特許第5972180号(P5972180)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤンマー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5972180-エンジン 図000002
  • 特許5972180-エンジン 図000003
  • 特許5972180-エンジン 図000004
  • 特許5972180-エンジン 図000005
  • 特許5972180-エンジン 図000006
  • 特許5972180-エンジン 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972180
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
   F02D 19/08 20060101AFI20160804BHJP
   F02D 21/08 20060101ALI20160804BHJP
   F02D 41/02 20060101ALI20160804BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20160804BHJP
   F02M 25/00 20060101ALI20160804BHJP
   F02M 26/00 20160101ALI20160804BHJP
   F02M 31/20 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   F02D19/08 B
   F02D21/08 301B
   F02D21/08 301D
   F02D41/02 385
   F02D43/00 301N
   F02D43/00 301J
   F02M25/00 G
   F02M25/00 K
   F02M25/00 R
   F02M26/00 311
   F02M31/20 B
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-4699(P2013-4699)
(22)【出願日】2013年1月15日
(65)【公開番号】特開2014-136978(P2014-136978A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2015年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
(72)【発明者】
【氏名】朝井 豪
【審査官】 藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−251273(JP,A)
【文献】 特開2006−037879(JP,A)
【文献】 特開2007−278194(JP,A)
【文献】 特開平09−088729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 19/08
F02D 21/08
F02D 41/00 〜 45/00
F02M 25/00
F02M 26/00
F02M 31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料改質装置を備えるエンジンであって、
前記燃料改質装置は、供給管を介して吸気管とEGR管とが接続され、排出管を介して吸気管に接続され、
前記供給管を介して燃料改質装置に供給される吸気と排気との混合気に対して燃料を噴射する主燃料噴射装置が設けられ
前記燃料改質装置は、燃料が噴射された混合気を改質用ピストンの往復運動により断熱圧縮する改質用気筒から構成され、
前記主燃料噴射装置は、前記改質用気筒内に配置され、吸気の吸入行程又は圧縮行程の前半に燃料を噴射するように制御される
エンジン。
【請求項2】
燃料改質装置を備えるエンジンであって、
前記燃料改質装置は、供給管を介して吸気管とEGR管とが接続され、排出管を介して吸気管に接続され、
前記供給管を介して燃料改質装置に供給される吸気と排気との混合気に対して燃料を噴射する主燃料噴射装置が設けられ、
前記燃料改質装置は、燃料が噴射された混合気を改質用ピストンの往復運動により断熱圧縮する改質用気筒から構成され、
前記主燃料噴射装置は、前記供給管に配置され、前記燃料改質用気筒に吸気と排気との混合気が供給される際に燃料を噴射するように制御される
エンジン。
【請求項3】
前記エンジンの出力用気筒に副燃料噴射装置が設けられ、
前記副燃料噴射装置は、前記エンジンの出力用気筒の断熱圧縮行程又は膨張行程前半に燃料を噴射するように制御される
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエンジン。
【請求項4】
