【実施例】
【0039】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0040】
(不純物元素の濃度測定法)
Ba及びPについては、試料を酸に溶解した後、ICP発光分析装置(商品名:SPS−5100、セイコーインスツルメンツ製)を使用して質量を測定することで、試料中の濃度を算出した。
【0041】
Clについては、試料を酸に溶解した後、分光光度計(商品名:UV−2550、島津製作所製)を使用して質量を測定することで、試料中の濃度を算出した。
【0042】
Si及びCaについては、蛍光X線装置(商品名:SPS−5100、セイコーインスツルメンツ製)を使用して試料中の濃度を測定した。ただし、それぞれSiO
2換算及びCaO換算の濃度として示した。
【0043】
Na及びKについては、原子吸光光度計(商品名:Z−2300、日立ハイテクノロジーズ製)を使用して試料中の濃度を測定した。
【0044】
(BET比表面積測定法)
比表面積測定装置(商品名:Macsorb1210、マウンテック社製)を使用して、ガス吸着法により比表面積を測定した。
【0045】
(細孔分布の測定)
細孔分布(変曲点径、粒子内空隙量、及びモード径)の測定
水銀圧入式細孔分布測定により得られる、変曲点径、粒子内空隙量、log微分細孔容積分布曲線の最大値に対応する細孔直径(モード径)は、以下の条件で求めた。水銀圧入式細孔分布測定装置は、
マイクロメリティックス社製オートポア9410を使用し測定した。なお、水銀は、純度99.5mass%以上、密度13.5335×10
3kg/m
3である特級の水銀試薬を用いた。測定セルは、セル内容積5×10
−6m
3、ステム容積0.38×10
−6m
3の粉体試料用セルを用いた。測定試料は、あらかじめ330メッシュ標準篩(JIS−R8801−87)で粒径を揃えた試料を、質量0.10×10
−3〜0.13×10
−3kgの範囲で精密に秤量し、測定セルに充填した。測定セルを装置に装着した後、セル内部を圧力50μHg(6.67Pa)以下で20分間、減圧状態に保持した。次に、測定セル内に、圧力が1.5psia(10342Pa)になるまで水銀を充填した。その後、圧力が2psia(13790Pa)から60000psia(413.7MPa)の範囲で水銀を圧入して、細孔分布を測定した。
【0046】
水銀の圧入圧力を細孔直径に換算するには、下記(I)式(Washburnの式)を用いた。
D=−(1/P)・4γ・cosΨ(I)
ここで、D:細孔直径(m)、
P:水銀の圧入圧力(Pa)、
γ:水銀の表面張力(485dyne・cm
−1(0.485Pa・m))、
Ψ:水銀の接触角(130°=2.26893rad)である。
【0047】
(耐湿性の測定方法)
試料10gをシャーレに秤量し、恒温恒湿機(85℃・85Rh%)内にセットした。その状態で1週間保持した後、120℃の乾燥機で一晩乾燥した。乾燥後、重量を量り、重量増加率を算出した。
【0048】
(熱伝導率の測定方法)
本発明品を添加した樹脂を完全に硬化させたサイズが直径13mm、厚さ2mmである高熱伝導率樹脂組成物のサンプルを作製し、熱拡散率をレーザーフラッシュ法で30〜100℃の範囲で測定した。装置にはNETZSCH製LFA−457を用いた。比熱と、アルキメデス法により、比重を測定し、熱拡散率と比熱と密度の積としての熱伝導率を算出した。
【0049】
(メルトフローレートの測定方法)
樹脂組成物について、JIS−K7210に準拠し、測定温度230℃、荷重2.16Kgで測定した。
【0050】
(樹脂組成物の製造方法)
メルトフローレートの測定で使用した樹脂組成物は以下の手順で調製した。
EEA(エチレン・エチルアクリレート・コポリマー)100gを溶融後、フィラー333gを少量ずつ、混練状態を見ながら約10分かけて添加し、さらに10分間仕上げ混練を行った。この時のロール間隔0.5mmであった。
【0051】
混練終了後、コンパウンドを引き剥がし、回収したコンパウンドを5mm角程度に裁断、真空乾燥機で90℃×1時間乾燥し、メルトフローレート測定用試料とした。
【0052】
(リン酸マグネシウム系化合物の組成の測定方法)
X線回折装置(商品名:RINT−Ultima III、リガク製)を使用して、Cu−Kα線を用いたX線回折法によりリン酸マグネシウム系化合物被覆層の組成を測定した。
【0053】
(実施例1)
CaをCaOに換算して0.23質量%,
SiをSiO2に換算して0.07質量%,Clを0.16質量%,Bを402ppm,Naが11ppm,Kが9ppm,になるように調整した純度99.2%の水酸化マグネシウムを電気炉にて1100℃で1時間、焼成することにより酸化マグネシウムを作成した。
【0054】
この酸化マグネシウムをパワーミルで解砕した後、酸性リン酸エステルである
イソプロピル酸性リン酸エステルを酸化マグネシウムに対し5重量%添加した。その後、120℃で2時間乾燥した後、ボールミルで粉砕し、500℃で1時間焼成を行い、目的の被覆酸化マグネシウム粉末を得た。
