【文献】
Jianhua Lie et al, A MIMO system with backward compatibility for OFDM based WLANs, 2003年6月15日, pp.130−134
【文献】
Yusuke ASAI et al, Precise AFC scheme for performance improvement of SDM−COFDM, Vehicular Technology Conference, 2002.Proceedings.VTC2002−Fall.2002 IEEE 56th, 2002年 , vol.3, pp.1408−1412
【文献】
Alexandre Ribeiro Dias et al, MTMR channel estimation and pilot design in the context of space−time block coded OFDM−based WLANs, Proceedings of IST Mobile and Wireless Telecommunications Summit, 2002年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のアンテナおよび前記第2のアンテナによって前記第1の短シンボルおよび前記第1の長シンボルのあと実質的に同時にMIMOに関連づけられたSIGNALシンボルを送信することをさらに含む、請求項3記載の方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
[レガシーヘッダおよびシンボル分割]
この発明の一つの実施例によると、レガシーデバイスは、MIMOパケットに先行する後向き互換性のあるプリアンブルを受けることにより、MIMO信号の「踏みつけ」(すなわち、MIMOパケットの送信の完了前に送信すること)を防ぐ。この後向き互換性のあるプリアンブルはIEEE802.11a/g規格システムに適合しており、レガシーデバイスによるMIMOパケット長さの復号化およびそのパケットの期間中の送信の阻止を可能にするので有利である。また、このプリアンブルは、それに続くパケットがMIMOパケットであるか否かと、そうである場合は送信中のデータストリームがいくつあるかとを表示できる。
【0056】
図6は上記プリアンブルを含むMIMOパケットの時分割トレーニングパターン600の例を示す。より詳しく述べると、この明細書でレガシーヘッダと呼ぶプリアンブル612は、標準の802.11a/g短シンボル、長シンボルおよびSIGNALシンボルを含む。以下の説明では、これらのシンボル(複数形であるが)を単数扱いにすることもある。
【0057】
一つの実施例では、空間ストリーム610および611を二つの(第1および第2の)アンテナからそれぞれ送信する。他の実施例では、送信ストリーム610をビーム形成アンテナ構成の複数のアンテナから送信する。すなわち、空間ストリーム610はアンテナの一つのセットから送信されることを特徴とする。説明の便宜のために、空間ストリーム610を第1のアンテナから送信し、空間ストリーム611を第2のアンテナから送信するものとして説明する。
【0058】
レガシーヘッダ612の中の短シンボル601を粗ppm推算およびタイミングに用いる。第1のアンテナから送信される長シンボル602は第1のアンテナからのチャネルの推算に用い得る。一つの実施例では、SIGNALシンボル603がMIMOパケットの長さ情報を含み、それによってレガシーデバイスによるMIMOパケット踏みつけを防止できるので有利である。第2のアンテナから送信され、それ以外は上記長シンボル602と同一である長シンボル604は、第2のアンテナからのチャネルの推算に用いることができる。SIGNALシンボル605Aおよび605Bは、空間ストリーム610および611のMIMO部分(レガシーヘッダ612のあとの部分)の変調および長さに関する情報をそれぞれ含む。
【0059】
図7Aはレガシーヘッダ612を含むMIMOパケットのもう一つの例示用パターン700を示す。パターン700は、受信機利得制御の改良を容易にする(送信経路が互いに異なる場合も受信信号電力の継続を確保する)ように短シンボルと長シンボルとを分割するので有利である。パターン700では、追加の短シンボル704Aおよび704Bをレガシーヘッダのあとに挿入して、受信機が二次利得調整を実行できるようにしている。
【0060】
受信電力を一定にするためには、二つの(すなわち第1および第2の)アンテナから送信されるトレーニングシンボルは非コヒーレントである必要がある。この非コヒーレンスは、短シンボルと長シンボルとを周波数領域で分割することによって達成できる。すなわち、短シンボル704Aが短シンボル601の用いるビンの半分を用い、短シンボル704Bがそのビンの残りの半分を用いる(すなわち704A+704B=602)。一つの実施例では、各アンテナがこれらビンの半分ずつを用いた互いに異なる時間に送信する。
【0061】
一つのアンテナではビンの半分だけを用いるので、ビンあたりの電力は、分割した短シンボルおよび長シンボルについて2倍になる。すなわち、分割短シンボルを始点として受信電力レベルは一定になる。したがって、分割短シンボルの期間中の利得設定はそのデータシンボルについて有効である。受信機では、チャネル推算をビン半分ずつ抽出してその結果を合成して平滑化する。
【0062】
上記分割は多様な方法で達成できる。一つの実施例では、長シンボル705Aがビン−26、−24,・・・,−2,1,3,・・・,25を用い、長シンボル705Bがビン−25,−23,・・・,−1,2,4,・・・,26を用いる。もう一つの実施例では、長シンボル705Aがビン−26,−24,・・・,−2,2,4,・・・,26を用い、長シンボル705Bがビン−25,−23,・・・,−1,1,3,・・・,25を用いる。長シンボル602のピーク値対平均値比(PAR)が3.18dBであって各ビンのデータが分割後も同じである場合は、この第1のビンを用いた実施例のPARは長シンボル705Aおよび705Bについてそれぞれ5.84dBおよび6.04dBとなり、第2のビンを用いた実施例のPARは長シンボル705Aおよび705Bについてそれぞれ5.58dBおよび5.85dBとなる。
【0063】
分割した短シンボルおよび長シンボルは任意の複数のデータストリームについても一般化して適用できる。例えば、
図7Bに示すとおり、三つのデータストリームがある場合は、ビンを三つのグループA,BおよびCに分けて、それらグループの間をすべてのビンについて等間隔にする。すなわち、分割した短ビンについては、第1のアンテナが短シンボル
714Aを(ビンAを用いて)送信し、第2のアンテナが短シンボル
714Bを(ビンBを用いて)送信し、第3のアンテナが短シンボル
714Cを(ビンCを用いて)送信する。
【0064】
分割した長シンボルについては、第1のアンテナが長シンボル
715A、
715Bおよび
715Cを(ビンA、BおよびCをそれぞれ用いて)順次に送信し、第2のアンテナが長シンボル
715B、
715Cおよび
715Aを(ビンB、CおよびAをそれぞれ用いて)順次に送信し、第3のアンテナが長シンボル
715C、
715Aおよび
715Bを(ビンC、AおよびBをそれぞれ用いて)順次に送信する。この循環パターンによって、ビン全部についてのチャネル推算が可能になり、周波数領域における直交性を常時保持する。周波数26MHzにおける二つのストリームについての長系列の例を挙げると、L
−26:26={−1 1 −1 1 1 1 −1 −1 −1 −1 1 1 1 1 −1 1 −1 1−1 −1 1 1 1 −1 1 1 0 −1 1 1 −1 −1 1 −1 −1 1 −1 −11 −1 −1 1 1 1 1 −1 1 1 1 1 1 1 1}である。ここで、長シンボル705AはPAR値2.73dBのビン[−26:2:−2 2:2:26]を用い、長シンボル705BはPAR値2.67dBのビン[−25:2:−1 1:2:25]を用いている。
【0065】
周波数20MHzにおける三つのストリームについての系列の例を挙げると、L
