(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
長手方向の前後端部にドラムを回転自在に軸支して前記ドラム間に無端の歩行ベルトを掛け回した本体フレームと、前記歩行ベルトを本体フレーム上面で前方側から後方側へ駆動する駆動機構と、前記本体フレームの前部に立設された手摺部と、前記手摺部に設けられた操作パネルとを有する歩行運動機において、
前記本体フレームの前部を後部に対して高い位置とし、本体フレームを急傾斜状に配備していて、
前記駆動機構は、駆動モータと、前記駆動モータの駆動力を歩行ベルトに伝達する伝達手段と、前記駆動モータの電源入力端同士を短絡させることで前記駆動モータに逆起電力によるブレーキ力を付与することで、使用者が歩行ベルト上を歩行する際に、駆動モータによる駆動量以上に歩行ベルトが後方側へ移動することを規制する規制手段と、を有しており、
前記規制手段が、前記駆動モータの電源入力端間に常に接続され且つ当該駆動モータの電源入力端同士を常に短絡状態とする所定の抵抗値の抵抗器を有する
ことを特徴とする歩行運動機。
前記規制手段は、前記駆動モータの電源入力端間に接続されたリレースイッチを有しており、商用電力の供給が停止した時には、前記リレースイッチを作動させ、前記駆動モータの電源入力端同士を短絡させることで、駆動モータに逆起電力を発生させてブレーキ力として作用させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の歩行運動機。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
以下、本発明の実施の第1実施形態に係る歩行運動機100を図に基づいて説明する。以降、便宜上、
図1の紙面に矢印にて示した前後方向、上下方向を用いて装置の説明を行う。これは、歩行運動機100に載った使用者Uからみた前後方向、左右方向、上下方向と一致するものとなっている。
【0014】
図1に本実施の形態に係る歩行運動機100の全体斜視図を、
図2にその正面図を、
図3にその側面図を、それぞれ示す。
これらの図に示すように、この歩行運動機100は、長手方向の前後端部にドラム121(前側)およびドラム130(後側)を回転自在に軸支して、これらのドラム121およびドラム130間に無端の歩行ベルト120を掛け回した本体フレーム(詳しくは後述するが縦フレーム103等)と、歩行ベルト120を本体フレーム上面で前方側から後方側へ移送する駆動機構(詳しくは後述するが駆動モータ128等)と、本体フレームの前部に立設された手摺部101と、手摺部101(詳しくは後述するように手摺部101と一体的に構成された上部水平フレーム102の中央部近傍)に設けられた操作パネル140とを有する。
【0015】
この歩行運動機100において、運動者(使用者)Uは、両足を歩行ベルト120の上に載せて前側へ歩く運動を行う。この場合、駆動機構により歩行ベルト120が前方側から後方側(すなわち使用者Uが歩行する方向)へ駆動する。この歩行ベルト120の幅は、使用者の肩幅より広く、歩行に支障のない幅とする。
本体フレームは、使用者の腹部の周囲に設けられるU字形の上部水平フレーム102と、上部水平フレーム102を支持するために左右に1本ずつ立設された縦フレーム103と、縦フレーム103を支持するとともに、前後端部にドラム121(前側)およびドラム130(後側)を回転自在に保持する左右一対の下部水平フレーム106と、下部水平フレーム106に取り付けられた左右一対の前部脚部104および前部脚部104よりも高さの低い左右一対の後部脚部105と、左右一対の前部脚部104を連結する連結フレーム109と、駆動機構を懸架してするように支持する懸架フレーム107および懸架水平フレーム108とから構成される。
【0016】
図3に示すように、この歩行運動機100は、下部水平フレーム106に取り付けられた立脚部材である前部脚部104と後部脚部105とでは、後部脚部105のほうが前部脚部104よりも高さが低い。このように構成したので、本体フレームの前部を後部に対して高い位置とし、本体フレームを急傾斜状に配備している。
図3に示す角度θは、十分に安全性を確保した上で、20度〜25度であることが好ましい。
【0017】
この角度θについては、たとえば、下部水平フレーム106に対する前部脚部104の取り付け位置を上下方向に変更可能として、使用者Uの体力および/または年齢等に応じて変更できるようにすることも好ましい。
