特許第5972126号(P5972126)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5972126スクラップ処理システム及びスクラップ処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972126
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】スクラップ処理システム及びスクラップ処理方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/30 20060101AFI20160804BHJP
   G21F 9/28 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   G21F9/30 531H
   G21F9/30 531J
   G21F9/28 531Z
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-202864(P2012-202864)
(22)【出願日】2012年9月14日
(65)【公開番号】特開2014-59163(P2014-59163A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年5月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】592031318
【氏名又は名称】富士古河E&C株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 功
(72)【発明者】
【氏名】蔵成 和樹
(72)【発明者】
【氏名】浅川 肇
【審査官】 後藤 孝平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−081699(JP,A)
【文献】 特表平11−514588(JP,A)
【文献】 特開2007−85796(JP,A)
【文献】 特開2012−117924(JP,A)
【文献】 特開昭62−189000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/30
G21F 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一度に複数の長尺のスクラップ管材、その表面のみならず切断面方向からも洗浄され得る長さに調整された、短尺のスクラップ片に切断する切断手段と、
該切断手段により切断された前記スクラップ管材のスクラップ片を洗浄する洗浄手段と、
前記スクラップ片の放射能を連続的に測定する放射能測定手段と、
該放射能測定手段によって検出された放射能の値に応じて前記スクラップ片を選別し、放射能の値に応じた貯留場所へと振り分ける選別手段と、
上記各手段間での前記スクラップ片の運搬を行なう運搬手段と、
上記各手段の動作を制御する制御手段とを含むことを特徴とするスクラップ処理システム。
【請求項2】
前記洗浄手段は、ショットブラスト装置であることを特徴とする請求項1記載のスクラップ処理システム。
【請求項3】
前記切断手段は、前記長尺のスクラップ管材を長さ方向に揃えるホッパーと、前記長尺のスクラップ管材を長さ方向へと送るコンベヤと、該コンベヤの端部に配置されたカッターとを備えることを特徴とする請求項1又は2記載のスクラップ処理システム。
【請求項4】
前記放射能測定手段は、前記洗浄手段と前記選別手段との間に配置された、前記運搬手段に設置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のスクラップ処理システム。
【請求項5】
前記放射能測定手段は、前記切断手段と前記洗浄手段との間に配置された、前記運搬手段に設置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1記載のスクラップ処理システム。
【請求項6】
前記洗浄手段からの排出物をスクラップ片とそれ以外の物とに分離する分離手段を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載のスクラップ処理システム。
【請求項7】
一度に複数の長尺のスクラップ管材、その表面のみならず切断面方向からも洗浄され得る長さに調整された、短尺のスクラップ片に切断する切断工程と、
該切断工程において切断された前記スクラップ管材のスクラップ片を洗浄する洗浄工程と、
該洗浄工程において洗浄されたスクラップ片の放射能を連続的に測定する線量計測工程と、
該線量計測工程において検出された放射能の値に応じて前記スクラップ片を選別し、放射能の値に応じた貯留場所へと振り分ける選別工程とを含むことを特徴とするスクラップ処理方法。
【請求項8】
前記洗浄工程において、ショットブラスト装置を用いることを特徴とする請求項7記載のスクラップ処理方法。
【請求項9】
前記切断工程において、前記長尺のスクラップ管材を長さ方向に揃えるホッパーと、前記長尺のスクラップ管材を長さ方向へと送るコンベヤと、該コンベヤの端部に配置されたカッターとを備える切断手段を用いることを特徴とする請求項7又は8記載のスクラップ処理方法。
【請求項10】
前記切断工程において切断された前記スクラップ管材のスクラップ片の放射能を連続的に測定する予備線量計測工程と、
該予備線量計測工程において検出された放射能の値に応じて前記スクラップ片を選別する予備選別工程とを含むことを特徴とする請求項7から9のいずれか1項記載のスクラップ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクラップ処理システム及びスクラップ処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、原子力発電所に使用された配管等の長尺のスクラップ管材を切断するための、様々な切断技術が発案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−189000号公報