−26:26={−1 −1 1 1 1 1 1 −1 −1 −1 1 −1 −1 −1 −1 −1 1 1 1 1 1 1 1 −1 −1 1 0 1 −1 −1 −1 1 −1 1 −1 1 −1 1 1 −1 1 −1 −1 1 1 −1 1 1 −1 1 −1 −1}である。ここで、第1のトーンセットはPAR値3.37dBの[−26:3:−2 2:3:26]であり、第2のトーンセットはPAR値3.10dBの[−25:3:−1 3:3:24]であり、第3のトーンセットはPAR値3.10dBの[−24:3:−3 1:3:25]である。周波数20MHzにおける四つのストリームについての系列の例を挙げると、L
−26:26={−1 1 1 1 1 −1 −1 −1 1 −1 1 1 1 −1 1 1 −1 1 −1 −1 −1 1 1 1 −1 1 0 1 1 −1 1 −1 −1 1 −1 −1 −1 −1 1 −1 −1 −1 1 1 1 1 −1 1 1 −1 1 1 1}である。ここで、第1のトーンセットはPAR値3.05dBの[−26:4:−2 3:4:23]であり、第2のトーンセットはPAR値3.05dBの[−25:4:−1 4:4:24]であり、第3のトーンセットはPAR値3.11dBの[−24:4:−4 1:4:25]であり、第4のトーンセットはPAR値3.11dBの[−23:4:−3 2:4:26]である。
【0066】
周波数40MHzにおける一つのストリームについての長系列の値を挙げると、
L
−58:+58={−1 1 1 1 1 −1 1 1 ―1 −1 −1 −1 1 1 1 1 1 −1 1 1 −1 1 −1 1 1 −1 −1 1 1 −1 −1 1 1 −1 −1 −1 −1 −1 1 −1 1 1 −1 −1 −1 1 −1 −1 1 −1 −1 1 1 −1 1 1 1 0 0 0 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 1 1 1 −1 1 −1 1 1 −1 −1 1 −1 −1 1 −1 1 −1 1 −1 −1 −1 −1 1 1 −1 1 −1 −1 −1 1 −1 1 −1 1 −1 1 1 −1 1 −1 −1 1 −1 1 1 1}
である。
【0067】
周波数40MHzにおける二つのストリームについての長系列の値を挙げると、
L
−58:+58={−1 1 1 1 1 −1 1 1 ―1 −1 −1 −1 1 1 −1 1 1 −1 1 1 −1 1 −1 1 1 −1 −1 1 1 −1 −1 1 1 −1 −1 −1 1 −1 1 −1 1 1 1 −1 −1 1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 1 −1 1 −1 1 0 0 0 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 1 1 1 −1 1 −1 1 1 −1 −1 1 −1 1 1 −1 1 −1 1 −1 −1 −1 −1 1 1 −1 1 −1 −1 −1 −1 −1 1 −1 1 1 1 1 −1 1 1 −1 1 1 1}
である。ここで、第1のトーンセットは[−58:2:−2 2:2:58]であり、第2のトーンセットは[−57:2:−3 3:2:57]である。
【0068】
周波数40MHzにおける三つのストリームについての長系列の値を挙げると、
L
−58:+58={−1 −1 −1 −1 −1 −1 1 1 1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 1 1 1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 1 1 1 1 1 1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 0 0 0 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 1 1 1 −1 −1 −1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 −1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 −1 −1 −1}
である。ここで、第1のトーンセットは[−58:3:−4 2:3:56]であり、第2のトーンセットは[−57:3:−3 3:3:57]であり、第3のトーンセットは[−56:3:−2 4:3:58]である。
【0069】
周波数40MHzにおける四つのストリームについての長系列の値を挙げると、
L
−58:+58={−1 1 −1 −1 −1 1 1 −1 1 1 1 −1 1 1 1 1 −1 −1 −1 −1 1 −1 −1 −1 1 −1 1 −1 1 −1 −1 −1 −1 1 1 −1 −1 −1 1 1 1 1 −1 1 −1 −1 1 −1 1 1 1 1 1 −1 −1 −1 1 0 0 0 −1 1 1 −1 −1 −1 −1 −1 1 1 1 −1 1 1 −1 −1 −1 1 −1 1 −1 −1 −1 1 −1 1 −1 −1 1 1 1 1 1 1 1 −1 −1 −1 −1 1 1 −1 1 1 1 −1 1 1 −1 −1 1 −1 1 −1 ―1 1 1}
である。ここで、第1のトーンセットは[−58:4:−2 5:4:57]であり、第2のトーンセットは[−57:4:−5 2:4:58]であり、第3のトーンセットは[−56:4:−4 3:4:55]であり、第4のトーンセットは[−55:4:−3 4:4:56]である。なお、PAR値低減のためにデータパターンのサーチを行うことができる。
【0070】
短シンボルも、四つのビンのうちの一つだけを用いる点を別にすれば上述の場合と同様に分割できる。例えば、一つの実施例では、短シンボル704Aがビン−24,−16,−8,4,12,20を用い、短シンボル704Bがビン−20,−12,−4,8,16,24を用い得る。もう一つの実施例では、短シンボル704Aがビン−24,−16,−8,8,16,24を用い、短シンボル704Bがビン−20,−12,−4,4,12,20を用い得る。短シンボル601のPAR値が2.09dBである場合は、短シンボル704Aおよび704Bの両方について第1のビンを用いた実施例のPAR値は4.67dBとなり、第1のビンを用いた実施例のPAR値は短シンボル704Aについて4.32dB、短シンボル704Bについて2.79dBとなる。なお、第1ビン利用の実施例を網羅的にサーチする場合は、PAR最小値4.26dBとなる。第2のビン利用の実施例について同様のサーチを行う場合は、極性{1 −1 1 −1 −1 −1}の短シンボル704AについてのPAR最小値は1.6dBになり、極性{1 −1 −1 −1 −1 1}の短シンボル704BについてのPAR最小値は2.79dBとなる。
【0071】
分割した短シンボルに用いたビンの数は少ないことに注目されたい。したがって、チャネルが周波数選択性を備える場合は、分割した短シンボル、分割した長シンボルおよびSIGNALシンボルの送信電力が互いに等しいとすると、受信電力の平均値は分割ずみの短シンボル相互間で大幅に異なる。受信電力のこの差は受信機利得制御を困難にする。したがって、一つの実施例では短シンボルに24個のビンを用いて分割短シンボルの各々により多くのビンを確保するようにしている。もう一つの実施例では、12個のビンで周波数シフトずみの短シンボルをデータストリームすべてに用いるものの、各データストリームが互いに異なる周波数シフトを用い得る。すなわち、もとの短シンボル用の周波数からビン1個分、2個分または3個分のシフトをかけた周波数で用い得る。この周波数シフトによって、短シンボルから分割ずみ長シンボルおよびそれ以後への受信電力の連続性を確実にすることができる。しかし、この構成では、サポートできる送信データストリームの数は4以下である。また、シフトした短シンボルの周期はレガシー短シンボルの周期よりも長く、そのために周波数オフセットの実現に改変を要することもあろう。
【0072】
上述のとおり、レガシーヘッダはアンテナの一つのセットから送信する。そのセットが複数のアンテナを含む場合は、ビーム形成効果が生じ得る。全方位送信を達成するために、それらアンテナの各々に対する各周波数ビンの複素寄与分を重み付けする。例えば、位相シフト(例えば、位相ランプまたは任意の位相シフト)や位相値を他のアンテナへのビン全体に適用してビーム形成効果がビンごとに異なるようにする。位相ランプ形成手法の例としては、無線技術分野の当業者に周知の巡回遅延ダイバーシティ(CDD)などがある。
