特許第5972182号(P5972182)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972182
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/40 20060101AFI20160804BHJP
   G03G 15/01 20060101ALI20160804BHJP
   G03G 15/36 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   H04N1/40 Z
   G03G15/01 J
   G03G15/36
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-6552(P2013-6552)
(22)【出願日】2013年1月17日
(65)【公開番号】特開2014-138313(P2014-138313A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2015年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】591044164
【氏名又は名称】株式会社沖データ
(74)【代理人】
【識別番号】100069615
【弁理士】
【氏名又は名称】金倉 喬二
(72)【発明者】
【氏名】本田 憲之
【審査官】 石田 信行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−110609(JP,A)
【文献】 特開2012−226549(JP,A)
【文献】 特開2001−232782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/40
G03G 15/01
G03G 15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数オブジェクトからなる印刷データの各オブジェクトの種別と範囲とを判別する印刷データ解析部と、
印刷媒体に地紋を形成する地紋形成部と、
前記印刷媒体にカラー着色剤の画像を形成する画像形成部と、
前記地紋形成部と前記画像形成部とを通過した前記印刷媒体にクリアコート剤を付着させるクリアコート剤付着部と、
前記オブジェクトの種別の判断により、前記クリアコート剤付着部が前記印刷媒体に形成された地紋に重畳する前記クリアコート剤の層厚を決定するクリアコート剤層厚決定部とを備え、
前記クリアコート剤層厚決定部は、前記地紋領域上の中央部の前記クリアコート剤の層厚よりも端部の前記クリアコート剤の層厚を薄く決定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記クリアコート剤層厚決定部は、前記地紋の中心部から外側に向かいクリアコート剤の層厚を薄化するように決定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像形成装置において、
前記クリアコート剤層厚決定部は、前記地紋の中心部から外側に向かい徐々にクリアコート剤の層厚を薄化するように決定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項2に記載の画像形成装置において、
前記クリアコート剤層厚決定部は、前記地紋の端部の近傍において前記クリアコート剤の表面形状が曲面を形成するようにクリアコート剤の層厚を薄化するように決定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項2に記載の画像形成装置において、
前記クリアコート剤層厚決定部は、前記地紋の中心部から外側に向かい階段状にクリアコート剤の層厚を薄化するように決定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記クリアコート剤層厚決定部は、前記地紋の配列方向と直交する方向における中心線から端部に向かいクリアコート剤の層厚を薄化するように決定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
複数オブジェクトからなる印刷データの各オブジェクトの種別と範囲とを判別する印刷データ解析部と、
印刷媒体に地紋を形成する地紋形成部と、
前記印刷媒体にカラー着色剤の画像を形成する画像形成部と、
前記地紋形成部と前記画像形成部とを通過した前記印刷媒体にクリアコート剤を付着させるクリアコート剤付着部と、
前記オブジェクトの種別の判断により、前記クリアコート剤付着部が前記印刷媒体に形成された地紋に重畳する前記クリアコート剤の層厚を決定するクリアコート剤層厚決定部とを備え、
前記クリアコート剤層厚決定部は、前記地紋の中央部の前記クリアコート剤の層厚よりも端部の前記クリアコート剤の層厚を薄く、かつ、前記地紋の中心部から外側に向かいクリアコート剤の層厚を薄化するように決定し、さらに前記地紋の端部の近傍において前記クリアコート剤の表面形状が曲面を形成するようにクリアコート剤の層厚を薄化するように決定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
複数オブジェクトからなる印刷データの各オブジェクトの種別と範囲とを判別する印刷データ解析部と、
印刷媒体に地紋を形成する地紋形成部と、
前記印刷媒体にカラー着色剤の画像を形成する画像形成部と、
前記地紋形成部と前記画像形成部とを通過した前記印刷媒体にクリアコート剤を付着させるクリアコート剤付着部と、
前記オブジェクトの種別の判断により、前記クリアコート剤付着部が前記印刷媒体に形成された地紋に重畳する前記クリアコート剤の層厚を決定するクリアコート剤層厚決定部とを備え、
前記クリアコート剤層厚決定部は、前記地紋の中央部の前記クリアコート剤の層厚よりも端部の前記クリアコート剤の層厚を薄く、かつ、前記地紋の配列方向と直交する方向における中心線から端部に向かいクリアコート剤の層厚を薄化するように決定することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドットコードやバーコード等の地紋の上層にクリアコート層を設ける画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像形成装置は、可視画像を印刷媒体に形成させた後、製本装置による製本を行うとき印刷媒体を折り曲げると、可視画像が折曲部で剥がれ落ちてしまうため、その折曲部の折り曲げ線を中心として左右に所定の幅を確保してクリアコート(透明画像)剤を被覆することにより、可視画像の剥がれ落ちを防止するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
