特許第5972143号(P5972143)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アロン化成株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5972143-蓋体 図000002
  • 特許5972143-蓋体 図000003
  • 特許5972143-蓋体 図000004
  • 特許5972143-蓋体 図000005
  • 特許5972143-蓋体 図000006
  • 特許5972143-蓋体 図000007
  • 特許5972143-蓋体 図000008
  • 特許5972143-蓋体 図000009
  • 特許5972143-蓋体 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972143
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】蓋体
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/14 20060101AFI20160804BHJP
   E03B 9/10 20060101ALI20160804BHJP
   E03F 5/10 20060101ALI20160804BHJP
   E03F 5/02 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   E02D29/14 E
   E03B9/10 B
   E03F5/10 Z
   E03F5/02
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-237988(P2012-237988)
(22)【出願日】2012年10月29日
(65)【公開番号】特開2013-130052(P2013-130052A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2015年6月18日
(31)【優先権主張番号】特願2011-254027(P2011-254027)
(32)【優先日】2011年11月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(74)【代理人】
【識別番号】100075476
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐見 忠男
(72)【発明者】
【氏名】野里 暢宏
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−185544(JP,A)
【文献】 特開昭58−051128(JP,A)
【文献】 特開平11−081361(JP,A)
【文献】 特開2000−033627(JP,A)
【文献】 特開2003−003539(JP,A)
【文献】 特開2002−275925(JP,A)
【文献】 特開2001−123470(JP,A)
【文献】 特開2003−239312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/12〜 29/14
E03F 1/00〜 11/00
E03B 1/00〜 11/16
H02G 9/00〜 9/12
B29C 45/00〜 45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中の埋設物を利用可能とするべく地表に設けられる合成樹脂製の蓋体であって、
板部と、該板部を補強する凸条状をなす複数のリブと、を備えており、
上記板部と上記複数のリブは、射出成形により一体に成形されているとともに、
上記板部の地表側となる表面を上面とした場合に、上記板部の上面に上記複数のリブが立設されており、
上記複数のリブの高さは、上記板部の厚みより大きい
ことを特徴とする蓋体。
【請求項2】
上記複数のリブは、異なる方向へ延びるリブ相互が交差してなる交差部を有するように形成されたものであり、
上記板部の上面に上記交差部を有する上記複数のリブが立設されている
請求項1に記載の蓋体。
【請求項3】
さらに、上記複数のリブを内側に囲い込むように上記板部の周縁部に立設された枠部と、を備えており、
上記枠部は、上記板部及び上記複数のリブとともに射出成形により一体に成形されている
請求項1又は請求項2に記載の蓋体。
【請求項4】
上記板部の地中側となる表面を下面とした場合に、上記射出成形で溶融樹脂を充填するためのゲートが、上記板部の下面に設けられている
請求項1から請求項3のうち何れか一項に記載の蓋体。
【請求項5】
さらに、上記複数のリブの上面を覆うカバー板と、を備える
請求項1から請求項4のうち何れか一項に記載の蓋体。
【請求項6】
