特許第5972221号(P5972221)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5972221
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】多入力多出力システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   H04J 99/00 20090101AFI20160804BHJP
   H04B 7/04 20060101ALI20160804BHJP
   H04J 11/00 20060101ALI20160804BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20160804BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20160804BHJP
【FI】
   H04J15/00
   H04B7/04
   H04J11/00 Z
   H04W16/28 130
   H04W84/12
【請求項の数】7
【全頁数】44
(21)【出願番号】特願2013-118247(P2013-118247)
(22)【出願日】2013年6月4日
(62)【分割の表示】特願2011-75944(P2011-75944)の分割
【原出願日】2004年11月4日
(65)【公開番号】特開2013-240058(P2013-240058A)
(43)【公開日】2013年11月28日
【審査請求日】2013年7月4日
【審判番号】不服2015-12011(P2015-12011/J1)
【審判請求日】2015年6月24日
(31)【優先権主張番号】60/517,445
(32)【優先日】2003年11月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】10/981,145
(32)【優先日】2004年11月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595020643
【氏名又は名称】クゥアルコム・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】QUALCOMM INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100194814
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 元宏
(72)【発明者】
【氏名】キンファン・スン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン−ジョン・チョイ
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー エム.・ギルバート
(72)【発明者】
【氏名】アルダヴァン マレキ・テヘラニ
【合議体】
【審判長】 大塚 良平
【審判官】 菅原 道晴
【審判官】 中野 浩昌
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−304216(JP,A)
【文献】 Jianhua Lie et al, A MIMO system with backward compatibility for OFDM based WLANs, 2003年6月15日, pp.130−134
【文献】 Yusuke ASAI et al, Precise AFC scheme for performance improvement of SDM−COFDM, Vehicular Technology Conference, 2002.Proceedings.VTC2002−Fall.2002 IEEE 56th, 2002年 , vol.3, pp.1408−1412
【文献】 Alexandre Ribeiro Dias et al, MTMR channel estimation and pilot design in the context of space−time block coded OFDM−based WLANs, Proceedings of IST Mobile and Wireless Telecommunications Summit, 2002年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04J1/00-1/20,4/00-15/00, H04L5/00-5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多入力多出力(MIMO)パケット用の時分割トレーニングパターンを送信するための方法であって、
レガシーヘッダの受信のための自動利得制御を定める第1の複数の短シンボルを含む前記レガシーヘッダを送信することと、
MIMOヘッダを送信することと
を備え、前記MIMOヘッダは、
前記MIMOヘッダの受信のための自動利得制御を容易にする第2の複数の短シンボルと、
複数の長シンボルと、
を備え、
前記MIMOヘッダを送信することは、複数のアンテナを用いて前記第2の複数の短シンボルおよび前記複数の長シンボルを送信することを備え、前記第2の複数の短シンボルは、予め定めた短ビンの組の間で、少なくとも短ビンの第1の組および短ビンの第2の組に分割され、前記複数の長シンボルは、予め定めた長ビンの組の間で、少なくとも長ビンの第1の組および長ビンの第2の組に分割され、前記複数のアンテナの第1のアンテナは、前記短ビンの第1の組に関連付けられ前記複数のアンテナの第2のアンテナは、前記短ビンの第2の組に関連付けられ、前記第1のアンテナは、前記第2のアンテナによって用いられる前記長ビンの第1の組および前記長ビンの第2の組の第2の順序とは互いに異なる、前記長ビンの第1の組および前記長ビンの第2の組の第1の順序を用いる、方法。
【請求項2】
多入力多出力(MIMO)パケット用の時分割トレーニングパターンを送信するための方法であって、
複数のアンテナを用いて第1の短シンボルを送信することであって、前記第1の短シンボルは、予め定めた短ビンの組の間で、少なくとも短ビンの第1の組および短ビンの第2の組に分割され、前記複数のアンテナの第1のアンテナは、前記短ビンの第1の組に関連付けられ、前記複数のアンテナの第2のアンテナは、前記短ビンの第2の組に関連づけられている、第1の短シンボルを送信することと、
前記複数のアンテナによって第1の長シンボルを送信することであって、前記第1の長シンボルは、予め定めた長ビンの組の間で、少なくとも長ビンの第1の組および長ビンの第2の組に分割され前記第1のアンテナは、前記第2のアンテナによる送信に用いられる前記長ビンの第1の組および前記長ビンの第2の組の第2の順序とは互いに異なる、前記長ビンの第1の組および前記長ビンの第2の組の第1の序を用いて送信する、第1の長シンボルを送信することと、
を含み、前記第1の短シンボルは、MIMOパケットのための自動利得制御のために用いられ、前記MIMOパケットは、前記第1の短シンボルおよび前記第1の長シンボルを備える、方法。
【請求項3】
前記第1の長シンボルは、前記複数のアンテナにより実質的に同時に送信され、
前記第1の長シンボルは、MIMOチャネル推算のために用いられる、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記第1の短シンボルは、レガシーSIGNALシンボルの送信のあと前記第1のアンテナおよび前記第2のアンテナによって送信され
記第1の長シンボルは、前記第1のアンテナおよび前記第2のアンテナによって実質的に同時に送信され
記第1のアンテナは、前記長ビンの第2の組を用いる前に前記長ビンの第1の組を用いて送信し、前記第2のアンテナは、前記長ビンの第1の組を用いる前に前記長ビンの第2の組を用いて送信する、
請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記第1のアンテナおよび前記第2のアンテナによって前記第1の短シンボルおよび前記第1の長シンボルのあと実質的に同時にMIMOに関連づけられたSIGNALシンボルを送信することをさらに含む、請求項3記載の方法。
【請求項6】
第2の短シンボルと、
第2の長シンボルと、
レガシーSIGNALシンボルと
を送信することをさらに含み、前記第2の短シンボルは、レガシーヘッダのための自動利得制御のために用いられ、前記レガシーヘッダは、前記第2の短シンボル、前記第2の長シンボル、および前記レガシーSIGNALシンボルを含み、前記レガシーヘッダは、MIMOヘッダの前に送信される、請求項3記載の方法。
【請求項7】
前記複数の長シンボルは第2の複数の長シンボルであり、前記レガシーヘッダはレガシーデバイスチャネル推算に用いる第1の複数の長シンボルを含み、前記第2の複数の長シンボルはMIMOデバイスチャネル推算に用いられる、請求項1記載方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
この出願は2003年11月4日提出の米国特許仮出願第60/517,445号の優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
この発明は無線通信環境における多入力多出力(MIMO)システムに関し、レガシーデバイスとの後向き互換性の確保を容易にするMIMO方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)用の通信システムの設計はIEEE802.11に規定された一群の規格に基づいている。例えば、802.11a規格は5GHz帯における54Mbpsまでの範囲を規定し、802.11g規格は2.4GHz帯における54Mbpsまでの範囲を規定している。これら802.11aおよび802.11g両規格とも直交周波数分割多重化(OFDM)の符号化手法を用いる。
【0004】
重要なことは、これら両規格ともデータストリームの送受信をどの時点でも一つずつ行うように規定していることである。例えば、図1に単純化して示したシステム100では、送信機101はどの時点でも一つの出力を生ずることができ、受信機102はどの時点でも一つの信号だけを信号処理できる。すなわち、上記システム100は単一入力単一出力を特徴とする。
【0005】
マルチパス、およびさらに詳しくいうとマルチパスを原因とするフェーディング(送信電波信号を伝搬経路内の物体が反射することによる)その他の現象に対処するために、無線通信システムは多様な手法を採用できる。それら手法の一つは、切換ダイバーシティ、すなわち送信機や受信機が複数のアンテナを選択的に切換え利用するダイバーシティである。例えば、図2に簡略化して示したシステム200では、送信機101は信号の送信にアンテナ201Aまたは201Bを(スイッチ203により)選択でき、受信機102はアンテナ202Aまたは202Bからの信号を(スイッチ204により)選択して信号処理できる。すなわち、このシステム200はアンテナ切換構成を特徴とする。
【0006】
図3に簡略化して示した多入力多出力(MIMO)システム300では、複数のアンテナで同時並行的に送信し、複数のアンテナで同時並行的に受信することができる。より詳しくいうと、送信機301は、アンテナ302Aから(送信機チェーン303Aを用いて)およびアンテナ302Bから(送信機チェーン303Bを用いて)同時並行的に複数の信号を送信できる。同様に、受信機304は、アンテナ305Aから(受信機チェーン306Aを用いて)およびアンテナ305Bから(受信機チェーン306Bを用いて)同時並行的に複数の信号を受信できる。
【0007】
MIMOシステムには多数の種類がある。例えば、MIMO−AGは802.11aおよび802.11gの両規格に互換性のあるMIMOシステムである。一方、MIMO−SMは、空間多重化機能付きのMIMOシステムである。この明細書のこれ以下の説明では「MIMO」の表記をMIMO−SMの意味で用いる。
【0008】
特定の実施例に応じて複数のアンテナを用いると、交信可能距離範囲を広げたり、所定距離範囲についてのデータ伝送速度を高めたりすることができる。図4には、多様なアンテナ構成について相対距離とデータ伝送速度中央値との関係を例示している。曲線401は単一アンテナ構成の場合を表し、曲線402は切換ダイバーシティアンテナ構成の場合を表し、曲線403はMIMOアンテナ構成の場合を表す。相対距離2と4との間では、MIMOアンテナ構成の場合のデータ伝送速度中央値が単一アンテナ構成および切換ダイバーシティアンテナ構成の場合のデータ伝送速度中央値よりも著しく大きくなっていることに注目されたい。例えば、相対距離3の点、すなわち通常の家庭空間404の中の最大相対距離3の点では、MIMOアンテナ構成の場合のデータ伝送速度中央値(50Mbps)が、単一アンテナ構成の場合の上記中央値(18Mbps)およびスイッチ切換ダイバーシティアンテナ構成の場合の上記中央値(33Mbps)よりも著しく大きくなる。
【0009】
また、MIMOシステムは互いに相異なる周波数についての信号対雑音比(SNR)の差を最小にすることができる点で有利である。多様なアンテナ構成について広い周波数範囲にわたるSNRの値、すなわち第1のアンテナの場合のSNR501(点線の波形で表示)、第2のアンテナの場合のSNR502(鎖線の波形で表示)、および第1・第2アンテナ同時利用の場合のSNR503(実線の波形で表示)を図5に例示する。周波数ビン0乃至60にわたってSNR501および502の両方とも大幅に変動することに注目されたい。これと対照的に、第1および第2のアンテナの両方を同時に用いたMIMOについては、SNR曲線503に示すとおり、互いに異なる周波数ビンにわたるSNRのばらつきを最小にすることができ(一つのチャネルについての変動をもう一つのチャネルについての変動で補償する)、受信機チェーンや送信機チェーンにおけるSNRのより効果的な補償を可能にする。
【0010】
MIMOシステム300(図3)においては、送信機301からの複数のデータストリーム(例えばデータパケット)の受信および復号化に複数個のチェーンを用いる。しかし、レガシー802.11a/gデバイスには複数データストリームの復号化が不可能であるために、その種のレガシーデバイスはMIMOパケットの送信の完了のための送信によってMIMOパケットを「踏みつける」ことがあり得る。
