(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1記載のシステムにおいて、前記薬物シリンジは患者輸液インターフェースに連結され、当該インターフェースは薬物の流量に影響を与えるように構成されている流量調整部と、末端連結部とを有するものであるシステム。
請求項2記載のシステムにおいて、少なくとも2つの外周ポートを有する流体制御バルブは前記シリンジの遠位ポートと前記患者輸液インターフェースとの間で連結され、当該バルブは、内部に溝を有する、略円形の断面のボディ部であって、前記ポートがその外周に沿って共通の平面上且つ当該溝にアクセスするように配置されているものである、前記ボディ部と、前記溝内で回転自在に支持され、内部に流体流路を有する多岐管ハブとを有し、前記多岐管ハブは前記流体流路を介して選択的に前記バルブの前記ポートを互いに連通させるように回転自在であるシステム。
請求項1記載のシステムにおいて、前記抵抗力付加手段は真空チャンバーを含み、この真空チャンバーは、少なくとも1つの遠位大気ポートと、前記真空チャンバーの近位壁を形成する遠位側と大気に露出され、且つ前記加力体の往復アームに取付けられる近位側とを有する、密閉状態でスライド自在なピストンとを有し、前記遠位大気ポートは、前記遠位大気ポートを開閉するようになっている流体密なクロージャ手段を有するものであり、
前記クロージャ手段より、真空状態が損なわれた場合に、前記真空チャンバーからガスの排出が可能になるものであるシステム。
請求項1記載のシステムにおいて、前記加力体の往復アームは、前記アームが往復運動する時に前記輸液装置に設けられた整合ガイドを通過するように配置されており、前記アームは、断面が当該整合ガイドの対応する断面と整合し、前記加力体の回転を防止する長い部分と、断面が前記整合ガイドの最も狭い幅よりも小さく、前記加力体の回転を可能にする短い部分とを有し、これにより、前記アームは前記短い部分において前記整合ガイドに対して回転が可能となるが、前記長い部分においては前記整合ガイドに対して回転しないものであるシステム。
請求項1記載の輸液装置において、前記往復アームは小面付きの側面を有し、当該アームの長軸に対して直交する断面は小面形状を有するものであり、前記輸液装置は、当該装置のボディ部に取り付けられ、且つ前記アームの小面と対応する小面を有する整合ガイドを有し、前記アームは当該整合ガイドを通過して移動するものであり、前記アームはその一部に少なくとも1つのネックを有し、前記ネックは、前記小面を有する整合ガイドの最も狭い直径よりも幅が狭く、前記小面を有する整合ガイドと整合している場合は前記アームは回転自在であるが、前記アームの前記小面を有する部分が前記小面を有する整合ガイドと隣接している場合は前記アームの回転は阻止されるものであるシステム。
【背景技術】
【0002】
多くの薬物は、単回の直接投与ではなく、長時間にわたって患者や動物に注入することを必要とする。公知技術による輸液システムは、このような薬物を長時間にわたり、制御された方式で注入できる。このような輸液システムは一般に、静脈アクセスポイントを含み、前記静脈アクセスポイントは、医療専門家が皮膚を通る針と連結された医療用チューブで既に「点滴」を患者の体内に、典型的には静脈内に配置した部位である。さらに、このような輸液システムは、送達する薬物を収容する、何らかの形態のリザーバと、薬物を注入チューブ沿いに点滴により患者の体内に移動させる、何らかの形態の輸液装置とを含む。
【0003】
おそらくは最も簡単な輸液システムにおいては、単にリザーバを点滴用静脈アクセスポイントよりも高い位置に設置することにより、必要な力を重力が与える。重力送りの輸液システムは、供給リザーバの高さを増すという不正確な方法で以外、力の量を容易に変化できないという点で制約がある。
【0004】
その他の輸液システムにおいては、輸液ポンプが設けられ、前記輸液ポンプがリザーバ内で、または輸液チューブ沿いに液体に力をかけ、液体が静脈アクセス地点で患者の体内に移動するようにする。1つの形態の輸液ポンプは、シリンジの形態の薬物収容容器に作用し、これは単に、シリンジのプランジャを近位終端部で押すことにより、シリンジからの医療用製剤を送達するものである。このような輸液ポンプは一般に、何らかの形態の複雑な電子機械式直線変位トランスデューサを含み、前記電子機械式直線変位トランスデューサは、コントローラからの電気信号をプランジャに作用する直線運動の形の機械的運動に変換して、シリンジ・リザーバからの医療用製剤の投与を行う。この直線変位トランスデューサは、ソレノイド・タイプの装置の形態であっても、ラックアンドピニオン・タイプのギヤに作用して回転運動を直線運動に変換するステッパモータなど、何らかの形態のモータであっても良い。その他の直線変位トランスデューサをこのような輸液ポンプ内で用いて電気制御信号を機械的運動に変換することもできる。
【0005】
これらの電子式輸液ポンプは、電気駆動ディスプレイや一般的に入手可能なボタンやダイヤルを使用して輸液速度および量を厳密に制御することができるという利点があるが、内部機構および連続的な電力源に頼らなければならないという大きな欠点もある。ACプラグまたはDCバッテリーから供給される電力が切り離されると、ポンプが完全または一部停電となり、薬物送達が不完全または不正確になる。ポンプはまた、内部の電子または機械部品が故障する場合もある。このような故障により、投薬ミスにつながることが多く、患者の罹患率および死亡率が相当なものになる。これらの複雑で高価なポンプは、医療の実施コストを増大させ、扱いが煩雑で、トラブルシューティングおよび頻繁なサービスが必要となる。さらに、幾つかの磁気または電気式医療機器は、金属を含有したり、電気信号を発生する他の機器と干渉することがあり、非電気式および/または非金属性の輸液装置の必要性がある。これらの電子装置はMRIスキャナの近くで使用できないが、患者は薬物の継続的な輸液を必要とすることが多く、従って、非磁気/非電子式装置が好ましい。
【0006】
従って、電源を必要とせず、機能に信頼性があり、低コストの輸液装置を用いた、簡単で信頼性のある薬物輸液システムの必要性がある。
【0007】
Yamada(米国特許第5,807,337号)およびMitchell(米国特許第5,024,664号)による先行技術特許は、真空作動式輸液装置を教示しているが、数々の制約があり、意義のある臨床上の使用が全くされていない。これらの装置は、駆動部をシリンジ/ロードチャンバー部に接続しており、2つの部分を別々に作動させることはできない。この欠点のせいで、シリンジ部を用いて吸引により自己ロードすることができず、また、駆動部を薬物収容(シリンジ用)部から切離したり、再嵌合することにより、輸液を容易に停止および/または再開することができない。これらの装置では、好ましい薬物を、接続された駆動部の真空力に逆らって、輸液ポートとは別個であることが時々あるロードポート経由でロードチャンバー内に強制的に注入できるよう、ユーザが別個のシリンジを入手してロードすることが必要となる。ユーザがこの充填手順において真空力を克服しなければならないので、これは明らかに、薬物を収容する別個のシリンジを測定・ロードし、これを輸液装置のロードチャンバーに取付け、不当な量の指圧をかけて薬物をこの別個のシリンジからロードチャンバー内に強制的に移動させることが必要である。