特許第5972142号(P5972142)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972142
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】医療用治具
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/20 20060101AFI20160804BHJP
   E03D 9/00 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   A61B5/20
   E03D9/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-233593(P2012-233593)
(22)【出願日】2012年10月23日
(65)【公開番号】特開2014-83176(P2014-83176A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505246789
【氏名又は名称】学校法人自治医科大学
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 洋式
(72)【発明者】
【氏名】森田 辰男
【審査官】 野田 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−152089(JP,A)
【文献】 特開2002−62291(JP,A)
【文献】 特開2010−222823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06−5/22
E03D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋風大便器のリム部又はボウル部内に取り付けて使用される医療用治具において、
被験者が立位した状態で前記ボウル部内へ排尿行為を行ったときの尿流の着地点に応じて尿流率に関する排尿情報を知ることが可能な到達位置表示部が示されている紙片からなることを特徴とする医療用治具。
【請求項2】
前記到達位置表示部は、所定の尿流率に相当する複数の色に色分けされた領域から構成され、被験者が排尿行為を行ったときの尿流の着地点と前記複数の色に色分けされた領域とを比較することにより、被験者が尿流率に関する排尿情報を知ることが可能なことを特徴とする請求項1に記載の医療用治具。
【請求項3】
前記到達位置表示部は、尿流の到達距離に相当する複数の帯状ラインから構成され、被験者が排尿行為を行ったときの尿流の着地点と前記複数の帯状ラインとを比較することにより、被験者が尿流率に関する排尿情報を知ることが可能なことを特徴とする請求項1に記載の医療用治具。
【請求項4】
前記紙片は、水溶性の材質で構成されることを特徴とする請求項2又は3記載の医療用治具。
【請求項5】
洋風大便器のリム部又はボウル部内に取り付けて使用される医療用治具において、
被験者が立位した状態で前記ボウル部内へ排尿行為を行ったときの尿流の着地点に応じて尿流率に関する排尿情報を知ることが可能な到達位置表示部が示されている複数の横桟からなることを特徴とする医療用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレで排尿を行う被験者が自らの排尿状態を治具を介して直接的に観察することに係り、特に尿勢が低下する疾病の状態を簡便に認知可能とする医療用治具に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来の尿勢を検査する方法としては、排泄された尿の質量変化を経時的に測定するものがある(例えば、特許文献1参照)。
このような場合、被験者はトイレとは異なる検査装置に排尿しなければならないため、普段の排尿が行えず、診断に供することのできる尿勢の経時変動を示す尿流量曲線を得るためには複数回の測定が必要であり、診断効率が悪いという問題があった。
【0003】
また、トイレ、特に一般的に使用される洋風大便器の溜水水位変化を測定して、予め取得している溜水量と水位の検量関係から、尿勢の経時変動を示す尿流量曲線を得るものもある(例えば、特許文献2参照)。
このような場合も、被験者はこのトイレにおいては普段通りの排尿が期待できる半面、このような医療機器は泌尿器科の専門医療機関にしか存在しないことから、たまたま検査しようとした時に膀胱内に尿が貯まっていなかったり、治療に伴う改善の効果を連続的に調べたいと考えても、前記医療機器は全てのトイレに設置されておらず、全ての排尿行為に対して検査を行うことはできないという問題があった。
【0004】
また、一般のトイレで尿流量曲線を取得可能な、ポータブルの測定装置もある(例えば、特許文献3参照)。
このような場合、機器としては高価であり、疾病を感じている誰もが全ての排尿行為に対して検査を行うことはできないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−186601号公報