上部水平フレーム102の左右両端は、手摺部101を構成し、たとえば上部水平フレーム102に滑りにくい素材が巻着されている。また、手摺部101を構成する上部水平フレーム102の中央部近傍には、操作パネル140が設けられている。この操作パネル140は、この歩行運動機100を使って運動するユーザUが操作したり、ユーザUに情報を表示したりする。この操作パネル140の取り付け位置は限定されるものではなく、この歩行運動機100を使用しているユーザUが容易に操作したり、情報を見たりすることができる位置であれば構わない。
【0018】
この操作パネル140には、駆動機構による歩行ベルト120の駆動開始用のスイッチおよび駆動停止用のスイッチが少なくとも設けられる。さらに、歩行ベルト120のスピードを変更するためのスイッチが設けられることが好ましい。この操作パネル140に表示される情報としては、たとえば、運動開始からの経過時間や、運動開始時に設定したタイマの残時間が表示される。また、この操作パネル140には、歩行ベルト120上の歩行量(歩行距離)を表示したり、歩行量(歩行距離)を高さ方向の距離に換算することで得られる高さ方向の移動量を表示したりすることも好ましい。すなわち、この歩行運動機100はユーザUが登り坂を歩行することになるので、階段を登ったり、山道を登ったりする運動をしていることになる。このため、例えば、東京スカイツリーの高さ600mまで到達、富士山の標高3700mまで到達などと表示することが好ましい。
【0019】
図4を参照して、この歩行運動機100の駆動機構について説明する。
この駆動機構は、家庭用商用電源から電力の供給を受けて回転する駆動モータ128と、駆動モータ128のモータ回転軸127に軸心が一致するように連結されたウォームギア126と、ウォームギア126と噛合するウォームホイル125と、回転軸124により軸心が一致するようにウォームホイル125に連結されたギア123と、ギア123に噛合するように設けられた減速ギア122とを備える。減速ギア122は、回転軸を一致させて前側のドラム121に連結されている。この前側のドラム121(駆動側)と後側のドラム130(従動側)との間に無端の歩行ベルト120が掛け回されている。すなわち、この歩行運動機100においては、伝達手段として、駆動モータ128の回転力が入力されるウォームギア126と歩行ベルト120への回転駆動力が出力されるウォームホイル125とからなるウォームギア部を有している。
【0020】
さらに、この歩行運動機100においては、使用者Uが歩行ベルト120上を歩行する際に、駆動モータ128による駆動量以上に歩行ベルト120が後方側へ移動することを規制する規制手段150が設けられている。上述したウォームギア部が、この規制手段150として動作するように構成されている。これについて、詳しく説明する。
ウォームギア126とウォームホイル125とから構成されるウォームギア部は、出力軸(ウォームホイル125の回転軸)から入力軸(ウォームギア126の回転軸)を回転することが困難であるといった特性(回転抵抗300が大であるといった特性)を有している。この特性をウォームギア部のブレーキ機能と解することができる。
【0021】
このブレーキ機能を発現するためには(理論的には)ウォームギア126の進み角(ねじり角)より摩擦角が大きくなったときである。摩擦角は潤滑状況や表面粗さ等により変動し正確に求めることができないものの、多くの場合、この進み角が10度よりも大きくなると滑り出すことがわかっている。すなわち、ブレーキ機能を発現させる場合には、ウォームギア126の進み角を10度以下にする必要があり、本実施の形態に係る歩行運動機100においてもウォームギア126の進み角を10度以下としている。
【0022】
このように、ウォームギア126の進み角を設定しているので、使用者Uが歩行ベルト120上を歩行する際に、駆動モータ128による駆動量以上に歩行ベルト120が後方側へ移動することが規制される。
なお、前述した駆動モータ128に関しても、この駆動モータ128から回転力が前側のドラム121へ供給されている場合において使用者Uが歩行ベルト120上を歩行すると、歩行ベルト120を後側へ送り出すことになる。このとき、駆動モータ128の回転力以上の力が歩行ベルト120を介して駆動モータ128へ与えられることもある。このように与えられた使用者Uの力は、駆動モータ128の回生作用として電力を発生させることになる。このような駆動モータ128の回生作用は、使用者Uにとって負荷となり、ブレーキとして作用する。