1本のシリンジをまずロードして別のシリンジに薬物を注入する、というこれらの追加的工程は、投薬ミスの可能性が大幅に増加する。これらの注入器の別の制約は、輸液中のプランジャの直線移動を確実にするガイドまたはスタビライザがないことである。YamadaまたはMitchellによる装置のプランジャをかなり「本格派」な装置という意味で相当に拡張すると、装置に回転角度、たわみ、および「遊び」の増加が起こり、摩擦が増加した、信頼性の低い、すなわち非直線性の輸液速度となってしまう。YamadaおよびMitchellによる装置の別の制約は、真空喪失に際しての難点である。Mitchellの装置は、真空が失われた時に真空を再設定するポートを有しておらず、Yamadaの装置は、「ゴムなどの弾力のある材料で形成されたプラグ」を有するが、これは、真空を補給する必要がある場合や、真空力の程度を変更したい場合に取外しが必要となる。ゴムプラグの操作は煩雑で、時間がかかる。これらの装置の別の制約は、駆動部を独立して動作させるハンドルがないことである。この欠点はひどく制限的であり、これらの装置が、前述のように第2のシリンジの使用によってのみ薬物をロードされるようになっていることにより、ロードチャンバーおよび駆動部を一緒に延出させ、いずれかの部分の独立した動作ができないものであることが明らかにわかる。この欠点により、薬物の輸液を素早く停止、開始、または再開でなくなり、また、ロードチャンバーを常に加圧された状態に保つことになり、薬物を装置に入れるのが煩雑になる。
【0008】
Minezaki(米国特許第7,041,081号)による先行技術特許は、真空作動式輸液装置を教示しているが、多くの制約がある。この装置は駆動部をシリンジ/ロードチャンバー部に固く接続しており、2つの部分の独立した動作ができない。この欠点のせいで、シリンジ部を用いて吸引により自己ロードすることができず、また、駆動部を薬物収容部から切離したり、再嵌合することにより、輸液を容易に停止および/または再開することができない。この装置は、2つの部分を一緒にする前に、真空部のコックを後ろに引き(cocked back)、「真空ポンプバレルの後端でピストンを大気圧に対してロックできるストッパ」でロックする必要があり、真空バレルを「前記第1の構造の真空ポンプバレルの前端が液体シリンジの前端よりもさらに前方に延出する状態」で配置する必要がある。この装置の好適な実施形態は、複雑で高価な、一緒に接続された2つの薬物リザーバの必要性に関するバージョンを含む。第2の好適な実施形態は、2つの部分が固く接続されているので必要とされる独立機能は提供されない、厳密に整合された同軸バージョンを教示している。別の先行技術特許、Minezaki(米国特許第6,685,673号)およびHiejima(米国特許第6,139,530号)も、同様な制約のある同軸機構を教示している。
従って、薬物を信頼性の高い、制御された方式で患者の体内に送達する、簡単で効果のある非電気式の自己作動輸液装置およびシステムの必要性が尚も残っている。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】 米国特許第5024664号明細書
【特許文献2】 米国特許第5807337号明細書
【特許文献3】 米国特許第7041081号明細書
【特許文献4】 米国特許第6139530号明細書
【特許文献5】 米国特許第4180067号明細書
【特許文献6】 米国特許第4966585号明細書
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照すると、同一の参照符号は、様々な図面の全体を通して同一の部品を表わし、参照符号10は、薬物を経時的にシリンジSから患者または動物の体内に送達する総合的輸液アセンブリ2内でのように、シリンジSと併用する輸液装置に付けられている。輸液装置10は、真空または別の抵抗に基づいた力を利用してアーム40およびドライバ50を「作動」する。アーム40およびドライバ50は共に加力体(force applicator)として知られ、作動された時、シリンジSのプランジャPに作用してシリンジS内のピストンJが移動され、薬物がシリンジSから患者に対して駆動される。
【0016】
本質的に、特に
図1を参照しながら、本発明の基本的詳細を好適な実施形態に従って説明する。この好適な実施形態の輸液アセンブリ2は、(矢印Fに沿って)シリンジSに着脱自在に連結可能な輸液装置10を含む。シリンジSは、ストップコックバルブ60に連結されており、前記ストップコックバルブは、輸液アセンブリ2の他の部分への入口またはこれからの出口として作用する別個のポートを有する。これらのポートA、B、C、Dは、第2のシリンジT、薬瓶Mからの薬物の受取りと取出しの促進に適したバイアル・アダプタ90、および一般に調整部80、チューブ82、および連結部84の形態である患者インターフェースにつなげることができる。調整部80は、ストップコックバルブ60、チューブ82、または連結部84と一体化しても良いし、単にそれ自体で流れ抵抗調整弁として作用する適切な直径および長さの小穴チューブを有することにより実現しても良い。ストップコックバルブ60は、多岐管ハブ70を中で支えるハウジング62を含む。多岐管ハブ70の回転により、ストップコックバルブ60内の異なるポートA、B、C、Dは互いと流通し、整合したポートとこれらのポートに連結された装置との間で流体通路となる。
【0017】
最良の実施形態においては、輸液装置10は、真空引きができるチャンバー20の周りのボディ21を含む。この真空チャンバー20は、ばね、ガス・シリンダ、またはその他の抵抗力に基づいた付勢手段で置換えることができる。この実施形態では、クランプ30をボディ21と連結することにより、輸液装置10をシリンジS上にカチッと留め、またはシリンジSを輸液装置10内に(矢印Fに沿って)カチッと留められるようになっている。往復アーム40は、アーム40の最内(遠位)端にあるシールされたスライド自在なピストン42と、スライド自在なシール42に対向するアーム40の近位端部にあるドライバ50とにより、チャンバー20内外に移動する。ドライバ50は、シリンジSのプランジャPの近位終端部Hと係合して、プランジャPがシリンジS内で動くようにすると共に、シリンジS内の薬物をそこから送達させるのに適している。アーム40は、ドライバ50をシリンジSのプランジャPの近位終端部Hと整合させたり、不整合にするように回転自在で、チャンバー20に関するアーム40の回転により、輸液装置10を選択的に係合したり切り離す。
【0018】
特に、引き続き
図1と共に
図4および7を参照しながら、一般に先行技術でのみ得られる輸液アセンブリ2の標準的詳細を説明して、本発明の輸液アセンブリ2の独特の詳細を理解するための適切な文脈を提供する。
【0019】
