(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
鋼製の電縫管の溶接シーム部又は溶接シーム部から一定の距離離れた位置に付されたマーキングに基づいて、前記電縫管の前記溶接シーム部の位置を検出する電縫管の溶接シーム部の位置検出装置において、
前記電縫管に付されたマーキングは、有彩色であり、
前記マーキングを含む前記電縫管の外周面を撮像する撮像装置と、
前記撮像装置で撮像された外周面の撮像データをカラー画像に処理する画像処理装置と、
前記電縫管を管軸を中心として回転させる回転装置と、
前記回転装置の回転角度を制御する制御装置と、を備え、
前記撮像装置は、
前記回転装置により回転する前記電縫管の前記外周面の全周を撮像し、
前記制御装置は、
前記カラー画像における所定エリア中において、RGBの各色成分のうちの前記マーキングが含む色成分が閾値以上占める状態となったか否かを判定する判定装置と、
前記カラー画像における所定エリア中において、RGBの各色成分のうちの前記マーキングが含む色成分が閾値以上占める状態となったと前記判定装置が判定した際、前記マーキングを検出したとして、前記溶接シーム部の位置を検出する検出装置と、
を備え、
前記検出装置は、
前記マーキングを検出したときの前記回転装置の前記回転角度と、前記マーキングに対する溶接シーム部の位置情報とから前記溶接シーム部の位置を検出することを特徴とする電縫管の溶接シーム部の位置検出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の電縫管の溶接シーム部の位置検出装置は、溶接直後の段階(つまり、溶接シーム部の位置変動がほとんどなく、溶接シーム部が未加工であるため溶接シーム部と溶接シーム部以外の部分との輝度信号の差異が大きい段階)で、予め溶接シーム部を検出し、溶接シーム部から所定の距離を隔てた部分に電縫管外周面から明確に区別できる色の塗料で、シーム部と並行にマーキングをしている。そして電縫管外周面を撮像した画像データをマーキング部とそれ以外の部分とに2値化し、2値化された画像に基づいて電縫管上のマーキング部を特定し、予め前記所定の距離を偏差として設定しておいて、特定されたマーキング部から前記偏差の補正をする位置決め演算により求めた位置を溶接シーム部位置として検出している。特許文献1では、このような構成で溶接シーム部を検出することにより、溶接シーム部に熱処理又はサイジング等の加工を施して溶接シーム部と溶接シーム部以外の部分との輝度信号の差異が小さくなった電縫管においても良好な検出精度が安定して得られるとしている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の電縫管の溶接シーム部の位置検出装置は、電縫管外周面を撮像した画像データを2値化する。つまり、特許文献1に記載の電縫管の溶接シーム部の位置検出装置は、電縫管外周面を撮像した画像データを白色と黒色の2色(2値)に変換する。このため、特許文献1に記載の電縫管の溶接シーム部の位置検出装置は、電縫管の外周面にキズ、溶接ヤケ、白っぽい汚れ等のようなマーキング部と同じ色に変換されるものがあった場合、溶接シーム部を誤検知してしまうという問題点があった。
【0007】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、従来よりも溶接シーム部を確実に検出することが可能な電縫管の溶接シーム部の位置検出装置及び位置検出方法を得ることを目的とする。また、本発明は、これら電縫管の溶接シーム部の位置検出装置及び位置検出方法を用いた電縫管の貫通孔形成装置及び貫通孔形成方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電縫管の溶接シーム部の位置検出装置は、鋼製の電縫管の溶接シーム部又は溶接シーム部から一定の距離離れた位置に付されたマーキングに基づいて、電縫管の溶接シーム部の位置を検出する電縫管の
溶接シーム
部の位置検出装置において、電縫管に付されたマーキングは、有彩色であり、マーキングを含む電縫管の外周面を撮像する撮像装置と、撮像装置で撮像された外周面の撮像データをカラー画像に処理する画像処理装置と、