中央部において、上記板部の上面に上記複数のリブが立設されている構成とした
請求項1から請求項5のうち何れか一項に記載の蓋体。
【請求項7】
上記埋設物は、地下埋設器であり、該地下埋設器を収容する地下埋設器用ボックスに設けられた開口部を開閉自在とするべく、該地下埋設器用ボックスに取り付けられている
請求項1から請求項6のうち何れか一項に記載の蓋体。
【請求項8】
上記埋設物は、ますであり、該ますに設けられた開口部を閉塞するべく、該ますに取り付けられている
請求項1から請求項6のうち何れか一項に記載の蓋体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば雨水ます、下水ます、排水ます、公共ます等のます、あるいは量水器、水道メーター、散水栓、止水栓、給水栓、電磁弁等の地下埋設器などといった地中の埋設物を地表からカバーして保護するとともに、必要時に開けることで該地中の埋設物を地表から利用できるようにするための蓋体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、地下埋設器用ボックスは、地中に埋設された止水栓等の地下埋設器の周囲を囲む筒状の本体を有しており、該本体の上部に開口部が設けられ、該開口部の内側に該開口部を開閉する蓋体を取り付けて構成されている(例えば特許文献1,2参照)。
また、ますは、地中に埋設されたます本体の上部に立管を接続し、該立管の上端に枠を取り付け、該枠に蓋を着脱自在に嵌め込んで構成されている(例えば特許文献3参照)。
上記地下埋設器用ボックスやますにおいては、地下埋設器やます本体等の埋設物が地中に設置されていることから、上記蓋体は、必要時に地中の埋設物を利用出来るようにするため、地面に露出して設けられており、地面とともに衝撃や荷重を受けることが多い。そこで、従来の蓋体は、上記開口部と対応する平面形状とされた板部を有するとともに、上記本体の内側の面となる該板部の下面に複数条のリブを形成し、該板部を該リブで補強している(例えば特許文献3〜9参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3286670号公報
【特許文献2】特開2002−220857号公報
【特許文献3】特開2012−87566号公報
【特許文献4】特許第2954933号公報
【特許文献5】特開2004−27562号公報
【特許文献6】特開2009−185544号公報
【特許文献7】特開2010−37935号公報
【特許文献8】特開2010−265629号公報
【特許文献9】特開2010−265732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来の蓋体において、射出成形で得られる合成樹脂製の蓋体は、耐荷重の向上を図ることが難しいという問題があった。
すなわち、図9(a)に示すように、合成樹脂製の蓋体100は、板部101の下面のみに複数条のリブ102が突設された構成とされている。一般的に合成樹脂製の該蓋体100は、射出成形で該板部101と該複数条のリブ102とを一体に形成して得られるが、該射出成形に際しては金型内におけるリブ102の形成部位で、異なる方向から流動してきた溶融樹脂同士がぶつかり合いやすい。このようにぶつかり合った溶融樹脂同士は、完全に溶け合う前に固化する場合があり、このような場合、該リブ102上にウエルドが発生する。
また図9(b)に誇張して示したように、上記蓋体100に上方向から衝撃や荷重を加えた場合(図中で白の下向きの矢印)、上記板部101は荷重を受けて下方へたわみ、該板部101を補強する上記リブ102は、該板部101のたわみを抑えようとして、該板部101の下面に沿って突っ張る。すると、該荷重に耐えるべく突っ張った上記リブ102には、該リブ102を水平方向へ引っ張って伸ばそうとする力(引っ張り応力)が加わる(図中で黒の横向きの矢印)。
上記リブ102に加わる上記引っ張り応力は、該リブ102のウエルドが発生した箇所(ウエルド発生部)に対し、該ウエルド発生部を水平方向へ引き離すように作用し、その結果、該ウエルド発生部で該リブ102が亀裂を生じたり、割れたりしやすくなるので、該リブ102は上記板部101を補強するのに十分な強度を発揮することができない。
従って、上記したように、ウエルドが発生しやすいリブ102に引っ張り応力が加わる従来の蓋体100の構成では、例え引っ張り強度や曲げ強度の強い合成樹脂を材料に用いたとしても、該リブ102がウエルドに影響されて設計通りの強度を十分に発揮することができず、耐荷重の向上を図ることが難しい。