燃料改質装置を備えるエンジンであって、
前記燃料改質装置は、供給管を介して吸気管とEGR管とが接続され、排出管を介して吸気管に接続され、
前記供給管を介して燃料改質装置に供給される吸気と排気との混合気に対して燃料を噴射する主燃料噴射装置が設けられ、
前記エンジンの出力用気筒に副燃料噴射装置が設けられ、
前記副燃料噴射装置は、前記エンジンの出力用気筒の断熱圧縮行程又は膨張行程前半に燃料を噴射するように制御される
エンジン。
【請求項5】
前記排出管に燃料改質装置から排出される混合気を冷却する改質燃料用インタークーラーが設けられる
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジンに関する。詳しくは予混合圧縮自着火エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料を希薄状態で高圧縮して自己着火燃焼させることで低スモーク化及び低NOx化を実現するエンジンとして、予混合圧縮着火エンジンが知られている。予混合圧縮着火エンジンは、空気と燃料との混合気を燃焼室において高圧縮して自己着火燃焼させるように構成されている。
【0003】
予混合圧縮着火エンジンは、燃料と吸気とを均一かつ希薄に混合させる必要がある。また、空気と燃料とを均一に希薄混合しても、起動運転開始時からの経過時間、エンジン負荷、空燃比等の変化によりノッキングや失火が発生する可能性が高い。このような予混合圧縮着火エンジンにおいて、吸気に排気(EGRガス)をエンジンの運転状態に基づいて所定のタイミングで混合させることで、ノッキングや失火の発生を抑制して燃焼状態を適正に制御するものが知られている。
例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0004】
しかし、特許文献1に記載の予混合圧縮着火エンジンにおいて、燃料に混合されるEGRガスは、エンジンの運転状態によりその温度やEGRガスの成分構成が大きく変動する。従って、EGRガスを混合するタイミング(量又は濃度)のみではノッキングや失火の発生を抑制することが難しい場合がある点で不利であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−105945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、ノッキングや失火の発生を抑制して予混合圧縮自着火による運転を可能とするエンジンの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1においては、燃料改質装置を備えるエンジンであって、前記燃料改質装置は、供給管を介して吸気管とEGR管とが接続され、排出管を介して吸気管に接続され、前記供給管を介して燃料改質装置に供給される吸気と排気との混合気に対して燃料を噴射する主燃料噴射装置が設けられ、前記燃料改質装置は、燃料が噴射された混合気を改質用ピストンの往復運動により断熱圧縮する改質用気筒から構成され、前記主燃料噴射装置は、前記改質用気筒内に配置され、吸気の吸入行程又は圧縮行程の前半に燃料を噴射するように制御されるものである。
【0008】
請求項2においては、燃料改質装置を備えるエンジンであって、前記燃料改質装置は、供給管を介して吸気管とEGR管とが接続され、排出管を介して吸気管に接続され、前記供給管を介して燃料改質装置に供給される吸気と排気との混合気に対して燃料を噴射する主燃料噴射装置が設けられ、前記燃料改質装置は、燃料が噴射された混合気を改質用ピストンの往復運動により断熱圧縮する改質用気筒から構成され、前記主燃料噴射装置は、前記供給管に配置され、前記燃料改質用気筒に吸気と排気との混合気が供給される際に燃料を噴射するように制御されるものである。
【0009】
請求項3においては、前記エンジンの出力用気筒に副燃料噴射装置が設けられ、前記副燃料噴射装置は、前記エンジンの出力用気筒の断熱圧縮行程又は膨張行程前半に燃料を噴射するように制御されるものである。
【0010】
請求項4においては、燃料改質装置を備えるエンジンであって、前記燃料改質装置は、供給管を介して吸気管とEGR管とが接続され、排出管を介して吸気管に接続され、前記供給管を介して燃料改質装置に供給される吸気と排気との混合気に対して燃料を噴射する主燃料噴射装置が設けられ、前記エンジンの出力用気筒に副燃料噴射装置が設けられ、前記副燃料噴射装置は、前記エンジンの出力用気筒の断熱圧縮行程又は膨張行程前半に燃料を噴射するように制御されるものである。
【0011】
請求項5においては、前記排出管に燃料改質装置から排出される混合気を冷却する改質燃料用インタークーラーが設けられるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
