(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972216
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】弱酸性透明洗浄料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/44 20060101AFI20160804BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20160804BHJP
A61K 8/42 20060101ALI20160804BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20160804BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
A61K8/44
A61K8/34
A61K8/42
A61Q5/02
A61Q19/10
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-99801(P2013-99801)
(22)【出願日】2013年5月10日
(65)【公開番号】特開2014-218470(P2014-218470A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2015年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135324
【氏名又は名称】株式会社ノエビア
(72)【発明者】
【氏名】山村 野乃
【審査官】
▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−245323(JP,A)
【文献】
特開2012−158586(JP,A)
【文献】
特開2000−273500(JP,A)
【文献】
特開平11−189784(JP,A)
【文献】
特開2011−207801(JP,A)
【文献】
特開2005−008535(JP,A)
【文献】
特開2007−238572(JP,A)
【文献】
特開2001−278727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
C11D 1/00−19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)〜(E)を
(A)長鎖アシル中性アミノ酸塩 2〜20質量%
(B)長鎖脂肪酸アミドプロピルベタイン 1〜20質量%
(C)長鎖脂肪酸ジエタノールアミド 0.3〜6質量%
(D)pH調整剤 0.01〜1質量%
(E)エタノール、フェノキシエタノールから選択される1種又は2種
0.1〜5質量%
含有する弱酸性透明洗浄料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泡立ち、泡質、泡切れ、洗い流し後の感触等の使用感が良好で、且つ低温での白濁、おりや沈殿物の発生などが認められない、弱酸性透明洗浄料に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、主として手や身体の洗浄用として、ポンプ式容器や泡吐出型容器等に収納される液状洗浄料が普及してきた。ここで従来、皮膚洗浄料において、脂肪酸石鹸(アルカリ性)が、起泡力および洗浄力等に優れることから多用されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)が、これらは一方で、皮膚への刺激性や、洗浄後の肌のつっぱり感といった問題を有している。これは、人の肌が本来弱酸性であるため、これらアルカリ性の石鹸で洗うと、肌のpHが一時的にアルカリ性に傾き、洗浄後肌が弱酸性に戻るまでに一定の時間がかかるため肌に対して負担が大きい事や、洗浄による過度の脱脂によるためである。
【0003】
またN−長鎖アシル中性アミノ酸またはその塩は、低刺激性で泡立ち、すすぎ性に優れた洗浄剤として、皮膚洗浄料に広く使用されてきた。(特許文献4、5、6、7)
【0004】
さらに、長鎖脂肪酸アミドプロピルベタインを洗浄料に配合する検討も数多くなされている(特許文献8〜12参照)。
【0005】
洗浄料に非イオン性界面活性剤の一種である脂肪酸アルカノールアミド系界面活性剤は洗浄剤に配合することにより起泡力や洗浄力、安定性、感触の良さ、粘度を高める効果を奏することが知られている(特許文献8、特許文献12参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−12599号公報
【特許文献2】特開2007−077296号公報
【特許文献3】特開2007−326820号公報
【特許文献4】特開平08−053693号公報