【0011】
【特許文献1】USP 6 636 568
【特許文献2】USP 6 611 231
【特許文献3】USP 6 556 173
【特許文献4】USP 6 504 885
【特許文献5】USP 6 504 506
【特許文献6】USP 6 493 399
【特許文献7】USP 6 493 331
【特許文献8】USP 6 473 467
【発明の概要】
【0012】
したがって、レガシーデバイスがMIMOパケットの長さをデコードし、そのパケットの期間中は送信を止めることができるようにするMIMOシステムおよび方法が必要である。また、MIMOパケットの送信をより効率的に行う方法が必要になっている。
【0013】
多入力多出力(MIMO)システムは多アンテナで同時並行的に送信できるとともに多アンテナで同時並行的に受信できる。レガシー802.11a/gデバイスは、複数のデータストリームを復号化できないので、MIMOパケットの送信の完了の前に送信を行うことによってMIMOパケットを「踏みつける」ことがあり得る。したがって、レガシーデバイスがMIMOパケットの長さをデコードしそのパケットの期間中は送信を差し控えられるようにするMIMOシステムおよび方法をここに提供する。これらのMIMOシステムおよび方法はMIMOパケットの効率的送信のために最適化する。
【0014】
MIMOパケットについて時分割トレーニングパターンを提供する。このパターンでは、第1のアンテナが短シンボル、第1の長シンボル、およびレガシーSIGNALシンボルをこの順に送信できる。このレガシーSIGNALシンボルの送信のあと第2のアンテナが第2の長シンボルを送信できる。この第2の長シンボルの送信のあと、第1および第2のアンテナがSIGNALシンボル(MIMOデータに伴う)をほぼ同時並行的に送信できる。
【0015】
MIMOパケットについてのもう一つのパターンを提供する。このパターンでは、短シンボルを第1のアンテナおよび第2のアンテナで送信できる。その短シンボルは予め定めた短ビンのセットに分割できる。上記第1のアンテナをそれら短ビンの第1のセットに関連づけ、第2のアンテナをそれら短ビンの第2のセットに関連づける。長シンボルは、第2の短シンボルの送信のあと第1および第2のアンテナからほぼ同時並行に送信する。その長シンボルを長ビンの第1のセットおよび長ビンの第2のセットに関連づける。第1のアンテナは、上記長ビンの第2のセットを用いる前に長ビンの第1のセットを用いて送信できる。これと対照的に、第2のアンテナは、長ビンの第1のセットを用いる前に長ビンの第2のセットを用いて送信できる。MIMOデータに伴うSIGNALシンボルは第1および第2のアンテナからほぼ同時に送信できる。
【0016】
一つの実施例では、短ビンの第1のセットは−24,−16,−8,4,12,20を含み、短ビンの第2のセットは−20,−12,−4,8,16,24を含む。もう一つの実施例では、短ビンの第1のセットは−24,−16,−8,8,16,24を含み、短ビンの第2のセットは−20,−12,−4,4,12,20を含む。
【0017】
一つの実施例では、長ビンの第1のセットは−26,−24,・・・,−2,1,3,・・・,25を含み、長ビンの第2のセットは−25,−23,・・・,−1,2,4,・・・,26を含む。もう一つの実施例では、長ビンの第1のセットは−26,−24,・・・,−2,2,4,・・・,26を含むことができ、長ビンの第2のセットは−25,−23,・・・,−1,1,3,・・・,25を含むことができる。
【0018】
一つの実施例では、上記パターンは、短ビンの少なくとも二つの分割パターンについてのピーク値対平均値比(PAR)の値を計算することと、最小PAR値の分割パターンを用いることとを含む。もう一つの実施例では、上記パターンは、長ビンの少なくとも二つの分割パターンについてのピーク値対平均値比(PAR)の値を計算することと、最適化したPAR値の分割パターンを用いることとを含む。
【0019】
短ビンの第1および第2のセットは互いに異なる周波数シフトを用いることができる。パターンからNビンあたり1個のビンを用いている場合は、周波数シフトパターンは1個乃至N−1個のビンを含む。
【0020】
一つの実施例では、上記第1のアンテナは複数のアンテナの一つのセットを用いて具体化できる。その場合は、複数のアンテナの第1のセットの複数のビンにわたって複素重みづけを行い、ビーム形成効果を最小にする。複素重みは位相シフトおよび位相値の少なくとも一方を含み、ビーム形成効果の最小化によってほぼ全方位送信を可能にする。
【0021】
レガシーヘッダを備える一つの実施例では、上記パターンに、MIMOパケット送信中を表示するためにレガシーヘッダのあとに符号化シンボルを含める。この符号化シンボルは、少なくとも送信データストリームの数を表示する。一つの実施例では、符号化シンボルに、MIMOデータに伴うSIGNALシンボルを含める。これらのSIGNALシンボルは、反転パイロットトーン、すなわち通常のシンボルと同位置にあってそれとは異なる反転パイロットトーンを含み得る。
【0022】
レガシーデバイス環境でMIMOパケットを送信する方法をこの発明は提供する。この方法においては、レガシーSIGNALシンボルの中の予め指定したビットのセットを予め定めた値に設定して、MIMO信号送信中であることを表示するようにすることができる。もう一つの実施例では、レガシーSIGNALシンボルのビットのセットでMIMOパケットに伴う情報を表示できる。一つの実施例では、そのビットのセットはレガシーSIGNALシンボルの長さフィールドの最下位から数えて複数のビットを含む。MIMOパケットに伴う情報は、そのMIMOパケット関連の送信データストリームの数を表示し得る。もう一つの方法では、レガシーSIGNALシンボルの中のビットのセットについて、MIMOパケット関連の情報(例えばストリームの数)を表示するように、「モジュロ」動作を行う。
【0023】
MIMO信号について複数の受信データシンボルの位相変動を追跡して補正する方法をこの発明は提供する。この方法では、データシンボルの各々に複数のパイロットビンを挿入する。一つの実施例では、それら複数のビンにわたるパターンを用いて位相シフトを加える。例えば、位相シフトのパターンをそれら複数のパイロットビンにわたって循環させる(例えば周期的に)。一つの実施例では、フォーマット[111−1]の中のデータシンボルの各々に四つのパイロットビンを挿入する。ここで[111−1]は四つのパイロットビンに跨るパターンであり、p1はシンボル1のパイロット極性である。
【0024】
MIMO信号について複数の受信データシンボルの位相変動を追跡して補正するもう一つの方法もこの発明は提供する。この方法では、データシンボルM個分の長さの期間にわたってデータストリームを跨る直交パターンを生ずることができる。直交パターンの発生は、次式、すなわち
【数1】
に従う。ここで、Mは送信データストリームの数、mはストリーム、kはM個の直交データシンボルの始点指標、lはMIMOシンボルの指標、δmnはm=nのとき1、m≠nのとき0に等しい数をそれぞれ表す。M個の送信データストリームについては、ストリームmの変調パターンは、次式、すなわち
【数2】
で表される。ここで1≦m≦Mおよびl≧0である。
【0025】
複数のストリームにわたる共同パイロット追跡の方法をこの発明は提供する。この方法では、各パイロットビンの中の受信信号をチャネル推算および既知のパイロットパターンに基づいて推算する。パイロットKの中の受信機nの受信信号は次式、すなわち、
【数3】
で表される。ここで、sm,kはストリームmのパイロットシンボルであり、θは共通位相オフセットであり、Hn,m,kはチャネル応答であり、nn,kは雑音であり、共通位相オフセットは次式、すなわち
【数4】
で表される(ここでHn,m,k(バー)はチャネル推算値である)。
【0026】
送信チェーンごとのパイロット追跡の方法をこの発明は提供する。この方法では、MIMO検出アルゴリズムをパイロットビンに適用してパイロットsm,k(バー)を検出する。ここで、sm,k(バー)≒sm,k・ejθl(m)であり、θ(m)はストリームmの位相オフセットである。復号化ずみのパイロットと理想化パイロットとの間で各データストリームのパイロットビンにわたり位相差の平均値をとり、位相推算値、すなわち、
【数5】
を発生する。
【0027】
送信/受信チェーンごとのパイロット追跡の方法をこの発明は提供する。この方法はパイロット極性系列を直交パターンで変調し、それによって、送信/受信チェーンの各々につき位相を推算する過程を含む。送信データストリームの数がMの場合は、ストリームm(1≦m≦M)についての変調パターンは、次式、すなわち
【数6】
で表される。ここでl≧0はMIMOシンボルの指標である。この方法は、受信アンテナnにおけるストリームmの位相オフセットの推算を複数のパイロットビンにわたって平均することによって行う過程をさらに含み得る。その位相オフセットの推算は次式、すなわち、
【数7】
で表される。
【0028】
MIMO信号を形成するようにソースデータビットを分割する方法をこの発明は提供する。この方法では、符号器を初期化して終了させるようにソースデータビットを加え、それによって改変ずみのソースデータビットを作ることができる。この改変データビットを符号器に加え、符号化ずみのソースデータビットを生ずる。この符号化ずみのソースデータビットをN個のデータストリームに分割する。
【0029】
MIMO信号を生ずるようにソースデータビットを分割するもう一つの方法をこの発明は提供する。この方法では、ソースデータビットをN個のデータストリームに分割する。N個の符号化器を初期化するとともに終了させてN個の改変ずみのデータストリームを生ずるように、N個のデータストリームにビットを加える。この方法には、ビット総数を選択する過程をさらに含めて、N個のデータストリームの各々につきシンボルにわたって分割した際にデータストリームの各々の中のシンボル数が互いにほぼ等しくなるようにすることができる。
【0030】
MIMO信号を生ずるようにソースデータビットを分割するもう一つの方法をこの発明は提供する。この方法では、符号器を初期化するとともに終了させて改変ずみのソースデータビットを生ずるように、ソースデータビットにビットを付加する。これらの改変ずみのソースデータビットを符号器に供給して符号化ずみのソースデータビットを生ずる。符号化ずみのソースデータビットをパンクチュアラに供給してパンクチャ処理ずみのソースデータビットをN個のビットストリームに分割する。
【0031】
レガシーSIGNALシンボルを用いてMIMOパケットの長さを表示する方法をこの発明は提供する。このレガシーSIGNALシンボルは伝送速度フィールドと長さフィールドとを含む。しかし、MIMOパケットの長さは、長さフィールドを用いて表す長さよりも長くすることができる。その場合は、この方法に、MIMOパケットの長さを表すために伝送速度フィールドおよび長さフィールドの両方を用いる過程を含める。例えば、伝送速度疑似値を伝送速度フィールドに供給し、疑似長さ値を長さフィールドに供給する。一つの実施例では、上記伝送速度疑似値レガシーレート最小値にし、疑似長さ値を伝送期表示の実際のレガシー長にすることもできる。一つの実施例では、MIMOパケットのMIMOSIGNALシンボルにパケット長相対値を含める。
【0032】
MIMOパケットのパターンをこの発明は提供する。このパターンはレガシーヘッダとMIMOヘッダとを備える。レガシーヘッダはレガシーヘッダ受信のための自動利得制御を定める複数の短シンボルを含む。一方、MIMOヘッダはMIMOヘッダ受信の自動利得制御を容易にするための第2の複数の短シンボルを含む。
【0033】
MIMOパケットのもう一つのパターンをこの発明は提供する。このパターンは複数のアンテナから送信される第1の短シンボルを含み得る。この第1の短シンボルを短ビンの予め定めたセット、すなわちサブセットが前記複数のアンテナの各々と関連づけてある短ビンの予め定めたセットに分割する。第1の短シンボルを、MIMOパケット(前記第1の短シンボルを含むMIMOパケット)のための自動利得制御に用いる。
【0034】
上記パターンは複数のアンテナからほぼ同時に送信された第1の長シンボルをさらに含み得る。上記第1の長シンボルを長ビンの複数のセットと関連づけ、それら長ビンのセットの互いに異なる順序を用いて各アンテナから送信することができるようにする。第1の長シンボルはMIMOチャネル推算に用い得る(MIMOパケットは第1の長シンボルをさらに含む)。
【0035】
一つの実施例では、上記複数のアンテナが第1および第2のアンテナを含む。その場合は、それら第1および第2のアンテナからレガシーSIGNALシンボルの送信のあと第1の短シンボルを送信する。その第1のアンテナを短ビンの第1のセットと関連づけ、第2のアンテナを短ビンの第2のセットと関連づける。これら第1および第2のアンテナは第1の長シンボルとほぼ同時に送信する。第1の長シンボルを長ビンの第1セットおよび長ビンの第2のセットと関連づけ、第1のアンテナが長ビンの第2のセットによる送信の前に第1のセットによる送信を行い、第2のアンテナが第1のセットによる送信の前に第2のセットによる送信を行うようにする。
【0036】
上記パターンは、上記第1の短シンボルおよび第1の長シンボルのあと第1および第2のアンテナからほぼ同時に送信されるMIMOと関連づけたSIGNALシンボルも含み得る。このパターンはさらに第2の短シンボル、第2の長シンボルおよびレガシーSIGNALシンボルを含み得る。その第2の短シンボルはレガシーヘッダのための自動利得制御に用いることができる。レガシーヘッダは第2の短シンボル、第2の長シンボル、およびレガシーSIGNALシンボルを含み得る。レガシーヘッダはMIMOヘッダの前に送信する。
【0037】
MIMOパケットのさらにもう一つのパターンをこの発明は提供する。このパターンはレガシーヘッダおよびMIMOヘッダをも含み得る。レガシーヘッダは、レガシーデバイスチャネル推算用の第1の複数の長シンボルを含む。MIMOヘッダは、MIMOデバイスチャネル推算用の第2の複数の長シンボルを含む。