即ち、請求項1に記載の発明によれば、EGRガスの特性を利用して燃料をノッキングが発生し難い低級炭化水素燃料に改質するとともに、吸気に混合することで燃料と吸気とが均一かつ希薄に混合される。これにより、ノッキングや失火の発生を抑制して予混合圧縮自着火による運転を可能とする。
また、燃料の噴射から断熱圧縮が開始されるまでの間にEGRガスと燃料とが均一に混合するので効率よく燃料が改質される。これにより、ノッキングや失火の発生を抑制して予混合圧縮自着火による運転を可能とする。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、断熱圧縮が開始されるまでの間にEGRガスと燃料とが均一に混合するので効率よく燃料が改質される。これにより、ノッキングや失火の発生を抑制して予混合圧縮自着火による運転を可能とする。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、出力用気筒において着火性が低い状態の場合、着火が補助される。これにより、ノッキングや失火の発生を抑制して予混合圧縮自着火による運転を可能とする。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、出力用気筒において着火性が低い状態の場合、着火が補助される。これにより、ノッキングや失火の発生を抑制して予混合圧縮自着火による運転を可能とする。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、改質燃料から余分な熱量が除去される。これにより、ノッキングや失火の発生を抑制して予混合圧縮自着火による運転を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係るエンジンの第一実施形態における構成を示した概略図。
図2】本発明に係るエンジンの第一実施形態及び第二実施形態における制御構成を概略図。
図3】本発明に係るエンジンの第一実施形態における改質用気筒のクランク位置と燃料噴射時期との関係を表すグラフを示す図。
図4】本発明に係るエンジンの第一実施形態及び第二実施形態における改質用気筒の初期温度と等量比とから燃料の改質可能領域を表すグラフを示す図。
図5】本発明に係るエンジンの第一実施形態及び第二実施形態における出力用気筒の空気過剰率とNOx生成量との関係を表すグラフを示す図。
図6】本発明に係るエンジンの第二実施形態における構成を示した概略図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図1及び図2を用いて、本発明の第一実施形態に係るエンジン1について説明する。
【0020】
図1に示すように、エンジン1は、軽油若しくは重油を燃料とするディーゼルエンジンである。エンジン1は、主に出力用気筒2、過給機15、燃料改質装置である改質用気筒16、吸気用インタークーラー32、改質燃料用インタークーラー33、EGRガス用インタークーラー34及び制御装置であるECU36を具備する。
【0021】
出力用気筒2は、燃料の燃焼により動力を発生させて出力軸に伝達するものである。出力用気筒2は、出力用シリンダ3、出力用ピストン4、出力用コンロッド5、及び副燃料噴射装置6を具備する。
【0022】
出力用気筒2は、出力用シリンダ3の内部に出力用ピストン4が摺動自在に挿入される。出力用シリンダ3は、一側が図示しないシリンダヘッドによって閉塞され、他側が開放するように構成される。開放出力用ピストン4は、出力用シリンダ3の他側が出力用コンロッド5によって出力軸である出力用クランク軸7に連結される。出力用気筒2の圧縮率は、早期着火や失火の発生を考慮して13以上(例えば13〜18程度)に設定される。
【0023】
出力用シリンダ3には、出力用シリンダ温度検出センサー8が設けられる。出力用クランク軸7には、出力用クランク角検出センサー9が設けられる。出力用気筒2には、出力用シリンダ3の内壁と出力用ピストン4の端面とから燃焼室10が構成される。出力用気筒2は、燃焼室10に燃料を噴射可能な副燃料噴射装置6が設けられる。副燃料噴射装置6は、ホールタイプのノズルを有するインジェクタから構成される。出力用気筒2には、出力用吸気弁11を介して吸気管12が接続され、出力用排気弁13を介して排気管14が接続される。なお、本実施形態において、出力用気筒2は、単数であっても複数であってもよい。
【0024】
過給機15は、外気を断熱圧縮して出力用気筒2の燃焼室10に供給するものである。過給機15は、タービン15aとコンプレッサー15bとを具備する。タービン15aには、排気管14が接続され、燃焼室10からの排気が供給可能に構成される。コンプレッサー15bには、吸気管12が接続され、外気を吸引して吸気として燃焼室10に供給可能に構成される。つまり、過給機15は、排気の圧力をタービン15aによって回転動力に変換してコンプレッサー15bに伝達し、コンプレッサー15bによって外気を吸引し、断熱圧縮可能に構成される。