【0023】
図5に、この歩行運動機100の歩行ベルト120に使用者Uが載って歩行している状態を示す。
このように、使用者Uは歩行ベルト120上に両足を載せて、操作パネル140に設けられた歩行ベルト120の駆動開始用のスイッチを操作して歩行ベルト120を前側から後側へ移送させる。
【0024】
歩行ベルト120の動きに合わせて使用者Uは歩行する。このとき、歩行ベルト120の傾斜により登り坂を歩く(登る)ことになる、このため、(1)歩行ベルト120が平坦な場合に比べて運動量を多くすることができる。さらに、使用者Uが歩行ベルト120上を歩行する際に、(2)駆動モータ128による駆動量以上に歩行ベルト120が後方側へ移動することを規制するブレーキ(ウォームギアのブレーキ機能)が作用したり、(3)駆動モータ128による駆動量以上に歩行ベルト120が後方側へ移動しようとすると駆動モータ128の回生動作が作用したりする。いずれの(1)〜(3)の場合にも、使用者Uの運動量を増やすことになっている。
【0025】
このように、歩行ベルト120の歩行スピードを速くすることなく運動量を多くすることができるので、振動や騒音を発生させない点で好ましい。また、短い時間でも運動量を多くすることができる点で好ましい。また、歩行運動機100は、坂道を登るような運動を付与する装置である故、歩行面となる歩行ベルト120の前後長さが短くでき、ひいては本体フレームの前後長さを従来のトレッドミル装置に比して可及的に短くできる利点を有する。
[第2実施形態]
次に、本発明の実施の第2実施形態に係る歩行運動機100を図に基づいて説明する。
【0026】
図6、
図7には、第2実施形態に係る歩行運動機100が示されている。この歩行運動機100は、
図1で示される第1実施形態の歩行運動機と略同じ構成を有している。しかしながら、駆動モータ128による駆動量以上に歩行ベルト120が後方側へ移動することを規制する規制手段150の構成が大きく異なっている。
第2実施形態の歩行運動機100においても、駆動モータ128から回転力が前側のドラム121へ供給されている場合において使用者Uが歩行ベルト120上を歩行すると、歩行ベルト120を後側へ送り出すことになる。
【0027】
図7に示すように、歩行運動機100の駆動機構として、商用電源から電力の供給を受けて回転する駆動モータ128が、下部水平フレーム106の左側内側に取り付けられている。この駆動モータ128のモータ回転軸127は前後方向を向いており、モータ回転軸127の先端に同軸状にウォームギア126が設けられている。一方、無端の歩行ベルト120が巻き掛けられた前側のドラム121の左端側にはウォームホイル125が同軸状に取り付けられており、このウォームホイル125にウォームギア126が螺合するようになっている。
【0028】
したがって、駆動モータ128を回転駆動させると、その回転駆動力は、ウォームギア126、ウォームホイル125を介して前側のドラム121へ伝えられ、前側のドラム121が回転し、歩行ベルト120が前方から後方へと移動するようになる。
このとき、使用者Uの歩行により、駆動モータ128の回転駆動力以上の力が歩行ベルト120を介して駆動モータ128へ与えられることもある。このように与えられた使用者Uの力は、駆動モータ128の回生作用として電力を発生させることになる(逆起電力の発生)。このような駆動モータ128の回生作用は、使用者Uにとって負荷となり、ブレーキとして作用する。第2実施形態では、この作用を規制手段150として利用している。すなわち、規制手段150は、駆動モータ128の逆起電力を用いるものとされている。
【0029】
ここで、ウォームギア126、ウォームホイル125で構成されるウォームギア部は、使用者Uが歩行ベルト120上を歩行する際に、駆動モータ128による駆動量以上に歩行ベルト120が後方側へ移動することを規制する規制手段150としての機能は備えないものとなっている。
また、上述した駆動モータ128のモータ回転軸127は、後方へも突出しており、この後方突出部分には、モータ回転軸127の回転数、言い換えれば、歩行ベルト120の移動速度を検出する速度計(スピード検出センサ)210が取り付けられている。この速度計210としては、フォトセンサを用いた回転計などが採用可能である。
【0030】
