、スクラップ片の表面のみならず切断面方向からも洗浄を行なうことで、リング状のスクラップ片の内壁部分、すなわち、管状部材の内壁部分も効果的に洗浄されることとなる。
【0016】
(8)上記(7)項の、前記洗浄工程において、ショットブラスト装置を用いるスクラップ処理方法(請求項8)。
本項に記載のスクラップ処理方法は、切断工程において切断された
スクラップ管材のスクラップ片を洗浄する際に、ショットブラスト装置内で、金属ワイヤーを切断したカットワイヤーやその角を丸めた粒子、鋳鉄や鋳鋼の球形粒子等の投射材を、スクラップ片へと投射することで、スクラップ片の表面のみならず切断面方向からも乾式洗浄を効果的に行なうものである。
(8.2)上記(7)項の、前記洗浄工程において、ドラム式湿式洗浄装置を用いるスクラップ処理方法。
本項に記載のスクラップ処理方法は、切断工程において切断された
スクラップ管材のスクラップ片を洗浄する際に、ドラム式湿式洗浄装置内で、水、又は水及び研磨媒体とともに混練することで、スクラップ片の表面のみならず切断面方向からも湿式洗浄を効果的に行なうものである。
【0017】
(9)上記(7)(8)(8.2)項の、前記切断工程において、前記長尺の
スクラップ管材を長さ方向に揃えるホッパーと、前記長尺の
スクラップ管材を長さ方向へと送るコンベヤと、該コンベヤの端部に配置されたカッターとを備える切断手段を用いるスクラップ処理方法。(請求項9)。
本項に記載のスクラップ処理方法は、長尺の
スクラップ管材をホッパーに投入することで、長尺の
スクラップ管材長さ方向に揃え、その状態を維持して、コンベヤにより長尺の
スクラップ管材を長さ方向へと送る。そして、コンベヤの端部に配置されたカッターにより長尺の
スクラップ管材を、長尺の
スクラップ管材を短尺のスクラップ片に切断することで、長尺の
スクラップ管材の長さ方向と交差する方向の断面を露出させるものである。なお、ここで用いられるカッターとしては、プラズマカッター、ガスカッター、水ジェットカッター等が上げられる。
【0018】
(10)上記(7)から(9)項の、前記切断工程において切断された前記
スクラップ管材のスクラップ片の放射能を連続的に測定する予備線量計測工程と、該予備線量計測工程において検出された放射能の値に応じて前記スクラップ片を選別する予備選別工程とを含スクラップ処理方法(請求項10)。
本項に記載のスクラップ処理方法は、切断工程において切断された
スクラップ管材のスクラップ片の放射能を連続的に測定する予備線量計測工程を実施して、洗浄前のスクラップ片の放射能レベルを検出し、洗浄が必要な放射能レベルのスクラップ片を予備選別工程にて選別し、洗浄工程へと投入するものである。なお、洗浄が不要な放射能レベルのスクラップ片については、洗浄手段へと送ることなくスクラップ処理するものである。