【0038】
MIMOパケットのさらにもう一つのパターンをこの発明は提供する。このパターンは第1の複数のアンテナから送信される第1の長シンボルを含み得る。この第1の長シンボルを複数のアンテナでほぼ同時に送信する。この第1の長シンボルを複数の長ビンのセットに関連づけ、各アンテナから互いに異なる長ビンのセットの順序により送信するようにすることができる。この第1の長シンボルをMIMOパケット(第1の長シンボルを含む)のためのMIMOチャネル推算に用いることができる。
【0039】
このパターンはさらに第1の短シンボルを含み得る。第1の短シンボルも複数のアンテナで送信できる。この第1の短シンボルを予め定めた短ビンのセットに分割して、それら短ビンのサブセットに複数のアンテナの各々を関連づけるようにすることができる。第1の短ビンはMIMOパケット(第1の短シンボルを含む)のための自動利得制御に用いることができる。
【0040】
一つの実施例では、上記複数のアンテナが第1および第2のアンテナを含む。これら第1および第2のアンテナはレガシーSIGNALシンボルの送信のあと第1の短シンボルを送信できる。第1のアンテナを短ビンの第1のセットに関連づけ、第2のアンテナを短ビンの第2のセットに関連づけることができる。これら第1および第2のアンテナは第1の長シンボルをほぼ同時に送信できる。第1の長シンボルを長ビンの第1のセットおよび長ビンの第2のセットを用いて送信できる。一方、第2のアンテナは長ビンの第1のセットによる送信の前に長ビンの第2のセットを用いて送信できる。
【0041】
上記パターンは、第1の短シンボルおよび第1の長シンボルのあと第1および第2のアンテナによりほぼ同時に送信されたMIMOと関連づけたSIGNALシンボルをさらに含み得る。
【0042】
MIMO送信のための複数の符号化ずみデータストリームを復号化する方法をこの発明は提供する。この復号化方法においては、良いビンからのデータビットを、悪いビンからのデータビットよりも重く重みづけする。例えば、ビンへの重みづけの重みを、信号対雑音比(SNR)、またはSNRの平方根に比例した値にすることができる。
【0043】
この重みづけはビタービブランチ計量算出に影響し得る。一つの実施例では、この方法は、第1および第2のストリームについて実効雑音項算出のための次式に基づいて誤差伝搬の影響を算出する過程をさらに含み得る。
【数8】
ここで、σはもとの雑音項、wは零位ベクトル、hはチャネル、σ(バー)はm番目のデータストリームについての実効雑音項をそれぞれ表す。
【0044】
複数の受信機チェーンのためのチャネル補正を改変する方法をこの発明は提供する。この方法では、複数の受信機チェーンについてのチャネル推算を受信する。複数の受信チェーンについての利得調整値を基底雑音値および自動利得制御値に基づいて計算できる。次に、この利得調整値を複数の受信機チェーンに印加する。
【0045】
MIMOシステムについての位相推算値を用いる方法をこの発明は提供する。この方法においては、単一の共同位相推算を、複数のデータストリーム全部に適用できる位相補正値の算出のために複数のデータストリームから行う。一つの実施例では、上記複数のデータストリームがデータストリーム全部を含む。
【0046】
送信機/受信機対の各々について位相推算値を生ずる方法をこの発明は提供する。この方法において、チャネル行列Hの各エレメントの位相オフセットQn,m(ここで、1≦m≦M,1≦n≦N)をパイロットから推算し、その位相オフセット推算値をθ(m)(1≦m≦M)およびQ(n)(1≦n≦N)に変換できる。チャネル行列Hにおいては、
【数9】
ここで1は全部1のN×1ベクトルであり、IはサイズNの単位行列であり、θ=[θ(1)θ(2)・・・θ(N)]はN個の受信機における位相ベクトルであり、θ=[θ1,mθ2,m・・・θN,m]は行列Hの第m列の位相ベクトルである。
【0047】
MIMO信号の送信を最適化する方法をこの発明は提供する。この発明において、チャネルの品質を、MIMO信号送信機から送信先受信機の受信したパケットを用いて評価する。その際に、パケット(例えばCTSパケットまたはACKパケット)、すなわち送信最適化のための饋還情報を含むパケットを送信先の受信機から送信機に送る。この饋還情報は、互いにほぼ同時にすでに送信ずみの複数のデータストリームから抽出できる。例えば、この饋還情報は、チャネル補正ずみのパイロットおよび既知のクリーンパイロットから算出した(1)チャネル推算値または(2)検出パイロットEVMを含む。
【0048】
一つの実施例では、この饋還情報は、送信機用のデータ伝送速度を含み得る。もう一つの実施例では、この饋還情報は、送信機用のデータ伝送速度最小値、同最大値、高い方のデータ伝送速度、低い方のデータ伝送速度などを含む。
【0049】
送信MIMO信号の送信を最適化する方法をこの発明は提供する。この方法においては、チャネルの品質を、送信先の受信機からMIMO信号送信機の受けたMIMOパケットを用いて評価する。そのMIMOパケットに基づいて最適化送信情報を算定できる。
【0050】
ダイバーシティアンテナシステムにおけるMIMO信号用受信機選択の方法をこの発明は提供する。少なくとも一つの受信機チェーンが複数の受信アンテナに接続可能である。この方法においては、受信機チェーンの各々について、信号強度最大の受信アンテナを選択できる。
【0051】
ダイバーシティアンテナシステムにおけるMIMO信号用受信機選択の方法もこの発明は提供する。この方法においては、少なくとも一つの受信機チェーンを複数の受信アンテナに接続できる受信アンテナ組合せを決定する。各組合せについて信号対雑音比(SNR)を計算し、次に、最小のSNRの組合せを選択する。
【0052】
分割系列の選択の方法もこの発明は提供する。この方法においては、複数の分割系列についての電力対平均値比(PAR)を計算し、次に、最適PARを有する分割系列を選択する。
【0053】
上述のMIMOシステムの利点を図面を参照して次に述べる。
【発明の効果】
【0054】
伝送品質および伝送効率のより高い無線LAN(WLAN)システムを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
[レガシーヘッダおよびシンボル分割]
この発明の一つの実施例によると、レガシーデバイスは、MIMOパケットに先行する後向き互換性のあるプリアンブルを受けることにより、MIMO信号の「踏みつけ」(すなわち、MIMOパケットの送信の完了前に送信すること)を防ぐ。この後向き互換性のあるプリアンブルはIEEE802.11a/g規格システムに適合しており、レガシーデバイスによるMIMOパケット長さの復号化およびそのパケットの期間中の送信の阻止を可能にするので有利である。また、このプリアンブルは、それに続くパケットがMIMOパケットであるか否かと、そうである場合は送信中のデータストリームがいくつあるかとを表示できる。
【0056】
図6は上記プリアンブルを含むMIMOパケットの時分割トレーニングパターン600の例を示す。より詳しく述べると、この明細書でレガシーヘッダと呼ぶプリアンブル612は、標準の802.11a/g短シンボル、長シンボルおよびSIGNALシンボルを含む。以下の説明では、これらのシンボル(複数形であるが)を単数扱いにすることもある。
【0057】
一つの実施例では、空間ストリーム610および611を二つの(第1および第2の)アンテナからそれぞれ送信する。他の実施例では、送信ストリーム610をビーム形成アンテナ構成の複数のアンテナから送信する。すなわち、空間ストリーム610はアンテナの一つのセットから送信されることを特徴とする。説明の便宜のために、空間ストリーム610を第1のアンテナから送信し、空間ストリーム611を第2のアンテナから送信するものとして説明する。
【0058】
レガシーヘッダ612の中の短シンボル601を粗ppm推算およびタイミングに用いる。第1のアンテナから送信される長シンボル602は第1のアンテナからのチャネルの推算に用い得る。一つの実施例では、SIGNALシンボル603がMIMOパケットの長さ情報を含み、それによってレガシーデバイスによるMIMOパケット踏みつけを防止できるので有利である。第2のアンテナから送信され、それ以外は上記長シンボル602と同一である長シンボル604は、第2のアンテナからのチャネルの推算に用いることができる。SIGNALシンボル605Aおよび605Bは、空間ストリーム610および611のMIMO部分(レガシーヘッダ612のあとの部分)の変調および長さに関する情報をそれぞれ含む。
【0059】
図7Aはレガシーヘッダ612を含むMIMOパケットのもう一つの例示用パターン700を示す。パターン700は、受信機利得制御の改良を容易にする(送信経路が互いに異なる場合も受信信号電力の継続を確保する)ように短シンボルと長シンボルとを分割するので有利である。パターン700では、追加の短シンボル704Aおよび704Bをレガシーヘッダのあとに挿入して、受信機が二次利得調整を実行できるようにしている。
【0060】
受信電力を一定にするためには、二つの(すなわち第1および第2の)アンテナから送信されるトレーニングシンボルは非コヒーレントである必要がある。この非コヒーレンスは、短シンボルと長シンボルとを周波数領域で分割することによって達成できる。すなわち、短シンボル704Aが短シンボル601の用いるビンの半分を用い、短シンボル704Bがそのビンの残りの半分を用いる(すなわち704A+704B=602)。一つの実施例では、各アンテナがこれらビンの半分ずつを用いた互いに異なる時間に送信する。
【0061】
一つのアンテナではビンの半分だけを用いるので、ビンあたりの電力は、分割した短シンボルおよび長シンボルについて2倍になる。すなわち、分割短シンボルを始点として受信電力レベルは一定になる。したがって、分割短シンボルの期間中の利得設定はそのデータシンボルについて有効である。受信機では、チャネル推算をビン半分ずつ抽出してその結果を合成して平滑化する。
【0062】
上記分割は多様な方法で達成できる。一つの実施例では、長シンボル705Aがビン−26、−24,・・・,−2,1,3,・・・,25を用い、長シンボル705Bがビン−25,−23,・・・,−1,2,4,・・・,26を用いる。もう一つの実施例では、長シンボル705Aがビン−26,−24,・・・,−2,2,4,・・・,26を用い、長シンボル705Bがビン−25,−23,・・・,−1,1,3,・・・,25を用いる。長シンボル602のピーク値対平均値比(PAR)が3.18dBであって各ビンのデータが分割後も同じである場合は、この第1のビンを用いた実施例のPARは長シンボル705Aおよび705Bについてそれぞれ5.84dBおよび6.04dBとなり、第2のビンを用いた実施例のPARは長シンボル705Aおよび705Bについてそれぞれ5.58dBおよび5.85dBとなる。
【0063】
分割した短シンボルおよび長シンボルは任意の複数のデータストリームについても一般化して適用できる。例えば、図7Bに示すとおり、三つのデータストリームがある場合は、ビンを三つのグループA,BおよびCに分けて、それらグループの間をすべてのビンについて等間隔にする。すなわち、分割した短ビンについては、第1のアンテナが短シンボル14Aを(ビンAを用いて)送信し、第2のアンテナが短シンボル14Bを(ビンBを用いて)送信し、第3のアンテナが短シンボル14Cを(ビンCを用いて)送信する。
【0064】
分割した長シンボルについては、第1のアンテナが長シンボル15A、15Bおよび15Cを(ビンA、BおよびCをそれぞれ用いて)順次に送信し、第2のアンテナが長シンボル15B、15Cおよび15Aを(ビンB、CおよびAをそれぞれ用いて)順次に送信し、第3のアンテナが長シンボル15C、15Aおよび15Bを(ビンC、AおよびBをそれぞれ用いて)順次に送信する。この循環パターンによって、ビン全部についてのチャネル推算が可能になり、周波数領域における直交性を常時保持する。周波数26MHzにおける二つのストリームについての長系列の例を挙げると、L−26:26={−1 1 −1 1 1 1 −1 −1 −1 −1 1 1 1 1 −1 1 −1 1−1 −1 1 1 1 −1 1 1 0 −1 1 1 −1 −1 1 −1 −1 1 −1 −11 −1 −1 1 1 1 1 −1 1 1 1 1 1 1 1}である。ここで、長シンボル705AはPAR値2.73dBのビン[−26:2:−2 2:2:26]を用い、長シンボル705BはPAR値2.67dBのビン[−25:2:−1 1:2:25]を用いている。
【0065】
周波数20MHzにおける三つのストリームについての系列の例を挙げると、L−26:26={−1 −1 1 1 1 1 1 −1 −1 −1 1 −1 −1 −1 −1 −1 1 1 1 1 1 1 1 −1 −1 1 0 1 −1 −1 −1 1 −1 1 −1 1 −1 1 1 −1 1 −1 −1 1 1 −1 1 1 −1 1 −1 −1}である。ここで、第1のトーンセットはPAR値3.37dBの[−26:3:−2 2:3:26]であり、第2のトーンセットはPAR値3.10dBの[−25:3:−1 3:3:24]であり、第3のトーンセットはPAR値3.10dBの[−24:3:−3 1:3:25]である。周波数20MHzにおける四つのストリームについての系列の例を挙げると、L−26:26={−1 1 1 1 1 −1 −1 −1 1 −1 1 1 1 −1 1 1 −1 1 −1 −1 −1 1 1 1 −1 1 0 1 1 −1 1 −1 −1 1 −1 −1 −1 −1 1 −1 −1 −1 1 1 1 1 −1 1 1 −1 1 1 1}である。ここで、第1のトーンセットはPAR値3.05dBの[−26:4:−2 3:4:23]であり、第2のトーンセットはPAR値3.05dBの[−25:4:−1 4:4:24]であり、第3のトーンセットはPAR値3.11dBの[−24:4:−4 1:4:25]であり、第4のトーンセットはPAR値3.11dBの[−23:4:−3 2:4:26]である。
【0066】
周波数40MHzにおける一つのストリームについての長系列の値を挙げると、