【特許文献1】特開昭63−250599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これら従来技術によれば、汚染された配管を所定の長さに切断して施設外に搬出する際に、高レベルに放射能汚染された配管内部の露出を防ぐことが可能となっている。一方、そのようにして搬出された配管をスクラップ処理する際に、高濃度に汚染された配管内部については、適宜除染を行なったうえで、更に細かく裁断、圧縮等を施すことが、保管箱(キャスク)の収納効率を高める上で望ましい。
従来、配管の除染を行なうに際しては、図9上段に示されるように、配管を所定の長さに切断した管材100の壁面に、端部から長手方向の切れ目102を入れ、図9中段に示されるように、切れ目102から管材100を開き、図9下段に示されるように内壁104が露出するようにして、汚染レベルが高い内壁104を、グラインダー処理する等の作業手順を取る必要があった。しかも、これらの作業は、作業員が工具を使用して手作業で行なう必要があることから、作業員の被爆リスクを考慮すると、特に高線量の配管については、このような除染処理を行なうことなくキャスクに投入、密閉して保管することが現実的な処理方法であった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、作業員の被爆のリスクを無くしつつ、長尺のスクラップ管材をスクラップ処理する際の、処理効率を高めることにある。
【0005】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項分けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)一度に複数の長尺のスクラップ管材、その表面のみならず切断面方向からも洗浄され得る長さに調整された、短尺のスクラップ片に切断する切断手段と、該切断手段により切断された前記スクラップ管材のスクラップ片を洗浄する洗浄手段と、前記スクラップ片の放射能を連続的に測定する放射能測定手段と、該放射能測定手段によって検出された放射能の値に応じて前記スクラップ片を選別し、放射能の値に応じた貯留場所へと振り分ける選別手段と、上記各手段間での前記スクラップ片の運搬を行なう運搬手段と、上記各手段の動作を制御する制御手段とを含むスクラップ処理システム(請求項1)。
本項に記載のスクラップ処理システムは、切断手段によって、一度に複数の長尺のスクラップ管材、その表面のみならず切断面方向からも洗浄され得る長さに調整された、短尺のスクラップ片に切断することで、長尺のスクラップ管材の長さ方向と交差する方向の断面を露出させるものである。そして、切断手段によって切断された長尺のスクラップ管材のスクラップ片は、洗浄手段によって洗浄される際に、スクラップ片の表面のみならず切断面方向からも洗浄を行なうものである。又、スクラップ片の放射能を、放射能測定手段によって連続的に測定し、放射能測定手段によって検出された放射能の値に応じて、選別手段によりスクラップ片を選別し、放射能の値に応じた貯留場所へと振り分ける。しかも、上記各手段間でのスクラップ片の運搬は、運搬手段によって行なわれるものである。上記各手段は、制御装置によって適切なタイミングで動作するよう制御されることにより、上述のごとく、長尺のスクラップ管材を、放射能汚染レベルに応じて選別処理する作業を、無人で連続的に行なうものである。
【0007】
なお、スクラップ管材は管状部材であることから、切断手段において切断されたスクラップ管材は、リング状のスクラップ片となる。したがって、洗浄手段によってスクラップ片を洗浄する際に、スクラップ片の表面のみならず切断面方向からも洗浄を行なうことで、リング状のスクラップ片の内壁部分、すなわち、管状部材の内壁部分も効果的に洗浄されることとなる。
又、長尺のスクラップ管材が、切断手段によって短尺のスクラップ片に切断され、内壁が切断面から露出することから、放射能測定手段によって放射能測定する際にも、スクラップ管材自体の遮蔽機能の影響を受けて、線量測定値の精度が低下することを回避するものとなる。
【0008】
(2)上記(1)項において、前記洗浄手段は、ショットブラスト装置であるスクラップ処理システム(請求項2)。
本項に記載のスクラップ処理システムは、切断手段により切断されたスクラップ管材のスクラップ片を洗浄する際に、ショットブラスト装置内で、金属ワイヤーを切断したカットワイヤーやその角を丸めた粒子、鋳鉄や鋳鋼の球形粒子(スチールショット、スチールビーズ)等の投射材を、スクラップ片へと投射することで、スクラップ片の表面のみならず切断面方向からも、乾式洗浄が効果的に行われるものである。
(2.2)上記(1)項において、前記洗浄手段は、ドラム式湿式洗浄装置であるスクラップ処理システム。
本項に記載のスクラップ処理システムは、切断手段により切断されたスクラップ管材のスクラップ片を洗浄する際に、ドラム式湿式洗浄装置内で、水、又は水及び研磨媒体とともに撹拌されることで、スクラップ片の表面のみならず切断面方向からも湿式洗浄が効果的に行われるものである。
【0009】
(3)上記(1)(2)(2.2)項において、前記切断手段は、前記長尺のスクラップ管材を長さ方向に揃えるホッパーと、前記長尺のスクラップ管材を長さ方向へと送るコンベヤと、該コンベヤの端部に配置されたカッターとを備えるスクラップ処理システム(請求項3)。
本項に記載のスクラップ処理システムは、切断手段において、長尺のスクラップ管材を投入することで、長さ方向に揃えることが可能な形状を有するホッパーにより、長尺のスクラップ管材を長さ方向に揃え、その状態を維持して、コンベヤにより長尺のスクラップ管材を長さ方向へと送る。そして、コンベヤの端部に配置されたカッターにより、長尺のスクラップ管材を短尺のスクラップ片に切断することで、長尺のスクラップ管材の長さ方向と交差する方向の断面を露出させるものである。なお、ここで用いられるカッターとしては、プラズマカッター、ガスカッター、水ジェットカッター等が上げられる。
