(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スイッチング制御手段は、前記スイッチング素子をオンさせる複数のパルス信号からなる周期性を有する矩形波信号を前記スイッチング素子に出力して前記スイッチング素子のオンオフを制御するものであり、前記矩形波信号の周波数を変更することにより前記スイッチング素子のオン時間を増加するものである請求項1又は2に記載の電源装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、画像形成装置が前記省電力モードから前記通常動作モードに移行されたときに、負荷の増加に伴い負荷電流が急激に増加することによって電圧降下が生じ、負荷機器の動作を不安定にする場合がある。例えば、前記電圧降下によって出力電圧が負荷機器の定格電圧を下回ると、負荷機器が動作しなくなる場合がある。そのため、従来、画像形成装置の電源装置には、負荷機器の給電電路への出力電圧を検知して、その電圧と予め定められた基準電圧との差を減少させるように電力供給量を制御するフィードバック制御が行われている。
【0005】
しかしながら、前記フィードバック制御が行われているとはいえ、フィードバック制御には若干の制御遅延が生じる。具体的には、
図6に示されるように、T00時点で前記省電力モードから前記通常動作モードに移行された場合は、負荷電流の増加に伴い出力電圧が低下したことを受けてフィードバック制御が行われるため、T00時点からΔT遅れたT10時点でスイッチング電源のスイッチング制御信号(SW制御信号)のオン時間が増加される。この場合、
図6に示されるように、出力電圧が瞬時的に低下してアンダーシュートが発生する。特に、特許文献1に記載のように、省電力モードにおいてスイッチング電源の発信周波数を下げるように制御している場合は、出力電圧の変動に対するフィードバック制御の追従性が悪くなるため、瞬時的とはいえ極めて大きいアンダーシュートが発生して、出力電圧が負荷機器の定格電圧を大幅に下回り、負荷機器の動作を不安定にするだけでなく、場合によっては負荷機器が故障するという問題がある。かかる問題は、画像形成装置の電源だけでなく、あらゆる装置の電源にも生じうる。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、負荷機器の負荷変動に伴う出力電圧の変動を抑制することが可能な電源装置及びこれを備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、オンオフされることにより負荷機器への給電電路に電力を供給するスイッチング素子と、前記負荷機器の負荷を増加させる指示信号に基づいて前記負荷機器に流れる負荷電流が増加する前に、前記指示信号を取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された前記指示信号に応じて前記スイッチング素子のオン時間を増加させるスイッチング制御手段と、を備えた電源装置として構成されている。
これにより、前記指示信号によって前記負荷機器の負荷が増加する前に、前記指示信号を取得して、その指示信号に応じてスイッチング素子のオン時間が増やされるので、負荷機器の負荷変動に起因して生じる出力電圧のアンダーシュートを抑制することができる。
【0008】
また、本発明の電源装置は、前記スイッチング制御手段による前記オン時間の増加後に、一部の負荷機器だけに電力を供給する省電力モードから複数の負荷機器に電力を供給する通常動作モードに切り替えて各負荷機器に電力を供給する電力供給切替手段を更に備えている。この場合、前記指示信号としては、前記省電力モードから前記通常動作モードに切り替えるための切替コマンド信号が該当する。このように負荷機器への電力供給量が異なる2種類のモードを切り替えつつ電力が供給される場合は、モードの切替時に大きな負荷変動が生じるため、このような電力供給切替手段を備えた電源装置に本発明は好適である。
【0009】
前記スイッチング制御手段は、具体的には、前記スイッチング素子をオンさせる複数のパルス信号からなる周期性を有する矩形波信号を前記スイッチング素子に出力して前記スイッチング素子のオンオフを制御するものであり、前記矩形波信号の周波数を変更することにより前記スイッチング素子のオン時間を増加するものである。
【0010】
また、前記スイッチング制御手段は、前記省電力モードにあるときに前記取得手段によって前記指示信号が取得されるまで前記通常動作モード時における周波数よりも低い周波数の前記矩形波信号を前記スイッチング素子に出力するものである。
これにより、省電力モードにおいて前記スイッチング素子のオンオフ回数が減少するため、電源装置におけるスイッチングロスが軽減する。