【特許文献2】特許3876919号公報
【特許文献3】特開2005−030788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、本発明の課題は、医療関係者ではなく一般の患者が、一般のトイレの排尿行為において、簡便に尿勢に関する指標を得ることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明によれば、洋風大便器のリム部又はボウル部内に取り付けて使用される医療用治具において、被験者が立位した状態でボウル部内へ排尿行為を行ったときの尿流の着地点に応じて尿流率に関する排尿情報を知ることが可能な到達位置表示部が示されている紙片からなることを特徴とすることにより、一般の患者が、一般のトイレの排尿行為において、簡便に尿勢に関する指標を得ることができ、その測定結果により、治療の必要性や、治療の効果を得ることができる。
【0008】
上記目的を達成するために請求項2記載の発明によれば、到達位置表示部は、所定の尿流率に相当する複数の色に色分けされた領域から構成され、被験者が排尿行為を行ったときの尿流の着地点と複数の色に色分けされた領域とを比較することにより、被験者が尿流率に関する排尿情報を知ることが可能なことを特徴とすることにより、医学的な知識がない一般の患者も自らの尿流が示す診断内容を容易に理解することができる。
【0009】
上記目的を達成するために請求項3記載の発明によれば、到達位置表示部は、尿流の到達距離に相当する複数の帯状ラインから構成され、被験者が排尿行為を行ったときの尿流の着地点と複数の帯状ラインとを比較することにより、被験者が尿流率に関する排尿情報を知ることが可能なことを特徴とすることにより、疾病の状態として尿流本数が分離し易かったり、飛沫となり易いような状態の尿流に対しても、広範囲の識別を可能にして、尿意に尿流量指標を判別することができる。
【0010】
上記目的を達成するために請求項4記載の発明によれば、紙片は、水溶性の材質で構成されることを特徴とすることにより、測定終了後に後始末の負担を被験者が感じることが無い。
【0011】
上記目的を達成するために請求項5記載の発明によれば、洋風大便器のリム部又はボウル部内に取り付けて使用される医療用治具において、被験者が立位した状態でボウル部内へ排尿行為を行ったときの尿流の着地点に応じて尿流率に関する排尿情報を知ることが可能な到達位置表示部が示されている複数の横桟からなることを特徴とすることにより、一般の患者が、一般のトイレの排尿行為において、簡便に尿勢に関する指標を得ることができ、その測定結果により、治療の必要性や、治療の効果を得ることができる。また、治療要否を判断するための使い方であったり、治療効果を認識させるための指標であったり、治療を行う医療関係者の医師に合わせた、様々な使い方を行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、医療関係者ではなく一般の患者が、一般のトイレの排尿行為において、簡便に尿勢に関する指標を得ることで、治療の必要性や、治療の効果を得ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】男性が立位で排尿したときの尿流飛行曲線を示す断面図である。
図2】本発明の第一の実施例を示す斜視図である。
図3】本発明の第二の実施例を示す斜視図である。
図4】本発明の第二の実施例を示す斜視図である。
図5】本発明の第四の実施例を示す斜視図である。
図6】本発明の第五の実施例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、男性が立位で排尿したときの尿流飛行曲線を示す断面図である。図1を使用して、洋風大便器で尿流率を推定する方法について詳説する。
【0015】
一般的に男性は立位で排尿を行うが、男児のころから尿流の飛行距離を使って、自らの元気さを示すことが行われてきた。ところが男性は下部尿路に精子に対して栄養を与える前立腺という器官が存在し、生殖年齢を超えた頃から肥大化して尿路を圧迫し、高齢化と共に尿勢が弱まることが一般的である。尿勢の低下によりQOLが低下するとされており、60歳代以上においては40%以上の方がQOLの低下を実感しているとされている。しかしながら排泄に関わる疾病であることから治療開始に後ろ向きな方が多く、厚生省統計によれば前立腺肥大患者の内で実際に治療を行っているのは15%程度とされている。
【0016】
尿勢を評価する時に実施される尿水力学的検査において、最も重要な指標は最大尿流率(mL/s)であり、単位時間当たりの排尿量の最大値である。図1は床から男性性器までの高さが650mm〜800mmの成人男性が、男性性器を水平に保持して排尿した場合に、尿流がどのような飛行曲線を示すかを図示したものである。前立腺肥大症のガイドラインとしては、最大尿流率15mL/s以上は正常、最大尿流率10〜15mL/sは軽症、最大尿流率 5〜10mL/sは中等症、および、最大尿流率 5mL/s以下は重症とされている。我々は最大尿流率10mL/s以下の場合、床から男性性器までの高さ違い、つまり身長差があっても尿流飛行曲線はほぼ同じような位置を通ることに着目し、一般的に家庭のトイレで使用される洋風大便器のリム面で尿流飛行距離を測定し、被験者自身が容易に最大尿流率を推定できるようにしたものである。洋風大便器1に対して、水平に保持した男性性器2が様々な尿流率で排泄した場合の状態を示している。
