(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の木製の心材が積層されて構成された心材部の積層方向の外側に木製の燃代材で構成された燃代層が形成されるように複数の前記心材と前記燃代材とを積層し積層方向に圧締し、前記心材部と前記燃代層とが一体化された第一心材ブロックを複数作製する第一工程と、
前記第一心材ブロックの前記燃代層と前記心材部との境界部に、燃止材からなる燃止部が嵌る嵌部を形成する第二工程と、
前記嵌部に前記燃止部を嵌め込んで、複数の前記第一心材ブロックを、積層方向と交差する方向に圧締し、第二心材ブロックを作製する第三工程と、
前記第二心材ブロックの前記積層方向と交差する方向の外側に前記燃止材で構成された燃止部を接合すると共に前記燃止部の外側に前記燃代材で構成された燃代層を接着する第4工程と、
を備える集成材の製造方法。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、木材又は異種材からなる単材を複数集成し、隣接する単材間を接合してなる高剛性集成材ブロックを複数集成し、隣接する高剛性集成材ブロック間を接合してなる複合木質構造材が記載されている。この先行技術には、前記隣接する高剛性集成材ブロック間に、該高剛性集成材ブロックよりも剛性の低い不陸吸収材を介装させ、該不陸吸収材を介装させた状態で隣接する高剛性集成材ブロック間を接着剤により接合し、前記不陸吸収材の全部又は一部は、高熱容量材、断熱材、又は熱慣性の大きい木材から形成される異種材からなることを特徴とする技術が開示されている。
【0003】
ここで、複数の板材を接着して集成材を製造する場合、荷重を支持する心材部には高い圧力をかけて接着する必要がある。よって、例えば、複数の板材を高い圧力をかけて接着して心材部を作製したのち、この心材部の外側に燃止部と燃代層とを接着する。
【0004】
しかし、このような製造方法は接着工程が多く、効率的に集成材を製造することに対して改善の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事実に鑑み、効率的に集成材を製造することができる集成材の製造方法を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、複数の木製の心材が積層されて構成された心材部の積層方向の外側に木製の燃代材で構成された燃代層が形成されるように複数の前記心材と前記燃代材とを積層し積層方向に圧締し、前記心材部と前記燃代層とが一体化された第一心材ブロックを複数作製する第一工程と、前記第一心材ブロックの前記燃代層と前記心材部との境界部に、燃止材からなる燃止部が嵌る嵌部を形成する第二工程と、前記嵌部に前記燃止部を嵌め込んで、複数の前記第一心材ブロックを、積層方向と交差する方向に圧締し、第二心材ブロックを作製する第三工程と、前記第二心材ブロックの前記積層方向と交差する方向の外側に前記燃止材で構成された燃止部を接合すると共に前記燃止部の外側に前記燃代材で構成された燃代層を接着する第4工程と、を備える。
【0008】
請求項1に記載の発明では、まず、複数の心材と燃代材とを積層し積層方向に圧締し、心材部と燃代層とが一体化された第一心材ブロックを複数作製する。つぎに、第一心材ブロックに形成した嵌部に燃止部を嵌め込んで、複数の第一心材ブロックを積層方向と交差する方向に圧締し、第二心材ブロックを作製する。そして、第二心材ブロックの積層方向と交差する方向の外側に燃止材で構成された燃止部を接合すると共に燃止部の外側に燃代材で構成された燃代層を接着する。
【0009】
よって、例えば、心材を圧締して形成した心材部に、燃止部と燃代層とを接着する場合と比較し、接着回数が少なくなり、効率的に集成材を製造するこができる。
【0010】
また、心材と燃止部と燃代材とを積層し、積層方向に圧締する場合と比較し、燃止部に圧締時の圧力がかかることなく、第二心材ブロックを作製することができる。よって、燃止部を構成する燃止材の材料によることなく、圧締する際の圧力を高くすることができる。
【0011】
請求項2の発明は、前記燃止部は、モルタル材を含む前記燃止材で形成されたモルタルバーである。
【0012】
請求項2に記載の発明では、モルタルバーを燃止部に用いることで、高い燃止まり効果が発揮される。
【0013】
請求項3の発明は、前記心材と前記燃代材とは、板厚方向に沿った断面が同一形状の矩形状の板材である。
【0014】
請求項3に記載の発明では、心材と燃代材とは板厚方向の断面が同一形状の矩形状の板材であるので、断面形状が異なる板材で構成する場合と比較し、効率的に集成材を製造することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、効率的に集成材を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<耐火集成材の構造>
まず、本発明の集成材の製造方法によって作成された耐火集成材の構造について説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の耐火集成材10は、長手方向と直交する断面が矩形状の四角柱状の木材である。なお、耐火集成材10の長手方向をZ方向とし、断面における直交する2方向をX方向及びY方向とする。