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、合成樹脂を材料に用いながら、耐荷重の向上を図ることができる蓋体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記従来の問題点を解決する手段として、請求項1に記載の蓋体の発明は、地中の埋設物を利用可能とするべく地表に設けられる合成樹脂製の蓋体であって、板部と、該板部を補強する複数のリブと、を備えており、上記板部と上記複数のリブは、射出成形により一体に成形されているとともに、上記板部の地表側となる表面を上面とした場合に、上記板部の上面に上記複数のリブが立設されており、上記複数のリブの高さは、上記板部の厚みより大きいことを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の蓋体の発明において、上記複数のリブは、異なる方向へ延びるリブ相互が交差してなる交差部を有するように形成されたものであり、上記板部の上面に上記交差部を有する上記複数のリブが立設されていることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の蓋体の発明において、さらに、上記複数のリブを内側に囲い込むように上記板部の周縁部に立設された枠部と、を備えており、上記枠部は、上記板部及び上記複数のリブとともに射出成形により一体に成形されていることを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のうち何れか一項に記載の蓋体の発明において、上記板部の地中側となる表面を下面とした場合に、上記射出成形で溶融樹脂を充填するためのゲートが、上記板部の下面に設けられていることを要旨とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のうち何れか一項に記載の蓋体の発明において、さらに、上記複数のリブの上面を覆うカバー板と、を備えることを要旨とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のうち何れか一項に記載の蓋体の発明において、中央部において、上記板部の上面に上記複数のリブが立設されている構成としたことを要旨とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項6のうち何れか一項に記載の蓋体の発明において、上記埋設物は、地下埋設器であり、該地下埋設器を収容する地下埋設器用ボックスに設けられた開口部を開閉自在とするべく、該地下埋設器用ボックスに取り付けられていることを要旨とする。
請求項8に記載の発明は、請求項1から請求項6のうち何れか一項に記載の蓋体の発明において、上記埋設物は、ますであり、該ますに設けられた開口部を閉塞するべく、該ますに取り付けられていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
〔作用〕
本発明の蓋体によれば、板部と該板部を補強する複数のリブとを、合成樹脂を材料に用いた射出成形によって一体に成形することで得られたものであるとともに、該複数のリブは該板部の上面に立設されている。このため上記蓋体上を、例えば人や自転車や自動車等が通ることで、該蓋体に上方から衝撃や荷重が加わる場合には、上記複数のリブが該衝撃や該荷重を受け止めるとともに、上記板部が該複数のリブを下方から支えることで、該蓋体は衝撃や荷重に耐える。
上記板部は、衝撃や荷重を受けることで下方へたわむが、該板部が下方へたわんだ状態で、該板部の上面に設けられたリブには、該リブを水平方向へ押し縮めようとする力(圧縮応力)が加わる。そして該リブがウエルド発生部を有するものであっても、該リブに加わった該圧縮応力が該ウエルド発生部に向けて水平方向から作用するので、上記複数のリブは、ウエルドに影響されることなくその強度を十全に発揮することができる。従って、本発明の蓋体は、上記板部を上記複数のリブが補強するのみならず、上記板部のたわみが上記複数のリブに圧縮応力を加えて該複数のリブを補強し、ウエルドの影響によるリブの強度低下を抑制するので、合成樹脂を材料に用いながら、耐荷重の向上を図ることができる。
また上記複数のリブが、異なる方向へ延びるリブ相互が交差してなる交差部を有する形状、例えば縦方向へ延びるリブと横方向へ延びるリブとが交差してなる四角格子状、右斜め方向へ延びるリブと左斜め方向へ延びるリブとが交差してなる菱形格子状、ハニカム状、放射状等に形成されていると、補強性能は向上するが、溶融樹脂の流れが複雑になって該交差部で上記ウエルドが発生しやすくなる。本発明であれば、特にこのような交差部を有する複数のリブが設けられた蓋体においては、該交差部に発生したウエルドに影響されることなく、交差部を有する形状としたことに基づく上記複数のリブの補強性能を十全に発揮することができるため、耐荷重のさらなる向上を図ることができる。
また上記蓋体は、上記複数のリブを内側に囲い込むように枠部を設けることが望ましく、該枠部を設けることで、該枠部で上記複数のリブが補強され、該複数のリブに圧縮応力が均等に加わるので、安定した耐荷重の向上を図ることができる。