−58:+58={−1 1 1 1 1 −1 1 1 ―1 −1 −1 −1 1 1 1 1 1 −1 1 1 −1 1 −1 1 1 −1 −1 1 1 −1 −1 1 1 −1 −1 −1 −1 −1 1 −1 1 1 −1 −1 −1 1 −1 −1 1 −1 −1 1 1 −1 1 1 1 0 0 0 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 1 1 1 −1 1 −1 1 1 −1 −1 1 −1 −1 1 −1 1 −1 1 −1 −1 −1 −1 1 1 −1 1 −1 −1 −1 1 −1 1 −1 1 −1 1 1 −1 1 −1 −1 1 −1 1 1 1}
である。
【0067】
周波数40MHzにおける二つのストリームについての長系列の値を挙げると、
−58:+58={−1 1 1 1 1 −1 1 1 ―1 −1 −1 −1 1 1 −1 1 1 −1 1 1 −1 1 −1 1 1 −1 −1 1 1 −1 −1 1 1 −1 −1 −1 1 −1 1 −1 1 1 1 −1 −1 1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 1 −1 1 −1 1 0 0 0 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 1 1 1 −1 1 −1 1 1 −1 −1 1 −1 1 1 −1 1 −1 1 −1 −1 −1 −1 1 1 −1 1 −1 −1 −1 −1 −1 1 −1 1 1 1 1 −1 1 1 −1 1 1 1}
である。ここで、第1のトーンセットは[−58:2:−2 2:2:58]であり、第2のトーンセットは[−57:2:−3 3:2:57]である。
【0068】
周波数40MHzにおける三つのストリームについての長系列の値を挙げると、
−58:+58={−1 −1 −1 −1 −1 −1 1 1 1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 1 1 1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 1 1 1 1 1 1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 0 0 0 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 1 1 1 −1 −1 −1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 −1 −1 −1}
である。ここで、第1のトーンセットは[−58:3:−4 2:3:56]であり、第2のトーンセットは[−57:3:−3 3:3:57]であり、第3のトーンセットは[−56:3:−2 4:3:58]である。
【0069】
周波数40MHzにおける四つのストリームについての長系列の値を挙げると、
−58:+58={−1 1 −1 −1 −1 1 1 −1 1 1 1 −1 1 1 1 1 −1 −1 −1 −1 1 −1 −1 −1 1 −1 1 −1 1 −1 −1 −1 −1 1 1 −1 −1 −1 1 1 1 1 −1 1 −1 −1 1 −1 1 1 1 1 1 −1 −1 −1 1 0 0 0 −1 1 1 −1 −1 −1 −1 −1 1 1 1 −1 1 1 −1 −1 −1 1 −1 1 −1 −1 −1 1 −1 1 −1 −1 1 1 1 1 1 1 1 −1 −1 −1 −1 1 1 −1 1 1 1 −1 1 1 −1 −1 1 −1 1 −1 ―1 1 1}
である。ここで、第1のトーンセットは[−58:4:−2 5:4:57]であり、第2のトーンセットは[−57:4:−5 2:4:58]であり、第3のトーンセットは[−56:4:−4 3:4:55]であり、第4のトーンセットは[−55:4:−3 4:4:56]である。なお、PAR値低減のためにデータパターンのサーチを行うことができる。
【0070】
短シンボルも、四つのビンのうちの一つだけを用いる点を別にすれば上述の場合と同様に分割できる。例えば、一つの実施例では、短シンボル704Aがビン−24,−16,−8,4,12,20を用い、短シンボル704Bがビン−20,−12,−4,8,16,24を用い得る。もう一つの実施例では、短シンボル704Aがビン−24,−16,−8,8,16,24を用い、短シンボル704Bがビン−20,−12,−4,4,12,20を用い得る。短シンボル601のPAR値が2.09dBである場合は、短シンボル704Aおよび704Bの両方について第1のビンを用いた実施例のPAR値は4.67dBとなり、第1のビンを用いた実施例のPAR値は短シンボル704Aについて4.32dB、短シンボル704Bについて2.79dBとなる。なお、第1ビン利用の実施例を網羅的にサーチする場合は、PAR最小値4.26dBとなる。第2のビン利用の実施例について同様のサーチを行う場合は、極性{1 −1 1 −1 −1 −1}の短シンボル704AについてのPAR最小値は1.6dBになり、極性{1 −1 −1 −1 −1 1}の短シンボル704BについてのPAR最小値は2.79dBとなる。
【0071】
分割した短シンボルに用いたビンの数は少ないことに注目されたい。したがって、チャネルが周波数選択性を備える場合は、分割した短シンボル、分割した長シンボルおよびSIGNALシンボルの送信電力が互いに等しいとすると、受信電力の平均値は分割ずみの短シンボル相互間で大幅に異なる。受信電力のこの差は受信機利得制御を困難にする。したがって、一つの実施例では短シンボルに24個のビンを用いて分割短シンボルの各々により多くのビンを確保するようにしている。もう一つの実施例では、12個のビンで周波数シフトずみの短シンボルをデータストリームすべてに用いるものの、各データストリームが互いに異なる周波数シフトを用い得る。すなわち、もとの短シンボル用の周波数からビン1個分、2個分または3個分のシフトをかけた周波数で用い得る。この周波数シフトによって、短シンボルから分割ずみ長シンボルおよびそれ以後への受信電力の連続性を確実にすることができる。しかし、この構成では、サポートできる送信データストリームの数は4以下である。また、シフトした短シンボルの周期はレガシー短シンボルの周期よりも長く、そのために周波数オフセットの実現に改変を要することもあろう。
【0072】
上述のとおり、レガシーヘッダはアンテナの一つのセットから送信する。そのセットが複数のアンテナを含む場合は、ビーム形成効果が生じ得る。全方位送信を達成するために、それらアンテナの各々に対する各周波数ビンの複素寄与分を重み付けする。例えば、位相シフト(例えば、位相ランプまたは任意の位相シフト)や位相値を他のアンテナへのビン全体に適用してビーム形成効果がビンごとに異なるようにする。位相ランプ形成手法の例としては、無線技術分野の当業者に周知の巡回遅延ダイバーシティ(CDD)などがある。
【0073】
位相値の例としては、一つのアンテナに偶数番目のビンを用いもう一つのアンテナに奇数番目のビンを用いる手法がある。位相値のもう一つの例としては、正極性の周波数ビン全部を一つのアンテナに用い、負極性の周波数ビン全部をもう一つのアンテナに用いる手法がある。すなわち、二つのアンテナへの各周波数ビンの寄与を互いに独立に重みづけする手法を全方位送信の達成に用いることができる。
【0074】
MIMOパケットを受信できる受信機はレガシー802.11a/gパケットも受信できるはずであるので、レガシーパケットとは異なるMIMOパケットという名称を与えるメカニズムも提供できる。また、パケットがMIMOパケットである場合は、受信機は送信されてきたデータストリームの数を把握する必要がある。図7Cに示した実施例では、レガシーSIGNALシンボル603の第1のビットのセットがMIMOパケットを表示し、同シンボル603の第2のビットセットが送信されてきたデータストリームの数を表示し得る。例えば、SIGNALシンボル603の予備ビットRを「1」にセットして、MIMOパケットが送信中であることを表示することができる。また、SIGNALシンボル603の長さフィールド721の中の所定数の下位ビットを、送信されてきたデータストリームの数の表示に用いることができる。すなわち、最下位の二つのビットを用いた場合は、長さフィールドの長さの値を最下位から三番目のビットに端数切り上げにする。
【0075】
MIMO受信機は、レガシーSIGNALシンボル603の復号化の後、予備ビットRをチェックすることができる。そのビットが「0」の場合はそのパケットはレガシーパケットであり、長さフィールド721の中の長さの値はバイト数表示のパケット長さの真値である。しかし、予備ビットが「1」の場合は、そのパケットはMIMOパケットであり、長さフィールドの最下位から二つのビットは送信されてきたデータストリームの数である。後者の場合は、パケットの長さは2バイト以内の精度である。レガシー受信機は送信差控え時間の算出に長さの値だけを用いる。したがって、長さフィールドの値をレガシーデバイスのために高精度にする必要はない。上述のとおり各データストリームの長さの真値をMIMO SIGNALシンボル(例えば図7Aの706Aおよび706B)に含めることができる。したがって、MIMO受信機は長さフィールド721の蓄積された値を実効的に無視できる。
【0076】
もう一つの実施例ではMIMOストリームの数を表すのに「モジュロ」動作を用いることができる。より詳細に述べると、パケットのデータバイト数がLである場合は、シンボルあたりのデータバイトの数はBであり、サービスバイトおよび末尾バイトの数はCであり、所要シンボル数は次式、すなわち
【数10】
で与えられる。ここで┌┐は最も近い整数への端数切上げを示す。ここで、データストリームの数がMでありMBであると仮定する。その場合は改変ずみの長さは次式、すなわち
【数11】
で表される。
レガシーデバイスで計算したシンボルの数がやはりNsym、すなわち
【数12】
で表されることに注目されたい。
【0077】
MIMOデバイスはストリーム数を次式、すなわち
【数13】
で算出できる。
【0078】
M=BであればM(バー)は零である。その場合は、M(バー)=Bのマッピングが行われる。なお、この同じ手法をストリーム数以外の他の情報のシグナリングにも適用でき、その場合はシグナリング対象の情報は上述のとおりMとして符号化される。
【0079】
さらに他の実施例では、符号化シンボル722をMIMOパケット表示のために(予備ビットは他の用途のために保持して)レガシーSIGNALシンボル603の後に挿入できる。符号化シンボル722は(同位置に現れるはずの通常のシンボルに対して)反転したパイロットトーン(すなわち+/−)付きのMIMO SIGNALシンボルを含み得る。例えば、符号化シンボル722は、雑音耐性強化のためにBPSK変調で改変したSIGNALシンボル706A’および706B’を含み得る。この実施例では、MIMO受信機は入来パケットがMIMOパケットであるかレガシーパケットであるかを符号化シンボル722のパイロットの位相に基づいて判定できる。それがMIMOパケットであった場合は、送信データストリームの数を抽出でき、そのパケットの残り部分をMIMO適合の方法で検出できる。それ以外については、そのパケットをレガシー802.11a/gパケットとして取り扱う。
【0080】
[パイロット]
周波数オフセット追跡および位相雑音追跡のために802.11a/gシステムにパイロットを挿入する。送信機および受信機において多数の無線周波数回路を用いるMIMOシステムでは、互いに異なる送信チェーンおよび受信チェーンが受ける位相雑音には共通なものまたは互いに別々のものもある。この発明の一つの側面によると、パイロット追跡スキームを送信チェーンごとに共通に、または送信機受信機対ごとに設ける。
【0081】
送信機受信機間の周波数オフセットおよび位相雑音のために、受信データシンボルの位相はパケットの送信中に変動し得る。その位相変動を追跡して補正するために、802.11a/gのOFDMシンボルの各々に[111−1]*pのフォーマットで四つのパイロットを挿入する。この[111−1]はパイロットビンにまたがるパターンであり、p1はシンボル1のパイロット極性である。MIMO OFDMシンボルについては、4ビットパターンおよびパイロット極性系列の両方を複数の空間ストリームに適用する。
【0082】
一つの実施例では、802.11a/gと同じパイロットフォーマットを送信データストリーム全部に複写使用する。例えば802.11a/gシンボルのパイロット極性系列がp,p,p,p,p,・・・である場合は、MIMOシンボルに次のパイロット極性、すなわち
【数14】
を用い得る。ここで、この行列は行ごとに互いに異なる送信ストリームを表す。
【0083】
パイロット極性は互いに異なる空間ストリームについて同じであるので、4ビットパターンをそれらストリーム全部に複写使用すればパイロットビンは固定のビーム形成パターンが生ずる結果になる。状態の悪いビンが常に零にとどまることがないようにするために、位相シフトを加えて四つのビンにわたりシンボルごとに循環するようにする。例えば、
【数15】
【0084】
第2のアンテナ(Ant2)のパイロットは第1のシンボルで位相シフト0゜、90゜、180゜および270゜を受け、後続のシンボルで周期的に循環する。なお、四つのパイロットビンについて初期パイロットパターン[1111]を用いているが、このスキームは任意の初期パイロットパターンに適用でき、また五つ以上のパイロットビンにも適用でいる。すなわち、推算のために挿入するパイロットは任意の周波スペクトラムにわたって間隔を設けることができる。
【0085】
パイロット追跡は互いに異なる方法で実行できる。例えば、位相雑音が送信機チェーンおよび受信機チェーン全部にわたって共通である(それによって共同追跡が可能になる)場合は、受信機チェーンの各々がチャネル推算値および既知のパイロットパターンに基づき各パイロットビン中の受信信号を推算できる。この推算値の複素共役値を実際の受信パイロット信号に乗算する。その乗算結果をパイロットビンおよび受信機チェーンを跨いで合成する。最終結果の位相が所望の位相オフセット値になる。数式で表すと、受信機nにおけるパイロットビンkの受信信号は次式、すなわち
【0086】
【数16】