電縫管を管軸を中心として回転させる回転装置と、回転装置の回転角度を制御する制御装置と、を備え、撮像装置は、回転装置により回転する電縫管の外周面の全周を撮像し、制御装置は、カラー画像における所定エリア中において、RGBの各色成分のうちのマーキングが含む色成分が閾値以上占める状態となったか否かを判定する判定装置と、カラー画像における所定エリア中において、RGBの各色成分のうちのマーキングが含む色成分が閾値以上占める状態となったと判定装置が判定した際、マーキングを検出したとして、
溶接シーム部の位置を検出する検出装置と、を備え
、検出装置は、マーキングを検出したときの回転装置の回転角度と、マーキングに対する溶接シーム部の位置情報とから溶接シーム部の位置を検出するものである。
【0009】
このとき、マーキングは、赤色成分を含む色であり、判定装置は、カラー画像における所定エリア中において、赤色成分が閾値以上占める状態となったか否かを判定することが好ましい。
【0010】
また、マーキングは、有彩色のチョークで描かれていることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る電縫管の貫通孔形成装置は、本発明に係る電縫管の溶接シーム部の位置検出装置と、電縫管を管軸を中心として回転させる回転装置と、回転装置の回転量を制御する制御装置と、電縫管の外周側に設けられ、電縫管にドリル加工によって貫通孔を形成する複数の加工装置と、を備え、制御装置は、加工装置における電縫管の加工位置が溶接シーム部から所定距離離れた位置となるように、回転装置によって電縫管を回転させ、加工装置によって電縫管に複数の貫通孔を形成するものである。
【0012】
また、本発明に係る電縫管の貫通孔形成装置を用いて
、側面に溶接シーム部を有する円錐台形状の電縫管に貫通孔を形成する場合、電縫管を持ち上げて支持する支持装置を備え、電縫管に複数の貫通孔を形成する際、電縫管の小径側を大径側よりも高く持ち上げ、管軸が水平となるように電縫管を支持装置によって支持することが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る電縫管の溶接シーム部の位置検出方法は、鋼製の電縫管の溶接シーム部又は溶接シーム部から一定の距離離れた位置に、有彩色のマーキングを付す工程と、
電縫管を回転させてマーキングを含む電縫管の外周面
の全周を撮像する撮像工程と、撮像装置で撮像された外周面の撮像データをカラー画像に処理する画像処理工程と、カラー画像における所定エリア中において、RGBの各色成分のうちのマーキングが含む色成分が閾値以上占める状態となったか否かを判定する判定工程と、カラー画像における所定エリア中において、RGBの各色成分のうちのマーキングが含む色成分が閾値以上占める状態となった際、マーキングを検出したとして、当該マーキングの検出位置から溶接シーム部の位置を検出する位置検出工程と、を備えたものである。
【0014】
このとき、マーキングは、赤色成分を含む色であり、判定工程は、カラー画像における所定エリア中において、赤色成分が閾値以上占める状態となったか否かを判定する工程であることが好ましい。
【0015】
また、マーキングは、有彩色のチョークで描かれることが好ましい。
【0016】
また、本発明に係る電縫管の貫通孔形成方法は、本発明に係る電縫管の溶接シーム部の位置検出方法によって溶接シーム部の位置を検出する工程と、電縫管の外周側に設けられた加工装置における電縫管へのドリル加工位置が溶接シーム部から所定距離離れた位置となるように、電縫管を管軸を中心として回転させ、回転装置によって電縫管を回転させる工程と、電縫管の外周面における溶接シーム部から所定距離離れた位置に、ドリル加工によって複数の貫通孔を形成する工程と、を備えたものである。
【0017】
また、本発明に係る電縫管の貫通孔形成方法を用いて、