また、可視画像の破損は、折曲部以外にも可視画像に接触することによっても発生する可能性があり、特にドットコードやバーコード等の地紋パターン等の読取り装置によって直接触れる部分は、可視画像が破損する可能性が高いため、クリアコート剤を上層部に被せ、その破損を防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−322819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術においては、地紋パターンが形成されている領域に対してすべて同じ層厚のクリアコート剤で塗り潰すようにしているため、地紋パターンが破損する可能性が低い部分でも他の部分と同量のクリアコート剤を消費してしまい、クリアコート剤を無駄に消費してしまうという問題がある。
本発明は、このような問題を解決することを課題とし、クリアコート剤の消費量を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのため、本発明は、複数オブジェクトからなる印刷データの各オブジェクトの種別と範囲とを判別する印刷データ解析部と、印刷媒体に地紋を形成する地紋形成部と、前記印刷媒体にカラー着色剤の画像を形成する画像形成部と、前記地紋形成部と前記画像形成部とを通過した前記印刷媒体にクリアコート剤を付着させるクリアコート剤付着部と、前記オブジェクトの種別の判断により、前記クリアコート剤付着部が前記印刷媒体に形成された地紋に重畳する前記クリアコート剤の層厚を決定するクリアコート剤層厚決定部とを備え、前記クリアコート剤層厚決定部は、前記地紋領域上の中央部の前記クリアコート剤の層厚よりも端部の前記クリアコート剤の層厚を薄く決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
このようにした本発明は、地紋データが読み取られ難い部位はクリアコート剤を薄く被せるので、クリアコート剤の消費量を抑制することができ、効率的に地紋を保護することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施例における印刷装置の構成を示すブロック図
図2】第1の実施例における印刷装置の構成を示す概略側面図
図3】第1の実施例における画像データ生成処理の流れを示すフローチャート
図4】第1の実施例における地紋画像データの作成方法の説明図
図5】第1の実施例におけるクリアコート範囲中心座標算出処理の説明図
図6】第1の実施例におけるグラデーション処理の説明図
図7】第2の実施例における印刷装置の構成を示すブロック図
図8】第2の実施例における画像データ生成処理の流れを示すフローチャート
図9】第2の実施例における地紋コードの説明図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明による画像形成装置の実施例を説明する。
【実施例1】
【0009】
図1は第1の実施例における印刷装置の構成を示すブロック図である。
図1において、画像形成システムは、ホスト装置1000と、印刷装置1100とから構成されている。
ホスト装置1000は、信号ケーブル等の電気的接続手段1010により印刷装置1100と接続され、ユーザの操作により印刷実行指示を受けると、印刷装置1100に対して指定された印刷データを送信するパーソナルコンピュータ(PC)等である。なお、電気的接続手段1010は無線LAN(Local Area Network)等の無線通信手段であってもよい。
【0010】
ホスト装置1000は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の制御手段、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶手段、キーボードやマウス等の入力手段、ディスプレイ等の表示手段等のハードウェアと、ユーザにより入力手段を介して入力された情報に基づきカラー画像イメージデータおよび地紋イメージデータから構成される出力データを作成するアプリケーション(ソフトウェア)1004と、ドライバ(ソフトウェア)1001とを備えている。
【0011】
ドライバ1001は、アプリケーション1004で作成された出力データから印刷データ1005を生成するPDL(Page Description Language)データ生成部1002および当該印刷データ1005を印刷装置1100に対して送信するデータ送信部1003を備えている。
印刷装置1100は、例えば電子写真方式のプリンタであり、通信部1101と、制御部1111と、画像データ生成部1102と、印刷部1112とを備え、ドットコードやバーコード等の地紋パターン(地紋の画像)をクリアコート剤で上塗りし、地紋パターンを保護するとき、読取装置が触れやすく地紋パターンが破損し易い部分以外、および地紋パターンにおいて頻繁に読取られる部分以外の部位はクリアコート剤を薄く被せてクリアコート剤の消費量を抑えるようにするものである。
【0012】
ここで、読取装置が触れやすく地紋パターンが破損し易い部分とは、地紋パターンエリアの中心部分である。これは、例えば人間の心理から地紋パターンを読取装置で読取る場合、地紋パターンエリアの端部より中心部を読取ろうとするため、中心部近傍が頻繁に読取装置と接触し、中心部より端部に近づくに連れ、読取装置が接触することは少なくなるからである。
【0013】
また、本実施例において、地紋画像データで表現される地紋パターン画像は、図6に示すように、極小さなサイズのドットで形成されるパターン画像であり、このようなパターン画像においては、所定の位置に配置されたドットの組み合わせにより、例えば各種情報等を付与させることができ、一般的にGridMark(登録商標)技術やANOTO(登録商標)技術等が用いられる。
通信部1101は、通信ケーブル等の電気的接続手段1010により、印刷装置1100とホスト装置1000とを接続し、データの送受信を行う。
【0014】