【特許文献5】特開2000−143497号公報
【特許文献6】特開2001−19632号公報
【特許文献7】特開2002−265352号公報
【特許文献8】特開2012−1438号公報
【特許文献9】特開2012−214391号公報
【特許文献10】特開2009−256252号公報
【特許文献11】特開2006−028048号公報
【特許文献12】特開2010−248116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの成分を併用して配合した場合、低温での白濁が認められ、安定性の良好な弱酸性透明洗浄料はこれまで得られていない。したがって、本発明においては、泡立ち、泡質、泡切れ、洗い流し後の感触等の使用感が良好で、且つ低温での白濁、おりや沈殿物の発生が認められない、弱酸性透明洗浄料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
下記の(A)〜(E)
(A)長鎖アシル中性アミノ酸塩 2〜20質量%
(B)長鎖脂肪酸アミドプロピルベタイン 1〜20質量%
(C)長鎖脂肪酸ジエタノールアミド 0.3〜6質量%
(D)pH調整剤 0.01〜1質量%
(E)アルコール類 0.1〜5質量%
を含有する弱酸性透明洗浄料を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の弱酸性透明洗浄料は、低温での白濁、おりや沈殿物の発生を防止でき、経時安定性が良好であるという効果を発揮する。また、成分(A)〜(D)を併用して用いることにより、泡立ち、泡質、泡切れ、洗い流し後の感触等の使用感が、良好であるという効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を実施するための形態を説明する。
【0011】
本発明の弱酸性透明洗浄料は、(A)〜(E)
(A)長鎖アシル中性アミノ酸塩 2〜20質量%
(B)長鎖脂肪酸アミドプロピルベタイン 1〜20質量%
(C)長鎖脂肪酸ジエタノールアミド 0.3〜6質量%
(D)pH調整剤 0.01〜1質量%
(E)アルコール類 0.1〜5質量%
を含有することを特徴とする。
【0012】
本発明の弱酸性透明洗浄料に配合する(A)長鎖アシル中性アミノ酸塩は、N−アシルアミノ酸系界面活性剤として公知の化合物であり、アシル化部分(RCO−)の炭素数については、10〜22が好ましく、より好ましくは12〜18である。炭素数が10未満であると製剤の泡立ちが低下し、炭素数が22を越えると、製剤の泡切れが低下する。また、直鎖、分岐及び飽和、不飽和に関わらず使用することができるが、直鎖の方が泡立ちの点で好ましく、飽和の方が製剤の安定性の点で好ましい。特に好ましいのは、炭素数が12の直鎖アシル基及びこれを主成分とするヤシ油脂肪酸アシル基である。
【0013】
アミノ酸部位については、アラニン,グリシンなどが好ましく、具体的には、N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム,N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンナトリウム,N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシントリエタノールアミン,N−ラウロイルグリシンカリウム,N−ラウロイルグリシンナトリウム,N−ラウロイルグリシントリエタノールアミン,N−ステアロイルグリシンカリウム,N−ステアロイルグリシンナトリウム,N−ステアロイルグリシントリエタノールアミン,N−ヤシ油脂肪酸アシル−DL−アラニンカリウム,N−ヤシ油脂肪酸アシル−DL−アラニンナトリウム,N−ヤシ油脂肪酸アシル−DL−アラニントリエタノールアミン,N−ラウロイル−DL−アラニンカリウム,N−ラウロイル−DL−アラニンナトリウム,N−ラウロイル−DL−アラニントリエタノールアミン,N−ステアロイル−DL−アラニンカリウム,N−ステアロイル−DL−アラニンナトリウム,N−ステアロイル−DL−アラニントリエタノールアミン,N−ヤシ油脂肪酸メチル−β−アラニンカリウム,N−ヤシ油脂肪酸メチル−β−アラニンナトリウム,N−ヤシ油脂肪酸メチル−β−アラニントリエタノールアミン,N−ラウロイルメチル−β−アラニンカリウム,N−ラウロイルメチル−β−アラニンナトリウム,N−ラウロイルメチル−β−アラニントリエタノールアミン,N−ステアロイルメチル−β−アラニンカリウム,N−ステアロイルメチル−β−アラニンナトリウム,N−ステアロイルメチル−β−アラニントリエタノールアミンなどが例示され、これらより1種または2種以上を選択して用いる。N−アシル中性アミノ酸におけるアミノ酸としては、D−体,L−体及びDL−体のいずれを用いてもよい。本発明におけるN−アシル中性アミノ酸塩はそれぞれ単独でも、又は二種以上を併用して用いても良い。またN−アシル中性アミノ酸塩を弱酸性透明洗浄料に配合する場合、水溶液として市販されているものを利用することもできる。