シリンジSは最も好ましくは、シリンダを形成する基本的に円筒形で中空のボディを有し、プランジャPがシリンジSのこのシリンダ内外へ移動する標準的シリンジである。シリンダは、典型的には遠位端の送液ポートと、近位端部の放射状に延出するレッジ(出っ張り)に囲まれた開口部とを含み、プランジャPがシリンダ内部を内外に向かって通過できるようになっている。プランジャPは、その近位端部にある近位終端部Hと、近位終端部Hに対向するプランジャPの端部にあるピストンJとを含む。ピストンJは、ピストンJがシリンジSのシリンダ内で動く時に液体がピストンJの周りで動けないようにするために、シールを有する。シリンジSの送液ポートは、ストップコックバルブ60のポートの1つに連結するのに適している。この実施例において、シリンジSは、送液ポートがストップコックバルブ60のポートCに連結された状態で図示されている。このような接続は、単に「ルアー」タイプの固定具や、その他の何らかのタイプの連結(好ましくは、着脱自在にに取付ける連結)により行うことができる。
【0020】
このシリンジは好ましくは標準タイプのものであるため、典型的には目盛ラインをボディの側面に、また、ピストンJがシリンジS内の様々な位置にある時のシリンジSの容積を表わす関連の印を有する。シリンジSがこの好適な実施形態では標準的シリンジの形態であるため、シリンジSは、(例えば、ストップコックバルブ60に取付けて輸液アセンブリ2と併用する前にシリンジSをロードする任意の公知の技術を用いることにより)、ストップコックバルブ60に取付ける前か後のどちらでも公知の様々な方式で用いることができ、また、ストップコックバルブ60を介して標準的な方式でシリンジSをロードしたり、シリンジSの手動操作を医療専門家が希望する場合にユーザがシリンジSのプランジャPを押すことにより手動でシリンジSを操作することができる。
【0021】
シリンジSに加えて、第2のシリンジTをポートの1つに連結することができる。本実施形態においては、このような第2のシリンジTは、ストップコックバルブ60のポートBに取付けられた状態で図示されている。第2のシリンジTは、例えば、本発明の輸液アセンブリ2で送達するために薬物をシリンジSに移動する前に、薬物の投与量を正確に測定したり、食塩水を薬物と混合してシリンジT(またはシリンジS)内、または別のポートに取付けられた薬物バイアル内に収容された薬物を適切に測定、混合、または希釈するなどのために、薬物容器、測定装置、または混合装置として作用することができる。この能力により、医療専門家は、別のポートに取付けられた粉末(または液体)の薬物をその位置で希釈し、次いで輸液するために希釈し、混合し、測定し、シリンジSに移動させることができる。第2のシリンジTはまた、第2の量の同一または異なる薬物を保持するために用いることができ、前記第2の量の薬物は、シリンジS内の第1の医療用製剤と一緒に輸液するか、医療専門家の監督の下で巡回ベースで用いることができる。第2のシリンジTは、好ましくは、シリンジSがポートCと連結されるのと同じ様にポートBと連結される。このようなシリンジS、T、および輸液アセンブリ2のこれ以外の部品は、輸液アセンブリ2の特定の部品を特定のポートA、B、C、Dに連結しなければならないというような特別な要件なしに、ポートA、B、C、Dの任意の1つに連結することができる。
【0022】
薬瓶またはバイアルMは、先行技術では、薬物を収容し、隔膜Lが薬物バイアル上のインターフェースにあることが多く、これを針が通過してバイアルMから医療用製剤を抜出すものが知られている。この好適な実施形態において、輸液アセンブリ2は、関連の針92が中で軸方向に延出するバイアル・アダプタ90を含む。バイアル・アダプタ90および針92は、好ましくは、ストップコックバルブ60のポートの1つ(
図1、4、7のポートA)に連結される。このような連結は、第2のシリンジTまたはシリンジSを別のポートB、Cを介してストップコックバルブ60に取付けるための連結と同様なものにすることができる。このように、薬物バイアルMをバイアル・アダプタ90に挿入することができ、針92は薬物バイアルMの隔膜Lを突刺すことができる。次いで、医療用製剤(薬物)は、針92を介して薬物バイアルMから抜出され、ストップコックバルブ60に入れられて、ストップコックバルブ60に連結された輸液アセンブリ2のその他の任意部分に送達されることができる。
【0023】
バイアル・アダプタ90は、先行技術として入手でき、典型的には幾分円筒形で、一端が開放している。典型的には、医療専門家の指が針92の先端に刺さるのを防止・阻止できるよう十分長い。また、バイアル・アダプタ90は、針92が正確に隔膜Lに当たり、隔膜Lを突刺すことができるよう、薬瓶Mを針92と整合し易くする。バイアル・アダプタ90は、様々な薬瓶サイズに対応するよう、様々な直径とすることができ、または、思わず針92に触れてしまう事態に対して幾らかの保護をしながらも、様々なサイズの様々な薬物バイアルMにより柔軟に対応するように、その他の形で構成することができる。
【0024】
輸液アセンブリ2のこれらの様々な部品がストップコックバルブ60と連結できることが先行技術で知られており、輸液アセンブリ2は、医療専門家によく知られている装置が設けられているため、輸液アセンブリ2の操作は簡単で、医療専門家にとって直観的である。さらに、様々な医療用部品の相互接続上の柔軟性は、ストップコックバルブ60のポートの互換性と、様々な医療機器を柔軟に輸液アセンブリ2に組込むことができる輸液アセンブリ2の一般的構成とによって、ある程度促進される。
【0025】
ストップコックバルブ60のポートの第4のポートDは、典型的には、チューブ82、調整部80、および連結部84などを介して、何らかの形態の患者インターフェースに連結される。調整部80は、独立した部品であっても良いし、ストップコックバルブ60、チューブ82、または連結部84と一体化しても良い。調整部80は、患者への流量の固定式または調節可能制御装置として作用することができる。調節可能な場合、これは典型的にはダイヤル、ボタン、またはその他の何らかの操作可能なインターフェース、また、おそらく現在設定値を表示するディスプレイを有する。チューブ82は、輸液アセンブリ2を患者に近づけすぎなくても良いように、好ましくは柔軟で長いものとする。連結部84は、典型的には雄ルアーロック・アダプタ、簡単な静脈アクセス針の形態か、医療専門家の希望に応じて患者の静脈、動脈、骨肉、またはその他の体内管腔システムに接続できる、その他の任意の形態の先行技術の連結部である。
【0026】
引き続き
図1、4、および7を主に参照しながら、輸液アセンブリ2の輸液装置10の詳細を説明する。輸液装置10を輸液アセンブリ2全体に関連して説明するが、輸液装置10を単に、ストップコックバルブ60なしに何らかの形態の患者インターフェースに直接連結した単一のシリンジSと併用できることも考えられる。さらに、輸液装置10は、液体の持続放出のための研究所や工業におけるセッティングなどのような非医学的環境においても、シリンジSからの任意の液体の配給に用いられることが考えられる。さらに、輸液装置10は、経時的に幾分定常的な速度で液体の送達が要求される場合や、輸液装置10が本発明の輸液装置10の簡単さおよび非電気的性質を示すことが好ましい場合に、何らかの形態の製造工程で液体の送達のためにシリンジSで用いられる可能性がある。
【0027】