【0011】
また、本発明の電源装置は、前記給電電路への出力電圧と予め定められた基準電圧との誤差を検知して前記出力電圧が前記基準電圧となるように制御するフィードバック制御手段と、可変容量素子又は可変抵抗素子を有し、前記フィードバック制御手段の制御遅延に起因して生じる前記矩形波信号の周波数に対する位相遅れを減少させる位相補償手段と、前記矩形波信号の周波数に応じて前記可変容量素子又は前記可変抵抗素子の時定数を変更する時定数変更手段と、を更に備える。
これにより、スイッチング素子に出力される矩形波信号の周波数が変えられても、変化後の周波数に応じて前記可変容量素子又は前記可変抵抗素子の時定数が調整されるため、矩形波信号の周波数の変化に関わらず、前記位相補償手段による位相遅れを適切に減少することができる。
【0012】
また、本発明は、上述に記載の電源装置を具備する画像形成装置として捉えることもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、負荷機器の負荷変動に伴う出力電圧の変動を抑制することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例にすぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0016】
[複合機Xの概略構成]
まず、
図1を参照して、本発明の実施形態に係る電源装置30(本発明の電源装置の一例)及びこの電源装置30を備えた複合機X(本発明の画像形成装置の一例)の概略構成について説明する。
【0017】
図1に示されるように、複合機Xは、画像読取部10、画像形成部12、ADF(自動原稿送り装置)14、操作表示部16、標準規格IEEE802.3に準拠した通信インターフェースカード等のNIC(ネットワークインターフェースカード)18、及びこれらを制御する主制御部20を備えている。また、複合機Xは、画像読取部10や、画像形成部12、操作表示部16、NIC18、主制御部20などに必要な電力を供給する電源装置30を備えている。なお、本実施形態では、本発明の画像形成装置の一例として複合機Xを例示して説明するが、これに限られず、例えばプリンター、ファクシミリ装置、複写機も本発明の画像形成装置に該当する。また、本実施形態では、画像形成装置に用いられる電源装置30を例示しているが、電源装置30は、画像形成装置以外の情報処理装置などの様々なタイプの装置にも適用可能である。
【0018】
画像読取部10は、コンタクトガラス、読取ユニット、ミラー、光学レンズ、及びCCDなどを備えた所謂スキャナーであり、所定の位置にセットされた原稿から画像データを読み取る画像読取処理を実行するものである。具体的には、原稿が前記コンタクトガラス上に載置され、その後、操作表示部16から画像読取指示が入力されると、読取ユニットが副走査方向へ移動され、その移動中に前記読取ユニットから連続して順次1ライン分の光が照射させる。そして、原稿からの反射光が前記ミラー及び前記光学レンズを経て前記CCDに導かれ、このCCDにて受光した光量に応じた光量データが主制御部20に出力される。主制御部20では、前記光学データに基づいて原稿の画像データが生成される。
【0019】
画像形成部12は、画像読取部10で読み取られた画像データ、又は外部のパーソナルコンピュータ等の情報処理装置からNIC18を通じて入力された印刷ジョブに基づいて画像形成処理(印刷処理)を実行する電子写真方式の画像形成手段である。画像形成部12は、感光体ドラム、帯電装置、現像装置、転写装置、定着装置、レーザスキャナユニットなどを備えている。NIC18を通じて印刷ジョブが入力されると、前記帯電装置によって前記感光体ドラムが所定の電位に一様に帯電される。次に、前記レーザスキャナユニットにより前記感光体ドラムの表面に前記印刷ジョブに含まれる画像データに基づく光が照射される。これにより、前記感光体ドラムの表面に静電潜像が形成される。そして、前記感光体ドラム上の静電潜像は前記現像装置によってトナー像として現像(可視像化)される。続いて、前記感光体ドラムに形成されたトナー像は前記転写装置によって印刷用紙に転写され、その後、前記定着装置によって印刷用紙に溶融定着される。なお、本実施形態では、電子写真方式の画像形成部12を例にして説明するが、画像形成部12は電子写真方式のものに限られず、インクジェット記録方式のものであっても、或いはそれ以外の記録方式又は印刷方式のものであってもかまわない。
【0020】