制御部1111は、CPU等により構成され、記憶部に記憶された制御プログラム(ソフトウェア)に基づいて、通信部1101、画像データ生成部1102、および印刷部1112を含め印刷装置1100全体の動作を制御する。この制御部1111は、通信部1101がホスト装置1000から受信した印刷データ1005を印刷データ解析部1103へ転送させる。また、制御部1111は、印刷データ記憶部1110に格納された各画像データに応じて現像器制御部1113に対して画像形成の指示を与える。
【0015】
画像データ生成部1102は、ホスト装置1000から受信した印刷データ1005からK、Y、M、C、CT印刷データを生成し、印刷部1112で画像を形成させる画像データに変換する。
印刷部1112は、画像データ生成部1102が生成したK、Y、M、C、CT印刷データを構成する各色の画像データを基に画像を印刷媒体(以下、「媒体」という。)に印刷する。
ここで、K、Y、M、C、CT印刷データとは、地紋(K)画像データ、Y画像データ、M画像データ、C画像データ、クリアコート(CT)画像データの各画像データにより構成されており、KはBlack、YはYelow、MはMagenta、CはCyan、CTはClearの各色を示している。
【0016】
画像データ生成部1102は、印刷データ解析部1103と、地紋データ生成部1107と、クリアコート生成部1108と、YMC画像データ生成部1109と、印刷データ記憶部1110とを備えている。
印刷データ解析部1103は、複数オブジェクトからなる印刷データ1005の各オブジェクトの種別と範囲とを判別するものであり、地紋データ判別部1105と、オブジェクト判別部1106とを備え、通信部1101を介して受信した受信データである印刷データ1005を解析するとともに、地紋データ生成部1107、クリアコート生成部1108、およびYMC画像データ生成部1109の変換部へ画像データを転送する。
【0017】
地紋データ判別部1105は、通信部1101を介して受信した受信データの地紋のみのデータを選択して解析した後、解析したデータを地紋データ生成部1107およびクリアコート生成部1108に転送する。
オブジェクト判別部1106は、通信部1101を介して受信した受信データの地紋以外のオブジェクトデータを選択して解析した後、解析したデータをYMC画像データ生成部1109に転送する。
地紋データ生成部1107は、地紋データ判別部1105で判別されたデータを基に編集展開処理を行い、地紋画像データ(以下、「地紋データ」ともいう。)のイメージデータおよび印刷情報を生成する。
【0018】
クリアコート生成部1108は、クリアコート剤印刷範囲中心判断部としての中心判断部1119と、クリアコート剤層厚決定部としての層厚決定部1120とから構成されている。このクリアコート生成部1108は、印刷データ解析部1103の地紋データ判別部1105で判別されたデータ(オブジェクトの種別)を基にクリアコート剤を印刷する範囲を決定し、その後、中心判断部1119によりクリアコート剤を印刷する範囲の中心部を判断し、層厚決定部1120において、その中心部から外側(端部)に向けて徐々にクリアコート剤の層厚が薄くなっていくグラデーション処理を行い、媒体207に形成された地紋データに重畳するクリアコート剤の層厚を決定し、地紋データに覆い被せる保護データ部分のイメージデータおよび印刷情報を生成する。すなわち、層厚決定部1120は、地紋データの中央部のクリアコート剤の層厚よりも端部のクリアコート剤の層厚を薄く決定する。
【0019】
YMC画像データ生成部1109は、オブジェクト判別部1106で判別されたデータを基に編集展開処理を行い、テキスト部やグラフィック部、またはイメージ部のイメージデータと印刷情報を生成する。
印刷データ記憶部1110は、地紋データ生成部1107、クリアコート生成部1108、およびYMC画像データ生成部1109の各生成部において生成されたイメージデータと印刷情報を画像データとして記憶する。
次に、印刷部1112について、図2の第1の実施例における印刷装置の構成を示す概略側面図を参照しながら説明する。
【0020】
印刷部1112は、現像器制御部1113と、K色に対応したK現像部1114およびK_LED(Light Emitting Diode)ヘッド1130と、Y色に対応したY現像部1115およびY_LEDヘッド1131と、M色に対応したM現像部1116およびM_LEDヘッド1132と、C色に対応したC現像部1117およびC_LEDヘッド1133と、CT色に対応したCT現像部1118およびCT_LEDヘッド1134とを備え、図2中矢印Aが示す印刷媒体207の搬送方向における上流側から下流側に向けて順に、K現像部1114およびK_LEDヘッド1130、Y現像部1115およびY_LEDヘッド1131、M現像部1116およびM_LEDヘッド1132、C現像部1117およびC_LEDヘッド1133、CT現像部1118およびCT_LEDヘッド1134が配設されている。
【0021】
地紋形成部としてのK現像部1114(K_LEDヘッド1130)は印刷媒体に地紋を形成し、画像形成部としてのY現像部1115(Y_LEDヘッド1131)、M現像部1116(M_LEDヘッド1132)およびC現像部1117(C_LEDヘッド1133)は印刷媒体にカラー着色剤の画像を形成し、クリアコート剤付着部としてのCT現像部1118(CT_LEDヘッド1134)はK現像部1114、Y現像部1115、M現像部1116およびC現像部1117を通過した印刷媒体にクリアコート剤を付着させる。
【0022】
現像器制御部1113は、制御部1111の制御に基づき、K現像部1114、Y現像部1115、M現像部1116、C現像部1117、およびCT現像部1118を統括的に制御する。
K現像部1114、Y現像部1115、M現像部1116、C現像部1117、およびCT現像部1118は、印刷部1112の各色に備えられた現像部である。なお、各現像部は、形成する画像色の違い以外は構成が同じであるため、K現像部1114を代表としてその構成を説明する。
【0023】
図2に示すように、K現像部1114は、感光体ドラム211を帯電させるための帯電ローラ212と、帯電ローラ212により帯電させられ、露光手段により静電潜像が形成される感光体ドラム211と、感光体ドラム211に対向して設けられ、印刷画像に応じた光を明滅することで感光体ドラム211表面を露光させる露光手段としてのK_LEDヘッド1130と、本実施例では黒色の現像剤としてのトナーを用いたK現像剤213と、現像剤収容器214に収容されたK現像剤213を搬送する現像剤供給ローラ208と、感光体ドラム211に対向して設けられ、現像剤供給ローラ208から供給されるK現像剤213を感光体ドラム211へ供給することで静電潜像を現像剤像として現像する現像ローラ209とを備えている。