ところで、第2実施形態の歩行運動機における規制手段150は、第1実施形態とは異なり、制御部200により電気的に駆動モータ128の回転駆動力を制御している。言い換えれば、規制手段150は、駆動モータ128の電源入力端同士を短絡させることで、駆動モータ128に発生する逆起電力を駆動モータ128に対するブレーキ力として作用させるように構成され、さらには、駆動モータ128の電源入力端同士を短絡させる時間を制御する制御部200を備えている。
【0031】
斯かる規制手段150は、下部水平フレーム106左側の内部であって、駆動モータ128の後側に配備されている。
図8は、規制手段150のブロック図である。
図8に示すように、制御部200は、外部から供給される商用電力(交流)を直流に変換し、駆動モータ128へ供給する整流部201と、駆動モータ128の回転駆動力をPWMパルス信号(Pulse Width Modulation)によって制御するPWM制御部202とで構成されている。
【0032】
整流部201は、ダイオード204をブリッジ接続して構成されている。
PWM制御部202は、MOS−FETなどの半導体スイッチング素子203と、パルス信号のパルス幅を所望の幅に変更するCPU205と、このパルス信号を反転させる反転器206と、を有している。加えて、ハーフブリッジゲートドライバ207と、過電流防止回路208とが備えられている。
【0033】
PWM制御部202は、半導体スイッチング素子203を直列に2個配置して、一方の半導体スイッチング素子203aのドレイン側を駆動モータ128のプラス側配線(整流部201のプラス出力)へ接続し、半導体スイッチング素子203aのソース側を駆動モータ128の0V側配線へ接続する。さらに、他方の半導体スイッチング素子203bのドレイン側を半導体スイッチング素子203aのソース側へ接続し、半導体スイッチング素子203bのソース側を整流部201の0V出力側へと接続する。
【0034】
CPU205は、駆動モータ128の回転力をPWM制御するためのPWMパルス信号を発生すると共に、このPWMパルス信号の幅を可変としている。CPU205へは、駆動モータ128に備えられた速度計210からの信号(すなわち、歩行ベルト120の速度情報)が入力され、歩行ベルト120の速度が設定値より低い場合は、パルス幅が広がったPWMパルス信号がCPU205から出力され、歩行ベルト120の速度が設定値より高い場合は、パルス幅が狭まったPWMパルス信号がCPU205から出力される。
【0035】
このCPU205から出力されたPWMパルス信号は、ハーフブリッジゲートドライバ207を介して、半導体スイッチング素子203bのゲートへ入力され、半導体スイッチング素子203bをスイッチングすることで、駆動モータ128へ印加される電圧(駆動モータ128の電源入力端間の電圧)が変化し、電圧駆動モータ128の回転数、回転駆動力が制御される。つまり、PWMパルス信号は、駆動モータ128の回転力を制御する信号として作用する。
【0036】
一方、このCPU205から出力されたPWMパルス信号は、反転器206へも入力され、反転器206からの出力であるPWM反転パルス信号は、ハーフブリッジゲートドライバ207を介して、半導体スイッチング素子203aのゲートへ入力される。半導体スイッチング素子203aのゲートがHigh(=1)となった場合には、駆動モータ128の電源入力端が短絡状態となる。短絡状態にある駆動モータ128を回転させようとした場合、当該駆動モータ128には、逆起電力が発生し、駆動モータ128のモータ回転軸127が回転し難い状況となり、歩行ベルト120に対してブレーキ作用を奏するようになる。つまり、PWM反転パルス信号は、PWMパルス信号を反転させた信号であり、駆動モータ128をブレーキ制御する信号として作用する。
【0037】
また、CPU205からのPWMパルス信号が全てLow(例えば、商用電源は供給されているが、スタートボタンが押されておらず、ベルト駆動の指令が出されていない状態)のときには、PWMパルス信号は、反転器206で反転され、PWM反転パルス信号として出力される。このPWM反転パルス信号は、全てHighとなっているため、駆動モータ128は、出力されたPWM反転パルス信号によって空転しないようになっている。
【0038】
つまり、ベルト停止時、ベルト駆動時を問わず、駆動モータ128が駆動していないときは、歩行ベルト120に対してブレーキ機能が作用するようになっている状況となっている。