また上記蓋体は、射出成形で溶融樹脂を充填するためのゲートを上記板部の下面に設けることが望ましく、該板部の下面に設けることで、該ゲートによるゲート痕が目立ちにくく、該蓋体の外観品質の向上を図ることができる。なお該ゲートを該板部の下面に設けると、上記複数のリブにおけるウエルドの発生は増加する傾向があるが、本発明の蓋体は該ウエルドの影響による耐荷重の低下を抑制することができる。
また上記蓋体は、上記複数のリブの上面を覆うカバー板を備えることが望ましく、該カバー板を備えることで、上記複数のリブの間にゴミや砂などが進入することを抑制することができる。
また上記蓋体は、該蓋体の中央部において上記板部の上面に上記複数のリブが立設されている構成とすることが望ましく、衝撃や荷重が主として加わる中央部の耐荷重を向上させることができる。
また上記蓋体は、地下埋設器用ボックスあるいはますの蓋体に使用することで、その上に人が乗ったり、その上を自転車や自動車が通ったりすることが日常的であり、優れた耐荷重を要求される蓋体として好適である。
【0007】
〔効果〕
本発明の蓋体によれば、合成樹脂を材料に用いながら、該蓋体の耐荷重の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】地下埋設器用ボックスを示す(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図。
図2】第1実施形態の蓋体を示す(a)は平面図、(b)は底面図、(c)は側面図、(d)は図2(a)の2D−2D線における断面図。
図3】(a),(b)は実施形態の蓋体が荷重に耐える状態を示す概念図。
図4】第2実施形態の蓋体を示す(a)は平面図、(b)は底面図、(c)は側面図、(d)は図3(a)の3D−3D線における断面図、(e)は図3(a)の3E−3E線における断面図。
図5】ますを示す側面図。
図6】第3実施形態の蓋体を示す(a)は平面図、(b)は側断面図。
図7】別形態の蓋体を示す(a)は平面図、(b)は図3(a)の3B−3B線における断面図。
図8】別形態の蓋体を示す(a)は平面図、(b)は該蓋体が荷重に耐える状態を示す概念図。
図9】(a),(b)は従来の蓋体が荷重に耐える状態を示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の蓋体を具体化した第1実施形態について詳細に説明する。
第1実施形態の蓋体は、地下埋設器用ボックスの蓋体として使用されるものであり、まず該地下埋設器用ボックスの概略構成について説明する。
図1(a)〜(c)に示すように、地下埋設器用ボックスであるメーターボックス10は、本体11と、該本体11に取り付けられた蓋体12と、を備えている。
上記本体11は、筒状に形成され、その内部は中空となっているとともに、該本体11の外周面上には、該本体11を補強するべく、複数の補強リブ11aと、フランジ11bと、が形成されている。該本体11の内部の底には、地下埋設器である量水器FMが収容されている。該本体11は、地中に埋設された該量水器FMが土中に埋まってしまわないように設けられたものであり、該量水器FMと同じく地表GLよりも地下に埋設されている。
【0010】
上記本体11の上端の開口は、上記量水器FMを利用するための開口部13とされ、該開口部13が地表GLで開口するように配設されている。上記蓋体12は、該開口部13を開閉自在とするべく、該開口部13の内側に取り付けられている。
上記本体11の内周面で上記開口部13の内側には、支持リブ14と、回動軸15と、が突出形成されている。
上記支持リブ14は、上記本体11の上記開口部13を内側から補強するとともに、上記蓋体12で上記開口部13を閉塞した際、その上面に該蓋体12が載せられることで、該蓋体12を下方から支持するものである。
上記回動軸15は、上記開口部13の両内側面で後縁部から、該開口部13の内側に向かって伸びるように、左右一対が突設されている。
【0011】
次に、上記蓋体12について、詳細に説明する。
図2(a)〜(d)に示すように、上記蓋体12は、平板状なす板部21と、該板部21の地表側の表面である上面に凸条状に立設された複数のリブ22と、を備えている。該蓋体12において、板部21の周縁には枠部23が、上記複数のリブ22を内側に囲い込むように形成されている。
上記板部21は、平板状に形成されることによって一枚板とされており、横方向(面方向)に加わる引っ張り荷重に対して良好に耐えることができる。
上記リブ22は、上記板部21の上面から複数条が立ち上がり、かつ異なる方向へ延びるリブ22相互が交差してなる交差部22Aを有するように形成されている。具体的にこの実施形態の複数のリブ22は、図2(a)に示すように、右斜め方向に延びるように並設された複数条のリブ22と、左斜め方向に延びるように並設された複数条のリブ22とが相互に交差して交差部22Aを形成し、該交差部22Aに囲まれた内側に菱形の空間が形成される菱形格子状をなすように形成されている。また上記リブ22は、下端が上記板部21の上面と一体化されている。