【0024】
なお、Y現像部1115の現像剤収容器217はY現像剤216、M現像部1116の現像剤収容器220はM現像剤219、C現像部1117の現像剤収容器223はC現像剤222、CT現像部1118の現像剤収容器226はCT現像剤225を収容するものとする。
本実施例において、第1の現像剤としてのK現像剤213には、黒色の顔料であり、近赤外光を吸収する性質を有するカーボンブラックを用いるものとする。また、媒体207上の第1の現像剤の現像剤層の上に層形成される第2の現像剤としてのカラー現像剤であるY現像剤216、M現像剤219、C現像剤222、さらに、クリアコート現像剤であるCT現像剤225には、近赤外光を透過する性質を有する顔料を用いるものとする。
【0025】
印刷部1112は、媒体207の搬送経路を構成する部材として、媒体供給部から媒体207を給紙する給紙ローラ対206と、給紙ローラ対206から給紙された媒体207を搬送し、各現像部の感光体ドラムに対向して設けられた転写ローラ205により各色の現像部で形成された現像剤像を媒体207に転写させる転写ベルト204と、媒体207に転写された現像剤像を加熱および加圧することにより媒体207に定着させる定着器202と、定着器202により現像剤像が定着された媒体207を印刷装置1100の外部へ排出する排出ローラ対203とを備えている。
媒体供給部から給紙ローラ対206を介して給紙された媒体207は、転写ベルト204により搬送される過程において、上述した各現像部で形成された現像剤像が順次転写される。
【0026】
なお、本実施例では、図2中矢印Aが示す媒体207の搬送方向における上流側から下流側にかけて、第1の現像部としてのK現像部1114で形成された第1の現像剤像、第2の現像部としてのY現像部1115、M現像部1116、およびC現像部1117で形成されたそれぞれの第2の現像剤像、並びにCT現像部1118で形成されたCT現像剤像が媒体207に順次転写される。
各現像部において形成された現像剤像が媒体207に転写された後、定着器202は媒体207に熱および圧力を付与することにより現像剤像を定着させる。現像剤像が定着された媒体207は排紙ローラ対203により印刷装置1100の外部に排出される。
【0027】
上述した構成の作用について説明する。
まず、画像形成システムの作用について図1を用いて説明する。
ユーザの操作による印刷開始指示により、ホスト装置1000内のアプリケーション1004は、作成されたカラー画像イメージデータおよび地紋画像イメージデータに基づいてスプールファイルを生成するとともに、生成されたスプールファイルをドライバ1001へ出力する。
ここで、スプールファイルとは、アプリケーション1004がドライバ1001に対して渡す印刷データの中間データのことである。
【0028】
アプリケーション1004から出力されたスプールファイルが入力されると、ドライバ1001のPDLデータ生成部1002は、印刷装置1100に対して描画を指示するためのプログラム言語で記述されたPDLデータを生成する。また、PDLデータ生成部1002は、地紋画像データおよびカラー印刷データを含む印刷ジョブデータを生成する。ここで、印刷ジョブデータには、カラー印刷データと地紋画像データとを識別するための識別子が付与される。
【0029】
ここで、地紋画像データ(地紋データ)の追加作成方法としてGridMarkの方法を例として図4の第1の実施例における地紋画像データの作成方法の説明図に基づいて説明する。
入力データ601は、アプリケーション1004に読み込まれるデータであって、地紋画像データを載せる前のデータであり、GridMarkの場合、PDF(Portable Document Format)データであることが一般的である。
【0030】
アプリケーション1004では、入力データ601を読み込んだ後、ユーザの操作により、読み込んだ入力データ601(PDFデータ)の中に地紋画像データ603を追加し、出力データ602を作成する。また、アプリケーション1004は、入力データ601を読み込まず、新規に白紙のデータをアプリケーション1004内で展開し、そのデータの中に地紋画像データ603を追加し、出力データ602を作成することも可能である。
【0031】
アプリケーション1004は、すべての地紋画像データを入力データ601に追加して出力データ602の作成が完了すると、作成した出力データをドライバ1001に送信する。
出力データ602は、先頭部(図中斜線部)および後部により構成され、先頭部(図中斜線部)は、入力データ601と同じ形式の同フォーマットデータであり、後部は地紋画像データ603が新たに追加されたものとなっている。
データ送信部1003は、出力データ602に基づいてPDLデータ生成部が生成した印刷データ1005を印刷装置1100の通信部1101に対して送信する。
【0032】
次に、印刷装置1100の画像データ生成部1102が行う画像データ生成処理を図3の第1の実施例における画像データ生成処理の流れを示すフローチャートの図中Sで表すステップに従って図1を参照しながら説明する。
S101:印刷装置1100の制御部1111は、通信部1101を介してホスト装置1000のデータ送信部1003から送信された印刷データ1005を受信すると、その印刷データ1005を画像データ生成部1102の印刷データ解析部1103へ転送させる。
【0033】
S102:印刷データ解析部1103は、受信した印刷データ1005を解析し、地紋データ判別部1105により地紋データ(地紋オブジェクト)か否か、またオブジェクト判別部1106によりテキストデータ(テキストオブジェクト)、グラフィックデータ(グラフィックオブジェクト)、またはイメージデータ(イメージオブジェクト)か否かを判別して各オブジェクトに分離する。
印刷データ解析部1103は、分離したオブジェクトが、地紋オブジェクトであると判別すると処理をS103へ移行し、テキストオブジェクトであると判別すると処理をS107へ移行し、グラフィックオブジェクトであると判別すると処理をS108へ移行し、イメージオブジェクトであると判別すると処理をS109へ移行する。
【0034】