で表される。ここで、sm,kはストリームmのパイロットシンボル、θは共通位相オフセット、Hn,m,kはチャネル応答、nn,kは雑音である。また、共通位相オフセットは、式2,すなわち
【0087】
【数17】
で表される。ここで、Hn,m,k(バー)は推算したチャネルである。
【0088】
これに対して、他の送信チェーンにわたって別の位相雑音がある(そのために送信チェーンごとのパイロット追跡が必要になる)場合は、MIMO検出アルゴリズムをパイロットsm,k(バー)のためにパイロットビンにまず適用する。
【数18】
であるので(ここでθ(m)はストリームmの位相オフセット)、復号化したパイロットと理想パイロットとの間の位相差は各データストリームのパイロットビンにわたって平均して式3、すなわち
【0089】
【数19】
で表される位相推算値を生ずることができる。
【0090】
位相雑音が送信チェーン全体と受信チェーンとの間で互いに独立である(そのために送信チェーン・受信チェーン対あたりのパイロット追跡が必要になる)場合は、パイロット極性系列を、送信チェーン・受信チェーン対の各々について別々に位相を推算できるように、直交パターンで変調することができる。送信データストリームの数がMである場合は、ストリームmについての変調パターン(ここで、1≦m≦M)は次式、すなわち
【数20】
で表される。ここでl≧0はMIMOシンボルの指標である。例えば、三つの被変調ストリームについての被変調パイロット極性系列の例を挙げると、
【数21】
が挙げられる。
【0091】
なお、次式、すなわち
【数22】
の関係が成立する。ここでδm,n(バー)=1(m=nの場合)、または0(m≠nの場合)である。すなわち、シンボルM個分の長さの任意の区間にわたるデータストリームについて(kはM個の直交データシンボルの開始指標を表す)パターンは直交パターンである。この場合は、直交性維持のためにストリーム全部について同一の4ビットパイロットパターンを用いる必要がある。
【0092】
一つの実施例では、各アンテナが受信した最後の(M−1)個のシンボルをバッファに保存することができる。そのあと各アンテナが新たなシンボルを受信した際にこれらM個のシンボルについてのパイロットの複素共役値をシンボルと乗算して加算し、次式、すなわち
【数23】
を計算する。ここで、yn,k(l)はl番目のシンボルについてのビンkのチェーンnの受信信号であり、rm,k(l)はl番目のシンボルについてのビンkのストリームmのパイロットシンボルである。項rm,k(l)はビンパイロットパターンと、もとのパイロット極性と、直交変調とを含む。この計算をすべてのパイロットビンkの中のすべての送信・受信対(m,n)について行う。その結果をチャネル推算の複素共役値に乗算し、式4、すなわち
【0093】
【数24】
で表される直交合成ずみでチャネル補正ずみのパイロットを生ずる。
【0094】
次に、受信アンテナnのストリームmの位相オフセットをパイロットビンにわたって平均した式5,すなわち
【0095】
【数25】
のとおり推算する。
【0096】
初めの(M−1)個のMIMOシンボルについては、履歴の長さが十分でないので、共同の、または送信チェーンあたりのパイロット追跡方法を用いることができる。また、次の条件、すなわち
【数26】
を満足する任意の直交パターンq(l)(mおよびlは上に定義したとおり)をパイロット極性系列の変調に用いることができる(ここで、m,n,l,kおよびMは上に定義したとおり)。例えば、上述の例の三つの送信ストリームについての変調ずみパイロット極性系列は
【数27】
となる。
【0097】
なお、802.11a/gパイロット極性系列の継承物は類似点についてだけであるので、全部度外視してp=1と設定することができる。この設定により第3および第4の実施例が得られる。第3の実施例では、パイロット極性系列は全部1,すなわち
【数28】
となる。
【0098】
第1の実施例と同様に、パイロットビンを跨いで周期的に循環する位相シフトを、固定ビーム形成効果を避けるように、含める必要がある。共同パイロット追跡、または送信チェーンごとのパイロット追跡を行うことができる。
【0099】
第4の実施例では、パイロット系列はq(l)のみであり、次のとおり表される。
【数29】
この場合はビン全部に同一のパイロットパターンを全ストリームについて用いることができる。送信・受信対ごとのパイロット追跡を行うことができる。
【0100】
[データストリーム分割]
MIMO SIGNALシンボルを形成するには、もとのデータビットを複数のデータストリームに適切に分割しなければならない。規格801.11a/gでは、レート1/2、2/3および3/4の畳込み符号を用い、四つの変調スキーム(すなわち、BPSK、QPSK、16QAMおよび64QAM)を提供する。符号速度と変調スキームによって各OFDMシンボルにおけるビット数が定まる。MIMO性能を最大にするには、互いに異なるデータストリームごとに互いに異なる変調と符号化速度を許容する必要がある。したがって、各MIMO信号シンボルのビット数は、データシンボルごとに異なり得る。
【0101】
通常の符号化ブロックは、WLAN技術分野で周知の符号器およびパンクチュアラ(例えば、IEEE802.11aの第17.3.5.6節に記載)で構成する。この発明の一つの側面によると、互いに異なる符号は、共通の符号器と別々のパンクチュアラとの組み合わせを用い、または共通のパンクチュアラと別々の符号器との組み合わせを用いて構成できる。共通の符号器を用いた場合は、分割は符号器の前段またはパンクチュアラの前段で行うことができる。互いに別々の符号器を用いた場合は、分割は符号器の前段で行われなければならない。パンクチュアラの前段での分割の場合をこの明細書では、「共用」符号器と呼び、符号器の前段での分割の場合を「個別」符号器と呼ぶ。なお、802.11a/gでは、レート2/3符号および3/4符号の両方をレート1/2の畳込み符号からパンクチャする。したがって、上記の共用符号器でも個別符号器でも具体化できる。
【0102】
符号器を初期化して終了させることができるように、ソースデータビットの前または後に付加ビットを挿入することができる。例えば、802.11a/gでは、ソースデータビットの前に16個のサービスビットを付加し、ソースデータビットの後に6個の末尾ビットを付加することができる。したがって、上記個別符号器の場合は、これら付加ビットを各符号器について挿入する。
【0103】
図8には二つの空間ストリームのための共用符号器システム800の例を示す。このシステム800では、ソースビット801をブロック802に供給し、このブロック802で上述のサービスビットおよび末尾ビットを付加する。符号器803は上記付加ずみのビットを受けてn1+n2ビットを生ずる。スプリッタ804はこのn1+n2ビットを受けて二つの空間ストリームn1およびn2を生じ、それらストリームをパンクチュアラ805Aおよび805Bにそれぞれ供給する。
【0104】
一つの実施例では、符号器803の出力におけるn1+n2ビットごとに、初めのn1ビットが第1の空間ストリームを形成し、後のn2ビットが第2の空間ストリームを形成する。分割後のビット列のサイズnはn=Ncbps(i)(ここでNcbpsはパンクチュアリング操作前のシンボルあたりの符号化ビットの数)で表され、シンボルごとに分割を行う。ビット列のサイズのもう一つの例は、n=Ncbps(i)/gcd(Ncbps(1)、Ncbps(2))(ここでgcd( )は最大公約数)で表され、この場合は処理遅延低減に適切な比を維持しつつ分割後のビット列のサイズを小さくする。
【0105】
この実施例ではMIMO SIGNALシンボルの長さフィールドをパケットの実際のバイト長に設定する。MIMO SIGNALシンボルの中のR14フィールドを個々のデータ速度に設定する。レガシーSIGNALシンボルの中のR14フィールドは第1データストリームのデータ速度に設定でき、また最小データ速度に常に設定しておくこともできる。以下に詳述するとおり、レガシーSIGNALシンボルの中の長さフィールドは、レガシーデバイスで計算したシンボル数がパケットの実際の長さと整合するように操作できる。
【0106】
図9は二つの空間ストリームに対する共用符号器システム900を示す。このシステム900ではソースデータ901をブロック902に供給し、このブロック902によってサービスビットおよび末尾ビットを付加する。この付加処理ずみの出力を符号器903が受けてn1+n2ビットを生ずる。このn1+n2ビットをパンクチュアラ904が受けて所定の速度の出力符号を生ずる。スプリッタ905がその所定の速度でn1+n2ビットを受けて、二つの空間ビットn1およびn2を生ずる。符号器903の出力のn1+n2ビットの各々のうち初めのn1ビットが第1の空間ストリームを形成し、後のn2ビットが第2の空間ストリームを形成する。
【0107】
図10は二つの空間ストリームに対するもう一つの個別符号器システム1000を示す。このシステム1000では、ソースデータバイト、すなわちN1+N2をスプリッタ1002に供給し、二つの空間ストリーム(初めのN1バイトが第1の空間ストリームを形成し、後のN2バイトが第2の空間ストリームを形成する)を形成する。これら第1および第2の空間ストリームN1およびN2をブロック1003Aおよび1003Bにそれぞれ供給し、それらブロックにおいて、サービスビットおよび末尾ビットの付加をそれぞれ行う。これらブロック1003Aおよび1003Bの出力を符号器904Aおよび904Bにおいてそれぞれ符号化し、符号化ずみの出力をパンクチュアラ905Aおよび905Bにそれぞれ供給する。
【0108】
なお、この個別符号器システムにおいては、SIGNALシンボルの中の長さフィールドがバイト表示であるので最小データ単位もバイト表示である。したがって、この場合は各ストリームには前縁で2バイトのサービスビットを付加し末尾で6ビット(乃至1バイト)を付加し得る。また、N1はシンボルあたりのデータバイトの数であり得るし、そのデーバイトの数をシンボルあたりのデータバイトの数全部の最大公約数で除した値でもあり得る。シンボルあたりのバイトの数は9Mbpsを除く全データ速度において整数である。なお、データ速度9Mbpsの場合は各シンボルは4.5バイトを含む。したがって、上記の場合は、ビット列のサイズはデータ速度9Mbpsのデータストリームについて交互に4バイトおよび5バイトとする。
【0109】
例えば、二つの空間ストリーム(ストリーム1およびストリーム2)があって、シンボルあたりのデータバイトの数をそれぞれ27(54Mbps)および4.5(9Mbps)とする。当初は二つのサービスバイトをストリーム1およびストリーム2の各々に送ることができる。次に、初めの25(27−2)データバイトをストリーム1に送り、次の2データバイト(4−2)をストリーム2に送り、次の27データバイトをストリーム1に、次の5バイトをストリーム2にそれぞれ送り、以下同様とすることができる。
【0110】
MIMO SIGNALシンボルの長さフィールドの値が実際の分割を行う前に必要になる。上述の順次式分割では長さ計算が僅かながら複雑になる。分割の動作に僅かな改変を加えることによって実現できる簡単な長さ値算出方法を次に述べる。初めに所要シンボル数を式6により計算する。
【0111】
【数30】
ここで、Lはパケットの中の未符号化バイトの総数、Mはデータストリームの数、B(i)はストリームiのシンボルあたりの未符号化バイトの数である。┌┐は直近の整数への切り上げを示す。9MbpsでK個のデータストリームを用いた場合であって,Nsymが奇数の場合は、式7により計算する。
【0112】
【数31】
第1のデータストリームの中のバイトの数はL(1)=└B(1)Nsym−3┘(ここに└┘は直近の整数への切り下げを表す)となり、第2のデータストリームの中のバイト数はL(2)=min(└B(2)Nsym−3┘、L−L(1))となり、以下同様となる。各ストリームに対してバイトカウンタを用いる。バイト数条件が満たされると、順次式分割動作でストリームをスキップする。なお、式6および式7は、普通の符号器およびパンクチュアラ、一般化したデータストリームの数、および一般化したサービスビット数/末尾ビット数にも当てはまる。また、システム900では長さが一つだけであるので式6および式7はこのシステムには当てはまらない。
【0113】
802.11a/gパケットではSIGNALシンボルにおける長さフィールドは長さ12ビットであり、これはパケットサイズ最大値4095バイトに対応する。MIMOシステムでは4Kバイトよりも大きいパケットがペイロード効率の維持のために望ましい。したがって、正確なパケット長の伝送には、単にSIGNALシンボルに含め得るビット数よりも多いビット数を必要とする。
【0114】
この発明の一つの実施例によると、MIMOパケットと等しい伝送時間を占める速度および長さを表示するように、レガシーSIGNALシンボルで疑似伝送速度および疑似長を用いることができる。許容可能なレガシー速度最低値(802.11a/gでは6Mbps)をパケット長最大化のために用い得る(4069バイト@6Mbps=5.46ms、または、有効な802.11パケット長最大値に対して2304@6Mbps=3.07ms)。
【0115】
一つの実施例では、MIMO SIGNALシンボルについて所要ビット数の制限のためにパケット長絶対値の代わりにパケット長相対値を用い得る。パケット長相対値とは、同一数のシンボルで一つのパケットにより伝送できるバイト数マイナス伝送バイトの実数、すなわち詰め込み処理ずみのバイトの数にほぼ等しい値である。上述のとおり、バイトの総数はパケットの中のシンボルの数(レガシーSIGNALシンボルで定まる)およびデータ速度(MIMO SIGNALシンボルで符号化)を用いて計算できる。
【0116】
共用符号器の場合は単一の長さ相対値を算出して第1のストリームの中のMIMO SIGNALシンボルだけで伝送する。それ以外のデータストリームの中の長さフィールドは他の用途のために保留しうる。個別符号器の場合は、データストリーム各々について相対長を計算して個別に伝送し得る。データストリーム全部についての単一の相対長を計算して第1のデータストリームだけで伝送することもできる(すなわち、この総合相対長から送信機受信機間であらかじめ設定ずみのバイト割り当てスキーム比について個々の相対長を抽出できる)。