側面に溶接シーム部を有する細長円錐台形状の電縫管(例えば、所定のテーパー比率を有する電縫管)に貫通孔を形成する場合、当該電縫管に複数の貫通孔を形成する工程において、電縫管の小径側を大径側よりも高く持ち上げ、管軸が水平となるように電縫管を支持することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る電縫管の溶接シーム部の位置検出装置及び位置検出方法は、有彩色のマーキングが付された電縫管の外周面を撮像し、当該撮像データをカラー画像に処理し、当該カラー画像において、RGBの各色成分のうちのマーキングが含む色成分が所定エリア中に占める割合が閾値以上となったか否かを判定する。そして、本発明に係る電縫管の溶接シーム部の位置検出装置及び位置検出方法は、RGB(赤・緑・青)の各色のうちのマーキングが含む色成分が所定エリア中に占める割合が閾値(しきいち)以上となった際、マーキングを検出したとして、当該マーキングの検出位置から溶接シーム部の位置を検出する。このため、本発明に係る電縫管の溶接シーム部の位置検出装置及び位置検出方法は、電縫管の外周面にキズ等があった場合でも、従来よりも確実にマーキングを検出できるので、従来よりも確実に溶接シーム部を検出することができる。
【0019】
ここで、鋼製の電縫管の外周面の撮像データをカラー画像に処理した場合、RGBの各色成分のうち、赤色成分が最も検出されにくい。このため、赤色成分を含む色でマーキングを付すことにより、マーキングの誤検出をさらに防止でき、溶接シーム部の検出精度をさらに向上させることができる。
【0020】
また、マーキングをチョークで描くことにより、電縫管をメッキ処理する際の前処理(洗浄処理)でマーキングを容易に削除することができ、メッキ不良の発生を防止することもできる。
【0021】
また、本発明に係る電縫管の貫通孔形成装置及び電縫管の貫通孔形成方法は、本発明に係る電縫管の溶接シーム部の位置検出装置及び位置検出方法を用いて溶接シーム部の位置を検出しているので、確実に溶接シーム部から所定距離だけ離れた位置に貫通孔を形成することができ、電縫管の強度や品質を確保することができる。
【0022】
また、本発明に係る電縫管の貫通孔形成装置及び電縫管の貫通孔形成方法を用いて円錐台形状の電縫管に貫通孔を形成する場合、電縫管の小径側を大径側よりも高く持ち上げ、管軸が水平となるように電縫管を支持し、電縫管に貫通孔を形成することにより、電縫管の外周面に電縫管の管軸と垂直な貫通孔を複数形成する際、これらの貫通孔を形成する各加工装置は、ドリルと電縫管外周面との角度が同じとなり、ドリルの寿命を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
実施の形態.
以下、図面を用いて、本発明に係る電縫管の溶接シーム部の位置検出装置、電縫管の貫通孔形成装置、電縫管の溶接シーム部の位置検出方法、及び、電縫管の貫通孔形成方法の実施の形態の一例について説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施の形態に係る電縫管を用いた電信柱を示す正面図である。
電信柱100に用いられる電縫管10は、外周面がテーパー比率1/75となった円錐台形状となっている。この電縫管10の外周面(
図1の左側面及び右側面となる位置)には、電縫管10の下部から上部にかけて複数の貫通孔12が形成されている。これら貫通孔12は、後述する足場ボルト16が地面101と略水平となるように、電縫管10の管軸に対して略垂直に貫通している。また、これら貫通孔12の外周側には、足場ボルト16を取り付けるためのナット13が溶接接続されている。これらナット13のそれぞれは、雌ネジ部の軸方向が地面101と略水平となるように、一部が貫通孔12に挿入されて電縫管10の外周面に溶接接続される構成となっている。また、電縫管10の上部(
図1の正面及び背面となる位置)にも、腕金17やこの腕金17と電縫管10を接続するためのアームタイ18等の部品を電縫管10に取り付けるため、複数の貫通孔12が形成されている。
【0026】
また、電縫管10は、上部及び下部の開口部が上部キャップ14及び下部キャップ15で閉塞されている。そして、ナット13、上部キャップ14及び下部キャップ15が取り付けられた電縫管10の表面には、メッキ10aが施されている。