S103:地紋データ生成部1107は、分離されたオブジェクトに基づいて地紋データのラスタデータや印刷情報等を作成して印刷データ記憶部1110のディスプレイリストに格納する。
ここで、ディスプレイリスト(Display List)とは、受信データの解析結果を格納する記憶部の中間バッファのことであり、画像の形状、画像の位置、印刷色、および文字、図形、イメージ等の描画データや描画パターン、展開規則等の情報を書き込む情報管理テーブルである。
【0035】
S104:クリアコート生成部1108は、クリアコート剤を印刷するクリアコートの範囲を確定するクリアコートデータ作成処理を行う。
S103で作成された地紋データの描画範囲全体を基本範囲とし、その基本範囲より外側に所定量はみ出した範囲をクリアコート剤の印刷範囲とするのが一般的であったが、本実施例では、クリアコート生成部1108は、基本範囲に対してはみ出す量は任意に決定することができ、基本範囲にはみ出し量を付加した範囲を、新たなひとつのクリアコート剤描画オブジェクトとしたクリアコートデータを作成する。
【0036】
S105:中心判断部1119は、クリアコートの範囲の中心部を判断し、決定するクリアコート範囲中心座標算出処理を行う。
ここで、中心判断部1119が行うクリアコート範囲中心座標算出処理を図5の第1の実施例におけるクリアコート範囲中心座標算出処理の説明図に基づいて説明する。
まず、中心判断部1119は、X軸方向に対し、クリアコート範囲500の左端X1座標502と右端X2座標503を求め、
X中心座標=(左端X1座標+右端X2座標)/2
により、X中心座標501を求める。
【0037】
次に、中心判断部1119は、Y軸方向に対し、クリアコート範囲500の下端Y1座標505と上端Y2座標506を求め、
Y中心座標=(下端Y1座標+上端Y2座標)/2
により、Y中心座標504を求める。
このようにして中心判断部1119は、クリアコート範囲の中心座標(X中心座標501、Y中心座標504)を算出する。
【0038】
S106:層厚決定部1120は、クリアコートデータのグラデーション処理を行う。
層厚決定部1120は、S104において作成されたクリアコートデータの描画範囲に対し、S105で求めた地紋エリアのクリアコート範囲の図5に示す中心座標(X中心座標501、Y中心座標504)から左端X1座標502、右端X2座標503、下端Y1座標505、上端Y2座標506までグラデーション処理を行い、クリアコート剤のラスタデータや印刷情報等を作成して印刷データ記憶部1110のディスプレイリストに格納し、処理をS110へ移行する。
【0039】
ここで、グラデーション処理を図6の第1の実施例におけるグラデーション処理の説明図に基づいて説明する。なお、グラデーション処理の方法には、地紋データの種類や用途により、多種多様な方法が存在するが、本実施例では、図6を用いて3種類の方法を説明する。
図6は、小さな地紋コードを読み取るGridMark等の技術による、地紋データとしての地紋コードの配置図であり、媒体207の上面に、ドット状の地紋コード402が配置され、その地紋コード402を覆い被せるようにクリアコート剤403が印刷される。なお、図6(a)は上面図であり、図6(b)は図6(a)におけるYY断面図、図6(c)は図6(a)におけるXX断面図、図6(d)および図6(e)も図6(a)におけるXX断面図である。
【0040】
図6(a)(b)(c)は、中心部としての中心座標401aからクリアコート範囲の外側(端部403a)に向けて傾斜面403bを形成するようにクリアコート剤の層厚を(図6(b)(c)に示すように断面が直線状)に徐々に薄くしていく方法を示している。
また、図6(d)は、クリアコート範囲の外側の端部の近傍において、中心部としての中心座標401aからクリアコート範囲の外側(端部403a)に向けて曲面(凸面)403cを形成するようにクリアコート剤の層厚を徐々に薄くしていく方法を示している。
【0041】
さらに、図6(e)は、中心座標401aからクリアコート範囲の外側(端部403a)に向けてクリアコート剤の層厚を段階的(断面が階段状403d)に徐々に薄くしていく方法を示している。
なお、図6(a)、(b)、(c)および図6(d)に示す方法は、クリアコート剤の層厚を曲線状に徐々に薄くするようにしているため、クリアコート剤の段差がなく、見た目に綺麗である。一方、図6(e)に示す方法は、クリアコート剤の層厚を段階的(階段状)に徐々に薄くするようにしているため、グラデーション処理が簡素化され、処理時間が短いという利点がある。
【0042】
S107:YMC画像データ生成部1109は、分離されたオブジェクトに基づいてテキストのラスタデータや印刷情報等を作成して印刷データ記憶部1110のディスプレイリストに格納し、処理をS110へ移行する。
S108:YMC画像データ生成部1109は、分離されたオブジェクトに基づいてグラフィックのラスタデータや印刷情報等を作成して印刷データ記憶部1110のディスプレイリストに格納し、処理をS110へ移行する。
【0043】
S109:YMC画像データ生成部1109は、分離されたオブジェクトに基づいてイメージのラスタデータや印刷情報等を作成して印刷データ記憶部1110のディスプレイリストに格納し、処理をS110へ移行する。
S110:制御部1111は、通信部1101を介してホスト装置1000から受信した印刷データ1005のオブジェクトのすべての解析が終了したか否かを判定し、解析が終了していないと判定すると処理をS102へ移行して再び印刷データ1005の解析を行い、すべての解析が終了したと判定すると本処理を終了する。
【0044】
印刷装置1100の画像データ生成部1102により画像データが生成されると、制御部1111は、印刷データ記憶部1110内のディスプレイリストに格納された各画像データに応じて印刷部1112の現像器制御部1113に対して画像形成を指示する。指示を受けた現像器制御部1113は、地紋データ画像をK現像部1114、YMC画像データのY画像をY現像部1115、YMC画像データのM画像をM現像部1116、YMC画像データのC画像をC現像部1117、クリアコート画像データのクリアコート画像をCT現像部1118で画像形成するように、K現像部1114、Y現像部1115、M現像部1116、C現像部1117、およびCT現像部1118の各現像部と、K_LEDヘッド1130、Y_LEDヘッド1131、M_LEDヘッド1132、C_LEDヘッド1133、CT_LEDヘッド1134の各LEDヘッドを制御する。