【0010】
(4)上記(1)から(3)項において、前記放射能測定手段は、前記洗浄手段と前記選別手段との間に配置された、前記運搬手段に設置されているスクラップ処理システム(請求項4)。
本項に記載のスクラップ処理システムは、洗浄手段と選別手段との間に配置された、運搬手段に設置されている放射能測定手段によって、洗浄後のスクラップ片に残存する放射能レベルを検出し、検出された放射能レベルに応じて、選別手段においてスクラップ片を選別処理するものである。
【0011】
(5)上記(1)から(4)項において、前記放射能測定手段は、前記切断手段と前記洗浄手段との間に配置された、前記運搬手段に設置されているスクラップ処理システム(請求項5)。
本項に記載のスクラップ処理システムは、切断手段と洗浄手段との間に配置された、運搬手段に設置されている放射能測定手段によって、洗浄前のスクラップ片の放射能レベルを検出し、洗浄が必要な放射能レベルのスクラップ片を、洗浄手段へと運搬、投入するものである。一方、洗浄が不要な放射能レベルのスクラップ片については、洗浄手段へと送ることなくスクラップ処理するものである。この際の選別作業は、例えば、運搬手段の運搬方向の正逆方向ごとに運搬先を別けることで、行なうことが可能である。
【0012】
(6)上記(1)から(5)項において、前記洗浄手段からの排出物をスクラップ片とそれ以外の物とに分離する分離手段を備えるスクラップ処理システム(請求項6)。
本項に記載のスクラップ処理システムは、分離手段によって、洗浄手段からの排出物をスクラップ片とそれ以外の物とに分離することで、放射能測定手段における、洗浄後のスクラップ片に残存する放射能レベルの検出精度を、高めるものである。又、洗浄手段から排出されるスクラップ片以外のもの、例えば、洗浄手段としてショットブラスト装置を用いる場合には、ブラストによりスクラップ片から剥離した微細な粉塵等を分離し、廃棄物として処理するものである。又、例えば、洗浄手段としてドラム式湿式洗浄装置を用いる場合には、洗浄に用いられた水や、スクラップ片から除去された金属粉等のチリを分離し、水は洗浄手段に戻して再利用し、金属粉等のチリなどをまとめて、廃棄物として処理するものである。
【0013】
(6.2)上記(1)から(6)項において、前記各手段が移動可能に構成され、スクラップ管材の発生地にて稼動するスクラップ処理システム。
本項に記載のスクラップ処理システムは、上記(1)から(6)項記載の各手段が移動可能に構成されることで、スクラップ管材の発生地にて各手段を稼動させて、所定値以上の放射能が検出されたスクラップ片と、それ以外のスクラップ片とを選別処理し、かつ、所定値以上の放射能が検出されたスクラップ片については、放射能汚染レベルに応じた選別処理を行なうものである。又、上記(1)から(6)項記載の各手段が移動可能となるように、例えば、各手段をトレーラの荷台に搭載し、あるいは、各手段を搭載する特殊車両を構成するものである。これらのトレーラや特殊車両には、各手段の大きさに応じて、各々別々に載置され、又は、一台の車両に複数種類(或いは全て)が載置され、スクラップ管材の発生地にて、上記所定の作業工程が円滑に実施されるように配置されるものである。しかも、本システムをスクラップ管材の発生地にて展開する際に、外部電源を確保することなく、各手段の運転を可能とするものである。なお、当然ながら、周囲環境に放射能汚染が生じないように、十分な放射線の遮蔽対策が施されることとする。
【0014】
(7)一度に複数の長尺のスクラップ管材、その表面のみならず切断面方向からも洗浄され得る長さに調整された、短尺のスクラップ片に切断する切断工程と、該切断工程において切断された前記スクラップ管材のスクラップ片を洗浄する洗浄工程と、該洗浄工程において洗浄されたスクラップ片の放射能を連続的に測定する線量計測工程と、該線量計測工程において検出された放射能の値に応じて前記スクラップ片を選別し、放射能の値に応じた貯留場所へと振り分ける選別工程とを含むスクラップ処理方法(請求項7)。
本項に記載のスクラップ処理方法は、切断工程において、一度に複数の長尺のスクラップ管材、その表面のみならず切断面方向からも洗浄され得る長さに調整された、短尺のスクラップ片に切断することで、長尺のスクラップ管材の長さ方向と交差する方向の断面を露出させるものである。そして、切断工程において切断された長尺のスクラップ管材のスクラップ片は、洗浄工程において、スクラップ片の表面のみならず切断面方向からも洗浄を行なうものである。又、洗浄工程において洗浄されたスクラップ片の放射能を、線量計測工程において連続的に測定し、線量計測工程において検出された放射能の値に応じて、選別工程にてスクラップ片を選別し、放射能の値に応じた貯留場所へと振り分けるものである。上記各工程を適切なタイミングで連動して行なうことにより、長尺のスクラップ管材を、放射能汚染レベルに応じて選別処理する作業を、無人で連続的に行なうものである。
【0015】
なお、スクラップ管材が管状部材である場合には、切断工程において切断された管状部材は、リング状のスクラップ片となる。したがって、洗浄工程においてスクラップ片を洗浄する際に、スクラップ片の表面のみならず切断面方向からも洗浄を行なうことで、リング状のスクラップ片の内壁部分、すなわち、管状部材の内壁部分も効果的に洗浄されることとなる。
【0016】
(8)上記(7)項の、前記洗浄工程において、ショットブラスト装置を用いるスクラップ処理方法(請求項8)。
本項に記載のスクラップ処理方法は、切断工程において切断されたスクラップ管材のスクラップ片を洗浄する際に、ショットブラスト装置内で、金属ワイヤーを切断したカットワイヤーやその角を丸めた粒子、鋳鉄や鋳鋼の球形粒子等の投射材を、スクラップ片へと投射することで、スクラップ片の表面のみならず切断面方向からも乾式洗浄を効果的に行なうものである。