【0073】
位相値の例としては、一つのアンテナに偶数番目のビンを用いもう一つのアンテナに奇数番目のビンを用いる手法がある。位相値のもう一つの例としては、正極性の周波数ビン全部を一つのアンテナに用い、負極性の周波数ビン全部をもう一つのアンテナに用いる手法がある。すなわち、二つのアンテナへの各周波数ビンの寄与を互いに独立に重みづけする手法を全方位送信の達成に用いることができる。
【0074】
MIMOパケットを受信できる受信機はレガシー802.11a/gパケットも受信できるはずであるので、レガシーパケットとは異なるMIMOパケットという名称を与えるメカニズムも提供できる。また、パケットがMIMOパケットである場合は、受信機は送信されてきたデータストリームの数を把握する必要がある。
図7Cに示した実施例では、レガシーSIGNALシンボル603の第1のビットのセットがMIMOパケットを表示し、同シンボル603の第2のビットセットが送信されてきたデータストリームの数を表示し得る。例えば、SIGNALシンボル603の予備ビットRを「1」にセットして、MIMOパケットが送信中であることを表示することができる。また、SIGNALシンボル603の長さフィールド721の中の所定数の下位ビットを、送信されてきたデータストリームの数の表示に用いることができる。すなわち、最下位の二つのビットを用いた場合は、長さフィールドの長さの値を最下位から三番目のビットに端数切り上げにする。
【0075】
MIMO受信機は、レガシーSIGNALシンボル603の復号化の後、予備ビットRをチェックすることができる。そのビットが「0」の場合はそのパケットはレガシーパケットであり、長さフィールド721の中の長さの値はバイト数表示のパケット長さの真値である。しかし、予備ビットが「1」の場合は、そのパケットはMIMOパケットであり、長さフィールドの最下位から二つのビットは送信されてきたデータストリームの数である。後者の場合は、パケットの長さは2バイト以内の精度である。レガシー受信機は送信差控え時間の算出に長さの値だけを用いる。したがって、長さフィールドの値をレガシーデバイスのために高精度にする必要はない。上述のとおり各データストリームの長さの真値をMIMO SIGNALシンボル(例えば
図7Aの706Aおよび706B)に含めることができる。したがって、MIMO受信機は長さフィールド721の蓄積された値を実効的に無視できる。
【0076】
もう一つの実施例ではMIMOストリームの数を表すのに「モジュロ」動作を用いることができる。より詳細に述べると、パケットのデータバイト数がLである場合は、シンボルあたりのデータバイトの数はBであり、サービスバイトおよび末尾バイトの数はCであり、所要シンボル数は次式、すなわち
【数10】
で与えられる。ここで┌┐は最も近い整数への端数切上げを示す。ここで、データストリームの数がMでありM
<Bであると仮定する。その場合は改変ずみの長さは次式、すなわち
【数11】
で表される。
レガシーデバイスで計算したシンボルの数がやはりN
sym、すなわち
【数12】
で表されることに注目されたい。
【0077】
MIMOデバイスはストリーム数を次式、すなわち
【数13】
で算出できる。
【0078】
M=BであればM(バー)は零である。その場合は、M(バー)=Bのマッピングが行われる。なお、この同じ手法をストリーム数以外の他の情報のシグナリングにも適用でき、その場合はシグナリング対象の情報は上述のとおりMとして符号化される。
【0079】
さらに他の実施例では、符号化シンボル722をMIMOパケット表示のために(予備ビットは他の用途のために保持して)レガシーSIGNALシンボル603の後に挿入できる。符号化シンボル722は(同位置に現れるはずの通常のシンボルに対して)反転したパイロットトーン(すなわち+/−)付きのMIMO SIGNALシンボルを含み得る。例えば、符号化シンボル722は、雑音耐性強化のためにBPSK変調で改変したSIGNALシンボル706A’および706B’を含み得る。この実施例では、MIMO受信機は入来パケットがMIMOパケットであるかレガシーパケットであるかを符号化シンボル722のパイロットの位相に基づいて判定できる。それがMIMOパケットであった場合は、送信データストリームの数を抽出でき、そのパケットの残り部分をMIMO適合の方法で検出できる。それ以外については、そのパケットをレガシー802.11a/gパケットとして取り扱う。
【0080】
[パイロット]
周波数オフセット追跡および位相雑音追跡のために802.11a/gシステムにパイロットを挿入する。送信機および受信機において多数の無線周波数回路を用いるMIMOシステムでは、互いに異なる送信チェーンおよび受信チェーンが受ける位相雑音には共通なものまたは互いに別々のものもある。この発明の一つの側面によると、パイロット追跡スキームを送信チェーンごとに共通に、または送信機受信機対ごとに設ける。
【0081】
送信機受信機間の周波数オフセットおよび位相雑音のために、受信データシンボルの位相はパケットの送信中に変動し得る。その位相変動を追跡して補正するために、802.11a/gのOFDMシンボルの各々に[111−1]*p
1のフォーマットで四つのパイロットを挿入する。この[111−1]はパイロットビンにまたがるパターンであり、p1はシンボル1のパイロット極性である。MIMO OFDMシンボルについては、4ビットパターンおよびパイロット極性系列の両方を複数の空間ストリームに適用する。
【0082】
一つの実施例では、802.11a/gと同じパイロットフォーマットを送信データストリーム全部に複写使用する。例えば802.11a/gシンボルのパイロット極性系列がp
0,p
1,p
2,p
3,p
4,・・・である場合は、MIMOシンボルに次のパイロット極性、すなわち
【数14】
を用い得る。ここで、この行列は行ごとに互いに異なる送信ストリームを表す。
【0083】
パイロット極性は互いに異なる空間ストリームについて同じであるので、4ビットパターンをそれらストリーム全部に複写使用すればパイロットビンは固定のビーム形成パターンが生ずる結果になる。状態の悪いビンが常に零にとどまることがないようにするために、位相シフトを加えて四つのビンにわたりシンボルごとに循環するようにする。例えば、
【数15】
【0084】
第2のアンテナ(Ant2)のパイロットは第1のシンボルで位相シフト0゜、90゜、180゜および270゜を受け、後続のシンボルで周期的に循環する。なお、四つのパイロットビンについて初期パイロットパターン[1111]を用いているが、このスキームは任意の初期パイロットパターンに適用でき、また五つ以上のパイロットビンにも適用でいる。すなわち、推算のために挿入するパイロットは任意の周波スペクトラムにわたって間隔を設けることができる。
【0085】
パイロット追跡は互いに異なる方法で実行できる。例えば、位相雑音が送信機チェーンおよび受信機チェーン全部にわたって共通である(それによって共同追跡が可能になる)場合は、受信機チェーンの各々がチャネル推算値および既知のパイロットパターンに基づき各パイロットビン中の受信信号を推算できる。この推算値の複素共役値を実際の受信パイロット信号に乗算する。その乗算結果をパイロットビンおよび受信機チェーンを跨いで合成する。最終結果の位相が所望の位相オフセット値になる。数式で表すと、受信機nにおけるパイロットビンkの受信信号は次式、すなわち
【0086】
【数16】
で表される。ここで、s
m,kはストリームmのパイロットシンボル、θは共通位相オフセット、H
n,m,kはチャネル応答、n
n,kは雑音である。また、共通位相オフセットは、式2,すなわち
【0087】
【数17】
で表される。ここで、H
n,m,k(バー)は推算したチャネルである。
【0088】
これに対して、他の送信チェーンにわたって別の位相雑音がある(そのために送信チェーンごとのパイロット追跡が必要になる)場合は、MIMO検出アルゴリズムをパイロットs
m,k(バー)のためにパイロットビンにまず適用する。
【数18】
であるので(ここでθ