図1に示すように、電縫管10は、その下部が地面101に埋め込まれて、地面101から立設することとなる。このため、電縫管10の下部には、腐食防止用の塗装10bも施されている。
【0027】
上記のように構成された電縫管10に足場ボルト16、腕金17及びアームタイ18等を取り付けることにより、電信柱100が完成する。
【0028】
続いて、本実施の形態に係る電縫管10の製造工程について説明する。
【0029】
図2は、本発明の実施の形態に係る電縫管の製造工程を説明するための工程図である。
電縫管10を製造する際、まず工程Aにおいて、スリッター30により、コイル状の鋼帯1から長方形状の鋼板2を切り出す。その後、工程Bにおいて、シャーリング装置40により、長方形状の鋼板2を2枚の台形状鋼板3に斜め切断する。
【0030】
工程Cにおいて、台形状鋼板3はプレス機等で管状に曲げ加工され、台形状鋼板3の相対する側縁部が溶接接続され(以下、溶接部分を溶接シーム部11と称する)、円錐台形状の電縫管10が形成される。また、本実施の形態では、工程Cにおいて、電縫管10の両端部を切断し、電縫管10を所定の製品長に整える作業、及び、端部切断後における電縫管の端部開口部が所定の直径となっているかの検査も行われている。なお、本実施の形態では、端部切断後における電縫管の端部開口部が所定の直径となっているかの検査は、作業者によって行われている。このため、当該検査を行う際、溶接シーム部11に、若しくは溶接シーム部11から一定の距離離れた位置に、有彩色でマーキング20を付す作業も作業者によって行われている。詳しくは、本実施の形態では、赤色チョーク(赤色成分を含むチョーク、目視ではピンク色に見える)でマーキング20を描いている。
【0031】
なお、マーキング20を付す行為は、作業者によって行われる必要は必ずしもない。工程Cは、溶接直後の段階であるため、溶接シーム部11と電縫管10のその他の外周面との間において輝度信号の差が大きい。このため、従来より存在する公知の電縫管の溶接シーム部の位置検出装置によって、溶接シーム部11の位置を検出することが十分に可能である。このため、従来より存在する公知の電縫管の溶接シーム部の位置検出装置によって溶接シーム部11の位置を検出し、機械的に(マーキング装置を用いて)所定の位置に有彩色のマーキング20を付してもよい。また、本実施の形態では、溶接シーム部11から一定の距離離れた位置に有彩色のマーキング20を付したが、溶接シーム部11に有彩色のマーキング20を付してもよい。
【0032】
工程Cの後、工程Dにおいて、詳細を後述する貫通孔形成装置50により、電縫管10の外周面の所定の位置に複数の貫通孔12が形成される。そして、貫通孔12が形成された電縫管10は、工程Eにおいて、貫通孔12の一部の位置にナット13が溶接接続される。その後、工程Fにおいて、電縫管10は、上部キャップ14及び下部キャップ15の取り付けが行われ、メッキ10a及び塗装10bが施される。なお、上部キャップ14及び下部キャップ15の双方を取り付けた状態で電縫管10にメッキ処理を行うと、電縫管10内の空気が熱膨張し、電縫管10の変形や上部キャップ14及び下部キャップ15の外れが発生することが懸念される。このため、上部キャップ14及び下部キャップ15の一方は、メッキ処理後に電縫管10へ取り付けることが好ましい。
【0033】
続いて、上記工程Dで用いられる貫通孔形成装置50の詳細について説明する。
【0034】
図3は、本発明の実施の形態に係る貫通孔形成装置を示す側面図であり、
図4は、この貫通孔形成装置を示す平面図である。また、
図5は、この貫通孔形成装置が備えたシーム部位置検出装置で溶接シーム部の位置を検出する方法を説明するための説明図である。
なお、
図3,4の(a)は、貫通孔形成装置50に電縫管10が搬入された状態を示す図である。
図3,4の(b)は、貫通孔形成装置50のシーム部位置検出装置60が溶接シーム部11を検出している状態を示す図である。
図3,4の(c)は、貫通孔形成装置50が電縫管10に貫通孔を形成している状態(ドリル加工している状態)を示す図である。また、