【0025】
燃料改質装置は、軽油等の燃料を低級炭化水素燃料(例えばメタン)に改質し、過早着火を抑制するものである。燃料改質装置は、改質用気筒16から構成される。改質用気筒16は、吸気と排気(EGRガス)との混合気に燃料を噴射したものを断熱圧縮することで燃料を改質する。改質用気筒16は、改質用シリンダ17、改質用ピストン18、改質用コンロッド19、及び主燃料噴射装置20を具備する。
【0026】
改質用気筒16は、改質用シリンダ17の内部に改質用ピストン18が摺動自在に挿入される。改質用シリンダ17は、一側が図示しないシリンダヘッドによって閉塞され、他側が開放するように構成される。改質用ピストン18は、改質用シリンダ17の一側が改質用コンロッド19によって改質用クランク軸21に連結される。改質用クランク軸21には、改質用クランク角検出センサー22が設けられる。改質用気筒16には、改質用シリンダ17の内壁と改質用ピストン18の端面とから改質室23が構成される。改質用気筒16は、改質室23に燃料を噴射可能な主燃料噴射装置20が設けられる。主燃料噴射装置20は、ピントル型ノズル、スワールインジェクタ、エアアシストインジェクタ等のノズルから構成される。
【0027】
改質用気筒16は、出力用クランク軸7と連動連結される改質用クランク軸21からの動力によって改質用ピストン18が往復運動可能に構成される。改質用気筒16の圧縮率は、熱損失を考慮して15以上(例えば15〜20程度)に設定される。なお、本実施形態において、改質用気筒16は、出力用クランク軸7からの動力が伝達される構成としたがこれに限定されるものではない。また、改質用気筒16は、出力用気筒2毎にあってもよく、複数の出力用気筒2に対して1つであってもよい。また、出力用気筒2と改質用気筒16とを兼用することも可能である。
【0028】
改質用気筒16には、改質用吸気弁24を介して供給管25が接続され、改質用排気弁26を介して排出管28が接続される。供給管25は、吸気管12に接続される。つまり、供給管25には、吸気管12から吸気の一部が供給可能に構成される。また、供給管25は、EGR管27を介して排気管14と接続される。つまり、供給管25には、出力用気筒2の燃焼室10からの排気の一部がEGR管27を通じてEGRガスとして供給可能に構成される。従って、改質用気筒16の改質室23には、供給管25から吸気とEGRガスの混合気とが供給可能に構成される。排出管28は、ミキサー28aを介して供給管25よりも下流側の吸気管12に接続される。また、改質用気筒16は、混合気が改質された低級炭化水素燃料(以下、単に「改質燃料」と記す)が改質室23から排出管28を介して吸気管12に排出可能に構成される。
【0029】
吸気管12には、供給管25の接続位置よりも下流側であって排出管28の接続位置よりも上流側に第1吸気調量弁29が設けられる。第1吸気調量弁29は、電磁式流量制御弁から構成される。第1吸気調量弁29は、後述の制御装置であるECU36からの信号を取得して第1吸気調量弁29の開度を変更することができる。なお、本実施形態において、第1吸気調量弁29を電磁式流量制御弁から構成しているが、吸気の流量を変更することができるものであればよい。
【0030】
供給管25には、EGR管27の接続位置よりも上流側に第2吸気調量弁30が設けられる。第2吸気調量弁30は、電磁式流量制御弁から構成される。第2吸気調量弁30は、後述のECU36からの信号を取得して第2吸気調量弁30の開度を変更することができる。なお、本実施形態において、第2吸気調量弁30を電磁式流量制御弁から構成しているが、吸気の流量を変更することができるものであればよい。
【0031】
EGR管27には、EGRガス調量弁31が設けられる。EGRガス調量弁31は、電磁式流量制御弁から構成される。EGRガス調量弁31は、後述のECU36からの信号を取得してEGRガス調量弁31の開度を変更することができる。なお、本実施形態において、EGRガス調量弁31を電磁式流量制御弁から構成しているが、吸気の流量を変更することができるものであればよい。
【0032】
このように構成することで、エンジン1は、第1吸気調量弁29によって吸気と改質用気筒16の改質室23から排出される改質燃料との混合比を変更可能に構成される。また、エンジン1は、第2吸気調量弁30とEGRガス調量弁31とによって改質室23に供給される吸気とEGRガスとの混合比を変更可能に構成される。
【0033】