【0117】
[AGCおよびチャネル推算]
図7Aに戻ると、レガシー短シンボル601を、粗周波数推算、粗タイミング推算および自動利得制御(AGC)に用いることができる。レガシー長シンボル602は、精周波数推算、精タイミング推算およびチャネル推算に用いることができる。レガシーSIGNALシンボル603は、レガシーデバイスによるMIMOパケット踏み付けの防止に必要な情報、MIMOパケットのシグネチャ、および伝送ずみデータパケット数を含み得る。分割ずみの短シンボル704Aおよび704BはパケットのMIMO部分のAGC用、およびアンテナダイバーシティ切換用(該当する部分)に用い得る。分割ずみの長シンボル705Aおよび705BはMIMOチャネル推算に用い得る。MIMO SIGNALシンボル706Aおよび706Bは伝送データストリームの長さ情報および変調情報を含み得る。
【0118】
レガシーヘッダ612は一つのアンテナから送信され、MIMOヘッダ(短シンボル704Aおよび704B、長シンボル705Aおよび705BおよびSIGNALシンボル706Aおよび706Bを含む)は多アンテナから送信し、各受信アンテナからの受信電力はレガシーヘッダからMIMOヘッダに変わる。この場合、分割ずみの短シンボルは、ADCへの入力の大きさを適宜定められるようにAGCが利得設定を調節する形に設計する。なお、AGCは受信チェーン全部について一つの状態マシーンを用いることができるが、受信チェーン各々が対応の受信信号に互いに異なる利得をもたらすものでも差し支えない。
【0119】
必要であれば付加的タイミング回復および周波数オフセット推算を多アンテナからの受信シンボルにより共同で行う。この共同動作は複数の受信信号の合成によって行う。また、この共同の動作は、最良の信号の選択と、その最良の信号によるタイミング回復およびオフセット推算とで行ってもよい。
【0120】
一つの実施例では、レガシーヘッダ612を最良のアンテナから目的の受信機に送信し得る。すなわち、レガシーヘッダからMIMOヘッダへの電力増加は、M個の空間ストリームを扱うシステムでは、10*log10(M)dB以下であることを意味する。この電力増加は目的の受信機以外の受信機についてはより高くてもよいが、増加の平均値は10*log10(M)以下とする。したがって、精利得変動だけが求められる。
【0121】
上述の分割ずみの長シンボルは2M個のOFDMシンボルの期間(Mは空間ストリームの数)だけ継続する。任意の空間ストリームについてチャネル推算を計算するために、各ストリームの用いる対応のピンを2M個のOFDMシンボルのFFTで抽出し、平均し、周波数領域で合成する。推算誤差を減らすためにチャネル応答出力をフィルタ処理する。Mが大きい場合は、2M個のOFDMシンボルにわたる位相変化は大きくなり得る。一つの実施例では、各OFDMシンボルの位相を、FFT処理、平均値算出、およびフィルタ処理の前に、レガシーヘッダから得た精周波数推算を用いて時間領域で補正できる。2Mシンボル長の期間中の付加的位相変化測定値(精周波数推算値と位相雑音との低精度に起因する)を円滑化処理の前に位相整合のために用い得る。
【0122】
[MIMO信号の検出]
MIMO信号の検出には多様な手法を用いることができる。既知の二つの手法を挙げると、MMSE−LE検出スキームとMMSE−DFE検出スキームとが挙げられる。すなわち、多数のデータストリームの分離および検出に、最小二乗平均誤差(MMSE)線形等化(LE)アルゴリズム、または判定饋還形等化(DFE)アルゴリズムを用いることができる。表記の単純化のために、以下の説明では単一の副搬送波だけを考慮するが、同じ処理を他の副搬送波の各々に反復適用できる。
【0123】
M個の送信アンテナとN個の受信アンテナとを用いるものとする。周波数領域送信信号をx、チャネルをH、雑音をn、受信信号をyでそれぞれを表すと、xはM×1、yおよびnはN×1,HはN×Mとなり、次式、すなわち
【数32】
が成立する。
E‖Wy−x‖を最小にするMMSEの解Wは次式、すなわち
【数33】
で与えられる。ここでRは誤差分散行列である。上記MMSE−LEアルゴリズムではWは上述のとおり算出してyに適用し、データストリーム全部を並行して検出する。
【0124】
MMSE−DFE検出アルゴリズムは二つのステップ(1)および(2)を用いて相次ぐ消去動作を行う。ステップ(1)では零化ベクトルを計算する。この零化ベクトルを計算する過程は三つのステップ(a)、(b)および(c)を含む。ステップ(a)では
の対角成分を計算して最小成分を特定する。その最小成分は信号品質最良の送信アンテナに対応する。ステップ(b)ではWの対応の行を計算する。これは選択した送信アンテナの零化ベクトルとなる。ステップ(c)ではHの中の対応の列を消去してMを1だけ減らす。上記ステップ(a)、(b)および(c)をM=0になるまで繰り返す。
【0125】
ステップ(2)では、複数のデータストリームを検出する。ステップ(2)は四つのステップ(d)、(e)、(f)および(g)を含む。ステップ(d)では、最良の送信アンテナについての零化ベクトルをyに乗算して、最良の送信アンテナの粗判定を行う。ステップ(e)では、Hの対応の列にその粗判定の結果を乗算してその積をyから減算する。ステップ(f)では、全アンテナについて処理を終るまで次善の送信アンテナについてステップ(d)および(e)を繰り返す。ステップ(g)(オプションである)では、判定饋還チャネル推算値更新をデータ判定の結果に基づいて行う。
【0126】
なお、上記粗判定動作は、ハード判定、すなわちチャネル補正ずみの受信シンボルに最も近いコンステレーション点による判定でも、ソフト判定、すなわちいくつかの候補のコンステレーション点を重みづけのうえ加算して得た点(重みは各コンステレーションの尤度に比例)による判定でも行い得る。
【0127】
[ビタービビン重みづけ]
一つの実施例では、慣用の手法で符号化されたデータストリームを受信機での検出のあと複号化するのにビタービ復号器を用いることができる。周波数選択性フェーディングを伴うチャネルでは、信号の品質は周波数ビンごとに異なる。したがって、ビダービ枝路定数計算において状態不良のビンからのデータに割り当てる重みは小さくする。一つの実施例では、最適のビン重みはSNR(信号対雑音比)に比例した値とする。
【0128】
データストリーム一つだけを送信する802.11a/gでは、雑音がビン全体にわたる相加性白色ガウス雑音であるとすると、SNRはチャネル振幅の二乗で近似算出できる。しかし、実際のシステムでは、SNRは、チャネル推算誤差、位相雑音および量子化雑音によってチャネル振幅の二乗よりも緩やかに増加することが多い。したがって、一つの実施例では、チャネル振幅をビン重みづけに用いることができる。
【0129】
MIMOシステムでは、送信されてきたデータストリームの検出時のSNRは、特定の雑音電力密度を仮定して計算できる。同様に、ビタービビン重みの算出にはこの互いに異なる方法を用いることができる。第1の実施例では、ビタービビン重みを検出時SNRに比例する値として算出する。第2の実施例では、ビタービビン重みを検出時SNRの平方根に比例する値として算出する。
【0130】
MMSE−DFEでは、MMSEの式から算出した検出時SNRは誤差伝搬の影響を含んでおらず、あとで検出されるデータストリームの検出時SNRが楽観的過ぎる値になる。そのために、復号器の性能が低下して望ましくない。
【0131】
復号器の性能を改善するために、雑音伝搬の影響をSNR算出時の雑音の項に含めることができる。第2および第3のデータストリームに対する実効雑音項の例を次に示す。
【数34】
ここで、σは、もとの雑音の項であり、Wは零化ベクトルであり、hはチャネルであり、σ(バー)はm番目のデータストリームについての実効雑音項である。
【0132】
[互いに異なる雑音最低値に対する補償]
MMSE検出器に関する上述の展開は、雑音電力がyの諸成分全体にわたって同じであるとの仮定に基づいている。実際のシステムではこの仮定は一般的には正しくない。すなわち、受信機チェーンにおける雑音最低値や利得設定値が互いに異なるからである。したがって、以下に述べるとおり式を変形する。
【0133】
アンテナで受信した信号が次式、すなわち
【数35】
で表されると仮定する。
【0134】
AGCをかけたあとでは、この受信信号は、次式、すなわち
【数36】
で表される。ここで、σは雑音最低値、gはn番目の受信アンテナについての振幅利得である。H(バー)は、AGCをかけたあとのチャネル推算値である。
【0135】
MMSE手法を適用するために雑音分散を同じ値にスケーリングする。そのために、
K=min(gσ)とし、スケーリング行列を次のとおり画定する。
【数37】
スケーリングしたチャネルはHeq=II・H(バー)であり、結果として得られる雑音分散はσeq=Kであって受信アンテナ全部について一定である。この段階で零化ベクトルWeqをHeqおよびσeqから算出できる。
【0136】
eqをyeq=II・y(バー)に適用する。全シンボルについてy(バー)をスケーリングする代わりにW(バー)=Weq・IIを一回だけ計算して、そのW(バー)をy(バー)に直接適用するのが好ましい。MMSE−DFEについては、y(バー)およびH(バー)を用いて相次ぐ消去を行うことができる。スケーリングは不要である。
【0137】
図11は複数の受信機チェーンについてチャネル補正を改変できる受信機1100の一部を示す。受信機1100では、可変利得増幅器1101がアンテナから無線信号(関連のチャネル情報を含む)を受けて、増幅出力をチャネル反転ブロック1102に供給する。自動利得制御(AGC)ブロック1103が増幅器1101への制御信号を生じる。チャネル反転ブロック1102はAGC制御信号および雑音最低値(AGCブロック1103が発生する)を受けてチャネル補正値を生じる。このチャネル補正値をAGCブロック1103に供給してAGC制御信号を修正する。
【0138】
[位相誤差の補償]
位相雑音、残留周波数オフセット、誘発位相誤差、送信機・受信機間の伝搬経路におけるドップラ変動などにより、実効チャネル行列Hの位相はパケット全体を通じて緩やかに変動する。これらの効果を式で表示するために、実効チャネルをΛ・H・Λで表す。ここで
【数38】
および
【数39】
はN個の受信アンテナおよびM個の送信アンテナでの位相変動をそれぞれ表す。これに対応する等化行列はΛ・W・Λであり、この行列は位相推算が得られれば容易に修正できる。
【0139】
上述のとおり、共同パイロット追跡、送信機チェーンごとのパイロット追跡、または送信機・受信機対ごとのパイロット追跡を可能にする互いに別々のパイロットスキームを用いることができる。共同パイロット追跡では送信チェーンおよび受信チェーン、すなわち
ΛおよびΛの全部について一つの共通の位相オフセットを推算してスカラ量ejθと乗算する。等化行列への修正はスカラ量e−jθとを掛けるだけである。
【0140】
送信チェーンごとのパイロット追跡の場合は、送信データストリームあたり一つの位相推算値を推算し、ΛおよびΛを一つのΛに集約する。したがって、等化行列はΛ・Wに変形できる。必要であれば、位相推算値を一つの共通位相値を得るように、送信チェーンにわたって平均化することができる。この平均値は、角度θ=(1/M)Σθ(m)または平均の角度(和と等価)すなわちθ=angle(Σjθt(m))から誘導することができる。
【0141】
送信機・受信機対ごとのパイロット追跡の場合は、直交合成しチャネル補正したパイロットをまず抽出する(式4参照)。第1の実施例では、チャネル行列Hの各成分の位相オフセット、すなわちθn、m(1≦m≦M、1≦n≦N)をそれらパイロットから推算してθ(m)(1≦m≦M)およびθ(n)(1≦n≦N)に変換する。なお、マッピングは次のとおりである。
【数40】
ここで、1は全部1のN×1ベクトル、Iは大きさNの単位行列、θ=[θ(1)θ(2)・・・θ(N)]はN個の受信機における位相のベクトル、θ=[θ1、mθ2、m・・・θN、mは行列Hのm番目の列の位相ベクトルである。疑似反転は送信機および受信機における位相の最小二乗(LS)であり、この値は送信アンテナおよび受信アンテナの数のみで定まり、したがってオフラインで計算できる。
【0142】
具体化に伴う二つの問題をここで検討する。まず、Θの角度は、シンボルからシンボルへの変動で2πを超えないようにする。すなわちΘの変動が2πに及ぶと、Θの変動は2πにならないからである。Θをアンラップするために、現シンボルと先行シンボルとの間のΘの変動を、2πを加算または減算して先行Θに加えることによって、(−π、π)の範囲内に収める。
【0143】
次に、Θの中に信頼度の低い角度がある場合(例えば、行列に信号強度の小さい成分が含まれている場合)は、解も不安定になる。この問題に対する解決策は、Θの中の成分に、コスト関数の形成の際に信頼度に応じた重みづけをし、重みづけずみのLSの式を解くこと、すなわち、‖A・Θ−Θの代わりに、
【数41】
を最小にすることである。ここで┌は重みづけ係数つきの対角行列である。したがって、解は次式、すなわち
【数42】
のとおりとなる。
【0144】
信頼度のより高い成分には重みづけを大きくし、より低い成分には重みづけを小さくする。信頼度の一つの尺度はチャネル成分の大きさである。重みは最大値で正規化し、必要があれば単純化のために量子化する。
【0145】
必要があれば、送信アンテナ・受信アンテナ対全部についての位相オフセット推算値を受信アンテナ全部にわたって平均して送信アンテナあたりの一つの位相推算値すなわちθ(m)=(1/N)Σθn,mを算出し、または送信チェーン・受信チェーン全部にわたって平均して一つの共通位相推算値θ=(1/MN)Σn,mθn,mを算出する。
【0146】
第2の実施例では、θおよびθを対角合成しチャネル補正したパイロットυn、m、k(式4参照)の組み合わせを算出する。パイロットビンおよび受信アンテナ全部にわたる合計の角度は各送信アンテナについてのオフセット値であり、θ(m)=angle(Σn、kυn、m、k)となる。送信アンテナ全体にわたる合計の角度は各受信アンテナについてのオフセット値であり、θ(n)=angle(Σm、kυn、m、k)となる。送信アンテナおよび受信アンテナ全部にわたる合計の角度θ=angle(Σn、m、kυn、m、k)は、計算したのちその半分をバイアス除去のために送信オフセットおよび受信オフセットとの両方から減算する。すなわち、θ(m)=θ(m)−θ/2およびθ(n)=θ(n)−θ/2となる。