さらに、第2実施形態の歩行運動機における規制手段150には、駆動モータ128に過電流が流れることを防止する過電流防止回路208が備えられている。
【0039】
具体的には、半導体スイッチング素子203bのソース側から分岐した配線が過電流防止回路208へ接続され、この過電流防止回路208では、駆動モータ128の駆動時における電流値を監視するようになっている。駆動モータ128の駆動時における電流値が所定の値を超えた場合には、過電流防止回路208はLow(=0)を出力するようになっている(過電流未検出の時はHigh(=1)を出力)。過電流防止回路208の出力とCPU205から出力されたPWMパルス信号とは、反転器206の入力側に設けられた加算器209でAND処理され、その結果が、反転器206及びハーフブリッジゲートドライバ207へと入力されるようになっている。
【0040】
以上述べた規制手段150を用いて、駆動モータ128の回転駆動力を制御する方法、言い換えれば、規制手段150のブレーキ機能について述べる。
まず、第1実施形態と同様に、操作パネル140に設けられた歩行ベルト120の駆動開始用のスイッチを操作して歩行ベルト120を前側から後側へ移送させる。その上で、歩行ベルト120の動きに合わせて使用者Uは歩行する(
図5参照)。
【0041】
このとき、歩行ベルト120の傾斜により登り坂を歩く(登る)ことになる。歩行者Uの歩行時に、歩行ベルト120の移動速度が設定値から一定以上外れた場合、規制手段150が作動し駆動モータ128の回転駆動力(言い換えれば、回転数)を可変とする。
具体的には、PWM制御部202のCPU205において、歩行ベルト120の移動速度を設定値(例えば、3.0km/h)に制御するためのPWMパルス信号が出力され、このPWMパルス信号は、ハーフブリッジゲートドライバ207を介して、半導体スイッチング素子203bのゲートへ入力され、半導体スイッチング素子203bをスイッチングするようになる。このPWM制御により、歩行ベルト120の移動速度は設定値を維持するようになる。
【0042】
しかしながら、歩行者Uの歩行により、歩行ベルト120の移動速度が遅くなる状況(例えば、2.8km/h)となった場合、歩行ベルト120の移動速度(遅くなった移動速度)は速度計210を介して計測され、実測された速度がCPU205へと入力される。CPU205においては、歩行ベルト120の移動速度を増速させ設定速度へと戻すために必要な分だけパルス幅が広くなったPWMパルス信号が出力され、このPWMパルス信号は、ハーフブリッジゲートドライバ207を介して、半導体スイッチング素子203bのゲートへ入力され、半導体スイッチング素子203bをスイッチングする。この時、
図8の一点鎖線で示すように制御電流(加速電流)が流れることとなる。このPWM制御により、整流部201からの出力が所定の電圧に制御されて駆動モータ128へ供給され、歩行ベルト120の移動速度は設定値を維持するようになる。
【0043】
一方で、歩行者Uの歩行により、歩行ベルト120の移動速度が速くなる状況(例えば、3.2km/h)となった場合、歩行ベルト120の移動速度(速くなった移動速度)は速度計210を介して計測され、実測された速度がCPU205へと入力される。CPU205においては、歩行ベルト120の移動速度を減速させ設定速度(設定値)へと戻すために必要な分だけパルス幅が狭くなったPWMパルス信号が出力され、このPWMパルス信号は、ハーフブリッジゲートドライバ207を介して、半導体スイッチング素子203bのゲートへ入力され、半導体スイッチング素子203bをスイッチングする。
【0044】
同時に、PWMパルス信号を反転器206で反転させたPWM反転パルス信号も出力され、このPWM反転パルス信号は、ハーフブリッジゲートドライバ207を介して、半導体スイッチング素子203aのゲートへ入力され、半導体スイッチング素子203aをスイッチングするようになる。半導体スイッチング素子203aがスイッチングされることで、駆動モータ128は短絡状態となり、この状態で駆動モータ128を回転させようとすると、当該駆動モータ128に回生作用が働く(逆起電力が発生する)。このとき、
図8の破線で示すように制御電流(ブレーキ電流)が流れることとなる。この回生作用が使用者Uにとって負荷となり、歩行ベルト120を速く動かそうとする動作に対してブレーキとして機能する。つまり、歩行ベルト120の移動速度が設定値へと戻るようになる。