(8.2)上記(7)項の、前記洗浄工程において、ドラム式湿式洗浄装置を用いるスクラップ処理方法。
本項に記載のスクラップ処理方法は、切断工程において切断されたスクラップ管材のスクラップ片を洗浄する際に、ドラム式湿式洗浄装置内で、水、又は水及び研磨媒体とともに混練することで、スクラップ片の表面のみならず切断面方向からも湿式洗浄を効果的に行なうものである。
【0017】
(9)上記(7)(8)(8.2)項の、前記切断工程において、前記長尺のスクラップ管材を長さ方向に揃えるホッパーと、前記長尺のスクラップ管材を長さ方向へと送るコンベヤと、該コンベヤの端部に配置されたカッターとを備える切断手段を用いるスクラップ処理方法。(請求項9)。
本項に記載のスクラップ処理方法は、長尺のスクラップ管材をホッパーに投入することで、長尺のスクラップ管材長さ方向に揃え、その状態を維持して、コンベヤにより長尺のスクラップ管材を長さ方向へと送る。そして、コンベヤの端部に配置されたカッターにより長尺のスクラップ管材を、長尺のスクラップ管材を短尺のスクラップ片に切断することで、長尺のスクラップ管材の長さ方向と交差する方向の断面を露出させるものである。なお、ここで用いられるカッターとしては、プラズマカッター、ガスカッター、水ジェットカッター等が上げられる。
【0018】
(10)上記(7)から(9)項の、前記切断工程において切断された前記スクラップ管材のスクラップ片の放射能を連続的に測定する予備線量計測工程と、該予備線量計測工程において検出された放射能の値に応じて前記スクラップ片を選別する予備選別工程とを含スクラップ処理方法(請求項10)。
本項に記載のスクラップ処理方法は、切断工程において切断されたスクラップ管材のスクラップ片の放射能を連続的に測定する予備線量計測工程を実施して、洗浄前のスクラップ片の放射能レベルを検出し、洗浄が必要な放射能レベルのスクラップ片を予備選別工程にて選別し、洗浄工程へと投入するものである。なお、洗浄が不要な放射能レベルのスクラップ片については、洗浄手段へと送ることなくスクラップ処理するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明はこのように構成したので、作業員の被爆のリスクを無くしつつ、長尺のスクラップ管材をスクラップ処理する際の、処理効率を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態に係るスクラップ処理システムシステムの構成を示す概略図である。
図2図1に示されるスクラップ処理システムにおいて実施される、切断工程の説明図である。
図3図1に示されるスクラップ処理システムに用いられる、ドラム式湿式洗浄装置の模式図である。
図4図1に示されるスクラップ処理システムに用いられる、分離装置の模式図である。
図5】本発明の実施の形態に係るスクラップ処理システムを用いた、スクラップ処理手順を示すフローチャートである。
図6】本発明の実施の形態に係るスクラップ処理システムシステムの応用例の構成を示す概略図である。
図7図6に示されるスクラップ処理システムに用いられる、ショットブラスト装置を示すものであり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図8図7に示されるショットブラスト装置の要部を模式的に示したものであり(a)は側面図、(b)は正面図である。
図9】従来の配管の除染作業手順を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態を添付図面に基づいて説明する。
本発明の実施の形態に係るスクラップ処理システム10は、図1に模式的に示されるように、切断手段12と、洗浄手段14と、分離手段16と、放射能測定手段18と、選別手段20と、上記各手段間でのスクラップ片100’(図2参照)の運搬を行なう運搬手段22と、これら各手段の動作を制御する制御手段24とを含むものである。
【0022】
切断手段12は、図2に示されるように、長尺のスクラップ管材100を短尺のスクラップ片100’に切断するものである。より詳しくは、切断手段12は、長尺のスクラップ管材(以下、単に「管材」という。)100を、長さ方向に概略的に揃えることが可能な、適切な傾斜面その他の形状を有するホッパー26と、ホッパー26の下端部に面して配置され、管材100を長さ方向へと送るベルトコンベヤ28と、ベルトコンベヤ28の端部に配置されたカッター30とを備えるものである。ベルトコンベヤ28は、好ましくはエプロンコンベヤが用いられ、カッター30は、可能な限り切断時の鉄粉が発生しないものが好ましく、例えば、プラズマカッター、ガスカッター、水ジェットカッター等が適宜用いられる。
【0023】
そして、切断手段12のホッパー26に一度に複数の管材100を投入し、長さ方向に概略的に揃えた状態で、これらの管材100をベルトコンベヤ28によって長さ方向に送り、カッター30によって、管材100を輪切り状の短尺のスクラップ片100’へと切断する。この切断時のコンベヤ8の送り速度を、ベルトコンベヤ28の動作を制御するインバータによって適切に調整し、若しくは、カッター30による切断動作の周期を調整することで、スクラップ片100’の長さ(幅)Lを調整することが可能となる。スクラップ片100’の長さLは、洗浄手段14によってスクラップ片100’を洗浄する際に、内壁部分100b’も効果的に洗浄される長さとする。又、放射能測定手段18によって放射能測定する際にも、スクラップ片100’自体の遮蔽機能の影響を受けて、線量測定値の精度が低下することを回避して、内壁部分100b’が切断面から十分に露出する長さとする。
【0024】