【0147】
必要があれば、送信チェーンの各々についてのオフセットだけをθ(m)=angle(Σn、kυn、m、k)により算出して適用する。または、送信チェーンおよび受信チェーン全体にわたる共通位相オフセットをθ=angle(Σn、m、kυn、m、k)により算出して適用する。
【0148】
残留周波数オフセットの継続的補正には、送信チェーンおよび受信チェーン全部にわたる共通の位相オフセットθを用いる。そのオフセット値が残留周波数オフセットに起因する共通位相シフトを反映し、位相雑音による変動を抑制するからである。
【0149】
[閉ループ送信最適化]
MIMO送信機にMIMOチャネルが既知である場合は、送信すべきデータストリームの数、各データストリームに適用すべき伝送速度、各データストリームに用いるべき副搬送波、送信アンテナの選択、各アンテナへの出力電力などの送信スキームを最適化することができる。このようなスキーム最適化によって、MIMOシステムの動作安定性およびスループットが改善される。
【0150】
図3に示した第1の実施例においては、受信機304がチャネルの品質を評価し、その品質情報を送信機301に饋還する。この品質情報はチャネル情報(例えば、チャネル推算値または検出パイロットEVM)のフォーマットでもよく、推賞送信スキームのフォーマットでもよい。なお、検出パイロットEVMはチャネル補正ずみのパイロットおよび既知の清浄パイロットから算出でき、したがって信号品質の格好の尺度になり得る。チャネル情報の饋還には、二つの互いに異なるパケット、すなわち標準的RTS/CTS交換におけるCTSパケットおよびACKパケットを用いることができる。
【0151】
第2の実施例では、送信機301が受信機304からのパケットによりチャネルを推算する。このスキームには相反性が成立し、アップリンクおよびダウンリンクの両方で両側に同じアンテナを使うことができるものとする。したがって、送信機301は、推算したチャネルに基づき最良の送信スキームを決めることができる。
【0152】
なお、空間的大きさの程度の高いチャネルではより多くのデータストリームをサポートでき、その程度の低いチャネルではより少数のデータストリームをサポートできるに留まる。使用データストリームの数の最適値はMIMOチャネル推算値の大きさに基づいて定める。送信ダイバーシティなしのシステムでは、最良チャネルの際の送信アンテナと同数の送信アンテナを利用可能な送信アンテナ全部の中から選ぶ。
【0153】
送信ダイバーシティ付きのシステムでは、各データストリームを適宜位相シフトにかけて、合成ビーム(送信ビーム形成器(TxBP))を生ずるように、複数のアンテナから同時並行的に送信する。データストリームの各々に対するBF処理は、2003年10月8日提出の米国特許出願第10/682,381号「高データ速度信号の多アンテナ送信機ビーム形成装置および方法」、および同年同日提出の米国特許出願第10/682,787号「高データ速度広帯域信号の多アンテナ受信機合成のための装置および方法」(これら出願をここに引用して記載内容をこの明細書に組み入れる)に記載した手法を用いて行うことができる。
【0154】
概括的にいうと、互いに異なるデータストリームを受信アンテナに向けてビーム形成して、受信SNRを高める。この手法は、ダウンリンクトラフィックの多いシステムにおけるアクセスポイントに有用である。送信ビーム形成は、二つ以上でM個以下の独特のデータストリームを送信するとともに過剰のアンテナを用いて冗長度つき符号化および所望の方向への送信ビーム形成を行うことによって、高速度MIMOと組み合わせることができる。
【0155】
離間的マルチトーン(DMI)手法では、各副搬送波の電力および変調の積類をチャネル推算に基づいて定め得る。品質の良い副搬送波は品質の劣る副搬送波よりも消費電力が大きく変調レベルも高い。
【0156】
[受信機選択ダイバーシティ]
コストおよび消費電力の節約のために、MIMO受信機の有する受信機チェーンの数は通常限られている。一方、RFアンテナのコストはずっと小さい。したがって、受信機チェーン数よりも多い受信アンテナを備え、それらアンテナの中の受信状態の良いものを動的に選択する構成にするのが望ましい。受信アンテナ動的選択能力によってダイバーシティ利得が得られ、システムの安定性が改善される。一つの実施例では、複雑さを抑え、切換損失を減らすように、複数のRFアンテナを受信機チェーンと同数の群に群分けし、それら群をスイッチ経由で対応の受信機チェーンに接続する。
【0157】
第1の実施例では、高速アンテナダイバーシティを用いる。高速アンテナダイバーシティでは、各受信機チェーンがそのチェーンに接続されたRFアンテナの信号を高速でサンプリングして、受信信号強度の最も大きいアンテナを選択する。
【0158】
第2の実施例では、選択を検出時SNRに基づいて行う。チャネル推算はRFアンテナ全部について行う。受信アンテナの可能な組み合わせの各々について検出時SNRをデータストリーム対応で計算する。次に、算出されたSNRの最小値をアンテナの可能な組み合わせ全部について比較するSNR最大値および最小値のアンテナの組を選択する。
【0159】
[データ速度適応化]
MIMOシステムのデータ速度適応化は、802.11a/gシステムへの適応化よりも難しい。送信アンテナの各々からチャネル品質を評価するには、相反性利用の非明示的饋還または明示的制御メッセージ利用の明示的饋還が必要である。
【0160】
この饋還の精細度は多様であり得る。最粗レベルでは、全ストリームの中の全データが正しいことを表示するために単一の受信確認を用いる。この手法では、全ストリームに同じデータ速度を用いるスキームでも困難になる。すなわち、サポート可能な送信ストリームの数および最適送信ストリームの判定が困難であるからである。
【0161】
饋還の次のレベルは各データストリームを個別に受信確認する手法である。この受信確認手法は、最適送信アンテナの判定およびサポート可能なデータストリームの数の決定は困難であるが、ストリームの各々について互いに独立のデータ速度適応を可能にする。
【0162】
饋還のもう一つのレベルでは、意図した受信機が、チャネル推算プリアンプルやパケットデータ部の期間中に入来パケットについてチャネル測定を行い得る。この測定による推算で周波数・送信アンテナ組合せの各々の個別のSNRを算定したり、送信機のデータ速度適応に利用可能なアンテナあたりのバルク値に情報を取り込んだりすることができる。中間的な対処策は、パイロットトーン周波数の組など周波数ビンの削減ずみの組のSNRを算定して知らせるだけの方策である。
【0163】
一つの実施例では、意図した受信機が受信に基づいて用いるべき最適データ速度を算定し、そのデータ速度をACKで送信機に送る。送信機はこのACKをデコードし、データ速度を検出し、その検出結果をそのユーザあての次のパケットの処理に適用する。この情報は、各データストリームについてのデータ速度情報、単一のデータ速度およびそれをサポートできる送信アンテナのリスト、または単一のデータ速度およびそれをサポートできる送信アンテナの数を含む。
【0164】
もう一つの実施例では、送信機が意図した受信機でみたチャネルを、その意図した受信機からの特別のMIMO ACKにより推算する。相反性を確保するために、この意図した受信機は自分が受信に用いている全アンテナによりACKを送る。このACKは、データシンボルなしでレガシープリアンプルおよびMIMOプリアンプルだけを含む。送信機はデータ速度適応パラメータ更新の必要があるときはその特別のACKを請求する(なお、喪失パケットの統計データをデータ速度の低速適応のための補助的手段として用いることもできる)。
【0165】
データ速度適応化情報は、特に明示的データ速度の形式の場合は、時効化して、チャネル状態変動に起因する多重受信喪失の場合にデータ速度の低下を可能にしなければならない。
【0166】
[集約、多重検査合計および部分ACK]
MIMOヘッダはパケットオーバーヘッドを著しく増大させる。一方、同じ情報バイト数を伝送するためには、MIMOパケットはより少数のデータシンボルを通常必要とする。したがって、MIMOパケットの総合効率は同じ大きさのレガシーパケットの効率よりもずっと低い。
【0167】
一つの実施例では、MIMOデータ伝送システムのもたらす高データ速度の利点を確保するために、最小閾値以上の大きさのパケットだけをMIMOフォーマットで送信する。パケットサイズを大きくするには、パケット集約、すなわちいくつかのより小さいパケットを大きい「スーパー」パケットにまとめるパケット集約を用い得る。
【0168】
802.11a/gでは、CRC検査合計をパケットの末尾に加え、物理レイヤに伝達する。受信機MACはビタービ復号器の出力におけるCRC誤りをチェックし、パケットが正しく受信されたかを否かを判定する。高データ速度MIMOシステムでは、パケットの中のデータバイト数は、上述のとおり効率を上げるために、通常ずっと大きくしてある。これら長パケットの誤り確率は通常高く、それら長パケットの再送信に伴うコストも同様に高い。
【0169】
この問題を克服するために、各MIMOパケットに多重検査合計を次に述べる二つの方法のいずれかを用いて含める。第1の方法を用いて個々の検査合計を集約前パケットの各々について特定する。第2の方法を用いて、集約後のスーパーパケットを互いに等しい長さの区分に分割し、検査合計をそれら区分の各々につき算出して各区分のあとに挿入する。
【0170】
受信機では(復号器の後段で)検査合計を各パケット/区分について調べて、そのパケット/区分が正しく受信されたか否かを(例えば、受信確認ビットベクトルを用いて)判定する。少なくとも一つのパケット/区分が正しく受信されている場合は、受信機は送信機に部分ACK、すなわちどのパケット/区分が正しく受信されたかを表示する部分ACKを送る。その場合、送信機は送信不達のパケット/区分だけを再送信すればよい。MAC複雑性を軽減するために、MACはパケットのいずれかが誤りに陥った場合は、サブパケット全部の再送信を選ぶことができる。なお、MACはデータ速度適応化のために、受信確認ビットベクトルの個々のビットを使うことができる。
【0171】
図面を参照して例示用の実施例を上に述べてきたが、この発明がこれら特定の実施例に限定されないことを理解されたい。これら実施例は、網羅的に例示することを意図するものではなく、また、この発明をここに開示した形式に限定することを意図するものでもない。すなわち、多様な変形や改変が当業者には自明となるであろう。
【0172】
例えば、図12はいくつかの送信/受信アンテナの構成についてデータ速度と相対距離との関係を表す一群のグラフ1200を示す。グラフ1200のうち、曲線1201は3アンテナ送信機/3アンテナ受信機(3×3)構成の特性を示し、曲線1202は2×3構成の特性を示し、曲線1203は2×2構成の特性を示す。選んだアンテナ構成がデータ速度最大値とシステム安定性との間の妥協の産物であることを理解されたい。すなわち一つの実施例では、曲線1202で特性が示される2×3構成を費用対効果の観点から選択することになろう。
【0173】
なお、MIMO−SMおよびMIMO−AGには「ターボ」モードを加え得る。この「ターボ」モードはより広いチャネル帯域幅を意味し、2003年2月14日提出の米国特許出願第10/367,527号「複数変調タイプの信号のシンケンシングインタポーレータによる受信および送信」および2003年11月6日提出の米国特許出願第10/×××,×××号「データ伝送におけるマルチチャネルバインディング」に記載してある。これら出願をここに参照してその内容をこの明細書に組み入れる。概括的にいうと、ターボモードは、(1)ダブルクロッキングまたは(2)チャネルボンディング、すなわち二つの20MHzチャネル(両者間の間隙を潜在的に利用)を併せて用いることにより達成する。ダブルクロッキングにより正常モードと同じ副搬送波構成に達するが、各副搬送波の帯域幅は2倍になる。チャネルボンディングは各副搬送波の帯域幅を維持するが、副搬送波の数を増加させる。チャネルボンディングの一つの特定の例では、−58から−2、および+2から+58の114のトーンを用いる(DC近傍の三つのトーン、すなわち(−1、0、+1)は用いない)。
【0174】
上述のMIMOシステムの実施例はいずれもターボモードに適合する。
【0175】
図13はいくつかのターボアンテナ構成および非ターボアンテナ構成についてのデータ速度と相対距離との関係を表す一組のグラフ1300を示す。グラフ1300に示されるとおり、ターボMIMO−SMはデータ速度を216Mbpsまで処理できる。しかし、60Mbps以下ではターボMIMO−AGがMIMO−SMの性能を上まわる。
【0176】
したがって、この発明の範囲は添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物によって画定されることを意図するものである。
【産業上の利用可能性】
【0177】
無線LANの利用分野の拡大に寄与できる。
なお、以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[C1]多入力多出力パケット用の時分割トレーニングパターンを送信する方法であって、
第1および第2のアンテナから短シンボル、すなわち、予め定められた短ビンの組、すなわち前記第1のアンテナに関連づけられた第1の組および前記第2のアンテナに関連づけられた第2の組である予め定められた短ビンの組に分割された短シンボルを送信する過程と、
前記短シンボルの送信のあと前記第1および前記第2のアンテナから実質的に同時に長シンボル、すなわち、長ビンの第1の組および第2の組、すなわち前記第1のアンテナが送信の際に前記第2の組の前に前記第1の組を用い前記第2のアンテナが送信の際に前記第1の組の前に前記第2の組を用いる長ビンの第1の組および第2の組と関連づけられた長シンボルを送信する過程と、
前記長シンボルの送信のあと前記第1および前記第2のアンテナから実質的に同時に多入力多出力データと関連づけられたSIGNALシンボルを送信する過程と
を含む方法。