図5は、電縫管10の管軸方向と垂直な断面で該電縫管10を観察した状態を示している。なお、
図5に示す矢印は電縫管10の回転方向を示すものであり、
図5(a),(b)には、シーム部位置検出装置60のモニター69の状態も併記している。
以下、これら
図3〜
図5を用いて、貫通孔形成装置50の構成及び動作について説明する。なお、以下では、電縫管10の搬入方向を前後方向(
図3,4の左を前側、右を後側とする方向)として、貫通孔形成装置50の構成及び動作について説明する。
【0035】
図3,4に示すように、本実施の形態に係る貫通孔形成装置50は、複数のVローラー51、複数のターニングロール52、複数のクランプ装置53、複数の加工装置55、回転装置61、及び、シーム部位置検出装置60を備えている。
【0036】
Vローラー51は鼓形状(軸方向の中心部がV字状に凹んだ形状)に形成されており、各Vローラー51は、前後方向に並設されている。また、各Vローラー51は、左右方向に沿った回転軸を中心として回転可能となっている。つまり、Vローラー51が回転することにより、電縫管10は、Vローラー51上部の凹み部分に支持されて貫通孔形成装置50内に搬入される構成となっている。
【0037】
ターニングロール52は、前後方向と略平行な回転軸を中心として回転自在となっており、また、上下動可能となっている。そして、各ターニングロール52は、平面視においてVローラー51間に設けられている。また、各ターニングロール52は、通常、搬入される電縫管10と干渉しないように、Vローラー51の上部よりも下方に配置されている。また、各ターニングロール52は、上昇した際、Vローラー51の上部よりも上方に配置される。つまり、ターニングロール52が上昇した際、ターニングロール52は、電縫管10を持ち上げ、下方から支持する構成となっている。上述のように、ターニングロール52は、前後方向と略平行な回転軸を中心として回転自在となっている。このため、この電縫管10をターニングロール52が支持している状態において、電縫管10が後述の回転装置によって電縫管10の管軸を中心として回転した際、ターニングロール52が回転することとなる。
【0038】
なお、本実施の形態に係るターニングロール52は、前方(搬入方向前側)のターニングロール52ほど、上昇した際の高さが高い構成となっている。換言すると、本実施の形態に係るターニングロール52は、前方(搬入方向前側)のターニングロール52ほど、電縫管10を高く持ち上げる構成となっている。このようにターニングロール52を構成することにより、ターニングロール52によって円錐台形状の電縫管10を持ち上げた際、電縫管10の管軸を略水平に保つことが可能となる。
【0039】
クランプ装置53は、搬入方向に対して直角方向(
図3では紙面を貫通する方向)に移動可能となっており、平面視(
図4)において、貫通孔形成装置50内に搬入された電縫管10の左右両側に配置されている。また、クランプ装置53は、側面視(
図3)において、ターニングロール52で持ち上げられた電縫管10の管軸と略同等の高さとなっている。つまり、電縫管10をターニングロール52で持ち上げた状態において、各クランプ装置53を左右方向に移動させることにより、電縫管10の左右両側に設けられた一対のクランプ装置53によって、電縫管10の外周面を挟持できる構成となっている。
なお、本実施の形態では、クランプ装置53によって前後方向の2箇所で電縫管10を挟持する構成となっているが、電縫管10の挟持箇所の数は前後方向2箇所以上であれば任意である。前後方向2箇所以上で電縫管10を挟持できれば、電縫管10を安定して固定することができる。
【0040】
加工装置55のそれぞれは、ドリル56を備えており、当該ドリル56で電縫管10の外周面をドリル加工し、電縫管10の外周面に貫通孔12を形成するものである。これら加工装置55のそれぞれは、電縫管10の貫通孔12形成位置と対応する位置に設けられている。
【0041】
詳しくは、加工装置55の一部は、平面視(
図4)において、貫通孔形成装置50内に搬入された電縫管10の左右両側に配置されている。これら左右両側に設けられた加工装置55は、側面視(