t(m)はストリームmの位相オフセット)、復号化したパイロットと理想パイロットとの間の位相差は各データストリームのパイロットビンにわたって平均して式3、すなわち
【0089】
【数19】
で表される位相推算値を生ずることができる。
【0090】
位相雑音が送信チェーン全体と受信チェーンとの間で互いに独立である(そのために送信チェーン・受信チェーン対あたりのパイロット追跡が必要になる)場合は、パイロット極性系列を、送信チェーン・受信チェーン対の各々について別々に位相を推算できるように、直交パターンで変調することができる。送信データストリームの数がMである場合は、ストリームmについての変調パターン(ここで、1≦m≦M)は次式、すなわち
【数20】
で表される。ここでl≧0はMIMOシンボルの指標である。例えば、三つの被変調ストリームについての被変調パイロット極性系列の例を挙げると、
【数21】
が挙げられる。
【0091】
なお、次式、すなわち
【数22】
の関係が成立する。ここでδ
m,n(バー)=1(m=nの場合)、または0(m≠nの場合)である。すなわち、シンボルM個分の長さの任意の区間にわたるデータストリームについて(kはM個の直交データシンボルの開始指標を表す)パターンは直交パターンである。この場合は、直交性維持のためにストリーム全部について同一の4ビットパイロットパターンを用いる必要がある。
【0092】
一つの実施例では、各アンテナが受信した最後の(M−1)個のシンボルをバッファに保存することができる。そのあと各アンテナが新たなシンボルを受信した際にこれらM個のシンボルについてのパイロットの複素共役値をシンボルと乗算して加算し、次式、すなわち
【数23】
を計算する。ここで、y
n,k(l)はl番目のシンボルについてのビンkのチェーンnの受信信号であり、r
m,k(l)はl番目のシンボルについてのビンkのストリームmのパイロットシンボルである。項r
m,k(l)はビンパイロットパターンと、もとのパイロット極性と、直交変調とを含む。この計算をすべてのパイロットビンkの中のすべての送信・受信対(m,n)について行う。その結果をチャネル推算の複素共役値に乗算し、式4、すなわち
【0093】
【数24】
で表される直交合成ずみでチャネル補正ずみのパイロットを生ずる。
【0094】
次に、受信アンテナnのストリームmの位相オフセットをパイロットビンにわたって平均した式5,すなわち
【0095】
【数25】
のとおり推算する。
【0096】
初めの(M−1)個のMIMOシンボルについては、履歴の長さが十分でないので、共同の、または送信チェーンあたりのパイロット追跡方法を用いることができる。また、次の条件、すなわち
【数26】
を満足する任意の直交パターンq
m(l)(mおよびlは上に定義したとおり)をパイロット極性系列の変調に用いることができる(ここで、m,n,l,kおよびMは上に定義したとおり)。例えば、上述の例の三つの送信ストリームについての変調ずみパイロット極性系列は
【数27】
となる。
【0097】
なお、802.11a/gパイロット極性系列の継承物は類似点についてだけであるので、全部度外視してp
l=1と設定することができる。この設定により第3および第4の実施例が得られる。第3の実施例では、パイロット極性系列は全部1,すなわち
【数28】
となる。
【0098】
第1の実施例と同様に、パイロットビンを跨いで周期的に循環する位相シフトを、固定ビーム形成効果を避けるように、含める必要がある。共同パイロット追跡、または送信チェーンごとのパイロット追跡を行うことができる。
【0099】
第4の実施例では、パイロット系列はq
m(l)のみであり、次のとおり表される。
【数29】
この場合はビン全部に同一のパイロットパターンを全ストリームについて用いることができる。送信・受信対ごとのパイロット追跡を行うことができる。
【0100】
[データストリーム分割]
MIMO SIGNALシンボルを形成するには、もとのデータビットを複数のデータストリームに適切に分割しなければならない。規格801.11a/gでは、レート1/2、2/3および3/4の畳込み符号を用い、四つの変調スキーム(すなわち、BPSK、QPSK、16QAMおよび64QAM)を提供する。符号速度と変調スキームによって各OFDMシンボルにおけるビット数が定まる。MIMO性能を最大にするには、互いに異なるデータストリームごとに互いに異なる変調と符号化速度を許容する必要がある。したがって、各MIMO信号シンボルのビット数は、データシンボルごとに異なり得る。
【0101】
通常の符号化ブロックは、WLAN技術分野で周知の符号器およびパンクチュアラ(例えば、IEEE802.11aの第17.3.5.6節に記載)で構成する。この発明の一つの側面によると、互いに異なる符号は、共通の符号器と別々のパンクチュアラとの組み合わせを用い、または共通のパンクチュアラと別々の符号器との組み合わせを用いて構成できる。共通の符号器を用いた場合は、分割は符号器の前段またはパンクチュアラの前段で行うことができる。互いに別々の符号器を用いた場合は、分割は符号器の前段で行われなければならない。パンクチュアラの前段での分割の場合をこの明細書では、「共用」符号器と呼び、符号器の前段での分割の場合を「個別」符号器と呼ぶ。なお、802.11a/gでは、レート2/3符号および3/4符号の両方をレート1/2の畳込み符号からパンクチャする。したがって、上記の共用符号器でも個別符号器でも具体化できる。
【0102】
符号器を初期化して終了させることができるように、ソースデータビットの前または後に付加ビットを挿入することができる。例えば、802.11a/gでは、ソースデータビットの前に16個のサービスビットを付加し、ソースデータビットの後に6個の末尾ビットを付加することができる。したがって、上記個別符号器の場合は、これら付加ビットを各符号器について挿入する。
【0103】
図8には二つの空間ストリームのための共用符号器システム800の例を示す。このシステム800では、ソースビット801をブロック802に供給し、このブロック802で上述のサービスビットおよび末尾ビットを付加する。符号器803は上記付加ずみのビットを受けてn1+n2ビットを生ずる。スプリッタ804はこのn1+n2ビットを受けて二つの空間ストリームn1およびn2を生じ、それらストリームをパンクチュアラ805Aおよび805Bにそれぞれ供給する。
【0104】
一つの実施例では、符号器803の出力におけるn1+n2ビットごとに、初めのn1ビットが第1の空間ストリームを形成し、後のn2ビットが第2の空間ストリームを形成する。分割後のビット列のサイズn
iはn
i=N
cbps(i)(ここでN
cbpsはパンクチュアリング操作前のシンボルあたりの符号化ビットの数)で表され、シンボルごとに分割を行う。ビット列のサイズのもう一つの例は、n
i=N
cbps(i)/gcd(N
cbps(1)、N
cbps(2))(ここでgcd( )は最大公約数)で表され、この場合は処理遅延低減に適切な比を維持しつつ分割後のビット列のサイズを小さくする。
【0105】
この実施例ではMIMO SIGNALシンボルの長さフィールドをパケットの実際のバイト長に設定する。MIMO SIGNALシンボルの中のR14フィールドを個々のデータ速度に設定する。レガシーSIGNALシンボルの中のR14フィールドは第1データストリームのデータ速度に設定でき、また最小データ速度に常に設定しておくこともできる。以下に詳述するとおり、レガシーSIGNALシンボルの中の長さフィールドは、レガシーデバイスで計算したシンボル数がパケットの実際の長さと整合するように操作できる。
【0106】
図9は二つの空間ストリームに対する共用符号器システム900を示す。このシステム900ではソースデータ901をブロック902に供給し、このブロック902によってサービスビットおよび末尾ビットを付加する。この付加処理ずみの出力を符号器903が受けてn1+n2ビットを生ずる。このn1+n2ビットをパンクチュアラ904が受けて所定の速度の出力符号を生ずる。スプリッタ905がその所定の速度でn1+n2ビットを受けて、二つの空間ビットn1およびn2を生ずる。符号器903の出力のn1+n2ビットの各々のうち初めのn1ビットが第1の空間ストリームを形成し、後のn2ビットが第2の空間ストリームを形成する。
【0107】