【0045】
このように、PWMパルス信号のパルス幅を狭めると共にPWM反転パルス信号のパルス幅を広げることで、使用者Uが歩行ベルト120上を歩行する際に、駆動モータ128による駆動量以上に歩行ベルト120が後方側へ移動することが規制される。
なお、歩行ベルト120の移動速度が遅くなり、パルス幅が広くなったPWMパルス信号が出力される場合にも、当該PWMパルス信号を反転器206で反転させたPWM反転パルス信号が出力され、このPWM反転パルス信号は、ハーフブリッジゲートドライバ207を介して、半導体スイッチング素子203aのゲートへ入力される。しかしながら、PWM反転パルス信号のパルス幅は狭いものとなっているため、ブレーキ作用は殆ど作用しない。
【0046】
ところで、駆動モータ128を回転させ歩行ベルト120を駆動している際に、駆動モータ128に過電流が流れた場合には、半導体スイッチング素子203bのソース側から過電流防止回路208へ流れ込む。過電流防止回路208でこの過電流を検知した場合には、過電流防止回路208はLow(=0)を出力し、この出力0とCPU205から出力されたPWMパルス信号とが加算器209でAND処理される。加算器209の出力は、PWMパルス信号が如何なるものであってとしても出力0となるため、半導体スイッチング素子203bはOFF、半導体スイッチング素子203bはON状態となって、歩行ベルト120へのブレーキ作用が常に働くようになる。
【0047】
以上述べた規制手段150の作用により、歩行ベルト120は略一定のスピードで動くものとなって、大きな振動や騒音を発生することなく、短い運動時間でも有効な運動量を確保することができる。
なお、第2実施形態の他の構成、奏する作用効果は、第1実施形態と略同様であるため、詳細な説明は省略する。
[第3実施形態]
次に、本発明の実施の第3実施形態に係る歩行運動機100について説明する。
【0048】
第3実施形態の歩行運動機100は、第2実施形態と略同じ歩行運動機100の外観、メカ構成を有している。しかしながら、第3実施形態の歩行運動機100に備えられた制御部200(規制手段150)の構成が第2実施形態とは異なるものとなっている。
図9は、第3実施形態のブロック図を示したものである。
図9に示す如く、制御部200は、外部から供給される商用電力(交流)を直流に変換し、駆動モータ128へ供給する整流部201と、駆動モータ128の回転駆動力をPWMパルス信号によって制御するPWM制御部202とで構成されている。
【0049】
整流部201は、ダイオード204をブリッジ接続して構成されている。
PWM制御部202は、MOS−FETなどの半導体スイッチング素子203と、パルス信号のパルス幅を所望の幅に変更するCPU205と、このパルス信号を反転させる反転器206と、を有している。加えて、ハーフブリッジゲートドライバ207と、過電流防止回路208とが備えられている。
【0050】
さらに、第3実施形態の制御部200は、駆動モータ128のプラス側配線と、駆動モータ128の0V側配線とを繋ぐ配線を有し、この配線上には抵抗300が配備されるものとなっている。この抵抗300が奏する作用効果は以下の通りである。
歩行者Uの歩行時に、歩行ベルト120の移動速度が設定値から一定以上外れた場合、制御部200が作動し駆動モータ128の回転駆動力(言い換えれば、回転数)を可変とする。
【0051】
この状況は、第2実施形態で説明したと同じであり、歩行者Uの歩行により、例えば、歩行ベルト120の移動速度が速くなる状況(例えば、3.2km/h)となった場合、歩行ベルト120の移動速度(速くなった移動速度)は速度計210を介して計測され、実測された速度がCPU205へと入力される。CPU205においては、歩行ベルト120の移動速度を減速させ設定速度(設定値)へと戻すために必要な分だけパルス幅が狭くなったPWMパルス信号が出力され、このPWMパルス信号は、ハーフブリッジゲートドライバ207を介して、半導体スイッチング素子203bのゲートへ入力され、半導体スイッチング素子203bをスイッチングする。
【0052】
同時に、PWMパルス信号を反転器206で反転させたPWM反転パルス信号も出力され、このPWM反転パルス信号は、ハーフブリッジゲートドライバ207を介して、半導体スイッチング素子203aのゲートへ入力され、半導体スイッチング素子203aをスイッチングするようになる。半導体スイッチング素子203aがスイッチングされることで、駆動モータ128は短絡状態となり、この状態で駆動モータ128を回転させようとすると、当該駆動モータ128に回生作用が働く(逆起電力が発生する)。このとき、