【0019】
図1及び
図2に示すように(特に
図1(B)を参照)、本実施形態の耐火集成材10は、荷重を支持する荷重支持層としての心材部20と、燃止部材の一例としてのモルタルバー50が埋設された燃止層(もえどまりそう)30と、燃代層(もえしろそう)40と、の3層で構成されている。心材部20は耐火集成材10の中心部分に設けられている。燃止層30は心材部20の外側に心材部20を取り囲むように設けられ、燃代層40は燃止層30の外側に燃止層30を取り囲むように設けられている。
【0020】
そして、耐火集成材10は、火災時には外側の燃代層40が燃焼し炭化して炭化層となることで断熱効果を発揮すると共に、燃止層30を構成するモルタルバー50が熱を吸収しながら燃焼を停止させることで、中心部にある荷重を支持する心材部20を火災から保護する。
【0021】
なお、本耐火集成材10は、公的な性能評価機関で耐火性能試験を実施し、建築基準法で規定される1時間及び2時間、3時間の耐火性能をもつ構造部材(柱や梁等)として使用可能な木材である。
【0022】
<耐火集成材の製造方法>
つぎに、本発明の一実施形態にかかる集成材の製造方法について説明する。
【0023】
まず、
図3(A)に示すように、心材部20(
図1及び
図2参照)を構成する板状の心材22とY方向外側の燃代層40(
図1及び
図2参照)を構成する板状の燃代材42とをY方向に積層し、Y方向(積層方向)に圧締する(接着剤を塗布した被着材に圧力を加えて密着させ、接着剤が充分硬化するのをまって接着を完了する操作)。なお、燃代材42がY方向の両外側を構成するように積層する。これにより心材部20(
図1及び
図2参照)と燃代層40(
図1及び
図2参照)とが一体化された第一心材ブロック25が二つ作製される。なお、正確には、第一心材ブロック25には燃止層30(
図1及び
図2参照)も含まれる。
【0024】
また、X方向外側の燃代層40(
図1及び
図2参照)を構成する板状の燃代材44をY方向に積層し、Y方向(積層方向)に圧締する。これにより燃代ブロック45が二つ作製される。
【0025】
心材22及び燃代材42、44は、断面が矩形状の単材である。なお、心材22と燃代材42とは、板厚方向に沿った断面が同一形状の矩形状の単材である。
【0026】
図3(B)に示すように、各第一心材ブロック25の心材部20と燃代層40(
図1及び
図2参照)との境界部に、モルタルからなる板状のモルタルバー50(
図1及び
図2参照)が嵌る溝状に凹んだ嵌部43,46を形成する。
【0027】
図3(C)に示すように、嵌部43にモルタルバー50を嵌め込んで、
図3(D)に示すように、二つの第一心材ブロック25を、X方向に圧締する。これにより第二心材ブロック27が作製される。
【0028】
図3(E)に示すように、第二心材ブロック27の嵌部46にモルタルバー50を嵌め込むと共に、積層方向と直交するX方向の外側にモルタルバー50を配置する。なお、モルタルバー50は、ビス12にて仮固定する。
【0029】
そして、
図3(F)に示すように、モルタルバー50の間及び外側に、燃止層30(
図1及び
図2参照)を構成する板材(ラミナ)32を配置してビス12にて仮固定し、第二心材ブロック27のX方向外側に燃代ブロック45を接着する。これにより耐火集成材10が完成する。なお、仮固定に使用したビス12は、各図において適宜図示を省略している。また、板材(ラミナ)32を仮固定しなくてもよい。
【0030】
なお、各接着工程で用いる接着剤としては、耐火性能の高い接着剤、例えばレゾルシノール・フェノール樹脂接着剤を用いることが望ましい。
【0031】
ここで、本実施形態では、
図3(B)等に示すように、第一心材ブロック25の心材部20と燃代層40(
図1及び
図2参照)との境界部に、嵌部43,46を形成しモルタルバー50(
図1及び
図2参照)を嵌め込んで、燃止層30を構成した。
【0032】
なお、本実施形態では、
図2に示すように、燃止層30におけるモルタルバー50以外の部位は燃代材42で構成されている。
【0033】
また、本実施形態では、
図2に示すように、積層された燃代材42を跨ぐように嵌部46が形成されている。しかし、
図6に示すように、燃代材42を跨がないで嵌部46を形成し、モルタルバー50が嵌め込まれていてもよい。
【0034】
[構成材料]
心材22、燃代材42、44、及び板材32は、米松、唐松、檜、杉、あすなろ等の一般の木造建築に用いられる一般木材を含む各種木材によって形成されていればよい。なお、心材22、燃代材42、44、及び板材32は、同一種類の木材であってもよいし、別の種類の木材であってもよい。
【0035】
また、燃止層30を構成する燃止部(本実施形態ではモルタルバー50)は、火炎及び熱の進入を抑えて燃え止まり効果を発揮できる材料(本実施形態ではモルタル)で構成されていればよい。例えば、難燃性を有する材料や熱の吸収が可能な材料であればよい。
【0036】