洗浄手段14は、切断手段12により切断された管材100のスクラップ片100’を洗浄するものである。洗浄手段14の一例として、図3に示されるように、ドラム式湿式洗浄装置が用いられる。このドラム式湿式洗浄装置は、内部に撹拌室32aが設けられた筒状ドラム32と、筒状ドラム32を回転駆動する可変速駆動手段34と、筒状ドラム32の基端及び終端に配置された投入シュート36及び排出シュート38を備えるものである。そして、投入シュート36から筒状ドラム32へと水40を供給する給水ノズル42が設けられており、適宜、撹拌室32a内には、砂、石その他の研磨媒体44が収容される。
【0025】
そして、投入シュート36から水40と共にスクラップ片100’(図2)を投入して、筒状ドラム32を適切な速度で回転させることにより、スクラップ片100’を洗浄し、排出シュート38から、水40、スクラップ片100’及び金属粉等のチリ110を排出するものである。なお、可変速度駆動手段34の回転速度は、その動作を制御するインバータによって適切に調整することが可能である。なお、ドラム式湿式洗浄装置の具体例としては、例えば、実開平5−161854号公報記載のものが上げられる。
【0026】
分離手段16は、洗浄手段14からの排出物を、スクラップ片100’と、鉄粉やチリ等それ以外の物とに分離する機能を有している。分離手段16の一例としては、図4に示されるようなゴミ取り機が用いられる。このごみ取り機は、投入口44a、スクラップ片の排出口44b、チリ等の排出口44c、ドレン口44dを有する水槽44に、シューター46、篩48、ベルトコンベヤ50、循環水ポンプ52を備えるものである。そして、洗浄手段14から排出される水40、スクラップ片100’及び金属粉等のチリ110を、投入口44aから投入すると、スクラップ片100’はシューター46を落下し、ベルトコンベヤ50によってスクラップ片の排出口44bへと送られ、ここからスクラップ片100’のみが排出される。
【0027】
一方、水40及び金属粉等のチリ110は、シューター46を落下し、水槽44内で循環水ポンプ52によって攪拌される。そして、篩48によって金属粉等のチリ110が水40から濾し出される。スクラップ片100’及び金属粉等のチリ110が除去された水40は、ドレン口44dから排出される。ベルトコンベヤ50及び循環水ポンプ52は、何れもインバータ制御されるものであり、その動作速度を適切に調整することが可能である。
【0028】
なお、図1には、分離手段16の分離機能をより高めるために、上記ごみ取り機と併せて、より高い分離機能を有する二次分離機17を用いた例が示されている。この二次分離機17としては、特に限定されるものではないが、例えば、特開2009−131801号公報記載の、ベルト式脱水機を用いることが可能である。
このベルト式脱水機は、上下二段に対向して本体フレームに設置される無端状の上段濾布ベルト及び下段濾布ベルトと、この上段濾布ベルト及び下段濾布ベルトがそれぞれ巻回される複数の上段固定ローラ及び下段固定ローラと、この上段固定ローラとともに前記上段濾布ベルトが巻回される上段絞りローラと、この上段絞りローラに対向配置され前記下段固定ローラとともに前記下段濾布ベルトが巻回される下段絞りローラと、前記上段絞りローラ及び前記下段絞りローラのうち少なくともいずれか一方を昇降自在に駆動する昇降手段とを備え、前記下段濾布ベルトは上面に供給された汚泥を前記上段濾布ベルトとで挟みつつ搬送し、前記上段絞りローラ及び前記下段絞りローラは前記上段濾布ベルト及び前記下段濾布ベルトを介して前記汚泥を押圧可能に対向配置される構成を有している。
このような二次分離機17を用いることで、上記ごみ取り機の篩48によって濾された金属粉等のチリ110から、更に確実に水分を分離するものである。そして、図1の例では、分離された水40は、洗浄手段14に戻され、再利用される。
【0029】
放射能測定手段18には、連続式放射能測定装置が用いられる。この連続式放射能測定装置は、ベルトコンベヤ等の運搬手段22上に配置され、運搬手段12上のスクラップ片100’が、放射能測定手段18を通過する間に、その放射能を連続的に高速で測定するものである。連続式放射能測定装置は、具体的には、高感度ガンマ線検出器、アンプ、及び複数の波高弁別器等によって構成され、スクラップ片100’から放射される放射線についてエネルギー別の計数を行なう。なお、ガンマ線検出器の周囲は、必要に応じて所定の厚みを有するトンネル状の鉛遮蔽体で覆い、バックグランド値を低減できるものとする。
なお、図1の例では、放射能測定手段18は、切断手段12と洗浄手段14との間に配置された運搬手段22(221)上、及び、洗浄手段14と選別手段20との間に配置された運搬手段22(222)上の、二箇所(符号18M、18Sで示す)に設けられている。
【0030】
選別手段20は、放射能測定手段18Mによって検出された放射能の値に応じてスクラップ片100’を選別するものである。図1の例では、スクラップ片100’は、放射能レベルに応じて、高線量放射性廃棄物100’H、中線量放射性廃棄物100’M 、低線量放射性廃棄物100’Lの3つに選別されるものである。そして、選別手段20は、洗浄手段14と選別手段20との間に配置された運搬手段22(222)の終端位置に設けられた第1のダンパー201と、この第1のダンパー201の下流に位置する運搬手段22(223)と、その終端位置に設けられた第2のダンパー202と、この第2のダンパー202の下流に位置する運搬手段22(224)とで構成されるものである。ここで、選別の基準となる放射能レベルについては、予め設定されるものである。
【0031】
第1のダンパー201は、高い放射能レベルが検知されたスクラップ片100’を、高線量放射性廃棄物100’Hの一次貯留場所へと振り分け、放射能レベルが中程度以下のスクラップ片100’を、第1のダンパー201の下流に位置する運搬手段223へと振り分けるものである。そして、第2のダンパー202は、運搬手段223により運搬されるスクラップ片100’のうち中程度の放射能レベルが検知されたスクラップ片100’を、中線量放射性廃棄物100’Mの一次貯留場所へと振り分ける。更に、放射能レベルが低いスクラップ片100’を、第2のダンパー202の下流に位置する運搬手段224へと振り分け、低線量放射性廃棄物100’Lの一次貯留場所へと送るものである。