図10は二つの空間ストリームに対するもう一つの個別符号器システム1000を示す。このシステム1000では、ソースデータバイト、すなわちN1+N2をスプリッタ1002に供給し、二つの空間ストリーム(初めのN1バイトが第1の空間ストリームを形成し、後のN2バイトが第2の空間ストリームを形成する)を形成する。これら第1および第2の空間ストリームN1およびN2をブロック1003Aおよび1003Bにそれぞれ供給し、それらブロックにおいて、サービスビットおよび末尾ビットの付加をそれぞれ行う。これらブロック1003Aおよび1003Bの出力を符号器904Aおよび904Bにおいてそれぞれ符号化し、符号化ずみの出力をパンクチュアラ905Aおよび905Bにそれぞれ供給する。
【0108】
なお、この個別符号器システムにおいては、SIGNALシンボルの中の長さフィールドがバイト表示であるので最小データ単位もバイト表示である。したがって、この場合は各ストリームには前縁で2バイトのサービスビットを付加し末尾で6ビット(乃至1バイト)を付加し得る。また、N1はシンボルあたりのデータバイトの数であり得るし、そのデーバイトの数をシンボルあたりのデータバイトの数全部の最大公約数で除した値でもあり得る。シンボルあたりのバイトの数は9Mbpsを除く全データ速度において整数である。なお、データ速度9Mbpsの場合は各シンボルは4.5バイトを含む。したがって、上記の場合は、ビット列のサイズはデータ速度9Mbpsのデータストリームについて交互に4バイトおよび5バイトとする。
【0109】
例えば、二つの空間ストリーム(ストリーム1およびストリーム2)があって、シンボルあたりのデータバイトの数をそれぞれ27(54Mbps)および4.5(9Mbps)とする。当初は二つのサービスバイトをストリーム1およびストリーム2の各々に送ることができる。次に、初めの25(27−2)データバイトをストリーム1に送り、次の2データバイト(4−2)をストリーム2に送り、次の27データバイトをストリーム1に、次の5バイトをストリーム2にそれぞれ送り、以下同様とすることができる。
【0110】
MIMO SIGNALシンボルの長さフィールドの値が実際の分割を行う前に必要になる。上述の順次式分割では長さ計算が僅かながら複雑になる。分割の動作に僅かな改変を加えることによって実現できる簡単な長さ値算出方法を次に述べる。初めに所要シンボル数を式6により計算する。
【0111】
【数30】
ここで、Lはパケットの中の未符号化バイトの総数、Mはデータストリームの数、B(i)はストリームiのシンボルあたりの未符号化バイトの数である。┌┐は直近の整数への切り上げを示す。9MbpsでK個のデータストリームを用いた場合であって,N
symが奇数の場合は、式7により計算する。
【0112】
【数31】
第1のデータストリームの中のバイトの数はL(1)=└B(1)N
sym−3┘(ここに└┘は直近の整数への切り下げを表す)となり、第2のデータストリームの中のバイト数はL(2)=min(└B(2)N
sym−3┘、L−L(1))となり、以下同様となる。各ストリームに対してバイトカウンタを用いる。バイト数条件が満たされると、順次式分割動作でストリームをスキップする。なお、式6および式7は、普通の符号器およびパンクチュアラ、一般化したデータストリームの数、および一般化したサービスビット数/末尾ビット数にも当てはまる。また、システム900では長さが一つだけであるので式6および式7はこのシステムには当てはまらない。
【0113】
802.11a/gパケットではSIGNALシンボルにおける長さフィールドは長さ12ビットであり、これはパケットサイズ最大値4095バイトに対応する。MIMOシステムでは4Kバイトよりも大きいパケットがペイロード効率の維持のために望ましい。したがって、正確なパケット長の伝送には、単にSIGNALシンボルに含め得るビット数よりも多いビット数を必要とする。
【0114】
この発明の一つの実施例によると、MIMOパケットと等しい伝送時間を占める速度および長さを表示するように、レガシーSIGNALシンボルで疑似伝送速度および疑似長を用いることができる。許容可能なレガシー速度最低値(802.11a/gでは6Mbps)をパケット長最大化のために用い得る(4069バイト@6Mbps=5.46ms、または、有効な802.11パケット長最大値に対して2304@6Mbps=3.07ms)。
【0115】
一つの実施例では、MIMO SIGNALシンボルについて所要ビット数の制限のためにパケット長絶対値の代わりにパケット長相対値を用い得る。パケット長相対値とは、同一数のシンボルで一つのパケットにより伝送できるバイト数マイナス伝送バイトの実数、すなわち詰め込み処理ずみのバイトの数にほぼ等しい値である。上述のとおり、バイトの総数はパケットの中のシンボルの数(レガシーSIGNALシンボルで定まる)およびデータ速度(MIMO SIGNALシンボルで符号化)を用いて計算できる。
【0116】
共用符号器の場合は単一の長さ相対値を算出して第1のストリームの中のMIMO SIGNALシンボルだけで伝送する。それ以外のデータストリームの中の長さフィールドは他の用途のために保留しうる。個別符号器の場合は、データストリーム各々について相対長を計算して個別に伝送し得る。データストリーム全部についての単一の相対長を計算して第1のデータストリームだけで伝送することもできる(すなわち、この総合相対長から送信機受信機間であらかじめ設定ずみのバイト割り当てスキーム比について個々の相対長を抽出できる)。
【0117】
[AGCおよびチャネル推算]
図7Aに戻ると、レガシー短シンボル601を、粗周波数推算、粗タイミング推算および自動利得制御(AGC)に用いることができる。レガシー長シンボル602は、精周波数推算、精タイミング推算およびチャネル推算に用いることができる。レガシーSIGNALシンボル603は、レガシーデバイスによるMIMOパケット踏み付けの防止に必要な情報、MIMOパケットのシグネチャ、および伝送ずみデータパケット数を含み得る。分割ずみの短シンボル704Aおよび704BはパケットのMIMO部分のAGC用、およびアンテナダイバーシティ切換用(該当する部分)に用い得る。分割ずみの長シンボル705Aおよび705BはMIMOチャネル推算に用い得る。MIMO SIGNALシンボル706Aおよび706Bは伝送データストリームの長さ情報および変調情報を含み得る。
【0118】
レガシーヘッダ612は一つのアンテナから送信され、MIMOヘッダ(短シンボル704Aおよび704B、長シンボル705Aおよび705BおよびSIGNALシンボル706Aおよび706Bを含む)は多アンテナから送信し、各受信アンテナからの受信電力はレガシーヘッダからMIMOヘッダに変わる。この場合、分割ずみの短シンボルは、ADCへの入力の大きさを適宜定められるようにAGCが利得設定を調節する形に設計する。なお、AGCは受信チェーン全部について一つの状態マシーンを用いることができるが、受信チェーン各々が対応の受信信号に互いに異なる利得をもたらすものでも差し支えない。
【0119】
必要であれば付加的タイミング回復および周波数オフセット推算を多アンテナからの受信シンボルにより共同で行う。この共同動作は複数の受信信号の合成によって行う。また、この共同の動作は、最良の信号の選択と、その最良の信号によるタイミング回復およびオフセット推算とで行ってもよい。
【0120】
一つの実施例では、レガシーヘッダ612を最良のアンテナから目的の受信機に送信し得る。すなわち、レガシーヘッダからMIMOヘッダへの電力増加は、M個の空間ストリームを扱うシステムでは、10*log10(M)dB以下であることを意味する。この電力増加は目的の受信機以外の受信機についてはより高くてもよいが、増加の平均値は10*log10(M)以下とする。したがって、精利得変動だけが求められる。
【0121】
上述の分割ずみの長シンボルは2M個のOFDMシンボルの期間(Mは空間ストリームの数)だけ継続する。任意の空間ストリームについてチャネル推算を計算するために、各ストリームの用いる対応のピンを2M個のOFDMシンボルのFFTで抽出し、平均し、周波数領域で合成する。推算誤差を減らすためにチャネル応答出力をフィルタ処理する。Mが大きい場合は、2M個のOFDMシンボルにわたる位相変化は大きくなり得る。一つの実施例では、各OFDMシンボルの位相を、FFT処理、平均値算出、およびフィルタ処理の前に、レガシーヘッダから得た精周波数推算を用いて時間領域で補正できる。2Mシンボル長の期間中の付加的位相変化測定値(精周波数推算値と位相雑音との低精度に起因する)を円滑化処理の前に位相整合のために用い得る。