NIC18は、例えば標準規格IEEE802.3に準拠したLAN及びインターネット等からなるネットワークを通じて、外部の情報処理装置との間で印刷ジョブの入力を受け付ける通信インターフェースカードである。NIC18は、前記情報処理装置から有線又は無線などのデータ伝送媒体を介して印刷ジョブを受信すると、受信したことを示す受信信号を電源装置60の電源回路31に出力する。なお、この受信信号は、本発明の指示信号の一例である。
【0021】
主制御部20は、複合機Xの動作を制御するものである。主制御部20は、CPU、ROM、RAM、EEPROMを主な構成要素とするマイクロコンピュータが実装された制御基板として構成されている。また、主制御部20には、図示しないモータードライバーや液晶コントローラーなどの制御デバイスも搭載されている。
図1に示されるように、主制御部20には、画像読取部10、画像形成部12、操作表示部16、NIC18などが内部バス21を介して電気的に接続されている。主制御部20は、前記ROMに記憶された所定の制御プログラムを前記CPUが実行することにより、複合機Xを統括的に制御する。なお、主制御部20は集積回路(ASIC、DSP)などの電子回路で構成されたものであってもよい。
【0022】
[電源装置30の構成]
電源装置30は、複合機Xの構成要素である主制御部20、画像読取部10、ADF14、画像形成部12、操作表示部16、NIC18などに対して、これらの構成要素が必要としている電力を供給するものである。
図1に示されるように、電源装置30は、主制御部20、画像読取部10、ADF14、画像形成部12、操作表示部16、NIC18それぞれと電源ケーブル(
図1の波線参照)で接続されており、電源装置30から各構成要素それぞれに電力を供給できるように構成されている。なお、以下においては、説明の簡便化のため、主制御部20、画像読取部10、ADF14、画像形成部12、操作表示部16を駆動部24と総称する。
【0023】
図2に示されるように、電源装置30は、電源回路31と、電源制御部62(本発明の電力供給切替手段の一例)と、トランジスタ64と、を備えている。
【0024】
電源回路31は、商用電源であるAC100Vを整流してDC24Vに変換し、それを更にスイッチング制御して、主制御部20や画像形成部12等の各構成要素に供給するものである。なお、電源回路31の構成につては後述する。
【0025】
電源制御部62は、CPU、ROM、RAM、EEPROMなどを主な構成要素とするマイクロコンピュータが実装された制御基板として構成されている。電源制御部62は、後述のスイッチング制御部46の制御IC41からモード切替信号を受けると、前記ROMに記憶された所定の制御プログラムを前記CPUが実行することにより、複合機Xの動作モードを、後述の通常動作モードと省電力モードのいずれかのモードに切り替える。なお、電源制御部62は、集積回路(ASIC、DSP)などの電子回路で構成されたものであってもよい。
【0026】
電源制御部62は、電源回路31からNIC18や駆動部24へ出力される電力の供給を制御する。具体的には、複合機Xの動作モードを、通常動作モードと省電力動作モードのいずれかに切り替える制御を行う。ここで、前記通常動作モードとは、電源回路31からNIC18及び駆動部24に電力を供給してNIC18及び駆動部24を動作させる動作モードのことである。また、前記省電力動作モードとは、電源回路31からNIC18だけに電力を供給してNIC18を動作させる動作モードのことであり、前記通常動作モードよりも省電力効果が高い動作モードである。本実施形態では、省電力モードのときに電源制御部62に後述のモード切替信号が入力されると、動作モードが通常動作モードに変更される。また、通常動作モードのときに一定時間操作されなかったり、一定時間印刷ジョブが入力されなかった場合は、省電力モードへの移行条件が成立したと判断されて、直ちに省電力モードに変更される。
【0027】
複合機Xが前記通常動作モードで動作しているときは、NIC18や駆動部24に常時電力が供給されている。そのため、印刷ジョブや原稿読取指示が入力されると、直ちに画像形成処理又は画像読取処理が実行される。一方、複合機Xが前記省電力モードで動作しているときは、印刷ジョブや原稿読取指示が入力されてから、駆動部24に電力が供給される。そのため、画像形成部12や画像読取部10が動作可能な状態になるまでの待機時間が必要であり、この待機時間の経過後に画像形成処理又は画像読取処理が実行される。
【0028】
トランジスタ64は、電源回路31から駆動部24に電力を供給するための給電経路71(