【0014】
N−アシル中性アミノ酸塩の配合量は、弱酸性透明洗浄料全量に対して、2〜20質量%である。2質量%未満の配合では充分な洗浄力が得られない場合がある。20質量%を超えると透明の外観を保てない場合がある。
【0015】
本発明の弱酸性透明洗浄料に配合する(B)長鎖脂肪酸アミドプロピルベタインは、アミドベタイン型両性界面活性剤であり、脂肪酸、脂肪酸エステル又は植物油とジメチルプロピレンジアミンから脂肪酸アミドアミンを合成し、モノクロロ酢酸ナトリウムを反応させて得られる脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインである。
【0016】
脂肪酸の炭素数は8〜22の範囲であり、飽和、不飽和、直鎖、分岐鎖のいずれでも良い。すなわち、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸といった単体脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸といった混合脂肪酸が該当する。本発明における長鎖脂肪酸アミドプロピルベタインはそれぞれ単独でも、又は二種以上を併用して用いても良い。また長鎖脂肪酸アミドプロピルベタインを弱酸性透明洗浄料に配合する場合、水溶液として市販されているものを利用することもできる。
【0017】
成分(B)長鎖脂肪酸アミドプロピルベタインは、弱酸性透明洗浄料全量に対し、1〜20質量%配合する。1質量%未満の配合では泡立ち及び泡の安定性が低下し、洗浄後の肌のつっぱり感が大きくなる場合がある。20質量%を超えると透明な外観を保てない場合がある。
【0018】
本発明の弱酸性透明洗浄料に配合する(C)長鎖脂肪酸ジエタノールアミドとしては、特に限定されないが好ましくは総炭素数9〜26のもの、さらに総炭素数が12〜22の脂肪酸ジエタノールアミドが使用感等の上で好ましい。具体例として、ラウリン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド等が挙げられる。本発明における長鎖脂肪酸ジエタノールアミドはそれぞれ単独でも、又は二種以上を併用して用いても良い。
【0019】
(C)長鎖脂肪酸ジエタノールアミドは、弱酸性透明洗浄料全量に対し、0.3〜6質量%配合する。0.3質量%未満の配合では透明な外観を保てなくなる場合がある泡質やすすぎ感触が損なわれる場合がある。6質量%を超えて配合すると泡質やすすぎ感触が損なわれる場合がある。
【0020】
本発明の弱酸性透明洗浄料に配合する(D)pH調整剤としては、特に限定されないが好ましくは乳酸、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、及びこれらの塩などが例示される。pH調整剤はそれぞれ単独でも、又は二種以上を併用して用いても良い。
【0021】
(D)pH調整剤は、洗浄料のpHを4.5〜6.5程度の適度な弱酸性のpHを保つために必要な量、すなわち弱酸性透明洗浄料全量に対し、0.01〜1質量%配合する。
【0022】
本発明の弱酸性透明洗浄料に配合する(E)アルコール類としては、特に限定されないが、エタノール、フェノキシエタノールから選択される1種又は2種を用いることが好ましい。アルコール類は弱酸性透明洗浄料全量に対し、0.1〜5質量%配合することが好ましい。5質量%を超えて配合すると、起泡力が低下する場合がある。0.1質量%未満の配合では、透明な外観を保てなくなる場合がある。
【0023】
本発明の弱酸性透明洗浄料には、上記(A)〜(E)に加えて、多価アルコールを配合することが好ましい。多価アルコールとしては、ポリエチレングリコール,プロピレングリコール,ジプロピレングリコール,1,3−ブチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン,デカグリセリン等のポリグリセリン類、グリセリンモノパルミチルエーテル(キミルアルコール),グリセリンモノステアリルエーテル(バチルアルコール),グリセリンモノオレイルエーテル(セラキルアルコール)等のグリセリンモノエーテル類、エリスリトール,スレイトール,ペンタエリスリトール,アドニトール,アラビトール,キシリトール,ソルビトール,マンニトール,ガラクチトール,イノシトール,マルチトール等の糖アルコール類、ブドウ糖,ショ糖等の糖類が挙げられ、これらより1種又は2種以上を選択して用いることができる。これらの多価アルコールの中でも、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ショ糖から選択される1種又は2種以上を用いることが好ましい。
【0024】