[C2]前記短ビンの前記第1の組が−24,−16,−8,4,12,20を含み、
前記短ビンの前記第2の組が−20,−12,−4,8,16,24を含む
C1記載の方法。
[C3]前記短ビンの前記第1の組が−24,−16,−8,8,16,24を含み、
前記短ビンの前記第2の組が−20,−12,−4,4,12,20を含む
C1記載の方法。
[C4]前記長ビンの前記第1の組が−26,−24,・・・,−2,1,3,・・・,25を含み、
前記長ビンの前記第2の組が−25,−23,・・・,−1,2,4,・・・,26を含む
C1記載の方法。
[C5]前記長ビンの前記第1の組が−26,−24,−2,2,4,・・・,26を含み、
前記長ビンの前記第2の組が−25,−23,・・・,−1,1,3,・・・,25を含む
C1記載の方法。
[C6]前記短ビンの少なくとも二つの分割ずみパターンについてピーク値対平均値比(PAR)値を計算する過程と、最小のPAR値を備える少なくとも二つの分割ずみパターンを用いる過程とをさらに含むC1記載の方法。
[C7]前記長ビンの少なくとも二つの分割ずみパターンについてピーク値対平均値比(PAR)値を計算する過程と、最適化したPAR値を備える少なくとも二つの分割ずみパターンを用いる過程とをさらに含むC1記載の方法。
[C8]前記短シンボルが24個のビンを用いるC1記載の方法。
[C9]前記短ビンの前記第1の組と前記短ビンの前記第2の組が互いに異なる周波数シフトを用いるC1記載の方法。
[C10]前記時分割トレーニングパターンがN個のビンごとに一つのビンを用いている場合に周波数シフトパターンが1乃至N−1個のビンを含み得るC9記載の方法。
[C11]前記短シンボルが12個のビンを含むC1記載の方法。
[C12]前記短シンボルおよび前記長シンボルの前にレガシーヘッダを送信する過程をさらに含み、そのレガシーヘッダが、
前記第1のアンテナから送信されるレガシー短シンボルと、
前記レガシー短シンボルの送信のあと前記第1のアンテナから送信されるレガシー長シンボルと、
前記レガシー長シンボルの送信のあと前記第1のアンテナから送信されるレガシーSIGNALシンボルと
を含むC1記載の方法。
[C13]前記第1のアンテナをひと組のアンテナで構成したC12記載の方法。
[C14]前記アンテナの前記第1の組のビン全体にわたって複素重みづけを適用する過程をさらに含み、それによってビーム形成効果を軽減するC13記載の方法。
[C15]前記複素重みが位相シフトおよび位相の大きさの少なくとも一方を含み、前記ビーム形成効果を軽減することにより実質的に全方位送信を達成するC14記載の方法。
[C16]多入力多出力パケットが送信中であることを表すように前記レガシーヘッダのあとで符号化シンボルを送信する過程をさらに含むC12記載の方法。
[C17]前記符号化シンボルが少なくとも送信ずみのデータストリームの数を示すC16記載の方法。
[C18]前記符号化シンボルが多入力多出力(MIMO)データと関連づけられた前記SIGNALシンボルを含むC16記載の方法。
[C19]前記符号化シンボルが反転パイロットトーン、すなわち同一位置に現れる通常のシンボルとは異なる反転パイロットトーンを含むC18記載の方法。
[C20]多入力多出力(MIMO)パケット用の時分割トレーニングパターンを送信する方法であって、
レガシーヘッダ受信のための自動利得制御を定める第1の複数の短シンボルを含むレガシーヘッダを送信する過程と、
MIMOヘッダ受信のための自動利得制御を容易にする第2の複数の短シンボルを含むMIMOヘッダを送信する過程と
を含む方法。
[C21]多入力多出力(MIMO)パケット用の時分割トレーニングパターンを送信する方法であって、
複数のアンテナから第1の短シンボル、すなわち、予め定めた短ビンの組、すなわちそのサブセットが前記複数のアンテナの各々と関連づけられている予め定めた短ビンの組に分割されている第1の短シンボルを送信する過程を含み、
前記第1の短シンボルをその短シンボルを含むMIMOパケットのための自動利得制御に用いる
方法。
[C22]前記MIMOパケットが第1の長シンボルをさらに含み、
前記複数のアンテナにより実質的に同時に第1の長シンボル、すなわち、長ビンの複数の組、すなわち前記複数のアンテナの各々が送信に互いに異なる順序を用いる長ビンの複数の組と関連づけられた第1の長シンボルを送信する過程を含み、
前記第1の長シンボルをMIMOチャネル推算に用いる
C21記載の方法。
[C23]前記複数のアンテナが第1のアンテナおよび第2のアンテナを含み、
前記第1の短シンボルを、前記レガシーSIGNALシンボルの送信のあと前記第1および前記第2のアンテナ、すなわち短ビンの第1の組に関連づけられた前記第1のアンテナおよび短ビンの第2の組に関連づけられた前記第2のアンテナから送信し、
前記第1の長シンボル、すなわち長ビンの第1の組および第2の組に関連づけられた前記第1の長シンボルを、実質的に同時に前記第1および前記第2のアンテナ、すなわち長ビンの前記第2の組を用いる前に長ビンの前記第1の組を用いて送信する第1のアンテナおよび長ビンの前記第1の組を用いる前に長ビンの前記第2の組を用いて送信する第2のアンテナから送信する
C22記載の方法。
[C24]前記第1および前記第2のアンテナから前記第1の短シンボルおよび前記第1の長シンボルのあと実質的に同時にMIMO関連のSIGNALシンボルを送信する過程をさらに含む
C22記載の方法。
[C25]第2の短シンボルと、
第2の長シンボルと、
レガシーSIGNALシンボルと
を送信する過程をさらに含み、
前記第2の短シンボルをレガシーヘッダの自動利得制御に用い、前記レガシーヘッダが前記第2の短シンボル、前記第2の長シンボルおよび前記レガシーSIGNALシンボルを含み、前記レガシーヘッダを前記MIMOヘッダの前に送信する
C22記載の方法。
[C26]多入力多出力(MIMO)パケット用の時分割トレーニングパターンを送信する方法であって、
レガシーデバイスチャネル推算に用いる第1の複数の長シンボルを含むレガシーヘッダを送信する過程と、
MIMOデバイスチャネル推算に用いる第2の複数の長シンボルを含むMIMOヘッダを送信する過程と
を含む方法。
[C27]多入力多出力(MIMO)パケット用の時分割トレーニングパターンを送信する方法であって、
複数のアンテナから実質的に同時に第1の長シンボル、すなわち複数の長ビン、すなわち互いに異なる順序を用いて前記アンテナの各々が送信を行う複数の長ビンと関連づけられた第1の長シンボルを送信する過程を含み、
前記第1の長シンボルを、その第1の長シンボルを含む前記MIMOパケットのMIMOチャネル推算に用いる
方法。
[C28]20MHzにおける二つのストリームの場合の長系列がL−26:26={−11−1111−1−1−1−11111−11−11−1−1111−1110−111―1−11−1−11−1−11−1−11111−11111111}であり、ここで第1のトーン組が[−26:2:−2 2:2:26]73dBおよび第2のトーン組が[−25:2:−1 1:2:25]であるC27記載の方法。
[C29]20MHzにおける三つのストリームの場合の長系列がL−26:26={−1―111111−1−1−11−1−1−1−1−11111111−1−1101−1―1−11−11−11−111−11−1−111−111−11−1−11}であり、ここで第1のトーン組が[−26:3:−2 2:3:26]、第2のトーン組が[−25:3:−1 3:3:24]、および第3のトーン組が[−24:3:−3 1:3:25]であるC27記載の方法。
[C30]20MHzにおける四つのストリームの長系列がL−26:26={−11111−1―1−11−1111−111−11−1−1−1111−1101120:−11−1−11−1―1−1−11−1−1−11111−111−1111}であり、ここで第1のトーン組が[−26:4:−2 3:4:23]、第2のトーン組が[−25:4:−1 4:4:24]、第3のトーン組が[−24:4:−4 1:4:25]および第4のトーン組が[−23:4:−3 2:4:26]であるC27記載の方法。
[C31]40MHzにおける一つのストリームの場合の長系列がL−58:+58={−11111−111−1−1−1−111111−111−11−111−1−111−1−111−1−1−1―1−11−111−1−1−11−1−11−1−111−1111000−1−1−1−1−1−1―1−1−1−1−1111−11−111−1−11−1−11−11−11−1−1−1−111−11−1−1−11−11−11−111−11−1−11−1111}であるC27記載の方法。
[C32]40MHzにおける二つのストリームの場合の長系列がL−58:+58={−11111−111−1―1−1−111−111−111−11−111−1−111−1−111−1−1−11−11−1111−1−11−1−1−1−1−1−11−11−11000−1−1−1−1−1−1−1−1−1−1−1111―11−111−1−11−111−11−11−1−1−1−111−11−1−1−1−1−11―11111−111−11−1111}であり、ここで第1のトーン組が[−58:2:−2 2:2:58]、第2のトーン組が[−57:2:−3 3:2:57]であるC27記載の方法。
[C33]40MHzにおける三つのストリームの場合の長系列がL−58:+58={−1―1−1−1−1−1111―1−1−1−1−1111−1−1−1−1−1−1111111111−1−1−1−1−1−1111111−1−1−1−1−1−1−1−1−1−1−1−1−1000−1−1−1−1−1−1−1−1−1−1−1−1111―1−1−1111111111−1−1−1−1−1−1−1−1−1−1−1−1111111111111111−1−1−1}であり、ここで第1のトーン組が[−58:3:−4 2:3:56]、第2のトーン組が[−57:3:−3 3:3:57]、および第3のトーン組が[−56:3:−2 4:3:58]であるC27記載の方法。
[C34]40MHzにおける四つのストリームの場合の長系列がL−58:+58={−11−1−1−111−1111−11111−1−1−1−11−1−1−11−11−11−1−1−1−111−1−1−11111−11−1−11−111111−1−1−11000−111−1−1−1−1−1111−111−1−1−11−11−1−1−11−11−1−11111111−1−1−1−111−1111−111−1−11―11−1−111}であり、ここで第1のトーン組が[−58:4:−2 5:4:57]、第2のトーン組が[−57:4:−5 2:4:58]、第3のトーン組が[−56:4:−4 3:4:55]および第4のトーン組が[−55:4:−3 4:4:56]であるC27記載の方法。
[C35]前記MIMOパケットが第1の短シンボルをさらに含み、
前記複数のアンテナを用いて前記第1の短シンボル、すなわち予め定められた短ビンの組、すなわちそのサブセットが複数のアンテナの各々と関連づけられている予め定められた短ビンの組に分割されている第1の短シンボルを送信する過程をさらに含み、
前記第1の短シンボルを、前記第1の短シンボルを含む前記MIMOパケットのための自動利得制御に用いる
C27記載の方法。
[C36]前記複数のアンテナが第1のアンテナおよび第2のアンテナを含み、
前記第1の短シンボルを、短ビンの第1の組に関連づけられた前記第1のアンテナおよび短ビンの第2の組に関連づけられた第2のアンテナから前記レガシーSIGNALシンボルの送信のあと送信し、
前記第1の長シンボル、すなわち長ビンの第1の組および長ビンの第2の組と関連づけられた前記第1の長シンボルを、長ビンの前記第2の組を用いる前に長ビンの前記第1の組を用いて送信を行う前記第1のアンテナと長ビンの前記第1の組を用いる前に長ビンの前記第2の組を用いて送信を行う前記第2のアンテナとにより、実質的に同時に送信する
C35記載の方法。
[C37]前記第1のアンテナおよび前記第2のアンテナを用いて前記第1の短シンボルおよび前記第1の長シンボルのあと実質的に同時にMIMOと関連づけられたSIGNALシンボルを送信する過程を
さらに含むC36記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0178】
図1】単一入力アンテナ単一出力アンテナ構成を備える単純化したシステムの図解。
図2】切換ダイバーシティアンテナ構成を備える単純化したシステムの図解。
図3】複数のアンテナ経由の同時送信および複数のアンテナ経由の同時受信ができる単純化した多入力多出力(MIMO)システムの図解。
図4】種々のアンテナ構成についてのデータ伝送速度対相対距離特性図。
図5】種々のアンテナ構成についてのSNR対周波数ビン特性図。
図6】レガシーヘッダを含むMIMOパケットの時分割トレーニングパターンの例。
図7A】受信機利得制御の改良を容易にするための分割短シンボルおよび長シンボルを含むMIMOパケットのパターンの例。
図7B】三つのデータストリームについての分割短シンボルおよび長シンボルの図解。
図7C】MIMOパケットおよび送信データストリーム数の表示に設定できるレガシーSIGNALシンボルの中のビットのセット。
図8】二つの空間ストリームに対する共用符号化システムの例。
図9】二つの空間ストリームに対する共用符号化システムのもう一つの例。
図10】二つの空間ストリームに対する個別符号化システムの例。
図11】複数の受信機チェーンについてチャネル補正を改変できる受信機の例の一部。
図12】いくつかの送信機/受信機アンテナ構成についての伝送データ速度対相対距離特性図。
図13】種々のターボアンテナ構成および非ターボアンテナ構成についての伝送データ速度対相対距離特性図。
【符号の説明】
【0179】
100,200 送受信システム
101,301 送信機
102,304 受信機
201A,201B,202A,202B,302A,302B,305A,305B アンテナ
203,204 スイッチ
303A,303B 送信機チェーン
306A,306B 受信機チェーン
800,900 共同符号化システム
1000 個別符号化システム
1100 受信機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
図12
図13