【0122】
[MIMO信号の検出]
MIMO信号の検出には多様な手法を用いることができる。既知の二つの手法を挙げると、MMSE−LE検出スキームとMMSE−DFE検出スキームとが挙げられる。すなわち、多数のデータストリームの分離および検出に、最小二乗平均誤差(MMSE)線形等化(LE)アルゴリズム、または判定饋還形等化(DFE)アルゴリズムを用いることができる。表記の単純化のために、以下の説明では単一の副搬送波だけを考慮するが、同じ処理を他の副搬送波の各々に反復適用できる。
【0123】
M個の送信アンテナとN個の受信アンテナとを用いるものとする。周波数領域送信信号をx、チャネルをH、雑音をn、受信信号をyでそれぞれを表すと、xはM×1、yおよびnはN×1,HはN×Mとなり、次式、すなわち
【数32】
が成立する。
E‖W
*y−x‖
2を最小にするMMSEの解Wは次式、すなわち
【数33】
で与えられる。ここでR
eは誤差分散行列である。上記MMSE−LEアルゴリズムではW
*は上述のとおり算出してyに適用し、データストリーム全部を並行して検出する。
【0124】
MMSE−DFE検出アルゴリズムは二つのステップ(1)および(2)を用いて相次ぐ消去動作を行う。ステップ(1)では零化ベクトルを計算する。この零化ベクトルを計算する過程は三つのステップ(a)、(b)および(c)を含む。ステップ(a)では
R
eの対角成分を計算して最小成分を特定する。その最小成分は信号品質最良の送信アンテナに対応する。ステップ(b)ではW
*の対応の行を計算する。これは選択した送信アンテナの零化ベクトルとなる。ステップ(c)ではHの中の対応の列を消去してMを1だけ減らす。上記ステップ(a)、(b)および(c)をM=0になるまで繰り返す。
【0125】
ステップ(2)では、複数のデータストリームを検出する。ステップ(2)は四つのステップ(d)、(e)、(f)および(g)を含む。ステップ(d)では、最良の送信アンテナについての零化ベクトルをyに乗算して、最良の送信アンテナの粗判定を行う。ステップ(e)では、Hの対応の列にその粗判定の結果を乗算してその積をyから減算する。ステップ(f)では、全アンテナについて処理を終るまで次善の送信アンテナについてステップ(d)および(e)を繰り返す。ステップ(g)(オプションである)では、判定饋還チャネル推算値更新をデータ判定の結果に基づいて行う。
【0126】
なお、上記粗判定動作は、ハード判定、すなわちチャネル補正ずみの受信シンボルに最も近いコンステレーション点による判定でも、ソフト判定、すなわちいくつかの候補のコンステレーション点を重みづけのうえ加算して得た点(重みは各コンステレーションの尤度に比例)による判定でも行い得る。
【0127】
[ビタービビン重みづけ]
一つの実施例では、慣用の手法で符号化されたデータストリームを受信機での検出のあと複号化するのにビタービ復号器を用いることができる。周波数選択性フェーディングを伴うチャネルでは、信号の品質は周波数ビンごとに異なる。したがって、ビダービ枝路定数計算において状態不良のビンからのデータに割り当てる重みは小さくする。一つの実施例では、最適のビン重みはSNR(信号対雑音比)に比例した値とする。
【0128】
データストリーム一つだけを送信する802.11a/gでは、雑音がビン全体にわたる相加性白色ガウス雑音であるとすると、SNRはチャネル振幅の二乗で近似算出できる。しかし、実際のシステムでは、SNRは、チャネル推算誤差、位相雑音および量子化雑音によってチャネル振幅の二乗よりも緩やかに増加することが多い。したがって、一つの実施例では、チャネル振幅をビン重みづけに用いることができる。
【0129】
MIMOシステムでは、送信されてきたデータストリームの検出時のSNRは、特定の雑音電力密度を仮定して計算できる。同様に、ビタービビン重みの算出にはこの互いに異なる方法を用いることができる。第1の実施例では、ビタービビン重みを検出時SNRに比例する値として算出する。第2の実施例では、ビタービビン重みを検出時SNRの平方根に比例する値として算出する。
【0130】
MMSE−DFEでは、MMSEの式から算出した検出時SNRは誤差伝搬の影響を含んでおらず、あとで検出されるデータストリームの検出時SNRが楽観的過ぎる値になる。そのために、復号器の性能が低下して望ましくない。
【0131】
復号器の性能を改善するために、雑音伝搬の影響をSNR算出時の雑音の項に含めることができる。第2および第3のデータストリームに対する実効雑音項の例を次に示す。
【数34】
ここで、σ
m2は、もとの雑音の項であり、W
mは零化ベクトルであり、h
mはチャネルであり、σ
m2(バー)はm番目のデータストリームについての実効雑音項である。
【0132】
[互いに異なる雑音最低値に対する補償]
MMSE検出器に関する上述の展開は、雑音電力がyの諸成分全体にわたって同じであるとの仮定に基づいている。実際のシステムではこの仮定は一般的には正しくない。すなわち、受信機チェーンにおける雑音最低値や利得設定値が互いに異なるからである。したがって、以下に述べるとおり式を変形する。
【0133】
アンテナで受信した信号が次式、すなわち
【数35】
で表されると仮定する。
【0134】
AGCをかけたあとでは、この受信信号は、次式、すなわち
【数36】
で表される。ここで、σ
n2は雑音最低値、g
nはn番目の受信アンテナについての振幅利得である。H(バー)は、AGCをかけたあとのチャネル推算値である。
【0135】
MMSE手法を適用するために雑音分散を同じ値にスケーリングする。そのために、
K=min
n(g
nσ
n)とし、スケーリング行列を次のとおり画定する。
【数37】
スケーリングしたチャネルはH
eq=II・H(バー)であり、結果として得られる雑音分散はσ
eq2=K
2であって受信アンテナ全部について一定である。この段階で零化ベクトルW
eq*をH
eqおよびσ
eq2から算出できる。
【0136】
W
eq*をy
eq=II・y(バー)に適用する。全シンボルについてy(バー)をスケーリングする代わりにW
*(バー)=W
eq*・IIを一回だけ計算して、そのW
*(バー)をy(バー)に直接適用するのが好ましい。MMSE−DFEについては、y(バー)およびH(バー)を用いて相次ぐ消去を行うことができる。スケーリングは不要である。
【0137】
図11は複数の受信機チェーンについてチャネル補正を改変できる受信機1100の一部を示す。受信機1100では、可変利得増幅器1101がアンテナから無線信号(関連のチャネル情報を含む)を受けて、増幅出力をチャネル反転ブロック1102に供給する。自動利得制御(AGC)ブロック1103が増幅器1101への制御信号を生じる。チャネル反転ブロック1102はAGC制御信号および雑音最低値(AGCブロック1103が発生する)を受けてチャネル補正値を生じる。このチャネル補正値をAGCブロック1103に供給してAGC制御信号を修正する。
【0138】
[位相誤差の補償]
位相雑音、残留周波数オフセット、誘発位相誤差、送信機・受信機間の伝搬経路におけるドップラ変動などにより、実効チャネル行列Hの位相はパケット全体を通じて緩やかに変動する。これらの効果を式で表示するために、実効チャネルをΛ
r・H・Λ
tで表す。ここで
【数38】
および
【数39】
はN個の受信アンテナおよびM個の送信アンテナでの位相変動をそれぞれ表す。これに対応する等化行列はΛ
t*・W
*・Λ
r*であり、この行列は位相推算が得られれば容易に修正できる。
【0139】
上述のとおり、共同パイロット追跡、送信機チェーンごとのパイロット追跡、または送信機・受信機対ごとのパイロット追跡を可能にする互いに別々のパイロットスキームを用いることができる。共同パイロット追跡では送信チェーンおよび受信チェーン、すなわち
Λ
tおよびΛ
rの全部について一つの共通の位相オフセットを推算してスカラ量e
jθと乗算する。等化行列への修正はスカラ量e
−jθとを掛けるだけである。
【0140】
送信チェーンごとのパイロット追跡の場合は、送信データストリームあたり一つの位相推算値を推算し、Λ