これら多価アルコールの弱酸性透明洗浄料における含有量は、20質量%未満であり、好ましくは1〜20質量%、さらに好ましくは1〜20質量とする。20質量%以上配合すると使用時のべたつきの原因となったり、洗浄力が低下する場合がある。
【0025】
本発明の弱酸性透明洗浄料は、常温で透明な液状若しくはゲル状の外観を呈する。
【0026】
本発明において透明とは、30mLのガラス製マヨネーズ瓶に洗浄料を静かに注ぎ、ガラス越しにフォントMSゴシック、サイズ10の文字が明瞭に見えること、また目視にて沈殿物、白濁やおりが発生していないこと、を言う。
【0027】
本願発明の弱酸性透明洗浄料には、上述の必須成分、任意成分の他に、必要に応じて通常洗浄料に配合される、水性成分、油性成分、保湿剤、色素、界面活性剤、紫外線吸収剤、増粘剤、薬剤、香料、高分子物質、防菌防微剤、アルコール類、生体由来成分等を適宜配合することができる。
【0028】
本発明の弱酸性透明洗浄料は、例えば、洗顔料、ボディソープ、ハンドソープ等として適用することができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。なお、配合量は特に断りのない限り質量%である。
【0030】
まず、調製した洗浄料の評価方法を説明する。
【0031】
[安定性(25℃)(5℃)]
調製した洗浄料を25℃若しくは5℃恒温槽にて1ヶ月静置し、状態の確認を目視で行った。評価は、30mLのガラス製マヨネーズ瓶に洗浄料を静かに注ぎ、ガラス越しにフォントMSゴシック、サイズ10の文字が明瞭に見えるかどうか、また沈殿物、おり、白濁が発生していないかどうかを目視で判断し、明瞭に見え沈殿物、おり、白濁が発生していないものを「○」、見えづらい若しくは沈殿物、おり、白濁が発生しているものを「×」とした。
【0032】
[泡立ち、泡質、泡切れ]
泡立ち、泡質、泡切れについて、官能評価専門調査員3名が実際に使用してそれぞれ評価を行い、合議により良好「○」、やや良好「△」、不良「×」として評価した。
【0033】
[きしみ]
ヘアシャンプーにおいては、きしみについて、官能評価専門調査員3名が実際に使用してそれぞれシャンプー中の毛髪のきしみ感の評価を行い、合議によりきしまない「○」、ややきしむ「△」、きしむ「×」として評価した。
【0034】
[使用後感]
使用後感について、官能評価専門調査員3名が実際に使用してそれぞれ評価を行い、合議により、しっとりする「○」、ややしっとりする「△」、乾燥する「×」として評価した。
【0035】
表1、2に示す処方にて、ボディソープを調製し、評価を行った。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
表1に示したとおり、実施例1のボディシャンプーは、エタノールを添加することにより、低温での白濁が防止でき、使用感の良好なものであった。また、併用する界面活性剤の量目が範囲外の比較例2〜7においては、使用感に悪影響を及ぼしたり、透明な性状を保つことができなかった。
【0039】
[実施例2] ボディシャンプー
(1)精製水 100あわせ
(2)ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム 9.0
(3)イステアラミドプロピルベタイン 9.0
(4)ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 3.5
(5)クエン酸 0.3
(6)グリセリン 5.0
(7)フェノキシエタノール 0.7
(8)グリチルリチン酸ジカリウム 0.02
【0040】
[実施例3] ポンプフォーマー容器入り泡洗顔
(1)精製水 100あわせ
(2)ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム 3.0
(3)イステアラミドプロピルベタイン 3.0
(4)ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 1.0
(5)クエン酸 0.1
(6)グリセリン 3.0
(7)エタノール 0.5
(8)サリチル酸 0.05
【0041】
[実施例4] シャンプー
(1)精製水 100あわせ
(2)ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム 5.0
(3)コカミドプロピルベタイン 5.0
(4)ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 4.0
(5)ポリクオタニウム−52 0.05
(6)ココイルメチルアラニンナトリウム 4.0
(7)クエン酸 0.3
(8)1,3−ブチレングリコール 5.0
(9)フェノキシエタノール 0.5
(10)エタノール 1.0
(11)ピロクトンオラミン 0.05
【0042】
【表3】