吸気用インタークーラー32、改質燃料用インタークーラー33及びEGRガス用インタークーラー34は、気体を冷却するものである。吸気用インタークーラー32は、吸気管12に設けられる。吸気用インタークーラー32は、コンプレッサー15bで断熱圧縮された吸気を冷却可能に構成される。改質燃料用インタークーラー33は、排出管28に設けられる。改質燃料用インタークーラー33は、改質用気筒16の改質室23から排出される改質燃料を冷却可能に構成される。改質燃料用インタークーラー33は、空気又は水を冷却媒体とする放熱器又は熱交換器から構成される。
【0034】
EGRガス用インタークーラー34は、EGR管27に設けられる。EGRガス用インタークーラー34は、燃料の燃焼により加熱された排気を冷却可能に構成される。また、EGRガス用インタークーラー34は、図示しない冷却水流量調整弁及びEGRガス温度検出センサー35が具備される。
【0035】
制御装置であるECU36は、エンジン1を制御するものである。具体的には、図2に示すように、ECU36は、副燃料噴射装置6、主燃料噴射装置20、第1吸気調量弁29、第2吸気調量弁30、EGRガス調量弁31、RGRガス用インタークーラー34の冷却水流量調整弁等を制御する。ECU36には、エンジン1の制御を行うための種々のプログラムやデータが格納される。ECU36は、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。
【0036】
ECU36は、燃料の噴射制御を行うための種々のプログラムや、エンジン1の目標回転数Nt及び目標出力Wtに基づいて主燃料噴射量Qmを算出するための主燃料噴射量マップM1、目標回転数Nt及び主燃料噴射量Qmに基づいて出力用気筒2の燃焼室10に供給する出力用吸気流量A1を算出するための吸気流量マップM2、目標回転数Nt及び主燃料噴射量Qmに基づいて改質用気筒16の改質室23に供給する改質用吸気流量A2とEGRガス流量A3とを算出するための混合気流量マップM3、目標回転数Nt及び主燃料噴射量Qmに基づいて燃焼室10に噴射される着火用の副燃料噴射量Qsを算出するための副燃料噴射量マップM4、目標回転数Nt及び主燃料噴射量Qmに基づいて改質室23に供給するEGRガス温度Tegrを算出するためのEGRガス温度マップM5等を記憶する。
【0037】
ECU36は、副燃料噴射装置6に接続され、副燃料噴射装置6の燃料噴射を制御することが可能である。
【0038】
ECU36は、主燃料噴射装置20に接続され、主燃料噴射装置20の燃料噴射を制御することが可能である。
【0039】
ECU36は、第1吸気調量弁29に接続され、第1吸気調量弁29の開閉を制御することが可能である。
【0040】
ECU36は、第2吸気調量弁30に接続され、第2吸気調量弁30の開閉を制御することが可能である。
【0041】
ECU36は、EGRガス調量弁31に接続され、EGRガス調量弁31の開閉を制御することが可能である。
【0042】
ECU36は、RGRガス用インタークーラー34の図示しない冷却水流量調整弁に接続され、図示しない冷却水流量調整弁の開閉を制御することが可能である。
【0043】
ECU36は、出力用シリンダ温度検出センサー8に接続され、出力用シリンダ温度検出センサー8が検出する出力用シリンダ温度T1を取得することが可能である。
【0044】
ECU36は、出力用クランク角検出センサー9に接続され、出力用クランク角検出センサー9が検出する出力用クランク軸角度θ1を取得することが可能である。
【0045】
ECU36は、改質用クランク角検出センサー22に接続され、改質用クランク角検出センサー22が検出する改質用クランク軸角度θ2を取得することが可能である。
【0046】
以下では、図1から図5を用いて、本発明の第一実施形態に係るエンジン1の各部の動作態様について説明する。
【0047】
始めに、エンジン1における吸気及び排気の経路について説明する。図1に示すように、過給機15のコンプレッサー15bによって吸引された外気は、吸気として断熱圧縮された状態で吸気管12に排出される。吸気は、吸気用インタークーラー32で冷却された後、吸気管12を介して出力用気筒2の燃焼室10に供給される。吸気の一部は、吸気管12に接続される供給管25を介して改質用気筒16の改質室23に供給される。
【0048】
出力用気筒2の燃焼室10からの排気は、排気管14を介して過給機15のタービン15aを回転させた後、外部に排出される。排気の一部は、EGR管27及びEGR管27が接続されている供給管25を介してEGRガスとして改質用気筒16の改質室23に供給される。改質室23から排出された改質燃料は、排出管28を介して吸気管12に還流して燃焼室10に供給される。
【0049】
次に、図2を用いて、ECU36における各種所定量の算出について説明する。ECU36は、図示しない操作具の操作量等から定まるエンジン1の目標回転数Nt及び目標出力Wtに基づいて燃料噴射量マップM1から主燃料噴射量Qmを算出する。
【0050】
ECU36は、目標回転数Nt及び主燃料噴射量Qmに基づいて吸気流量マップM2から出力用気筒2の燃焼室10に供給する出力用吸気流量A1を算出する。