【0055】
得られた被覆酸化マグネシウム粉末について、上述した方法に基づき不純物元素の濃度、BET比表面積、細孔分布、耐湿性、熱伝導率、及びメルトフローレートを測定し、結果を表1に示した。
【0056】
また、上述した方法に基づき、得られた被覆酸化マグネシウム粉末表面の被覆層の組成を測定したところ、Mg
2P
2O
7であることが判明した。
【0057】
図1は、得られた被覆酸化マグネシウム粉末の電子顕微鏡写真である。被覆酸化マグネシウム粉末の粒子形状は球状であった。ここで、球状の粉末とは、角のない丸みを帯びた形状の粒子からなる粉末を指し、これに対し、不定形の粉末とは、結晶粒子が複数結合した角の有る粒子からなる粉末を指す。
【0058】
(実施例2)
水酸化マグネシウムの焼成温度を1175℃に変更した以外は実施例1と同じ条件で被覆酸化マグネシウム粉末を得た。実施例1と同様に各物性の測定を行い、結果を表1に示した。
【0059】
(実施例3)
CaをCaOに換算して0.48質量%になるように調整した以外は実施例1と同じ条件で被覆酸化マグネシウム粉末を得た。実施例1と同様に各物性の測定を行い、結果を表1に示した。
【0060】
(実施例4)
SiをSiO2に換算して0.12質量%になるように調整した以外は実施例1と同じ条件で被覆酸化マグネシウム粉末を得た。実施例1と同様に各物性の測定を行い、結果を表1に示した。
【0061】
(実施例5)
水酸化マグネシウムのB濃度を700ppmになるように調整した以外は実施例1と同じ条件で被覆酸化マグネシウム粉末を得た。実施例1と同様に各物性の測定を行い、結果を表1に示した。
【0062】
(実施例6)
水酸化マグネシウムのNa濃度を200ppmになるように調整した以外は実施例1と同じ条件で被覆酸化マグネシウム粉末を得た。実施例1と同様に各物性の測定を行い、結果を表1に示した。
【0063】
(実施例7)
水酸化マグネシウムのK濃度を200ppmになるように調整した以外は実施例1と同じ条件で被覆酸化マグネシウム粉末を得た。実施例1と同様に各物性の測定を行い、結果を表1に示した。
【0064】
(実施例8)
被覆酸化マグネシウム粉末中のリンの含有量が0.18質量%になるように酸性リン酸エステルの使用量を変更した以外は実施例1と同じ条件で被覆酸化マグネシウム粉末を得た。実施例1と同様に各物性の測定を行い、結果を表1に示した。
【0065】
(実施例9)
被覆酸化マグネシウム粉末中のリンの含有量が4.6質量%になるように酸性リン酸エステルの使用量を変更した以外は実施例1と同じ条件で被覆酸化マグネシウム粉末を得た。実施例1と同様に各物性の測定を行い、結果を表1に示した。
【0066】
(比較例1)
水酸化マグネシウムの焼成温度を950℃に変更した以外は実施例1と同じ条件で被覆酸化マグネシウム粉末を得た。実施例1と同様に各物性の測定を行い、結果を表2に示した。
【0067】
(比較例2)
水酸化マグネシウムの焼成温度を1400℃に変更した以外は実施例1と同じ条件で被覆酸化マグネシウム粉末を得た。実施例1と同様に各物性の測定を行い、結果を表2に示した。
【0068】
(比較例3)
水酸化マグネシウムのCaO濃度を1質量%に変更した以外は実施例1と同じ条件で被覆酸化マグネシウム粉末を得た。実施例1と同様に各物性の測定を行い、結果を表2に示した。
【0069】
(比較例4)
水酸化マグネシウムのSiO濃度を4質量%に変更した以外は実施例1と同じ条件で被覆酸化マグネシウム粉末を得た。実施例1と同様に各物性の測定を行い、結果を表2に示した。
【0070】
(比較例5)
水酸化マグネシウムのB濃度を1200ppmに変更した以外は実施例1と同じ条件で被覆酸化マグネシウム粉末を得た。実施例1と同様に各物性の測定を行い、結果を表2に示した。
【0071】
(比較例6)
水酸化マグネシウムのNa濃度を400ppmに変更した以外は実施例1と同じ条件で被覆酸化マグネシウム粉末を得た。実施例1と同様に各物性の測定を行い、結果を表2に示した。
【0072】
(比較例7)
水酸化マグネシウムのK濃度を400ppmに変更した以外は実施例1と同じ条件で被覆酸化マグネシウム粉末を得た。実施例1と同様に各物性の測定を行い、結果を表2に示した。
【0073】
(比較例8)
被覆酸化マグネシウム粉末全体に対するリンの含有量が0.058質量%になるように酸性リン酸エステルの使用量を変更した以外は実施例1と同じ条件で被覆酸化マグネシウム粉末を得た。実施例1と同様に各物性の測定を行い、結果を表2に示した。
【0074】
(比較例9)
被覆酸化マグネシウム粉末全体に対するリンの含有量が12.1質量%になるように酸性リン酸エステルの使用量を変更した以外は実施例1と同じ条件で被覆酸化マグネシウム粉末を得た。実施例1と同様に各物性の測定を行い、結果を表2に示した。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】