また上記リブ22にあっては、その高さを、板部21の厚みよりも大きく設定されている。これは、通常の蓋体として、滑り止めや模様等を目的として該蓋体の表面部分に低い小さな凹凸を設けたものがあるが、このような凹凸では蓋体の補強機能を発揮することが出来ず、該補強機能を発揮するにはリブ22を所定の高さに設定する必要があるためである。
上記枠部23は、上記複数のリブ22を内側に囲い込む枠状に形成されている。また該枠部23は、内周面が上記複数のリブ22の外周面と繋がることで一体化されており、さらに内周面の下端が上記板部21の周縁と繋がることで一体化されている。
【0012】
上記蓋体12において、両側面の後端部(図2(a)中で上側端部、図2(b)中で下側端部)には、回動孔24が凹設されている。該回動孔24においては、その周縁の壁部を一部切り欠くことにより、着脱口24aが形成されている。
上記蓋体12は、上記本体11の開口部13に設けられた上記回動軸15を、上記着脱口24aから上記回動孔24の内側へ挿入することで、上記本体11の開口部13の内側において、該開口部13を開閉することができるように、回動自在に取り付けられている。また該蓋体12は、板部21の上面に複数のリブ22が立設された構成となっているので、上記本体11の開口部13に取り付けられ、かつ該開口部13が該蓋体12によって閉塞された状態で、上記板部21が上記本体11の内側に向き、上記複数のリブ22が上記本体11の外側に向くように配置されている。
また上記蓋体12の前部(図2(a)中で下部)には、指掛け凹部25が凹設されており、上記開口部13の開閉時には、該指掛け凹部25に指を掛けることで、該蓋体12を容易に開閉操作することができる。
【0013】
上記蓋体12は、合成樹脂を材料に用いた射出成形により、上記板部21、上記複数条のリブ22、及び、上記枠部23を一体に形成して得られる。特に図示はしないが、該蓋体12を射出成形するための金型は、溶融樹脂を充填するためのゲートが、該板部21の下面(地中側となる表面)側に配置されている。このため該板部21の下面には、該ゲートによるゲート痕21Aが形成されている(図2(b)参照)。このように金型のゲートを上記蓋体12の板部21の下面に設けた場合には、上記複数条のリブ22の交差部22Aにウエルドが発生しやすくなる。
ここで、本発明の蓋体12は、ウエルドが発生した状態にあってなお補強のためのリブ22がその強度を十全に発揮できる構成としたことを特徴とする。そして本発明の蓋体12においては、敢えて板部21の下面にゲートを設け、該リブ22の交差部22Aでウエルドを発生しやすくして、他の箇所でウエルドを発生しにくくすることにより、該ウエルドの発生する位置をコントロールして耐荷重の低下を抑制している。
【0014】
上記蓋体12に使用する合成樹脂について説明すると、該材料は射出成形が可能であれば特に限定されず、通常使用されている材料を使用可能であるが、入手容易性、強度、耐水性、耐薬品性、電気絶縁性、生産性等の観点から、熱可塑性樹脂を用いることが望ましい。該熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のエステル系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)等が挙げられる。
上記蓋体12に使用する合成樹脂には上記熱可塑性樹脂の他に、射出成形が可能であれば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン等の熱硬化性樹脂を用いてもよい。
また上記蓋体12の材料として、上記のような合成樹脂中にガラス繊維や炭素繊維を入れることで強度を向上させた繊維強化プラスチック(FRP)を使用してもよい。
なお上記合成樹脂には、新材(バージン材)を使用することに限らず、再生材(リサイクル材)を使用してもよい。
【0015】
上記メーターボックス10に上記蓋体12を取り付けた状態で、該蓋体12に上方向から荷重が加わる場合、図3(a)に示すように、該荷重(図中で白の下向きの矢印)は、上記複数条のリブ22に対して、該リブ22を上下方向に潰そうとする圧縮荷重として加わる。該複数条のリブ22は、該圧縮荷重を受けるのに好適な形状、つまり交差部22Aを有する菱形格子状とされているので、該圧縮荷重に対して良好に耐えることができる。そして上記板部21は、荷重を受ける上記複数条のリブ22を下方から支持する。
図3(b)に示すように、上記荷重よりも更に大きな荷重が上記蓋体12に加わる場合、上記複数条のリブ22は該荷重に耐え、上記板部21は、該複数条のリブ22を支持しつつ、下方へたわむ。このように下方へたわんだ板部21は、図中に黒の横方向の矢印で示すように、上記複数条のリブ22に対して水平方向へ圧縮応力を加えることで該複数条のリブ22の強度を補い、該複数条のリブ22を補強する。