この好適な実施形態における輸液装置10は、一般に輸液装置10のチャンバー20内の真空と関連するエネルギー蓄積および抵抗力付加の原理(抵抗力付加手段)を用いている。大気中やその他の流体圧力が存在する環境において、特定の場所に真空が形成された場合、この真空空間を閉じようとする傾向がある力が働くことが知られている。本質的に、我々の大気においては、大気中の空気が真空空間の全ての壁を押して、この真空空間を閉じようとする。このような力をこの好適な実施形態の輸液装置10が利用して、シリンジSに作用して薬物をストップコックバルブ60に送達し、本発明の輸液アセンブリ2を作動させるために必要な力を与える。
【0028】
好適な実施形態の輸液装置10は一般に、標準的な医療用シリンジと同様に構成されている。従って、ボディ21およびチャンバー20は形状が基本的に円筒形で、中心軸沿いに長くなっている。チャンバー20の一端は閉じており、遠位端22を画定している。この遠位端22は、好ましくは、キャップや開閉バルブなど、何らかの形態のクロージャ24を有するポートを含む。このような遠位ポートおよびクロージャ24は、関連のシールされたスライド自在なピストン42がチャンバー20に入った状態でのアーム40の取付け、および、そのような取付け時のチャンバー20内の全ての空気やその他の流体の排出、また、何らかの理由で真空状態が失われた場合(例えば、アーム40が取外されたり、シールされたスライド自在なピストン42がチャンバー20から遠く延出し過ぎて、チャンバー20内の真空状態が失われる)のチャンバー20内の真空状態の回復が可能という点で有用である。
【0029】
ポート付き底部26は、輸液装置ボディ21の近位の態様で、遠位端22に対向して設けられ、チャンバー20の近位端部として作用し、これは、ボディの長軸に対して基本的に直角で、シールされたスライド自在なピストン42を保持するが、(真空チャンバーはピストンの遠位側にあり、)大気圧がシールされたスライド自在なピストンの近位側に到達してピストンに力をかけなければならないので、真空作動式バージョンにおける流体密バリヤではない。好適な実施形態において、このポート付き底部26は、中を通過してアーム40が往復できる開口部を提供する、小面付き整合ガイド28を含む。
【0030】
本発明の最良の実施形態において、この小面付き整合ガイド28は、整合または対応する小面46を有するアーム40が小面付き整合ガイド28を通るよう適切に整合された時にのみ、アーム40が中を通過して移動できるようにする小面を有する。アーム40が別の向きの場合、小面付き整合ガイド28はアーム40上の小面46と相互作用して、アーム40がポート付き底部26の小面付き整合ガイド28を通過して移動するのを防止することができる。
【0031】
チャンバー20は、様々な度合いの力をかけたり、輸液装置10の様々な関連輸液速度を与えるために、サイズをより大きくしたり、より小さくしたり、シリンジSと同様のサイズとすることができる。典型的に、チャンバー20は、典型的にシリンジを形成する材料と同様なプラスチック材料で形成する。チャンバー20の形状は、好ましくは、射出成形または同様な低コストの製造工程による製造により形成し、好ましくはロバスト性と低コスト効果の両方をユーザに提供するため、輸液装置10を低コストで精密に製造できるようにする。
【0032】
輸液装置10をシリンジSに取付けるために、クランプ30が輸液装置10に含まれている。この好適な実施形態においては、クランプ30が輸液装置10のボディ21に直接連結されている。クランプ30は長い形状で、典型的にはシリンジSとほぼ等しい長さである。クランプ30はジョイント32を介してボディ21に取付けられており、これは、好ましくは、クランプ30がボディ21に関して動かないように固定されており、ボディ21と一体成形しても良い。
【0033】
好適なクランプ30は中空の半円筒形であり、円筒の一部を形成する内壁34と、円筒の一部を形成する外壁36とを有する(円筒形以外の形状を効果的なクランプとして用いることもできるが)。エッヂ38は、これらの壁34、36の端部を画定する。好ましくは、クランプ30は完全円筒の半分よりもわずかに大きい。従って、エッジ36は互いに向かって少し延出し、円筒形のクランプ30の直径よりも互いに近い。クランプ30は好ましくは、エッジ38がたわんでわずかに互いから離れることができるよう、十分に弾力がある材料で形成する。この材料はまた、好ましくは、クランプ30が、クランプ30を少なくとも部分的に元の状態に戻そうとする傾向のあるクランプ力をかけ、クランプ30がシリンジSにしっかり取付けられるように助ける内向きのクランプ力を維持し続けるよう、十分弾性があるものとする。
【0034】
さらに、クランプ30は近位端部39を有し、これは好ましくは、実質的に平面で、クランプ30およびチャンバー20の長軸に対して直角である。この近位端部39は、シリンジSの近位端部でレッジRに当接するように構成する。このようなレッジRの1つを
図1、4、7の輸液アセンブリ2の正面に示した。しかし、このようなレッジRは典型的には、シリンジSの対向する側で互いに対向して2つの場所で延出しており、後ろ向きのレッジはこのシリンジSのボディの後ろに隠れているが、
図1、4、7に示した正面のレッジRと同様な形状である。
【0035】
シリンジS上のこれらのレッジRの少なくとも1つの遠位の態様は、クランプ30の遠位端の当接面が、シリンジSに対して近位の輸液装置10の移動を防ぐようになっており、また、図示はしていないが、ボディ21に取付けられ、レッジRの近位の態様に当接する追加の当接面を追加することにより、シリンジSに対して遠位の輸液装置10の移動を低減できる。このようなレッジRに対するインターフェースでは、クランプ30がシリンジSを十分強くつかんでクランプ30および輸液装置10のボディ21が輸液装置の中心軸沿いにシリンジSに関して移動するのを防ぐようにすることは厳密には必要ではない。むしろ、クランプ30は単に、クランプ30の近位端部39とレッジRとの間のインターフェースでシリンジSと輸液装置10との間の軸方向の移動を防止して、輸液装置10をシリンジS上に保つのに十分な力を与えるだけで良い。
【0036】
従って、クランプ30をシリンジS上に(
図1の矢印F沿いに)カチッと留めるために克服しなければならないクランプ力30は、シリンジSに関する移動なしに輸液装置10を保持する作用もするほど大きくなくて良い。チャンバー20内にあり、アーム40に作用する真空力はかなり高く、それ故に、輸液装置10をシリンジSに関して長さ方向に移動させようとする傾向のある力もかなり高い。クランプ力はクランプ30とシリンジSとの間の摩擦を考慮することが必要であるため、クランプ30のクランプ力は、単独でシリンジSに関する輸液装置10の移動を防止するには非常に高いものとする必要がある。クランプ30の近位端部39をレッジRに当接させることにより、クランプ力30を比較的低いレベルに抑えることができるので、力に制限がある医療専門家でも容易に輸液装置10をシリンジSに着脱することができる。
【0037】
引き続き
図1、4、および7を参照しながら、この好適な実施形態による輸液装置10のアーム40および関連のドライバ50の詳細を説明する。アーム40は、チャンバー20内でスライドするシールされたスライド自在なピストン42と、シリンジSのプランジャPの好適な形態のインターフェースであるドライバ50との間の好ましい形態の相互接続を提供する。このアーム40は、好ましくは、チャンバー20内に常駐し、チャンバー20内でその中心軸に沿って往復する(軸方向に移動する)大きさの、長くて実質的に硬い構造である。
【0038】
シールされたスライド自在なピストン42は、アーム40の遠位端に設けてある。このシールされたスライド自在なピストン42は、シリンジSのピストンJと同様であり、チャンバー20の内壁に摩擦係合するように構成され、シールされたスライド自在なピストン42とチャンバー20の壁との間に流体密の係合ができるよう、十分硬い材料で形成されている。従って、アーム40がチャンバー20の内外へ往復運動する時、シールされたスライド自在なピストン42もチャンバー20内で動き、シールされたスライド自在なピストン42とチャンバー20内の遠位端22との間の真空空間の容積は増減する。
【0039】
好適な実施形態の輸液装置は、チャンバー20に最も深く延出するアーム40の自由端部44に連結された、シールされたスライド自在なピストン42を含む。この自由端部44は、好ましくは、断面の直径がアーム40のその他の部分よりもわずかに小さくなった、アーム40の一部を画定するネック45を有するように構成される。この断面の直径はまた、好ましくは、形状が円形であるが、その他の形状でも良く、アーム40のその他の部分よりも小さいか、円形に近い限り、尚もネック45として作用することができる。
【0040】
アーム40は、自由端部44から離れて近位方向に延出し、ネック45は、好ましくは、一連の小面46に徐変し、これは、一定ではあるが、形状が円形ではなく小面付きの断面形状をアーム40に与える。これらの小面46は、凹凸角を含む、様々な構成をとることができる。本発明の最も簡単な形態においては、アーム40が基本的に正方形の断面となるよう、4つの同様なサイズの小面を設ける。
【0041】
アーム40の断面形状のこの輪郭は、チャンバー20の小面付き整合ガイド28の断面形状と同様である。従って、アーム40は小面付き整合ガイド28を通過して移動できるが、アーム40が小面付き整合ガイド28に関して回転するのを防止することができる。しかし、アーム40のネック45部が小面付き整合ガイド28と整合した時、そのような回転上の制約がなくなり、アーム40、シールされたスライド自在なピストン42、およびドライバ50は、チャンバー20、ボディ21、およびクランプ30に関して(
図4および15の矢印G)一体として回転できる。アーム40が動き、小面付き整合ガイド28に当接するネック45部と整合しなくなった場合、アーム40の小面付き部分46は小面付き整合ガイド28と係合(および協働)する。これにより、アーム40は非常に安定した状態に保たれ、チャンバー20の中心軸沿いに正確に整合される傾向が出るため、ドライバ50は、このシリンジSのプランジャPの近位終端部Hと正確に整合し続け、輸液装置10を、そこから輸液するために(
図7および16のKに沿って)シリンジSに作用する非常に安定した力付加手段とする。内部への移動中に輸液装置がシリンジの近位終端部にかける力は、プランジャが内向きに動いて薬物を注入させる際、シリンジのプランジャに行われる実際の仕事に変換される。
【0042】
自由端部44に対向するアーム40の端部は曲り部48を含み、これはドライバ50に徐変する。ドライバ50は、アーム40の延出部または徐変部であり、これは、ハンドル58とスラスト領域52、54とを含む。スラスト領域52、54は、シリンジSのプランジャPの近位終端部Hと連結して、輸液させることができる。本発明の好適な形態において、ドライバ50のスラスト領域52、54は、係合プレート52と関連のリム54とを含む。係合プレート52は基本的に平面で、チャンバー20の中心軸に対して直角に向けられている。このプレート52は、好ましくは、プレート52の外周から遠位方向に延出する円筒形のリム54を含む。このリム54の直径は、シリンジSのプランジャPの近位終端部Hよりもわずかに大きく、近位終端部Hは典型的には実質的に円形である。従って、近位終端部Hが係合プレート52に当接している時、リム54はドライバ50を近位終端部Hと整合した状態に保ち、シリンジSにクランプされた輸液装置10のアセンブリの安定化をさらに促進させる。リム54は外周の全体を取囲む必要はなく、近位終端部Hの運動に抵抗するのに適した部分のみで良い。
【0043】
図1、4、7、14、15、16、17、および18において、トラバース部材56は曲り部48からプレート52の裏側へ延出し、係合プレート52をアーム40に相互接続している。このトラバース部材56は、好ましくは、さらに曲ってフック58を形成する。好ましい場合、このようなフック58を用いて、輸液アセンブリ2の全体や、少なくとも輸液装置10および関連のシリンジSを高い支柱から吊るすことができる。このような構成において、フック58は輸液アセンブリ2の全体のうち、最も高い位置に来る。このフック58は、ユーザがドライバ50、アーム40、およびシールされたスライド自在なピストン42を(
図4および14の矢印Eに沿って)抵抗力に逆らって(本実施形態においては、シールされたスライド自在なピストンが真空力により遠位方向に押されることを含む)引くために、また、同じ構造を(
図4および15の矢印Gに沿って)回転し易くするために握ることができるハンドル58としても作用する。
図21に示した実施形態は、代替的であるが、同等に好ましいドライバ50、フック58、およびスラスト領域52、54の設計を示している。この実施形態において、プレート52とリム54とを有するスラスト領域は、輸液装置10が能動的にシリンジSと係合する時、ハンドル58の最遠位の態様に付けられ、フックではなく、ループとなる。
【0044】
ドライバ50およびアーム40は、シリンジSのプランジャPに直線力をかける、好適な形態の力付加部材(加力体)として作用する。本実施形態において、ドライバ50は、アーム40の作用と、シールされたスライド自在なピストン42が、シールされたスライド自在なピストン42とチャンバー20内の遠位端22との間の真空へ引き込まれることにより、動かされる。シールされたスライド自在なピストン42とチャンバー20の遠位端22との間に純粋な真空がある限り、この力は完全に一定であり続け、真空チャンバー20の外の大気圧に比例する。従って、加力体の内部への移動の長さ全体にわたり、薬物の放出のために、一定の力がシリンダSにかけられる。
【0045】
代替の実施形態において、真空チャンバー20は、その他の何らかの形態のエネルギー蓄積および抵抗力付加の原理(抵抗力付加手段)で置換えることができる。例えば、引張りばねを、ドライバ40と一般にボディ21に取付けられている面との間に設けることができる。ばねは、ユーザがエネルギーをかけて加力体40、50を離れる方向へ移動させることにより引張りばねを伸ばして注入器を有効にするまでは、加力体(アーム40およびドライバ50)を静止点(最大の内部移動状態)に保つ傾向がある。次いで、ばねは、加力体40、50を静止点に戻そうとする力を働かせることにより、シリンジのプランジャPに有用な仕事を行うドライバ50の強制的な内部への移動を引き起こす。同時に、ドライバ50はこの力をシリンジSのプランジャPに与える。
【0046】
別の代替として、輸液装置ボディ21は、真空チャンバー20ではなく、圧縮ガスチャンバーを含むことができる。このような圧縮ガスチャンバーは、典型的には、シールされたスライド自在なピストン42の近位側に、シールされたスライド自在なピストン42とポート付き底部26との間に位置する。これは、ポート付き底部26および整合ガイド28に近いチャンバーの近位態様に流体密なシールを必要とする。別の圧縮ガス作動器は、このような圧縮ガスリザーバに着脱自在に取付け可能な圧縮空気カートリッジを含み、圧縮空気源内の圧力と大気圧との差に比例して力を与えることができる。ドライバ50がこれに連結された任意のシールされたスライド自在なピストン42と共に動く時に、この圧縮空気源の圧力が十分高い場合、圧力の差は、大気圧に関してわずかに低減するが、実質的に一定の力がシリンジSにかかるほど、十分小さい。その他の類似の代替抵抗力付加手段を設けることもできる。
【0047】
抵抗力付加手段(真空チャンバー20、ばね、圧縮ガスなど)は、加力体40、50を静止点に保持する傾向があるが、加力体(アーム40およびドライバ50)部が何らかの程度の離れる方向への移動においてロックアウトされ、アーム40と輸液装置の底部26との間の相互作用により一時的にそこに保持される時、蓄勢装置として作用することもできる。好適な実施形態において、底部26に関するそのようなアーム40のロックアウトは、アーム40の小面46とボディ21の小面付き整合ガイド28との間の相互作用により、(アーム40にかかる抵抗力)X(加力体(アーム40およびドライバ50)およびシールされたスライド自在なピストン42が外向きに移動した(距離)と等しい位置エネルギーが蓄積される。ばねの場合、位置エネルギーは、(アーム40または同様な構造が動くことができる時に、ばねが動いた距離)X(ばねのばね力)である。
【0048】
特に
図2、3、5、6、8、および9を参照しながら、好適な実施形態によるストップコックバルブ60の詳細を説明する。これらの実施形態の幾つか(
図2、5、および8)において、多岐管ハブ70は最良の実施形態によって設けてある。別の図面(
図3、6、および9)では、代替の多岐管ハブ170が設けてある。これらのストップコックバルブ60の各々について、共通のハウジング62が設けられている。
【0049】
このハウジング62は、形状が基本的に短い中空の円筒形であり、1つの側が開放しており、基本的に円筒形で、一般に直径がその深さよりも大きい逃げ64を中に有する。この逃げ64は、ハウジング62の壁によって画定される外周を有し、前記壁は、基本的に円筒形で、ポートA、B、C、Dを中に、好ましくは、各々が共通の平面上で互いに90°離れ、ハウジング62の中心軸から離れるように放射状に延出するように有する。
【0050】
代替として、3つのポートのみを設けることができる(1つは第2のシリンジTまたはバイアル・アダプタ90などの薬物源用に、1つはシリンジS用に、1つは患者輸液インターフェース84用に)。好ましくは、ポートA、B、C、Dは、形状が基本的に円筒形で、その中心軸がハウジング62の中心軸から離れるように放射状に延出し、ポートA、B、C、Dおよびハウジング62は全て一緒に形成されるか、単体構造として固く一緒に取付けられている。
【0051】
多岐管ハブ70は、逃げ64内に常駐し、逃げ64内の多岐管ハブ70の向きによって、ポートA、B、C、Dのうち少なくとも2つの間で流体アクセスができるようにする。この多岐管ハブ70は、好ましくは、形状が実質的に円筒形で、逃げ64内にぴったりはまるようなサイズおよび形状であるが、ハウジング62の中心軸に関して(
図2〜10の矢印Iに沿いに)回転できるようになっている。この多岐管ハブ70は、好ましくは面73から上がり、多岐管ハブ70の外周を越えて延在するアームの形態のセレクタ72を含む。セレクタ72は手でつかみ、適切にバルブを設定するために回すことができる。
【0052】
多岐管ハブ70は中空でも中実でも良いが、特に、中に含まれる1若しくはそれ以上の流体流路を特徴とする。最も好ましくは、多岐管ハブ70は中央流体流路74を有し、これは、多岐管ハブ70を通過して直線的に、放射状に延びており、中央流体流路74がこのようなポートA、C、またはポートB、Dと整合した時に、互いに対向するポートA、C、またはポートB、Dを直接一緒に整合させることができるようになっている。
【0053】
ただし、最良の実施形態においては、多岐管ハブ70およびハウジング62の形成時にフォローされる公差は十分厳しく、多岐管ハブ70がハウジング62内で好ましくない回転をしないように防止され、また、流体密な係合が実現される。このようなバルブには、当業者に知られている、その他の漏れの防止や軽減の技術を用いることもできる。
【0054】
多岐管ハブ70において、追加的流体流路の好ましい向きは、第1の側脚76および第2の側脚78も設けられていることを示しており、これらは多岐管ハブ70の中心から放射状に延出し、互いから90°の角度があけられ、中央流体流路74の端部から90°開いている。このような構成では、第1の側脚76および第2の側脚78は、当接するポートA、B、C、Dと整合して、セレクタ72をつかんで(矢印I沿いに)回転させることにより制御される多岐管ハブ70の位置により、任意の2つの当接するポートA、B、C、Dの間で流体の通路を作ることができる。
【0055】
特に
図3、6、および9〜13を参照しながら、代替の多岐管ハブ170の詳細を説明する。この代替の多岐管ハブ170は、好ましくは、中の流体流路が幾分異なったルートになっている以外は多岐管ハブ170と同様である。特に、セレクタ172および面173は、多岐管ハブ170のそれらと同様である。第1の流体流路は、直線的で、代替の多岐管ハブ170の中央から、その中点で交差することなく放射状に延在するように設けられている。第2の流体流路176も、側方に、第1の流体流路174と平行に、ただし、第1の通路174から横方向に間隔をあけて設けられている。第2の流体流路176の1つのバージョン(図示せず)は、非直線的で、多岐管ハブ170の外周に沿って通っているが、第2の流体流路176上に示したものと一致する開口部を各側に有する。
図11に示したように、スリーブ175を設けることができる。
【0056】
第2の流体流路176は、その端部が第1の通路174の端部から45°の間隔があくように位置する。従って、第1の通路174および第2の流体流路176の端部は、中央流体流路74および多岐管ハブ70の側脚76、78の端部と同様な位置となる(
図2、5、および8)。多岐管ハブ70、170が(
図2〜10の矢印I沿いに)ハウジング62に関して回転することにより、流体流路74、76、78、174、176の端部は様々なポートA、B、C、Dと整合して、医療用製剤やその他の流体を好ましい方式でストップコックバルブ経由で送ることができる。
【0057】
好ましくは、面73は、多岐管ハブ70、170内でのこれらの流体流路の位置を示す印を印刷する。好ましくは、セレクタ72は、この印から間隔をあけた位置で放射状に延在し、セレクタ72に妨害されてユーザが印を見にくくなるようなことがないように設ける。ユーザは単に、ユーザが一緒にして流通させたいポートA、B、C、Dと整合するように、印に合わせるだけで良く、すると、ストップコックバルブ60が適切に動作するよう、多岐管ハブ70、170が妥当に設定される。このような印は、患者ケアのレジメンの点検時などのように、ストップコックバルブ60が適切な位置に設定されていることを医療専門家が一目で確認できるようにする上でも有用である。
【0058】
使用・動作時において、特に
図14〜18を参照しながら、好適な実施形態による輸液装置10の作用の詳細を説明する。最初にユーザは、輸液装置10をシリンジS上にまずカチッと留める(
図1の矢印F)か、
図14に示したように、ハンドル58経由で加力体の離れる方向への移動(チャンバー20の外からのドライバ50、アーム40、および関連のシールされたスライド自在なピストン42の近位方向の運動)により、チャンバー20をまず真空にするかの選択肢を有する。そのような運動により、チャンバー20内が真空引きされ、位置エネルギーが誘起され、「作動」状態となる。輸液装置10を用いる前に幾らかの時間が経過したり、一時停止が必要な場合、この作動状態において加力体を可逆的に使用不能とすることができる。この使用不能化は、ドライバ50のハンドル58を回転させて(
図4および15の矢印G)、アーム40の小面46がもはや小面付き整合ガイド28と整合しなくなるようにする必要がある。従って、ドライバ50のハンドル58が解放され、真空がアーム40を遠位方向に真空チャンバー20の方へ引張る(実際には、大気が押す)時、アーム40の小面46が、この不整合により使用不能の構成となっている小面付き整合ガイド28と当接し、アーム40がさらにチャンバー20の中へ移動しないようにする。この作動されているが、使用不能化された構成により、装置は位置エネルギーを蓄積することができる。作動中に加力体を使用不能にする、その他の機構も潜在的に存在し、これは、様々な位置で可逆的にアームに取付け可能であるが、整合ガイドを通り抜けることができず、アームの内部への移動および輸液を停止させるピンまたはスライド自在なプレートを含む。
【0059】
アーム40に4つの小面46と、小面付き整合ガイド28に4つの小面と、各々に基本的に四方形の断面とを設けることにより、その中心軸の周りで使用不能化された構成からアーム40を(矢印G沿いに)45°回転させると、輸液装置10が、使用不能化された位置エネルギー蓄積用向きから、使用可能でエネルギーを付与する加力体に戻る(また、その逆についても同様)。
【0060】
そのようなアーム40の(
図4および15の矢印Gに関する)回転は、輸液装置10を位置エネルギー蓄積用向きにするために用いると共に、シリンジSのプランジャPへの妨げのないアクセスを提供したり、輸液装置10のドライバ50をシリンジSのプランジャPの近位終端部Hと係合させるためにも用いることができる。例えば、輸液装置10をシリンジS上にカチッと留め(
図1の矢印F)、(
図4および14の矢印E沿いの運動により)チャンバー20が真空引きされ、アーム40のネック45が小面付き整合ガイド28と整合して、アーム40が(
図15の矢印Gに関して)わずかに回転し、輸液装置10が位置エネルギー蓄積用向きに来た後も、シリンジSのプランジャPに尚も容易にアクセスできる。このような向きにおいて、ユーザは、プランジャPの近位終端部Hを引いて薬物をシリンジに引き入れるなど、典型的な方式でシリンジSをロードすることができる。このようなシリンジSのロードは、薬物を第2のシリンジTなどの別のシリンジから、または薬物バイアルMから、またはポートA、B、C、Dの1つを介してストップコックバルブ60と連結されたその他の何らかの源から供給して行うことができる。別の代替として、シリンジSは予めロードされたシリンジとすることもできるし、近位端部からロードすることもできるし、また、ストップコックバルブ60から全体を取外して、何らかの別の方式でロードすることもできる。
【0061】
シリンジSが一旦ロードされて輸液の準備ができたら、アーム40はさらに回転し、ドライバ50がシリンジSのプランジャPの近位終端部Hと整合できるようになる。ドライバ50は次いで、係合プレート52がシリンジSの近位終端部Hと当接するまでわずかに解放される。これで、力がシリンジSのプランジャPにかけられ、薬物がシリンジSからストップコックバルブ60を介して、患者の体内へ患者インターフェース部およびその連結部84を介して送達されることになる。
【0062】
ストップコックバルブ60はまず、流体の流れが患者インターフェース部80、82、84に向かって発生するよう、適切に(矢印I沿いに)回転される。このような力の付加は、
図7および16の矢印K沿いに起こる。真空に関連する力は一定であり、力は一定の速度で発生するから、一定の力がシリンジSにかかり、一定速度で薬物の送達が行われる。この力は、例えばチャンバー20の直径を変更するなど、チャンバー20の容積を変更することにより変化させることができる。従って、様々なサイズの輸液装置を設けて、様々な力、故に、様々な流量を有するようにすることができる。別の代替として、調整部80を用いてこのような流量の調整をすることができる。シリンジSとストップコックバルブ60との間のインターフェースで、また、チューブ自体の機能としてなど、その他の場所でのその他の流れの制限も、このような輸液速度制御のための代替として用いることができる。
【0063】
ユーザが患者インターフェース部80、82、84を介して医療用製剤の患者への輸液をさらに急増したい場合、医療専門家は単にドライバ50のハンドル58を押して、普通なら大気と真空チャンバー20との相互作用によって与えられる力を増加させるだけで良い(または、ストップコックバルブ60を介して流れの向きを変え、調整部での流れを低減させるかなくして別のポートを出るようにすることができる)。同様に、輸液は一時的または永久的に停止することができ、これは単に、輸液工程の途中でドライバ50のハンドル58を(
図14の矢印B沿いに)引き、アーム40のネック45が小面付き整合ガイド28と整合するまでドライバ50をシリンジSのプランジャPの近位終端部Hから引き離すだけで良い。従って、アーム40を有する作動器は(矢印G沿いに)わずかに回転し、再度蓄勢させることができる。次いで、シリンジSは、輸液装置10が再びシリンジSのプランジャPの近位終端部Hに作用するようにドライバ50で整合させるまで遊び状態で、薬物を輸液しない使用不能状態で静止する。従って、例えば、患者インターフェース部80、82、84が調節を必要とする場合、輸液装置10は輸液の途中で容易に停止・再開することができる。輸液工程はまた、作動器を真に消勢することによっても、容易に停止することができる。この消勢によっても輸液は停止し、これは、作動器をネックまで引戻し、(アーム40と共に)どちらかの方向に、別の対応する小面付きの位置(小面付きアームが小面付き整合ガイドを通過して再度内部へ移動する位置であるが、内部への移動は、係合プレートがシリンジの近位終端部と相互作用しない位置で行われる)まで完全に90°または180°回転させ、そこで作動器を静止点まで下げて蓄積された位置エネルギーを解放し、輸液工程を停止することにより実現される。
【0064】
図22は、典型的な使い捨て静脈(intravenous:IV)投与セットに「組込まれた」輸液シリンジSを示す。シリンジSは、「直列型」構造のセットにおいて近位方向に配置され、本実施形態においては、先行技術の投与セットに典型的に存在する「ドリップ・チャンバー」の代わりにもなる。
【0065】