【0045】
以降の印刷装置1100の画像形成動作について図1および図2を参照しながら説明する。
現像器制御部1113は、制御部1111から印刷開始指示を受けると、図示しない高圧電源を制御してK現像部1114内の帯電ローラ212に負の電圧を印加させ、感光体ドラム211の表面を負に帯電させる。
感光体ドラム211の表面を負に帯電させた現像器制御部1113は、K_LEDヘッド1130の明滅を制御して地紋画像データに基づく光を感光体ドラム211の表面に照射させる。感光体ドラム211は回転しながらK_LEDヘッド1130から照射された光を受光することにより、受光した部分、すなわち地紋画像データに基づく地紋パターン画像が形成される部分のみの負の電荷の帯電量が減少し、静電潜像が形成される。
【0046】
一方、K現像部1114の現像剤収容器214に収容されたK現像剤213は、現像剤供給ローラ208および現像ローラ209により感光体ドラム211へと搬送される過程において負の電荷が与えられ、感光体ドラム211表面の負電荷の帯電量が減少している部分にのみ付着する。
この動作と同時に、制御部1111は、給紙・搬送制御部およびローラ類駆動制御部等へ印刷開始指示を出力し、媒体207を印刷部1112へ搬送する動作を開始させる。
【0047】
給紙ローラ対206により搬送された媒体207は、K現像部1114に到達すると、転写ベルト204の内側に設けられた転写ローラ205に図示しない高圧電源から印加された正の電圧により発生する電界の作用により、K現像剤213で形成された地紋パターン画像が感光体ドラム211表面から媒体207表面に転写される。
【0048】
現像器制御部1113は、同様に、YMC画像データおよびクリアコート画像のY画像データ、M画像データ、C画像データ、およびCT画像データの情報に基づき、Y_LEDヘッド1131、M_LEDヘッド1132、C_LEDヘッド1133、およびCT_LEDヘッド1134を制御してY現像部1115でY現像剤216、M現像部1116でM現像剤219、C現像部1117でC現像剤222、およびCT現像部1118でCT現像剤225を用いた現像剤像が、感光体ドラムの表面に形成され、転写ベルト204により搬送される媒体207の表面に順次転写される。
このとき、Y現像剤216、M現像剤219、C現像剤222、およびCT現像剤225には所定の波長の光(本実施例では、近赤外光)を透過する顔料が用いられている。
【0049】
転写ベルト204により図2中の矢印Aが示す方向に搬送された媒体207は、定着器202により熱および圧力が付与されることにより現像剤像が定着される。現像剤像が定着された媒体207は、排紙ローラ対203により印刷装置1100の外部へと排出され、画像形成動作は完了する。
印刷装置1100による画像形成動作が完了すると、図6に示すように、媒体207上に現像剤層が形成される。
【0050】
このように、K現像部1114でK現像剤213により形成された地紋コード402の画像を覆うように、CT現像部1118でCT現像剤225により地紋コード402の上層部にクリアコート剤403の画像が形成されるため、地紋コード402を保護することができる。
また、K現像剤213で形成されている地紋コード402の画像の上に、Y現像部1115でY現像剤216、M現像部1116でM現像剤219、およびC現像部1117でC現像剤222の各現像剤によるYMC画像が、地紋コード402の画像の上位に形成される場合もあり、そのYMC画像もクリアコート剤403で覆い被され、保護することができる。
【0051】
本実施例では、CT現像部1118で生成されるCT現像剤225によるクリアコート剤の層厚を調整することを特徴とする画像形成の制御動作であり、クリアコート剤の層厚の調整は、CT_LEDヘッド1134の光量を調整することで行っており、露光量を上げることにより層厚を厚く、露光量を下げることにより層厚を薄くすることができ、クリアコート剤の層厚を調整することができる。
【0052】
このように、本実施例では、地紋データの破損が激しい部位、または地紋データの破損を必ず防ぐことが必要な部位には通常の層厚のクリアコート剤を被せ、地紋データの破損があまり発生しない部位、または地紋データが破損してもあまり問題とならない部位には通常の層厚よりも薄くクリアコート剤を被せるようにしたことにより、クリアコート剤の消費量を抑制することができる。
【0053】
以上説明したように、第1の実施例では、地紋データ画像に対して読取装置等が良く触れ、地紋パターンが破損し易い部位以外の範囲、または地紋パターンが頻繁に読み取られる部位以外の範囲に被せるクリアコート剤の層厚を、通常の層厚より薄くしたことにより、クリアコート剤の消費量を抑制することができるという効果が得られる。
また、地紋データの中心部から端部に向けて徐々にクリアコート剤の層厚を薄くするようにしたことにより、ぼかし効果により、クリアコート剤を被せた部位と被せていない部位との境界が目立たなくなるという効果が得られる。
【実施例2】
【0054】
第1の実施例では、地紋データの中心を基点として外側に向けて徐々にクリアコート剤の層厚を薄くするようにしたため、GridMark等の点で読取る地紋データ(地紋パターン)に対しては有効な方法であるが、一般的なバーコード(1次元バーコード)等の線で読取る地紋データでは、地紋データの端部のクリアコート剤の層厚が薄いため、地紋データ(地紋パターン)が破損し読み取ることができなくなる可能性がある。
第2の実施例では、線で読み取る地紋データ(地紋パターン)に有効であり、かつクリアコート剤の消費量を抑制するようにしている。
【0055】
図7は第2の実施例における印刷装置の構成を示すブロック図である。なお、上述した第1の実施例と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。また、本実施例では、地紋画像データで表現される地紋パターン画像は、図9に示すように、一般的な1次元バーコードとする。
図7において、画像データ生成部1102は、印刷データ解析部1103と、地紋データ生成部1107と、クリアコート生成部7108と、YMC画像データ生成部1109と、印刷データ記憶部1110とを備えている。
【0056】