図2の波線参照)を導通又は遮断するものである。トランジスタ64のコレクタは電源回路31の出力端子31Aに接続されており、エミッタは駆動部24の入力端子24Aに接続されており、ベースは電源制御部62の信号出力端子62Aに接続されている。電源制御部62によって信号出力端子62AからHIGHレベルの制御信号が出力されると、その信号がトランジスタ64のベースに入力されて、トランジスタ64のコレクタとエミッタとが導通する。これにより、電源回路31から駆動部24に電力が供給される。一方、信号出力端子62Aからの前記制御信号が無くなると、トランジスタ64のコレクタとエミッタとの間が遮断される。これにより、電源回路31から駆動部24への電力供給が停止される。本実施形態では、複合機Xが前記通常動作モードにあるときはトランジスタ64が導通され、前記省電力モードにあるときはトランジスタ64が遮断にされる。なお、電源回路31は、給電経路72を介してNIC18に接続されており、そのため、NIC18には、電源回路31から常時電力が供給されている。
【0029】
本実施形態では、NIC18に印刷ジョブが入力されると、印刷ジョブを受信したことを示す受信信号が電源回路31に出力される。その後、前記受信信号がモード切替信号として、電源回路31から電源制御部62に出力される。電源制御部62では、複合機Xが前記省電力モードにあるときに前記モード切替信号を受け取ると、トランジスタ64に前記制御信号を出力して、トランジスタ64を遮断から導通に切り替えて、前記通常動作モードに移行させる。
【0030】
[電源回路31の概略構成]
以下、
図3及び
図4を参照して、電源回路31の概略構成について説明する。
図3に示されるように、電源回路31は、整流回路33と、電解コンデンサ35と、DC/DCコンバーター45と、を備えている。また、DC/DCコンバーター45は、スイッチング制御部46と、トランス40と、二次側整流平滑回路43と、を備えている。
【0031】
図3に示されるように、整流回路33は、4つのダイオード33A〜33Dからなるダイオードブリッジ回路であり、商用電源として外部から入力された交流(例えばAC100V)を一方向の脈流に整流する。整流回路33で整流された直流は、電解コンデンサ35によって平滑化されて、より安定した直流に変換される。スイッチング制御部46は、電解コンデンサ35によって平滑化された直流を、交流成分を有する所定の周波数の交流に変換するものである。トランス40は、負荷に対応した電圧となるように、スイッチング制御部46から出力された交流を降圧する電圧変換器である。トランス40によって降圧された交流は、二次側整流平滑回路43によって整流され、更に平滑化されることによって、負荷に応じた電圧の直流に変換される。なお、二次側整流平滑回路43において、二つのダイオード43A,43Bとコイル43Cによって交流の整流が行われ、電解コンデンサ43Dによって平滑化が行われる。ここで平滑化された電圧が駆動部24やNIC18に出力される。
【0032】
[スイッチング制御部46]
図4に示されるように、スイッチング制御部46は、制御IC41と、ドライバー42と、スイッチング回路37と、エラーアンプ44と、位相補償回路48(本発明の位相補償手段の一例)と、PWM回路50と、を備えている。なお、本実施形態においては、制御IC41によって本発明の取得手段が実現されている。また、制御IC41及びPWM回路50によって本発明のスイッチング制御手段が実現されている。また、エラーアンプ44及びPWM回路50によって本発明のフィードバック制御手段が実現されている。また、制御IC41及び可変容量コンデンサ48C,48Eによって本発明の時定数変更手段が実現されている。
【0033】
スイッチング回路37は、スイッチング素子38(本発明のスイッチング素子の一例)と、スイッチング素子39(本発明のスイッチング素子の一例)とを備えている。スイッチング素子38,39は、オンオフ制御されることによって、電解コンデンサ35によって平滑化された直流の電路を断続的に開閉して、負荷機器へ向けて電力を出力するものである。スイッチング素子38及びスイッチング素子39は、具体的には、電圧駆動形素子であるパワーMOSFETであり、それぞれに、ゲート端子、ドレイン端子、及びソース端子の3つの端子が設けられている。
【0034】
スイッチング回路37は、所謂ハーフ・ブリッジ出力回路であり、スイッチング素子39は、スイッチング素子38に並列に接続されている。詳細には、スイッチング回路37は、スイッチング素子38,39それぞれのドレイン端子同士が電気的に接続されており、ゲート端子がドライバー42に接続されている。また、スイッチング素子39のソース端子は接地接続されており、スイッチング素子38のソース端子は入力端子Vinを介して電解コンデンサ35によって平滑化された直流の電路に接続されている。スイッチング素子38,39のドレイン端子は、インダクタ47を介して出力端子Voutに接続されている。これら2つのスイッチング素子38,39がドライバー42によって交互に導通されることによって、出力電圧が制御された交流の電力が生成される。なお、本実施形態では、2つのスイッチング素子38,39を用いたスイッチング回路37を例示しているが、1つのスイッチング素子のオンオフを切り替えて電力を出力する構成であってもよい。