つまり、上記複数条のリブ22の交差部22Aにウエルドが発生している状態で大きな荷重が加わると、十分にリブ22の強度を確保できない可能性がある。しかし上記のようにリブ22に対して水平方向へ圧縮応力を加えると、該圧縮応力は該リブ22に発生した該ウエルドに向かって水平方向から作用し、該ウエルドを境にして該ウエルドから離れる方向への該リブ22の変形が抑制されるので、該ウエルドが発生した部位における該リブ22の強度を十分に確保することができる。従って上記複数条のリブ22は、該ウエルドに影響されることなくその強度を十全に発揮し、大きな荷重であっても良好に耐えることができるようになるため、上記蓋体12の耐荷重が向上する。
また上記板部21は、一枚板状とすることで、下方へたわんだ際に横方向(面方向)に加わる引っ張り荷重を受けるのに最適な形状となっているため、複数条のリブ22の強度を好適に補うことができ、上記蓋体12の耐荷重の向上に貢献する。
【0016】
さらに該複数条のリブ22は、外周縁で上記枠部23と一体化され、かつ上記枠部23は上記板部21と一体化されている。該枠部23によって補強された複数条のリブ22は、荷重による変形を良好に抑制され、かつ該枠部23もまた板部21と一体化されることで変形を抑制されている。このため上記板部21がたわむことによる圧縮応力は、複数条のリブ22の全体に均等に加わるようになるので、上記蓋体12の耐荷重を安定して向上させることが可能となる。
従って上記蓋体12は、上記複数条のリブ22が好適に荷重に耐え、該複数条のリブ22を下方から支える上記板部21はたわんで該リブ22に圧縮応力を加えることで該リブ22の強度を補い、更に枠部23がリブ22を補強することで、通常の金属を材料とするものと比較しても遜色のない耐荷重を発揮する。
【0017】
〔第2実施形態〕
第2実施形態の蓋体について詳細に説明する。なお、この実施形態については、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
図4(a)〜(e)に示すように、蓋体12は、中央部12Aと、平面視で該中央部12Aの左右両側にそれぞれ配された一対の側部12Bと、を有している。
【0018】
上記中央部12Aは、平板状なす板部である下板部21Aと、該下板部21Aの上面に立設された複数の中央リブ22Aと、を備えている。
上記下板部21Aは、平板状に形成されることによって一枚板となっており、その下面は凹凸のないフラット形状とされることにより、横方向(面方向)に加わる引っ張り荷重に対して良好に耐えることができる。
上記中央リブ22Aは、上記下板部21Aの上面から複数条が立ち上がり、かつ該複数条の中央リブ22A相互が斜めに交差することで、該複数条の中央リブ22A相互の間に平面視で菱形の空間が形成されるように、交差状に配置されている。また上記中央リブ22Aは、下端が上記板部21の上面と一体化されている。
【0019】
上記側部12Bは、平板状なす板部である上板部21Bと、該上板部21Bの下面に立設された複数の側部リブ22Bと、を備えている。
上記上板部21Bは、平板状に形成されることによって一枚板となっており、横方向(面方向)に加わる引っ張り荷重に対して良好に耐えることができる。
上記側部リブ22Bは、上記上板部21Bの下面から複数条が立ち上がり、かつ該複数条の側部リブ22B相互が斜めに交差することで、該複数条の側部リブ22B相互の間に平面視で菱形の空間が形成されるように、交差状に配置されている。また上記側部リブ22Bは、上端が上記上板部21Bの下面と一体化されている。
【0020】
上記中央部12A及び上記側部12Bには、複数の上記中央リブ22A及び上記側部リブ22Bのそれぞれを内側に囲い込むように、内枠部23Aが設けられている。
上記内枠部23Aは、上記下板部21Aの周縁から上方向、及び上記上板部21Bの周縁から下方向へそれぞれ差し出されることで、下端あるいは上端が該下板部21Aの上面あるいは該上板部21Bの下面と一体化されている。
上記内枠部23Aは、その内周面が上記中央リブ22A及び上記側部リブ22Bのそれぞれの外周面と繋がることで一体化されている。
従って、上記中央部12Aと、左右一対の上記側部12Bとは、上記内枠部23Aを介して繋がることで一体化されている。
また上記内枠部23Aの外周面からは、外枠部23Bが横方向へ差し出されて形成されている。該外枠部23Bは、内側にリブを設けることで補強された樋状に形成され、強度向上と軽量化が図られており、上記内枠部23Aを補強している。
【0021】
上記蓋体12において、両側面の後端部(図4(a)中で上側端部、図4(b)中で下側端部)には、回動孔24が凹設されている。該回動孔24においては、その周縁の壁部を一部切り欠くことにより、着脱口24aが形成されている。