難燃性を有する材料としては、木材に難燃薬剤を注入して不燃化処理した難燃薬剤注入剤が挙げられる。また、熱の吸収が可能な材料は、一般木材よりも熱容量が大きな材料、一般木材よりも断熱性が高い材料、又は一般木材よりも熱慣性が高い材料が挙げられる。
【0037】
一般木材よりも熱容量が大きな材料としては、モルタル(本実施形態)、石材、ガラス、繊維補強セメント、石膏等の無機質材料、各種の金属材料などが挙げられる。また、一般木材よりも断熱性が高い材料としては、珪酸カルシウム板、ロックウール、グラスウールなどが挙げられる。また、一般木材よりも熱慣性が高い材料としては、セランガンバツ、ジャラ、ボンゴシ等の木材が挙げられる。
【0038】
<作用及び効果>
つぎに、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0039】
図3を用いて説明したように、本実施形態では、接着回数は、
図3(A)、
図3(D)、
図3(F)の3回である。よって、接着回数が少なく、製造時間を短縮することができると共に、製造コストを削減することできる。つまり、効率的に耐火集成材10を製造することができる。
【0040】
また、モルタルバー50を用いることで、高い燃止まり効果が発揮される。
【0041】
また、心材22と燃代材42とは、板厚方向の断面が同一形状の矩形状の単材(板材)であるので、断面形状が異なる板材で構成する場合と比較し、効率的に耐火集成材10を製造することができる。
【0042】
[比較例]
ここで、本発明が適用されていない比較例の耐火集成材100(
図4(D)参照)の製造方法について説明する。
【0043】
図4(A)に示すように、心材部20(
図4(D)を参照)を構成する板状の心材22をY方向に積層し、Y方向に圧締する。これにより一次心材ブロック125が二つ作成される。
【0044】
Y方向外側の燃代層40(
図4(D)を参照)を構成する板状の燃代材142をX方向に積層し、X方向に圧締する。これにより、燃代ブロック140が二つ作成される。また、X方向外側の燃代層40(
図4(D)を参照)を構成する板状の燃代材44をY方向に積層し、Y方向(積層方向)に圧締する。これにより燃代ブロック45が二つ作製される。
【0045】
図4(B)に示すように、二つの一次心材ブロック125をX方向に接着し、二次心材ブロック127を作成する。
【0046】
図4(C)に示すように、二次心材ブロック127のY方向の両外側にモルタルバー50を配置してビス12で仮固定する。
【0047】
そして、
図4(C)及び
図4(D)に示すように、モルタルバー50の間に板材(ラミナ)32を配置してビス12で仮固定し、二次心材ブロック127のY方向外側に燃代ブロック140を接着する。
【0048】
同様に、
図4(E)に示すように、二次心材ブロック127のX方向の両外側にモルタルバー50を配置してビス12で仮固定する。
【0049】
そして、
図4(E)及び
図4(F)に示すように、モルタルバー50の間及び外側に、板材(ラミナ)32を配置しビス12で仮固定し、二次心材ブロック127のX方向外側に燃代ブロック45を接着する。
【0050】
これにより心材部20とモルタルバー50が埋設された燃止層30と燃代層40との3層で構成されている比較例の耐火集成材100が完成する。
【0051】
[本実施形態の製造方法と比較例の製造方法との比較]
つぎに、本実施形態の製造方法と比較例の製造方法とを比較する。
【0052】
比較例の製造方法では、
図4(A)、
図4(B)、
図4(D)、及び
図4(F)の合計4回の接着工程が発生する。
【0053】
これに対して本実施形態の製造方法では、
図3(A)、
図3(D)、
図3(F)の合計3回の接着工程ですむ。
【0054】
このように
図3を用いて説明した本実施形態の製造方法は、
図4を用いて説明した比較例の製造方法よりも、接着工程が1回少なくなり、この結果、製造時間を短縮することができると共に製造コストを削減することできる。
【0055】
<その他>
尚、本発明は、上記実施形態に限定されない。
【0056】
例えば、本実施形態では、
図1〜
図3に示すように板状のモルタルバー50が嵌る溝状に凹んだ嵌部43,46を形成したが、これに限定されない。例えば、嵌部は、モルタルバー50が挿入される孔であってもよい。
【0057】
また、嵌部に燃止材(例えば、固化する前のモルタル、繊維補強セメント、石膏等)を注入して固化させることで、嵌部に燃止部が嵌った構成としてもよい。
【0058】
また、例えば、
図3(E)及び
図3(F)に示すように、モルタルバー50の間及び外側に、燃止層30(
図1及び
図2参照)を構成する板材(ラミナ)32を配置したが、これに限定されない。燃代ブロック45を幅厚に作成し、モルタルバー50が嵌る溝状の嵌部(凹部)を形成し、板材32が不要な構成としてもよい。
【0059】
また、例えば、
図5に示すように、三つの第一心材ブロック95を接着して第二心材ブロック97を作成する構成の耐火集成材90であってもよい。
【0060】
更に本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない