【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の高溶解性を有する低次アシル基ジェランゴムの抽出方法は、ジェランゴム発酵液の酵素処理ステップと、酸/キレート剤/低級アルコール混合体系の凝集処理ステップと、脱アシル基処理ステップと、脱アシル基ジェランゴム溶液の清澄化処理ステップと、イオン交換処理ステップと、脱アシル基ジェランゴム溶液脱水処理ステップと、乾燥・粉砕・ペレット化ステップとを含む。具体的なステップは以下のとおりである。
【0012】
(1)発酵液の酵素処理ステップ
発酵液に異なる酵素製剤を順に添加し、保温・酵素加水分解することにより、発酵液における不溶性の不純物と菌糸体断片をできるだけ除去する。さらに詳しく説明すると、一種の酵素製剤を添加して保温酵素加水分解してから他種の酵素を添加して保温酵素加水分解し、これに基づいて類推する。
【0013】
(2)発酵液の凝集ステップ
ステップ(1)酵素処理後の発酵液に、酸/キレート剤/低級アルコール混合体系を添加して凝集し、固体・液体を分離することにより、発酵液における大分の水及び色素を除去し、濃縮のジェランゴム粗生成物を得る。
【0014】
(3)脱アシル基処理ステップ
ステップ(2)に得られた凝集生成物を改めて溶解し、かつ高温アルカリによって脱アシル基を処理する。
【0015】
(4)脱アシル溶液の清澄化処理ステップ
ステップ(3)に得られた脱アシル基溶液を濾過処理し、清澄化低次アシル基ジェランゴム溶液を得る。
【0016】
(5)清澄化脱アシル基ジェランゴム溶液脱水処理ステップ
ステップ(4)に得られたジェランゴム脱アシル基清澄化溶液に、アルカリ金属塩を添加することによりゲルを形成し、かつ圧搾・脱水する。
【0017】
(6)イオン交換及脱色処理ステップ
ステップ(5)に得られたジェランゴムを小さな粒子に細かく刻んで、イオン交換工程によりジェランゴムにおける二価陽イオンを大分除去し、処理後の溶液を圧搾して脱水し、脱水後のジェランゴムを低級アルコールに浸漬させて撹拌・濾過する。これにより、脱色効果を徹底的に奏する。
【0018】
(7)乾燥粉砕ステップ
ステップ(6)に得られたジェランゴム固体材料を乾燥かつ粉砕し、ペレット化することにより、高透明度低次アシル基ジェランゴム製品を得る。
本発明のポスト抽出方法を以下のとおりさらに詳しく説明する。
【0019】
1.発酵液の酵素処理ステップ
発酵液に異なる濃度の、少量の水により溶解分散したセルラーゼ、リゾチーム及プロテアーゼを順に添加し、保温・酵素加水分解し、異なる時間を維持する。前記プロテアーゼが中性プロテアーゼ又は酸性プロテアーゼである。
【0020】
2.発酵液凝集処理ステップ
ステップ(1)
で酵素処理
された発酵液の温度を30℃以下に下げ、酸/キレート剤/低級アルコール混合体系
が添加された繊維状凝集は、圧縮されて固体と液体に分離される。
この処理において、酸/キレート剤
、低級アルコール中
の酸、キレート剤
、低級アルコール
は、混合してから添加してもよく、順に添加してもよい。
【0021】
3.脱アシル基処理ステップ
(3.1)ステップ(2)に得られた凝集生成物を分解した後、10倍〜20倍の重量の脱イオン水に溶解し、温度を80℃〜90℃に上げ、十分に攪拌することにより完全に溶解する。
【0022】
(3.2)ステップ(3.1)に得られたジェランゴム溶液にアルカリを添加することにより、pH値を9.5〜11の範囲に調整し、温度を85℃〜90℃に、時間を10min〜15minに保つ。これにより、ジェランゴムメインチェーン上のアシルグリセロール及びアセチルを脱する。
【0023】
(3.3)ステップ(3.2)に得られた脱アシル基ジェランゴム溶液に酸を添加し、pH値を中性に調整する。
【0024】
4.脱アシル溶液清澄化処理ステップ
プレートとフレーム又はチャンバー型により加圧濾過し、高速遠心分離し、又は微孔濾過膜により濾過し、ステップ(3.3)に得られた脱アシル基ジェランゴム溶液を清澄化処理し、清澄化処理時の温度として好ましくは60℃以上にすることにより、溶液がゲルを形成することを防ぐ。得られた清澄化溶液の透光度は92%以上にあるはずである。
【0025】
5.脱アシル基ジェランゴム溶液脱水処理ステップ
ステップ(4)に得られた脱アシル基清澄化ジェランゴム溶液に適当な品質のアルカリ金属陽イオン塩類を添加し、形成されたゲルを圧搾脱水して含水量80%程度の低次アシル基ジェランゴムのゴムブロック又はフィルムを得る。
【0026】
6.イオン交換及び脱色処理ステップ
ステップ(5)に得られた水分含有量80%のジェランゴムを小さな粒子に細かく刻んで、それを3〜5倍量の一価アルカリ金属塩を適当に添加して処理された水に入れて、浸漬させてかつ撹拌し、イオン交換の形態でコロイドを二価陽イオン塩の形態から一価陽イオン塩の形態に転換すること又はコロイドの二価又は多価陽イオンを除去するために、3〜5倍重量のキレート剤を適当に添加して処理した水に入れて、浸すかつ高速で撹拌する。又、徹底的な色素を脱する効果を達するために、処理されたジェランゴム溶液を圧搾しかつ脱水してから2倍重量の低級アルコールに入れて、浸すかつ高速撹拌し、濾過する。
【0027】
7.乾燥粉砕ステップ
ステップ(6)に得られた生成物を75℃〜80℃において乾燥しかつ粉砕し、その後ペレット化することにより、その95%を80網目の篩を通過させる。
【0028】
本発明の各ステップのプロセス条件を以下のとおりさらに詳しく説明する。
ステップ1に添加した酵素及び条件はそれぞれ以下のとおりである。セルラーゼの濃度としては、好ましくは500〜2000ppmであり、より好ましくは1000〜1500ppmである。酵素加水分解の温度としては、好ましくは40〜50℃であり、より好ましくは43〜45℃である。酵素加水分解の時間としては、好ましくは4h〜8hであり、より好ましくは5h〜6hである。リゾチームの濃度としては、好ましくは50〜300ppmであり、より好ましくは100〜200ppmである。酵素加水分解の温度としては、好ましくは30〜40℃であり、より好ましくは35〜37℃である。酵素加水分解の時間としては、好ましくは2h〜4hであり、より好ましくは2.5h〜3.5hである。プロテアーゼの濃度としては、好ましくは100〜1000ppmであり、より好ましくは300〜500ppmである。酵素加水分解の温度としては、好ましくは30〜40℃であり、より好ましくは30〜35℃である。酵素加水分解の時間としては、好ましくは1h〜5hであり、より好ましくは2h〜3hである。そのプロテアーゼは中性プロテアーゼであり、又はアルカリ性プロテアーゼであり、濃度は発酵液を基準とする。
【0029】
ステップ2に用いられる酸/キレート剤/低級アルコール混合体系における酸は無機酸又は有機酸から選ばれてもよい。無機酸は塩酸、硫酸又はリン酸から選ばれた1種又は2種以上であってもよいが、それに限られていない。有機酸はギ酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸又は酒石酸から選ばれた1種又は2種以上であってもよいが、それに限られていない。実際的生産において、用いられる酸は好ましくは無機酸であり、より好ましくは塩酸である。酸の含有量は、発酵液体系のpH値を2.5〜3.5に調整することができる。
【0030】
ステップ2に用いられる酸としては、濃度を10%にする溶液が好ましい。
【0031】
ステップ2に用いられる酸/キレート剤/低級アルコール混合体系におけるキレート剤は
、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ソーダ、メタリン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウムから選ばれた1種又は2種以上であってもよいが、それに限られていない。用いられるキレート剤は、好ましくはクエン酸ナトリウム及びヘキサメタリン酸ソーダから選ばれ、より好ましくはクエン酸ナトリウムである。添加したキレート剤の含有量は好ましくは発酵液における濃度が200〜1000ppmであり、より好ましくは500〜700ppmである。
【0032】
ステップ2に用いられる酸/キレート剤/低級アルコール混合体系における低級アルコールは、エタノール、イソプロパノール及びブタノールから選ばれた1種又は2種以上であり、好ましくはエタノール及びイソプロパノールから選ばれ、より好ましくはイソプロパノールである。含有量としては、好ましくは発酵液体積の2〜4倍であり、より好ましくは2.5〜3.5倍である。
【0033】
ステップ2に用いられる固体・液体を分離するための装置は、チャンバー型ポリプロピレンプレートとフレームフィルタープレス又はバッグ圧搾機から選ばれてもよいが、それに限られていない。好ましくはチャンバー型ポリプロピレンプレートとフレームフィルタープレスである。
【0034】
ステップ3.1に分散した後のジェランゴム繊維の長さは好ましくは10cmであり、繊維における水分の含有量は80%程度である。
ステップ3.1に分散したジェランゴム繊維を10〜20倍重量の脱イオン水に溶解し、好ましくは15〜20倍の脱イオン水に溶解する。溶液を加熱して温度を80〜95℃に上げ、好ましくは85〜90℃にする。
【0035】
ステップ3.2において、pH値調整用アルカリはNaOH、KOH、Na
2CO
3、K
2CO
3中から選ばれた1種又は2種以上であってもよいが、それに限られていない。好ましくはNaOH、KOHから選ばれ、より好ましくはNaOHである。
【0036】
ステップ3.2において、アルカリを用いてpH値を9.5〜11の範囲内に調整し、好ましくはpH値を10程度にする。
【0037】
ステップ3.2において、温度を85〜90℃の間に保ち、より好ましくは温度を86〜88℃の間に保つ。
【0038】
ステップ3.2において、時間を10〜15minに維持し、より好ましくは10 min程度にする。
【0039】
ステップ3.2において、pH値を調整するアルカリとしては、好ましくは濃度を10%にする溶液である。
【0040】
ステップ3.3において、pHを調整する酸は無機酸であってもよく、有機酸であってもよい。前記無機酸は塩酸、硫酸及リン酸から選ばれた1種又は2種以上であってもよいが、それに限られていない。有機酸はギ酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸又は酒石酸から選ばれた1種又は2種以上であってもよいが、それに限られていない。実際的製造において、用いられる酸は好ましくは無機酸であり、より好ましくは塩酸である。酸の含有量は発酵液体系のpH値を7程度に調整することができる。
【0041】
ステップ3.3において、pHを調整する酸としては、好ましくは濃度を10%にする溶液である。
【0042】
ステップ4において、プレートとフレーム又はバン式で加圧ろ過し、又は高速遠心分離又は微孔濾過膜で濾過しもよいが、それに限られていない。好ましくはプレートとフレーム又はバン式で加圧ろ過する。
【0043】
ステップ4において、溶液のゲル化を防止するために清澄化処理の温度は65℃以上にする。温度を75℃程度にするのはより好ましい。
【0044】
ステップ5中、ゲル生成時に添加したアルカリ金属塩は、一価アルカリ金属(例えば、塩化カリウム、塩化ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム中から選ばれた1種又は2種以上である)、二価アルカリ金属(例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム中から選ばれた1種又は2種以上である)及び多価アルカリ金属(例えば、塩化鉄)等を含むが、それに限られていない。好ましくは一価和二価アルカリ金属塩系である。コストを考慮する観点から、より好ましくは二価アルカリ金属塩系である。
【0045】
ステップ5において、ゲル生成時に添加した一価アルカリ金属塩は清澄化ゾルの0.8〜1.2%(重量比)を占め、添加した二価金属塩は清澄化されたゾルの0.05〜0.1%(重量比)を占める。
【0046】
ステップ5において、ゲル生成時に添加した溶性金属塩は、好ましくは濃度を30%にする溶液である。
【0047】
ステップ5中圧搾脱水に用いられる固体・液体を分離する装置はチャンバー型ポリプロピレンプレートとフレームフィルタープレス又はバッグ圧搾機であってもよいが、それに限られていない。好ましくはチャンバー型ポリプロピレンプレートとフレームフィルタープレスである。
【0048】
ステップ6において、ゲル切断機を用いて、低次アシル基ジェランゴムを柱状の小さな粒子に細かく刻んで、粒子の直径は3mm未満であり、長さは12mm未満である。
【0049】
ステップ6に用いられる一価金属陽イオンは、溶性一価アルカリ金属塩(塩化カリウム、塩化ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウムから選ばれた1種又は2種以上)であってもよいが、それに限られていない。添加量は、溶液の濃度が5000〜10000ppmに達するのは好ましく、より好ましくは6000〜8000ppmである。
【0050】
ステップ6に用いられる脱水圧搾装置は、好ましくはバッグ圧搾機である。
【0051】
ステップ6に用いられる低級アルコールはエタノール、イソプロパノールとブタノールから選ばれた1種又は2種以上である。好ましくは、エタノールとイソプロパノールであり、より好ましくはイソプロパノールである。添加量は、好ましくはジェランゴムの湿粒子の重量の2〜4倍であり、より好ましくは2.5〜3.5倍である。
【0052】
ステップ7に用いられる乾燥装置は、真空乾燥装置と沸騰乾燥装置であってもよいが、それに限られていない。温度を75〜80℃の間に制御し、時間を1h〜1.5hの間に制御する。
【0053】
ステップ7のペレット化後の粒子はその95%を40網目の篩を通過させる必要がある。