【0051】
ECU36は、目標回転数Nt及び主燃料噴射量Qmに基づいて混合気流量マップM3から改質用気筒16の改質室23に供給する改質用吸気流量A2とEGRガス流量A3とを算出する。
【0052】
ECU36は、目標回転数Nt及び主燃料噴射量Qmに基づいて着火用燃料噴射量マップM4から出力用気筒2の燃焼室10に噴射される着火用燃料の副燃料噴射量Qsを算出する。
【0053】
ECU36は、目標回転数Nt及び主燃料噴射量Qmに基づいてEGRガス温度マップM5から改質用気筒16の改質室23に供給するEGRガス温度Tegrを算出する。
【0054】
ECU36は、出力用クランク角検出センサー9が検出する出力用クランク軸角度θ1、改質用クランク角検出センサー22が検出する改質用クランク軸角度θ2を取得し、出力用気筒2及び改質用気筒16の行程を算出する。
【0055】
次に、改質用気筒16の動作態様について説明する。ECU36は、算出した改質用吸気流量A2だけ吸気が改質用気筒16の改質室23に供給されるように第2吸気調量弁30の開閉を制御する。さらに、ECU36は、算出したEGRガス流量A3だけEGRガスが改質室23に供給されるようにEGRガス調量弁31の開閉を制御する。これにより、改質室23に供給される吸気とEGRガスとの混合気は、燃料を改質するために適した酸素濃度に設定される。
【0056】
また、ECU36は、EGRガスの温度が算出したEGRガス温度TegrになるようにEGRガス用インタークーラー34の図示しない冷却水流量調整弁の開閉を制御する。これにより、改質用気筒16の改質室23に供給される吸気とEGRガスとの混合気は、燃料を改質するために適した温度、かつ改質用気筒16が熱によって損傷を受けない温度に設定される。加えて、EGRガスの熱を燃料の改質に利用することでエンジン1の熱効率が改善される。
【0057】
ECU36は、算出した主燃料噴射量Qmだけ燃料が改質用気筒16の改質室23に噴射されるように主燃料噴射装置20を制御する。これにより、改質室23には、燃料を低級炭化水素燃料に改質させるために必要な当量比となるように燃料が噴射される。具体的には、ECU36は、改質用吸気流量A2とEGRガス流量A3とに対する主燃料噴射量Qmの等量比が所定値以上になるように主燃料噴射装置20を制御する。
【0058】
また、図3に示すように、ECU36は、取得した改質用クランク軸角度θ2に基づいて、改質用気筒16の行程が吸気の吸入行程又は圧縮行程の前半に燃料を噴射するように制御する。これにより、改質用気筒16の改質室23に噴射された燃料は、改質用ピストン18による断熱圧縮が開始されるまでの間に混合気中に均一に分散される。
【0059】
上述のように所定温度、所定酸素濃度の混合気中に均一に分散された所定量の燃料は、改質用気筒16の圧縮行程で吸熱分解されてガス化した低級炭化水素燃料に改質される。燃料の改質が可能な条件は、改質用吸気流量A2、EGRガス流量A3及び主燃料噴射量Qmから決定される等量比と、改質用吸気流量A2、EGRガス流量A3及びEGRガス温度Tegrから決定される初期温度とから定まる。すなわち、燃料の改質可能領域は、図4に示すように、等量比と初期温度とから定まる。また、改質燃料の組成も、等量比と初期温度とから定まる。本実施形態において、吸気に対する燃料の等量比は、改質時に二酸化炭素の発生を抑制するために1.5以上(例えば1.5から10程度)に設定される。
【0060】
改質燃料は、吸気及びEGRガスの熱量のうち改質時の吸熱分解反応に用いられなかった残留熱量によって高温の燃料ガスとして排出管28に供給される。排出管28に供給された高温の改質燃料は、排出管28の改質燃料用インタークーラー33によって冷却される。これにより、出力用気筒2における早期の自己着火が抑制される。改質燃料用インタークーラー33によって冷却された改質燃料は、ミキサー28aを介して吸気管12に供給される。
【0061】
次に、出力用気筒2の動作態様について説明する。ECU36は、算出した出力用吸気流量A1だけ吸気が出力用気筒2の燃焼室10に供給されるように第1吸気調量弁29の開閉を制御する。つまり、ECU36は、図5に示すように、主燃料噴射量Qmと第1吸気調量弁29の開度とから算出される出力用気筒2における空気過剰率λが、目標値λtになるように第1吸気調量弁29の開閉を制御する。具体的には、ECU36は、出力用気筒2における空気過剰率λの目標値λtを1.2以上として第1吸気調量弁29の開閉を制御する。これにより、出力用気筒2は、NOxの生成量を抑制するように制御される。
【0062】