【0032】
制御手段24は、放射能測定手段18によって測定されたスクラップ片100’の放射能、測定時刻、運搬手段222、223の運搬速度に基づき、選別手段20を構成するダンパー201、202の、切り替えのタイミングを決定するものである。なお、制御手段24は、例えば、電子演算器からなるものであり、切断手段12、洗浄手段14、分離手段16、二次分離機17、放射能測定手段18、運搬手段22の各運転状態を、統合制御するよう構成することも可能である。
【0033】
図5には、本発明の実施の形態に係るスクラップ処理システム10を用いた、スクラップ処理手順が示されている。
S0(準備工程):原子力発電所等から、付着汚染物、浸透汚染物、固着汚染物が含まれるスクラップ管材100を回収し、スクラップ処理工程へとまわすための工程である。配管等を切断する場合には、適宜、上述の従来技術(特許文献1、特許文献2参照)を用いることも可能である。
【0034】
S100(切断工程):切断手段12を用いて、スクラップ管材100をスクラップ片100’へと切断する。ここで得られたスクラップ片100’は、運搬手段221によって、洗浄手段14へと送られる。
なお、図1の例では、切断工程(S100)において切断されたスクラップ管材100のスクラップ片100’の放射能を連続的に測定する予備線量計測工程を実施し、この予備線量計測工程において検出された放射能の値に応じてスクラップ片100’を予備的に選別する予備選別工程を実施している。そして予備線量計測工程で放射能が検知されなかったスクラップ片100’については、予備選別工程において以下の洗浄工程(S200)以降へと回すことなく、スクラップ処理を行なうことが可能である。
【0035】
S200(洗浄工程):切断工程(S100)で得られたスクラップ片100’を、洗浄手段14に投入して、スクラップ片100’を洗浄・除線する工程である。洗浄手段14の筒状ドラム32へと投入された水40及びスクラップ片100’は、筒状ドラム32の回転によって、撹拌室32a内で攪拌され、互いに擦れ合うようにして洗浄される。そして、分離手段16によって、洗浄手段14から排出される排出物を、スクラップ片100’と、それ以外のもの、すなわち鉄粉等のチリ110及び水40と分離する。分離されたスクラップ片100’は、運搬手段222へ受け渡される。
【0036】
S300(線量計測工程):運搬手段222上を流れるスクラップ片100’の放射能を測定する工程である。運搬手段22上のスクラップ片100’放射能が、放射能測定手段18を通過する間に、連続的に測定される。放射能測定手段18の測定結果は、制御手段24へと出力され、制御手段24で放射能測定結果が判断される。
【0037】
S400(選別工程):線量計測工程(S300)において測定された放射能レベルに応じ、スクラップ片100’を選別する工程である。
まず、放射能レベルが高レベルである場合には、高レベル放射能の測定時刻、運搬手段222の運搬速度等に基づき、制御手段24では、第1のダンパー201の切り替えのタイミングを決定する。そして、スクラップ片100’を、高線量放射性廃棄物100’Hの一次貯留場所へと振り分けるように、制御手段24から、第1のダンパー201への作動指令を出力する。そして、制御手段24から出力されたダンパー制御指令に基づき、第1のダンパー201によりスクラップ片100’の選別経路が、高線量放射性廃棄物100’Hの一次貯留場所へと切り換えられる。
【0038】
一方、放射能レベルが中レベル以下である場合には、中レベル以下の放射能の測定時刻、運搬手段222の運搬速度等に基づき、制御手段24では、第1のダンパー201の切り替えのタイミングを決定する。そして、スクラップ片100’を、運搬手段223へと振り分けるように、制御手段24から、第1のダンパー201への作動指令を出力する。そして、制御手段24から出力されたダンパー制御指令に基づき、第1のダンパー201によりスクラップ片100’の選別経路が、運搬手段223へと切り換えられる。
【0039】
一方、運搬手段223へと送られたスクラップ片100’の放射能レベルが中レベルである場合には、中レベル放射能の測定時刻、運搬手段222、223の運搬速度等に基づき、制御手段24では、第2のダンパー202の切り替えのタイミングを決定する。そして、スクラップ片100’を、中線量放射性廃棄物100’Mの一次貯留場所へと振り分けるように、制御手段24から、第2のダンパー202への作動指令を出力する。そして、制御手段24から出力されたダンパー制御指令に基づき、第2のダンパー202によりスクラップ片100’の選別経路が、中線量放射性廃棄物100’Mの一次貯留場所へと切り換えられる。
【0040】
他方、放射能レベルが低レベルである場合には、低レベルの放射能の測定時刻、運搬手段222、223の運搬速度等に基づき、制御手段24では、第2のダンパー202の切り替えのタイミングを決定する。そして、スクラップ片100’を、運搬手段224へと振り分けるように、制御手段24から、第2のダンパー202への作動指令を出力する。そして、制御手段24から出力されたダンパー制御指令に基づき、第2のダンパー202によりスクラップ片100’の選別経路が、運搬手段224へと切り換えられる。そして、スクラップ片100’は運搬手段224によって、低線量放射性廃棄物100’Lの一次貯留場所へと送られる。
【0041】
S500(最終工程):選別工程(S400)で放射能レベルごとに一次貯留された各スクラップ片100’H、100’M、100’Lを、各々保管箱へと投入、密閉する。