本発明の輸液装置10およびシリンジSの一実施形態は、シリンジSを特定の薬物で予めロードした構造とする。例として、頭部外傷が起こった後、早期に頭部外傷患者にプロゲステロンを投与すると、どのような頭部外傷であれ、その治癒が大幅に向上できることが知られている。本実施形態において、シリンジSにプロゲステロン、またはその他の何らかの薬物を予め充填する。最低限、輸液装置10およびシリンジSは、2つの着脱可能な構造か、単体の使い捨て構造のいずれかとして、一緒に供給する。ユーザは、シリンジSが適切に患者に連結された後、前述のように輸液装置10を操作して、輸液装置10を有効にする。すると、輸液装置10は、シリンジSに予め充填された薬物を患者に投与する。輸液装置10および/またはシリンジSは、適切な量の薬物を容易に測定し、投与できるよう、時間単位や容量単位や、患者の成熟度単位などのその他の単位でラベリングすることができる。特に、輸液装置および/またはシリンジのラベリングは、ミリメートル、立方センチメートル、年齢、キログラム(患者の体重)、マイクログラム、ミリグラム、グラム、国際単位、ヘパリン単位、ポンド、平方メートル、または分の形にすることができる。シリンジSに予め充填することができる特定の薬物は、アヘン剤、オピオイド、鎮静剤、ベンゾジアゼピン、プロポフォル、麻酔薬、昇圧薬、血管拡張薬、抗凝固薬、化学療法薬、抗生物質、ステロイド、プロゲスチン、抗不整脈薬、または抗てんかん薬を含むことができる。
【0066】
別の代替として、シリンジSと輸液装置10とのこのような使い捨ての組合せを、さらにストップコックバルブ60などのバルブに連結し、1つのポートを介してさらに患者に、また、バイアル・アダプタ90を介するなどして薬物源に、そして潜在的には食塩水やその他の薬物のために別のポートに連結することができる。バイアル・アダプタ90は、本実施形態では、永久的に取付けられたバイアルで置換えることができる。このような構成において、様々な部品は、この様々な部品が全て1回使い切りで、使い捨て用に構成されている以外は、前記で詳述した実施形態と同じように機能する。システムは、単一の薬物で構成することもできるし、共通のキット内で異なる薬物を選択する機会ができるよう、輸液装置10およびシリンジSでパッケージした異なる薬物のサブセットを有することもできる。このようなキットは、現場に向かう救急車で搬送することができる移動パッケージ内や、その他の同様な医療機器の移動用アセンブリ内に封じ込めるという点で、「外傷キット」と考えることができる。キットは、薬物を別々のバイアル内か、バルブ60に取付けるか、シリンジS内に予め充填した1若しくはそれ以上の薬物を提供し、キットは単に開いて、(1つ以上の薬物が利用できる場合は)薬物を選択し、患者の静脈系と適切に連結した後、投与するだけで良い。輸液装置10を真空にし、シリンジSからの薬物を輸液するように設定した後、アセンブリ全体を直接患者にテープで留めるか、何らかの形態のハーネスで留め、薬物が継続して患者に輸液されるようにすることができる。真空が薬物を患者に輸液する力を与えているため、輸液装置10およびシリンジSが特定の構造から吊り下げられる必要はない。むしろ、医療施設への輸送中に輸液装置が患者と一緒に移動できるよう、単に患者に取付けるだけにすることができる。
【0067】
図22に示した好適な実施形態は、点滴液をプラスチック製バッグからストップコックへ(図示せず、ただし、ストップコックのポートAからポートCへ)、また、遠位の先端のポート(ストップコックのポートCは典型的に、シリンジの遠位の先端のポートに直接接続されるが、明確にするために、この図では当接するように示している)を経由してシリンジSに送達する点滴液流路を示す。点滴液は、埋込まれた「ドリップ・ニードル」101を通ってシリンジの先端に入るので、滴下する点滴液102は、これが薬物リザーバ104に滴下する際の1分当たりの滴下回数を数えることにより視覚化・定量化できる。薬物リザーバ104内の点滴液または薬物は、ピストン送液ポート105と呼ばれる第2のポートから出る(前記第2のポートはシリンジのピストンJ上にあり、ピストンJにより、点滴液チューブ106へ送液し、ここでシリンジのプランジャP沿いに(またはプランジャP内で)通り抜けて落ち、さらに点滴液チューブ106を通り、最後には患者の静脈に入ることができるようになっている)。この実施形態により、開業医が薬物送達のために別のシリンジを見つける煩わしさがなくなるが、これは、本開示の様々な他の箇所で述べた本発明の説明に従って同様な方式で用いることができる場所で、既にIV投与セットの中に存在するからである。
【0068】
本開示は、本発明の好適な実施形態および本発明を実施するための最良の形態を明らかにするために提供する。本発明をここまで説明してきたが、本発明の開示の範囲と趣旨を逸脱しない範囲で様々な改変を好適な実施形態に行うことができることが明白である。構造がある機能を行う手段として同定されている場合、その同定は、指定された機能を行うことができる全ての構造を含むことを意図する。本発明の構造を一緒に連結するとして同定されている場合、その言葉遣いは広義に解釈すべきであって、直接一緒に連結されるか、または介入構造を介して一緒に連結される構造を含む。このような連結は、永久的または一次的であり、固い方式でも、特に制限しない限り、何らかの形の固定をしながらも枢動、スライド、またはその他の相対的運動を可能とする方式でも良い。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、非電気式の輸液装置を提供するという点で、産業上の利用可能性を示す。
【0070】
本発明の別の目的は、高信頼性で動作することができ、正確な長時間の使用に耐える薬物輸液装置を提供することである。
【0071】
本発明の別の目的は、形状が小型で、セットアップおよび操作が容易な薬物注入器を提供することである。
【0072】
本発明の別の目的は、医療用製剤を様々な最初の源から受入れ、医療専門家の希望に応じて柔軟に機能するよう容易に作動・非作動することを含む、様々な方式で柔軟に動作できる薬物注入器を提供することである。
【0073】
本発明の別の目的は、低コストの薬物輸液システムを提供することである。
【0074】
本発明の別の目的は、少なくともシステムの一部が使い捨てである薬物輸液システムを提供することである。
【0075】
本発明の別の目的は、投薬ミスの率が低い薬物輸液システムを提供することである。
【0076】
本発明の別の目的は、液体および粉末製剤を含む薬物を様々な最初の源からリザーバへ受入れるために用い、そこから患者に輸液できる薬物輸液アセンブリを提供することである。
【0077】
本発明の別の目的は、適切に機能するために重力に関して特定の向きを必要としない輸液アセンブリを提供することである。
【0078】
本発明の別の目的は、MRIスキャナと両立性がある薬物輸液システムを提供することである。
【0079】
本発明の別の目的は、標準的なシリンジから薬物を輸液できる輸液装置を提供することである。
【0080】
本発明の別の目的は、標準的な使い捨て静脈投与セットに組込むことができる輸液装置を提供することである。
【0081】
本発明の別の目的は、容易に患者に取付けることができる薬物注入器を提供することである。
【0082】
産業上の利用可能性を示す、本発明のその他の目的は、含めた詳細な説明を注意深く読み、添付図面を見直し、ここに含めた特許請求の範囲を検討すれば明らかとなろう。