ECU36は、取得した出力用シリンダ温度T1が所定温度以下の場合、又は主燃料噴射量Qmと第1吸気調量弁29の開度とから算出される出力用気筒2の空気過剰率λが上限値λs以上の場合に、所定量の燃料を着火支援のため出力用気筒2の燃焼室10に噴射する。これにより、出力用シリンダ3における改質燃料の着火性が低く、所望のタイミングでの予混合圧縮自着火が難しい条件においても任意に着火時期を制御することができる。
【0063】
以上の如く、本発明の第一実施形態に係るエンジン1は、燃料改質装置である改質用気筒16を備えるエンジン1であって、改質用気筒16は、供給管25を介して吸気管12とEGR管27とが接続され、排出管28を介して吸気管12に接続され、供給管25を介して改質用気筒16の改質室23に供給される吸気と排気との混合気に対して燃料を噴射する主燃料噴射装置20が設けられるものである。このように構成することにより、EGRガスの特性を利用して燃料をノッキングが発生し難い低級炭化水素燃料に改質するとともに、吸気に混合することで燃料と吸気とが均一かつ希薄に混合される。これにより、ノッキングや失火の発生を抑制して予混合圧縮自着火による運転を可能とする。
【0064】
また、排出管28に改質用気筒16の改質室23から排出される混合気を冷却するための改質燃料用インタークーラー33が設けられるものである。このように構成することにより、改質燃料から余分な熱量が除去される。これにより、ノッキングや失火の発生を抑制して予混合圧縮自着火による運転を可能とする。
【0065】
また、燃料改質装置は、燃料が噴射された混合気を改質用ピストン18の往復運動により断熱圧縮する改質用気筒16から構成され、主燃料噴射装置20が改質用気筒16の改質室23内に配置され、吸気の吸入行程又は圧縮行程の前半に燃料を噴射するように制御する制御装置であるECU36を更に備えるものである。このように構成することにより、燃料の噴射から断熱圧縮が開始されるまでの間にEGRガスと燃料とが均一に混合するので効率よく燃料が改質される。これにより、ノッキングや失火の発生を抑制して予混合圧縮自着火による運転を可能とする。
【0066】
また、エンジンの出力用気筒2に副燃料噴射装置6が設けられ、ECU36によって出力用気筒2の断熱圧縮行程又は膨張行程前半に燃料を噴射するように制御されるものである。このように構成することにより、出力用気筒2において着火性が低い状態の場合、着火が補助される。これにより、ノッキングや失火の発生を抑制して予混合圧縮自着火による運転を可能とする。
【0067】
次に、図6を用いて、本発明に係るエンジン1の第二実施形態であるエンジン1について説明する。なお、以下の実施形態において、既に説明した実施形態と同様の点に関してはその具体的説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
【0068】
改質用気筒16には、改質用吸気弁24を介して供給管40が接続され、改質用排気弁26を介して排出管28が接続される。供給管40は、吸気管12に接続される。また、供給管40は、EGR管27を介して排気管14と接続される。つまり、供給管40には、出力用気筒2の燃焼室10からの排気の一部がEGR管27を通じてEGRガスとして供給可能に構成される。さらに、供給管40には、燃料を噴射可能な主燃料噴射装置20が設けられる。排気管14は、ミキサー28aを介して供給管40よりも下流側の吸気管12に接続される。従って、改質用気筒16の改質室23には、供給管40において吸気とEGRガスとの混合気に燃料が噴射されたものが供給可能に構成される。また、改質用気筒16は、改質燃料が改質室23から排出管28を介して吸気管12に排出可能に構成される。
【0069】
次に、改質用気筒16の動作態様について説明する。ECU36は、算出した主燃料噴射量Qmだけ燃料が供給管40に噴射されるように主燃料噴射装置20を制御する。これにより、供給管40には、改質用気筒16において燃料を改質させるために必要な当量比となるように燃料が噴射される。これにより、供給管40に噴射された燃料は、改質用気筒16の改質室23内に到達して改質用ピストン18による断熱圧縮が開始されるまでの間に混合気中に均一に分散される。
【0070】
以上の如く、本発明の第二実施形態に係るエンジン1は、燃料改質装置は、燃料が噴射された混合気を改質用ピストン18の往復運動により断熱圧縮する改質用気筒16から構成され、主燃料噴射装置20が供給管40に配置され、燃料改質用気筒16の改質室23に混合気が供給される際に燃料を噴射するように制御する制御装置を更に備えるものである。このように構成することにより、断熱圧縮が開始されるまでの間にEGRガスと燃料とが均一に混合するので効率よく燃料が改質される。これにより、ノッキングや失火の発生を抑制して予混合圧縮自着火による運転を可能とする。
【符号の説明】
【0071】
1 エンジン
12 吸気管
16 改質用気筒
20 主燃料噴射装置
25 供給管
27 EGR管
図1
図2
図3
図4
図5
図6