図3)において、ドリル56先端部の高さがターニングロール52で持ち上げられた電縫管10の管軸と略同等の高さとなっている。また、これら左右両側に設けられた加工装置55は、左右方向に移動可能となっている。つまり、電縫管10をターニングロール52で持ち上げた状態において、これら左右両側に設けられた加工装置55を左右方向に移動させて、回転するドリル56を電縫管10の外周面に押し当てることにより、左右方向に貫通する貫通孔12(例えば、
図1において電縫管10の左右側面に形成された貫通孔12)を電縫管10の外周面に形成することができる。
【0042】
一方、加工装置55の残りの一部は、側面視(
図3)において、貫通孔形成装置50内に搬入された電縫管10の上下両側に配置されている。これら上下両側に設けられた加工装置55は、平面視(
図4)において、ドリル56先端部の左右方向の位置が電縫管10の管軸と略同等の位置となっている。また、これら上下両側に設けられた加工装置55は、上下方向に移動可能となっている。つまり、電縫管10をターニングロール52で持ち上げた状態において、これら上下両側に設けられた加工装置55を上下方向に移動させて、回転するドリル56を電縫管10の外周面に押し当てることにより、上下方向に貫通する貫通孔12(例えば、
図1において電縫管10の正面及び背面に形成された貫通孔12)を電縫管10の外周面に形成することができる。
【0043】
回転装置61は、ターニングロール52で持ち上げられた電縫管10をクランプし、当該電縫管10を、当該電縫管10の管軸を中心として回転させ、所定の回転角度で停止させるものである。この回転装置61は、電縫管10内にその一部が挿入されるアーム部62と、アーム部62の先端部に開閉可能に設けられたクランプアーム63と、を備えている。このように構成された回転装置61は、移動可能となっており、通常、ターニングロール52で持ち上げられた電縫管10との干渉を避けるため、当該電縫管の上部後方となる位置に待避している。そして、回転装置61は、ターニングロール52で持ち上げられた電縫管10をクランプして回転させる際には、下部前方に移動してアーム部62の先端部及びクランプアーム63をターニングロール52で持ち上げられた電縫管10内に挿入し、クランプアーム63を広げて電縫管10の内周面をクランプし、この状態でアーム部62及びクランプアーム63を回転させる。これにより、ターニングロール52で持ち上げられた電縫管10は、ターニングロール52に支持された状態で、電縫管10の管軸を中心として回転することとなる。
なお、後述のように、回転装置61は、シーム部位置検出装置60の構成の一部としても機能している。
【0044】
シーム部位置検出装置60は、本発明における電縫管の溶接シーム部の位置検出装置に相当するものであり、カメラ65、照明66、画像処理装置67、本発明の判定装置に相当する演算装置68、及び、本発明の検出装置に相当する制御装置70等を備えている。
【0045】
カメラ65は、例えばCCDカメラであり、電縫管10の外周面を撮像するものである。このカメラ65は、回転装置61と同じブラケット61aに取り付けられている。つまり、カメラ65は、通常、ターニングロール52で持ち上げられた電縫管10との干渉を避けるため、当該電縫管の上部後方となる位置に待避している。そして、回転装置61がターニングロール52で持ち上げられた電縫管10をクランプして回転させる際、カメラ65は、下部前方に移動して電縫管10の上方に位置し、当該カメラ65の下方に位置する電縫管10の外周面(詳しくは、外周面におけるカメラ65の視野範囲)を撮像することとなる。なお、本実施の形態では、カメラ65の撮像条件に外光が影響を及ぼすことを防止するため、カメラ65の上方及び側方を箱体65aで覆っている。
【0046】
照明66は、例えばLED照明であり、カメラ65の下方(つまり、電縫管10の外周面)に光を照射するものである。
【0047】