上記蓋体12は、上記本体11の開口部13に設けられた上記回動軸15を、上記着脱口24aから上記回動孔24の内側へ挿入することで、上記本体11の開口部13の内側において、該開口部13を開閉することができるように、回動自在に取り付けられている。そして上記蓋体12は、上記本体11の開口部13に取り付けられ、かつ該開口部13が該蓋体12によって閉塞された状態で、上記中央部12Aの上記下板部21Aが上記本体11の内側に向き、上記複数の中央リブ22Aが上記本体11の外側に向くように配置されている。
また上記蓋体12の前部(図4(a)中で下部)には、指掛け凹部25が凹設されており、上記開口部13の開閉時には、該指掛け凹部25に指を掛けることで、該蓋体12を容易に開閉操作することができる。
上記蓋体12は、合成樹脂を材料に用いた射出成形により、上記中央部12Aの下板部21Aと中央リブ22A、上記左右一対の側部12Bの上板部21Bと側部リブ22B、及び、内枠部23Aと外枠部23Bを一体成形して得られる。該蓋体12に使用する材料は、上記の実施形態で挙げたものと同様である。
【0022】
上記メーターボックス10に上記蓋体12を取り付けた状態で、該蓋体12に上方向から荷重が加わる場合、該荷重は上記中央部12Aを主要部として、上記複数条の中央リブ22Aに対し、該中央リブ22Aを上下方向に潰そうとする圧縮荷重として加わる。該複数条の中央リブ22Aは、該荷重を受けるのに最適な交差状の形状とされており、該荷重に対して良好に耐えることができる。
また加わる荷重が大きなものである場合、上記複数条の中央リブ22Aを下方から支える上記下板部21Aは、下方にたわむことで該複数条の中央リブ22Aの強度を補う。
さらに該複数条の中央リブ22Aは、外周縁で上記内枠部23Aと一体化され、かつ上記内枠部23Aは上記下板部21Aと一体化されているので、該内枠部23Aによって補強された複数条の中央リブ22Aは、荷重による変形を良好に抑制され、かつ該内枠部23Aもまた下板部21Aと一体化されることで変形を抑制されているので、複数条の中央リブ22Aを好適に補強する。
【0023】
上記左右一対の側部12Bは、上記内枠部23Aを介して上記中央部12Aと一体化されている。該側部12Bにおいては、上記蓋体12が上記メーターボックス10の本体11の支持リブ14に載せられていることから、その下面の一側縁と前縁が支持リブ14によって下方から支持された状態にある。従って上記支持リブ14によって一側縁と前縁を下方から支持された該側部12Bには、荷重が加わった中央部12Aが下方へ落ちないように吊って支持するような引っ張り荷重が加わる。上記したように該側部12Bにおいて上板部21Bは、一枚板とされることで面方向に加わる引っ張り荷重を受けるのに最適な形状であるので、該荷重に対して良好に耐えることができる。また上記側部リブ22Bは、引っ張り荷重を受けて伸びようとする上板部21Bの変形を抑え、該上板部21Bを好適に補強する。
上記蓋体12は、上方向から加わる荷重を受ける主要部となる中央部12Aでは、中央リブ22Aがその強度でもって荷重を好適に受けつつ、下板部21Aが中央リブ22Aの強度を補うように配置される。また上記蓋体12において上記中央部12Aを両側から吊持する左右一対の側部12Bは、上板部21Bと側部リブ22Bとによる引っ張り荷重を受けるのに適した形状とされる。このため上記蓋体12は、通常の金属を材料とするものと比較しても遜色のない強度を発揮する。
【0024】
〔第3実施形態〕
以下、第3実施形態の蓋体について詳細に説明するが、該実施形態の蓋体は、ますの蓋体として使用されるものであり、まず該ますの概略構成について説明する。
図5に示すように、雨水ますは、有底筒状のます本体31を有している。該ます本体31の上部には、立管用受口31aが設けられ、該立管用受口31aには立管32が接続されている。該ます本体31の両側部には、雨水管用受口31bが設けられ、これら雨水管用受口31bには、雨水管33が接続されている。該ます本体31の内部には、土砂捕捉用のバスケット34が収容されている。
上記立管32は、その上端が地面まで延びており、また該立管32の上端には枠35が取り付けられている。該枠35の内側は開口部36とされ、地表から該開口部36を介して前記ます本体31の内側のバスケット34にアクセスすることができるようになっている。また該枠35の開口部36の上端内周縁には、段差部37が形成されており、該段差部37に載置するようにして、蓋体12が開口部36の内側に着脱自在に嵌め込まれている。
【0025】
図6(a),(b)に示すように、上記蓋体12は、円板状なす板部21と、該板部21の上面に立設された複数のリブ22と、を備えている。該蓋体12において、板部21の周縁には枠部23が、上記複数のリブ22を内側に囲い込むように円枠状に形成されている。
上記複数のリブ22は、右斜め方向に延びるように並設された複数条のリブ22と、左斜め方向に延びるように並設された複数条のリブ22とが相互に交差して交差部22Aを形成し、該交差部22Aに囲まれた内側に菱形の空間が形成される菱形格子状をなすように形成されている。