【0035】
制御IC41は、スイッチング制御部46における各電子デバイスを制御するものである。具体的には、制御IC41は、PWM回路50から出力されたPWM信号(本発明の矩形波信号に相当)を受信して、そのPWM信号をドライバー42に出力する。また、制御IC41は、PWM回路50の発振器50Bに周波数選択信号を出力して、発振器50Bから前記周波数選択信号に応じた周波数の三角波を出力させる。ドライバー42は、前記PWM信号に基づいてスイッチング素子38又はスイッチング素子39を駆動させる。具体的には、ドライバー42は、PWM信号をスイッチング素子38,39のゲート端子に出力する。
【0036】
また、制御IC41には、NIC18からの前記受信信号が入力される。つまり、制御IC41は、前記受信信号をNIC18から取得する。制御IC41は、入力端子Sinに前記受信信号が入力されると、制御IC41内の図示しない遅延回路を経て、出力端子Soutからモード切替信号として電源制御部62へ向けて出力する。前記受信信号が前記遅延回路を経ることによって、前記モード切替信号が電源制御部62に到達するまでの間に遅延時間が生じることになる。本実施形態では、複合機Xが省電力モードにある場合には、前記モード切替信号が電源制御部62に入力する前に、高い周波数の前記PWM信号をPWM回路50から出力させて、ドライバー42によってスイッチング回路37を駆動させている。
【0037】
位相補償回路48は、フィードバック制御に用いられるエラーアンプ44を含む増幅回路において、フィードバック制御の制御遅延に起因して生じる前記PWM信号の周波数に対する位相遅れを減少させるものであり、複数の抵抗と複数のコンデンサとから構成されている。具体的には、出力端子Voutとグランド端子GNDとの間に設けられた電圧設定用の抵抗48Aと、この抵抗48Aに並列に設けられた進み補償用の抵抗48B及び進み補償用の可変容量コンデンサ48Cと、エラーアンプ44に並列に設けられた遅れ補償用の抵抗48D及び遅れ補償用の可変容量コンデンサ48Eと、更に並列に設けられたコンデンサ48Fとを備えている。ここに、可変容量コンデンサ48C,48Eは、容量を変更することが可能な可変容量素子であって、この等価回路は、容量の異なる2つのコンデンサと、容量選択用のスイッチと、を有し、前記スイッチに駆動信号が入力された場合にいずれか一方のコンデンサが接続され、前記駆動信号が入力されていない場合は他方のコンデンサと接続されるように構成されたものである。本実施形態では、PWM信号の周波数に応じて、制御IC41が前記駆動信号を可変容量コンデンサ48C,48Eに出力することによって、前記PWM信号の周波数に適した時定数となるように調整される。これにより、位相補償回路48は前記PWM信号の周波数が変えられても、その周波数に応じて、位相遅れを適切に減少することができる。
【0038】
エラーアンプ44は、出力端子Voutにおける出力電圧と、予め定められた基準電圧Vrefとを比較して、その誤差を検知し、前記出力電圧が前記基準電圧Vrefとなるようにフィードバック制御するためのものである。エラーアンプ44には、分圧抵抗52によって分圧された電圧信号と、基準電圧Vrefとが入力されている。
【0039】
PWM回路50は、入力電圧の振幅を一定のパルス幅に変換(変調)するものであり、PWMコンパレーター50Aと、所定の周波数の三角波信号を出力する発振器50Bとを有する。エラーアンプ44から出力された電圧信号は、位相補償回路48によって進角補正された後に、PWMコンパレーター50Aに入力される。また、PWMコンパレーター50Aには、発振器50Bから出力される三角波信号が入力されている。発振器50Bは、周波数f1の三角波信号と、周波数f1よりも低い周波数f2の三角波信号とのいずれかを出力するものであり、例えば、二つの発振素子と、これらのいずれかを選択するためのスイッチとを備えている。PWM回路50は、エラーアンプ44から入力された電圧信号と前記三角波信号の振幅とを比較して、パワーMOSFETを駆動するPWM信号を生成して出力する。このPWM信号によってスイッチング回路37のオンオフが制御されて、出力電圧が制御される。PWM信号の周期は、発振器50Bから出力される三角波信号の周波数と同じであり、つまり、発振器50Bから出力される三角波信号の周波数が変われば、PWM信号の周波数も変わる。本実施形態では、制御IC41が周波数を選択するための周波数選択信号を発振器50Bに出力することによって、発振器50Bは、前記周波数選択信号に応じた周波数の三角波信号を出力する。具体的には、制御IC41は、前記通常動作モードのときは高周波数f1の三角波信号を発信器50Bに出力させる。これにより、スイッチング素子38,39のオン時間が長くなる。一方、前記省電力モードのときは低周波数f2の三角波信号を発信器50Bに出力させる。これにより、スイッチング素子38,39のオン時間が高周波数f1の場合に比べて短くなる。