ここで、カメラ65によって電縫管10の外周面の全周を撮像するためには、カメラ65又は電縫管10を、電縫管10の管軸を中心として回転させる必要がある。このため、本実施の形態では、回転装置61で電縫管10を回転させることにより、カメラ65によって電縫管10の外周面の全周を撮像することを可能としている。つまり、カメラ65、照明66及び回転装置61が、本発明の撮像装置に相当する。
【0048】
画像処理装置67は、有線又は無線によってカメラ65と通信可能となっており、カメラ65で撮像された電縫管10の外周面の撮像データをカラー画像に処理するものである。つまり、画像処理装置67は、カメラ65で撮像された電縫管10の外周面の撮像データをRGB(赤色、緑色、青色)の各色成分に処理するものである。
【0049】
演算装置68は、有線又は無線によって画像処理装置67と通信可能となっている。この演算装置68は、画像処理装置67によって処理されたカメラ65の視野範囲(本発明の所定エリアに相当)のカラー画像中に、RGB(赤色、緑色、青色)の各色成分がどの程度の割合で存在しているかを演算するものである。また、演算装置68は、カメラ65の視野範囲中において、RGBの各色成分のうちのマーキング20が含む色成分(本実施の形態では赤色)が閾値以上占める状態となった場合、制御装置70に当該状態を知らせる信号を送信するものである。
【0050】
制御装置70は、有線又は無線によって演算装置68と通信可能となっている。また、この制御装置70は、マーキング20に対する溶接シーム部11の位置情報(換言すると、電縫管10の管軸を中心とした両者の角度)を予め記憶している。このため、制御装置70は、カメラ65の視野範囲中において、RGBの各色成分のうちのマーキング20が含む色成分(本実施の形態では赤色)が閾値以上占める状態となった信号を演算装置68から受信した場合、当該信号を受信したときの電縫管10の回転角度(換言すると、回転装置61の回転角度)と、マーキング20に対する溶接シーム部11との位置情報とから、溶接シーム部11の位置を検出することができる。
【0051】
なお、本実施の形態に係る制御装置70は、モニター69を備え、当該モニター69にカメラ65の視野範囲のカラー画像を表示できるようになっている。また、本実施の形態に係る制御装置70は、Vローラー51の回転の開始・停止、ターニングロール52の移動動作(停止位置)、クランプ装置53の移動動作(停止位置)、加工装置55の移動動作(停止位置)及びドリル56の回転・停止等を制御する制御装置としても機能している。
【0052】
このように構成された貫通孔形成装置50は、次のように動作する。
【0053】
制御装置70がVローラー51を回転させると、
図3,4の(a)に示すように、貫通孔形成装置50内(換言すると、Vローラー51上)に電縫管10が搬入される。そして、貫通孔形成装置50内に搬入された電縫管10が図示せぬストッパーに到達すると、制御装置70は、Vローラー51を停止する。
【0054】
Vローラー51を停止した後、制御装置70は、ターニングロール52を上昇させて電縫管10を持ち上げ、ターニングロール52に電縫管10を支持させる。そして、制御装置70は、クランプ装置53を移動させて電縫管10を挟持させた後、回転装置61を移動させて、回転装置61で電縫管10をクランプする。その後、制御装置70は、クランプ装置53を移動させて電縫管10の挟持を解除した後、回転装置61を回転させて溶接シーム部11の位置検出を開始する。
【0055】
回転装置61を回転させて溶接シーム部11の位置検出を開始すると、カメラ65による電縫管10の外周面の撮像データ、つまり、カメラ65の視野範囲のカラー画像は、
図5(a),(b)に示すようになる。詳しくは、
図5(a)に示すように、カメラ65の視野範囲にマーキング20が入っていない状態においては、カメラ65の視野範囲のカラー画像は、電縫管10の外周面のカラー画像のみとなっている。そして、
図5(b)に示すように、電縫管10の回転が進むと、カメラ65の視野範囲にマーキング20が徐々に入ってくる。そして、カメラ65の視野範囲中において赤色成分が閾値(所定の範囲)以上占める状態になると、演算装置68は制御装置70に当該状態を知らせる信号を送信する。
【0056】