図9の破線で示すように制御電流(ブレーキ電流)が流れることとなる。この回生作用が使用者Uにとって負荷となり、歩行ベルト120を速く動かそうとする動作に対してブレーキとして機能する。このような状況下で発生した逆起電力は、制御部200内の電子部品、例えば、半導体スイッチング素子203や図示していないコンデンサなどに加わることとなり、最悪、係る電子部品を破壊してしまう虞すらある。
【0053】
そこで、第3実施形態では、駆動モータ128に取り付けられた抵抗300により、発生した逆起電力を消費することとし、制御部200内の電子部品への悪影響を防ぐようにしている。
逆起電力を消費することにより抵抗300で発生した熱を効果的に放散するためには、当該抵抗300を歩行運動機100の下部水平フレーム106等に取り付け、駆動モータ128に取り付けたファンなどによる風で冷却するとよい。
【0054】
なお、この抵抗300を設置することにより、駆動モータ128の入力端は、クローズ状態に近い状態(所定の抵抗値Rを有する閉回路)となる。すなわち、完全なショート状態ではないものの、抵抗300の抵抗値Rをもって短絡した状況下となる。そのため、この抵抗300を配備することで、常にある程度の逆起電力の発生、それに伴う歩行ベルト120へのブレーキ作用を発現させることができる。そのため、抵抗300の抵抗値Rを適切に設定することで、
図10に示すように、半導体スイッチング素子203aを不要とすることもでき、コストダウンを図ることが可能となる。
【0055】
さらに、第3実施形態の制御部200は、駆動モータ128のプラス側配線と、駆動モータ128の0V側配線とを結ぶ配線を有し、この配線は、リレースイッチ301によりON,OFF可能とされている。このリレースイッチ301の働き、奏する作用効果は以下の通りである。
歩行ベルト120上を歩行者Uが歩行している状況を考える。このとき、例えば、電源供給用のコンセントが急に抜けたり、商用電源の供給が停止(停電)したりしたとする。また、駆動モータ128に対する負荷が増大し、ヒューズが切断したり安全回路が作動したとする。これらの状況下では、
図9のブロック図から明らかなように、駆動モータ128の入力端は、オープン状態となって、それまで作用していた逆起電力が全く作用しなくなる。その場合、歩行ベルト120が空転状況となり、歩行者Uの正常且つ安全な歩行が阻害されることとなる。
【0056】
そこで、商用電力が途絶えたり、ヒューズが切断したり、安全回路が作動した際には、リレースイッチ301を作動させリレースイッチ301の接点をA側へ接続し、駆動モータ128の入力端をクローズ状態とするようにする。
具体的には、リレースイッチ301として「電源連動型のリレースイッチ」を採用し、商用電源が供給されているときには、リレースイッチ301の接点をB側へ接続し、駆動モータ128の入力端をオープンとしておく。商用電源の非供給時には、リレースイッチ301を作動させリレースイッチ301の接点をA側へ接続し、駆動モータ128の入力端をクローズ状態とするようにする。すると、駆動モータ128に対し、最大の逆起電力が発生する状況下となり、歩行ベルト120はブレーキ力が付与された状況となって、空転が回避されとなり、歩行者Uは、安全にその歩行を止めることができるようになる。
【0057】
また、CPU205からの信号により、リレースイッチ301を動作させるように構成することは非常に好ましい。この構成下において、歩行ベルト120の停止時には、リレースイッチ301を作動させリレースイッチ301の接点をA側へ接続し、駆動モータ128の入力端をクローズ状態とし、駆動モータ128のブレーキ作用を働かせるようにしておく。その後、歩行ベルト120が少しでも動き出したら、リレースイッチ301の接点をB側へ接続し、駆動モータ128の入力端をオープンとし、ブレーキ作用を解除する。こうすることで、歩行者のより安全な歩行動作を確保することができるようになる。
【0058】
なお、第3実施形態の他の構成、奏する作用効果は、第2実施形態と略同様であるため、詳細な説明は省略する。
以上開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。