【0017】
図2は、本発明の第一の実施例を示す斜視図である。図3は、本発明の第二の実施例を示す斜視図である。図4は、本発明の第三の実施例を示す斜視図である。図5は、本発明の第四の実施例を示す斜視図である。図2乃至図5を使用して、ディスポーザブルタイプの医療用治具による尿流率推定方法について詳説する。
【0018】
洋風大便器1のリム面3の開口位置に対して、ディスポーザブル医療用治具4を載置する。ディスポーザブル医療用治具4には、リム面3の開口位置に合わせるためのマーキング5が印刷されており、容易に誤差なく位置合わせができるようになっている。ディスポーザブル医療用治具4の両端には水溶性のテープ6が取り付けられており、尿流によって洋風大便器1からずれることが無いように配慮されている。中央には排尿方向の目安となるセンターライン7と、到達距離を簡便に示す帯状ライン8が印刷されている。センターライン近傍には該当する尿流率が示されている事例を示したが、各帯状ライン8範囲を赤色・黄色・青色で示せば、医療知識がない方においても疾病の状態を容易に理解することができる。本図においては帯状ライン8を円弧状として示したが、立ち位置がずれることを仮定し、帯状ライン8を各々平行にしたものであっても良い。
【0019】
排泄された尿流はディスポーザブル医療用治具4に到達して、穴を開けることによって、一般の方でも到達位置を把握し、最大尿流率に換算できるようになっている。ディスポーザブル医療用治具4の紙質としては、測定後に洋風大便器1で水洗されること配慮して水溶性のものとすべきである。出願人による確認によれば、トイレットペーパーの紙質から、便座の上に敷く便座シートの紙質範囲が、尿流によって穴が開き、洋風大便器1で水洗して処理できるものと分かった。
【0020】
図3は、本発明の第二の実施例を示す斜視図である。図3を使用して、ディスポーザブルタイプの別案の医療用治具による尿流率推定方法について詳説する。
【0021】
図2の事例はリム面に載置する事例を示したが、図3はボウル9内に載置する事例である。洋風大便器1のボウル9の棚部に対して、ディスポーザブル医療用治具4を載置する。健康診断で大便の採取のためのシートを載置する位置である。ディスポーザブル医療用治具4をボウル9に固定するテープ等が不要であるというメリットがある。ボウル9内には水洗のための溜水が存在するため、前記採便シートと同じく、水溶するまでに所定時間かかるようなものが推奨される。
【0022】
図4図5の事例は、リム面3に平面度良くディスポーザブル医療用治具4を載置する方法を示したものである。具体的には、図4の事例は薄板状で馬蹄形のフレーム10とフレーム11の隙間にディスポーザブル医療用治具4を挟み込んでいる。図5の事例は、ワイヤ状のフレーム12と洋風大便器1の間でディスポーザブル医療用治具4を挟み込んでいる。また図5の事例は尿流到達位置を色分けしている。最大尿流率が5mL/sなら「赤色」、最大尿流率が5mL/s乃至10mL/sなら「黄色」、および、最大尿流率が10mL/sなら「青色」としておけば、医学的な知識の乏しい被験者に対しても、自らの状態を容易に認識することができる。
【0023】
図6は、本発明の第三の実施例を示す斜視図である。図6を使用して、リユースタイプの医療用治具による尿流率推定方法について詳説する。
【0024】
洋風大便器1のリム面3の開口位置に対して、リユース医療用治具13を載置する。リユース医療用治具13には、リム面3の開口位置に合わせるためのマーキング14が設けられており、容易に誤差なく位置合わせができるようになっている。リユース医療用治具13の中央には排尿方向の目安となるセンターライン15と、到達距離を簡便に示す少なくとも1つ以上の横桟16が設けられている。センターライン15には該当する尿流率が示されており、各横桟16は赤色・黄色・青色に色別されることで、医療知識がない方においても疾病の状態を容易に理解することができる。各横桟16の位置は疾病の診断基準や、各患者の動機付けのための目標となる最大尿流率などに合わせられる様、前後にスライド可能である。尿と接することによって腐食等が発生しないよう、リユース医療用治具13の材質としては、ポリプロピレンやポリエチレンなどが推奨される。
【符号の説明】
【0025】
1…洋風大便器
2…男性性器
3…リム面
4…ディスポーザブル医療用治具
5…マーキング
6…(水溶性の)テープ
7…センターライン
8…帯状ライン
9…ボウル
10…(薄板状で馬蹄形の)フレーム
11…(薄板状で馬蹄形の)フレーム
12…(ワイヤ状の)フレーム
13…リユース医療用治具
14…マーキング
15…センターライン
16…横桟
図1
図2
図3
図4
図5
図6