印刷データ解析部1103は、地紋データ判別部1105と、オブジェクト判別部1106とを備え、通信部1101を介して受信した受信データである印刷データ1005を解析するとともに、地紋データ生成部1107、クリアコート生成部7108、およびYMC画像データ生成部1109の変換部へ画像データを転送する。
地紋データ判別部1105は、通信部1101を介して受信した受信データの地紋のみのデータを選択して解析した後、解析したデータを地紋データ生成部1107およびクリアコート生成部7108に転送する。
【0057】
オブジェクト判別部1106は、通信部1101を介して受信した受信データの地紋以外のオブジェクトデータを選択して解析した後、解析したデータをYMC画像データ生成部1109に転送する。
地紋データ生成部1107は、地紋データ判別部1105で判別されたデータを基に編集展開処理を行い、地紋画像データのイメージデータおよび印刷情報を生成する。
【0058】
クリアコート生成部7108は、クリアコート剤印刷範囲中心判断部としての中心線判断部7119と、クリアコート剤層厚決定部としての層厚決定部7120とから構成されている。このクリアコート生成部7108は、地紋データ判別部1105で判別されたデータを基にクリアコート剤を印刷する範囲を決定し、その後、中心線判断部7119により、例えば図9に示すように、地紋データの読取り方向に対して直交する方向のクリアコート剤を印刷する範囲の中心部(中心線904)を判断し、層厚決定部7120において、その中心部より端部に向けて徐々にクリアコート剤の層厚が薄くなっていくグラデーション処理を行い、媒体207に形成された地紋データに重畳するクリアコート剤の層厚を決定し、地紋データに覆い被せる保護データ部分のイメージデータおよび印刷情報を生成する。すなわち、層厚決定部7120は、地紋データの中央部のクリアコート剤の層厚よりも端部のクリアコート剤の層厚を薄く決定する。
【0059】
YMC画像データ生成部1109は、オブジェクト判別部1106で判別されたデータを基に編集展開処理を行い、テキスト部やグラフィック部、またはイメージ部のイメージデータと印刷情報を生成する。
印刷データ記憶部1110は、地紋データ生成部1107、クリアコート生成部7108、およびYMC画像データ生成部1109の各生成部において生成されたイメージデータと印刷情報を画像データとして記憶する。
【0060】
上述した構成の作用について説明する。
まず、画像形成システムの作用について図7を用いて説明する。
ユーザの操作による印刷開始指示により、ホスト装置1000内のアプリケーション1004は、作成されたカラー画像イメージデータおよび地紋画像イメージデータに基づいてスプールファイルを生成するとともに、生成されたスプールファイルをドライバ1001へ出力する。
ここで、スプールファイルとは、アプリケーション1004がドライバ1001に対して渡す印刷データの中間データのことである。
【0061】
アプリケーション1004から出力されたスプールファイルが入力されると、ドライバ1001のPDLデータ生成部1002は、印刷装置1100に対して描画を指示するためのプログラム言語で記述されたPDLデータを生成する。また、PDLデータ生成部1002は、地紋画像データおよびカラー印刷データを含む印刷ジョブデータを生成する。ここで、印刷ジョブデータには、カラー印刷データと地紋画像データとを識別するための識別子、および地紋画像データの場合は読取り方向を識別するための識別子が付与される。
データ送信部1003は、出力データ602に基づいてPDLデータ生成部が生成した印刷データ1005を印刷装置1100の通信部1101に対して送信する。
【0062】
次に、印刷装置1100の画像データ生成部1102が行う画像データ生成処理を図8の第2の実施例における画像データ生成処理の流れを示すフローチャートの図中Sで表すステップに従って図7を参照しながら説明する。
S201〜S203:図3におけるS101〜S103と同様の処理なのでその説明を省略する。
S204:クリアコート生成部7108は、クリアコート剤を印刷するクリアコートの範囲を確定するクリアコートデータ作成処理を行う。
【0063】
S203で作成された地紋データの描画範囲全体を基本範囲とし、その基本範囲より外側に所定量はみ出した範囲をクリアコート剤の印刷範囲とするのが一般的であったが、本実施例では、クリアコート生成部7108は、基本範囲に対してはみ出す量は任意に決定することができ、基本範囲にはみ出し量を付加した範囲を、新たなひとつのクリアコート剤描画オブジェクトとしたクリアコートデータを作成する。
S205:中心線判断部7119は、地紋データの範囲の中心線部を決定する地紋データ範囲中心線Y座標算出処理を行う。
【0064】
ここで、中心線判断部7119が行う地紋データ範囲中心線Y座標算出処理を図9に基づいて説明する。
まず、中心線判断部7119は、図中矢印Bが示す地紋の配列方向(複数の地紋コード902が配列された方向であり、例えばそれぞれの棒状の地紋コード902の短手方向、すなわち地紋コード902の幅が変化する方向であるX軸方向)に直交するY軸方向に対し、地紋データの下端Y1座標905と上端Y2座標906を求め、
Y中心座標=(下端Y1座標+上端Y2座標)/2
により、Y中心座標904を求める。
【0065】
なお、中心線のY座標を決定するにあたり、地紋の配列方向としての読取り方向の情報が必要になるが、その情報はホスト装置1000のデータ生成部1002で付加された識別情報で判断することが可能である。また、バーコードのように地紋データ全体の形状が長方形に決定されているものであれば、地紋データ全体の長手方向を読取り方向と判断するようにしても良い。
【0066】
S206:層厚決定部7120は、クリアコートデータのグラデーション処理を行う。
層厚決定部7120は、S204において作成されたクリアコートデータの描画範囲に対し、S205で求めた地紋データの図9に示す中心線904から下端Y1座標905、上端Y2座標906までグラデーション処理を行い、クリアコート剤のラスタデータや印刷情報等を作成して印刷データ記憶部1110のディスプレイリストに格納し、処理をS210へ移行する。
【0067】
ここで、グラデーション処理を図9に基づいて説明する。なお、グラデーション処理の方法には、地紋データの種類や用途により、多種多様な方法が存在するが、本実施例では、図9を用いてひとつの例を説明する。なお、図9(a)は上面図であり、図9(b)は図9(a)におけるYY断面図、図9(c)は図6(a)におけるXX断面図である。