なお、詳しい説明は省略するが、分離手段16(二次分離機17)によって分離された鉄粉等のチリ110についても、必要に応じて、選別工程(S400)、最終工程(S500)を実施することが望ましい。又、切断手段12における切断手法によっては、鉄粉等のチリ110がほとんど生じない場合もあり、このときには、二次分離機17による分離作業や、その後の選別工程は不要となる。
【0042】
さて、図6には、図1の応用例に係るスクラップ処理システム10が示されている。図1の例との相違点は、洗浄手段14、分離手段16及び二次分離機17の具体的構成であり、その他の構成については同様である。そこで、洗浄手段14’、分離手段16’及び二次分離機17’のみ以下に説明する。
図6の例では、図3に例示した洗浄手段14としてのドラム式湿式洗浄装置と、図4に例示した分離手段としてのゴミ取り機とに換えて、図7図8に示される公知のショットブラスト装置を用いるものである。
【0043】
この、ショットブラスト装置は、洗浄手段14’及び分離手段16’の機能を有するものである。具体的には、スクラップ片100’を投入する回転ドラム54と、回転ドラム54内のスクラップ片100’へと投射材を投射するための、インペラー56とを備えている。インペラー56は耐磨耗合金製の羽根車である。投射材は、金属ワイヤーを切断したカットワイヤーやその角を丸めた粒子、鋳鉄や鋳鋼の球形粒子(スチールショット、スチールビーズ)等が用いられる。
そして、回転ドラム54を回転させながら、スクラップ片100’に投射材を衝突させることで、スクラップ片100’の表面を研磨するようにして、乾式洗浄するものである。回転ドラム54は、底部が円錐台状のメッシュとなっており、投射材及び粉塵等を回転ドラム54から落下させることで、スクラップ片100’と分離するものである。
【0044】
又、回転ドラム54によって分離され、回転ドラム54から落下した投射材及び鉄粉等は、バケットエレベータ58により回収される。そして、セパレータ60によって風選処理され、投射材のみが落下して、再びインペラー56へと供給される。一方、セパレータ60によって投射材と分離された粉塵は、集塵管路62を通り、吸引ファン64によって吸引されて、分離機としてのバグフィルタ17’によって回収される。バグフィルタ17’に回収された粉塵は、回収ケース66によって回収され、浄化された空気のみが、吸引ファン64の排気口から排出される。
なお、本実施形態で説明したドラム式のショットブラスト装置は、スクラップ片100’が小型で少量の場合に、特に効率的な洗浄が可能であって、好ましい形態の1つである。
【0045】
ここで、本発明の実施の形態の応用例に係るスクラップ処理システム10’を用いた、スクラップ処理手順についても、図5を参照しながら説明する。
S0(準備工程)及びS100(切断工程):図1に示されるスクラップ処理システム10の、各対応する工程と同一の作業工程であり、詳しい説明を省略する。
【0046】
S200(洗浄工程):切断工程(S100)で得られたスクラップ片100’を、洗浄手段14に投入して、スクラップ片100’を洗浄・分離する工程である。作業手順としては、まず、回転ドラム54を停止させた状態で、チルト軸54aを中心に回転ドラム54を傾斜させ、矢印Aで示すスクラップ片100’の投入位置に、回転ドラム54の上端開口が面するように傾斜させる。そして、スクラップ片100’を回転ドラム54へと投入し、チルト軸54aを中心に回転ドラム54を回動させ、回転ドラム54の上端開口を、インペラー56へと向けるように、逆方向へと傾斜させる。ここで、図8に示される回転ドラム54を回転させて、インペラー56を回転させることより発生する遠心力により、投射材をスクラップ片100’へと投射し、スクラップ片100’を乾式洗浄する。
乾式洗浄を所定時間行った後に、回転ドラム54を停止させた状態で、チルト軸54aを中心に回転ドラム54を回動させ、矢印Bで示すスクラップ片100’の排出位置に、回転ドラム54の上端開口が面するように傾斜させることで、スクラップ片100’を回転ドラム54から取出す。このようにして分離されたスクラップ片100’は、図6に示される運搬手段222へ受け渡される。
【0047】
S300(線量計測工程)、S400(選別工程)及びS500(最終工程):図1に示されるスクラップ処理システム10の、各対応する工程と同一の作業工程であり、詳しい説明を省略する。
【0048】
さて、上記構成をなす、本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を奏することが可能となる。
すなわち、本発明の実施の形態に係るスクラップ処理システム10では、切断手段12によって、長尺のスクラップ管材100を短尺のスクラップ片100’に切断することで、長尺のスクラップ管材100の長さ方向と交差する方向の断面を露出させるものである。切断手段12によって切断された長尺のスクラップ管材100のスクラップ片100’は、洗浄手段14によって洗浄される際に、スクラップ片100’の表面のみならず切断面方向からも洗浄を行なうことが可能となる。
【0049】
そして、スクラップ片100’の放射能を、放射能測定手段18によって連続的に測定し、放射能測定手段18によって検出された放射能の値に応じて、選別手段20によりスクラップ片を選別するものである。しかも、上記各手段間でのスクラップ片100’の運搬は、運搬手段22によって行なわれ、これら各手段が、制御装置24によって適切なタイミングで動作するよう制御されることにより、長尺のスクラップ管材100を、放射能汚染レベルに応じて選別処理する作業を、無人で連続的に行なうことが可能となる。
【0050】
なお、スクラップ管材100管状部材であることから、切断手段12において切断されたスクラップ管材100は、リング状のスクラップ片となる。したがって、洗浄手段14によって、スクラップ片100’を洗浄する際に、スクラップ片の表面のみならず切断面100’a(図2参照)の方向からも洗浄を行なうことで、リング状のスクラップ片100’の内壁100’b(図2参照)の部分、すなわち、管状部材の内壁104の部分も効果的に洗浄されることとなる。