【0040】
[DC/DCコンバーター45の動作]
次に、
図5を参照して、DC/DCコンバーター45の動作について説明する。なお、以下においては、複合機Xが前記省電力モードにあるものとして説明する。ここで、
図5は、DC/DCコンバーター45の動作状態を示す波形図であって、
図5(A)は制御IC41に入力される受信信号の入力タイミングを示す波形図、
図5(B)は制御IC41から電源制御部62に出力されるモード切替信号の出力タイミングを示す波形図、
図5(C)は出力電圧の波形図、
図5(D)は負荷電流の波形図、
図5(E)はPWM回路50から出力されるPWM信号の波形図である。
【0041】
複合機Xが前記省電力モードで動作しているときに、NIC18に印刷ジョブが入力されると、
図5(A)に示されるように、印刷ジョブを受信したことを示す受信信号がNIC18から制御IC41に入力される(T11時点)。このとき、制御IC41から発信器50Bに向けて前記周波数選択信号が出力されて、前記省電力モード時に発信器50Bから出力されている三角波の周波数f2が周波数f1に変更される(T11時点)。つまり、NIC18から前記受信信号が制御IC41に入力されるまでは、周波数f1よりも低い周波数f2の三角波信号が出力されていたが、前記受信信号が制御部ICに入力された後は、周波数f2よりも高い周波数f1の三角波信号が出力される。すなわち、T11時点において、発信器50Bから出力されている三角波が、周波数f2の三角波から周波数f2よりも高い周波数f1の三角波に変更される。これにより、
図5(E)に示されるように、PWM回路50から周波数f1のPWM信号が出力される。
【0042】
一方、前記受信信号は、制御IC41内の遅延回路を通って出力端子Soutからモード切替信号として電源制御部62に出力される。このとき、モード切替信号は、T11時点からΔT遅れたT12時点に出力される。なお、この遅れ時間ΔTが経過するまでに、PWM回路50から出力されるPWM信号は、周波数f2のPWM信号から周波数f1のPWM信号に切り替わっており、周波数f1のPWM信号によってスイッチング回路37が駆動している。モード切替信号を受信した電源制御部62は、前記省電力モードから前記通常動作モードに移行させるために、トランジスタ64に制御信号を出力して、トランジスタ64を導通して、駆動部24及びNIC18を含む全ての負荷機器に電力を供給する。これにより、
図5(D)に示されるように、負荷電流が急激に増加する。しかしながら、負荷電流の急激な増加の前に前記PWM信号の周波数が低周波数f2から高周波数f1に変更されているので、出力電圧の電圧降下がほとんど生じることはない(
図5(C)参照)。つまり、本発明の電源装置30であれば、前記省電力モードから前記通常動作モードに移行されたとしても大きなアンダーシュートが生じることはなく、出力電圧の変動を小さくすることができる。
【0043】
また、前記省電力モードのときは、低周波数f2のPWM信号がPWM回路50から出力されて、それに基づいてスイッチング回路37が動作されるので、スイッチング回路37におけるスイッチングロスを小さくすることができ、高い省電力効果を得ることができる。
【0044】
なお、上述の実施形態では、NIC18が備えられた例について説明したが、NIC18が搭載されていないタイプの複合機においては、操作表示部24から複写指示が入力された場合に、その複写指示が入力されたことを示す信号を前記受信信号に代えて制御IC41に入力させればよい。
【0045】
また、上述の実施形態では、可変容量コンデンサ48C,48Eを備えた位相補償回路48を例示して説明したが、可変抵抗を組み合わせた位相補償回路48であってもよい。また、可変容量コンデンサ48C,48Eを通常のコンデンサに代えて、更に抵抗48B,48Dを可変抵抗に代えて、この可変抵抗の抵抗値を変更することにより、前記PWM信号の周波数に適した時定数となるように調整する構成であってもよい。また、時定数のことなる二つの位相補償回路を設け、これらをPWM信号の周波数に応じて切り替えることができる構成であってもかまわない。