制御装置70は、当該信号を受信すると、マーキング20を検出したと判断し、当該信号を受信したときの電縫管10の回転角度と、マーキング20に対する溶接シーム部11との位置情報とから、溶接シーム部11の位置を検出する。そして、制御装置70は、
図5(c)に示すように、加工装置55における電縫管10の加工位置(貫通孔12の形成位置)が溶接シーム部11から所定距離離れた位置となるように、回転装置61によって電縫管10を回転させる。次に、例えばタイマーなどによって所定時間経過後に回転を停止させる。その後、制御装置70は、クランプ装置53で電縫管10を再度挟持した後、各加工装置55のドリル56を回転させ、各加工装置55を移動させてドリル56を電縫管10に押し当てて、電縫管10の外周面の所定位置に貫通孔12を形成する。
なお、加工装置55のドリル56が電縫管10に押し当てる時(孔加工開始時)には、回転装置61、クランプアーム63及びカメラ65等は、上部後方に退避する。(元の位置に復帰する。)
【0057】
以上、本実施の形態に係るシーム部位置検出装置60(換言すると、溶接シーム部11の位置検出方法)においては、カメラ65の視野範囲中において赤色成分(マーキング20が含む色成分)が閾値以上占める状態になると、マーキング20を検出したと判断し、当該マーキング位置に基づいて溶接シーム部11の位置を検出する。このため、溶接シーム部の位置を確実に検出することができる。
【0058】
また、本実施の形態に係る貫通孔形成装置50(換言すると、貫通孔12の形成方法)においては、本実施の形態に係るシーム部位置検出装置60(換言すると、溶接シーム部11の位置検出方法)で確実に溶接シーム部11の位置を検出できるので、確実に溶接シーム部11から所定距離だけ離れた位置に貫通孔12を形成することができ、電縫管10の強度や品質を確保することができる。
【0059】
なお、本実施の形態では赤色成分を含む有彩色でマーキング20を付したが、マーキング20はこの色に限定されるものではない。マーキング20が有彩色であれば、上記と同様の構成において確実に溶接シーム部11を検出することができる。ただし、鋼製の電縫管10の外周面の撮像データをカラー画像に処理した場合、RGBの各色成分のうち、赤色成分が最も検出されやすい。このため、赤色成分を含む色(赤色、ピンク色、オレンジ色等。特に赤色がよい)でマーキング20を付すことにより、マーキングの誤検出をさらに防止でき、溶接シーム部の検出精度をさらに向上させることができる。
【0060】
また、本実施の形態では、マーキング20をチョークで描いたが、マジック、刷毛塗りによる塗料、スプレー塗料及び石墨等でマーキング20を描くことが可能である。マーキング20が有彩色であれば、本発明を実施することができる。マーキング20をチョークで描くことにより、容易に除去しやすいし、電縫管10をメッキ処理する際の前処理(洗浄処理)でもマーキング20を容易に落とせることができ、メッキ不良の発生を防止することもできるので、本実施の形態ではマーキング20をチョークで描いている。
【0061】
また、本実施の形態では、円錐台形の電縫管10を加工対象としたが、本発明は円筒状の電縫管10にも勿論貫通孔12を形成することができる。
【0062】
また、本実施の形態では、管軸が水平となるように電縫管10をターニングロール52で持ち上げて貫通孔12を形成したが、貫通孔12形成時における電縫管10の支持姿勢は当該姿勢に限定されるものではない。ただし、管軸が水平とならないように電縫管10を支持して貫通孔12を形成した場合、例えば
図3(a)に示すような下面部が水平になった状態の電縫管10をそのまま持ち上げて貫通孔12を形成した場合、上方から電縫管10の外周面に貫通孔12を形成する加工装置55は、ドリル56と電縫管10の外周面との角度が他の加工装置よりも大きくなり、ドリル56の寿命が短くなってしまう。しかしながら、管軸が水平となるように電縫管10をターニングロール52で持ち上げて貫通孔12を形成することにより、各加工装置55はドリル56と電縫管10の外周面との角度が同じとなり、ドリル56の寿命を向上させることができる。