tおよびΛ
rを一つのΛ
tに集約する。したがって、等化行列はΛ
t*・W
t*に変形できる。必要であれば、位相推算値を一つの共通位相値を得るように、送信チェーンにわたって平均化することができる。この平均値は、角度θ=(1/M)Σ
mθ
t(m)または平均の角度(和と等価)すなわちθ=angle(Σ
me
jθt(m))から誘導することができる。
【0141】
送信機・受信機対ごとのパイロット追跡の場合は、直交合成しチャネル補正したパイロットをまず抽出する(式4参照)。第1の実施例では、チャネル行列Hの各成分の位相オフセット、すなわちθ
n、m(1≦m≦M、1≦n≦N)をそれらパイロットから推算してθ
t(m)(1≦m≦M)およびθ
r(n)(1≦n≦N)に変換する。なお、マッピングは次のとおりである。
【数40】
ここで、1
Nは全部1のN×1ベクトル、I
Nは大きさNの単位行列、θ
r=[θ
r(1)θ
r(2)・・・θ
r(N)]
TはN個の受信機における位相のベクトル、θ
m=[θ
1、mθ
2、m・・・θ
N、m]
Tは行列Hのm番目の列の位相ベクトルである。疑似反転は送信機および受信機における位相の最小二乗(LS)であり、この値は送信アンテナおよび受信アンテナの数のみで定まり、したがってオフラインで計算できる。
【0142】
具体化に伴う二つの問題をここで検討する。まず、Θ
2の角度は、シンボルからシンボルへの変動で2πを超えないようにする。すなわちΘ
2の変動が2πに及ぶと、Θ
1の変動は2πにならないからである。Θ
2をアンラップするために、現シンボルと先行シンボルとの間のΘ
2の変動を、2πを加算または減算して先行Θ
2に加えることによって、(−π、π)の範囲内に収める。
【0143】
次に、Θ
2の中に信頼度の低い角度がある場合(例えば、行列に信号強度の小さい成分が含まれている場合)は、解も不安定になる。この問題に対する解決策は、Θ
2の中の成分に、コスト関数の形成の際に信頼度に応じた重みづけをし、重みづけずみのLSの式を解くこと、すなわち、‖A・Θ
1−Θ
2‖
2の代わりに、
【数41】
を最小にすることである。ここで┌は重みづけ係数つきの対角行列である。したがって、解は次式、すなわち
【数42】
のとおりとなる。
【0144】
信頼度のより高い成分には重みづけを大きくし、より低い成分には重みづけを小さくする。信頼度の一つの尺度はチャネル成分の大きさである。重みは最大値で正規化し、必要があれば単純化のために量子化する。
【0145】
必要があれば、送信アンテナ・受信アンテナ対全部についての位相オフセット推算値を受信アンテナ全部にわたって平均して送信アンテナあたりの一つの位相推算値すなわちθ
r(m)=(1/N)Σ
nθ
n,mを算出し、または送信チェーン・受信チェーン全部にわたって平均して一つの共通位相推算値θ=(1/MN)Σ
n,mθ
n,mを算出する。
【0146】
第2の実施例では、θ
tおよびθ
rを対角合成しチャネル補正したパイロットυ
n、m、k(式4参照)の組み合わせを算出する。パイロットビンおよび受信アンテナ全部にわたる合計の角度は各送信アンテナについてのオフセット値であり、θ
t(m)=angle(Σ
n、kυ
n、m、k)となる。送信アンテナ全体にわたる合計の角度は各受信アンテナについてのオフセット値であり、θ
r(n)=angle(Σ
m、kυ
n、m、k)となる。送信アンテナおよび受信アンテナ全部にわたる合計の角度θ=angle(Σ
n、m、kυ
n、m、k)は、計算したのちその半分をバイアス除去のために送信オフセットおよび受信オフセットとの両方から減算する。すなわち、θ
t(m)=θ
t(m)−θ/2およびθ
r(n)=θ
r(n)−θ/2となる。
【0147】
必要があれば、送信チェーンの各々についてのオフセットだけをθ
t(m)=angle(Σ
n、kυ
n、m、k)により算出して適用する。または、送信チェーンおよび受信チェーン全体にわたる共通位相オフセットをθ=angle(Σ
n、m、kυ
n、m、k)により算出して適用する。
【0148】
残留周波数オフセットの継続的補正には、送信チェーンおよび受信チェーン全部にわたる共通の位相オフセットθを用いる。そのオフセット値が残留周波数オフセットに起因する共通位相シフトを反映し、位相雑音による変動を抑制するからである。
【0149】
[閉ループ送信最適化]
MIMO送信機にMIMOチャネルが既知である場合は、送信すべきデータストリームの数、各データストリームに適用すべき伝送速度、各データストリームに用いるべき副搬送波、送信アンテナの選択、各アンテナへの出力電力などの送信スキームを最適化することができる。このようなスキーム最適化によって、MIMOシステムの動作安定性およびスループットが改善される。
【0150】
図3に示した第1の実施例においては、受信機304がチャネルの品質を評価し、その品質情報を送信機301に饋還する。この品質情報はチャネル情報(例えば、チャネル推算値または検出パイロットEVM)のフォーマットでもよく、推賞送信スキームのフォーマットでもよい。なお、検出パイロットEVMはチャネル補正ずみのパイロットおよび既知の清浄パイロットから算出でき、したがって信号品質の格好の尺度になり得る。チャネル情報の饋還には、二つの互いに異なるパケット、すなわち標準的RTS/CTS交換におけるCTSパケットおよびACKパケットを用いることができる。
【0151】
第2の実施例では、送信機301が受信機304からのパケットによりチャネルを推算する。このスキームには相反性が成立し、アップリンクおよびダウンリンクの両方で両側に同じアンテナを使うことができるものとする。したがって、送信機301は、推算したチャネルに基づき最良の送信スキームを決めることができる。
【0152】
なお、空間的大きさの程度の高いチャネルではより多くのデータストリームをサポートでき、その程度の低いチャネルではより少数のデータストリームをサポートできるに留まる。使用データストリームの数の最適値はMIMOチャネル推算値の大きさに基づいて定める。送信ダイバーシティなしのシステムでは、最良チャネルの際の送信アンテナと同数の送信アンテナを利用可能な送信アンテナ全部の中から選ぶ。
【0153】
送信ダイバーシティ付きのシステムでは、各データストリームを適宜位相シフトにかけて、合成ビーム(送信ビーム形成器(TxBP))を生ずるように、複数のアンテナから同時並行的に送信する。データストリームの各々に対するBF処理は、2003年10月8日提出の米国特許出願第10/682,381号「高データ速度信号の多アンテナ送信機ビーム形成装置および方法」、および同年同日提出の米国特許出願第10/682,787号「高データ速度広帯域信号の多アンテナ受信機合成のための装置および方法」(これら出願をここに引用して記載内容をこの明細書に組み入れる)に記載した手法を用いて行うことができる。
【0154】
概括的にいうと、互いに異なるデータストリームを受信アンテナに向けてビーム形成して、受信SNRを高める。この手法は、ダウンリンクトラフィックの多いシステムにおけるアクセスポイントに有用である。送信ビーム形成は、二つ以上でM個以下の独特のデータストリームを送信するとともに過剰のアンテナを用いて冗長度つき符号化および所望の方向への送信ビーム形成を行うことによって、高速度MIMOと組み合わせることができる。
【0155】
離間的マルチトーン(DMI)手法では、各副搬送波の電力および変調の積類をチャネル推算に基づいて定め得る。品質の良い副搬送波は品質の劣る副搬送波よりも消費電力が大きく変調レベルも高い。
【0156】
[受信機選択ダイバーシティ]
コストおよび消費電力の節約のために、MIMO受信機の有する受信機チェーンの数は通常限られている。一方、RFアンテナのコストはずっと小さい。したがって、受信機チェーン数よりも多い受信アンテナを備え、それらアンテナの中の受信状態の良いものを動的に選択する構成にするのが望ましい。受信アンテナ動的選択能力によってダイバーシティ利得が得られ、システムの安定性が改善される。一つの実施例では、複雑さを抑え、切換損失を減らすように、複数のRFアンテナを受信機チェーンと同数の群に群分けし、それら群をスイッチ経由で対応の受信機チェーンに接続する。
【0157】