上記蓋体12は、合成樹脂を材料に用いた射出成形により、上記板部21、上記複数のリブ22、及び、上記枠部23を一体に形成して得られ、該板部21の下面にはゲート痕21Aが形成されている。さらに該板部21の下面の周縁部には、円筒状の挿入部21bが形成され、上記蓋体12を上記開口部36に嵌め込む際、該挿入部21bが上記枠35の内側に挿入される。
上記蓋体12に上方向から荷重が加わる場合は、上記複数のリブ22が該荷重を受けて耐え、また上記板部21が下方へたわみ、該リブ22に対して水平方向へ圧縮応力を加えることで該リブ22の強度を補う。
【0026】
〔変更例〕
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、以下のように変更してもよい。
各実施形態の蓋体12において、複数のリブ22の上面を覆うように、カバー板を設けてもよい。例えば、図7(a),(b)に示すように、上記第1実施形態の蓋体12において、上記複数条のリブ22の上面を覆うようにカバー板26を設ける。また第2実施形態の蓋体12であれば、中央リブ22Aの上面を覆うように設けてもよく、あるいは側部リブ22Bの下面を覆うように設けてもよい。
上記カバー板26の上面には、地下埋設器の種類、ますの種類等を示すネーム部26aを成形、印刷、プレートの接着等の方法で設けてもよい。該カバー板26を設けることで、上記複数条のリブ22相互の間に砂や小石等が入り込むことを防止することができる。また該カバー板26は、上記複数条のリブ22の上面を覆うように、上記枠部23の内側に嵌め込んでもよく、あるは接着剤を使用したり、超音波接着したり、加熱溶着したりすることで、上記複数条のリブ22や上記枠部23と接合してもよく、この場合は該カバー板26を該複数条のリブ22や該枠部23の補強に用いることも可能である。
【0027】
上記リブは、上記した形態に限らず、例えば交差状であれば、複数のリブ相互の間に平面視で六角形の空間が形成されるハニカム状、あるいは複数のリブ相互の間に四角形の空間が形成される格子状、あるいは複数のリブ相互の間に平面視で三角形の空間が形成される形状などの何れの形状の配置としてもよい。あるいは複数のリブ相互の間に平面視で円形の空間が形成される形状、円筒状のリブを介して格子状のリブ相互が繋がる形状としてもよい。あるいは、交差状に限らず、複数条のリブ相互が、縦方向、横方向、斜め方向等の所定の方向に平行に延びるような配置としてもよい。
また上記リブは、上記板部の上面に設けられているのであれば、必ずしも異なる方向へ延びるリブ相互が交差してなる交差部を有する形状とする必要はない。例えば図8(a)に示すように、直線状をなす複数のリブ22を板部21の上面に平行に設けてもよい。また複数のリブ22を平行に設けた場合であっても、図8(b)に示すように、上記蓋体12に上方向から荷重が加わる場合は、上記リブ22が該荷重を受けて耐え、また上記板部21が下方へたわみ、該リブ22に対して水平方向へ圧縮応力を加えることで該リブ22の強度を補う。
【0028】
上記リブは、板部の上面及び下面の両面に設けてもよい。すなわち、第1実施形態及び第3実施形態の蓋体12であれば、例えば板部21の下面から、リブ22よりも小さなリブを突設してもよく、第2実施形態の蓋体12であれば、例えば中央部12Aでは下板部21Aの下面から中央リブ22Aよりも小さなリブを突設し、側部12Bでは上板部21Bの上面から側部リブ22Bよりも小さなリブを突設してもよい。
上記実施形態では、地下埋設器用ボックスをメーターボックス10としたが、例えば散水栓ボックスや止水栓ボックスとしてもよい。また当然ではあるが、メーターボックス10は平面視で横長四角形状のものとしたが、例えば止水栓ボックスのように平面視で円形状のものとしてもよい。
また上記実施形態では、ますを雨水ますとしたが、例えば下水ます、排水ます、公共ますとしてもよい。また実施形態では、雨水ますの蓋体12を平面視で円形状のものとしたが、これに限らず、平面視で四角形状、六角形状等としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の蓋体によれば、合成樹脂を材料に用いた蓋体でありながら、該蓋体の耐荷重を効果的に向上させることができるから、産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0030】
10 メーターボックス
11 本体
12 蓋体
12A 中央部
21 板部
21A 下板部
21B 上板部
22 リブ
22A 中央リブ
22B 側部リブ
23 枠部
23A 内枠部
FM 量水器
GL 地表
31 ます本体
32 立管
35 枠
36 開口部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9