図9は、一般的な1次元バーコード等の技術による、地紋データとしての地紋コードの配置図であり、媒体207の上面に、図中矢印Bが示す地紋の配列方向に棒状の地紋コード902が配置され、その地紋コード902を覆い被せるようにクリアコート剤903が印刷される。なお、図9(b)に示す中心線904aは、地紋の配列方向であるX軸に平行な直線であり、各X座標における地紋コード902のY軸方向の中心を結んだ直線である。
【0068】
この地紋コード902に対しては、X軸方向の一直線状の一部に破損が生じなければ、読み取りに支障をきたさないため、地紋コード902のY軸方向に対する中心線904aの近傍の領域904bにのみ、その中心線904aに直交する方向に所定の幅を保持してクリアコート剤を通常の層厚にして被せ、領域904b以外の領域はクリアコート剤の層厚を通常の層厚より薄くして被せる。
すなわち、層厚決定部7120は、地紋の配列方向と直交する方向における中心線から端部に向かいクリアコート剤の層厚を薄化するように決定する。
【0069】
S207〜S209:図3におけるS107〜S109と同様の処理なのでその説明を省略する。
S210:制御部1111は、通信部1101を介してホスト装置1000から受信した印刷データ1005のオブジェクトのすべての解析が終了したか否かを判定し、解析が終了していないと判定すると処理をS202へ移行して再び印刷データ1005の解析を行い、すべての解析が終了したと判定すると本処理を終了する。
【0070】
印刷装置1100の画像データ生成部1102により画像データが生成されると、制御部1111は、印刷データ記憶部1110内のディスプレイリストに格納された各画像データに応じて印刷部1112の現像器制御部1113に対して画像形成を指示する。指示を受けた現像器制御部1113は、地紋データ画像をK現像部1114、YMC画像データのY画像をY現像部1115、YMC画像データのM画像をM現像部1116、YMC画像データのC画像をC現像部1117、クリアコート画像データのクリアコート画像をCT現像部1118で画像形成するように、K現像部1114、Y現像部1115、M現像部1116、C現像部1117、およびCT現像部1118の各現像部と、K_LEDヘッド1130、Y_LEDヘッド1131、M_LEDヘッド1132、C_LEDヘッド1133、CT_LEDヘッド1134の各LEDヘッドを制御する。
以降の印刷装置1100の画像形成動作は第1の実施例と同様なのでその説明を省略する。
【0071】
印刷装置1100による画像形成動作が完了すると、図9に示すように、媒体207上に現像剤層が形成される。
このように、K現像部1114でK現像剤213により形成された地紋コード902の画像を覆うように、CT現像部1118でCT現像剤225により地紋コード902の上層部にクリアコート剤903の画像が形成されるため、地紋コード902を保護することができる。
【0072】
また、K現像剤213で形成されている地紋コード902の画像の上に、Y現像部1115でY現像剤216、M現像部1116でM現像剤219、およびC現像部1117でC現像剤222の各現像剤によるYMC画像が、地紋コード902の画像の上位に形成される場合もあり、そのYMC画像もクリアコート剤903で覆い被され、保護することができる。
【0073】
本実施例では、CT現像部1118で生成されるCT現像剤225によるクリアコート剤の層厚を調整することを特徴とする画像形成の制御動作であり、クリアコート剤の層厚の調整は、CT_LEDヘッド1134の光量を調整することで行っており、露光量を上げることにより層厚を厚く、露光量を下げることにより層厚を薄くすることができ、クリアコート剤の層厚を調整することができる。
このように、本実施例では、線で読み取る地紋データ(地紋パターン)であっても、地紋データの破損が激しい部位、または地紋データの破損を必ず防ぐことが必要な部位には通常の層厚のクリアコート剤を被せ、地紋データの破損があまり発生しない部位、または地紋データが破損してもあまり問題とならない部位には通常の層厚よりも薄くクリアコート剤を被せるようにしたことにより、クリアコート剤の消費量を抑制することができる。
【0074】
以上説明したように、第2の実施例では、地紋データが線で読み取られるものであっても、地紋コードの読み取り方向に直交する方向における中心線上に所定の幅を保持してクリアコート剤を通常の層厚にして被せ、中心線から端部に向けてクリアコート剤の層厚を通常の層厚より薄くしたことにより、第1の実施例と同様の効果が得られる。
また、読取装置の接触による地紋データの破損、時間経過による地紋データの破損等を抑制することができ、さらにクリアコート剤を通常の層厚で直線的に被せた部位は、地紋データの破損を防止することができるため、破損等により地紋データが読取装置で読み取れなくなることを防止することができるという効果が得られる。
【0075】
なお、第1の実施例および第2の実施例では、印刷装置を電子写真方式のプリンタとして説明したが、それに限られることなく、クリアコート剤を被せる電子写真方式、インクジェット方式または熱転写方式のプリンタ、複写機、またはファクシミリ装置とすることができる。
また、第1の実施例および第2の実施例では、印刷装置をカラープリンタとして説明したが、それに限られることなく、モノクロプリンタとしてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1000 ホスト装置
1001 ドライバ
1002 PDLデータ生成部
1003 データ送信部
1004 アプリケーション
1005 印刷データ
1100 印刷装置
1101 通信部
1102 画像データ生成部
1103 印刷データ解析部
1105 地紋データ判別部
1106 オブジェクト判別部
1107 地紋データ生成部
1108、7108 クリアコート生成部
1109 YMC画像データ生成部
1110 印刷データ記憶部
1111 制御部
1113 現像器制御部
1114 K現像部
1115 Y現像部
1116 M現像部
1117 C現像部
1118 CT現像部
1119 中心判断部
7119 中心線判断部
1120、7120 層厚決定部
1130 K_LEDヘッド
1131 Y_LEDヘッド
1132 M_LEDヘッド
1133 C_LEDヘッド
1134 CT_LEDヘッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9