第1の実施例では、高速アンテナダイバーシティを用いる。高速アンテナダイバーシティでは、各受信機チェーンがそのチェーンに接続されたRFアンテナの信号を高速でサンプリングして、受信信号強度の最も大きいアンテナを選択する。
【0158】
第2の実施例では、選択を検出時SNRに基づいて行う。チャネル推算はRFアンテナ全部について行う。受信アンテナの可能な組み合わせの各々について検出時SNRをデータストリーム対応で計算する。次に、算出されたSNRの最小値をアンテナの可能な組み合わせ全部について比較するSNR最大値および最小値のアンテナの組を選択する。
【0159】
[データ速度適応化]
MIMOシステムのデータ速度適応化は、802.11a/gシステムへの適応化よりも難しい。送信アンテナの各々からチャネル品質を評価するには、相反性利用の非明示的饋還または明示的制御メッセージ利用の明示的饋還が必要である。
【0160】
この饋還の精細度は多様であり得る。最粗レベルでは、全ストリームの中の全データが正しいことを表示するために単一の受信確認を用いる。この手法では、全ストリームに同じデータ速度を用いるスキームでも困難になる。すなわち、サポート可能な送信ストリームの数および最適送信ストリームの判定が困難であるからである。
【0161】
饋還の次のレベルは各データストリームを個別に受信確認する手法である。この受信確認手法は、最適送信アンテナの判定およびサポート可能なデータストリームの数の決定は困難であるが、ストリームの各々について互いに独立のデータ速度適応を可能にする。
【0162】
饋還のもう一つのレベルでは、意図した受信機が、チャネル推算プリアンプルやパケットデータ部の期間中に入来パケットについてチャネル測定を行い得る。この測定による推算で周波数・送信アンテナ組合せの各々の個別のSNRを算定したり、送信機のデータ速度適応に利用可能なアンテナあたりのバルク値に情報を取り込んだりすることができる。中間的な対処策は、パイロットトーン周波数の組など周波数ビンの削減ずみの組のSNRを算定して知らせるだけの方策である。
【0163】
一つの実施例では、意図した受信機が受信に基づいて用いるべき最適データ速度を算定し、そのデータ速度をACKで送信機に送る。送信機はこのACKをデコードし、データ速度を検出し、その検出結果をそのユーザあての次のパケットの処理に適用する。この情報は、各データストリームについてのデータ速度情報、単一のデータ速度およびそれをサポートできる送信アンテナのリスト、または単一のデータ速度およびそれをサポートできる送信アンテナの数を含む。
【0164】
もう一つの実施例では、送信機が意図した受信機でみたチャネルを、その意図した受信機からの特別のMIMO ACKにより推算する。相反性を確保するために、この意図した受信機は自分が受信に用いている全アンテナによりACKを送る。このACKは、データシンボルなしでレガシープリアンプルおよびMIMOプリアンプルだけを含む。送信機はデータ速度適応パラメータ更新の必要があるときはその特別のACKを請求する(なお、喪失パケットの統計データをデータ速度の低速適応のための補助的手段として用いることもできる)。
【0165】
データ速度適応化情報は、特に明示的データ速度の形式の場合は、時効化して、チャネル状態変動に起因する多重受信喪失の場合にデータ速度の低下を可能にしなければならない。
【0166】
[集約、多重検査合計および部分ACK]
MIMOヘッダはパケットオーバーヘッドを著しく増大させる。一方、同じ情報バイト数を伝送するためには、MIMOパケットはより少数のデータシンボルを通常必要とする。したがって、MIMOパケットの総合効率は同じ大きさのレガシーパケットの効率よりもずっと低い。
【0167】
一つの実施例では、MIMOデータ伝送システムのもたらす高データ速度の利点を確保するために、最小閾値以上の大きさのパケットだけをMIMOフォーマットで送信する。パケットサイズを大きくするには、パケット集約、すなわちいくつかのより小さいパケットを大きい「スーパー」パケットにまとめるパケット集約を用い得る。
【0168】
802.11a/gでは、CRC検査合計をパケットの末尾に加え、物理レイヤに伝達する。受信機MACはビタービ復号器の出力におけるCRC誤りをチェックし、パケットが正しく受信されたかを否かを判定する。高データ速度MIMOシステムでは、パケットの中のデータバイト数は、上述のとおり効率を上げるために、通常ずっと大きくしてある。これら長パケットの誤り確率は通常高く、それら長パケットの再送信に伴うコストも同様に高い。
【0169】
この問題を克服するために、各MIMOパケットに多重検査合計を次に述べる二つの方法のいずれかを用いて含める。第1の方法を用いて個々の検査合計を集約前パケットの各々について特定する。第2の方法を用いて、集約後のスーパーパケットを互いに等しい長さの区分に分割し、検査合計をそれら区分の各々につき算出して各区分のあとに挿入する。
【0170】
受信機では(復号器の後段で)検査合計を各パケット/区分について調べて、そのパケット/区分が正しく受信されたか否かを(例えば、受信確認ビットベクトルを用いて)判定する。少なくとも一つのパケット/区分が正しく受信されている場合は、受信機は送信機に部分ACK、すなわちどのパケット/区分が正しく受信されたかを表示する部分ACKを送る。その場合、送信機は送信不達のパケット/区分だけを再送信すればよい。MAC複雑性を軽減するために、MACはパケットのいずれかが誤りに陥った場合は、サブパケット全部の再送信を選ぶことができる。なお、MACはデータ速度適応化のために、受信確認ビットベクトルの個々のビットを使うことができる。
【0171】
図面を参照して例示用の実施例を上に述べてきたが、この発明がこれら特定の実施例に限定されないことを理解されたい。これら実施例は、網羅的に例示することを意図するものではなく、また、この発明をここに開示した形式に限定することを意図するものでもない。すなわち、多様な変形や改変が当業者には自明となるであろう。
【0172】
例えば、
図12はいくつかの送信/受信アンテナの構成についてデータ速度と相対距離との関係を表す一群のグラフ1200を示す。グラフ1200のうち、曲線1201は3アンテナ送信機/3アンテナ受信機(3×3)構成の特性を示し、曲線1202は2×3構成の特性を示し、曲線1203は2×2構成の特性を示す。選んだアンテナ構成がデータ速度最大値とシステム安定性との間の妥協の産物であることを理解されたい。すなわち一つの実施例では、曲線1202で特性が示される2×3構成を費用対効果の観点から選択することになろう。
【0173】
なお、MIMO−SMおよびMIMO−AGには「ターボ」モードを加え得る。この「ターボ」モードはより広いチャネル帯域幅を意味し、2003年2月14日提出の米国特許出願第10/367,527号「複数変調タイプの信号のシンケンシングインタポーレータによる受信および送信」および2003年11月6日提出の米国特許出願第10/×××,×××号「データ伝送におけるマルチチャネルバインディング」に記載してある。これら出願をここに参照してその内容をこの明細書に組み入れる。概括的にいうと、ターボモードは、(1)ダブルクロッキングまたは(2)チャネルボンディング、すなわち二つの20MHzチャネル(両者間の間隙を潜在的に利用)を併せて用いることにより達成する。ダブルクロッキングにより正常モードと同じ副搬送波構成に達するが、各副搬送波の帯域幅は2倍になる。チャネルボンディングは各副搬送波の帯域幅を維持するが、副搬送波の数を増加させる。チャネルボンディングの一つの特定の例では、−58から−2、および+2から+58の114のトーンを用いる(DC近傍の三つのトーン、すなわち(−1、0、+1)は用いない)。
【0174】
上述のMIMOシステムの実施例はいずれもターボモードに適合する。
【0175】
図13はいくつかのターボアンテナ構成および非ターボアンテナ構成についてのデータ速度と相対距離との関係を表す一組のグラフ1300を示す。グラフ1300に示されるとおり、ターボMIMO−SMはデータ速度を216Mbpsまで処理できる。しかし、60Mbps以下ではターボMIMO−AGがMIMO−SMの性能を上まわる。
【0176】
したがって、この発明の範囲は添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物によって画定されることを意図するものである。