又、長尺のスクラップ管材100が、切断手段12によって短尺のスクラップ片100’に切断され、内壁100’bが切断面100’aから露出することから、放射能測定手段18によって放射能測定する際にも、スクラップ管材100自体の遮蔽機能の影響を受けて、線量測定値の精度が低下することも回避することが可能となる。
【0051】
又、切断手段12において、長尺のスクラップ管材100をホッパー26に投入することで、長尺のスクラップ管材100を長さ方向に揃え、その状態を維持して、ベルトコンベヤ28により長尺のスクラップ管材100を長さ方向へと送ることができる。そして、ベルトコンベヤ28の端部に配置されたカッター30により、長尺のスクラップ管材100を短尺のスクラップ片100’に切断することで、長尺のスクラップ管材100の長さ方向と交差する方向の切断面100’aを露出させるものである。
【0052】
又、切断手段12により切断されたスクラップ管材100のスクラップ片100’を洗浄する際に、ショットブラスト装置14’、16’を用いる場合には、金属ワイヤーを切断したカットワイヤーやその角を丸めた粒子、鋳鉄や鋳鋼の球形粒子等の投射材を、インペラー56の遠心力により、スクラップ片100’へと投射することで、スクラップ片100’の表面のみならず切断面100’aの方向からも乾式洗浄を効果的に行なうものである。又、乾式洗浄の際に汚水が発生せず、効率的に除染を行うことが可能となる。
一方、ドラム式湿式洗浄装置14を用いる場合には、水40,又は水40及び研磨媒体44とともに撹拌されることで、スクラップ片100’の表面のみならず切断面100’aの方向からも洗浄が効果的に行われるものである。
又、洗浄手段14と選別手段20との間に配置された、運搬手段222に設置されている放射能測定手段18Mによって、洗浄後のスクラップ片100’に残存する放射能レベルを検出し、検出された放射能レベルに応じて、選別手段20においてスクラップ片100’を選別処理することが可能となる。
【0053】
更に、切断手段12と洗浄手段14との間の運搬手段221にも、放射能測定手段18Sを設置することによって、洗浄前のスクラップ片100’の放射能レベルを検出し、洗浄が必要な放射能レベルのスクラップ片100’のみを、洗浄手段14へと運搬、投入するものである。一方、洗浄が不要な放射能レベルのスクラップ片100’については、洗浄手段14へと送ることなくスクラップ処理することで、スクラップの処理効率を向上させることが可能となる。この予備選別作業は、例えば、運搬手段221の運搬方向の正逆方向ごとに運搬先を別けることで、行なうことが可能である。
【0054】
又、分離手段16によって、洗浄手段14から排出されるスクラップ片100’をそれ以外のもの、例えば、鉄粉などのチリ110と分離することで、放射能測定手段18Mにおける、洗浄後のスクラップ片100’に残存する放射能レベルの検出精度を高めるものである。又、洗浄手段14から排出されるスクラップ片以外の、例えば、洗浄に用いられた水40や、スクラップ片100’から除去された金属粉等のチリ110を分離し、水40は洗浄手段14に戻して再利用し、金属粉等のチリなどをまとめて、廃棄物として処理することが可能となる。
【0055】
なお、本発明の実施の形態に係るスクラップ処理システム10を構成する各手段を、移動可能に構成すれば、瓦礫発生地にて各手段を稼動させて、所定値以上の放射能が検出されたスクラップ片100’の選別を行なうことが可能となる。そして、上記各手段が移動可能となるように、例えば、各手段をトレーラの荷台に搭載し、あるいは、各手段を搭載する特殊車両を構成するものである。これらのトレーラや特殊車両には、各手段の大きさに応じて、各々別々に載置され、又は、一台の車両に複数種類(或いは全て)が載置され、スクラップの発生地にて、上記所定の作業工程が円滑に実施されるように配置されるものである。しかも、本システムをスクラップ発生地にて展開する際に、外部電源を確保することなく、各手段の運転が可能となる。
【実施例】
【0056】
本発明者らは、図7に示されるショットブラスト装置を用いた、スクラップ片100’に対する乾式洗浄の効果について、スクラップ片に塗布した塗料の剥離状況を確認する手法で、実証実験を行なった。なお、以下のテスト条件に係るショットブラスト装置は、本発明者らが入手可能な市販品を採用したものであるが、本発明に係るショットブラスト装置は、必要に応じて最適な仕様の装置が選択されるものであり、以下の装置に限定されるものではないことは、理解されるであろう。
(1)テスト条件
ショットブラスト装置:新東工業株式会社 CNDX−01、ドラム自転速度(高速(揺動))、
パイプ材:TP(約30L)、
投射材:SUS−4(SUS304系、高度Hv440〜480、円柱状φ0.4×0.4mm、真比重7〜9(g/cm)、嵩比重4.7〜4.8(g/cm))
投射速度:73(m/s)、
投射時間:5〜30(min)、
(2)テスト結果
投射時間30minの時点で、スクラップ片に塗布した塗料は概ね除去された。この結果から、放射能汚染されたスクラップ片の表面洗浄においても、同様の洗浄効果が得られることが期待される。
【符号の説明】
【0057】
10:スクラップ処理システム、12:切断手段、14:洗浄手段、 18、18M、18S:放射能測定手段、20:選別手段、201:第1のダンパー、202:第2のダンパー、22:運搬手段、24:制御手段、26:ホッパー、28:ベルトコンベヤ、30:カッター、40:水、100:長尺のスクラップ管材、100’:スクラップ片、100’a:切断面、100’b:内壁、110:金属粉等のチリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9